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JP5614462B2 - 燃料電池用ガス拡散電極基材、膜電極接合体、および燃料電池 - Google Patents

燃料電池用ガス拡散電極基材、膜電極接合体、および燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に好適に用いられるガス拡散電極基材に関する。より詳しくは、耐フラッディング性、耐プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れ、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散電極基材に関する。
水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る固体高分子型燃料電池は、一般的に、セパレータ、ガス拡散電極基材、触媒層、電解質膜、触媒層、ガス拡散電極基材、セパレータを順に積層して構成される。ガス拡散電極基材にはセパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維などからなる電極基材が広く用いられている。
しかしながら課題として、(1)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水で電極基材が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、発電性能が低下する問題(以下、フラッディングと記載)、(2)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水でセパレータのガス流路(以下、流路と記載)が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、瞬間的に発電性能が低下する問題(以下、プラッギングと記載)(3)80℃以上の比較的高い温度で作動させる場合、水蒸気拡散により電解質膜が乾燥し、プロトン伝導性が低下する結果、発電性能が低下する問題(以下、ドライアップと記載)が知られている。これら(1)〜(3)の問題を解決するために多くの取り組みがなされている。
特許文献1では、電極基材の触媒層側にカーボンブラックおよび疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成したガス拡散電極基材が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、マイクロポーラス部が撥水性を有する小さな細孔構造を形成するため、液水のカソード側への排出が抑えられ、フラッディングが抑制される傾向にある。また、生成水が電解質膜側に押し戻される(以下、逆拡散と記載)ため、電解質膜が湿潤しドライアップが抑制される傾向にある。
特許文献2および特許文献3では、電極基材の両面にカーボンブラック、疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成したガス拡散電極基材を用いる燃料電池が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、セパレータ側のマイクロポーラス部が平滑で高い撥水性を有することにより、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが抑制される。また、触媒層側のマイクロポーラス部により生成水の逆拡散が促進され、加えてセパレータ側のマイクロポーラス部により水蒸気拡散が抑えられる結果、電解質膜が湿潤しドライアップが抑制される。
特許文献4では電極基材の触媒層側にカーボンブラックおよび疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成し、前記マイクロポーラス部が島状または格子状であるガス拡散電極基材が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、マイクロポーラス部のない空隙部分から反応ガスを触媒層へスムーズに供給できるとされている。
特開2000−123842号公報 特開平9−245800号公報 特開2008−293937号公報 特開2004−164903号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、フラッディング、ドライアップの抑制はまだ不十分であり、プラッギングは何ら改善されないという問題がある。
また、特許文献2や3に記載の技術には、セパレータ側のマイクロポーラス部により電極基材からセパレータへの排水が阻害されるため、フラッディングが顕著になるという問題がある。
また、特許文献4に記載の技術には、マイクロポーラス部のない空隙部分があるため生成水の逆拡散が不十分であり、ドライアップしやすいという問題を有している。さらに、マイクロポーラス部と触媒層との接触面が平滑でないために、接触電気抵抗が大きくなり、低温から高温にわたる発電性能が低下するという問題もある。
このような多くの技術が提案されているが、耐フラッディング性、耐プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れたガス拡散電極基材はまだ見出されていない。
そこで、本発明の目的は、耐フラッディング・プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れ、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散電極基材を提供することである。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、電極基材の両面にマイクロポーラス部を形成したガス拡散電極基材において、片面側のマイクロポーラス部の面積率を適度に小さく、反対面側のマイクロポーラス部の面積率を大きくすることにより、プラッギングおよびドライアップを抑制する効果を何ら損なうことなく、電極基材からの排水を阻害しないようにでき、耐フラッディング性を大幅に改善できることを見出した。これにより、耐フラッディング性、耐プラッキング性、耐ドライアップ性を両立し得るようになり、本発明を完成するに至った。
電極基材の片面側のマイクロポーラス部をマイクロポーラス部[A]、反対面側のマイクロポーラス部をマイクロポーラス部[B]と称する。
本発明のガス拡散電極基材は、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]がパターンを形成しているか、マイクロポーラス部[A]はマイクロポーラス部が電極基材の表面に多数設けられていることによって形成されてなるか、マイクロポーラス部[A]はランダムな形状であることを特徴とする。
ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
従来技術では両面ともにマイクロポーラス部の全面塗工しかなされておらず、両面のマイクロポーラス部を別々に制御して、耐フラッディング性、耐プラッギング性、耐ドライアップ性を両立するという考え方は見出されておらず、容易に導き出されるものではない。
また、本発明のガス拡散電極基材の製造方法は、次のような手段を採用するものである。すなわち、電極基材のマイクロポーラス部[B]を有する面とは反対の面にマイクロポーラス部[A]をスクリーン印刷またはグラビア印刷により形成することを特徴とする前記ガス拡散電極基材の製造方法である。
前記課題を解決するために、本発明の膜電極接合体は、電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側に前記燃料電池用ガス拡散電極基材を有し、本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体の両側にセパレータを有する。
すなわち、本発明は、以下の要素を具備するものである。
(1)マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]がパターンを形成していることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
(2)マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]はマイクロポーラス部が電極基材の表面に多数設けられていることによって形成されてなることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
(3)マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]はランダムな形状であることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
)マイクロポーラス部[A]が平均線幅0.1〜5mmの線状のマイクロポーラス部の集合体からなる、(1)〜(3)のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極基材。
)マイクロポーラス部[A]が、ストライプ状、あるいは格子状である、(1)または(2)に記載の燃料電池用ガス拡散電極基材。
)(1)〜()のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極基材の製造方法であって、マイクロポーラス部[A]がスクリーン印刷またはグラビア印刷により形成される、燃料電池用ガス拡散電極基材の製造方法。
)電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側にガス拡散電極基材を有する膜電極接合体であって、該ガス拡散電極基材の少なくとも一方が(1)〜()のいずれかに記載のガス拡散電極基材である、膜電極接合体。
)前記ガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]が前記触媒層に接する、()に記載の膜電極接合体。
)()に記載の膜電極接合体の両側にセパレータを有する、燃料電池。
本発明のガス拡散電極基材は、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]を有するため、耐プラッギング性および耐ドライアップ性が高く、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であるため電極基材からの排水性が良好であり、耐フラッディング性が高い。電極基材にはカーボンペーパーなどを用いることができるため本発明のガス拡散電極基材は機械強度、導電性、熱伝導性も良好である。本発明のガス拡散電極基材を用いると、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能である。
本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のマイクロポーラス部[A]のパターンの一態様である。 本発明のガス拡散電極基材の構成例を示す模式図(断面図)である。 本発明のガス拡散電極基材の構成例を示す模式図(マイクロポーラス部[A]側から見た鳥瞰図)である。 本発明のガス拡散電極基材の構成例を示す模式図(マイクロポーラス部[A]側から見た鳥瞰図)である。 本発明の膜電極接合体の構成例を示す模式図(断面図)である。 本発明において、特に好ましい膜電極接合体の構成例を示す模式図(断面図)である。 本発明の燃料電池の構成例を示す模式図(断面図)である。
本発明のガス拡散電極基材は、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で隣接して配置されてなる。以下、各構成要素について、説明する。なお、本発明において、カーボンペーパーなどのみからなり、マイクロポーラス部を設けない基材を「電極基材」と称し、電極基材にマイクロポーラス部を設けた基材を「ガス拡散電極基材」と称する。
まず、本発明の構成要素である電極基材について説明する。
本発明において、電極基材は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要である。このため、導電性を有し、平均細孔径が10〜100μmの多孔体を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、炭素繊維織物、炭素繊維抄紙体、炭素繊維不織布などの炭素繊維を含む多孔体、発砲焼結金属、金属メッシュ、エキスパンドメタルなどの金属多孔体を用いることが好ましい。中でも、耐腐食性が優れることから、炭素繊維を含む多孔体を用いることが好ましく、さらには、電解質膜の厚み方向の寸法変化を吸収する特性、すなわち「ばね性」に優れることから、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材、すなわち「カーボンペーパー」を用いることが好ましい。本発明において、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材は、通常、後述するように、炭素繊維の抄紙体に樹脂を含浸し炭素化することにより得られる。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。なかでも、機械強度に優れることから、PAN系、ピッチ系炭素繊維が本発明において好ましく用いられる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均直径が3〜20μmの範囲内であることが好ましく、5〜10μmの範囲内であることがより好ましい。平均直径が3μm以上であると、細孔径が大きくなり排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。一方、平均直径が20μm以下であると、水蒸気拡散性が小さくなり、ドライアップを抑制することができる。また、異なる平均直径を有する2種類以上の炭素繊維を用いると、電極基材の表面平滑性を向上できるために好ましい。
ここで、炭素繊維における単繊維の平均直径は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その直径を計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均長さが3〜20mmの範囲内にあることが好ましく、5〜15mmの範囲内にあることがより好ましい。平均長さが3mm以上であると、電極基材が機械強度、導電性、熱伝導性が優れたものとなり好ましい。一方、平均長さが20mm以下であると、抄紙の際の炭素繊維の分散性が優れ、均質な電極基材が得られるために好ましい。かかる平均長さを有する炭素繊維は、連続した炭素繊維を所望の長さにカットする方法などにより得られる。
ここで、炭素繊維の平均長さは、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その長さを計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。なお、炭素繊維における単繊維の平均直径や平均長さは、通常、原料となる炭素繊維についてその炭素繊維を直接観察して測定されるが、電極基材を観察して測定しても良い。
本発明において、電極基材の密度が0.2〜0.4g/cmの範囲内であることが好ましく、0.22〜0.35g/cmの範囲内であることがより好ましく、さらには0.24〜0.3g/cmの範囲内であることが好ましい。密度が0.2g/cm以上であると、水蒸気拡散性が小さく、ドライアップを抑制することができる。また、電極基材の機械特性が向上し、電解質膜、触媒層を十分に支えることができる。加えて、導電性が高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能が向上する。一方、密度が0.4g/cm以下であると、排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。かかる密度を有する電極基材は、後述する製法において、予備含浸体における炭素繊維目付、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量、および、電極基材の厚さを制御することにより得られる。なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に、樹脂組成物を含浸したものを「予備含浸体」と記載する。なかでも、予備含浸体における炭素繊維目付、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を制御することが有効である。ここで、予備含浸体の炭素繊維目付を小さくすることにより低密度の基材が得られ、炭素繊維目付を大きくすることにより高密度の基材が得られる。また、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を小さくすることにより低密度の基材が得られ、樹脂成分の配合量を大きくすることにより高密度の基材が得られる。また、電極基材の厚さを大きくすることにより低密度の基材が得られ、厚さを小さくすることにより高密度の基材が得られる。
ここで、電極基材の密度は、電子天秤を用いて秤量した電極基材の目付(単位面積当たりの質量)を、面圧0.15MPaで加圧した際の電極基材の厚みで除して求めることができる。
本発明において、電極基材の細孔径が30〜80μmの範囲内であることが好ましく、40〜75μmの範囲内であることがより好ましく、さらには50〜70μmの範囲内であることが好ましい。細孔径が30μm以上であると、排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。細孔径が80μm以下であると、導電性が高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能が向上する。かかる細孔径の範囲に設計するには、単繊維の平均直径が3μm以上8μm以下である炭素繊維と、単繊維の平均直径が8μmを越える炭素繊維の両方を含むことが有効である。
ここで、電極基材の細孔径は、水銀圧入法により、測定圧力6kPa〜414MPa(細孔径30nm〜400μm)の範囲で測定して得られる細孔径分布のピーク径を求めたものである。なお、複数のピークが現れる場合は、最も高いピークのピーク径を採用する。測定装置としては、島津製作所社製オートポア9520、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明において、電極基材の厚さは60〜200μmであることが好ましい。より好ましくは70〜160μmであり、さらに好ましくは80〜110μmである。電極基材の厚みが60μm以上であると、機械強度が高くなりハンドリングが容易となる。200μm以下であると、電極基材の断面積が小さくなり、セパレータ流路の液水を流すガス量が多くなるため、プラッギングを抑制することができる。また、排水のためのパスが短くなり、フラッディングを抑制することができる。
ここで、電極基材の厚さは、面圧0.15MPaで加圧した状態で、マイクロメーターを用いて求めることができる。
次に、本発明の構成要素であるマイクロポーラス部[A]、[B]について説明する。
マイクロポーラス部[A]および[B]は、図11のように、電極基材の両側にそれぞれ設けられる。本発明では、電極基材の全面がマイクロポーラス部によって覆われる必要はない。つまり、図13や図14に示すように、電極基材の表面の少なくとも一部がマイクロポーラス部で覆われていれば良い。ここで、マイクロポーラス部とは、内部に孔を有する多孔質体を指す。図13や図14では、このようなマイクロポーラス部が電極基材の表面に多数設けられることによって、マイクロポーラス部[A]形成されている。もちろん、マイクロポーラス部[B]も、後述の面積率の数値範囲を満足する限り、図13や図14のような態様を採っても良い。
マイクロポーラス部[A]は、その面積率が5〜70%の範囲内、マイクロポーラス部[B]は、その面積率が80〜100%の範囲内である必要がある。ここで、面積率とは、ガス拡散電極基材の片表面における、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)を指し、次式により算出する。
面積率(%)=マイクロポーラス部で覆われている面積/電極基材の面積×100
ここで面積率は、例えば、次の手順にしたがって求めることができる。
まず、ガス拡散電極基材の片表面をデジタルカメラ、デジタルマイクロスコープなどで写真撮影を行い、画像を得る。ここで、デジタルマイクロスコープとしては、キーエンス(株)製デジタルHDマイクロスコープVH−7000、あるいはその同等品を用いることができる。ガス拡散電極基材から無作為に異なる10箇所を選び、各々3cm×3cm程度の範囲で写真撮影を行うことが好ましい。次に、得られた画像を用い、マイクロポーラス部で覆われている部分と、マイクロポーラス部で覆われていない部分とに二値化する。二値化の方法は様々あり、マイクロポーラス部で覆われている部分とマイクロポーラス部で覆われていない部分とを明確に判別できる場合は目視にて判別する方法を採用しても良いが、本発明においては画像処理ソフトなどを用いる方法を採用することが好ましい。ここで、画像処理ソフトとしては、Adobe System社製Adobe Photoshop(登録商標)を用いることができる。それぞれの画像で、電極基材の面積(マイクロポーラス部で覆われている部分と、マイクロポーラス部で覆われていない部分の面積の和)に対するマイクロポーラス部で覆われた面積の割合(%)を算出し、その平均値を求める。
一方、ガス拡散電極基材を用いて、膜電極接合体などの状態にした後に測定する場合は、面積率は次の手順にしたがって求めることができる。まず、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、ガス拡散電極基材断面から無作為に異なる100箇所を選び、各々40倍程度で拡大して写真撮影を行い、画像を得る。ここで、走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいは同等品を用いることができる。次に、得られた画像を用い、それぞれの画像で、マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の各々に対して、電極基材表面がマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)を計測し、その平均値を求める。
マイクロポーラス部[A]は、その面積率が5〜70%であることにより、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングを抑制することができる。同時に、その面積率が小さいため、面直ガス拡散、排水を阻害しないようにでき、耐フラッディング性を大幅に改善できる。マイクロポーラス部[A]の面積率は10〜60%であることがより好ましく、20〜40%であるとさらに好ましい。マイクロポーラス部[A]の面積率が70%以下であると、マイクロポーラス部[A]が電極基材の表面を覆う割合が高すぎず、面直ガス拡散性と排水性が確保され、フラッディングが抑制できる。マイクロポーラス部[A]の面積率が5%以上であると、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが抑制できるとともに、生成水の逆拡散が促進されるためドライアップも抑制される。
マイクロポーラス部[B]は、その面積率が80〜100%であることにより、生成水の逆拡散を促進できるためドライアップを抑制できる。また、ガス拡散電極基材を用いて膜電極接合体を構成し、さらに当該膜電極接合体を用いて燃料電池を構成した際に、ガス拡散電極基材と触媒層もしくはセパレータとの間の接触面積が大きくなり、接触電気抵抗を低減することができる。マイクロポーラス部[B]によって、電極基材の表面凹凸が覆われ平滑となるためである。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]は、炭素質粉末と疎水性樹脂を用いてなることが好ましい。換言すれば、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]を構成するマイクロポーラス部は、炭素質粉末と疎水性樹脂を用いてなることが好ましい。炭素質粉末としては例えばカーボンブラック、黒鉛粉、カーボンナノファイバー、炭素繊維ミルドファイバーなどが挙げられる。そのなかでも、取り扱いのしやすさからカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの分類にはファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが含まれる。疎水性樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B](ならびに、それらを構成するマイクロポーラス部)は、炭素質粉末100質量部に対して、疎水性樹脂が1〜70質量部配合されることが好ましく、5〜60質量部配合されることがより好ましい。疎水性樹脂の配合量が1質量部以上であると、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]が機械強度の優れたものとなり好ましい。一方、70質量部以下であるとマイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
マイクロポーラス部[A]の厚さは1〜20μmの範囲内であることが好ましく、8〜16μmであることがより好ましい。1μm以上であると、マイクロポーラス部[A]の表面が平滑となり、燃料電池のガス拡散電極基材としてマイクロポーラス部[A]をセパレータ側に向けて使用した際に、セパレータとガス拡散電極基材との接触電気抵抗の低減が可能となる。また、20μm以下であると、マイクロポーラス部[A]の電気抵抗を小さくできるため好ましい。マイクロポーラス部[B]は厚さが1〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。1μm以上であることで、生成水の逆拡散の促進が顕著となり、さらには、マイクロポーラス部[A]の表面が平滑となり、燃料電池のガス拡散電極基材としてマイクロポーラス部[B]を触媒層側に向けて使用した際に、触媒層とガス拡散電極基材との接触電気抵抗の低減が可能となる。50μm以下であることで、マイクロポーラス部[B]の電気抵抗を小さく抑えられるようになるため好ましい。
マイクロポーラス部[A]は、マイクロポーラス部[B]と同じ組成のものを用いても良いし、別の組成にしても良い。マイクロポーラス部[A]を別の組成にする場合、具体的には、カーボンブラックの粒子径をマイクロポーラス部[B]のものよりも小さくしたり、疎水性樹脂の配合量を多くしたり、熱硬化性樹脂を加えるなどして、マイクロポーラス部[A]をマイクロポーラス部[B]よりも緻密にすることが好ましい。具体的には、マイクロポーラス[A]の空隙率をマイクロポーラス部[B]よりも小さくすることが好ましい。これにより、マイクロポーラス部[A]の面積率を小さくしても、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングを抑制するとともに、電極基材からの排水を阻害しないようにでき、耐フラッディング性を改善することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明におけるマイクロポーラス部[A]の好ましい態様を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の一つの態様では、マイクロポーラス部[A]はパターンを形成している。本発明において、パターン様もしくはパターンとは一定周期で繰り返される模様のことである。100cm以下の面積の中に繰り返し周期があることが好ましく、10cm以下の面積の中に繰り返し周期があることがより好ましい。周期が小さいことで、導電性や排水性などの面内の性能ばらつきを小さくすることができる。ガス拡散電極基材を複数枚作成した場合は、シート間で比較して周期の有無を確認してもよいものとする。パターンとしては、格子、ストライプ、同心円、島状などがあり、例えば図1〜11に示すようなものが挙げられる(図1〜11において、黒色の部分はマイクロポーラス部が設けられて部分を示し、白色の部分はマイクロポーラス部が設けられていない部分を示す)。また、セパレータの流路が図3の白色部分のようなパターンであるとき、マイクロポーラス部[A]は図3の黒色部分のような、セパレータのリブ部分に対応するパターンであることが好ましい。リブ部分に対応するようなパターンを有するマイクロポーラス部[A]が、電極基材上に配置されることで、流路から隣の流路へのパスカットの効果を大きくすることができ、耐プラッギング性が向上する。
また、本発明の他の態様では、マイクロポーラス部[A]はランダムな形状を有している。
マイクロポーラス部[A]は平均線幅0.1〜5mmの線状のマイクロポーラス部の集合体からなることが好ましく、0.1〜2mmの線状のマイクロポーラス部の集合体からなることがより好ましく、さらには0.1〜1mmの線状のマイクロポーラス部の集合体からなることが好ましい。本発明において、線とは幅が0.1mm以上でアスペクト比が2以上のものを指す。ここで、アスペクト比とは、線の長さ(mm)と幅(mm)の比([線の長さ]/[線の幅])を言う。マイクロポーラス部[A]として、平均線幅0.1〜5mmの線状のマイクロポーラス部の集合体を用いることで、プラッギング抑制効果の面内ばらつきを小さくすることができる。線幅が0.1mm以上であると、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングを抑制する効果が高くなる。平均線幅が5mm以下であると、面内の導電性や排水性のばらつきを小さくすることができる。線の集合体のなかでも、格子状もしくはストライプ状であることが好ましい。本発明において、「格子」とは線の集合体であって、線が交差している部分(交点)を有する模様のことを指し、「ストライプ」とは線の集合体で線が互いに交わらない模様のことを指す。格子の中でも、線が直線であり、かつ、交差角度が90度であるものが、ガス拡散電極基材の面内の性能のばらつきを小さく抑えることができるため特に好ましい。また、交点の数が1cmあたり10個以上の場合は、前記ばらつきを大きく低減できるためさらに好ましい。ストライプの中でも、線が直線であるものが、ガス拡散電極基材の面内の性能のばらつきを小さく抑えることができるため特に好ましい。
つまり、本発明では、マイクロポーラス部[A]は、電極基材上において、マイクロポーラス部のパターンを形成していることが好ましく、当該パターンの形状は、上述した格子状やストライプ状であることが特に好ましい。
次に、本発明のガス拡散電極基材を得るに好適な方法について具体的に説明する。
<抄紙体、および抄紙体の製造方法>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体を得るためには、炭素繊維を液中に分散させて製造する湿式抄紙法や、空気中に分散させて製造する乾式抄糸法などが用いられる。なかでも、生産性が優れることから、湿式抄紙法が好ましく用いられる。
本発明において、電極基材の排水性、ガス拡散性を向上する目的で、炭素繊維に有機繊維を混合して抄紙することができる。有機繊維としては、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維などを用いることができる。
また、本発明において、抄紙体の形態保持性、ハンドリング性を向上する目的で、バインダーとして有機高分子を含むことができる。ここで、有機高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロースなどを用いることができる。
本発明における抄紙体は、面内の導電性、熱伝導性を等方的に保つという目的で、炭素繊維が二次元平面内にランダムに分散したシート状であることが好ましい。
抄紙体で得られる細孔径分布は、炭素繊維の含有率や分散状態に影響を受けるものの、概ね20〜500μm程度の大きさに形成することができる。
本発明において、抄紙体は、炭素繊維の目付が10〜60g/mの範囲内にあることが好ましく、20〜50g/mの範囲内にあることがより好ましい。炭素繊維の目付が10g/m以上であると、電極基材が機械強度の優れたものとなり好ましい。60g/m以下であると、電極基材がガス拡散性と排水性の優れたものとなり好ましい。なお、抄紙体を複数枚張り合わせる場合は、張り合わせ後の炭素繊維の目付が上記の範囲内にあることが好ましい。
ここで、電極基材における炭素繊維目付は、10cm四方に切り取った抄紙体を、窒素雰囲気下、温度450℃の電気炉内に15分間保持し、有機物を除去して得た残瑳の重量を、抄紙体の面積(0.1m)で除して求めることができる。
<樹脂組成物の含浸>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸する方法として、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法、樹脂組成物を含む溶液を抄紙体に塗布する方法、樹脂組成物からなるフィルムを抄紙体に重ねて転写する方法などが用いられる。なかでも、生産性が優れることから、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法が好ましく用いられる。
本発明に用いる樹脂組成物は、焼成時に炭化して導電性の炭化物となるものが好ましい。樹脂組成物は、樹脂成分に溶媒などを必要に応じて添加したものをいう。ここで、樹脂成分とは、熱硬化性樹脂などの樹脂を含み、さらに、必要に応じて炭素系フィラー、界面活性剤などの添加物を含むものである。
本発明において、より詳しくは、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の炭化収率が40質量%以上であることが好ましい。炭化収率が40質量%以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性に優れたものとなり好ましい。
本発明において、樹脂成分を構成する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。なかでも、炭化収率が高いことから、フェノール樹脂が好ましく用いられる。また、樹脂成分に必要に応じて添加する添加物としては、電極基材の機械特性、導電性、熱伝導性を向上する目的で、炭素系フィラーを含むことができる。ここで、炭素系フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のミルドファイバー、黒鉛などを用いることができる。
本発明にて用いられる樹脂組成物は、前述の構成により得られた樹脂成分をそのまま使用することもできるし、必要に応じて、抄紙体への含浸性を高める目的で、各種溶媒を含むことができる。ここで、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。
本発明における樹脂組成物は、25℃、0.1MPaの状態で液状であることが好ましい。液状であると抄紙体への含浸性が優れ、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性に優れたものとなり好ましい。
本発明において、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分を30〜400質量部含浸することが好ましく、50〜300質量部含浸することがより好ましい。樹脂成分の含浸量が30質量部以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、樹脂成分の含浸量が400質量部以下であると、電極基材がガス拡散性の優れたものとなり好ましい。
<貼り合わせ、熱処理>
本発明においては、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した予備含浸体を形成した後、炭素化を行うに先立って、予備含浸体の張り合わせや、熱処理を行うことができる。
本発明において、電極基材を所定の厚みにする目的で、予備含浸体の複数枚を貼り合わせることができる。この場合、同一の性状を有する予備含浸体の複数枚を張り合わせることもできるし、異なる性状を有する予備含浸体の複数枚を貼り合わせることもできる。具体的には、炭素繊維の平均直径、平均長さ、抄紙体の炭素繊維目付、樹脂成分の含浸量などが異なる複数の予備含浸体を貼り合わせることもできる。
本発明において、樹脂組成物を増粘、部分的に架橋する目的で、予備含浸体を熱処理することができる。熱処理する方法としては、熱風を吹き付ける方法、プレス装置などの熱板にはさんで加熱する方法、連続ベルトにはさんで加熱する方法などを用いることができる。
<炭素化>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化するために、不活性雰囲気下で焼成を行う。かかる焼成は、バッチ式の加熱炉を用いることもできるし、連続式の加熱炉を用いることもできる。また、不活性雰囲気は、炉内に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを流すことにより得ることができる。
本発明において、焼成の最高温度が1300〜3000℃の範囲内であることが好ましく、1700〜3000℃の範囲内であることがより好ましく、さらには、1900〜3000℃の範囲内であることが好ましい。最高温度が1300℃以上であると、樹脂成分の炭素化が進み、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、最高温度が3000℃以下であると、加熱炉の運転コストが低くなるために好ましい。
本発明において、焼成にあたっては、昇温速度が80〜5000℃/分の範囲内であることが好ましい。昇温速度が80℃以上であると、生産性が優れるために好ましい。一方、5000℃以下であると、樹脂成分の炭素化が緩やかに進み緻密な構造が形成されるため、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化したものを、「炭素繊維焼成体」と記載する。
<撥水加工>
本発明において、排水性を向上する目的で、炭素繊維焼成体に撥水加工を施すことが好ましい。撥水加工は、炭素繊維焼成体に疎水性樹脂を塗布、熱処理することにより行うことができる。疎水性樹脂の塗布量は、炭素繊維焼成体100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましい。疎水性樹脂の塗布量が1質量部以上であると、電極基材が排水性に優れたものとなり好ましい。一方、50質量部以下であると、電極基材が導電性の優れたものとなり好ましい。
なお、本発明において、炭素繊維焼成体は「電極基材」に当たる。上述のとおり、炭素繊維焼成体は、必要に応じて、撥水加工が施こされるが、本発明では、撥水加工が施こされた炭素繊維焼成体も「電極基材」に当たるものとする(撥水加工が施されない炭素繊維焼成体は、当然に「電極基材」に当たる)。
<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>
マイクロポーラス部[A]は、電極基材の片面に、上述した撥水加工で用いた疎水性樹脂と、炭素質粉末との混合物であるカーボン塗液[A]を塗布することによって形成し、マイクロポーラス部[B]は、電極基材のもう一方の片面に、上述した撥水加工で用いた疎水性樹脂と、炭素質粉末との混合物であるカーボン塗液[B]を塗布することによって形成することができる。カーボン塗液[A]とカーボン塗液[B]は同じ種類のものであっても、異なる種類のものであっても良い。
それにより、本発明のガス拡散電極基材は、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなることになる。
カーボン塗液[A]およびカーボン塗液[B]は水や有機溶媒などの分散媒を含んでも良いし、界面活性剤などの分散助剤を含んでもよい。分散媒としては水が好ましく、分散助剤にはノニオン性の界面活性剤を用いるのがより好ましい。
カーボン塗液の電極基材への塗工は、市販されている各種の塗工装置を用いて行うことができる。塗工方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗工、バー塗工、ブレード塗工などが使用できるが、マイクロポーラス部[A]を形成するためのパターン塗工にはスクリーン印刷(ロータリースクリーン印刷を含む)やグラビア印刷が好ましい。つまり、本発明では、マイクロポーラス部[A]がスクリーン印刷またはグラビア印刷により形成されることが好ましい。なかでもスクリーン印刷は他の方法よりも電極基材にカーボン塗液[A]を多量に塗工でき、量の調整も行いやすいため好ましい。電極基材へカーボン塗液[A]をスクリーン印刷でパターン塗工を行う際は、スクリーン印刷版上に感光性塗料を塗工し、所望するパターン以外の部分を硬化させ、未硬化のパターン部分の樹脂を除去することでパターンを有するスクリーン印刷版を作製し塗工を行う。
スクリーン印刷のなかでも電極基材にカーボン塗液[A]を連続的に塗工できることから、塗工方法としては、ロータリースクリーン印刷が好ましい。
ロータリースクリーン版のメッシュ、開口率、口径、厚さは、用いるカーボン塗液[A]の粘度特性に合わせて、適宜選択される。
ロータリースクリーン印刷では、印刷速度は0.5〜15m/minが好ましい。印刷速度が0.5m/min以上であることで、生産性が向上し、ガス拡散電極基材のコスト低減が可能となる。また、15m/min以下であることで、印刷精度が向上する。
一方、カーボン塗液[B]の塗工には、電極基材の表面粗さによらず塗工量の定量化を図ることができるため、ダイコーター塗工が好ましい。
以上に例示した塗工方法はあくまでも例示のためであり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の形成方法としては、電極基材の片面を所定のカーボン塗液で塗工して塗工物を得て、当該塗工物を、80〜120℃の温度で塗液を乾かす方法が好ましい。
すなわち、塗工物を、80〜120℃の温度に設定した乾燥器に投入し、5〜30分の範囲で乾燥することが好ましい。乾燥風量は適宜決めればよいが、急激な乾燥は、表面の微小クラックを誘発する場合があるので望ましくない。乾燥後の塗工物は、マッフル炉や焼成炉または高温型の乾燥機に投入し、300〜380℃にて5〜20分間加熱して、疎水性樹脂を溶融し、炭素質粉末同士をバインダーとして、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]を形成することが好ましい。
<膜電極接合体>
本発明の膜電極接合体は、電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに当該触媒層の外側(両方の外側)にガス電極基材を有する膜接合体であって、当該ガス電極基材の少なくとも一方が、上述のガス電極基材である。本発明の膜電極接合体の構成例を図15に示す。このように、本発明において、前記したガス拡散電極基材を、両面に触媒層を有する固体高分子電解質膜の少なくとも片面に接合することで膜電極接合体を構成することができる。また、本発明の膜電極接合体において、触媒層の両外側に設けられるガス電極基材の両方が上述の本発明のガス電極基材であることが特に好ましい。
また、本発明の膜電極接合体において、触媒層側にマイクロポーラス部[B]を配置する、つまり、マイクロポーラス部[B]が触媒層と接するように、膜電極接合体を構成することが好ましい。ガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]が触媒層に接する構成例を図16に示す。
面積率が大きいマイクロポーラス部[B]が電解質膜側にあることで、より生成水の逆拡散が起こりやすくなるのに加え、面積率が小さいマイクロポーラス部[A]がセパレータ側に有ることで電極基材からの排水が阻害されずフラッディングを抑制できる。つまり、マイクロポーラス部[B]がセパレータ側にある場合はガス拡散電極基材からの排水性が低下するためマイクロポーラス部[A]をセパレータ側に配置することが好ましい。また、マイクロポーラス部の面積率が大きいマイクロポーラス部[B]が触媒層側に配置されることで、触媒層とガス拡散電極基材の接触面積が増大し、接触電気抵抗を低減することができる。
また、本発明の膜電極接合体において、触媒層の両外側に設けられるガス拡散電極基材の両方が上述の本発明のガス拡散電極基材であることが好ましく、両方のガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]が共に触媒層に接していることが特に好ましい。
<燃料電池>
本発明の燃料電池は、上述の膜接合体の両側にセパレータを有するものである(本発明の燃料電池の構成例を図16に示す)。すなわち、上述の膜電極接合体の両側にセパレータを有することで燃料電池を構成する。通常、かかる膜電極接合体の両側にガスケットを介してセパレータで挟んだものを複数個積層することによって固体高分子型燃料電池を構成する。触媒層は、固体高分子電解質と触媒担持炭素を含む層からなる。触媒としては、通常、白金が用いられる。アノード側に一酸化炭素を含む改質ガスが供給される燃料電池にあっては、アノード側の触媒としては白金およびルテニウムを用いるのが好ましい。固体高分子電解質は、プロトン伝導性、耐酸化性、耐熱性の高い、パーフルオロスルホン酸系の高分子材料を用いるのが好ましい。かかる燃料電池ユニットや燃料電池の構成自体は、よく知られているところである。
なお、本発明の燃料電池において、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]は触媒層に接していることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた電極基材、および、ガス拡散電極基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
<電極基材の作製>
東レ(株)製ポリアクリルニトリル系炭素繊維“トレカ(登録商標)”T300(平均炭素繊維径:7μm)を平均長さ12mmにカットし、水中に分散させて湿式抄紙法により連続的に抄紙した。さらに、バインダーとしてポリビニルアルコールの10質量%水溶液を当該抄紙に塗布し、乾燥させ、炭素繊維目付15.5g/mの抄紙体を作製した。ポリビニルアルコールの塗布量は、抄紙体100質量部に対して、22質量部であった。
熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を1:1の重量比で混合した樹脂、炭素系フィラーとして鱗片状黒鉛(平均粒径5μm)、溶媒としてメタノールを用い、熱硬化性樹脂/炭素系フィラー/溶媒=10質量部/5質量部/85質量部の配合比でこれらを混合し、超音波分散装置を用いて1分間撹拌を行い、均一に分散した樹脂組成物を得た。
15cm×12.5cmにカットした抄紙体をアルミバットに満たした樹脂組成物に浸漬し、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂+炭素系フィラー)が130質量部となるように含浸させた後、100℃で5分間加熱して乾燥させ、予備含浸体を作製した。次に、平板プレスで加圧しながら、180℃で5分間熱処理を行った。なお、加圧の際に平板プレスにスペーサーを配置して、熱処理後の予備含浸体の厚さが130μmになるように上下プレス面板の間隔を調整した。
予備含浸体を熱処理した基材を、加熱炉において、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、炭素繊維焼成体を得た。
炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFE樹脂を付与し、100℃で5分間加熱して乾燥させ、厚さ100μmの電極基材を作製した。
<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>
マイクロポーラス部[A]を形成するために、パターン部分以外を樹脂でマスクしたスクリーン印刷版を用いて電極基材の一方の面(A面)にパターン様のカーボン塗液部を形成した。ここで用いたカーボン塗液には、カーボンブラックとしてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製“デンカブラック(登録商標)”)、PTFE樹脂(ダイキン工業株式会社製“ポリフロン(登録商標)”D−1E)、界面活性剤(ナカライテスク株式会社製“TRITON(登録商標)”X−100)、精製水を用い、カーボンブラック/PTFE樹脂/界面活性剤/精製水=7.7質量部/2.5質量部/14質量部/75.8質量部の配合比でこれらを混合したものを用いた。パターン様のカーボン塗液部を形成した電極基材を120℃で10分間加熱した後、マイクロポーラス部[B]を形成するために、パターン様のカーボン塗液部を有する面(A面)の反対側に、コーター(ダイコーター)を用いて前記カーボン塗液を塗工し、120℃で10分間加熱した。加熱した塗工物を380℃で10分間加熱して、電極基材の表面にマイクロポーラス部[A]を有し、もう一方の面にマイクロポーラス部[B]を有するガス拡散電極基材を作製した。
換言すると、電極基材にカーボン塗液を塗布し、これを加熱することによってマイクロポーラス部が形成されるので、マイクロポーラス部[A]が所望のパターンを形成するように、電極基材の一方の表面(A面)にカーボン塗液を塗布した。すわなち、電極基材上においてマイクロポーラス部が形成される部分にはカーボン塗液が塗布されるように、一方、電極基材上においてマイクロポーラス部が形成されない部分にはカーボン塗液が塗布されないように、スクリーン印刷版を用いて、電極基材上にカーボン塗液が塗布した。より具体的には、電極基材上においてマイクロポーラス部が形成されない部分にはカーボン塗液が塗布されないように、その一部が樹脂で覆われた(マスクされた)スクリーン印刷版を用いた。塗布後、カーボン塗液を加熱した。続いて、電極基材のもう一方の表面(B面)にカーボン塗液を塗布した(なお、マイクロポーラス部[B]にもパターンを形成する場合には、上述のマイクロポーラス部[A]の形成法と同じ方法を採ることができる)。塗布後、これを加熱し、電極基材の一方の表面にマイクロポーラス部[A]を有し、もう一方の表面(B面)にマイクロポーラス部[B]を有するガス拡散電極基材を作製した。
<固体高分子型燃料電池の発電性能評価>
白金担持炭素(田中貴金属工業(株)製、白金担持量:50質量%)1.00g、精製水 1.00g、“Nafion(登録商標)”溶液(Aldrich社製 “Nafion(登録商標)”5.0質量%)8.00g、イソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)18.00gを順に加えることにより、触媒液を作成した。
次に7cm×7cmにカットした “ナフロン(登録商標)”PTFEテープ“TOMBO(登録商標)”No.9001(ニチアス(株)製)に、触媒液をスプレーで塗布し、室温で乾燥させ、白金量が0.3mg/cmの触媒層付きPTFEシートを作製した。続いて、10cm×10cmにカットした固体高分子電解質膜“Nafion(登録商標)”NRE−211CS(DuPont社製)を2枚の触媒層付きPTFEシートで挟み、平板プレスで5MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、固体高分子電解質膜に触媒層を転写した。プレス後、PTFEシートを剥がし、触媒層付き固体高分子電解質膜を作製した。
次に、触媒層付き固体高分子電解質膜を、7cm×7cmにカットした2枚のガス拡散電極基材で挟み、平板プレスで3MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、膜電極接合体を作製した。なお、ガス拡散電極基材はマイクロポーラス部[B]を有する面が触媒層側と接するように配置した。
得られた膜電極接合体を燃料電池評価用単セルに組み込み、電流密度を変化させた際の電圧を測定した。ここで、セパレータとしては、溝幅1.5mm、溝深さ1.0mm、リブ幅1.1mmの一本流路のサーペンタイン型のものを用いた。また、アノード側には210kPaに加圧した水素を、カソード側には140kPaに加圧した空気を供給し、評価を行った。なお、水素、空気はともに70℃に設定した加湿ポットにより加湿を行った。また、水素、空気中の酸素の利用率はそれぞれ80%、67%とした。
まず、運転温度を65℃、電流密度を2.2A/cmにセットした場合の、出力電圧を測定し、耐フラッディング性(低温性能)の指標として用いた。また、運転温度を65℃、電流密度を2.2A/cmにセットし、30分間保持した場合の、出力電圧低下回数をカウントし、耐プラッギング性の指標として用いた。すなわち、30分間に出力電圧が0.2V以下になった回数をカウントし、7回以上のものをC、回数が5〜6回のものをB、3〜4回のものをA、2回以下のものをSとした。次に、電流密度を1.2A/cmにセットし、運転温度を80℃から、5分間保持、5分間かけて2℃上昇を繰り返しながら出力電圧を測定し、発電可能な限界温度を求め、耐ドライアップ性(高温性能)の指標として用いた。
(実施例1)
実施例1のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.7mmの直線で構成される格子状(図1に代表される格子形状)のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ66%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。また、マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液の電極基材への塗工速度は、1m/minまで速めることができた。
(実施例2)
実施例2のマイクロポーラス部[A]は線幅0.1mm、線間隔1.8mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ10%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例3)
実施例3のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例4)
実施例4のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔1.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例5)
実施例5のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔6mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ9.3%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例6)
実施例6のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.7mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。マイクロポーラス部[B]は線幅0.5mm、線間隔0.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は66%で、マイクロポーラス部[B]の面積率は92%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例7)
実施例7のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.7mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。マイクロポーラス部[B]は線幅0.5mm、線間隔0.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。膜電極接合体を作製時にガス拡散電極基材はマイクロポーラス部[A]を有する面が触媒層側と接するように配置した。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は66%であり、マイクロポーラス部[B]の面積率は92%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.33V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐ドライアップ性は良好であったが、実施例6と比較すると、耐フラッディング性はやや低下した。
(実施例8)
実施例8のマイクロポーラス部[A]は線幅0.1mm、線間隔0.4mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例9)
実施例9のマイクロポーラス部[A]は線幅3mm、線間隔12mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例10)
実施例10のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.9mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例11)
実施例11のマイクロポーラス部[A]は縦と横の幅0.5mmで、間隔0.33mmの島状(図11に代表される形状)のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性はやや低下した。出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例12)
実施例12のマイクロポーラス部[A]は線幅が0.1mmより小さい部分を含むランダムな形状(図10に代表される形状)になるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性はやや低下した。出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性がやや低下し、耐ドライアップ性は良好であった。
(実施例13)
実施例13のマイクロポーラス部[A]は線幅0.1mm、線間隔0.2mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は33%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性はやや定価した。出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに好であった。
(実施例14)
実施例14のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔0.5mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は38%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例15)
実施例15のマイクロポーラス部[A]は線幅10mm、線間隔18mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性はやや低下した。出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例16)
実施例16のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔2.0mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ24%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表2に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例17)
実施例17のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔2.0mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにロータリースクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ24%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表3に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、はともに良好であった。また、マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液の電極基材への塗工速度は、5m/minまで速めることができた。
(実施例18)
実施例18のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔1.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにロータリースクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表3に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、マイクロポーラス部[A]の塗工速度はともに良好であった。また、マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液の電極基材への塗工速度は、5m/minまで速めることができた。
(実施例19)
実施例19のマイクロポーラス部[A]は線幅0.3mm、線間隔1.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにグラビア印刷を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率を測定したところ36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表3に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性はともに良好であった。また、マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液の電極基材への塗工速度は、2m/minまで速めることができた。
(実施例20)
実施例20のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.9mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。マイクロポーラス部[B]は線幅0.5mm、線間隔0.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%で、マイクロポーラス部[B]の面積率は92%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表3に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例21)
実施例21のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.9mmの直線で構成されるストライプ状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。マイクロポーラス部[B]は線幅0.5mm、線間隔0.2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。膜電極接合体を作製時に、ガス拡散電極基材をマイクロポーラス部[A]を有する面が触媒層側と接するように配置した。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は36%であり、マイクロポーラス部[B]の面積率は92%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.33V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度89℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)でり、表1に記載のように、耐ドライアップ性は良好であったが、実施例20と比較すると、耐フラッディング性はやや低下した。
実施例での評価結果などを表1〜3にまとめて示す。
Figure 0005614462
Figure 0005614462
Figure 0005614462
(比較例1)
比較例1の電極基材にはマイクロポーラス部[A]を設けなかった。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は大きく低下した。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング性は良好であったが、耐ドライアップ性は低下した。
(比較例2)
比較例2のマイクロポーラス部[A]は面状になるようにコーター(ダイコーター)を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は100%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、出力電圧が取り出せず(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度89℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに低下した。高温性能が低いのはマイクロポーラス部[A]の面積率が高いためガス拡散電極基材の面直ガス拡散性が低く、触媒への燃料が十分に供給できないためである。また、マイクロポーラス部[A]の面積率が高いため排水性が低くなり、電極基材内部でフラッディングを引き起こし低温性能が低下した。なお、マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液の電極基材への塗工速度は、2m/minまで速めることができた。
(比較例3)
比較例3のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔0.5mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は75%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.25V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに低下した。高温性能が低いのはマイクロポーラス部[A]の面積率が高いためガス拡散電極基材の面直ガス拡散性が低く、触媒への燃料が十分に供給できないためである。また、マイクロポーラス部[A]の面積率が高いため排水性が低くなり、電極基材内部でフラッディングを引き起こし低温性能が低下した。
(比較例4)
比較例4のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔20mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]の面積率は4.8%であり、このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性が大きく低下した。これはマイクロポーラス部[A]の面積率が小さく、流路で液水が滞留しにくくなることが原因である。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング性は良好であったが、耐ドライアップ性は低下した。
(比較例5)
比較例5の電極基材にはマイクロポーラス部[A]を設けなかった。また、マイクロポーラス部[B]は線幅0.5mm、線間隔2mmの直線で構成される格子状のパターンを有するスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]の面積率は36%であった。このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、出力電圧が取り出せず(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度85℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに低下した。低温性能が低いのはマイクロポーラス部[B]の面積率が低いため触媒層との接触面積が低く、接触電気抵抗が大きくなったためであり、高温性能が低いのはマイクロポーラス部[B]の面積率が低いため水蒸気がセパレータ側へ逃げやすく電解質膜の乾燥が顕著になったためである。
(比較例6)
比較例6のマイクロポーラス部[A]は線幅0.5mm、線間隔2mmの直線で構成される格子状のパターンになるようにスクリーン版を用いて作製した。また、マイクロポーラス部[B]も線幅0.5mm、線間隔2mmの直線で構成される格子状のパターンを有するスクリーン版を用いて作製した。その他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載した方法と同様にガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の面積率は36%であり、このガス拡散電極基材の発電性能評価をした結果、出力電圧は取り出せず(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度85℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、表4に記載のように、耐フラッディング、耐ドライアップ性ともに低下した。低温性能が低いのはマイクロポーラス部[B]の面積率が低いため触媒層との接触面積が低く、接触電気抵抗が大きくなったためであり、高温性能が低いのはマイクロポーラス部[B]の面積率が低いため水蒸気がセパレータ側へ逃げやすく電解質膜の乾燥が顕著になったためである。
比較例での評価結果などを表4にまとめて示す。
Figure 0005614462
1:電極基材
2:マイクロポーラス部[A]
3:マイクロポーラス部[B]
4:マイクロポーラス部
41:マイクロポーラス部
5:ガス拡散電極基材
6.電解質膜
7.触媒層
8.膜電極接合体
9.セパレータ
10.燃料電池

Claims (9)

  1. マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]がパターンを形成していることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
    ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
  2. マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]はマイクロポーラス部が電極基材の表面に多数設けられていることによって形成されてなることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
    ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
  3. マイクロポーラス部[A] 、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなり、マイクロポーラス部[A]の面積率が5〜70%の範囲内であり、マイクロポーラス部[B]の面積率が80〜100%の範囲内であり、マイクロポーラス部[A]はランダムな形状であることを特徴とする燃料電池用ガス拡散電極基材。
    ただし、面積率は、電極基材の面積に対するマイクロポーラス部で覆われている面積の割合(%)である。
  4. マイクロポーラス部[A]が平均線幅0.1〜5mmの線状のマイクロポーラス部の集合体からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極基材。
  5. マイクロポーラス部[A]が、ストライプ状、あるいは格子状である、請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散電極基材。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散電極基材の製造方法であって、マイクロポーラス部[A]がスクリーン印刷またはグラビア印刷により形成される、燃料電池用ガス拡散電極基材の製造方法。
  7. 電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側にガス拡散電極基材を有する膜電極接合体であって、該ガス拡散電極基材の少なくとも一方が請求項1〜のいずれかに記載のガス拡散電極基材である、膜電極接合体。
  8. 前記ガス拡散電極基材のマイクロポーラス部[B]が前記触媒層に接する、請求項に記載の膜電極接合体。
  9. 請求項に記載の膜電極接合体の両側にセパレータを有する、燃料電池。
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