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JP3497508B2 - フッ素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーおよびこれを含有する歯科用組成物 - Google Patents

フッ素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーおよびこれを含有する歯科用組成物

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JP3497508B2
JP3497508B2 JP52298394A JP52298394A JP3497508B2 JP 3497508 B2 JP3497508 B2 JP 3497508B2 JP 52298394 A JP52298394 A JP 52298394A JP 52298394 A JP52298394 A JP 52298394A JP 3497508 B2 JP3497508 B2 JP 3497508B2
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JP
Japan
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glass ionomer
acid
filler
fluorine
weight
Prior art date
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JP52298394A
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English (en)
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ロバーツ、トーマス・アーウェル
皓三 宮井
邦夫 池村
清実 渕上
敏夫 北村
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Shofu Inc
Original Assignee
Shofu Inc
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Publication date
Application filed by Shofu Inc filed Critical Shofu Inc
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明はフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーに関する。さらに詳しくは本発明は
溶出、崩壊を伴わずに安定なフッ素イオン徐放性の得ら
れるプレフォームドグラスアイオノマーフィラーおよび
これを含有する歯科用組成物に関する。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
は主に歯科用組成物に有用であるが、フッ素徐放性を特
徴とするため、歯科用以外にもフッ素を取り込む生体硬
組織、特に歯牙や骨に有用であり、外科、整形外科、形
成外科等の分野で利用できる。
背景技術 フッ素イオンは歯質のハイドロオキシアパタイトをフ
ッ素化し、歯質を強化する。この結果う触の抑制、予防
が期待できる。また、カルシウムイオン、リン酸イオン
の共存により象牙細管封鎖、石灰化、軟化象牙質の再石
灰化等による歯髄保護等が期待できる。
従来歯科の領域において、う蝕予防および二次う蝕の
抑制を目的としてフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、
フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、
フッ化ストロンチウム、フッ化亜鉛、フッ化第一錫、希
土類元素のフッ化物等のフッ素イオン放出性化合物が用
いられている。これらを含有した歯科用組成物も知られ
ている。
しかしながら、本来フッ素イオンを遊離するというこ
とは、水の存在下でのフッ素イオンの解離であり、化合
物の溶出、すなわち溶解を伴うことが多く、組成物の崩
壊、およびカウンターイオンの存在も意味する。このた
め歯科用組成物としては不安定である。
一方、フッ素を放出することができる歯科用組成物と
して、ガラスとある種のアイオノマーとの反応によって
形成されるセメント類が知られている。これは例えば窩
洞や損傷の修復、咬合部の小窩および裂溝の封鎖あるい
は充填、義歯または合着のための根面の被覆等、歯科領
域において多くの用途を有する。
これらのアイオノマー・セメント類は、塩基性カルシ
ウムアルミノフルオロシリケートガラスと、不飽和カル
ボン酸のホモポリマーまたはコポリマーである酸性高分
子電解質との反応によって形成されるヒドロゲル塩であ
る。このタイプのセメント類は、高生体適合性であり、
歯質に強く結合し、フッ素イオンを遊離させることがで
きるため、歯科用セメントとしては特に有用である。し
かしながら、ガラスとアイオノマーとの間の硬化反応は
遅く、このため、歯科医が必要な研磨をするための十分
な硬度を得るために時間がかかるという問題がある。
歯科用セメント類としてはさらに、このセメントの硬
化が光に暴露された場合に生じるようにフィラーおよび
光硬化性樹脂を含有するものも提案されている。具体例
のひとつとして、フィラーがガラスであり、樹脂がガラ
スと反応するアイオノマーでありかつ光硬化性であるも
のが挙げられる。この改良は従来のグラスアイオノマー
セメント類と比してセメントが必要な硬度に到達するま
でに必要な時間の短縮という利点を提供する。しかしな
がら、用いることできる光硬化性組成物類としてはアイ
オノメリックであると同時に光硬化性であるという、限
られた範囲のみのモノマーしか使用できないという欠点
がある。
さらに、歯科医がこのセメントを使用可能とするため
には、歯内で処置するまで硬化しないことが必要であ
る。このためガラスおよびアイオノマーは通常、それぞ
れ粉末と液体に分けて供給される。歯科医はこれらを歯
に適用する直前に適当な割合で混合しなくてはならな
い。硬化はアイオノマーとガラスが接触した時から開始
するため、歯科医はセメントの混合および歯への処置を
迅速に行わなくてはならない。セメントの硬化はその後
光に曝すことによって行う。一般に、硬化はセメントを
明るい光に曝すことによって加速される。
この方法の欠点は、成分間の割合を正確に取ることお
よび十分に混合するのが困難なことである。このため最
終的なセメント組成物が一定でないという結果となる。
さらに、混合中に気泡が混合物中へ入り、そのため硬
化したセメントが弱くなるという危険もある。さらに問
題なのは正確なガラスとアイオノマーの比率を有する製
品を得ることは困難なため、組成物の温度および湿度へ
の感受性が高くなり、日々変化する製品となることであ
る。
これらの欠点を解決するための一つの試みとして、粉
末および液体を膜で隔離したカプセルとして供給するこ
とが行われている。使用直前にこのカプセルの隔膜に穴
をあけ、その内容物を混合するべくカプセルを振盪させ
る機械内におく。その後混合物を歯に処置し、光への暴
露により硬化させる。この方法は、上記の2パックシス
テムを混合するのが難しく、カプセル内に供給されたセ
メントは成分が混合されるとすぐ硬化が始まるという欠
点をいまだに有する。
従って本願発明は、上述の問題を解決し、溶出によら
ない安定なフッ素イオン徐放性を有し、組成物が崩壊す
ることのないフィラー組成物を提供することを目的とす
る。さらに本発明は当該フィラーを含有する歯科用組成
物を提供することを目的とし、特に光硬化性ワンパック
型歯科用セメントを提供することを目的とする。
発明の開示 本発明はポリアルケン酸と含フッ素ガラスとの粉末状
反応生成物からなるフッ素イオン徐放性プレフォームド
グラスアイオノマーフィラーおよびその製法に関する。
特に粉末状生成物がゲルを脱水してなるキセロゲルであ
るフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマ
ーフィラーに関する。さらに本発明は、ポリアルケン酸
と含フッ素ガラスの配合比が0.0005:1〜10:1であるフッ
素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーに関する。本発明のプレフォームドグラスアイオノ
マーフィラーは組成物の崩壊を伴わず、良好なフッ素イ
オン徐放性を示すため、幅広い用途に対応するフッ素リ
リースを必要とする歯科用組成物等に好適に含有させる
ことができる。
本発明は上記フッ素イオン徐放性プレフォームドグラ
スアイオノマーフィラーを含有してなる歯科用組成物に
関する。本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーを添加することにより、歯科用組成物の硬化をガ
ラスとアイオノマーの反応に依存する必要がなくなり、
広い範囲の樹脂、セメント等を用いた歯科用組成物を提
供することができる。
本発明の歯科用組成物として、(a)ラジカル重合性
化合物および(b)硬化剤からなる樹脂組成物に上記プ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーを含有してな
る歯科用組成物を提供する。特に樹脂組成物がラジカル
重合性化合物と光硬化性触媒からなる光硬化性樹脂組成
物である場合には、本発明の歯科用組成物は使用直前に
混合する必要のないワンパック光硬化性セメントとして
提供することができ、保存中の硬化、口腔内での硬化の
遅延、セメント組成の不均一、セメント内への気泡の混
入等の従来の問題を解決し、さらに従来のグラスアイオ
ノマーフィラーにも増して良好なフッ素イオン徐放性を
示すという効果を有する。
本発明は、従来の歯科用無機系セメント粉材と歯科用
無機系セメント液剤と共に本発明のプレフォームドグラ
スアイオノマーフィラーを含有する歯科用組成物を提供
する。本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーを公知のセメントへ添加することにより、当該セメ
ントの操作性や性能を改善することができる。
本発明はさらに、水または有機溶剤中に本発明のフッ
素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーを含有するしてなる歯科用組成物を提供する。本発
明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラーは水の
存在下で迅速にフッ素イオンをリリースするため、従来
の洗口剤や歯磨等の口腔用組成物に良好なフッ素イオン
リリース性能を付与することができる。
図面の簡単な説明 第1図は実施例47の結果を示すグラフである。第2図
は実施例48の結果を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態 本発明者らはグラスアイオノマーセメントのフッ素イ
オン放出能力に着目し、本発明を完成させた。すなわち
本発明は含フッ素ガラスとポリアルケン酸との粉末状反
応生成物からなるフッ素イオン徐放性プレフォームドグ
ラスアイオノマーフィラーを提供する。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
のフッ素イオン徐放性は原料として用いるガラスの組成
に大きく影響される。ガラスとは酸化物類の過冷却混合
物であり、通常はアルミナと組み合わせてシリカを含有
するガラスである。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
に用いる含フッ素ガラスとしては具体的には、従来グラ
スアイオノマーセメントとして使用されているものが用
いられる。代表的な組成は以下の通りである: SiO2−Al2O3−CaF2 SiO2−Al2O3−CaF2−AlPO4 SiO2−Al2O3−CaF2−AlPO4−Na3AlF6 ガラスのAl2O3/SiO2のモル比は好ましくは1:1以下で
ある。この比により最適な性質を有するフィラーが得ら
れる。
ガラスはアルミナ、シリカ、フッ化アルミニウムおよ
びフッ化カルシウム、そして所望によりリン酸アルミニ
ウムおよびクリオライト(フッ化ナトリウムアルミニウ
ム)の混合物から調製すればよい。
好ましい混合物は以下の組成を有する: 酸化カルシウム (CaO)5〜40モル% シリカ (SiO2)15〜70モル% アルミナ (Al2O3)10〜50モル% 塩化ナトリウム (Na2O)0〜7モル% 五酸化リン (P2O5)0〜7モル% これらのガラス中に含まれるフッ素量は好ましくは5
〜60モル%である。
上記組成物においては酸化カルシウムとしているが、
いずれかのアルカリ土類金属の酸化物であっても使用で
きる。
これらのガラスは一般にアルカリ土類金属アルミノフ
ルオロシリケートガラスとして知られている。アルカリ
土類金属の少なくとも一部はランタン、ガドリニウムま
たはイッテルビウム等のランタニド金属で置き換えても
よい。さらに、これらのガラスのうちの一部またはすべ
てのアルミナをアルミニウム以外の3族の金属で置き換
えてもよい。同様にして、ガラス中のシリカの一部を酸
化ジルコニウムまたは酸化チタニウムで置き換えてもよ
い。
ガラスにストロンチウム、ランタン、ガドリウム、イ
ッテルビウムまたはジルコニウムを含有する場合、ガラ
スはX線不透過性となる。10重量%以上のX線不透過材
が本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
に含有されていることが好ましい。
本発明に用いる含フッ素ガラスは従来からどの方法に
よって調製してもよいが、熔融法、ゾル−ゲル法により
製造する。これは例えば、可溶性アルミニウム化合物と
可溶性シリコン化合物を含有する第1溶液を、2族金属
の可溶性化合物を含有する第2溶液とを反応させ、得ら
れたゲルを熱乾燥または凍結乾燥により乾燥させて回収
する方法である。この方法を使用すると、フラックス剤
のごとき通常ガラスの製造に用いられる添加剤の使用を
さけ、比較的低温度を用いることができることになる。
このため、今までより透明度の高いガラスが得られる。
有機金属類または無機塩のアルコール溶液のごとき他
の化合物をゾルの段階で添加して2価又は3価のガラス
を得てもよい。
酸性または塩基性触媒をこのゾル−ゲル反応混合物
へ、ゲル化速度を速めるために添加してもよい。ゲル化
後、残存溶媒を除くために乾燥する。ゲルはまた、400
℃というような比較的低い温度で焼結しても良い。この
方法により比較的低温にて均質な耐火性ガラスが得られ
る。
このゾル−ゲル法は特にガドリニウムを導入したガラ
スの製造および以下の5成分ガラスの製造に特に適して
いる: XnOm−CaO−Al2O3−SiO2−F (式中XnOmはX線不透過性物質Xの酸化物である) このような5成分ガラスは製造するのが難しい。しか
しながらゾル−ゲル法によれば以下の材料からガラスを
容易に製造することが可能となる: CaO源として、HClに溶解したCaCO3 Al2O3源としてイソブチルアルコールとエタノール中
のアルミニウム第2ブトキシド(Asb) SiO2源としてテトラエチルオルソシリケート F源として40%フッ化水素酸 Gd2O3源としてエタノール易溶性のGd(CO3 SrO源としてエタノール易溶性のSr(NO3 AsbはAl(NO3・9H2Oのエタノールまたはメタノー
ル溶液と置換してもよい、さらに、酸化カルシウムは50
℃でエタノールに溶解させた無水Ca(NO3と置換し
てもよい。これらの溶液は50℃でかきまぜながら混合す
る。これをその後70℃で還流してもよい。乾燥後、物質
を柔らかいうちに粉砕し、その後400から500℃の温度で
乾燥させる。これを必要なサイズとなるようさらに粉砕
する。
本発明に用いる含フッ素ガラスは従来の溶融法により
得られたものであってもよい。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
に好適に用いられる含フッ素ガラス組成物のいくつかを
表1に示す。パーセント表示は得られたガラスを分析し
て得た数値である。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
に用いるポリアルケン酸は、側鎖にカルボキシル基、リ
ン酸基、スルホン酸基等の繰り返しユニットを有する不
飽和化合物のホモポリマーまたはコポリマーである。ポ
リアルケン酸はガラスと反応してグラスアイオノマー形
成する。
特に側鎖にカルボキシル基を有する、不飽和モノ−、
ジ−およびトリカルボン酸のホモポリマー類およびコポ
リマー類が好ましい。具体的にはアクリル酸、マレイン
酸、クロトン酸、ケイ皮酸、3−ブテン−1,2,3トリカ
ルボン酸、トリカルバリル酸、2−ヒドロキシエチルメ
タクリレート、またはイタコン酸から誘導される繰り返
しユニットを含有するポリマー類またはコポリマー類が
例示される。また、光硬化性グラスアイオノマーセメン
トに用いられ、従来公知の不飽和基を側鎖に有するポリ
アルケン酸類も好適に用いられる。
本発明に用いるポリアルケン酸の分子量は、例えばポ
リアクリル酸の場合であれば1500〜150000、好ましくは
3000〜70000、より好ましくは3000〜30000である。ポリ
アルケン酸の分子量が大きくなりすぎると、含フッ素ガ
ラスとの反応時にゲル化が先に起こり、反応が進行しに
くくなるため好ましくない。
ポリアルケン酸と含フッ素ガラスとの配合比は0.000
5:1〜10:1、好ましくは1:3〜3:1である。ポリアルケン
酸と含フッ素ガラスとの配合比が1:3〜3:1の範囲にない
場合には、塩基あるいは酸のいずれかが過剰となり、得
られるフィラー中に残存するため、歯科用無機系セメン
ト粉材や歯科用セメント液剤等と反応性のフィラーを得
ることができる。しかしポリアルケン酸が10:1より多い
場合には残存するポリアルケン酸が過多となり好ましく
ない。一方ガラスが0.0005:1より多い場合にはガラスの
コアーの残存が多くなりすぎ、フッ素イオンのリリース
量が少なくなってしまうため好ましくない。
含フッ素ガラスとポリアルケン酸とを水の存在下に反
応させると通常、ゲル状の生成物が得られる。本発明の
プレフォームドグラスアイオノマーフィラーは好ましく
は得られたゲルを脱水、乾燥したキセロゲル(Xeroge
l)である。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
は好ましくは多孔質でありその全細孔容積は0.04〜2.0c
c/g、好ましくは0.04〜1.5cc/g、より好ましくは0.08〜
1.2cc/gである。細孔容積はガラスの組成、ポリアルケ
ン酸の種類および重合度、反応、乾燥条件を適宜選択す
ることにより調整し得る。
本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーの粒子サイズは0.01〜100μm、好
ましくは0.05〜30μm、より好ましくは0.1〜10μmで
ある。フィラーの粒子サイズが100μmを越えると歯科
用組成物に添加した時に物性の低下等が生じる。一方0.
01μm未満では実質上粉砕が困難であり、また凝集して
しまうため好ましくない。
本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーはポリアルケン酸と含フッ素ガラス
とを適当な量の水の存在下に反応させ、得られた反応生
成物を、必要に応じて乾燥、粉砕することによって製造
する。好ましくは反応は過剰量の水の存在下で行う。水
/(含フッ素ガラス+ポリアルケン酸)の配合比は0.1
〜10、好ましくは0.2〜7.5とする。水の量が少ないとゲ
ル化が先に生じたり、ガラスがコアとして残存したりす
るため、好ましくない。
ポリアルケン酸と含フッ素ガラスとの反応は通常の反
応器で反応させても、オートクレイブのごとき、加圧、
加温し得る反応器にて反応をおこなってもよい。反応は
常温から70℃の間で行うことが好ましい。しかしなが
ら、不活性条件下であれば150℃程度まで温度を上げて
もよい。
反応温度は反応系中の酸基の量から決めれば良いが、
数時間から数日間に及ぶ場合がある。本発明のプレフォ
ームドグラスアイオノマーフィラーの硬化反応は口腔内
で行うものではないため、硬化時間の短縮という要請は
少ない。しかし、数十時間に及ぶような反応時間を必要
とする場合には従来の歯科用グラスアイオノマーセメン
トの硬化反応のごとく、硬化時間の調節のためキレート
剤を添加することが好ましい。キレート剤としてはクエ
ン酸、酒石酸等、一般的に用いられる多塩基酸がいずれ
も好適に用いられる。
ポリアルケン酸と含フッ素ガラスとの反応は、反応開
始時には撹拌可能な状態であり、反応がほぼ終了した時
にはゆるいゲル状からヨーグルト状、もしくは重湯状と
なっていることが好ましい。
特に好ましい本発明のフッ素イオン徐放性グラスアイ
オノマーフィラーの製造方法としては以下の3つの製法
が挙げられる。
第1の製法は、グラスアイオノマーセメントを製造す
る際に従来から用いられている方法であり、含フッ素ガ
ラスとポリアルケン酸を水の存在下にて反応させ、生成
物を脱水、乾燥、することを含む方法である。含フッ素
ガラスとポリアルケン酸の配合比は上述の通りとすれば
よい。水/(含フッ素ガラス+ポリアルケン酸)の配合
比は0.1〜10、好ましくは0.2〜1.5とする。得られた固
形物は最初、取り扱いやすい大きさに粗砕し、その後所
望の粒子径へと粉砕すればよい。
第2の方法は粉末分散法である。この方法は含フッ素
ガラスを適当な粒子径に粉砕したものを、ポリアルケン
酸中に過剰の水の存在下で分散させて反応させる。ガラ
スの粒子径は好ましくは0.1〜10μmである。含フッ素
ガラスとポリアルケン酸の比は上述のとおりとすればよ
い。含フッ素ガラスのポリアルケン酸中への分散をたや
すくするために、過剰の水を存在させることが好まし
い。水/(含フッ素ガラス+ポリアルケン酸)の配合比
は1〜10、好ましくは1.5〜7.5とする。含フッ素ガラス
と酸の間の反応の進行度はpHの変化を測定することによ
りモニターできる。反応がほぼ完了した後、水を例えば
ホットエアオーブンにて除去する。最終的に乾燥して本
発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラーを得
る。乾燥は公知の方法のいずれを用いても良く、例えば
噴霧乾燥、凍結乾燥もしくは両方で行えば良い。凝集塊
が形成された場合にはさらに粉砕が必要となることがあ
る。未反応ガラスが残存する場合にはこの方法を繰り返
せば良い。
第3の製法は、反応同時微粉砕法、すなわち含フッ素
ガラスの熔融物をポリアルケン酸と過剰の水の存在下で
粉砕しつつ反応させる方法である。ボール−、ロッド
−、ビーズ−、遊星形−および振動−ミルを用いる、い
ずれの湿式微粉砕法を使用してもよい。この方法におい
ては、3mmから20mmまでのガラスの塊または熔融物をポ
リアルケン酸および過剰の水と共に適当なミルによって
粉砕する。酸はガラス原料の表面と反応し、表面上にセ
メントが形成されるにつれ、破壊されて新しいガラス面
が現れ、これが順に酸と反応して、結果として細かい粒
子の分散液が得られると考えられる。含フッ素ガラスと
ポリアルケン酸の配合比は上述の通りとする。水/(含
フッ素ガラス+ポリアルケン酸)の配合比は1.0〜10、
好ましくは1.5〜7.5とする。反応がほぼ完了した後、水
を除きフィラーを噴霧乾燥、凍結乾燥もしくはその両方
にて乾燥して本発明のプレフォームドグラスアイオノマ
ーフィラーを得る。
得られたプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
には、表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、
シラン化合物、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニ
ルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニ
ル(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロ
キシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルト
リメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシ
ラン等、またはチタン化合物、例えばイソプロピルトリ
イソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシル
ベンゼンスルホチタネート、テトラオクチルジ(トリデ
シルホスファイト)チタネート、ジクミルフェノレート
オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチ
レンチタネート等が例示される。好適にはシランカップ
リング剤、特にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキ
シシランで処理する。表面処理を施すことにより、樹脂
類と混合する場合の補強効果が得られる。
本来シランカップリング処理は100℃以上の熱処理を
伴うが、本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーは熱に比較的弱いため、熱処理は窒素等の不活性
ガス雰囲気下、100℃以下で行い、乾燥は減圧下若しく
は真空中でなるべく低温で行う必要がある。
本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーは長期間安定したフッ素イオンのリ
リースが得られる。すなわち、一度フッ素イオンをリリ
ースしたフィラーを乾燥させ、再度新たに水中へ分散し
てもフッ素イオン濃度としてはほぼ同じ値が得られる。
また、フッ素イオンの放出にかかる時間は短時間であ
り、使用時に水に分散すれば即時にフッ素イオンのリリ
ースが認められ、その後長期間にわたって安定なフッ素
イオンのリリースが得られる。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
は水の存在下で長期間にわたり比較的多量のフッ素イオ
ンをリリースする。フッ素イオンのリリースは化合物加
水分解によっても生じるが、主に化合物の解離を伴わな
い配位子交換によって生じる。このため、従来の歯科用
組成物に用いられるフッ化ナトリウム、フッ化アルミニ
ウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム
のごとく化合物が溶解し、これに従って組成物が崩壊す
ることがほとんどない。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
を水中に分散した場合、下記のごときフッ素イオン濃度
が得られる。
フィラー量 イオン交換水量 フッ素イオン濃度 2g 50g 39.2ppm 0.2g 50g 13.1ppm 0.02g 50g 3.11ppm 0.002g 50g 0.6ppm 0.0002g 50g 0.2ppm 上述のごとく、フィラー量が1/10になったからといっ
て、リリースされるフッ素イオン濃度が1/10になるので
はなく、水中よりフッ素イオンが消費されれば補給され
るという平衡状態にある。
本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーは、それ自体組成物の崩壊を伴わず
にフッ素イオンを徐放するという特徴を有するため、幅
広い用途に対応するフッ素リリースを必要とする歯科用
組成物に含有させることができる。
例えば、歯科用セメント、歯科用コンポジットレジ
ン、ボンディング剤、歯面処理剤、歯面処理用プライマ
ー、ボンディングプライマー、歯科接着性レジンセメン
ト、フィッシャーシーラント、歯科矯正用接着剤、歯面
および根面用コーティング剤、歯科用支台築造材、歯科
用裏層材、仮封剤、根管充填剤、覆卓剤、歯磨剤または
洗口剤等に用いることができる。
特に本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーを歯科用セメント等、口腔内で硬化させる必要のあ
る歯科用組成物に添加すれば、硬化をガラスとアイオノ
マーの反応に依存する必要がなく、使用可能な樹脂組成
物やセメント等の選択枝が増加する。
すなわち、本発明はさらにフッ素イオン徐放性プレフ
ォームドグラスアイオノマーフィラーを含有する歯科用
組成物を提供する。
代表的な歯科用組成物として、フッ素イオン徐放性プ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーと共に(a)
ラジカル重合性化合物および(b)硬化剤からなる樹脂
組成物を含有する歯科用組成物を提供する。
樹脂組成物は、適当な粘性を有し、かつ歯科用器具へ
のこびりつきを防止するため粘着性でないもの、フィラ
ーに対するバインダーとして働き、口腔内において強固
で安定な重合性マトリックスを形成するもの、および保
存中に沈殿したり分離したりしない安定な分散物を形成
すべく、フィラーと共存性であるものが好ましい。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
は親水性であるため樹脂も親水性のものが好ましい。一
方、界面活性剤や分散助剤を分散物を安定させるために
添加してもよい。親水性樹脂を使用すればフィラーから
のフッ素イオンの遊離を、唾液からのヒドロキシル基を
フィラー中のフッ素イオンと配位交換させることによっ
て容易にするという利点も付け加えられる。
理想的には、樹脂組成物は歯の組織に対して既知のセ
メント類に匹敵する接着性を有しているべきであり、こ
の接着性は好ましくは主鎖に沿った側鎖のカルボキシル
基を介したものである。この接着性は主鎖のカルボキシ
ル基をホスフェート、ホスホネートまたはアミノ基と置
換することによって増強することができる。これらによ
り樹脂の親水性を増加する。
本発明の歯科用組成物に用いられるラジカル重合性化
合物としては、広く歯科および化学工業の分野で用いら
れ、生体安全性の高い不飽和二重結合基を含有する化合
物から選択される。特に(メタ)アクリロイル基、(メ
タ)アクリルアミド基およびビニル基等の不飽和二重結
合基を1以上有するモノマー、オリゴマーまたはポリマ
ー類が好適に用いられる。
「(メタ)アクリレート」の語はアクリレート類とメ
タクリレート類の両方を意味する。
具体的には例えば不飽和二重結合基の他に炭化水素
基、フェニル基、水酸基、酸性基、酸アミド基、アミノ
基、チオール基、ジスルフィド基、環式基、複素環式
基、ハロゲン基、シラノール基、ピロリドン基、ウレタ
ン結合、エステル結合、エーテル結合、アルキレングリ
コール基等を1以上若しくは複数で有する化合物が挙げ
られる。特に好適なラジカル重合性化合物は上記の官能
基や結合を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体で
ある。
ラジカル重合性化合物は広い範囲の要求を満足させる
ため、通常2以上の成分を含有する。典型的には10〜70
重量%、好ましくは13〜50重量%、さらに好ましくは15
〜40重量%の希釈剤/粘性抑制剤;10〜89.8重量%好ま
しくは15〜70重量%、さらに好ましくは20〜50重量%の
強化性コポリマー類/オリゴマー類;0〜50重量%、好ま
しくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜10重量%の
親水性接着剤を含む親水性構造物;および0.1〜50重量
%、好ましくは0.3〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量
%の接着促進剤を含有する 好ましい希釈剤/粘性抑制剤にはモノ−、ジ−、トリ
−、テトラ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト類、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート
類、1,4−ジ[(メタ)アクリロキシ]ブチレン、1,6−
ジ[(メタ)アクリロキシ]ヘキサメチレン、ネオペン
チルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロ
ールプロパン−テトラ(メタ)アクリレート、メチル
(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよび
スチレンを含む。エチレングリコールジ(メタ)アクリ
レートおよびトリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レートが特に好ましい。所望によりこれらの化合物うち
の2又はそれ以上を共に用いてもよい。
上述の希釈剤/粘性抑制剤の樹脂中に占める量が10重
量%以下あるいは70重量%以上であれば、機械的性質お
よび粘着性に悪影響を及ぼすことがある。
好ましい強化コポリマー類/オリゴマー類にはウレタ
ンジ−、トリ−、テトラ−(メタ)アクリレート類を含
むウレタン(メタ)アクリレート類を含む。
「ウレタンジ−(メタ)アクリレート」は適当なジイ
ソシアネート類とヒドロキシアルキル−モノ−(メタ)
アクリレート類の1:2のモル比の反応生成物をいう。
「ウレタントリ−(メタ)アクリレート」は適当なジイ
ソシアネート類とヒドロキシアルキル−ジ−(メタ)ア
クリレート類、およびヒドロキシアルキル−モノ−(メ
タ)アクリレート類との1:1:1のモル比の反応生成物で
ある。ウレタンテトラ−(メタ)アクリレートは適当な
ジイソシアネート類とヒドロキシアルキル−ジ−(メ
タ)アクリレート類との1:2モル比の反応生成物であ
る。
これらの種類の化合物の特定の例としては:ジ−
[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキサメチ
レンジウレタン;ジ−[(メタ)アクリロキシプロピ
ル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン;ジ−[(メ
タ)アクリロキシブチル]トリメチルヘキサメチレンジ
ウレタン;ジ−[(メタ)アクリロキシペンチル]トリ
メチルヘキサメチレンジウレタン;ジ−[(メタ)アク
リロキシヘキシル]トリメチルヘキサメチレンジウレタ
ン;ジ−[(メタ)アクリロキシデシル]トリメチルヘ
キサメチレンジウレタン;ジ−[(メタ)アクリロキシ
エチル]イソホロンジウレタン;ジ−[(メタ)アクリ
ロキシプロピル]イソホロンジウレタン;ジ−[(メ
タ)アクリロキシブチル]イソホロンジウレタン;ジ−
[(メタ)アクリロキシペンチル]イソホロンジウレタ
ン;ジ−[(メタ)アクリロキシヘキシル]イソホロン
ジウレタン;ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]ヘキ
サメチレンジウレタン;ジ−[アクリロキシエチル]ト
リレンジウレタン;1,1,3−トリメチルヘキサメチレンジ
イソシアネートと2−ヒドロキシプロピル−ジ−(メ
タ)アクリレートのモル比1:2の反応生成物;イソホロ
ンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル−ジ−
(メタ)アクリレートのモル比1:2の反応生成物;トリ
レンイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル−ジ−
(メタ)アクリレートのモル比1:2の反応生成物;1,1,3
−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロ
キシプロピル−ジ−(メタ)アクリレートのモル比1:1:
1の反応生成物;およびイソホロンジイソシアネートと
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのモル比1:1:
1の反応生成物が挙げられる。
ジ−[(メタ)アクリロキシエチル]トリメチルヘキ
サメチレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシペ
ンチル]トリメチルヘキサメチレンジウレタン、ジ−
[(メタ)アクリロキシヘキシル]トリメチルヘキサメ
チレンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキシエチ
ル]イソホロンジウレタン、ジ−[(メタ)アクリロキ
シペンチル]イソホロンジウレタン;ジ−[(メタ)ア
クリロキシヘキシル]イソホロンジウレタンが特に好ま
しい。所望によりこれらの化合物の2またはそれ以上の
種類を共に用いることができる。
好ましい強化コポリマー類/オリゴマー類の他の例に
は2,2ビス[4−(2ヒドロキシ−3メタクリロイルオ
キシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4
−(2−メチルアクリロイルオキシエトキシ)−フェニ
ル]プロパン、2,2−ビス[4−メタクリロイルオキシ
フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリ
ロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス
(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ(5.2.1.02
6)デカンおよびジウレタンジメタクリレート類を含
む。
樹脂中の強化性コポリマー類/オリゴマー類の含有量
が10%未満である場合または90%を越える場合には、物
理的性質が悪化する場合がある。
好ましい親水性構造物の例は、水酸基あるいはピロリ
ドン基を有する重合性モノマーである。
好ましい例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)
アクリレート、2−または3−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、6−ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレー
ト、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10
−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、ジエチレン
グリコール−モノ(メタ)アクリレート、トリエチレン
グリコール−モノ(メタ)アクリレート、テトラエチレ
ングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレ
ングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ジプロピレ
ングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピ
レングリコール−モノ(メタ)アクリレート、1,2−ま
たは1,3−または2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、2−ヒドロキシプロピル−1,3−ジ(メ
タ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル−1,2−ジ
(メタ)アクリレート、2,3,4−トリヒドロキシブチル
(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)
(メタ)アクリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプ
ロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリ
ロイル−1,3−ジヒドロキシプロピルアミン、ビニルピ
ロリドンおよび1−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ナフト
キシプロピル(メタ)アクリレートおよびビスフェノー
ル−Aとグリシジル(メタ)アクリレートの付加物のご
ときフェノールのグリシジル(メタ)アクリレート付加
物および、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
が挙げられる。2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)ア
クリルアミド、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)
(メタ)アクリレートおよびビニルピロリドンが特に好
ましい。これらの化合物を2またはそれ以上共に使用し
てもよい。好ましい親水性接着剤は4−アクリロキシエ
チルトリメリット酸、4−メタクリロキシエチル−トリ
メリット酸無水物、EP237233、EP334934、EP155312、EP
055453、GB2172889、US4579382、US4537940、US451434
2、US4515930、US4544467、US3882600、US4499251、US4
383052、US4368043、US4259117、US4259075、US422278
0、US4182035、US4039722、US3984500、US3957918に記
載されたリン酸エステル類が挙げられる。これらは以下
の構造を有する: 樹脂中に占める上記の化合物の量が50重量%を越える
場合、機械的性質が悪化することがある。
好ましい接着促進剤としてはアクリロイル、メタクリ
ロイル、ビニルおよびアリル基を有する重合性不飽和基
をカルボキシル基、ホスホリック基、酸無水物残基、シ
ロキサン基、酸アミド基のごとき酸性基と共に有するモ
ノマー、オリゴマーまたはポリマー類があるが、モノマ
ーが特に好ましい。
酸性重合性モノマーには、モノ−、ジ−、トリ−また
はテトラカルボン酸とこれらの誘導体、(メタ)アクリ
ル酸、4−(メタ)アクリロキシエチレントリメリット
酸、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸、
4−(メタ)アクリロキシペンチルトリメリット酸、4
−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸、4−
(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、6−(メ
タ)アクリロキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカル
ボン酸、N,O−ジ(メタ)アクリロキシチロシン、N−
(メタ)アクリロキシチロシン、N−(メタ)アクリロ
キシフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロキシ−p
−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−ア
ミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミ
ノサリチル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香
酸、p−ビニル安息香酸、o−(メタ)アクリロキシチ
ロシンアミド、N−フェニルグリシン−グリシン(メ
タ)アクリレート、N−トルイルグリシン−グリシジル
(メタ)アクリレート、ピロメリット酸と2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレートのモル比1:2の反応生成
物、11−(メタ)アクリロキシ−1,1−ウンデカンジカ
ルボン酸、ビス−[2−(メタ)アクリロキシエチル]
ホスホリック酸、[2−(メタ)アクリロキシエチルフ
ェニル]ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデ
シルジハイドロゲンホスフェート、ビニルホスホニック
酸、p−ビニルベンジルホスホニック酸、4−(メタ)
アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メ
タ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸無水物、N−
(メタ)アクリロキシエチルチロシンアミドおよびガン
マ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があ
る。
4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4
−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、
4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸、4
−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸無水
物、N−フェニルグリシン−グリシジル(メタ)アクリ
レート、N−トルイルグリシン−グリシジル(メタ)ア
クリレート、ピロメリット酸無水物と2−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレートのモル比1:2の付加物、11−
(メタ)アクリロキシ−1,1−ウンデカンジカルボン
酸、[2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル]ホス
ホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルジヒドロ
ゲンホスフェート類、p−ビニルベンジルホスホニック
酸およびガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シランが上記のうちでも特に好ましい。これらの化合物
の2またはそれ以上の種類を共に使用してもよい。
樹脂中の接着促進剤の量が0.1重量%未満または50重
量%を越えると、接着性の悪化が生じる場合がある。
本発明の歯科用組成物に用いる硬化剤としては、ラジ
カル重合触媒として広く歯科および化学工業の分野で用
いられているラジカル重合の開始剤および促進剤より選
択すればよい。硬化剤を選択することによって本発明の
歯科用組成物は光重合、化学重合または光重合と化学重
合の両方(デュアルキュア)により硬化させることがで
きる。
ラジカル重合開始剤としては、化学重合用の有機過酸
化物、紫外、あるいは可視光線重合用の増感剤であるベ
ンゾイン誘導体、α−ジケトン類およびトリアルキルホ
ウ素類から選択される。ラジカル重合性化合物および所
望の硬化方法に合わせてこれらの開始剤より1以上を選
択すればよい。
有機過酸化物としては具体的に、ベンゾイルパーオキ
サイド、4,4'−ジクロロパーオキサイド、ジクミルパー
オキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブ
チルパーオキシマレイックアシッド等が挙げられる。特
に好ましくはベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパ
ーベンゾエートおよびtert−ブチルパーオキシマレイッ
クアシッドである。
紫外あるいは可視光線の増感剤としてはベンゾイン、
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテ
ル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、9,
10−アントラキノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジ
メチル−9H−チオキサンチン−2イルオキシ)−N,N,N
−トリメチル−1−プロパンアンモニウムクロライド、
カンファーキノン、ベンジル、4,4'−ジクロロ−ベンジ
ルおよびジアセチルが光重合の開始剤として好ましい。
ラジカル重合促進剤としては、アミン類、バルビツー
ル酸誘導体、有機錫化合物およびスルフィン酸のアルカ
リ金属またはアルカリ土類金属塩、あるいはアミド塩か
ら硬化方式に応じて選択すればよい。
好ましい重合促進剤としては、N−メチルジエタノー
ルアミン、トリブチルホスフィン、アリルチオ尿素、お
よびN,N−ジメチル−p−トルイジンが挙げられる。さ
らに、光重合の場合には、アミン類およびバルビツール
酸類のごとき有機窒素化合物または有機錫化合物が含ま
れる。
特に光重合の促進剤の例としては、N,N−ジメチル−
P−トルイジン、N,N−(2−ヒドロキシエチル)−p
−トルイジン、トリエチルアミン、N−メチルエタノー
ルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−
フェニルグリシン−グリシジルメタクリレート、バルビ
ツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1−メチル
バルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、5
−ブチルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール
酸、5−エチルバルビツール酸、5−イソプロピルバル
ビツール酸、5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3
−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチ
ル−5−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−
5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−
シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−
シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−ジメチルバル
ビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツー
ル酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1
−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、チオバ
ルビツール酸、1,3,5−トリメチル−2−チオバルビツ
ール酸、5−ブチル−2−チオバルビツール酸、これら
のバルビツール酸誘導体の塩類(特にアルカリ金属また
はアルカリ土類金属の塩)、ジ−n−ブチル−錫−マレ
エート、ジ−n−ブチル−錫−マレエート(ポリマ
ー);ジ−n−オクチル−錫−マレエート、ジ−n−オ
クチル−錫−マレエート(コポリマー)、ジ−n−オク
チル−錫−ラウレートおよびジ−n−ブチル−錫−ジラ
ウレートが挙げられる。
スルフィン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属
あるいはアミド塩としては、芳香族スルフィン酸または
その塩が好適に用いられる。好ましくは歯科領域におい
て通常使用されるベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスル
フィン酸ナトリウム、アルキル基置換ベンゼンスルフィ
ン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム
等が例示される。芳香族スルフィン酸アミドとしてはN,
N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸アミド、ベン
ゼンスルフィン酸アミド、N,N−ジメチル−p−トルエ
ンスルフィン酸アミド、ベンゼンスルフィン酸アミド、
N,N−ジメチル−p−トルエンスルフィン酸モルホリ
ド、p−トルエンスルフィン酸モルホリド等が例示され
る。
本発明に用いる硬化剤のラジカル重合促進剤と開始剤
の組み合わせとしては、室温で光学反応させる場合に
は、トリ−n−ブチルボラン、芳香族第三アミン/ベン
ゾイルパーオキシド、芳香族スルフィン酸またはその塩
/芳香族第三アミン/ジアシルパーオキシド、バルビツ
ール酸誘導体/芳香族第三アミン/ジアシルパーオキシ
ド、バルビツール酸誘導体/銅イオン/ハロゲン化合
物、芳香族スルフィン酸またはその塩/芳香族第三アミ
ンt−ブチルパーオキシマレイックアシッド、芳香族ス
ルフィン酸アミド/芳香族第三アミン/t−ブチルパーオ
キシマレイックアシッドの組み合わせが好適に用いられ
る。また、ナフテン酸コバルト/メチルエチルパーオキ
シドの組み合わせも挙げられる。
光重合で硬化させる場合の、特に好ましい光重合開始
剤と促進剤はカンファーキノン、ベンジル、ジアセチ
ル、N,N−ジ−メチルアミノエチルメタクリレート、N,N
−ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,3,5−トリ
メチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、1
−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、1,3−ジメ
チル−5−イソブチルバルビツール酸、1−シクロヘキ
シル−5−エチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチル
−2−チオバルビツール酸、およびジ−n−ブチル−錫
−ジラウレートを含む。所望により上述の光重合の開始
剤および促進剤のうち2またはそれ以上を共に使用して
もよい。
また、光重合および化学重合の両方により硬化、すな
わちデュアルキュアさせる場合は上述の化学重合触媒お
よび光重合触媒から必要に応じて2以上選択すればよ
い。
その他好ましいものとしてGB1,408,265号に記載され
た触媒が挙げられる。すなわち (a)以下の構造 (式中、Aは同じでも異なった基であってもよく、ヒド
ロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基であり、2つの
A基は直接または2価ヒドロカルビル基によってリンク
していてもよく、または2つのA基は一緒になって融合
した芳香族環系を形成していてもよい) を有する少なくとも1つの光増感剤; および (b)以下の構造: (式中、ユニットRは同じでも異なっていても良い水素
原子、ハイドロカルビル基、置換されたハイドロカルビ
ル基であり、2つのRが窒素原子と共に環系を構成して
もよく、2より多くないユニットRが水素原子であるか
置換ハイドロカルビル基であり、窒素原子は直接芳香族
基Rに結合しており、少なくとも1つのその他のユニッ
トRが窒素原子に結合した−C(H)−基を有してい
る。) を有する少なくとも1の光増感剤が活性化されたときに
光増感剤を還元することができる還元剤 からなる触媒である。
GB2218104に記載された触媒もまた好ましい、特にジ
−ブチル錫ジラウレートとカンファーキノン;および以
下の構造を有する触媒が好ましい: GB1408265およびGB2218104に記載された触媒は特に電
磁波スペクトルの青色領域の光、すなわち470nm付近を
中心とする光で硬化させる場合に好適に用いられる。そ
の他の触媒はより広いスペクトル、赤、オレンジ、黄、
および緑色光をカバーする。
硬化剤の量が樹脂組成物の0.1重量%未満、または15
重量%を越える場合、樹脂の接着性が悪化することがあ
り、好ましくない。
本発明の歯科用組成物に対する、プレフォームドグラ
スアイオノマーフィラーの配合量は1〜90重量%、好ま
しくは5〜80重量%である。プレフォームドグラスアイ
オノマーフィラーの含有量が1重量%未満の場合には好
適なフッ素イオン徐放能が得られず、また90重量%を越
える場合には歯に処置し、硬化させた後の強度が弱くな
るため好ましくない。
本発明の歯科用組成物には、プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーに加えて歯科用途に必要な諸特性を
得るため、その他の無機フィラー、有機複合フィラー、
有機ポリマー等をさらに含有してもよい。
無機フィラーとしては、公知のフィラーがいずれも用
いられるが、特に超微粒子のコロイダルシリカ、石英、
シリカ、カオリン、タルク、バリウムガラス、ストロン
チウムガラス、アルミナ、アルミノシリケート、窒化珪
素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウ
ム、ガラス粉末等が好適に用いられる。
有機複合フィラーとしては、例えば熱硬化性樹脂硬化
物又は無機充填剤を含む熱硬化性樹脂硬化物等を粉砕し
た有機充填剤、無機充填剤と有機充填剤との複合充填
剤、例えば超微粒子コロイダルシリカと樹脂の混合硬化
物を粉砕して得られるフィラー等が好適に用いられる。
有機ポリマーとしてはポリスチレン、ポリメチルメタ
クリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルメ
タクリレートとポリエチルメタクリレートの共重合体等
が好適に用いられる。
本発明の歯科用組成物には棚寿命安定剤をさらに含有
してもよい。好ましい棚寿命安定剤としては、ハイドロ
キノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化
ヒドロキシトルエン等が挙げられる。
さらに本発明の歯科用組成物には水や有機溶剤を含有
していてもよい。例えば水、メチルアルコール、エチル
アルコール、酢酸エチル、クロロホルム、メチルエチル
ケトン、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が
例示されるが、水、エチルアルコール、アセトンが特に
好適に用いられる。
硬化剤が光重合の開始剤および促進剤の組み合わせか
ら選択される光硬化性触媒であり、樹脂の硬化が光重合
反応のみによってなされる場合には、予めラジカル重合
性化合物と光硬化性触媒とを混合し、ここへ本発明のプ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーを分散させる
のが好ましい。すでに含フッ素ガラスとポリアルケン酸
は反応しており、さらなる硬化反応の必要がないため、
歯科用組成物の硬化は樹脂組成物の硬化のみにより制御
される。通常の昼光下での硬化は非常に遅いため、実質
的には明るい光に曝されるまで硬化しないワンパック光
硬化性セメントを製造することができる。
すなわち本発明は、光重合性樹脂組成物中にフッ素イ
オン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラー
を分散させてなる、使用前に手動あるいは機械により混
合する必要性のないペースト状ワンパック光硬化性セメ
ントを提供する。本発明のワンパック光硬化性歯科用セ
メントは通常の昼光下では硬化せず、歯に処置した後に
光照射すれば口腔内ですばやく硬化するため、従来のセ
メントの不均一な混合や、硬化後のセメント内への気泡
の混入および硬化時間の遅延、保存時の硬化等の問題を
解決する一方、従来のグラスアイオノマーにも増して、
良好なフッ素イオンの徐放性を示す優れた歯科用セメン
トであるといえる。
本発明のワンパック光硬化性歯科用セメントに配合す
る場合、プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの
粒子サイズは0.01〜100μmであればよいが、0.1〜10μ
mが好ましい。また、樹脂組成物のプレフォームドグラ
スアイオノマーフィラーに対する配合比は、体積比で2
0:80から70:30とすることが好ましい。
この場合、本発明のプレフォームドグラスアイオノマ
ーフィラーに加えて、その他の無機系フィラー、有機複
合フィラー、有機ポリマー等を添加しても十分なフッ素
イオンリリースが得られ、本発明の目的に適合する。
本発明のワンパック光硬化性歯科用セメントにはプレ
フォームドグラスアイオノマーフィラー以外のフッ素イ
オンをリリースする化合物を含有していてもよく、例え
ばフッ化ナトリウム、フッ化アルミニウム、フッ化カリ
ウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウム等の加水分解
しやすいフッ化物が好適に用いられる。樹脂組成物に
は、セメントからのこのようなフッ素イオンの遊離を容
易にするため好ましくは親水性樹脂組成物を含有させ
る。
本発明のワンパック光硬化性歯科用セメントを製造す
るには、ラジカル重合性化合物と光硬化性触媒とをあら
かじめ混合し、ここへプレフォームドグラスアイオノマ
ーフィラーを分散させればよい。
本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
はグラスアイオノマー反応により製造され、それ自体で
フッ素イオンを徐放し、しかも組成物の崩壊を伴わない
という効果を有する。このような効果を従来から歯科の
分野で用いられている公知のセメントの操作性や性能を
改善すべく、リン酸亜鉛セメント、カルボキシレートセ
メント、グラスアイオノマーセメント等に配合してもよ
い。
すなわち、本発明は、フッ素イオン徐放性プレフォー
ムドグラスアイオノマーフィラーに加えて(A)歯科用
無機系セメント粉材および(B)歯科用セメント液剤を
含有する歯科用組成物を提供する。
歯科用無機系セメント粉材としては、公知の粉材のい
ずれかを用いてもよく、酸化亜鉛、グラスアイオノマー
セメント用ガラス、またはその混合物等が挙げられる。
歯科用無機系セメント液剤としては、公知のものがい
ずれも好適に用いられ、リン酸、ユージノール、エトキ
シベンゾイックアシッド、ポリアルケン等のホモポリマ
ー類やコポリマー類が例示される。
歯科用無機系セメント、特にグラスアイオノマーセメ
ントにおいては、粉材および液剤は本発明のプレフォー
ムドグラスアイオノマーフィラーの製造に用い得るもの
として上述の含フッ素ガラス類およびポリアルケン酸類
をそのまま用いてもよい。
セメント硬化反応調節剤としても公知のものがいずれ
も用いられ、具体的には酒石酸、クエン酸等のキレート
化剤、リン酸、酢酸亜鉛等が例示される、さらに、X線
不透過材、タンニン酸およびその誘導体、顔料等の添加
剤を含んでもよい。
歯科用無機系セメントに本発明のプレフォームドグラ
スアイオノマーフィラーを添加する場合、その配合量は
セメント組成物の種類に応じて決定すれば良い。典型的
には1〜90重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ま
しくは8〜40重量%添加する。1重量%未満の場合に
は、好適なフッ素イオン徐放性が得られず、90重量%を
越えるとセメントの硬化性を低下させる。
さらに本発明の歯科用組成物には当該フィラーを含有
するセメント類に加えてラジカル重合性化合物および硬
化剤からなる樹脂組成物を配合してもよい。樹脂組成物
としては上述のものがいずれも好適に用いられる。さら
に従来から歯科分野で開示されている、側鎖に不飽和基
を有するポリアルケン酸類も有用である。
無機系セメントに加えて樹脂組成物を含有させる場合
には、歯科用組成物は本来のセメント硬化反応に加えて
光重合および/または化学重合により硬化される。
本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーは、水の存在下では迅速にフッ素イ
オンを放出することにより、フッ素による歯牙強化、う
蝕予防および知覚過敏防止効果を奏する練歯磨、液状歯
磨、洗口剤等の口腔用組成物に添加してもよい。
本発明の口腔用組成物には、プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーの他に、任意成分として剤型に応じ
て適当な成分を添加し、通常の方法にて調製すればよ
い。例えば練歯磨を調製する場合には、研磨剤、潤滑
剤、界面活性剤、甘味料、防腐剤、各種有効成分を配合
し、これらの成分と水とを混和して製造すればよい。具
体的には研磨剤として沈降性シリカ、シリカゲル、アル
ミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨
剤、第二リン酸カルシウム二水和物および無水物、ピロ
リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウ
ム、二酸化チタン、アルミナ、炭酸マグネシウム、第三
リン酸マグネシウム、ゼオライト、合成樹脂系研磨剤
等、粘潤剤としてはグリセリン、ソルビット、プロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール等、粘結剤とし
てカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシ
エチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸ナトリウ
ム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリ
ビニルアルコール、ローカーストビーンガム、カーボポ
ール、グアガム、モンモリロナイト、ゼラチン等、界面
活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィン
スルフォン酸ナトリウム、N−アシルサルコシネート、
N−アシルグルタメート、N−アシルタウレート、しょ
糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシ
エチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル
等、甘味剤としてサッカリンナトリウム、ステビオサイ
ド、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペ
リジルジヒドロカルコン、パラルチン等、防腐剤として
パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等、
各種有効成分としてアラントインクロルヒドロキシアル
ミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾ
チーム、グリチルリチン酸およびその塩類、塩化ナトリ
ウム、酢酸dl−α−トコフェロール、α−ビサボロー
ル、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン
塩類、塩化セチルピリジニウム、アズレン、グリチルレ
チン酸、銅クロロフィリンナトリウム、乳酸アルミニウ
ム、ベルベリン、ヒドロキサム酸およびその誘導体、デ
キソトラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、ポリビニル
ピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼト
ニウム、ジヒドロコレステロール、トラネキサム酸、ト
リクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキ
ス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の
抽出物など、香料として1−メントール、カルボン、ア
ネトール等、色素として青色1号、黄色4号等が例示さ
れる。
また本発明の口腔用組成物は適当な容器、例えばアル
ミニウム箔をラミネートしたチューブ状のプラスチック
製容器、プラスチック瓶容器等に収容してもよい。ま
た、粉剤をティーバック状の容器に入れて供することも
可能である。
歯磨類の場合には、口腔内のフッ素イオン濃度を0.00
01〜2%、特に0.001〜0.2%とするのに十分な量のプレ
フォームドグラスアイオノマーフィラーを用いるのが好
ましい。さらに、他のフッ素イオンをリリースする化合
物を併用してもよい。
上述のごとく、本発明のフッ素イオン徐放性プレフォ
ームドグラスアイオノマーフィラーを含有する歯科用組
成物は必ずしもワンペーストタイプである必要はなく、
ワンペーストタイプ、ツウペーストタイプ、スリーペー
ストタイプ、ペースト/液タイプ、粉/液タイプ、1液
タイプ等、通常歯科用組成物として供されているいずれ
の剤型のものであってもよい。
本発明は以下の実施例によりさらに詳細に説明するこ
とができる: 実施例1 ガラス(G1)を21.0%の酸化アルミニウム、37.4%の
シリカ、24.8%のフッ化カルシウムおよび17.3%のフッ
化アルミニウムを共に融解することにより調製した。得
られたガラスを平均粒径5μmに粉砕した。
実施例2 ガラス(G2)を18.8%の酸化アルミニウム、34.4%の
シリカ、22.4%のフッ化カルシウム、8.4%のリン酸ア
ルミニウムおよび16.0%のフッ化アルミニウムを共に融
解することにより調製した。得られたガラスを平均粒径
5μmに粉砕した。
実施例3 ガラス(G3)を18.2%の酸化アルミニウム、37.0%の
シリカ、17.3%のフッ化カルシウム、12.4%のリン酸ア
ルミニウム、9.6%のフッ化アルミニウムおよび5.5%の
クリオライト(cryolite:Na3AlF6)を共に融解すること
により調製した。得られたガラスを平均粒径5μmに粉
砕した。
実施例4 ガラス(G4)を15.2%の酸化アルミニウム、36.2%の
シリカ、23.4%のフッ化カルシウムおよび25.2%のフッ
化アルミニウムを共に融解することにより調製した。得
られたガラスを平均粒径3μmに粉砕した。
実施例5 ガラス(G5)を18.2%の酸化アルミニウム、32.6%の
シリカ、34.0%のフッ化ストロンチウムおよび15.2%の
フッ化アルミニウムを共に電気溶融することにより調製
した。得られたガラスを平均粒径2μmに粉砕した。
実施例6 ガラス(G6)を18.1%の酸化アルミニウム、26.3%の
シリカ、20.4%のフッ化カルシウム、1.8%のフッ化ア
ルミニウム、5.3%のクリオライト、4.3%のリン酸アル
ミニウムおよび23.8%の酸化ガドリニウムを共に電気溶
融することにより調製した。得られたガラスをジェット
ミルにて平均粒径2μmに粉砕した。
実施例1から6の組成物を表2にまとめた。
実施例7〜12 G7〜G12のガラスを表2に示した組成にて調製した。
実施例13 ゾル−ゲル法を用いたガラスの合成 Solex.1:SiO2・33.6モル%;Al2O3・13.5モル%;CaO・1
3.5モル%;F・39.4モル% 1L容の4ツ口フラスコに61.3g(0.3モル)のAl(O−
isoPr)、62.5g(0.3モル)のSi(OEt)および250m
lのベンゼンを仕込んだ。フラスコには温度計、コンデ
ンサおよびテフロン製スターラーが設置してある;混合
物を透明な溶液が得られるまでかきまぜた。
100ml容の滴下漏斗に35.4g(0.15モル)のCa(NO3
・4H2O、30.0g(0.073モル)のH2SiF6および35mlの脱
イオン水を仕込んだ。Ca(NO3・4H2Oが完全に溶解
したらこの滴下漏斗をフラスコにつなぎ、溶液を1時
間、室温にてかきまぜながら添加した。発熱変化は50℃
で30分後に生じた。
反応混合物はその後90℃で3時間、かきまぜ続けなが
ら還流した。その後室温まで冷却し、湿ったゲルをデカ
ンテーションにより回収した。この湿ったゲルは500ml
の脱イオン水で2回洗浄し、乾燥した。
乾燥法は以下の通りである: 50℃−12時間→110℃−5時間→150℃−12時間 実施例14 ゾル−ゲル法を用いたガラスの合成 Solex.2:SiO2・33.6モル%;Al2O3・13.5モル%;SrO・1
3.5モル%;F・39.4モル% 1L容の4ツ口フラスコに112.5g(0.3モル)のAl(N
O3・9H2O、62.5g(0.3モル)のSi(OEt)および2
50mlのEtOHを仕込んだ。フラスコには温度計、コンデン
サおよびテフロン製スターラーが設置してある;混合物
を透明な溶液が得られるまでかきまぜた。
100ml容の滴下漏斗に83.5g(0.3モル)のSr(NO3
および35mlの脱イオン水を仕込んだ。Sr(NO3が完
全に溶解したらこの滴下漏斗をフラスコにつなぎ、溶液
を1時間、室温にてかきまぜながら添加した。発熱変化
は50℃で30分後に生じた。
100ml容の滴下漏斗に30.0g(0.073モル)のH2SiF6
よび35mlのEtOHを仕込み、この滴下漏斗をフラスコにつ
なぎ、溶液を0.5時間、室温にてかきまぜながら添加し
た。発熱変化は50℃で30分後に生じた。
反応混合物はその後90℃で3時間、かきまぜ続けなが
ら還流した。その後室温まで冷却した。乾燥法は以下の
通りである: 50℃−24時間→110℃−5時間→450℃−12時間 実施例15 ゾル−ゲル法を用いたガラスの合成 Solex.3:SiO2・28.9モル%;La2O3・14.5モル%;SrO・1
4.5モル%;F・42.2モル% 1L容の4ツ口フラスコに129.9g(0.3モル)のLa(N
O3・6H2O、62.5g(0.3モル)のSi(OEt)および2
50mlのEtOHを仕込んだ。フラスコには温度計、コンデン
サおよびテフロン製スターラーが設置してある;混合物
を透明な溶液が得られるまでかきまぜた。その後1.5時
間還流した。
100ml容の滴下漏斗に31.7g(0.15モル)のSr(NO3
および35mlの脱イオン水を仕込んだ。Sr(NO3
完全に溶解したらこの滴下漏斗をフラスコにつなぎ、溶
液を1時間、室温にてかきまぜながら添加した。これを
その後3時間還流した。
100ml容の滴下漏斗に18.6g(0.438モル)のHF(47
%)および35mlのEtOHを仕込み、この滴下漏斗をフラス
コにつなぎ、溶液を0.5時間、室温にてかきまぜながら
添加した。
反応混合物はその後3時間、かきまぜ続けながら還流
した。その後室温まで冷却した。乾燥法は以下の通りで
ある: 50℃−24時間→110℃−5時間→450℃−5時間 実施例16 ゾル−ゲル法を用いたガラスの合成 Solex.4:SiO2・30.8モル%;Al2O3・5.8モル%;Gd2O3
5.8モル%;CaO・11.5モル%;F・46.2モル% 1L容の4ツ口フラスコに56.3g(0.15モル)のAl(N
O3・9H2O、67.7g(0.15モル)のGd(NO3・6H
2O、62.5gのSi(OEt)および250mlのEtOHを仕込ん
だ。
フラスコには温度計、コンデンサおよびテフロン製ス
ターラーが設置してある;混合物を透明な溶液が得られ
るまでかきまぜた。その後1.5時間還流した。100ml容の
滴下漏斗に35.4(0.15モル)のCa(NO3・4H2Oおよ
び60mlの脱イオン水を仕込んだ。
Ca(NO3・4H2Oが完全に溶解したらこの滴下漏斗
をフラスコにつなぎ、溶液を1時間、室温にてかきまぜ
ながら添加した。これをその後3時間還流した。
100ml容の滴下漏斗に18.8g(0.1モル)のNa2SiF6およ
び60mlの脱イオン水を仕込み、この滴下漏斗をフラスコ
につなぎ、溶液を0.5時間、室温にてかきまぜながら添
加した。
反応混合物はその後3時間、かきまぜ続けながら還流
した。その後室温まで冷却し、湿ったゲルをデカンテー
ションにより回収した。湿ったゲルは脱イオン水500ml
で2回洗浄し、乾燥した。乾燥法は以下の通りである: 50℃−24時間→110℃−5時間→150℃−12時間 実施例17 ゾル−ゲル法を用いたガラスの合成 Solex.5:SiO2・30.0モル%;Gd2O3・10.0モル%;CaO・1
0.0モル%;F・50.0モル% 1L容の4ツ口フラスコに225.6g(0.5モル)のGd(N
O3・6H2O、225g(1.08モル)のSi(OEt)および3
LのEtOHを仕込んだ。
フラスコには温度計、コンデンサおよびテフロン製ス
ターラーが設置してある;混合物を透明な溶液が得られ
るまでかきまぜた。これをその後2時間還流した。
300ml容の滴下漏斗に173g(0.42モル)のH2SiF6(35
重量%溶液)および100mlのEtOHを仕込んだ。
H2SiF6が完全に均一となったらこの滴下漏斗をフラス
コにつなぎ、溶液を2時間、室温にてかきまぜながら添
加した。これをその後1時間還流した。300ml容の滴下
漏斗に118.1g(0.5モル)のCa(NO3・4H2Oおよび20
0mlのEtOHを仕込み、この滴下漏斗をフラスコにつな
ぎ、溶液を1時間、室温にてかきまぜながら添加した。
反応混合物はその後3時間、かきまぜ続けながら還流
した。その後室温まで冷却した。乾燥法は以下の通りで
ある: 50℃−24時間→110℃−5時間→450℃−5時間 実施例18 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの合成 適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえ
た1L容の3ツ口フラスコへ、60.0gのG1ガラスと524mlの
脱イオン水を連続的にかきまぜながら懸濁溶液として仕
込んだ。96.0gのポリアクリル酸(PAA)(固形分40重量
%程度、重合度約1100)および238mlの脱イオン水を500
ml容のビーカーに仕込んだ。
G1ガラスが完全に分散された時にPAA溶液をフラスコ
へ1時間かけて添加した。
このビーカーを238gの脱イオン水で洗浄し、この洗浄
液をフラスコへ加えた。
反応混合物を48〜52℃へ加熱した。この温度を3.5時
間保持した。
ゲル化時間はおよそ1時間である。
この混合物(含水ゲル)を室温で一晩放置した。pHは
5.5であった。
この含水ゲルを5日間、凍結乾燥機を用いて乾燥し
た。得られた乾燥ゲルをボールミルを用いて、平均粒径
5.0μmとなるよう粉砕した。
実施例19 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの合成 適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえ
た1L容の3ツ口フラスコへ、60.0gのG2ガラスと524mlの
脱イオン水を連続的にかきまぜながら懸濁溶液として仕
込んだ。96.0gのポリアクリル酸(PAA)(固形分40重量
%程度、重合度約1100)および238mlの脱イオン水を500
ml容のビーカーに仕込んだ。
G2ガラスが完全に分散された時、PAA溶液をフラスコ
へ1時間かけて添加した。
このビーカーを238gの脱イオン水で洗浄し、この洗浄
液をフラスコへ加えた。
反応混合物を48〜52℃へ加熱した。この温度を3.5時
間保持した。
ゲル化時間はおよそ1時間である。
この混合物(含水ゲル)を室温で一晩放置した。pHは
5.0であった。
この含水ゲルは噴霧乾燥機を用いて115℃で乾燥し
た。得られた半乾燥ゲルはさらに1日間凍結乾燥機を用
いて乾燥した。この乾燥ゲルの平均粒径は2.0μmであ
ったので、ボールミルによる処理は必要なかった。
実施例20 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの合成 適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえ
た1L容の3ツ口フラスコへ、60.0gのG10ガラスと524ml
の脱イオン水を連続的にかきまぜながら懸濁溶液として
仕込んだ。
96.0gのポリアクリル酸(PAA)(固形分40重量%程
度、重合度約1100)および238gの脱イオン水を500ml容
のビーカーに仕込んだ。
G10ガラスが完全に分散された時にPAA溶液をフラスコ
へ1時間かけて添加した。このビーカーを238gの脱イオ
ン水で洗浄し、この洗浄液をフラスコへ加えた。反応混
合物を48〜52℃へ加熱した。この温度を12時間保持し
た。
ゲル化時間はおよそ5時間である。
この混合物(含水ゲル)を室温で一晩放置した。pHは
5.0であった。
この含水ゲルは冷凍庫で−10℃にて一晩凍結し、その
後室温で融解させた。この操作により含水ゲルはケーク
と濾液に分けられる。濾過の後、ケークを凍結乾燥機を
用いて2日間乾燥させた。得られた乾燥ゲルはボールミ
ルを用いて、平均粒径が4.0μmとなるように粉砕し
た。
実施例21 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの合成 適当なスターラー、温度計およびコンデンサをそなえ
た1L容の3ツ口フラスコへ、96.0gのポリアクリル酸(P
AA)(固形分40重量%程度、重合度約1100)および238g
の脱イオン水を連続的にかきまぜながら仕込んだ。60.0
gのSolex.1ガラスと524mlの脱イオン水を懸濁溶液とし
て500ml容のビーカーに仕込んだ。PAA溶液が完全に均一
になった時、ガラス懸濁溶液をフラスコへ2時間かけて
添加した。
反応混合物を48〜52℃へ加熱した。この温度を3時間
保持した。
ゲル化時間はおよそ2時間である。
この混合物(含水ゲル)を室温で一晩放置した。pHは
5.0であった。
この含水ゲルは液体窒素を用い、1時間凍結し、その
後室温で融解させた。この操作によってゲルはケークと
濾液に分離する。
濾過の後、ケークを凍結乾燥機を用いて21日間乾燥さ
せた。得られた乾燥ゲルはジェットミルを用いて、平均
粒径が2.5μmとなるように粉砕した。
実施例22 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの合成 温度計およびトルク計をそなえた500ml容の混練機
へ、69.0gのコポリマー(固形分約50重量%、アクリル
酸モノマー70モル%およびイタコン酸モノマー30モル%
を含有するコモノマー、重合度約1000)を仕込んだ。
192.0gのSolex.4ガラスと100mlの脱イオン水を懸濁溶
液として500ml容のビーカーに仕込んだ。このガラス懸
濁溶液を混練機へ10分間かけて添加した。
反応混合物を5〜7℃へ冷却した。連続して反応及び
グラインドを続けながらこの温度を2時間保持した。
ゲル化時間はおよそ30分であった。
この混合物を室温で一晩放置した。得られた混合物を
振動ミルを用いてグラインドし、平均粒径3μmとし
た。
グラインドの後、粉末を2日間凍結乾燥機を用いて乾
燥させた。平均粒径はおよそ2.8μmであった。
実施例23〜29 本発明のプレフォームドグラスアイオノマーを含有す
るワンパック光硬化性セメント3種類をジ−(メタクリ
ロキシエチル)イソホロンジウレタン(IPDI−HEMA)、
トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)、4
−アクリロキシエチルトリメット酸(4−AET)、カン
ファーキノン(CQ)、1,3,5−トリメチルバルビツール
酸(TMBA)、2,2−ビス4−(2−ヒドロキシ−3−メ
タクリロイルオキシプロポキシ)フェニルプロパン、2
−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび表3に挙げ
た組成のプレフォームドグラスアイオノマーフィラーか
ら調製した。プレフォームドグラスアイオノマーフィラ
ーの形成に用いたガラスはG2である。
得られたセメントの象牙質に対する剪断接着強さを、
新鮮抜去したウシの切歯を用いて測定した。ウシの歯は
エポキシ樹脂内に包埋し、耐水研磨紙を用いて600グリ
ットへ象牙質を平滑に研磨した。象牙質の研磨表面をイ
ンパーバボンドデンティンプライマー(Imperva Bond D
entin Primer;(株)松風)で60秒間こするようにして
処理した。この歯を乾燥した後、内径4mm高さ2mmの分離
可能なプラスチック型をこの象牙質表面へ固定した。表
3に示したワンパック光硬化性セメントをこの型内へ充
填し、可視光をこの表面へ60秒間照射した(松風デイラ
イトランプII;(株)松風)。型を除いた後、得られた
試験片を37℃の水中に24時間浸漬した。剪断接着強さは
島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用い、クロスヘ
ッドスピード1mm/min.にて測定した。
このセメントの金合金に対する剪断接着強さもまた測
定した。使用した金合金は鋳造用金合金タイプ4(スー
パー・ゴールド・タイプ4;(株)松風)である。この金
合金試験片はおよそ幅8.0mm×長さ8.0mmに鋳造されてお
り、エポキシ樹脂中へ包埋されている。各試験片の片側
は600グリットに研磨され、50ミクロングリットの酸化
アルミニウムでサンドブラストされたものである。サン
ドブラスト処理はハイ−ブラスター(HI−Blaster;
(株)松風)を用いて行った。すべての試験片は超音波
洗浄機で蒸留水中で5分間洗浄した。
インパーバボンドデンティンプライマー溶液を準備し
た表面へ小さなブラシで塗布し、試験片をエア乾燥し
た。プラスチック製の型(内径:4mm、高さ2mm)を金合
金の表面に固定した。表3に示した光硬化性セメントを
型内に充填し、1分間の可視光線照射により硬化させ
た。こうして得られた試験片は37℃の水中に1日間浸漬
したのち、セメントの金合金に対する剪断接着強さをク
ロスヘッドスピード1mm/min.にて測定した。
圧縮強さおよび圧縮比例限界強度を測定した。表3に
挙げられた光硬化性セメントをプラスチック型(内径:4
mm、高さ:4mm)内へ充填し、その上(1分間)および底
(1分間)表面にそれぞれ可視光線を照射した。得られ
た試験体は37℃の水中に1日間浸漬し、その後圧縮強さ
およびその比例限界強度をクロスヘッドスピード1mm/mi
n.にて測定した。
硬化の深さもまた、上記と同じ照射条件で測定した。
結果を表3に示す。
実施例30 実施例18と同一の方法で平均粒径5.0μmの乾燥ゲル
を得た。粉砕したゲルを粒子サイズ5.0μmのフッ化ナ
トリウムと適当なミキサー内で混合した。
実施例31〜42 実施例19のプレフォームドグラスアイオノマーフィラ
ーを用いて表4および5に示す組成のワンパック光硬化
性セメントを作製した。各セメントのウシ象牙質および
金合金に対する剪断接着強さを上述の方法にて測定し
た。結果を表4および表5に示す。
実施例43〜46 本発明のプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
を含有するワンパック光硬化性セメント4種を、2,2,4
−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒ
ドロキシエチルメタクリレートのモル比1:2の付加物(5
0重量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート
(30重量部)、エチレングリコールジメタクリレート
(5重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(10重量部)、ガンマ−メタクリロキシエチルトリメト
キシシラン(3重量部)、4−アクリロキシエチルトリ
メリット酸(5重量部)、カンファーキノン(0.8重量
部)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(0.5
重量部)、ジ−n−オクチル錫ラウレート(0.1重量
部)およびプレフォームドグラスアイオノマーフィラー
(フィラー:5〜30重量部樹脂マトリックス溶液中)を、
表6に挙げた配合比にて混合して調製した。使用したプ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーは実施例19の
ものである。
得られた光硬化性セメントの象牙質に対する剪断接着
強さを、新鮮抜去したウシの切歯を用いて測定した。ウ
シの歯はエポキシ樹脂内に包埋し、耐水研磨紙を用いて
600グリットへ象牙質を平滑に研磨した。象牙質の研磨
表面をインパーバボンドデンティンプライマー((株)
松風)で60秒間こするようにして処理した。この歯を乾
燥した後、表6に示したワンパック光硬化性セメントを
ウシ象牙質表面へ塗布し、その後可視光線をこの表面へ
60秒間照射した(松風デイライトランプII;(株)松
風)。内径4mm、高さ2mmの分離可能プラスチック製の型
をこのウシ象牙質表面へ固定した。光硬化型コンポジッ
トレジン(松風ライトフィルA:(株)松風)をこのプラ
スチック型内へ充填し、表面上へ可視光線を30秒間照射
した(松風デイライトランプII;(株)松風)。型を除
いた後、得られた試験体を37℃の水中に24時間浸漬し、
剪断接着強さを島津製作所製オートグラフAG−5000Bを
用い、クロスヘッドスピード1mm/分にて測定した。結果
を表6示す。
実施例47、48、比較例1、2 表7に示す組成および配合量にて実施例47、47、比較
例1、2の歯科用セメントを調製し、フッ素イオンリリ
ースおよび崩壊率の試験を行った。
試験体の作製 実施例47,48及び比較例1:組成物を金型に充填し、光
照射し、すぐに37±1℃、湿度90〜100%の条件下で10
分間保存した後、金型から取り出しした。
比較例2:粉液比2:1で通法により練和し、金型に充填
し、2分30秒間上記と同じ条件下で保存した後試験体を
取り出した。
フッ素イオンリリース測定試験 試験体の大きさを4mm¢、厚さ1mmとした。この試験体
10個を35mのイオン交換水中に浸漬し37±1℃で保存
した。規定時間が過ぎたら試験体を取り出し、イオン電
極を用いてフッ素イオン濃度を測定した。試験体は新し
いイオン交換水35mに再度浸漬し、次の規定時間が来
たら同様にフッ素イオン濃度を測定し、さらに、試験体
を新しいイオン交換水に浸漬した。測定したフッ素イオ
ン濃度から試験体に含有されるフッ素源1g当たりのフッ
素イオンリリース量を求め、それぞれを加算してトータ
ルのフッ素イオンリリース量を求めた。規定時間は1日
後、4日後、1週間後、2週間後、1カ月後とした。結
果を表7−2および第1図に示す。
崩壊率試験 試験体の大きさは16mm¢、厚さ1mmとした。型から取
り出した後すぐに、適当な容器に入れたイオン交換水中
に懸垂し、37±1℃で保存した。規定時間放置後、試験
体を取り出し、イオン交換水を蒸発させ、残存固形分を
求め、もとの試験体の質量から崩壊率を求めた。浸漬規
定時間は1日、1週間、1カ月とし各々別に試験を行っ
た。結果を表7−2および第2図に示す。
実施例47(実施例25の樹脂組成を用いた) 比較例1と同一組成ガラスを使用していながらプレフ
ォームドグラスアイオノマーフィラーとなっているため
にフッ素イオンリリース量が大変多いことがわかる。か
つ崩壊率は比較的低いことがわかる。
実施例48(実施例42の樹脂組成を用いた) レジンが多いのでフッ素イオンリリース量が少ないこ
とが予測されるがプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーとなっているため比較例1と比べれば多い。フッ
素を多量に含むがただのガラス粉を入れただけのものと
は全く違うのが良く解る。レジン量が多い為崩壊率も低
い。
比較例1 実施例2(G2)のガラスを粉砕してフィラーとして使
用した。組成は実施例25(実施例19のプレフォームドグ
ラスアイオノマーフィラー:レジン=2:1)のプレフォ
ームドグラスアイオノマーフィラーの代わりに同一粒度
の実施例2(G2)ガラスをフィラーとして使用した。フ
ッ素を多量に含有するのにフッ素イオンリリースは全く
といっていいほどなかった。崩壊率は低かった。
比較例2 実施例2(G2)ガラス粉を市販グラスアイオノマーセ
メントと同様にセメント液(主成分ポリアクリル酸水溶
液)で練和した。
フッ素イオンリリースはかなり多いが、崩壊率が極端
に高く不安定と言える。
実施例49 接着性光硬化型フィッシャーシーラントの作製 4種のワンパック接着性光硬化型フィッシャーシーラ
ントをニーダーを用いて調製した。調合組成は表8のと
おりである。プレフォームドグラスアイオノマーフィラ
ーは実施例18で得られたものである。
接着性光硬化型フィッシャーシーラントのエナメル質
に対する引張接着強度を新鮮抜去した牛の切歯を用いて
測定した。牛歯は耐水研磨紙を用いてエナメル質を600
グリットへ平滑に研磨した。エナメル質の研磨面を乾燥
後、内径4mm、高さ2mmの分離可能プラスチック型を牛歯
エナメル質表面へ固定した。
ワンパック接着性光硬化型フィッシャーシーラントを
プラスチック型内へ充填し、可視光線(松風デイライト
ランプII;(株)松風)を10秒間照射して硬化させた。
型を除いた後、直径6mmのステンレス鋼の棒を硬化した
フィッシャーシーラントヘインパーバデュアル((株)
松風)を用いて固定した。得られた試験体を37℃の水中
に24時間浸漬し、その後島津製作所製オートグラフAG−
5000Bを用いて引張接着強度を測定した。クロスヘッド
スピードは1mm/分とした。
フッ素イオンリリースも測定した。測定方法は前記の
とおりである。結果を以下に示す。実施例49〜51におい
てフッ素イオンリリース量はフッ素源1g当たりの量を示
す。
実施例50 ワンパック接着性光硬化型セメントの作製 4種のワンパック接着性光硬化型セメントをニーダー
を用いて調製した。調合組成は表10のとおりである。プ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーは実施例20で
得られたものを用いた。
接着性光硬化型セメントのエナメル質および象牙質に
対する引張接着強度は新鮮抜去した牛の切歯を用いて測
定した。牛歯は耐水研磨紙を用いてエナメル質および象
牙質を600グリットへ平滑に研磨した。エナメル質およ
び象牙質の研磨面を乾燥後、内径4mm、高さ2mmの分離可
能プラスチック型を牛のエナメル質および象牙質表面へ
固定した。
ワンパック接着性光硬化型セメントをプラスチック型
内へ充填し、そして可視光線(松風デイライトランプI
I;(株)松風)を10秒間照射して硬化させた。型を除い
た後、直径6mmのステンレス鋼の棒を硬化したセメント
ヘインパーバデュアル((株)松風)を用いて固定し
た。得られた試験体は37℃の水中に24時間浸漬した後、
島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて引張接着
強度を測定した。クロスヘッドスピードは1mm/分とし
た。フッ素イオンリリースも測定した。測定方法は前記
のとおりである。結果を以下に示す。
実施例51 ワンパック接着性光硬化型ボンディングエージェントの
作製 4種のワンパック接着性光硬化型ボンディングエージ
ェントをニーダーを用いて調製した。調合組成は表12の
とおりである。プレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーは実施例21で得られたものを用いた。
接着性光硬化型ボンディングエージェントのエナメル
質および象牙質に対する引張接着強度は新鮮抜去した牛
の切歯を用いて測定した。牛歯は耐水研磨紙を用いてエ
ナメル質および象牙質を600グリットへ平滑に研磨し
た。エナメル質および象牙質の研磨面を乾燥後、牛歯エ
ナメル質および象牙質の表面へワンパック接着性光硬化
型ボンディングエージェントを塗布し、可視光線(松風
デイライトランプII;(株)松風)を10秒間照射して硬
化させた。その後内径4mm、高さ2mmの分離可能プラスチ
ック型を牛歯エナメル質および象牙質表面へ固定した。
その後、光硬化型コンポジットレジン(松風ライトフィ
ルA;(株)松風)をプラスチック型へ充填し可視光線
(松風デイライトランプII;(株)松風)で15秒間で硬
化させた。型を除いた後、直径6mmのステンレス鋼の棒
を硬化したライトフィルAへインパーバデュアル
((株)松風)を用いて固定した。得られた試験体は37
℃の水中に24時間浸漬した後、島津製作所製オートグラ
フAG−5000Bを用いて引張接着強度を測定した。クロス
ヘッドスピードは1mm/分とした。
フッ素イオンリリースも測定した。測定方法は前記の
とおりである。結果を以下に示す。
実施例52 実施例20で得たプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーをイオン交換水50g中に分散して0.0002〜2.0gの
当該フィラーからリリースされるフッ素イオン濃度をイ
オン電極によって測定したところ次表の結果を得た。ま
た比較としてフッ化ナトリウムについてもフッ素イオン
濃度を測定した。
上表の結果から明らかなように、本発明フィラー濃度
が1/10、1/100になった場合でもフッ素イオン濃度はそ
れぞれ1/3、1/10を示し、フッ素イオンは消費されても
補給されている。いわば、平衡状態にあるといえる。こ
れに対し比較例3−1〜4ではその傾向は認められなか
った。
また、フッ素イオンがリリース開始されるまでの時間
はきわめて速く、さらに一度フッ素をリリースさせたフ
ィラーを乾燥させて再度新たに水中に分散させてフッ素
イオン濃度を測定したところほぼ同等の値を示した。以
上のことから本発明フィラーはフッ素のリリースにおい
て配位子交換が主体であり、水の存在下で安定したフッ
素イオン徐放性を示し、かつ溶解や崩壊がほとんどない
ことが明らかとなった。これに対しフッ素化合物溶出性
の比較例3−1〜4ではこのような傾向は認められなか
った。
実施例53 実施例6のガラスを用い、8種類のプレフォームドグ
ラスアイオノマーフィラーを作製し、その物性およびフ
ッ素イオンリリース能を調べた。
プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの作製方
法は以下の通りである。
実施例53−1〜53−3:実施例18と同様の方法で反応さ
せ、真空凍結乾燥した。
実施例53−4:ニーダーで低温下で混合、反応させた後、
真空凍結乾燥した。
実施例53−5:オートクレイブにて、窒素雰囲気下、3kgf
/cm2で反応後、凍結乾燥した。
実施例53−6〜53−10:少量ずつ練板上またはポリビー
カー中で手で練和したのち真空凍結乾燥した。(実施例
53−6は市販のグラスアイオノマーセメントの粉液比と
ほぼ同一である) フッ素イオンリリース能測定 フィラー2gを50gのイオン交換水に分散させ、1時間
撹拌した後30mlを採取した。4000rpmで30分間遠心沈降
し、必要に応じて0.1μmのメンブレンフィルターで濾
過した上清24mlを検液として用いた。得られた検液に3m
lのバッファ液をイオン強度調整剤として添加し、イオ
ン電極で測定した。予め作製しておいた検量線よりフッ
素イオン濃度を求め、これをフッ素イオンリリース能と
した。なお、測定は23℃で行い、イオン交換水、バッフ
ァ液もこの濃度で保存した。結果を表15に示す。フッ素
イオンリリース量は試料1g当たりのフッ素イオンリリー
ス能を示す。
表15の結果より明らかなごとく、過剰の水の存在によ
りフッ素イオンリリース能が付与されたことがわかる。
また、細孔容積は含フッ素ガラス、ポリアルケン酸およ
び水の配合比により大きく変化させることができるた
め、目的に応じてコントロールすることができる。
実施例54 プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの表面処理 実施例19のフィラー 165部 γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 15部 エチルアルコール 10部 実施例19で得たフィラーに上記シラン処理剤のアルコ
ール溶液をスプレーしながら撹拌混合し、窒素加圧5kgf
/cm2、85℃で1時間処理し、40℃で12時間真空乾燥し
た。
得られたシラン処理、および未処理のプレフォームド
グラスアイオノマーフィラーを実施例51の接着性光硬化
型ボンディングエージェントに10重量%添加して、その
接着特性を測定した。結果を表16に示す。
表16 引張強度(MPa) 対エナメル質 対象牙質 シラン処理 11.0 10.0 未処理 9.5 9.0 実施例55 実施例20で得たプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーをシラン処理したフィラーA(55重量部)、シラ
ン処理シリカ(25重量部)、シラン処理硫酸バリウム
(20重量部)、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビ
ツール酸(CEBA)(1.0重量部)およびN,N−ジ(ヒドロ
キシエチル)−p−トルイジン(N,N−DEPT)(0.5重量
部)を混合して粉剤を調製した。
ジ−(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチ
レンジウレタン(TMHDI−HEMA)(50重量部)、2−ヒ
ドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)(35重量
部)、トリメチルヘキサメチレンジメタクリレート(TE
GDMA)(10重量部)、4−アクリロキシエチルトリメリ
ット酸(4−AET)(5重量部)、ベンゾイルパーオキ
シド(BPO)(0.3重量部)およびブチル化ヒドロキシト
ルエン(BHT)(0.08重量部)を混合して液剤を調製し
た。
なお、当該フィラーのシラン処理方法として、フィラ
ー100重量部に対しガンマーメタクリロキシプロピルト
リメトキシシラン(7重量部)およびエチルアルコール
(20重量部)を混合し、窒素加圧5kgf/cm2、85℃、1時
間カップリング反応させた後、溶媒を減圧留去し、減圧
乾燥してフィラーAを得た。シリカおよび硫酸バリウム
のシラン処理は通法の酢酸法にて行った。すなわち上記
と同一のシランカップリング剤(フィラー100重量部に
対し3重量部)を用い、カップリング反応は130℃/30分
で行った。
調製した粉剤と液剤を粉液比3.0/1.0で練和すると、
3.0分で硬化した。また、圧縮強度は1783kgf/cm2を示
し、Ni−Cr合金同士の引張接着強さは382kgf/cm2を示し
た。さらに、硬化物からのフッ素イオン徐放濃度は94μ
g/gを示した。フィラーAを同量のシラン処理シリカに
置換した場合の硬化物からのフッ素イオン徐放濃度は1
μg/g以下であった。さらに、上記の液剤にカンファー
キノン(CQ)(0.8重量部)を添加して調製して、上記
のように粉剤と練和した後グリップライトII((株)松
風)にて30秒間可視光線照射した硬化物からのフッ素イ
オン徐放濃度は77μg/gを示した。
以上の結果から、本発明フィラーを含有する化学重合
およびデュアルキュアのコンポジットレジン、支台構造
材または歯科接着性レジンセメントなどの歯科用組成物
においてもフッ素イオン徐放効果を付与し得ることが認
められた。
実施例56 実施例21で得たプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーをシラン処理したフィラーB(55重量部)、シラ
ン処理コロイダルシリカ(5重量部)、2,2−ビス[4
−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニ
ル]プロパン(BIS−GMA)(20重量部)、2−HEMA(15
重量部)、TEGDMA(5重量部)、およびN,N−DEPT(0.4
重量部)を混合してペーストAを調製した。
実施例21で製造されたプレフォームドグラスアイオノ
マーフィラーをシラン処理したフィラーB(55重量
部)、シラン処理コロイダルシリカ(5重量部)、2,2
−ビス[4−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキ
シ)フェニル]プロパン(BIS−GMA)(20重量部)、2
−HEMA(15重量部)、TEGDMA(5重量部)、4−AET
(5重量部)、CQ(0.6重量部)およびBPO(0.6重量
部)を混合してペーストBを調製した。
調製したペーストAとBを等量で練和すると、3.5分
で硬化した。また、デイライトランプIIによる光照射で
の光重合による硬化物の圧縮強度は2106kgf/cm2を示し
た。さらに、硬化物からのフッ素イオン徐放濃度は114
μg/gを示した。フィラーBをシラン処理シリカに置換
した場合の硬化物からのフッ素イオン徐放濃度は1μg/
g以下であった。
以上の結果から、本発明フィラーを含有するペースト
&ペーストタイプのデュアルキュアのコンポジットレジ
ン、フィッシャーシーラント、根面コーティング材また
は歯科接着性レジンセメントなどの歯科用組成物におい
てもフッ素イオン徐放効果を付与し得ることが認められ
た。
実施例57 実施例21で得たプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーをシラン処理したフィラーB(50重量部)、グラ
スアイオノマーセメント用ガラスフィラー(45重量
部)、シラン処理コロイダルシリカ(5重量部)、ジ−
(メタクリロキシエチル)トリメチルヘキサメチレンジ
ウレタン(TMHDI−HEMA)(5重量部)、2−ヒドロキ
シエチルメタクリレート(2−HEMA)(40重量部)、ト
リメチルヘキサメチレンジメタクリレート(TEGDMA)
(1重量部)、4−アクリロキシエチルトリメリット酸
(4−AET)(45重量部)、ベンゾイルパーオキシド(B
PO)(0.08重量部)、カンファーキノン(CQ)(0.7重
量部)を混合してペーストDを調製した。
シラン処理シリカ(30重量部)、シラン処理硫酸バリ
ウム(8重量部)、シラン処理溶融シリカ(6重量
部)、シラン処理コロイダルシリカ(1重量部)、ポリ
アクリル酸(50重量部)、1,3,5−トリメチルバルビツ
ール酸(TMBA)(3重量部)、N,N−ジ(ヒドロキシエ
チル)−p−トルイジン(N,N−DEPT)(0.5重量部)お
よび蒸留水(50重量部)を混合してペーストEを調製し
た。
調製したペーストDとEを等量で練和すると、5.0分
で硬化した。また、デイライトランプIIによる光照射で
の光重合による硬化物の圧縮強度は644kgf/cm2を示し
た。さらに、インパーバボンドデンティンプライマーで
処理した牛歯象牙質に58.7kgf/cm2の剪断接着強さを示
した。得られた硬化物からのフッ素イオン徐放濃度は44
8μg/gを示した。
以上の結果から、本発明のフッ素イオン徐放性プレフ
ォームドグラスアイオノマーフィラーは、ペーストおよ
びペーストタイプのセメント硬化反応+化学重合+光重
合(トライキュア)のフッ素イオン徐放効果を付与し得
るグラスアイオノマーセメント、コンポジットレジン、
フィッシャーシーラント、支台築造材、歯科用裏層材、
仮封材、根管充填材、根面コーティング材または歯科接
着性レジンセメントなどの歯科用組成物に有用であるこ
とが認められる。
実施例58 実施例7のガラス(G7ガラス)を用いて実施例19の方
法により作製したプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーを、リン酸亜鉛セメントに含有させた。
用いたリン酸亜鉛セメントは、以下のセメント粉材A
とセメント液剤Aを混合して硬化させるものである。
セメント粉材A組成(重量%) 酸化亜鉛 87.5 酸化マグネシウム 10 次硝酸ビスマス 2.5 上記組成を混合し、約1300℃焼成後、粉砕してセメン
ト粉材Aとした。
セメント液剤A組成(重量%) リン酸(85重量%水溶液) 72.0 水酸化アルミニウム 9.0 イオン交換水 19.0 上記組成を混合、反応させたものをセメント液剤Aと
した。
セメント粉材Aとセメント液剤Aおよびプレフォームド
グラスアイオノマーフィラーとを以下の比率で混合し、
日本工業規格T6602歯科用リン酸亜鉛セメントの試験方
法に基づいてセメントを練和し、比較例2と同一の方法
にて試験体を作製した。得られたセメント硬化物のフッ
素イオンリリースを実施例47に記載の方法にて調べた。
比較例として、プレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーを含有しないリン酸亜鉛セメントのフッ素イオンリ
リースを調べた。結果を以下に示す。
実施例59 実施例7のガラス(G7ガラス)を用いて実施例19の方
法により作製したプレフォームドグラスアイオノマーフ
ィラーを、カルボキシレートセメントに含有させた。
用いたカルボキシレートセメントのは実施例58のセメ
ント粉材Aと以下に示すセメント液剤Bとを混合して硬
化させるものである。
セメント液剤B組成(重量%) アクリル酸3−ブテン−1,2,3トリカルボン酸共重合
物(分子量15000、40%水溶液) 93.8 酒石酸 1.2 イオン交換水 5.0 セメント粉材Aとセメント液剤Bおよびプレフォーム
ドグラスアイオノマーフィラーとを以下の比率で混合
し、日本工業規格T6606歯科用ポリカルボキシレートセ
メントの試験方法に基づき試験体を作製した。得られた
セメント硬化物の圧縮強度を求めた。また、比較例2と
同一の方法により試験体を作製し、フッ素イオンリリー
スを実施例47に記載の方法にて調べた。比較例としてプ
レフォームドグラスアイオノマーフィラーを含有しない
カルボキシレートセメントの性質も調べた。結果を以下
に示す。
実施例60 実施例3のガラスを用い、実施例19のプレフォームド
グラスアイオノマーフィラーの作製方法にて作製したフ
ィラーを使用して歯磨剤、洗口剤を調製した。
実施例60−1 練歯磨 重量% プレフォームドグラスアイオノマーフィラー 20.0 無水ケイ酸 10.0 ソルビット液(60%) 50.0 ヒドロキシエチルセルロース 0.5 安息香酸ナトリウム 0.1 ラウリル硫酸ナトリウム 2.0 プロピレングリコール 3.0 サッカリンナトリウム 0.1 香料 1.2 精製水 残部 計 100.0 実施例60−2 練歯磨 重量% プレフォームドグラスアイオノマーフィラー 25.0 第二リン酸カルシウム 30.0 無水ケイ酸 2.0 カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2 プロピレングリコール 3.0 ソルビット液(60%) 25.0 ラウリル硫酸ナトリウム 1.0 パラオキシ安息香酸ナトリウム 0.05 サッカリンナトリウム 0.2 香料 1.0 精製水 残部 計100.0 上記のごとくプレフォームドグラスアイオノマーフィ
ラーを使用することにより、口腔内の水分量であまり影
響をうけない特徴がある。
実施例60−3 洗口剤 重量% プレフォームドグラスアイオノマーフィラー 95.5 ラウリル硫酸ナトリウム 4.0 サッカリンナトリウム 0.25 香料 0.25 計100.0 上記組成を調合、混合後ティーバッグに2gをつめた。
使用時水100mに約5分間浸け、得られた液を洗口液と
した。
得られた洗口液のフッ素イオン濃度は10ppmであった。
実施例60−4 洗口液 重量% プレフォームドグラスアイオノマーフィラー 2.0 グリセリン 15.0 エタノール 5.0 香料 0.3 安息香酸ナトリウム 0.05 ラウリル硫酸ナトリウム 0.1 ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.2 精製水 残部 計100.0 上記組成を調合、混合後ティーバッグに2gをつめた。
使用時に水100mに約5分間浸け、得られた液を洗口液
とした。
得られた洗口液のフッ素イオン濃度は20ppmであった。
産業上の利用分野 本発明のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
イオノマーフィラーは、上述のごとく歯科用セメント、
歯科用コンポジットレジン、ボンディング剤、歯面処理
剤、歯面処理用プライマー、ボンディングプライマー、
歯科接着性レジンセメント、フィッシャーシーラント、
歯科矯正用接着剤、歯面および根面用コーティング材、
歯科用支台築造材、歯科用裏層剤、仮封剤、根間充填
剤、覆卓剤、歯磨剤、洗口剤、これらに限定されないさ
まざまな歯科用組成物に添加し、本発明の歯科用組成物
を得ることができる。また、フッ素イオン徐放性を有す
ることから、フッ素イオンを取り込む生体硬組織、特に
歯や骨に有用であり、歯科のみならず外科、整形外科、
形成外科の分野等においても利用することができる。
また、上述のごとく、本発明の歯科用組成物はかなら
ずしもワンペーストタイプである必要はなく、ワンペー
ストタイプ、ツウペーストタイプ、スリーペーストタイ
プ、ペースト/液タイプ、粉/液タイプ、1液タイプ等
であってよい。
フロントページの続き (72)発明者 渕上 清実 京都府京都市伏見区醍醐御陵西裏町32― 3 (72)発明者 北村 敏夫 京都府宇治市木幡花揃23番地の1 (56)参考文献 特開 平2−164807(JP,A) 特開 平1−308855(JP,A) 特開 平3−47107(JP,A) 特開 昭58−99406(JP,A) 特開 昭57−75908(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 6/08 A61K 6/00 A61K 7/18

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリアルケン酸と含フッ素ガラスを水の存
    在下で反応させ、粉砕して得られる粉末状生成物からな
    るフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマ
    ーフィラー。
  2. 【請求項2】粉末状生成物がゲルを脱水してなるキセロ
    ゲルである請求項1記載のフッ素イオン徐放性プレフォ
    ームドグラスアイオノマーフィラー。
  3. 【請求項3】ポリアルケン酸と含フッ素ガラスの配合比
    が0.0005:1〜10:1である請求項1または2記載のフッ素
    イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラ
    ー。
  4. 【請求項4】ポリアルケン酸がカルボキシル基を有する
    繰り返しユニットを有する少なくとも1種類のポリマー
    またはコポリマーである請求項1〜3いずれかに記載の
    フッ素イオン徐放性プレフォームドグラスアイオノマー
    フィラー。
  5. 【請求項5】粒子サイズが0.01〜100ミクロンであり、
    全細孔容積が0.04〜2.0cc/gである請求項1〜4いずれ
    かに記載のフッ素イオン徐放性プレフォームドグラスア
    イオノマーフィラー。
  6. 【請求項6】含フッ素ガラスをポリアルケン酸中に水の
    存在下で分散させ、反応させた生成物を乾燥することを
    含む請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素イオン徐放
    性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの製法。
  7. 【請求項7】水/(含フッ素ガラス+ポリアルケン酸)
    の配合比が1.0〜10である請求項6記載のフッ素イオン
    徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーの製
    法。
  8. 【請求項8】請求項1〜5いずれかに記載のフッ素イオ
    ン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを
    含有する歯科用組成物。
  9. 【請求項9】請求項1〜5記載のフッ素イオン徐放性プ
    レフォームドグラスアイオノマーフィラーを1〜90重量
    %含有し、(a)ラジカル重合性化合物および(b)硬
    化剤を有する歯科用組成物。
  10. 【請求項10】(a)ラジカル重合性化合物として10か
    ら70重量%の希釈剤と粘性抑制剤から選択される成分、
    10から89重量%の強化性コポリマーおよびオリゴマーか
    ら選択される成分、50重量%までの親水性構造物および
    親水性接着剤より選択される成分および0.1から50重量
    %の接着促進剤を含有し、(b)硬化剤として0.1から1
    5重量%の硬化触媒を含有する請求項9記載の歯科用組
    成物。
  11. 【請求項11】光硬化性樹脂組成物にフッ素イオン徐放
    性プレフォームドグラスアイオノマーフィラーを分散し
    てなるペースト状歯科用セメントである請求項8〜10の
    いずれかに記載の歯科用組成物。
  12. 【請求項12】さらに歯科用無機系セメント粉材および
    歯科用セメント液剤を含有する請求項8〜11のいずれか
    に記載の歯科用組成物。
  13. 【請求項13】請求項1〜5いずれかに記載のフッ素イ
    オン徐放性プレフォームドグラスアイオノマーフィラー
    を含有する、口腔用組成物。
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