JP3562053B2 - 電動パワ−ステアリング装置の制御装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、電動パワ−ステアリング装置の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の電動パワ−ステアリング装置には、操向ハンドルの操作によりステアリングシヤフトに発生する操舵トルクその他を検出し、その検出信号に基づいてモ−タの制御目標値である操舵補助指令値を演算し、電流フイ−ドバツク制御回路において、前記した制御目標値である操舵補助指令値とモ−タ電流の検出値との差を電流制御値として求め、電流制御値によりモ−タを駆動して操向ハンドルの操舵力を補助するものがある。
【0003】
このような電動式パワ−ステアリング装置では、図14に示すように、4個の電界効果型トランジスタFET1 〜FET4 をブリツジに接続して第1及び第2の2つのア−ムを備えたHブリツジ回路を構成し、その入力端子間に電源Vを、出力端子間に前記モ−タMを接続したモ−タ制御回路が使用されている。
【0004】
そして、前記モ−タ制御回路を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのア−ムを構成する2個1組のFETのうち、第1のア−ムのFET1 (或いは第2のア−ムのFET2 )を電流制御値に基づいて決定されるデユ−テイ比DのPWM信号(パルス幅変調信号)で駆動することにより、モ−タ電流の大きさが制御される。
【0005】
また、前記電流制御値の符号に基づいて第2のア−ムのFET3 をON、第1のア−ムのFET4 をOFF(或いは第2のア−ムのFET3 をOFF、第1のア−ムのFET4 をON)に制御することにより、モ−タMの回転方向が制御される。
【0006】
FET3 が導通状態にあるときは、電流はFET1 、モ−タM、FET3 を経て流れ、モ−タMに正方向の電流が流れる。また第2のア−ムのFET4 が導通状態にあるときは、電流はFET2 、モ−タM、FET4 を経て流れ、モ−タMに負方向の電流が流れる。
【0007】
このモ−タ制御回路は、同一ア−ム上のFETが同時に駆動されることがないのでア−ムが短絡される可能性が低く、信頼性が高いため、広く利用されている(一例として特公平5−10270号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図15は、モ−タ電流I(モ−タに実際に流れる電流であり、検出電流iとは異なる)とPWM信号のデユ−テイ比Dとの関係を示すものである。即ち、操向ハンドルが操作されて操舵トルクが発生している状態では、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図15において線(a)で示すように変化し、制御回路において操舵トルクの検出信号に基づいてモ−タの制御目標値である操舵補助指令値Iref が演算され、操舵補助指令値Iref とフイ−ドバツクされるモ−タ電流の検出値iとの差の電流制御値Eがモ−タ駆動回路に出力されるから、モ−タ駆動回路の半導体素子を制御するデユ−テイ比Dはある値をとり、格別の支障は生じない。
【0009】
しかしながら、操向ハンドルを切つた後、セルフアライニングトルクにより操向ハンドルが直進走行位置に戻るとき(以下、「ハンドル戻し」という)は、操舵トルクが発生していない状態にあるから、モ−タの制御目標値である操舵補助指令値Iref は零となるが、モ−タに逆起電力が発生するため、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図15において線(b)で示すように、逆起電力に相当するだけ上方に移動変化し、デユ−テイ比Dの値が零の付近でモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係に不連続部分が生じる。
【0010】
一方、フイ−ドバツク制御回路は電流制御値Eを演算しようとするが、操舵補助指令値Iref に対応するデユ−テイ比Dがないため、図15において線(c)で示すように、モ−タ電流Iの不連続部分にほぼ対応した振幅の振動電流が電流制御値Eとして出力される。
【0011】
このような振動電流の発生は、雑音の発生源となるほかフイ−ドバツク制御の安定性を阻害する原因ともなるので、その対策が求められていた。この発明は上記課題を解決することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決するもので、少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいて演算された操舵補助指令値と検出されたモータ電流値から演算した電流制御値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御するフイードバツク制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、半導体素子をHブリツジに接続して構成したブリツジ回路の入力端子間に電源を、出力端子間に前記モータを接続したモータ駆動手段と、モータ駆動手段を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D2 のPWM信号で駆動するべく、第1のデューテイ比D1 のPWM信号と第2のデューテイ比D2 のPWM信号とをそれぞれ独立して前記モータ駆動手段に出力する制御指令手段とを備え、
前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である以下の式(2)で定義されること
D 2 =a・D 1 +b・・・・・・・・・(2)
ここで、a、bは以下の式で表される定数
a=−K T ω ret /γV b
b=1+K T ω ret /V b
但し、V b :バッテリ電圧
K T :モータの逆起電力定数
ω ret :ハンドル戻り時のモータ角速度
γ:定数
を特徴とする。
そして、前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の値を入力として前記関数式(2)により第2のデューテイ比D 2 の値を演算する演算部と、第1のデューテイ比D 1 のPWM信号を出力する第1のPWM信号出力手段と、前記演算部で演算された第2のデューテイ比D 2 の値に基づいて第2のデューテイ比D 2 のPWM信号を出力する第2のPWM信号出力手段とを備える。
また、前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の値を入力として前記関数式(2)により第2のデューテイ比D 2 の値を演算する演算部と、第1のデューテイ比D 1 及び第2のデューテイ比D 2 の信号をアナログ信号に変換する変換部と、PWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号又は三角波信号を発生する信号発生部と、信号変換部を備え、信号変換部において前記信号発生部から出力される波形信号を使用して前記アナログ信号の電圧に相当する時間幅のPWM信号を出力するようにしてもよい。
さらに、前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の信号に基づいて第2のデューテイ比D 2 のアナログ信号を発生させる関数発生手段と、第1のデューテイ比D 1 の信号をアナログ信号に変換する変換部と、PWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号又は三角波信号を発生する信号発生部と、信号変換部を備え、信号変換部において前記信号発生部から出力される波形信号を使用して前記アナログ信号の電圧に相当する時間幅のPWM信号を出力するようにしてもよい。
【0013】
【作用】
制御指令手段は、モータ駆動手段を構成するHブリッジ回路の互いに対抗する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で、それぞれ独立して駆動する。ここで、前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である前記式(2)で定義されるものである。これにより、ハンドル戻りの状態など操舵トルクが発生していない状態のときも、デューテイ比の値が零の付近でモータ電流Iとデューテイ比との関係に不連続部分が生じることがなく、電流制御値Eとして振動電流が出力されるおそれがない。
【0014】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。まずこの発明の基本概念について説明する。先に図15により説明した通り、操向ハンドルを切つた後、セルフアライニングトルクにより操向ハンドルが直進走行位置に戻るハンドル戻しの状態では、操舵トルクが発生していない状態にあるから、モ−タの制御目標値である操舵補助指令値Iref は零となるが、モ−タに逆起電力が発生するため、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係は、図15において線(b)で示すように、逆起電力に相当するだけ上方に移動変化し、デユ−テイ比Dの値が零の付近でモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係に不連続部分が生じ、モ−タ電流Iの不連続部分にほぼ対応した振幅の振動電流が出力され、雑音の発生その他の不都合が生じる。
【0015】
このため、この発明では前記したモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの間の不連続部分を連続させるように制御し、即ち、図16に示すようにハンドル戻り時におけるモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係を示す線(b)の上でデユ−テイ比D=γのときのモ−タ電流Iを示すp点と原点oとの間を連続するようにモ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの関係を制御して課題を解決するものである。
【0016】
具体的にはFET3 とFET4 を前記したデユ−テイ比D1 の1次の関数式で定義されるデユ−テイ比D2 のPWM信号で駆動するものであり、実施方法としては、デユ−テイ比Dの小さい領域では第1のア−ムのFET1 と第2のア−ムのFET3 とを同時に、且つ異なるデユ−テイ比Dで駆動するものである。
【0017】
なお、デユ−テイ比D1 がγよりも大きい領域では、従来の駆動方法、即ちFET3 (又はFET4 )が電流方向によりON又はOFFに制御される制御方法による。
【0018】
ここで、まず、従来の駆動方法のようにFET3 (又はFET4 )を、PWM信号の符号により決定されるモ−タの回転方向に応じてON(又はOFF)に維持する制御をせず、FET1 (又はFET2 )と同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動した場合を検討する。
【0019】
図17はFET1 とFET3 を、同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動した場合の動作を説明する図であり、また、図18は第1のア−ムのFET1 と第2のア−ムのFET3 とを同時に、且つ異なるデユ−テイ比Dで駆動するときのFETの動作状態とモ−タ端子間電圧VM 、モ−タ端子間電圧VM からモ−タ逆起電力KT ωの影響を差し引いた値Ri、及びモ−タ電流Iの関係を説明する図である。
【0020】
今、FET1 をデユ−テイ比D1 で駆動すると共に、FET3 をFET1 のデユ−テイ比D1 よりも大きい(即ち、時間的に長い)デユ−テイ比D2 で駆動し、FET2 とFET4 はOFFに維持するものとする。図18の(a)及び(b)はFET1 及びFET3 の時間に対するON/OFFの状態を示している。
【0021】
このとき、モ−タ端子間電圧VM は図18の(c)のように変化する。即ち、まず、FET1 及びFET3 が共にON(この状態をモ−ドAと呼ぶ)のときは、モ−タMの端子間にはバツテリ電圧Vb が印加される。次に、FET1 がOFFでFET3 がON(この状態をモ−ドBと呼ぶ)のときはモ−タMの端子間電圧は零になる。
【0022】
さらにFET1 及びFET3 が共にOFF(この状態をモ−ドCと呼ぶ)のときは、モ−タMの端子間には負方向のバツテリ電圧−Vb が印加される。即ち、モ−ドCでは、FET1 及びFET3 が共にOFFであるため、モ−タMには図17(b)で示すように、抵抗RL →FET4 の回生ダイオ−ドDT4→モ−タM→FET2 の回生ダイオ−ドDT2→電源に至る電流回路が形成され、モ−タMの端子間電圧VM は負方向のバツテリ電圧−Vb となる。
【0023】
FET1 とFET3 を同時に、且つ異なるデユ−テイ比で駆動してモ−タ電流が平衡状態になつたとき、PWM信号の周期がモ−タの電気的時定数に比較して十分に短い場合には、モ−タ電流Iは近似的に以下の式(1)により表すことができる。
【0024】
I={(D1 +D2 −1)・Vb /R}−KT ω/R・・・・(1)
但し、D1 :デユ−テイ比D1 、D2 :デユ−テイ比D2 、
Vb :バツテリ電圧、R:モ−タ端子間抵抗、
KT :モ−タの逆起電力定数、ω:モ−タ角速度
ここで、D2 =f(D1 )のように、デユ−テイ比D2 をデユ−テイ比D1 の連続した関数とし、ω=ωret 、D1 =0のとき、I=0となるような関数fを定義すれば、0≦ω≦ωret の範囲で、デユ−テイ比D対モ−タ電流I特性に連続性を持たせることができる。
【0025】
ここで、関数fの一例として、以下の一次関数式(2)を定義する。
【0026】
D2 =a・D1 +b・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
但し、a、bは定数。
【0027】
定数a、bを求めるため、まず、以下の条件を設定する。
【0028】
(1) デユ−テイ比D1 =γのとき、デユ−テイ比D2 =1(100 %)、
但し、γは任意の設定値
(2) デユ−テイ比D1 =0、且つω=ωret のとき、I=0
但し、ωはモ−タ角速度、ωret はハンドル戻り時のモ−タ角速度とする。
【0029】
上記条件(1) は図16においてデユ−テイ比D1 =γのときの線(b)上の点pの位置を決定する条件であり、通常の駆動状態に一致する。
【0030】
また、条件(2) は図16において線(b)が原点oを通ることを決定する条件である。したがつて、上記条件を満たす定数a、bを求めることにより、点pと原点oを結ぶ1次の関数を決定することができる。
【0031】
なお、デユ−テイ比D1 がγよりも大きい領域では、従来の駆動方法、即ちFET3 (又はFET4 )が電流方向によりON又はOFFに制御される制御方法と変わらない。
【0032】
前記条件を満たす定数a、bは、以下の式(3)(4)で表される。
【0033】
a=−KT ωret /γVb ・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
b=1+KT ωret /Vb ・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
このときのモ−タ電流Iは、式(1)のD2 に式(2)を代入し、これに式(3)(4)で決定される定数a、bを代入して整理した以下の式(5)で表すことができる。
【0034】
I=Vb /R{1−(KT ωret /γVb )}・D1
−KT /R(ωret −ω)・・・・・・・・・・・・・・(5)
式(5)によれば、モ−タ電流Iとデユ−テイ比Dとの間の関係は、モ−タ角速度ωがハンドル戻り時のモ−タ角速度ωret よりも小さい領域においても不連続部分が無くなる。
【0035】
即ち、FET1 をデユ−テイ比D1 で駆動し、これと同時にFET3 をデユ−テイ比D1 とは異なるデユ−テイ比D2 で駆動することにより、モ−タ角速度ωがハンドル戻り時のモ−タ角速度ωret よりも小さい領域においても、モ−タ電流Iに対してデユ−テイ比D1 を連続して変化させることができるのである。
【0036】
次に、図1乃至図3により、この発明を実施するに適した電動パワ−ステアリング装置の概略を説明する。図1は電動パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図で、操向ハンドル1の軸2は減速ギア4、ユニバ−サルジョイント5a、5b、ピニオンラツク機構7を経て操向車輪のタイロツド8に結合されている。軸2には操向ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ3が設けられており、また、操舵力を補助するモ−タ10がクラツチ9、減速ギア4を介して軸2に結合している。
【0037】
パワ−ステアリング装置を制御する電子制御回路13は、バツテリ14からイグニツシヨンキ−11を経て電力が供給される。電子制御回路13は、トルクセンサ3で検出された操舵トルクと車速センサ12で検出された車速に基づいて操舵補助指令値の演算を行い、演算された操舵補助指令値に基づいてモ−タ10に供給する電流を制御する。
【0038】
クラツチ9は電子制御回路13により制御される。クラツチ9は通常の動作状態では結合しており、電子制御回路13によりパワ−ステアリング装置の故障と判断された時、及び電源がOFFとなつている時に切離される。
【0039】
図2は、電子制御回路13のブロツク図である。この実施例では電子制御回路13は主としてCPUから構成されるが、ここではそのCPU内部においてプログラムで実行される機能を示してある。例えば、位相補償器21は独立したハ−ドウエアとしての位相補償器21を示すものではなく、CPUで実行される位相補償機能を示す。
【0040】
以下、電子制御回路13の機能と動作を説明する。トルクセンサ3から入力された操舵トルク信号は、位相補償器21で操舵系の安定を高めるために位相補償され、操舵補助指令値演算器22に入力される。また、車速センサ12で検出された車速も操舵補助指令値演算器22に入力される。
【0041】
操舵補助指令値演算器22は、入力され位相補償された操舵トルク信号及び車速信号に基づいて所定の演算式によりモ−タ10に供給する電流の制御目標値である操舵補助指令値Iref を演算する。
【0042】
比較器23、微分補償器24、比例演算器25、積分演算器26、加算器27から構成される回路は、モ−タ電流が操舵補助指令値Iref に一致するようにフイ−ドバツク制御を行う回路である。
【0043】
比較器23では、操舵補助指令値演算器22で演算された制御目標値である操舵補助指令値Iref と後述するモ−タ電流検出回路42で検出されたモ−タ電流値Iが比較され、その差の信号が出力される。
【0044】
比例演算器25では、操舵補助指令値Iref とモ−タ電流値Iとの差に比例した比例値が出力される。さらに比例演算器25の出力信号はフイ−ドバツク系の特性を改善するため積分演算器26において積分され、差の積分値の比例値が出力される。
【0045】
微分補償器24では、操舵補助指令値Iref に対するモ−タ電流値Iの応答速度を高めるため、操舵補助指令値Iref の微分値に比例した値が出力される。
【0046】
微分補償器24から出力された操舵補助指令値Iref の微分値、比例演算器25から出力された操舵補助指令値Iref とモ−タ電流値Iとの差に比例した比例値、積分演算器26から出力された積分値は加算器27において加算演算され、演算結果である電流制御値Eがモ−タ制御回路41に出力される。モ−タに流れる電流はモ−タ電流検出回路42により検出される。
【0047】
図3にモ−タ制御回路41の構成の一例を示す。モ−タ制御回路41は制御指令器45、ゲ−ト駆動回路46、FET1 〜FET4 からなるHブリツジ回路等から構成され、制御指令器45は加算器27から入力された電流制御値Eに基づいてFET1 〜FET4 を駆動するPWM信号およびモ−タ回転方向を指示する回転方向信号を出力する。
【0048】
FET1 (FET2 )は前記した制御指令器45から出力されるデユ−テイ比D1のPWM信号に基づいてゲ−トがON/OFFされ、FET3 (FET4 )はデユ−テイ比D2のPWM信号に基づいてゲ−トがON/OFFされ、実際にモ−タに流れる電流Iの大きさが制御される。
【0049】
FET1 とFET2 のいずれを駆動するか、またFET3 とFET4 のいずれを駆動するかはモ−タの回転方向を決定する回転方向信号により決定される。
【0050】
モ−タ電流検出回路42は、抵抗R1 の両端における電圧降下に基づいて正方向電流の大きさを検出し、また、抵抗R2 の両端における電圧降下に基づいて負方向電流の大きさを検出する。検出されたモ−タ電流値Iは比較器23にフイ−ドバツクして入力される(図2参照)。
【0051】
次に、上記した制御指令器45の構成を説明する。図4は制御指令器の第1実施例で、マイクロプロセツサ451と2つのPWMタイマ452、453から構成される。この構成では、入力された電流制御値Eに基づいてPWMタイマ452を作動させてデユ−テイ比D1 の時間幅のPWM信号D1を出力すると共に、同時にマイクロプロセツサ451にPWM信号D1を入力し、先に説明した関数式(2)に基づいてデユ−テイ比D2 を演算し、PWMタイマ453を作動させてデユ−テイ比D2 の時間幅のPWM信号D2を演算出力する。
【0052】
ゲ−ト駆動回路46は、例えば図5に示すような4個のアンド回路AN1 〜AN4 と1個のノツト回路NT1 から構成される回路が提案される。
【0053】
この回路によれば、回転方向信号がON(例えば正方向回転を示す)でPWM信号D1及びD2が入力されたとすると、アンド回路AN2 の出力によりFET2 が駆動されるとともに、アンド回路AN4 の出力によりFET4 が駆動される。このとき、ノツト回路NT1 の出力はOFFであるから、アンド回路AN1 及びAN3 の出力はなく、FET1 、FET3 はOFFとなる。
【0054】
回転方向信号がOFF(例えば負方向回転を示す)で、PWM信号D1及びD2が入力されたとすると、ノツト回路NT1 の出力はONとなるから、アンド回路AN1 の出力によりFET1 が駆動されるとともに、アンド回路AN3 の出力によりFET3 が駆動される。このとき、アンド回路AN2 及びAN4 の出力はなく、FET2 、FET4 はOFFとなる。
【0055】
図6は制御指令器の第2実施例で、マイクロプロセツサ451と2つのD/A変換器454、455、2つのコンパレ−タ456、457、及び信号発生器458から構成される。
【0056】
この構成では入力された電流制御値Eに基づいてデユ−テイ比D1 に相当するアナログ信号AD1 、及び関数式(2)の演算の結果得られたデユ−テイ比D2 に基づいてこれに相当するアナログ信号AD2 を得、コンパレ−タ456、457により信号発生器458から出力されるPWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号或いは三角波信号とアナログ信号AD1 及びADとを比較し、アナログ信号AD1 及びADの電圧に相当する時間幅のPWM信号D1及びPWM信号D2を出力するものである。図7に鋸歯状波信号発生回路の一例を、図8に三角波信号発生回路の一例を示すが、信号発生回路は公知の回路であるから説明は省略する。
【0057】
図9は、コンパレ−タ456、457により信号発生器458から出力される鋸歯状波信号とアナログ信号AD1 、AD2 とを比較して出力されるPWM信号D1及びPWM信号D2、及びモ−タに印加される電圧の波形を示したもので、図10は三角波信号とアナログ信号AD1 、AD2 とを比較して出力されるPWM信号D1及びPWM信号D2、及びモ−タに印加される電圧の波形を示したものである。図9と図10を比較すると明らかであるが、三角波信号の場合はPWM信号D1のPWM信号D2の立上り位置にずれがあり、モ−タに印加される電圧波形も相違するが、その動作に実質的な差異が生じるものではない。
【0058】
図11は制御指令器の第3実施例で、マイクロプロセツサ451とD/A変換器454、デユ−テイ関数発生器459、2つのコンパレ−タ456、457、及び信号発生器458から構成される。
【0059】
この構成では入力された電流制御値Eに基づいてデユ−テイ比D1 に相当するアナログ信号AD1 を得、また関数式(2)に基づく関数発生回路を備えたデユ−テイ関数発生器459において、アナログ信号AD1 を入力としてデユ−テイ比D2 に相当するアナログ信号AD2 を得、コンパレ−タ456、457により信号発生器458から出力されるPWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号或いは三角波信号とアナログ信号AD1 及びADとを比較し、アナログ信号AD1 及びADの電圧に相当する時間幅のPWM信号D1及びPWM信号D2を出力するものである。デユ−テイ関数発生器459は、例えば図12、図13に示すような一般的オペアンプを使用したアナログ回路の組み合わせによる構成が提案される。
【0060】
コンパレ−タ456、457、信号発生器458などは、第2実施例のものと同じであり、また、コンパレ−タ456、457の出力も第2実施例において図9、図10により説明したものと変わらない。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したとおり、この発明の電動パワーステアリング装置の制御装置は、モータ駆動手段を構成するHブリッジ回路の互いに対抗する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D 1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D 2 のPWM信号で、それぞれ独立して駆動するものである。ここで、前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である前記式(2)で定義される。
【0063】
これにより、ハンドル戻り時などで操舵トルクが発生していない状態のときも、デユ−テイ比の値が零の付近でモ−タ電流とデユ−テイ比との間に不連続部分がなくなるので振動電流が発生せず、雑音の発生やフイ−ドバツク制御の安定性を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動式パワ−ステアリング装置の構成の概略を説明する図。
【図2】電動式パワ−ステアリング装置の電子制御回路のブロツク図。
【図3】モ−タ駆動回路の構成を示す回路ブロツク図。
【図4】制御指令器の第1実施例の構成を示す回路ブロツク図。
【図5】ゲ−ト駆動回路の構成の一例を示す回路ブロツク図。
【図6】制御指令器の第2実施例の構成を示す回路ブロツク図。
【図7】鋸歯状波信号発生回路の構成の一例を示す回路ブロツク図。
【図8】三角波信号発生回路の構成の一例を示す回路ブロツク図。
【図9】第2実施例における鋸歯状波信号波形とPWM信号のデユ−テイ比及びモ−タ電圧を説明する図。
【図10】第2実施例における三角波信号波形とPWM信号のデユ−テイ比及びモ−タ電圧を説明する図。
【図11】制御指令器の第3実施例の構成を示す回路ブロツク図。
【図12】第3実施例のデユ−テイ関数発生器の一例を示す回路ブロツク図。
【図13】第3実施例のデユ−テイ関数発生器の一例を示す回路ブロツク図。
【図14】従来のFETで構成したHブリツジ回路からなるモ−タ駆動回路図。
【図15】従来のモ−タ制御回路におけるモ−タ電流とPWM信号のデユ−テイ比との関係を説明する図。
【図16】この発明におけるモ−タ制御回路におけるモ−タ電流とPWM信号のデユ−テイ比との関係を説明する図。
【図17】Hブリツジ回路の互いに対向する2つのア−ムのFETを同時に異なるデユ−テイ比で駆動するときの動作を説明する図。
【図18】FETの動作状態、モ−タ端子間電圧VM 、モ−タ電流Iなどの関係を説明する図。
【符号の説明】
3 トルクセンサ
10 モ−タ
11 イグニツシヨンキ−
12 車速センサ
13 電子制御回路
14 バツテリ
21 位相補償器
22 操舵補助指令値演算器
23 比較器
24 微分補償器
25 比例演算器
26 積分演算器
27 加算器
41 モ−タ制御回路
42 モ−タ電流検出回路
Claims (4)
- 少なくともステアリングシヤフトに発生する操舵トルク信号に基づいて演算された操舵補助指令値と検出されたモータ電流値から演算した電流制御値に基づいてステアリング機構に操舵補助力を与えるモータの出力を制御するフイードバツク制御手段を備えた電動パワーステアリング装置の制御装置において、
半導体素子をHブリツジに接続して構成したブリツジ回路の入力端子間に電源を、出力端子間に前記モータを接続したモータ駆動手段と、
モータ駆動手段を構成するHブリツジ回路の互いに対向する2つのアームを構成する2個1組の半導体素子のうち、第1のアームの半導体素子を前記電流制御値に基づいて決定される第1のデューテイ比D1 のPWM信号で駆動し、第2のアームの半導体素子を第2のデューテイ比D2 のPWM信号で駆動するべく、第1のデューテイ比D1 のPWM信号と第2のデューテイ比D2 のPWM信号とをそれぞれ独立して前記モータ駆動手段に出力する制御指令手段とを備え、
前記第2のデューテイ比D 2 は、第1のデューテイ比D 1 の関数である以下の式(2)で定義されること
D 2 =a・D 1 +b・・・・・・・・・(2)
ここで、a、bは以下の式で表される定数
a=−K T ω ret /γV b
b=1+K T ω ret /V b
但し、V b :バッテリ電圧
K T :モータの逆起電力定数
ω ret :ハンドル戻り時のモータ角速度
γ:定数
を特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。 - 前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の値を入力として前記関数式(2)により第2のデューテイ比D 2 の値を演算する演算部と、第1のデューテイ比D 1 のPWM信号を出力する第1のPWM信号出力手段と、前記演算部で演算された第2のデューテイ比D 2 の値に基づいて第2のデューテイ比D 2 のPWM信号を出力する第2のPWM信号出力手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の値を入力として前記関数式(2)により第2のデューテイ比D 2 の値を演算する演算部と、第1のデューテイ比D 1 及び第2のデューテイ比D 2 の信号をアナログ信号に変換する変換部と、PWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号又は三角波信号を発生する信号発生部と、信号変換部を備え、信号変換部において前記信号発生部から出力される波形信号を使用して前記アナログ信号の電圧に相当する時間幅のPWM信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
- 前記制御指令手段は、第1のデューテイ比D 1 の信号に基づいて第2のデューテイ比D 2 のアナログ信号を発生させる関数発生手段と、第1のデューテイ比D 1 の信号をアナログ信号に変換する変換部と、PWM信号の1サイクルに対応する波長の鋸歯状波信号又は三角波信号を発生する信号発生部と、信号変換部を備え、信号変換部において前記信号発生部から出力される波形信号を使用して前記アナログ信号の電圧に相当する時間幅のPWM信号を出力することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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