JP3591123B2 - 燃料電池および燃料電池用電極 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池および燃料電池用電極に関し、詳しくは導電性とガス透過性とを有する電極を備えた燃料電池および燃料電池用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、燃料の有する化学エネルギを、熱エネルギや機械エネルギを経由することなく直接電気エネルギに変換する装置であり、高い発電効率を得ることが可能な装置として知られている。燃料電池では、水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る。以下に、燃料電池で起こる電気化学反応を表わす式を示す。(1)式はアノードにおける反応、(2)式はカソードにおける反応を示し、(3)式は電池全体で起こる反応を表わす。
【0003】
H2 → 2H++2e− …(1)
(1/2)O2+2H++2e− → H2O …(2)
H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
【0004】
このような電池反応が連続して進行し、燃料電池が安定して発電するためには、各電極に燃料ガスおよび酸化ガスが効率よく供給され続ける必要がある。そのため燃料電池用電極としては、従来、ガス拡散能と導電性とを備えた炭素系材料からなる極板が用いられてきた。具体的には、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロスや、やはり炭素繊維からなるカーボンフエルトやカーボンペーパ等によって電極を形成していた。
【0005】
燃料電池において、上記の式で表わした電気化学反応によって発電を行なうと、(2)式に示したようにカソードでは水が生成する。このように生成した水がそのままカソードに留まるとガスの拡散路を塞いでしまい、電極におけるガスの拡散が妨げられて電池反応が低下する。そのため、電池反応によって生成した水を速やかに電極から排水する必要がある。
【0006】
そこで従来は、カーボン粉とポリテトラフルオロエチレン(商品名テフロン、以下PTFEと呼ぶ)とを混合して撥水カーボンを作製し、この撥水カーボンをペースト化したものをカーボンクロスの両面に塗布して焼成し、カーボンクロスの表面に撥水性を持たせたうえで電極として用いていた。このように作製した電極では、カーボンクロスに塗布した撥水カーボンによって生成水が弾かれるため、生成水が排出され易くなる。また、撥水カーボンによって電極表面の水が弾かれるため、ガス拡散性が向上する。この電極を両極に用いて固体高分子電解質型燃料電池を作製し、図13に示す従来条件に従って燃料電池を動作させると、図15に符号aのグラフとして示したように高い電圧で安定した発電が行なわれる。なおここで用いた電極は、アノード、カソード共に、その両面に撥水カーボンが塗布されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図13に示した従来条件で燃料電池の運転を行なうと、燃料電池によって発電された電力のうち、65%ものエネルギを燃料電池を運転するために消費してしまうことになってしまい採用し難い。すなわち、燃料電池によって20kWの電力を発電する際に、上記従来条件では、各電極に供給する燃料ガスおよび酸化ガスを加湿するために5kWを消費し、カソードに供給する酸化ガスを加圧するために8kWを消費してしまう。発電効率を向上させるためには、発電時に消費してしまうこれらの電力を削減する必要がある。
【0008】
まず、ガスの加湿とこれによって消費される電力について説明する。アノードでは(1)式に示した反応によってプロトンが生じるが、このプロトンは水分子と結びついた状態で電解質膜中をカソードに向かって移動する。このように電解質膜のアノード側では水が消費されるため、燃料ガスを加湿しておくことによって電解質膜の乾燥を防ぐ必要がある。カソードにおける反応では(2)式のように水が生成するが、カソードに供給される酸化ガスは加圧されているため、部分的に電解質膜の表面が乾燥してしまうおそれがある。従って従来は、燃料ガスと共に酸化ガスをも積極的に加湿し、図13に示す従来条件にて燃料電池を運転していた。このように燃料ガスおよび酸化ガスを加湿するために、燃料電池によって20kWを発電する場合には、約5kWの電力を消費してしまう。ここで、燃料ガスおよび酸化ガスを上記のように積極的に加湿することをやめてしまい、ガスの加湿のためにエネルギを消費しない構成とすると、酸化ガスは加湿度0%となり、燃料ガスについては、原燃料のメタノールを水蒸気改質して燃料ガスを生成する際に加湿されるので加湿度は60%程度となる。
【0009】
次に、酸化ガスの加圧とこれによって消費される電力について説明する。燃料電池では、各電極に供給するガスの圧力を高くした方が化学反応である電池反応が促進されるため、空気などの酸化ガスをポンプ等によって加圧している。図14は、燃料電池の出力を20kWと設定した場合に、加圧によって消費される電力の大きさを示すグラフである。図14に示すように、加圧によって消費される電力の大きさは、加圧する圧力と空気過剰率とによって決まる。空気過剰率とは、燃料電池を稼働させて所定の電力を得るために理論的に必要な空気の量に対する実際に供給する空気量の割合のことをいう。通常、燃料電池による発電を行なう際には過剰量の空気を供給する必要がある。理論的に必要な量の空気しか供給しない場合には、燃料電池内部の末端部に供給される酸素の濃度が低くなってしまい電池反応の効率が低下してしまう。そこで、末端部にも充分量の酸素が供給されるように過剰量の空気を燃料電池に供給している。
【0010】
従来条件では、供給圧力を0.15MPaとし、空気過剰率を6としていた。このような条件では、燃料電池によって20kWを発電する際に、加圧用ポンプの駆動のために約8kWの電力を消費してしまう。図14に示すように、空気過剰率または供給圧力を低くすればポンプによる消費電力は少なくなるが、発電効率を維持するには酸化ガスの圧力をあまり下げるわけにはいかない。ここで、上記従来条件と同じく供給圧力を0.15MPaとして、加圧用のポンプが消費する電力が発電量の10%となるように加圧条件を設定すると、空気過剰率は2となる。このような、加圧による電力消費量が発電量の10%となる状態で、かつガスの加湿を積極的には行なわない条件を図13に設定条件として示す。なお、燃料ガスの供給圧力および過剰率は、酸化ガスとの釣合を考慮して設定し、上記改質器と燃料電池とを結ぶ燃料ガス供給路に設けた調圧弁によって調節すればよい。
【0011】
このように設定した図13の設定条件に従って燃料電池を運転したときに、運転のための消費電力が10%という効率で実際に運転可能であるかどうかを確かめるために、撥水カーボンを表面に塗布した電極(従来から使用されている電極)を用いて固体高分子型燃料電池を作製した。この燃料電池を用いて図13の設定条件に従って運転を行なうと、図15に符号bのグラフとして示したように、高い電圧が得られないまま、時間の経過に伴って短時間のうちに電圧降下を起こしてしまう。
【0012】
このように燃料電池の発電時に電圧が上昇しないのは、電解質膜の湿潤化が不十分であり燃料電池の内部抵抗が大きいことが原因と考えられる。また、すぐに電圧降下を起こしてしまうのは、電池反応によって生成した水が電極内部に滞留してガス流路を塞いでしまい、酸化ガスが電極に充分に供給されなくなってしまって運転効率が低下するためと考えられる。特に上記設定条件の下では、燃料ガスの加湿の割合が低くガスの流量も少ないため、アノード側に対する水の供給が充分でないと考えられる。また、カソード側では、電池反応によって生成水が生じても、酸化ガスは全く加湿されていないために、電解質膜では部分的には水分不足になる箇所が生じて抵抗値が上昇しているおそれがある。さらにカソード側では、酸化ガスの流量が少ないこともあって生成水が充分に排水されずにガス流路を塞いでしまうと考えられる。従って、上記設定条件によって燃料電池を運転するには、各電極においてはガスの拡散性を向上させるとともに電解質膜を充分な湿潤状態に保つための給水性を備えさせ、カソードにおいては生成水の排水性を高める必要がある。
【0013】
このような給水性や排水性、およびガス拡散性の向上を実現する方法として、親水性の炭素繊維からなる縦糸と撥水性の炭素繊維からなる横糸とを織り込んで電極を形成する方法が提案されている(例えば、特開平7−105957号公報など)。このような方法では、親水性の炭素繊維が生成水の排除や補給水の供給を行ない、撥水性の炭素繊維が水を弾いてガスの供給や排出を行なうものとされている。
【0014】
しかしながらこのような方法では、電極面と平行に織り込まれた撥水性の糸によってガスの供給や排出を行なっており、電極内のガス流路が電極面と平行になるため、ガス透過のパスが長くなる。ガス透過の効率の点からみると、ガス透過のパスは短い方が望ましい。親水性の炭素繊維からなる縦糸と撥水性の炭素繊維からなる横糸とを織り込んで形成した電極を用いて作製した燃料電池によって発電を行なった結果を、図15に符号cのグラフとして示した。撥水性のカーボンを塗布した電極を用いる場合に比べて発電の状態は改善されるが、運転のための消費電力を10%に抑えた条件下では、このような電極を用いても、電解質膜の湿潤状態を充分に保持しながら電極におけるガス拡散性を充分な程度に維持することは困難な場合があると考えられる。
【0015】
本発明の燃料電池および燃料電池用電極は、こうした問題を解決し、カソードにおける生成水の排水性および電解質層への給水性と、アノードにおける給水性とを向上させ、電極におけるガス透過性を確保することを目的としてなされ、次の構成を採った。
【0016】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の燃料電池は、電解質層と、該電解質層を挟持するカソードおよびアノードを備える燃料電池において、
前記カソードは、親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を有する撥水層を形成してなることを要旨とする。
【0017】
このような本発明の燃料電池によれば、電解質層のカソード側の表面で生成した水滴は親水処理を施された電極基材に吸収される。この電極基材に吸収された生成水は、電極表面に導かれて燃料電池に供給されるガス中に気化し、ガスと共に燃料電池外に排出される。このように、カソードでは生成水が速やかに排出されるため、生成水が電極内に滞留してガス流路を塞いでしまうことがない。また、カソードにおいて、電解質層側の表面に形成された撥水層によって水が弾かれるため、生成水がガス流路を塞ぐことが生じにくくなり、電池反応に関与するガスが効率よく流通することができる。
【0018】
上記した本発明の燃料電池において、
前記撥水性物質は、導電性を有しない物質であり、
前記電解質層と接する側に形成された撥水層は、他面に形成された撥水層よりも前記撥水性物質を多く含有する構成としてもよい。
【0019】
このような構成の燃料電池では、両面に撥水層を形成したカソードにおいて、前記電解質層と接する側に形成された撥水層は他面に形成された撥水層よりも多くの撥水性物質を含有するため、前記電解質層と接する側に形成された撥水層では強い撥水性を示す。ここで、撥水性物質は導電性を有しないため、撥水性物質量を単に増加させて撥水性を強化したのでは電極の抵抗値が大きくなってしまい、却って電池性能を低下させてしまう。そこで、両撥水層が含有する撥水性物質の総量を抑制しつつ、各撥水層が含有する撥水性物質の量を上記のように配分することにより、所望の面の撥水性を強化して電極の抵抗値の上昇を抑制することができる。
【0020】
このような構成とすれば、電解質膜において余剰となった生成水は、カソードにおいて電解質層と接する側の面上に設けられた撥水層によって弾かれて電解質膜に押し戻され、加圧空気のために部分的に乾燥した領域に供給されるため、電解質膜の乾燥を防ぐことができる。ここで、電解質層と接する側の面に形成した撥水層では撥水性物質量を多く含有しているため、電解質層で生じる生成水を効果的に押し戻し、電解質膜の湿潤状態を充分に保つことができる。また、カソードにおいて電解質層と接する側の面とは反対側の面にも撥水層が形成されているため、この反対側の面でも水を弾くことができる。従って、電極表面に導かれて蒸発せずに残った生成水が電極表面で水の膜を形成してガスの拡散を妨げてしまうことがなく、過剰の生成水は弾かれて排水され易くなる。
【0021】
また、本発明の燃料電池において、
前記撥水層は、前記撥水性物質と、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるカーボン粉とを混合した後、前記電極基材表面に塗布してなる構成としてもよい。
【0022】
このような構成の燃料電池では、前記撥水層は前記撥水性物質とカーボン粉とを混合したものを前記電極表面に塗布してなるため、撥水層の備える撥水性はカーボン粉によっても影響される。ここで、撥水層を形成するカーボン粉は、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるため、撥水層の撥水性はさらに向上する。従って、カソードにおいて電解質層と接する側の面ではさらに生成水が押し戻され易くなり、電解質層の湿潤状態が良好に維持されるようになる。また、このように撥水性が向上することで、電池反応に関わるガスも効率よく拡散するようになる。
【0023】
さらに本発明の燃料電池は、前記アノードが、親水処理を施された電極基材よりなる構成としてもよい。このような場合には、上記した本発明における効果に加えて、アノードを構成する電極基材も親水処理を施されているため、アノード側の給水性が向上するという効果を奏する。アノード側に供給される燃料ガスは発電条件に応じた量の加湿が行なわれているが、この燃料ガス中の水蒸気は、親水処理を施された電極基材に速やかに吸収される。このアノードに吸収された水蒸気は、必要に応じて電解質層に給水されるため、電解質層のアノード側の面が乾燥することを防止できる。このように、燃料ガス中の水蒸気を効率よく電解質層に導くことができるため、アノード側に供給する燃料ガスの加湿量を抑えることが可能になる。
【0024】
本発明の燃料電池用電極は、
所定の導電性とガス透過性とを備える燃料電池のカソード用電極において、
親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を備える撥水層を形成した ことを要旨とする。
【0025】
以上のように構成された本発明の燃料電池用電極は、所定の導電性とガス透過性とを備え、電極を形成する電極基材は親水処理を施されて親水性を呈し、この電極基材の両面には撥水性物質備える撥水層を形成する。このような燃料電池用電極をカソードとして燃料電池を組み立てて発電を行なった場合には、生じた起電力は所定の導電性によって伝えられると共に、供給されたガスは所定のガス透過性によって効率よく拡散することができる。また、電極基材が備える親水性によって、電池反応で生じた過剰な生成水を電極表面に導いて蒸散させることができる。さらに、電極表面に形成された撥水層の撥水性によって、ガスの拡散性が向上すると共に生成水が弾かれて排水が促進される。
【0026】
このような本発明の燃料電池用電極において、
前記撥水性物質は、導電性を有しない物質であり、
前記電極基材の両面に形成されたそれぞれの撥水層は、互いに異なる量の前記撥水性物質を含有することとしてもよい。
【0027】
このような燃料電池用電極をカソードとして、前記撥水性物質を多く含有する側が電解質膜と接するように燃料電池を組み立てて発電を行なうと、電池反応によって生じた生成水は、撥水性物質を多く含む撥水層によって効果的に弾かれて電解質層に押し戻されるため、電解質層の乾燥を防ぐことができる。また、電解質層を接しない側に形成された撥水層は、この電極表面で蒸散し残った余剰の生成水を弾いて速やかに排水することができる。
【0028】
また、本発明の燃料電池用電極において、
前記撥水層は、前記撥水性物質と、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるカーボン粉とを混合した後、前記電極基材表面に塗布してなる構成としてもよい。
【0029】
このような構成の燃料電池用電極では、前記撥水層は前記撥水性物質とカーボン粉とを混合したものを前記電極表面に塗布してなるため、撥水層の備える撥水性はカーボン粉によっても影響される。ここで、撥水層を形成するカーボン粉は、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるため、撥水層の撥水性はさらに向上する。従って、このような燃料電池用電極をカソードとして燃料電池を組み立てて発電を行なうと、撥水性が向上することによって電池反応に関わるガスが効率よく拡散するようになる。また、このような燃料電池用電極の両面で撥水性に差異があるときに、撥水性が強い側が電解質層側となるように燃料電池を組み立てるならば、カソードにおいて電解質層と接する側の面ではさらに生成水が押し戻され易くなり、電解質層の湿潤状態が良好に維持されるようになる。
【0030】
本発明の燃料電池システムは、
電解質層と該電解質層を挟持するカソードおよびアノードを備える燃料電池と、該燃料電池に燃料ガスおよび空気を、所定圧力および所定の空気過剰率で供給するガス供給手段と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池のカソードは、親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を有する撥水層を形成し、
前記ガス供給手段により供給される空気の空気過剰率を3以下としたこと を特徴とする。
【0031】
以上のように構成された本発明の燃料電池システムは、電解質層と該電解質層を挟持するカソードおよびアノードを備え、このカソードは親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を有する撥水層を形成している燃料電池によって発電を行なう。燃料電池システムにおいて発電を行なう際には、この燃料電池に対して、ガス供給手段が燃料ガスおよび空気を、所定圧力および所定の空気過剰率で供給する。このときガス供給手段は、空気過剰率が3以下となるように空気を供給する。
【0032】
このような本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池によって発電を行なう際に、電池反応によって生じた過剰な生成水は、親水処理を施されたカソードの電極基部によって吸収され、電極表面に導かれて酸化ガス中に蒸散するため、速やかに排水することができる。また、電極表面に形成された撥水層の撥水性によって、カソードにおけるガスの拡散性が向上すると共に生成水が弾かれて排水が促進される。さらに、ガス供給手段が供給する空気は、空気過剰率が3以下であるため、燃料電池に空気を供給するために多くのエネルギを消費してしまうことがない。
【0033】
【発明の他の態様】
本発明は、以下のような他の態様をとることも可能である。すなわち、第1の他の態様としては、上記した本発明の構成において、前記電極基材はカーボンにより構成されることとすることができる。
【0034】
このような態様においては、カーボン製の電極基材に対して上記親水処理を施し、このカーボン製の親水化した電極基材の表面に、必要に応じて上記撥水層を形成する。従って、固体高分子型燃料電池やリン酸型燃料電池等において従来電極基材として用いられていたカーボン製の電極基材に対して、本発明をそのまま適用することができる。従来、カーボンは所定の親水性を有するものとされていたが、このカーボンに対して、さらに上記した親水化の処理を施すことによって、カソードでは生成水の吸収力が高まって排水性が向上し、アノードでは燃料ガスと共に供給された水蒸気の保水性が向上して電解質層への給水性が高まるという効果を奏する。
【0035】
また、第2の他の態様としては、上記した本発明の構成において、
前記撥水層は、前記撥水性物質と、酸性官能基の含有量が0.3×10−4(mol/g)以下であるカーボン粉とを混合した後、前記電極基材表面に塗布してなる構成とすることができる。
【0036】
このような態様においては、前記撥水層は前記撥水性物質とカーボン粉とを混合したものを前記電極表面に塗布してなるため、前記撥水層の備える撥水性はカーボン粉によっても影響される。ここで、撥水層を形成するカーボン粉は、酸性官能基の含有量が0.3×10-4(mol/g)以下であるが、酸性官能基は主要な親水性官能基を含むため、酸性官能基の含有量が上記のようなカーボン粉は、酸性官能基の含有量が上記を越えるカーボン粉に比べて強い撥水性を示す。従って、撥水層の撥水性がさらに向上する。カソードの電解質層と接する側の撥水層では、さらに生成水が押し戻され易くなり、電解質層の湿潤状態が良好に維持されるようになる。また、撥水性が向上することによって、電池反応に関わるガスも効率よく拡散するようになる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、本発明の好適な一実施例である燃料電池20におけるカソード23での生成水および酸化ガスの移動の様子を示す模式図であり、図2は、上記燃料電池20を備えた燃料電池システム30の概略を表わすブロック図である。説明の便を図って、まず、図2に従って燃料電池システム30の構成から説明する。燃料電池システム30は、燃料電池20の他に、メタノールタンク31、水タンク32、改質器34、ポンプ36を主な構成要素とする。以下、これら燃料電池システム30を構成する各部について説明する。
【0038】
燃料電池20は、固体高分子電解質型の燃料電池であり、構成単位である単セル28を複数積層したスタック構造を有している。図3は、燃料電池20を構成する単セル28の構成を例示する断面図である。単セル28は、電解質膜21と、アノード22およびカソード23と、セパレータ24、25とから構成されている。
【0039】
アノード22およびカソード23は、電解質膜21を両側から挟んでサンドイッチ構造を成すガス拡散電極である。セパレータ24および25は、このサンドイッチ構造をさらに両側から挟みつつ、アノード22およびカソード23との間に、燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。アノード22とセパレータ24との間には燃料ガス流路24Pが形成されており、カソード23とセパレータ25との間には酸化ガス流路25Pが形成されている。セパレータ24、25は、図3ではそれぞれ片面にのみ流路を形成しているが、実際にはその両面にリブが形成されており、片面はアノード22との間で燃料ガス流路24Pを形成し、他面は隣接する単セルが備えるカソード23との間で酸化ガス流路25Pを形成する。このように、セパレータ24、25は、ガス拡散電極との間でガス流路を形成するとともに、隣接する単セル間で燃料ガスと酸化ガスの流れを分離する役割を果たしている。もとより、単セル28を積層してスタック構造を形成する際、スタック構造の両端に位置する2枚のセパレータは、ガス拡散電極と接する片面にだけリブが形成されている。
【0040】
ここで、電解質膜21は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。本実施例では、ナフィオン膜(デュポン社製)を使用した。電解質膜21の表面には、触媒としての白金または白金と他の金属からなる合金が塗布されている。触媒を塗布する方法としては、白金または白金と他の金属からなる合金を担持したカーボン粉を作製し、この触媒を担持したカーボン粉を適当な有機溶剤に分散させ、電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社、Nafion Solution)を適量添加してペースト化し、そのペーストを膜成形して得たシートを電解質膜21上にプレスするという方法をとる。
【0041】
アノード22およびカソード23は、共に炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロス(日本カーボン(株)製、GF−20−P7、平織)により形成されている。ここで、アノード22およびカソード23は、その基部において親水処理が施されており、その表面には撥水性物質を備えた撥水部を形成しているが、これらの構成は本発明の要部に対応するものであり、後に詳述する。なお、本実施例では、アノード22およびカソード23をカーボンクロスにより形成したが、炭素繊維からなるカーボンペーパまたはカーボンフエルトにより形成する構成も好適である。
【0042】
本実施例では上述したように、触媒を担持したカーボン粉を作製し、このカーボン粉を含有するペーストを膜成形して得たシートを電解質膜21上にプレスする構成とした。このような方法を用いれば、電解質膜21上において少量の触媒を均一に圧着することができ、このような電解質膜21を備える燃料電池20では、少量の触媒で効果的な触媒効果が得られる。あるいは、上記した触媒担持カーボンを、カーボンクロスよりなるアノード22およびカソード23に練り込むこととしても良い。もとより、触媒担持カーボンを練り込む面は電解質膜21と接する側の面である。
【0043】
セパレータ24、25は、ガス不透過の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンにより形成されている。セパレータ24、25はその両面に、平行に配置された複数のリブを形成しており、既述したように、アノード22の表面とで燃料ガス流路24Pを形成し、隣接する単セルのカソード23の表面とで酸化ガス流路25Pを形成する。ここで、各セパレータの表面に形成されたリブは、両面ともに平行に形成する必要はなく、面毎に直行するなど所定の角度をなすこととしてもよい。また、リブの形状は平行な溝状である必要はなく、ガス拡散電極に対して燃料ガスまたは酸化ガスを供給可能であればよい。
【0044】
以上、燃料電池20の基本構造である単セル28の構成について説明した。実際に燃料電池20として組み立てるときには、セパレータ24、アノード22、電解質膜21、カソード23、セパレータ25の順序で構成される単セル28を複数組積層し(本実施例では75組)、その両端に緻密質カーボンや銅板などにより形成される集電板26、27を配置することによって、スタック構造を構成する。
【0045】
改質器34は、メタノールタンク31および水タンク32から、メタノールおよび水の供給を受ける。改質器34では、供給されたメタノールを原燃料として水蒸気改質法による改質を行ない、水素リッチな燃料ガスを生成する。以下に改質器34で行なわれる改質反応を示す。
【0046】
CH3OH → CO+2H2 …(4)
CO+H2O → CO2+H2 …(5)
CH3OH+H2O → CO2+3H2 …(6)
【0047】
改質器34で行なわれるメタノールの改質反応は、(4)式で表わされるメタノールの分解反応と、(5)式で表わされる一酸化炭素の変成反応とが同時に進行し、全体として(6)式の反応が起きる。このような改質反応は全体として吸熱反応である。生成された水素リッチな燃料ガスは給燃路38を介して燃料電池20に供給され、燃料電池20内では各単セル28において、前記燃料ガス流路24Pに導かれてアノード22における電池反応に供される。本実施例の改質器34においてメタノールを原燃料として上記した水蒸気改質によって燃料ガスを生成すると、改質器34内では改質反応に必要な量以上の水蒸気が供給されるため、燃料電池20に伝えられる燃料ガスは約60%の加湿度となる。
【0048】
また、ポンプ36は、外部から取り込んだ空気を燃料電池12に加圧供給する。ポンプ36に取り込まれて加圧された空気は、空気供給路39を介して燃料電池20に供給され、燃料電池20内では各単セル28において、前記酸化ガス流路25Pに導かれてカソード23における電池反応に供される。一般に燃料電池では、両極に供給されるガスの圧力が増大するほど反応速度が上昇するため電池性能が向上する。そこで、カソード23に供給する空気は、このようにポンプ36によって加圧を行なっている。なお、アノード22に供給する燃料ガスの圧力は、既述した給燃路38に設けた調圧弁37の開放状態を制御することによって容易に調節可能である。また、本実施例では、ポンプ36によってカソード23に供給する空気は、既述した図13の設定条件に従って加湿を行なわないこととした。
【0049】
なお、本実施例の燃料電池20を備える燃料電池システム30では、アノード22での電池反応に使用された後の燃料排ガスと、ポンプ36によって圧縮された空気の一部とは改質器34に供給される。既述したように、改質器34における改質反応は吸熱反応であって外部から熱の供給が必要であるため、改質器34内部には図示しないバーナが加熱用に備えられている。上記燃料ガスと圧縮空気とは、このバーナの燃焼のために用いられる。使用済みの燃料排ガスは排燃路41によって改質器34に導かれ、圧縮空気は空気供給路39から分岐する分岐空気路40によって改質器34に導かれる。燃料排ガスに残存する水素と圧縮空気中の酸素とはバーナの燃焼に用いられ、改質反応に必要な熱量を供給する。
【0050】
以上、本実施例の燃料電池20を備える燃料電池システム30の構成について説明したが、次に、本発明の要部に対応する電極の構成について詳しく説明する。燃料電池20のカソード23は、既述したようにカーボンクロスからなるガス拡散電極である。本実施例では、カソード23における生成水の排水性を向上させる目的で、カソード23の親水処理を行なった。カソード23の親水処理は、カソード23として用いるカーボンクロスを、親水処理剤を含む溶液中に浸漬することによって行なった。親水処理剤としてはSiO2 を採用した。カーボンクロスに付着させる親水処理剤の量は、この親水処理剤を含む溶液(日曹化成株式会社製、アトロンNSi−500)の濃度によって調節することができる。付着させる親水処理剤を増やせばカソード23の排水性は向上するが、SiO2 は導電性を有しないためカソード23の抵抗値が上昇してしまい、かえって電池性能を低下させることにもなる。そこで、電池性能を低下させない範囲でどのくらいの親水化が可能であるかを調べた。
【0051】
以下に、ガス拡散電極の備える排水性の評価の方法について説明する。図4は、親水化処理を施したガス拡散電極58の有する排水性を調べるために用いた蒸発速度測定装置50の構成を表わす模式図である。蒸発速度測定装置50内に設置されたガス拡散電極58は、その片面は水槽51中に蓄えられた水と接し、他面は外部に設けた窒素ボンベ52から窒素の供給を受ける窒素流路56と接している。水槽51内の水は水位ゲージ54に通じており、水槽51内の水量の変化はこの水位ゲージ54における水位の変化として観察される。また、蒸発速度測定装置50にはヒータ55が設けられており、蒸発速度測定装置50の内部の温度を燃料電池の運転温度に対応する所定の温度に保つ。ここでは、75℃に保つこととした。窒素ボンベ52と窒素流路56との間には流量調節部57が設けられており、窒素流路56に供給する窒素ガスの流量を調節可能となっている。窒素流路56内においてガス拡散電極表面58に供給される窒素ガス量は、燃料電池運転時の空気過剰率に対応するものであり、流量調節部57を調節することで各空気過剰率における燃料電池内のガス拡散電極の状態を再現可能にしている。ただし、実験の簡便のため、測定時の圧力は大気圧で行なった。
【0052】
図4に示すように蒸発速度測定装置50を組み立て、装置内を上記所定の温度に保つと、水槽51に蓄えられた水は徐々に気化して、ガス拡散電極58中を拡散して窒素流路56に到達し、窒素ガスと共に外部に排出される。そこで、所定時間毎に水位ゲージ54の水位を測定すれば、ガス拡散電極を通じて蒸発した水量を知ることができる。図5に示すように、横軸を測定時間、縦軸を蒸発水量としてグラフの傾きを求めれば、各ガス拡散電極について固有の蒸発速度を求めることができる。本実施例では、このようにして調べた蒸発速度をガス拡散電極の備える排水性の目安とした。
【0053】
図6は、上記した親水処理を行なう際に処理時間を変えることによって付着させるSiO2 量を変えたガス拡散電極について、蒸発速度測定装置50を用いてガス拡散性を比較した結果を表わす。燃料電池20は、図13の設定条件で運転することを目標としているが、この設定条件に従った空気過剰率2の場合には、親水処理を施すガス拡散電極の重さに対する付着させたSiO2 量の割合が0.5%以上のときに必要排水量を満たすようになることが分かる。ここで必要排水量とは、所定の出力で燃料電池が発電を行なったときに、電解質膜21のカソード23側で生成される水分子の量と、電解質膜21の内部でアノード22側からカソード23側にプロトンと共に移動してくる水分子の量との和を基に求めた量である。
【0054】
他方、付着させたSiO2 の量とガス拡散電極の抵抗値との関係について調べると、図7に示すように、SiO2 の割合が0.5%までは従来用いていたガス拡散電極と抵抗値があまり変わらないが、それ以上SiO2 を付着させると急激に抵抗値が上昇することが分かった。以上の結果から本実施例では、付着させるSiO2 の量を、ガス拡散電極の重量の0.5%としてカソード23を作製した。
【0055】
カソード23の作製の際には、用意したカーボンクロスに既述した親水処理を施して、カーボンクロス重量の0.5%のSiO2 を付着させ、さらに、従来用いていたガス拡散電極と同様に撥水カーボンの塗布を行なった。撥水カーボンの作製およびその塗布は以下のようにして行なう。まず、カーボン粉(ファーネスブラック、キャボット社製、商品名VALCAN XC72 )を、撥水性物質であるポリテトラフルオロエチレン(商品名テフロン、以下PTFEと呼ぶ)やポリエチレングリコールモノ−P−イソオクチルフェニルエーテル(以下、TritonX−100と呼ぶ)等の分散剤と共に水に懸濁してよく混ぜ合わせる。このとき、PTFEとカーボン粉とは等量を混ぜ合わせることとした。この懸濁液を吸引ろ過あるいは加圧ろ過することで、PTFEが表面に付着したカーボン粉を水から分離する。
【0056】
この時点で、PTFEが表面に付着したカーボン粉を280℃程度で処理して上記分散剤などを蒸発させ、撥水カーボンを作製してもよいが、この工程は省略することができる。以後、このような焼き付けの工程を省略したものも含めて、カーボンクロスの表面に塗布するために作製したカーボン粉とPTFEとの混合物を撥水カーボンと呼ぶことにする。このように作製した撥水カーボンは、エタノール中に懸濁し、超音波処理などによって均一に分散させたうえで、カーボンクロスの表面に塗布する。撥水カーボンは、カーボンクロスの両面のそれぞれに、分散剤などを除いた量で4mg/cm2 を塗布した。撥水カーボンの塗布後、カーボンクロスは約320℃で焼成する。この焼成の工程によって、PTEFは周囲のカーボンに結着し、エタノールと分散剤とは蒸発してカソード23が完成する。カーボンクロスに撥水カーボンを塗布する前に撥水カーボンの焼き付けを行なわない場合にも、最終的に焼成を行なうことでこのように分散剤を蒸発させることができる。
【0057】
このようにして作製したカソード23を用いて燃料電池20を組み立て、図13の設定条件に従って発電を行なったときの1A/cm2 定電流放電結果を、図8に符号dのグラフとして示す。カーボンクロスに0.5%重量のSiO2 を付着させる親水処理を施したうえで、その両面に上記撥水カーボンを4mg/cm2 の割合で塗布したカソード23を用いると、親水処理を行なわない従来のカソードを用いる場合(符号bのグラフ)や、既述した親水性の縦糸と疎水性の横糸とを編み込んだカソードを用いる場合(符号cのグラフ)に比べて、高い電圧を安定して得ることができた。
【0058】
本実施例の燃料電池20におけるカソード23での生成水および酸化ガスの移動の様子は、すでに図1で示した。カソード23は、カーボンクロスを親水処理してなる親水部60と、親水部60の電解質膜側の表面に撥水カーボンを塗布してなる電解質膜側撥水部62と、同じく親水部60のガス流路側の表面に撥水カーボンを塗布してなるガス流路側撥水部64とからなる。
【0059】
本実施例の燃料電池20によれば、カソード23を構成する電極基材に上記親水処理を施して親水部60を形成したために、カソード23側での電池反応で生じた生成水は、この親水部60に容易に吸収されるようになり、ガス拡散電極を通って酸化ガス流路25P側に蒸散することによって効果的に排水されるようになった。これによって、カソード23内に生成水が留まって凝縮し、ガスの流路を塞いでしまうことがなくなった。従って、ガス不足によって電池反応が低下してしまうことが防止され、安定した電圧の出力が可能になった。また、本実施例の燃料電池20によれば、カソード23の電解質膜21側の表面に撥水カーボンを塗布してなる電解質膜側撥水部62を形成しているため、電池反応で生じた生成水を弾いて電解質層21に押し戻すことが可能となっている。このように、生成水を電解質膜21に押し戻すことで電解質膜21の湿潤状態を保ち易くなり、電解質膜21の乾燥による電池抵抗の上昇を防止することができる。さらに、上記ガス流路側撥水部64を形成したことによって、蒸散され残った生成水が電極表面に留まってガスの拡散を妨げてしまうことを防止することができる。
【0060】
本実施例では、親水処理剤としてSiO2 を用いたが、この他にもTiO2 、In2O3、ZrO2、 Ta2O5などを用いることができる。このように電極基材に付着させる親水処理剤は、燃料電池20の動作を妨げず、カソード23の製造工程の条件や燃料電池20の運転条件に耐えるものの中から選べばよい。特に、この親水性物質が導電性を持たず、あるいは電池反応を阻害する作用を有する場合には、電極基材の親水化のために必要な量の親水化剤を付着させたときに、電池性能の低下が許容範囲内であることが望ましい。もとより、充分な導電性を有する親水化剤を用いれば、抵抗値の上昇を考慮することなく付着させる親水化剤の割合を決めることが可能となる。
【0061】
電極基材に対して施す親水処理として、上述したように、親水性を有する物質を電極基材の表面に付着させる場合には、この親水処理剤を含む液体中に電極基材を浸漬することによって容易に達成できる。また、電極基材の親水化の方法としてはこの他にも、電極基材を化学的に処理することによって、電極基材の表面的な化学的な構造を変化させて親水性を向上させる方法をとることもできる。この場合にも、上記処理を施すことによって電池性能の低下が生ずるならば、この電池性能の低下は親水処理によって得られる効果に比べて許容範囲内とすることが好ましい。
【0062】
また、本実施例では、撥水カーボンを作製するためにPTFEを用いたが、撥水性物質としては、ガス拡散電極の表面に撥水層を設けることによる抵抗値の上昇が許容範囲内である使用量で、充分な撥水性をカソード23に付加することができ、カーボン粉と均一に混ぜ合わせることが可能であって、カソード23の製作工程の条件や燃料電池20の運転条件に耐える物質であればよい。さらに本実施例では、分散剤としてTritonX−100を用いたが、他種の界面活性剤等を用いてもよく、カーボン粉と撥水性物質をが均一に分散するのを助けることができればよい。ただし、焼成などによって最終的に除去することが可能であることが望ましい。
【0063】
上記実施例では、カソード23の両面に等量の撥水カーボンを塗布したが、以下に説明する第2実施例では、電解質膜21側の撥水カーボン量を酸化ガス流路25P側の撥水カーボン量よりも多くしてカソード23aを形成した。カソード23aの各面に塗布する撥水カーボン量以外は、上記第1実施例と同様に燃料電池20aおよび燃料電池システム30aを構成した。第2実施例以下の説明では、燃料電池を構成する各部において、第1実施例と共通するカソード以外の部位については第1実施例と同様の符号を付すこととする。
【0064】
この第2実施例において、電解質膜21側の撥水カーボン量を酸化ガス流路25P側の撥水カーボン量よりも多くする際、電解質膜21側の撥水カーボン量を単に増加させたのでは、カソード23aの両面に塗布する撥水カーボン量の総量が多くなってしまう。撥水カーボンを構成するPTFEは導電性を持たないために、このような場合には電極抵抗が大きくなってしまい、電池性能が却って悪化する。そこで、第2実施例では、撥水カーボンの総量は第1実施例と同じにして、塗布する割合だけをカソード23aの両面で変えることとした。電解質膜21側には6mg/cm2 の割合で塗布し、酸化ガス流路25P側には2mg/cm2 の割合で塗布した。
【0065】
以上のように構成した燃料電池20aを用いて発電し、1A/cm2 定電流放電を行なった結果を、図8に符号eのグラフとして示す。カソード23の両面に等量の撥水カーボンを塗布した第1実施例の場合に比べて、高い電圧を安定して得ることができた。
【0066】
第2実施例の燃料電池20aにおけるカソード23aでは、電解質膜側撥水部62の含有する撥水性物質量をガス流路側撥水部64が含有する撥水性物質量に比べて多くなるよう形成しているため、第1実施例でカソード23を親水処理することで得られた効果に加えて、以下のような効果を奏する。すなわち、カソード23aにおいて電解質膜側撥水部62の撥水性が向上しているため、生成水が弾かれて電解質膜21に押し戻される作用が強まり、図1で電解質膜側に水を押し戻す矢印として表わした力がさらに強くなっている。そのため、電解質膜21の湿潤状態がさらに良好に維持されるようになり、電解質膜21の乾燥による電池抵抗の上昇を防止して高い電圧を得ることが可能となる。また、カソード23aにおいて、電解質膜側撥水部62の撥水性が向上して生成水が弾かれることによって、この部位でのガス拡散性がさらに向上し、電池反応が促進されて、より高い電圧を出力することが可能となった。もとより、撥水カーボンを作製する際に、PTFEの代わりに導電性を有する撥水性物質を用いるならば、カソード23aに塗布する撥水カーボンの総量を増やすことも可能である。
【0067】
また、第2実施例の燃料電池20aにおけるカソード23aは、第1実施例のカソード23に比べて酸化ガス流路25P側に塗布した撥水カーボン量が少ないため、酸化ガス流路25Pから供給される酸化ガスが透過し易くなり、電池性能が向上するという効果をも奏する。酸化ガス流路25P側に撥水カーボンを塗布することによって、生成水による水の膜が張ってガスの拡散が妨げられてしまうのを防止することができるが、同時に酸化ガス流路25P側に塗布した撥水カーボンは、酸化ガス流路25Pからのガスの拡散を妨げてもいる。生成水が生じる電解質膜21側では、既述したように撥水性を備えることでガスの拡散性が向上するが、乾燥ガスが加圧供給される酸化ガス流路25P側では、撥水カーボンの塗布は却ってガスの拡散を妨げている。第2実施例のカソード23aは、酸化ガス流路25P側において、過剰な生成水を弾く撥水性は維持しながら、撥水カーボンを減らしたことによって酸化ガスの拡散性を向上させることができた。
【0068】
このように第2実施例では、カソード23aの両面に塗布する撥水カーボンの割合を変えることによって電解質膜21側の撥水性を強化した。カソード23aにおいて電解質膜21側の撥水性を強化することによって、電解質膜21の乾き防止とカソード23aでのガス拡散性の向上を図り、出力電圧を上昇させることが可能であるが、上述したように、充分な導電性を有しない撥水性物質を用いる場合には電極抵抗の問題があるため、塗布する撥水カーボン量を増やして撥水性を強化する方法には限界がある。ここで、撥水カーボン量を増やす以外の方法で電極表面の撥水性を向上させるためには、撥水カーボン自身の撥水性を向上させる方法が考えられる。
【0069】
撥水カーボンの撥水性は、カーボン粉に付着させた撥水性物質(本実施例ではPTFE)によって与えられており、カーボン粉に付着させるPTFE量を増やすことによって撥水カーボンの撥水性を向上させることができる。しかし、このような場合には、撥水カーボンの総量を増やす場合と同じく導電性を持たないPTFEの量が増えるため、電極の抵抗値が大きくなって採用し難い。図9は、撥水カーボン中のPTFE量を変えてガス拡散電極を形成したときの、ガス拡散電極が示す抵抗値を測定した結果である。図9から分かるように、従来撥水カーボンを作製するときの条件であったPTFE量50%をこえてPTFE量を増やすと、ガス拡散電極の抵抗値は大きく上昇してしまう。
【0070】
撥水カーボン自身の撥水性を向上させる他の方法としては、撥水性物質を付着させるカーボン粉の撥水性を向上させることも考えられる。従来、撥水カーボンを作製するためのカーボン粉は、ファーネスブラックを用いてきた。抵抗値の大きさが許容範囲内で、ファーネスブラックよりも撥水性の強いカーボンを用いるならば、これまでよりも撥水カーボン自身の撥水性を向上できることになる。そこで、他のカーボン種であるアセチレンブラックおよび黒鉛化ブラックについて、導電性と撥水性とに関してファーネスブラックとの比較を行なった。
【0071】
まず、ファーネスブラック、アセチレンブラック、黒鉛化ブラックのそれぞれを用いて既述した実施例にならって撥水カーボンを作製し、それぞれの撥水カーボンをカーボンクロスに塗布して電極を作製した。これら各電極の抵抗値を測定すると、図10に示すように、いずれのカーボン種を用いて撥水カーボンを作製した場合にも抵抗値は大差なかった。なお、ここでは、いずれのカーボンを用いる場合にも、撥水カーボンの作製時に混合するPTFE量はカーボン量と等量とした。
【0072】
次に、これらのカーボン種について撥水性を比較した。各カーボンは、その構造中にいくらかの官能基を含んでいると考えられるが、親水性の官能基が多いほどカーボンの撥水性は低くなると考えられる。そこでまず、各カーボンが有する官能基の量の測定を行なった。図11は、逆滴定法によって各カーボンの官能基を測定した結果である。逆滴定法とは、試料に対して過剰となるように第1の標準液の既知量を加え、その後、この過剰分を第2の標準液で滴定して最終的に試料を定量する方法である。特に、試料と標準液との反応速度が遅い場合や、反応が平衡に達して進行し難くなる場合に有効である。ここでは、第1の標準液として水酸化ナトリウム溶液を用い、第2の標準液として塩酸溶液を用いた。このように、図11には酸性の官能基のみを測定した結果を示すが、主要な親水基であるカルボキシル基、フェノール基等は酸性であるため、親水性の目安となる。図11の結果から、アセチレンブラックおよび黒鉛化ブラックは、ファーネスブラックよりも撥水性が強いと予想される。
【0073】
また、図12では、種々の濃度のエタノールを滴下したときの接触角を測定することによって、各カーボンの撥水性を比較した。ここでは、各カーボンについて上記実施例に従って撥水カーボンを作製し、それぞれの撥水カーボンを表面に塗布したガス拡散電極を用意して、各々のガス拡散電極の上に種々の濃度のエタノールを滴下したうえでその状態を写真撮影して接触角を測定した。接触角とは、滴下した水滴表面と滴下された面とがなす角度のことであり、撥水性が強いほど水滴は強く弾かれるため接触角は大きくなる。ここで、撥水性を調べる際に水の代わりにエタノールを用いたが、エタノールは水よりも弾かれ易いという性質を有するので接触角が大きくなり、測定が容易で差異が分かりやすくなる。そこで、このように種々の濃度のエタノールを用いて評価を行なうこととした。図12の接触角の測定からも、アセチレンブラックおよび黒鉛化ブラックは、ファーネスブラックよりも撥水性が強いという結果が得られた。
【0074】
上記の結果より、従来用いてきたファーネスブラックよりも撥水性が強いと考えられるアセチレンブラックおよび黒鉛化ブラックを用いて撥水カーボンを作製し、燃料電池を組み立てた。アセチレンブラックよりなる撥水カーボンを塗布したカソード23bを備えた燃料電池20bと、黒鉛化ブラックよりなる撥水カーボンを塗布したカソード23cを備えた燃料電池20cとについて、1A/cm2 定電流放電を行なった結果を第3実施例として、図8に符号fおよび符号gのグラフとして示す。いずれの場合も、ファーネスブラックからなる撥水カーボンを用いた燃料電池20に比べて高い電圧を安定して得ることができた。もとより、これらカソード23bおよび23cでは、その電極基材は既述した親水処理が施されている。
【0075】
上記第3実施例の燃料電池20bおよび20cでは、電極表面に塗布する撥水カーボンの撥水性がさらに向上することによって、電池反応で生じた生成水がさらに押し戻され易くなり、押し戻された生成水は電解質膜21における乾燥気味の部位に速やかに伝えられるため、電解質膜21の湿潤状態がより一層良好に保持されるようになった。そのため、燃料電池の発電中に電解質膜21が乾燥して抵抗値が上昇することで電圧が降下してしまうのを防止することができる。また、撥水カーボンの撥水性がさらに向上したことで、カソード23bおよびカソード23cのガス拡散性が向上し、電池反応が促進されて、さらに高電圧を得ることができるようになった。
【0076】
以上のように、カソード23bおよび23cを形成する際、親水処理を施した電極基材上に撥水カーボンを塗布し、このとき特に、電解質膜21側の撥水性を強化することによって、図13に示した設定条件に従って酸化ガスを加湿せず空気過剰率も低い設定条件で発電を行なった場合にも、電解質膜21の湿潤状態を維持し、高いガス拡散性を実現することが可能となった。
【0077】
上記第1ないし第3実施例では、カソード23において、その両面に撥水カーボンを塗布する構成とした。酸化ガス流路24P側の面に塗布する撥水カーボンは、この酸化ガス流路24P側で生成水が凝結した場合にはこれを弾いて排水を促す。しかしながら、カソード23において、酸化ガス流路24P側に塗布した撥水カーボンがなくても燃料電池20の性能が許容範囲内である場合には、酸化ガス流路24P側には撥水カーボンを塗布しない構成としてもよい。ただし、カソード23を構成するカーボンクロスが、カーボン粉を塗布されないまま直接セパレータ25と接触する場合には、従来のカーボンクロスでは接触面積が足りず、集電不良となるおそれがある。そこで、酸化ガス流路24P側には撥水カーボンを塗布しない構成とする場合には、充分に織りの細かいカーボンクロスを用いるなどして集電性を確保することとすればよい。また、酸化ガス流路24P側には、撥水処理を施していないカーボン粉を塗布して集電性を確保することとしてもよい。このとき、撥水性の強いカーボン粉を用いるならば、集電性と共に所定の撥水性を付与することもできる。
【0078】
上記実施例では導電性を持たないPTFEをカーボン粉に付着させて撥水カーボンを作製し、この撥水カーボンを塗布することによってカソード23表面の撥水化を行なったが、もとより充分な導電性を有する撥水性物質を塗布してカソード23の表面の撥水性を向上させることとしてもよい。このような場合には、導電性を有する撥水性物質を直接ペースト化してカソード23表面に塗布することが可能となり、撥水性物質を導電性の担体に付着させる工程を省略することができる。
【0079】
上記第1ないし第3実施例では、アノード22は、従来用いてきたガス拡散電極と同様に、無処理のカーボンクロスの表面に撥水カーボンを塗布したものを用いた。第4実施例では、第3実施例で用いたカソード23cとともに、親水処理を施したアノード22dを用いて燃料電池20dを組み立てた。このアノード22dは、第1実施例のカソード22と同様に作製した。すなわち、カーボンクロスを親水化処理してSiO2 を0.5%の割合で付着させ、この親水処理したカーボンクロスの両面に、PTFEを付着させた撥水カーボンを各面4mg/cm2 の割合で塗布した。
【0080】
このような燃料電池20dを用いて発電を行ない、1A/cm2 の定電流放電を行なった結果を図8にグラフhとして示す。第3実施例の燃料電池20cを用いた場合よりも更に高い電圧で安定して発電を行なうことができた。ここで得られる電圧のレベルは、従来の親水処理を施さないガス拡散電極を用いた燃料電池を、図13に示した従来条件に従って運転したときに得られる電圧のレベルとほぼ同等である(図15参照)。
【0081】
第4実施例の燃料電池20dによれば、アノード22dの電極基材であるカーボンクロスに対してSiO2 を用いた親水処理を施したため、アノード22dは、燃料ガスとともに供給される水蒸気を効率よく吸収して通過させることができ、このように吸収した水蒸気を、電池反応が進むにつれて水を失いがちな電解質膜21に供給することができる。従って、燃料電池20dでは、電解質膜21の乾燥をさらに効果的に防止することが可能となる。
【0082】
また、本実施例の燃料電池20dでは、燃料ガス流路24Pにおいて水蒸気の凝縮が起こっても、燃料ガス流路24P側のアノード22d表面に塗布された撥水カーボンによって水滴が弾かれ、排水が促される。従って、燃料ガス流路24P側で水蒸気の凝縮が起こっても、アノード22dの表面で水の膜が張ってガスの拡散が妨げられるといったことがない。
【0083】
このように、第4実施例の燃料電池20dにおいては、アノード22dの基部に対しても親水化の処理を施すことによって、図13に示した設定条件に基づいて加湿度60%の燃料ガスをそのまま供給しても、電解質膜21の湿潤状態を充分に保つことが可能になった。
【0084】
第4実施例の燃料電池20dでは、カソードにおいては、第1ないし第3実施例と同じくその電極基部の親水性を強化すると共に電解質膜21側の撥水性を強化し、アノードにおいては、電極基部の親水性の強化を行なっている。これによって、図13の設定条件に基づいて発電を行なっても、従来用いてきた親水処理を施さない電極によって従来条件に従って発電を行なう場合とほぼ同等の電圧レベルを安定して得られるようになった。このように、第4実施例の燃料電池20dは、高い電圧を安定して出力するという優れた電池性能に加え、発電のために消費するエネルギ量が発電量の10%である設定条件に基づいた発電が可能になったことから、システム全体のエネルギ効率を大きく向上させることができるという優れた効果を奏する。
【0085】
この図13における設定条件は、燃料電池システム30において、発電のための消費エネルギが発電量の10%となるように設定したものであり、供給するガスの加湿を積極的には行なわないこととして空気過剰率を2としたが、消費エネルギ量が許容範囲であれば、燃料電池の発電条件は設定条件ほど厳しくする必要はない。所定範囲のエネルギを用いて燃料ガスや酸化ガスに対する加湿を行なってもよいし、空気過剰率を2以上の所定の値に設定してもよい。この場合にも、本発明の第1ないし第4実施例における効果を同様に得ることができ、出力電圧の上昇と安定化を図ることができる。例えば、発電のための消費エネルギが発電量の20%でも許容する場合には空気過剰率を3に設定することができるため、酸化ガスの供給量の増加によってガスの拡散性や生成水の排水性がさらに向上して電池性能の向上を図ることが可能になる。さらに、空気過剰率を3に設定する場合にも、ポンプ36よりもエネルギ効率の高い圧縮機を用いることによって、システム全体のエネルギ効率の低下を抑えることが可能である。
【0086】
第4実施例では、第3実施例で用いたカソード23cとともに、上記したアノード22dを用いることによって、図8に示すような効果を得ることができた。アノード22dを用いることによって得られた第4実施例での効果は、カソード側とは独立した効果である。従って、既述した第1または第2実施例で用いたカソード23、カソード23aあるいはカソード23bとともに上記アノード22dを用いた場合にも同様の効果がみられ、その場合には、図8に示した第1実施例や第2実施例の結果よりも高い電圧を得ることが可能になる。
【0087】
また、第4実施例では、アノード22dの両面に撥水カーボンを塗布する構成としたが、少なくとも片面においてはこの様な撥水カーボンの塗布は行なわない構成としてもよい。特に、電解質膜21と接する面では、カソード側のように生成水が生じることがないため、撥水性が電解質膜21の湿潤状態の維持に役立つことがない。撥水カーボンを塗布しない場合には、親水化した電極基材が直接電解質膜21と接することになり、この電極基材が吸収した水分を直接電解質膜21に与えることが可能となり、電解質膜21の湿潤性の維持においてはかえって有利となることがある。従って、電解質膜21と接する面では、撥水カーボンを塗布することによるガス拡散性の向上がなくなった場合の電池性能の低下が許容範囲内であるならば、撥水カーボンの塗布を行なわないこととすることができる。
【0088】
また、燃料ガス流路24P側の面では、撥水カーボンを塗布しない場合には、流路内で凝縮した水滴を親水化した電極基材が直接吸収して電解質膜21に供給することができるようになり、撥水カーボンによって水滴を弾いて排水を促す場合とは異なる効果が得られる。従って、燃料ガス流路24P側の面においても撥水カーボンの塗布を行なわないこととすることができる。このように、アノード22dの各表面に撥水性の領域を設けることは、電解質膜21の湿潤化やガス拡散性の維持において相反する効果を示すことがあるため、各面に撥水層を設けるかどうかは、電池の運転条件などに応じてそれぞれ適する条件を決めることとすればよい。
【0089】
ただし、撥水カーボンの塗布を行なわない場合には、上記実施例のようにカーボンクロスでガス拡散電極を構成すると接触面積が不足して集電性が不十分となるため、織りの細かいカーボンクロスを用いるなどして集電性を確保する必要がある。あるいは、撥水処理を行なわないカーボン粉を塗布して集電性を確保することもできる。さらに、アノード表面の親水性が強い方が有利な条件で燃料電池を運転する場合には、SiO2 等によって親水化処理したカーボン粉を塗布することで、電極表面の親水性を高めると共に集電性を確保してもよい。
【0090】
本実施例においては、固体高分子電解質型燃料電池について説明したが、その他、リン酸型燃料電池など、電極の濡れが問題となる他種の燃料電池の電極に対して本発明を適用しても同様の効果を奏することができる。
【0091】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池20におけるカソード23での生成水および酸化ガスの移動の様子を示す模式図である。
【図2】燃料電池システム30の構成を例示するブロック図である。
【図3】単セル28の構成を例示する断面模式図である。
【図4】ガス拡散電極の備える親水性を評価するための蒸発速度測定装置50の構成を示す説明図である。
【図5】蒸発速度測定装置50によって測定した蒸発水量と蒸発に要した時間との関係をグラフにした説明図である。
【図6】親水性物質の付着量とガス拡散電極の示す排水性との関係を示す説明図である。
【図7】親水性物質の付着量とガス拡散電極の抵抗値との関係を示す説明図である。
【図8】各実施例のガス拡散電極を用いて1A/cm2 定電流放電を行なった結果を示す説明図である。
【図9】ガス拡散電極を作製するときに付着させるPTFE量と電極抵抗との関係を示す説明図である。
【図10】撥水カーボン作製時に用いるカーボン種と、各撥水カーボンを塗布した電極の有する抵抗値との関係を示す説明図である。
【図11】各カーボン種の有する官能基量を定量した結果を表わす説明図である。
【図12】各カーボン種の備える撥水性を評価した結果を示す説明図である。
【図13】燃料電池を運転する際の条件を示す説明図である。
【図14】空気を加圧供給するためのポンプが消費するエネルギを示す説明図である。
【図15】従来の燃料電池について1A/cm2 定電流放電を行なった結果を示す説明図である。
【符号の説明】
20、20a、20b、20c、20d…燃料電池
21…電解質膜
22…アノード
22、22d…カソード
23、23a、23b、23c…カソード
24、25…セパレータ
24P…燃料ガス流路
25P…酸化ガス流路
26…集電板
28…単セル
30、30a…燃料電池システム
31…メタノールタンク
32…水タンク
34…改質器
36…ポンプ
37…調圧弁
38…給燃路
39…空気供給路
40…分岐空気路
41…排燃路
50…蒸発速度測定装置
51…水槽
52…窒素ボンベ
54…水位ゲージ
55…ヒータ
56…窒素流路
57…流量調節部
58…ガス拡散電極
60…親水部
62…電解質膜側撥水部
64…ガス流路側撥水部
Claims (8)
- 電解質層と、該電解質層を挟持するカソードおよびアノードを備える燃料電池において、
前記カソードは、親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を有する撥水層を形成してなる燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記撥水性物質は、導電性を有しない物質であり、
前記電解質層と接する側に形成された撥水層は、他面に形成された撥水層よりも前記撥水性物質を多く含有する
燃料電池。 - 前記撥水層は、前記撥水性物質と、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるカーボン粉とを混合した後、前記電極基材表面に塗布してなる請求項1または2記載の燃料電池。
- 前記アノードは、親水処理を施された電極基材よりなる請求項1ないし3記載の燃料電池。
- 所定の導電性とガス透過性とを備える燃料電池のカソード用電極において、
親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を備える撥水層を形成した燃料電池用電極。 - 請求項5記載の燃料電池用電極であって、
前記撥水性物質は、導電性を有しない物質であり、
前記電極基材の両面に形成されたそれぞれの撥水層は、互いに異なる量の前記撥水性物質を含有する
燃料電池用電極。 - 前記撥水層は、前記撥水性物質と、親水性を示す官能基の含有量が所定量以下であるカーボン粉とを混合した後、前記電極基材表面に塗布してなる請求項5または6記載の燃料電池用電極。
- 電解質層と該電解質層を挟持するカソードおよびアノードを備える燃料電池と、該燃料電池に燃料ガスおよび空気を、所定圧力および所定の空気過剰率で供給するガス供給手段と
を備えた燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池のカソードは、親水処理を施された電極基材の両面に、撥水性物質を有する撥水層を形成し、
前記ガス供給手段により供給される空気の空気過剰率を3以下としたこと
を特徴とする燃料電池システム。
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