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JP3227080B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池

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JP3227080B2
JP3227080B2 JP30631195A JP30631195A JP3227080B2 JP 3227080 B2 JP3227080 B2 JP 3227080B2 JP 30631195 A JP30631195 A JP 30631195A JP 30631195 A JP30631195 A JP 30631195A JP 3227080 B2 JP3227080 B2 JP 3227080B2
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総一郎 川上
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リチウム二次電池に係
り、より詳細には、リチウムを負極に用いるリチウム二
次電池において、過放電による電池寿命低下を改善し得
るリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、大気中に含まれるCO2ガス量が
増加しつつあるため、温室効果により地球の温暖化が生
じる可能性が指摘されている。火力発電所は化石燃料等
を燃焼して得られる熱エネルギーを電気に変換してい
る。しかしながら、燃焼にともなってCO2ガスを多量
に排出する、あるいはNOx、炭化水素、CO等を排出
し得る火力発電所は、新たに建設することが難しくなっ
てきている。そこで、火力発電所等の発電機にて作られ
た電力の有効利用法として、夜間電力を一般家庭に設置
した二次電池に蓄えて、蓄えられた電力を電力消費量が
多い昼間に使用するという、いわゆるロードレベリング
が提案されている。また、COx、NOx、炭化水素等を
含む大気汚染物質を排出しないとされる電気自動車用途
としては、より高エネルギー密度の二次電池の開発が期
待されている。さらに、ブック型パーソナルコンピュー
ター、ワードプロセッサー、ビデオカメラ及び携帯電話
等のポータブル機器の電源用途では、より小型・軽量で
高性能な二次電池の開発が急務である。
【0003】上記小型・軽量で高性能な二次電池として
は、例えば、リチウムイオンを層間化合物に導入したも
のを正極活物質に、カーボンを負極活物質に用いたロッ
キングチェアー型リチウムイオン電池の開発が進み、一
部実用化されつつある。さらに、リチウムイオン二次電
池以上の高エネルギー密度を達成できる、金属リチウム
を負極活物質に用いるリチウム二次電池の開発も行われ
ている。
【0004】また、五酸化ニオブ(Nb25)の様な金
属酸化物を負極材料に用いたリチウム二次電池も実用化
されている(この様な電池は充電時に金属リチウムが析
出する事がないのでサイクル寿命が長いのが特徴である
が、逆にエネルギー密度が他のリチウム二次電池に比べ
て低いという欠点がある)。
【0005】しかし、これら高エネルギー密度のリチウ
ムイオン二次電池やリチウム二次電池を、上述の電気自
動車やポータブル機器等に用いる場合、複数の電池を直
列あるいは並列に接続して、電流及び電圧を高めた組電
池として用いるケースが多い。このような組電池として
使用する場合、接続した各電池の容量ばらつきやサイク
ル寿命特性ばらつきによって、最も放電容量の小さな電
池が常に最初に放電が完了する。したがって、この電池
は他の電池の放電が完了するまでの間、常に過放電され
る。よって、この電池が律速となりサイクル寿命低下が
進む。その結果、組電池の寿命低下も発生する。
【0006】一方、既に市販され、実用化されている二
次電池としては、例えば、ニッケルカドミウム二次電池
やニッケル亜鉛二次電池が挙げられる。これらは、電解
液の溶媒として、アルカリを水に溶かして用いているた
め、「水系電池」と呼称される。水系電池では、リチウ
ムイオン二次電池等で問題となっている過放電を防止す
るため、予め負極活物質中に金属カドミウムや金属亜鉛
等の充電状態の活物質(放電リザーブと呼ぶ)を添加す
る技術を用いて、過放電時にはこの充電状態の活物質を
放電する事により、電解液の分解反応等(電極中に放電
できる活物質がなくなると、水の電極分解が起こり、負
極からは水素が発生する)を抑制している。
【0007】しかし、上記水系電池の負極活物質の充放
電時の反応は、水酸化物と金属の間で繰り返す(例え
ば、ニカド電池の場合の反応は、
【化1】 である)のに対して、リチウム二次電池の場合、正負極
間で電解液を介してリチウムイオンの授受を行う。つま
り、充放電時の反応形態が異なるので、上記水系二次電
池のような放電リザーブの概念は、そのままリチウム二
次電池に適用することができない。
【0008】リチウム二次電池を過放電した場合、正極
では過剰のリチウムイオンが正極活物質の結晶格子内に
挿入されて、格子が変形あるいは破壊されるので、その
後、正極活物質ではリチウムイオンの挿入、脱離量が減
少して電池寿命減少の原因になり得る。
【0009】また、負極では、リチウム金属を用いたリ
チウム二次電池の場合、電解液中のアニオンと反応して
リチウム金属表面に皮膜が形成されて、リチウムの挿
入、脱離の可逆性が低下して、電池寿命減少の原因にな
り得る。また、電解液も分解されて、炭化水素や炭酸ガ
スになり電解液濃度が上昇して電導度低下を招くため、
電池寿命低下の原因になり得る。また、カーボンを負極
に用いたリチウムイオン二次電池の場合、カーボン表面
に電解液中のアニオンと反応してできた皮膜によって、
リチウムイオンのカーボン層間への挿入、脱離が阻害さ
れて電池寿命低下の原因になり得る。
【0010】したがって、リチウム二次電池やリチウム
イオン二次電池においても、過放電対策をする必要があ
る。しかし、現状では、実用上過放電状態になり易い組
電池として用いる場合、過放電をできる限り抑えるため
以下に示す対策が取られているが、いずれも本質的な改
善には至っていない。 (a)組電池に用いる電池の容量を揃える。 (b)放電の終止電圧を高く設定する。 (c)各電池の電圧をモニターして制御する。
【0011】ゆえに、電池が過放電された場合でも、電
池寿命の低下が発生せず、高エネルギー密度を有するリ
チウム二次電池の開発が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、過放電特性
が優れ、エネルギー密度が高く、かつ、サイクル寿命の
長いリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0013】また、本発明は、電池を直列又は並列に接
続して使用した場合でも電池の劣化が少なく、サイクル
寿命の長いリチウム二次電池を提供することを目的とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、電池ケース内
に電解質中にセパレータによって隔てられた正極と負極
とを有するリチウム二次電池において、負極として使用
し得るリチウムを挿入・脱離できる物質としてアルミニ
ウム金属、リチウム合金、アルミニウム合金の群から選
択される一種類以上を含んだ正極を有することを特徴と
する。本発明は、電池ケース内に電解質中にセパレータ
によって隔てられた正極と負極とを有するリチウム二次
電池において、正極として使用し得るリチウムを含有し
得る物質を含んだ負極、及び負極として使用し得るリチ
ウムを挿入・脱離できる物質としてアルミニウム金属、
リチウム合金、アルミニウム合金の群から選択される一
種類以上を含んだ正極を有することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】上記目的は、正極が負極として使
用し得るリチウムを挿入・脱離できる物質としてアルミ
ニウム金属、リチウム合金、アルミニウム合金の群から
選択される一種類以上を有することによって達成でき
る。
【0016】すなわち、正極中に負極として使用し得る
リチウムを挿入・脱離できるような構成物質としてアル
ミニウム金属、リチウム合金、アルミニウム合金の群か
ら選択される一種類以上を有することで上記目的を達成
することができる。また、それに加え、負極中に正極と
して使用し得るリチウムを挿入・脱離できる物質を含ん
だ構成物質を有することで上記目的を達成することがで
きる。
【0017】より具体的には、正極中に負極に使用し得
るリチウムを挿入・脱できる物質としてアルミニウム
金属、リチウム合金、アルミニウム合金の群から選択さ
れる一種類以上を有する。また、正極中に負極に使用し
得るリチウムを挿入・脱離できる物質としてアルミニウ
ム金属、リチウム合金、アルミニウム合金の群から選択
される一種類以上を有するとともに、負極中に正極に使
用し得るリチウムを挿入・脱離できる物質を有する。後
者においては、それぞれの対極活物質として働き得る物
質をそれぞれの電極は有している。
【0018】このような構成とすることで、過放電時、
正極中あるいは正極中と負極中に添加した対極活物質と
して働き得る物質の中へ、リチウムの挿入が生じたり、
リチウムの脱離が起こる。つまり、負極においては、負
極中に含有し得る正極活物質の中からリチウムが脱離し
て、添加した正極活物質からリチウムが脱離し終わるま
で負極は過放電されない。一方、正極においては、正極
中に含有した負極活物質の中にリチウムが挿入されて、
添加した負極活物質中にリチウムが挿入し終わるまで正
極は過放電されない。したがって、負極及び/又は正極
が対極活物質として働き得る物質を含むことにより、過
放電特性が著しく改善されたリチウム二次電池が実現で
きる。
【0019】以下本発明を、必要に応じて図面を参照し
て説明する。
【0020】(リチウム二次電池)本発明におけるリチ
ウム二次電池としては、電池ケース内に電解質中にセパ
レータによって隔てられた正極と負極とを有するものが
挙げられる。図1及び図2は、電池容量、過放電領域、
及び電極電位との関係を説明するための概念図である。
【0021】ここで、図1及び図2について簡単に説明
する。横軸は電池を定電流で放電する時間を示す。通常
の充放電(過放電しない場合)では電池容量分の放電時
間以内で充電が完了し、過放電されない様にするため、
放電は設定電圧で終了する様にしてある。すなわち、過
放電とはこの設定電圧以下まで放電された状態をいう。
一方、縦軸はLi極を参照電極とした場合の正極及び負
極の電位を示したものである。ここで正極と負極の電位
差が電池電圧を示す。
【0022】本発明におけるリチウム二次電池は、リチ
ウムを含有した物質を含んだ負極及び/又はリチウムを
挿入できる物質を含んだ正極を有している。すなわち、
図1に示されるように負極1103は、負極活物質11
01に加えて、リチウムを含有した正極活物質(リチウ
ムを含有した物質)1102を含んでいる。また、正極
1003は、正極活物質1001に加えて、負極活物質
(リチウムを挿入できる物質)1002を含んでいる。
【0023】以下では、本発明の電池を充電した場合に
ついて説明する。
【0024】正極活物質1001の中に含まれているリ
チウムは、電解質溶液側に脱離する。一方、負極活物質
1101の中へは、電解質溶液側からリチウムが挿入さ
れる。図1において、負極活物質を正極活物質より多く
した理由は、充電時に負極中に挿入されたリチウムが、
放電時に一部脱離せずに残存するためである。これを回
避するために、本発明の電池では、余裕分を見込んで負
極活物質の方を多くしてある。つまり、充放電の繰り返
しによって実質的に使用できるリチウム量が減少する結
果、電池寿命を低下させることをあらかじめ回避するた
め負極活物質を多くしてある。
【0025】以下では、本発明の電池を放電した場合に
ついて説明する。
【0026】通常、単電池では放電終止電圧を制御して
おり、図1の電池容量分が放電されるのみで過放電され
ることはない。しかし、複数個の電池を直列又は並列に
接続して用いる組電池の場合、電池容量の一番小さな電
池は最初に放電を終了した後、正極1013及び負極1
113が共に過放電領域に入る(図2)。つまり、組電
池の中で容量が小さい電池は充放電サイクル中、常に過
放電される。その結果、上述したように電池寿命が低下
するという問題があった。
【0027】一方、本発明の電池は、上記のように本来
過放電状態といえる状態になった場合でも(図1では
「過放電領域」と示してある)、負極1103では、負
極1103に含有された正極活物質1102の中からリ
チウムが脱離して、添加した正極活物質からリチウムが
脱離し終わるまで負極1103は過放電状態とならな
い。また、正極1003でも、正極1003に含有され
た負極活物質1001の中にリチウムが挿入されて、添
加した負極活物質中にリチウムが挿入し終わるまで正極
1003も過放電されない。その結果、本発明の電池で
は、添加した対極活物質が放電できる間は、正極、負極
共に本来の活物質が過放電されないので、活物質の結晶
格子が損傷を受けたり、電解液が分解されたり等の電池
劣化の原因の発生を防止できる。したがって、本発明の
電池は、サイクル寿命低下を抑制できる。
【0028】このことは、図1及び図2において、放電
時間と電極電位の変化の仕方からも読み取ることができ
る。つまり、図2では放電が過放電領域に入るとすぐに
電極電位の差がなくなるのに対して、図1では本来なら
過放電領域となる領域中でも電極電位の差はある程度保
たれていることからも、それぞれ対極の活物質として働
き得る物質の添加が効果的であることがわかる。
【0029】過放電できる放電時間は、負極及び正極に
添加する対極活物質として働き得る物質の添加量に依存
する。しかし、添加量を増加させ過ぎると、正極及び負
極内で局部電池ができて自己放電量が増大したり、又は
対極活物質の電位側に電極電位がシフトして電池電圧の
低下を招くことがある。したがって、負極及び正極に添
加する対極活物質の添加量は、電池の使用状況によっ
て、適宜決定されるべき値である。
【0030】また、負極中に添加する正極活物質は、過
放電領域での電位低下をなるべく小さくして負極を深い
放電から守る必要がある。したがって、負極中に添加す
る正極活物質は、できる限り負極活物質に近い電位のも
のを使用することが好ましい。
【0031】図1の過放電領域を経た電池は、次の充電
時、正極1003側ではリチウムを挿入した負極活物質
中1002からリチウムが脱離し、また、負極1103
側ではリチウムを脱離した正極活物質1102中へリチ
ウムが挿入されて初期の状態に戻る。その結果、容量ば
らつきのある電池やサイクル寿命が短い電池を組み合わ
せて直列あるいは並列接続の組電池を作製しても、これ
らの電池の過放電を防止することができる。したがっ
て、本発明の電池では、上述した組電池における過放電
の問題が回避でき、サイクル寿命の長い組電池を作製す
ることが可能となる。
【0032】(負極)本発明における負極1103とし
ては、負極活物質1101に加えてリチウムを含有した
正極活物質(リチウムを含有した物質)1102を含ん
でいるものが挙げられる。
【0033】リチウムを含有した正極活物質1102を
負極1103の中へ添加する方法としては、例えば、過
放電時に電極全体を均一に反応させるために負極活物質
と均一に混合したり、また、電極反応が起こり易い電極
表面にコートする方法等がある。
【0034】負極1103の作製方法としては、次のも
のが例示される。 (1)リチウム、アルミニウム金属、リチウム合金、ア
ルミニウム合金、又はカーボンからなる負極活物質に、
リチウムを含有した正極活物質、導電補助剤、及び結着
材を混合した後、有機溶媒等を添加して、粘度を調整し
たペーストを調製する。 (2)上記(1)で得られたペーストを、金属からなる
集電部材の表面上に塗布又は充填した後、乾燥又は燒結
して負極1103を形成する。
【0035】また、上記負極活物質を用いた負極上に、
リチウムを含有した正極活物質をコートしておき、電池
過放電時に負極表面上の正極活物質からリチウムを脱離
し易くすることもできる。負極上に正極活物質をコート
する場合、負極活物質と正極活物質の混合物を用いるこ
とによって、負極活物質も電極表面に配置できるので、
より電極反応が起こり易くなる。
【0036】上記結着剤として樹脂を使用する場合は、
電解液に安定なものが好ましく、例えば、ポリテトラフ
ルオロエチレン、ポリフッ化ビリニデン、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマ
ー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、等が
挙げられる。上記樹脂のうち、伸び率200%以上のも
のが、より好ましい。
【0037】上記結着剤として樹脂を使用する場合は、
充放電における膨張収縮によって、活物質の脱落は少な
いが、集電能の低下が発生する。したがって、導電補助
剤として、カーボンブラック(例えば、ケッチェンブラ
ック、アセチレンブラック等)のカーボン粉を添加した
り、カーボン繊維や金属繊維、金属を被覆したカーボン
繊維を添加して集電能を改善するのが好ましい。一方、
上記結着剤として低融点ガラスを使用する場合は、樹脂
を使用する場合に比べて、集電能は高いが、膨張収縮あ
るいは曲げによる機械的強度は弱くなる傾向にある。
【0038】集電部材の形状としては、板状、箔状、メ
ッシュ状、スポンジ状、繊維状、パンチングメタル、エ
キスパンドメタル等、各種形状が採用できる。
【0039】(負極に添加する正極活物質の作製法)本
発明における負極に添加する正極活物質としては、例え
ば、リチウムを含有(又は結合)した、Cu,Fe,M
o,Ti,V,Nb,Mn,Co,Ni等の酸化物、硫
化物、水酸化物、セレン化物等の単独あるいは複合化合
物が好適に用いられる。この中でも、できる限り負極活
物質に近い電位を持った化合物の方が、電池の過放電時
に負極が深く放電されないので好ましく、Cu,Fe,
Mo,Ti,V,Nb等がより適している。
【0040】負極に添加する正極活物質の作製法として
は、例えば、Cu,Fe,Mo,Ti,V,Nb,M
n,Co,Ni等の化合物又は金属を、リチウム塩と混
合した後、熱処理して得る方法が挙げられる。
【0041】酸化物を用いる場合の具体例としては、C
u,Mo,V,Mn,Co,Ni等の酸化物等を、硝酸
リチウム、水酸化リチウム、又は炭酸リチウムからなる
リチウム塩と混合した後、空気あるいは酸素雰囲気下で
熱処理することによって負極に添加する正極活物質を得
る方法が挙げられる。また、硫化物を用いる場合の具体
例としては、Fe,Mo,Ti等の金属や塩化物等の化
合物塩を、上記リチウム塩と共に硫化水素気流中で熱処
理して得る方法が挙げられる。
【0042】(負極に添加する正極活物質の添加量)本
発明における負極に添加する正極活物質の添加量は、負
極活物質に何を用いるかで異なるが、少なくとも複数の
電池を使用する際の各電池の容量のバラツキに対応して
添加されるのが好ましい。
【0043】添加量は多い方が過放電領域での容量が大
きくなるので、過放電に対して強くなる。しかし、正極
活物質添加量が多くなると、負極の電極電位が正極活物
質の電極電位側にシフトし、この負極を用いた電池の電
池電圧が低くなり、エネルギー密度が低下する。したが
って、負極活物質に比べて電極電位が大きなものを用い
る場合は、加えすぎない方が良い場合もある。特に、添
加する正極活物質が多過ぎると、電極内で局部電池を形
成して自己放電量が増大したり、さらに加え過ぎると電
極電位が逆転して正極電位を示すので好ましくない。こ
のような理由から、添加する正極活物質の上限量として
は、選択する正極活物質によって電位が異なるので一概
には言えないが、好ましくは3重量%以上60重量%以
下、より好ましくは5重量%以上40重量%以下、さら
に好ましくは10重量%以上20%以下とするのが好ま
しい。
【0044】具体的な一例を挙げると、負極活物質にア
ルミニウムやリチウム合金を用いた場合、リチウムイオ
ン二次電池用カーボン負極以上の体積エネルギー密度を
得るためには、電極の形状等の他の要因もあるが、60
重量%まで添加できる。また、アルミニウム合金を用い
た場合、アルミニウムと合金化した金属の含有量によっ
て異なるが、例えば、アルミニウムとニッケルの合金
(Al:Ni=50:50)であれば、この場合も他の
要因もあるが、40重量%まで添加できる。
【0045】なお、添加する正極活物質の電極電位が負
極活物質に近いものを用いる場合は、添加量が多くても
良い。また、実際の電池の容量ばらつきが10%程度あ
ることを考慮すると、上記したように正極容量の10%
以上添加することが好ましい。
【0046】(負極活物質)本発明における負極活物質
としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金、カー
ボン、アルミニウム、アルミニウム合金等が好適な物質
として挙げられる。
【0047】カーボン材料としては、リチウムイオンを
できる限り多く、吸蔵、放出できるものが好ましい。例
えば、石炭ピッチや石油ピッチ等を各種温度で熱処理し
て得た人造黒鉛、炭素、又は天然黒鉛を、真空雰囲気
下、又は窒素、ヘリウム、若しくはアルゴン等の不活性
ガス雰囲気下で、各種温度で熱処理したものが好適に用
いることができる。
【0048】リチウム合金としては、例えば、アルミ二
ウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウ
ム、ストロンチウム、バリウム、ケイ素、ゲルマニウ
ム、スズ、鉛、インジウム、亜鉛のいずれかの金属と、
リチウムとの合金が好適に使用できる。特に、アルミニ
ウム、マグネシウム、カルシウム、鉛が好適である。
【0049】アルミニウム合金としては、例えば、ニッ
ケル、コバルト、銅、チタンのいずれかの金属と、アル
ミニウムとの合金が好適に使用できる。
【0050】アルミニウム金属やアルミニウム合金で
は、その表面に対して、エッチング処理等を行うことが
好ましい。その理由は、比表面積を増大させて、電池に
した時の実効電流密度を低減し、デンドライトの成長を
抑制することが可能になるためである。
【0051】エッチング方法としては、例えば、化学エ
ッチング、電気化学エッチング、プラズマエッチングが
挙げられる。
【0052】化学エッチングは、被エッチング物を、酸
又はアルカリ溶液と反応させて、エッチングするもので
ある。リチウムと合金を作る金属元素、すなわち、アル
ミニウム、亜鉛、鉛、又は錫を含む金属合金粉末のエッ
チング液としては、例えば、りん酸、硫酸、塩酸、硝
酸、酢酸、フッ酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム、水酸化リチウム、及びこれらの混合溶液が好適に用
いられる。
【0053】化学エッチングの場合には、リチウムと合
金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素
とのエッチングの速度比が異なる選択的エッチングが可
能なエッチング液を使用することが好ましい。
【0054】電気化学エッチングは、被エッチング物を
電極として、電解液中で対極間に電界を印加し、電気化
学的に金属イオンとして溶出させるものである。リチウ
ムと合金を作る金属元素であるアルミニウムを含む金属
合金粉末の電解液としては、例えば、りん酸、硫酸、ク
ロム酸、及びこれらの混合溶液が好適に用いられる。
【0055】プラズマエッチングは、エッチング用のガ
スをプラズマ化して、反応性のイオンやラジカルを被エ
ッチング物と反応させてエッチングする方法である。原
料のエッチングガスとしては、テトラクロロメタン、テ
トラフルオロメタン、塩素、トリクロロモノフルオロメ
タン、ジクロロジフルオロメタン、クロロトリフルオロ
メタン等が好適に使用できる。
【0056】(負極の表面被覆)本発明における負極の
表面を被覆する皮膜は、リチウムイオンは選択的に透過
して、析出するリチウム金属は透過しない絶縁体膜又は
半導体膜の皮膜である。これによって、充電時のデンド
ライト発生の抑制効果を高めることができる。
【0057】具体的には、本発明の負極表面を被覆する
材料としては、リチウムイオンを透過できる細孔又は分
子構造を有するものを使用する。リチウムイオンを透過
できる分子構造を有するものとしては、例えば、大冠状
エーテルの構造、エーテル結合を有する構造等を有する
高分子が挙げられる。リチウムイオンを透過できる細孔
を積極的に作製する方法としては、皮膜材料の塗液中に
電解質塩等の塗膜形成後溶出可能な材料を混合しておく
方法、又は発泡剤または容易に熱分解する材料等を混合
しておいて細孔を作製する方法等が採用できる。
【0058】(正極) 本発明における正極1003としては、正極活物質10
01に加えて、アルミニウム金属、リチウム合金、アル
ミニウム合金等の負極活物質(リチウムを挿入できる物
質)1002を含んでいるものが好適なものとして挙げ
られる。
【0059】
【0060】
【0061】アルミニウム金属やアルミニウム合金とし
ては、電池過放電時にリチウムと合金化しやすくするた
め、エッチング処理等を行い、比表面積を増大させたも
のを用いた方がより好ましい。
【0062】また、正極へ添加する負極活物質の量は、
多いほど、図1に示した過放電領域における容量が大き
くなるので、過放電に対して強くなる。また、添加した
負極活物質は導電材としても機能するため、正極のイン
ピーダンス低下にも効果がある。しかし、負極活物質の
添加量を増加させることは、正極の容量低下につながる
一方、正極電位も添加した負極活物質の電位側にシフト
して電池電圧が低下するため、電池容量の低下につなが
る。
【0063】したがって、実際の添加量としては、通常
正極中に添加する、アセチレンブラック等の導電補助材
の代わりに、添加する負極活物質を用いることによっ
て、アセチレンブラック等の導電補助材の体積分の一部
又は全部を、負極活物質の添加量に置き換えることが好
ましい。すなわち、負極活物質としてアルミニウムやリ
チウム合金を用いた場合は、たいていの場合正極活物質
の4重量%までは電池容量を低下させることなく添加で
きる。また、アルミニウム合金の場合、アルミニウムと
合金化する金属の種類、組成比によって異なるが、例え
ば、ニッケルアルミニウム合金(Ni:Al=50:5
0)を用いた場合、5重量%までとすることが正極容量
を実質的に低下させる事なく添加できるという点で好ま
しい。また、実際の電池の容量のばらつきが10%程度
あることを考慮すると、正極容量の10%以上となるよ
うに添加する方が好ましい。
【0064】正極へ添加する負極活物質の添加方法とし
ては、過放電時に電極全体を均一に反応させるために正
極活物質と均一に混合する方法、又は電極反応が起こり
易い正極の表面上にコートする等の方法を用いることが
できる。電極表面に負極活物質をコートする場合、正極
活物質と負極活物質の混合物を用いることによって、正
極活物質も電極表面上に配置できるので、より電極反応
が起こり易くなる。
【0065】正極1003の作製方法としては、次のも
のが例示される。 (1)正極活物質に、負極活物質、導電補助剤、及び結
着材を必要に応じて混合した後、有機溶媒等を添加し
て、粘度を調整したペーストを調製する。 (2)上記(1)で得られたペーストを、金属等の集電
部材の表面上に塗布又は充填した後、乾燥又は焼結して
正極1003を形成する。
【0066】正極に用いる導電補助剤としては、例え
ば、粉体状又は繊維状のアルミニウム、銅、ニッケル、
若しくはステンレススチールや、カーボンブラック(例
えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)等
のカーボン粉又はカーボン繊維が使用できる。結着剤と
しては、電解液に安定なものが好ましく、例えば、ポリ
テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビリニデン、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポ
リマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーが
好適に挙げられる。
【0067】また、負極活物質と正極活物質を配合比を
調整して混合した後、導電補助材、結着材等を必要に応
じて加えて有機溶媒でペースト状にした後、正極表面上
にコートすることによって正極を作製することもでき
る。また、この場合、多数回コートを繰り返してもよ
く、各コート毎、あるいは必要に応じて上記配合比を変
えて塗布、形成して正極を作製してもよい。
【0068】集電体は充放電時の電極反応で効率よく消
費する電流を供給する役目、又は、発生する電流を集電
する役目を担っている。したがって、電導度が高く、か
つ電池反応に不活性な材質が望ましい。好ましい材質と
しては、例えば、ニッケル、チタニウム、銅、アルミニ
ウム、ステンレススチール、白金、パラジウム、金、亜
鉛、各種合金、及び上記材料の二種以上の複合金属等が
好ましいものとして挙げられる。集電体の形状として
は、例えば、板状、箔状、メッシュ状、スポンジ状、繊
維状、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の形状
が採用できる。
【0069】正極活物質としては、遷移金属酸化物や遷
移金属硫化物が一般に用いられる。遷移金属酸化物や遷
移金属硫化物の遷移金属元素としては、部分的にd殻あ
るいはf殻を有する元素で、Sc,Y,ランタノイド,
アクチノイド,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,C
r,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,
Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,A
uを用いることができる。主には、第一遷移系列金属の
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuを使用
するのが好ましい。
【0070】(セパレータ)本発明におけるセパレータ
は、負極と正極の短絡を防ぐ役割を持っている。また、
電解液を保持する役目を有する場合もある。セパレータ
としては、リチウムイオンが移動できる細孔を有し、か
つ、電解液に不溶で安定である必要があるため、例え
ば、ガラス、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素樹
脂、ポリアミドからなる不織布、又はミクロポア構造の
材料が用いられる。また、微細孔を有する金属酸化物フ
ィルム、又は金属酸化物を複合化した樹脂フィルムも使
用できる。特に、多層状構造をした金属酸化物フィルム
を使用した場合には、デンドライトが貫通しにくいため
短絡防止に効果がある。難燃材であるフッ素樹脂フィル
ム、又は不燃材であるガラスや金属酸化物フィルムを用
いた場合には、電池の安全性をより高めることができる
ため好ましい。
【0071】(電解質)本発明における電解質の使用法
としては、次の3通りが挙げられる。 (1)電解質をそのままの状態で用いる方法。 (2)電解質を溶媒に溶解した溶液として用いる方法。 (3)電解質を溶液にポリマー等のゲル化剤を添加する
ことによって、固定化したものとして用いる方法。
【0072】一般的には、溶媒に電解質を溶かした電解
液を、多孔性のセパレータに保液させて使用する。
【0073】電解質の導電率は、25℃における値とし
て、好ましくは1×10-3S/cm以上、より好ましく
は5×10-3S/cm以上とするのが望ましい。
【0074】電解質としては、例えば、H2SO4,HC
l,HNO3等の酸、リチウムイオン(Li+)とルイス
酸イオン(BF4 -,PF6 -,ClO4 -,CF3SO3 -
BPh4 -(Ph:フェニル基))を供給可能な塩、およ
びこれらの混合塩が挙げられる。また、ナトリウムイオ
ン、カリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオ
ン等の陽イオンとルイス酸イオンを供給可能な塩も使用
できる。上記塩は、減圧下で加熱したりして、十分な脱
水と脱酸素を行っておくことが望ましい。
【0075】電解質の溶媒としては、例えば、アセトニ
トリル、ベンゾニトリル、プロピレンカーボネイト、エ
チレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチル
カーボネート、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフ
ラン、ニトロベンゼン、ジクロロエタン、ジエトキシエ
タン、1,2−ジメトキシエタン、クロロベンゼン、γ
−ブチロラクトン、ジオキソラン、スルホラン、ニトロ
メタン、ジメチルサルファイド、ジメチルサルオキシ
ド、ジメトキシエタン、ギ酸メチル、3−メチル−2−
オキダゾリジノン、2−メチルテトラヒドロフラン、3
−プロピルシドノン、二酸化イオウ、塩化ホスホリル、
塩化チオニル、塩化スルフリル、又は、これらの混合液
が使用できる。
【0076】上記溶媒は、例えば、活性アルミナ、モレ
キュラーシーブ、五酸化リン、塩化カルシウム等で脱水
するか、溶媒によっては、不活性ガス中でアルカリ金属
共存下で蒸留して不純物除去と脱水を行うのがよい。
【0077】電解液の漏洩を防止するために、ゲル化す
ることが好ましい。ゲル化剤としては、電解液の溶媒を
吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望まし
い。このようなポリマーとしては、例えば、ポリエチレ
ンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルア
ミドが好適に用いられる。
【0078】(電池の形状と構造)本発明における電池
の形状としては、例えば、偏平型、円筒型、直方形型、
シート型等がある。また、電池の構造としては、例え
ば、単層式、多層式、スパイラル式等がある。その中で
も、スパイラル式円筒型の電池は、負極と正極の間にセ
パレーターをはさんで巻くことによって容積に対する電
極面積を大きくすることができ、充放電時に大電流を流
すことができる。また、直方体型の電池は、二次電池を
収納する機器の収納スペースを有効利用することができ
る。
【0079】以下では、図3及び図4を参照して、電池
の形状と構造についてより詳細な説明を行う。図3は単
層式偏平型電池の模式的部分断面図であり、図4はスパ
イラル式円筒型電池の模式的部分断面図を表している。
【0080】図3及び図4において、200は負極集電
体、201は負極活物質、202は負極、203は正極
活物質、204は正極集電体、205は負極端子(負極
キャップ)、206は正極缶、207は電解液を保持し
たセパレータ、208は正極、210は絶縁パッキン
グ、311は絶縁板である。
【0081】以下では、図3や図4に示した電池の組立
方法の好適な一例を説明する。 (1)負極活物質と成形した正極活物質の間に、セパレ
ータを挟んで正極缶に組み込む。 (2)電解質を注入した後、負極キャップと絶縁パッキ
ングを配置して仮に組み立てる。 (3)次に正極缶と負極キャップとをかしめることによ
って、電池は完成する。
【0082】なお、上述したリチウム電池の材料調製、
及び電池の組立は、リチウムと水との反応を避けるため
に水分が十分除去された乾燥空気中、又は乾燥不活性ガ
ス中で行うのが望ましい。
【0083】(絶縁パッキング)本発明における絶縁パ
ッキングの材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリア
ミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、各種ゴムが使用でき
る。
【0084】絶縁パッキングの封口方法としては、図3
と図4に示した絶緑パッキングからなるガスケットを用
いた「かしめ」以外にも、ガラス封管、接着剤を用いた
方法、溶接、半田付け等の方法が用いられる。
【0085】また、図4に示した絶縁板の材料として
は、例えば、各種有機樹脂材料やセラミックスが用いら
れる。
【0086】(外缶)本発明における外缶としては、電
池の正極缶、及び負極キャップが挙げられる。外缶の材
料としては各種金属が挙げられるが、中でもステンレス
スチールが好適に用いられる。特に、チタンクラッドス
テンレス板、銅クラッドステンレス板、ニッケルメッキ
鋼板等が好適に用いられる。
【0087】図3と図4では、正極缶が電池ケースを兼
ねているため、上記のステンレススチールが好ましい。
ただし、正極缶と電池ケースが兼用しない場合には、電
池ケースの材質としては、ステンレススチール以外にも
亜鉛等の金属、ポリプロピレン等のプラスチック、又は
金属若しくはガラス繊維とプラスチックの複合材を好適
なものとして挙げられる。
【0088】(安全弁)図3及び図4には図示されてい
ないが、通常電池には、電池の内圧が高まったときの安
全策として、安全弁やそれに代わる機構や構造が備えら
れている。安全弁としては、例えば、ゴム、スプリン
グ、金属ボール、破裂箔等が好適に使用できる。
【0089】
【実施例】以下、具体的な実施例に基づき本発明を詳細
に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
【0090】(実施例1)本例では、図3に示した断面
構造のリチウム二次電池を作製した。以下では、図3を
参照して、電池の各構造物の作製手順と、電池の組立に
ついて説明する。
【0091】(1)負極の作製手順 アルミニウム粉末(300メッシュアンダー)を、
0.05モルの三酸化タングステンを溶解した2%水酸
化ナトリウム水溶液に浸漬してエッチング処理すること
により、多孔質アルミニウム粉末(負極活物質)を作製
した。 上記で得られた負極活物質82wt%に、リチウ
ム−二硫化モリブデン(LiMoS2)10wt%、導
電補助材のアセチレンブラック3wt%、及び結着材の
ポリフッ化ビニリデン5wt%を混合した後、さらにN
−メチルピロリドンと共に混練してペーストを調製し
た。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてニ
ッケル箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理したものを
負極とした。
【0092】(2)正極の作製手順 電解二酸化マンガンと炭酸リチウムを、1:0.4
の比率で混合した後、800℃で加熱してリチウム−マ
ンガン酸化物(正極活物質)を作製した。 上記において調製した正極活物質82wt%に、
チタン−アルミニウム合金粉末10wt%、アセチレン
ブラック3wt%、及びポリフッ化ビリニデン粉5wt
%を混合した後、さらにN−メチルピロリドンを添加し
てペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてア
ルミニウム箔に塗布乾燥して正極を形成した。
【0093】(3)電解液の作製手順 十分に水分を除去したプロピレンカーボネート(P
C)とジメトキシエタン(DME)の等量混合溶媒に、
四フッ化ホウ酸リチウム塩を1M(mol/l)溶解し
たものを使用した。
【0094】(4)セパレータの作製手順 ポリプロピレン不織布を、ポリプロピレンの微孔セ
パレータでサンドイッチしたものを用いた。
【0095】以下、電池の組立について説明する。
【0096】(5)電池の組立 以下の組立は、乾燥アルゴンガス雰囲気で行った。ま
ず、負極と正極の間にセパレータをはさみ、チタンクラ
ッドのステンレス材の正極缶に挿入し、続いて正極缶に
電解液を注入した。その後、チタンクラッドのステンレ
ス材の負極キャップとフッ素ゴムの絶縁パッキングを用
いて正極缶を密閉して、リチウム二次電池を形成した。
【0097】以下では、作製した電池の性能評価につい
て説明する。性能評価は、充放電サイクル試験において
得られる、電池の単位体積あたりのエネルギー密度と、
サイクル寿命について行った。
【0098】サイクル試験の条件は、正極活物質量から
計算される電気容量を基準に0.1C(10時間率、容
量/時間の0.1倍の電流)の充放電を行った。最初の
3サイクル目までは、カットオフ電圧4.5Vに到達す
るまでの充電と、30分間の放置と、2.0Vに到達す
るまでの放電と、からなるサイクルを1サイクルとし
た。そして、3サイクル目の放電容量を電池容量とし
た。さらに、4サイクル目以降は、10時間の充電又は
カットオフ電圧4.5Vに到達するまでの充電と、充電
後の30分の放置と、11時間(基準容量の110%放
電)の放電と、放電後の30分の放置とからなるサイク
ルを1サイクルとして過放電条件で放電を行った。そし
て、3サイクル目の放電容量の60%に到達した時のサ
イクル回数を、電池のサイクル寿命とした。電池の充放
電装置には、北斗電工製HJ−106Mを使用した。そ
の結果を表1に示す。
【0099】(実施例2)本例では、負極及び正極の作
製方法において、コーターで塗布する溶液が実施例1と
異なる。
【0100】(1)負極の作製手順 負極活物質として、真空中、1000℃で熱処理し
た天然黒鉛を用いた。 上記で得られた負極活物質85wt%に、リチウ
ム−二硫化チタン(LiTiS2)10wt%、エチレ
ン−プロピレン−ジエンターポリマー5wt%を混合し
た後、キシレンと共に混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて銅
箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理して負極を形成し
た。
【0101】(2)正極の作製手順 実施例1に記載のリチウム−マンガン酸化物92w
t%に、アセチレンブラック3wt%、エチレン−プロ
ピレン−ジエンターポリマー5wt%を混合した後、キ
シレンと共に混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてア
ルミニウム箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理して正
極を形成した。他の点は実施例1と同様とした。評価結
果を表1に示す。
【0102】(実施例3)本例では、負極及び正極の作
製方法において、コーターで塗布する溶液が実施例1と
異なる。
【0103】(1)負極の作製手順 アルミニウム粉末(300メッシュアンダー)を、
0.05モルの三酸化タングステンを溶解した0.2%
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してエッチング処理する
ことにより、多孔質アルミニウム粉末(負極活物質)を
作製した。 上記で得られた負極活物質92wt%に、導電補
助材としてのアセチレンブラック3wt%、及び結着材
のポリフッ化ビニリデン5wt%を混合した後、さらに
N−メチルピロリドンと共に混練してペーストを調製し
た。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて銅
箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理したものを負極と
した。
【0104】(2)正極の作製手順 実施例1に記載のリチウム−マンガン酸化物85w
t%に、アルゴンガス中で1000℃の熱処理した天然
黒鉛10wt%、ポリフッ化ビニリデン5wt%を混合
した後、N−メチルピロリドンと共に混練してペースト
を調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてア
ルミニウム箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理して正
極を形成した。他の点は実施例1と同様とした。評価結
果を表1に示す。
【0105】(実施例4)本例では、負極及び正極の作
製方法において、コーターで塗布する溶液として異なる
2種類の溶液を用い、2度塗りした点が上述の実施例と
異なる。
【0106】(1)負極の作製手順 実施例1でエッチング処理を施して作製したアルミ
ニウム粉末92wt%に、アセチレンブラック3wt
%、ポリフッ化ビニリデン5wt%を混合した後、さら
にN−メチルピロリドンと共に混練してペーストを調製
した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて銅
箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理したものを電極A
とした。 上記で用いたアルミニウム粉末46wt%に、リ
チウム−二硫化モリブデン(LiMoS2)46wt
%、アセチレンブラック3wt%、ポリフッ化ビニリデ
ン5wt%を混合した後、N−メチルピロリドンと共に
混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて上
記で得られた電極A上に塗布、乾燥した後、プレス処
理したものを負極とした。この際、負極中の二硫化モリ
ブデンとアルミニウムとの比率は、重量比で1:9とな
るように調製した。
【0107】(2)正極の作製手順 実施例1のリチウム−マンガン酸化物92wt%
に、アセチレンブラック3wt%、ポリフッ化ビニリデ
ン5wt%を混合した後、さらにN−メチルピロリドン
と共に混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてア
ルミニウム箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理したも
のを電極Bとした。 実施例1のリチウム−マンガン酸化物46wt%
に、真空中で1000℃の熱処理した天然黒鉛46wt
%、アセチレンブラック3wt%、ポリフッ化ビニリデ
ン5wt%を混合した後、N−メチルピロリドンと共に
混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて上
記で得られた電極B上に塗布、乾燥した後、プレス処
理したものを正極とした。この際、正極中の天然黒鉛と
リチウム−マンガン酸化物との比率は、重量比で1:9
となるように調製した。他の点は実施例1と同様とし
た。評価結果を表1に示す。
【0108】(比較例1)実施例2の負極中のリチウム
−二硫化チタン(LiTiS2)を除く事以外は実施例
2と同様の負極を用いて、図2に示した概略断面構造の
電池を実施例1と同様な手順で作製した。
【0109】本例では、負極中のリチウム−二硫化チタ
ン(LiTiS2)を除去した点が実施例2と異なる。
他の点は実施例2と同様とした。
【0110】表1は、実施例1〜4と比較例1で作製し
たリチウム二次電池の性能評価について纏めたものであ
る。ただし、サイクル寿命と電池の単位重量当たりのエ
ネルギー密度に関する実施例1〜4の評価結果は、比較
例1の値を1として規格化して記載した。
【0111】
【表1】 表1に示される通り、実施例1〜4及び後述する実施例
7のリチウム二次電池は比較例のものに較べて、サイク
ル寿命を大幅に改善できることがわかった。特に、実施
例1、実施例3及び実施例4のリチウム二次電池は、サ
イクル寿命の改善に加えて、エネルギー密度も向上でき
ることがわかった。
【0112】また、ここで得られたサイクル寿命は、従
来市販されているカーボン負極を有するリチウム二次電
池と較べても同等レベル以上であり、エネルギー密度に
関しては、比較例1のリチウム二次電池であっても、従
来市販されているカーボン負極を有するリチウム二次電
池より、50%以上優れていた。
【0113】よって、実施例1〜4のリチウム二次電池
は、従来市販されているカーボン負極を有するリチウム
二次電池より総合的にみて、優れた電池特性を有してい
ることがわかった。
【0114】なお、実施例1〜4の正極活物質には負極
の性能を評価する為にリチウム−マンガン酸化物一種類
を使用したが、これに限定されるものでなく、リチウム
−ニッケル酸化物、リチウム−コバルト酸化物等の各種
正極活物質も採用できることはいうまでもない。
【0115】また、実施例1〜4の負極活物質にはアル
ミニウム金属や天然黒鉛を用いたが、これに限定される
ものでなく、リチウム金属、リチウム合金やアルミニウ
ム合金等の負極活物質も採用できることはいうまでもな
い。
【0116】(実施例5)本例では、実施例1の電池
で、電池容量が基準容量の100%になる電池(電池
α)と90%になる電池(電池β)を作製した。電池α
と電池βを各1ケずつを直列に接続し、組電池Aを作製
した。この組電池Aを実施例1と同様にしてサイクル寿
命を評価した。
【0117】(比較例2)本例では、比較例1の電池
で、電池容量が基準容量の100%になる電池(電池
γ)と90%になる電池(電池δ)を作製した。電池γ
と電池δを各1ケずつ直列に接続し、組電池Bを作製し
た。この組電池Bを実施例5と同様にしてサイクル寿命
を評価した。
【0118】その結果、実施例5と比較例2で作製した
リチウム二次電池のサイクル寿命を調べたところ、実施
例5のサイクル寿命は、比較例2サイクル寿命の2.5
倍長寿命であった。したがって、本発明の二次電池を採
用することによって、電池容量が異なる複数個の電池を
直列に接続した組電池Aでは、過放電される条件で試験
を行っても電池寿命が伸びることがわかった。
【0119】(実施例6)本例では、実施例5で用いた
電池αと電池βを各1ケずつを並列に接続し、組電池C
を作製した点が以外は、実施例5と同様としてサイクル
寿命を評価した。
【0120】(比較例3)本例では、比較例2で用いた
電池γと電池δを各1ケずつを並列に接続し、組電池D
を作製した点以外は比較例2と同様としてサイクル寿命
を評価した。
【0121】実施例6と比較例3で作製したリチウム二
次電池のサイクル寿命を調べたところ、実施例6のサイ
クル寿命は比較例3のサイクル寿命に対して、2.3倍
長寿命であった。したがって、本発明の二次電池を採用
することによって、電池容量が異なる複数個の電池を並
列に接続した組電池Cでは、過放電される条件で試験を
行っても電池寿命が伸びることがわかった。
【0122】(実施例7) (1)負極の作製手順 実施例2の天然黒鉛75wt%に、リチウムチタン
酸化物(Li4/3Ti5/34)20wt%、及びポリフ
ッ化ビニリデン5wt%を混合した後、N−メチルピロ
リドンと共に混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いて銅
箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理して負極を形成し
た。
【0123】(2)正極の作製手順 実施例1に記載のリチウム−マンガン酸化物80w
t%に、1000℃の熱処理した天然黒鉛15wt%、
及びポリフッ化ビニリデン5wt%を混合した後、N−
メチルピロリドンと共に混練してペーストを調製した。 上記で得られたペーストを、コーターを用いてア
ルミニウム箔上に塗布、乾燥した後、プレス処理して正
極を形成した。他の点は実施例1と同様とした。評価結
果を表1に示す。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】(実施例) (1)負極の作製手順 アルミニウム箔を、水酸化カリウム水溶液に浸漬し
てエッチング処理した後、水洗、乾燥処理を行った。
上記の処理を行ったアルミニウム箔表面上に、リチ
ウム−チタン酸化物90wt%とアセチレンブラック5
wt%及びポリフッ化ビニリデン5wt%をN−メチル
ピロリドンと共に混練して得たペーストをスピンコート
を用いて塗布した。他の点は実施例1と同様とした。評
価結果を表に示す。
【0128】(比較例4) 本例では、実施例の負極表面上のリチウム−チタン酸
化物層(アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを
含む)を除去した点が実施例9と異なる。すなわち、本
比較例では、実施例中のの処理で得たアルミニウム
箔を負極に用いた。他の点は実施例と同様とした。
【0129】
【表2】 は、実施例で作製したリチウム二次電池の性能評
価について纏めたものである。ただし、サイクル寿命の
結果は、比較例4の値を1として規格化して記載した。
【0130】(実施例) (1)正極の作製手順 五酸化バナジウム(V25)と炭酸リチウムをバナ
ジウムとリチウムのモル比2:1の割合で混合した後、
700℃で焼成してリチウム−バナジウム酸化物(Li
2 4 )を作製した。 上記で作製したリチウム
−バナジウム酸化物85wt%に、1000℃で熱処理
した天然黒鉛10wt%及びポリフッ化ビニリデン5w
t%を混合した後、さらにN−メチルピロリドンを添加
してペースト調整した。 上記で得られたペースト
をコーターを用いてアルミニウム箔に塗布乾燥して正極
を形成した。
【0131】(2)負極の作製手順 1000℃で熱処理した天然黒鉛85wt%に、上
記(1)で作製したリチウム−バナジウム酸化物10w
t%及びポリフッ化ビニリデン5wt%を混合した後、
さらにN−メチルピロリドンを添加してペースト調整し
た。 上記で得られたペーストをコーターを用いて
銅箔に塗布乾燥して負極を形成した。他の点は実施例1
と同様とした。評価結果を表に示す。
【0132】(比較例5) 本例では、実施例の正極から天然黒鉛を除去した点
と、負極からリチウム−バナジウム酸化物を除去した点
とが実施例と異なる。他の点は実施例と同様とし
た。
【0133】
【表3】 は、実施例で作製したリチウム二次電池の性能評
価について纏めたものである。ただし、サイクル寿命の
結果は、比較例5の値を1として規格化して記載した。
【0134】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
負極及び/又は正極が過放電されることを防止できるの
で、電池を直列又は並列に複数個接続した場合でも、電
池の劣化が少なくサイクル寿命の長いリチウム二次電池
が得られる。また、本発明によれば過放電特性に優れ、
組電池としての使用性に優れたリチウム二次電池を提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リチウム二次電池の放電の一例について説明す
るための概念図である。
【図2】リチウム二次電池の放電の一例について説明す
るための概念図である。
【図3】単層式偏平型電池の一例の模式的部分断面図で
ある。
【図4】スパイラル式円筒型電池の一例の模式的部分断
面図である。
【符号の説明】
1001、1011、1102、203 正極活物質、 1002、1101、1111、201 負極活物質、 1003、1013、208 正極、 1103、1113、202 負極、 200 負極集電体、 204 正極集電体、 205 負極端子(負極キャップ)、 206 正極缶、 207 電解液を保持したセパレータ、 210 絶縁パッキング、 311 絶縁板。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅尾 昌也 東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤ ノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−174872(JP,A)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電池ケース内に電解質中にセパレータに
    よって隔てられた正極と負極とを有するリチウム二次電
    池において、負極として使用し得るリチウムを挿入・脱
    離できる物質としてアルミニウム金属、リチウム合金、
    アルミニウム合金の群から選択される一種類以上を含ん
    だ正極を有することを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 【請求項2】 電池ケース内に電解質中にセパレータに
    よって隔てられた正極と負極とを有するリチウム二次電
    池において、正極として使用し得るリチウムを含有し得
    る物質を含んだ負極、及び負極として使用し得るリチウ
    ムを挿入・脱離できる物質としてアルミニウム金属、リ
    チウム合金、アルミニウム合金の群から選択される一種
    類以上を含んだ正極を有することを特徴とするリチウム
    二次電池。
  3. 【請求項3】 前記負極が、リチウム、リチウム合金、
    アルミニウム、アルミニウム合金、又はカーボンを有す
    る請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
  4. 【請求項4】 前記負極が、前記リチウムを含有し得る
    物質として、リチウムを含有し得る金属酸化物、硫化
    物、水酸化物、セレン化物のうち少なくとも一種類以上
    を含有する請求項に記載のリチウム二次電池。
  5. 【請求項5】 前記リチウムを含有し得る金属酸化物、
    硫化物、水酸化物、セレン化物がCu、Mo、Ti、
    V、Nbのうち少なくとも一種類の元素を含有する請求
    に記載のリチウム二次電池。
  6. 【請求項6】 前記アルミニウム合金がNi、Co、C
    u、Tiのうち少なくとも一種類の元素を含有する請求
    1又は2に記載のリチウム二次電池。
  7. 【請求項7】 前記リチウムを含有し得る物質がリチウ
    ムを含有した請求項2、4、5のいずれか1項に記載の
    リチウム二次電池。
  8. 【請求項8】 前記リチウムを含有し得る物質は、リチ
    ウムと化学的に結合した請求項に記載のリチウム二次
    電池。
  9. 【請求項9】 前記リチウムを含有した物質は充電によ
    り生成される請求項に記載のリチウム二次電池。
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