JP3177633B2 - 高温強度に優れた極低Mn低Crフェライト耐熱鋼 - Google Patents
高温強度に優れた極低Mn低Crフェライト耐熱鋼Info
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Description
のクリープ破断強度が高く、且つ常温以下での低温靱性
に優れ、ボイラ、化学工業、原子力用などの分野で熱交
換器管や配管用管、耐熱バルブ、接続継手などの鋳鍛鋼
品として使用するに好適な極低Mn低Crフェライト耐
熱鋼に関する。
温耐熱耐圧部材に使用される材料としては、オーステナ
イトステンレス鋼、Cr含有量が9〜12%の高Crフ
ェライト鋼、Cr含有量が3.5%以下の低Crフェライ
ト鋼あるいは炭素鋼が用いられている。これらは対象と
なる部材の使用温度、圧力などの使用環境と、経済性を
考慮して適宜選択される。
下の低Crフェライト鋼の特徴は、Crを含有している
ために炭素鋼に比べて耐酸化性、高温耐食性および高温
強度に優れること、オーステナイトステンレス鋼に比べ
格段に安価で、且つ熱膨張係数が小さく、応力腐食割れ
を起こさないこと、さらに高Crフェライト鋼に比べて
も安価で、靱性、熱伝導性および溶接性に優れることに
ある。
S規格にSTBA24(2.25Cr−1Mo鋼)、ST
BA23、STBA22、STBA20などがあり、通
常Cr−Mo鋼と総称されている。また、高温強度を向
上させる目的で析出強化元素であるV,Nb,Ti,T
a,Bを添加した鋼が、特開昭57−131349号公
報、特開昭57−131350号公報、特開昭61−1
66916号公報、特開昭62−54062号公報、特
開昭63−18038号公報、特開昭63−62848
号公報、特開昭64−68451号公報、特開平1−2
9853号公報、特開平3−64428号公報、特開平
3−87332号公報などに提案されている。良く知ら
れている析出強化型低Crフェライト鋼は、タービン用
材料としての1Cr−1Mo−0.25V鋼や、高速増殖
炉用構造材料としての2.25Cr−1Mo−Nb鋼など
である。
高Crフェライト鋼やオーステナイトステンレス鋼に比
べると、高温での耐酸性化、耐食性に劣り、高温強度も
低いため、550℃以上での使用に問題がある。
CuとMgの複合添加により550℃以上の高温でのク
リープ強度を改善した低Crフェライト鋼を開発し、先
に特許出願を行なった(特開平2−217438号公
報、特開平2−217439号公報)。また、その後に
本出願人らは、N量を制限した上でBを微量添加するこ
とにより、550℃以上の高温でのクリープ強度を改善
し、合わせて高強度化に伴う靱性低下を抑制した低Cr
フェライト鋼を開発し、特許出願を行なった(特開平4
−268040号公報)。
よってもたらされる実益は次のように極めて大きい。
使用環境でも、高温強度確保のためにオーステナイトス
テンレス鋼あるいは高Crフェライト系鋼を使用してい
た分野、つまり低Crフェライト鋼の使用が制限されて
いた部材に、低Crフェライト鋼の特性、例えば優れた
溶接性を生かすことができる。 2)部材の肉厚そのものを薄くすることが可能となり、
それによって熱伝導性が向上し、プラントの熱効率その
ものを改善するとともに、プラントの起動、停止に伴う
熱疲労負荷を軽減することができる。 3)部材の軽量化によりプラントのコンパクト化と製造
コストの低減が可能となる。
人が開発したものも含め、従来考えられている高強度化
の対策は高温長時間、特に550℃以上の高温で且つ1
0000時間に達するような長時間のクリープ強度改善
には十分でない。
来の高強度化は、主に、MoやWの固溶強化とCr,F
e,Mo,Wの微細析出物の析出による強化を利用して
いるが、微細炭化物が550℃以上の高温下で長時間に
わたって安定に保たれないため、炭化物の粗大化やM
o,W,Feを主成分とする金属間化合物の析出により
高温長時間側のクリープ強度が低下する。
固溶強化を高める方法が考えられているが、高温での長
時間使用後にこれらの元素が析出するため、その効果は
小さく、かえって靱性、加工性、溶接性を劣化させる。
短時間側のクリープ強度の改善にしか効果がなく、その
上フェライト地に過剰に析出すると材料を硬化させるの
で、靱性低下が大きい。また、溶接性を著しく劣化させ
ることから、これらの元素は添加量が制限される場合が
多い。
従来考えられている高強度化の対策は、高温長時間のク
リープ強度改善には十分でなく、場合によっては靱性等
の他の性能の低下も招く。
の低Crフェライト鋼でありながら、高温長時間側で高
いクリープ強度を示し、靱性、加工性および溶接性につ
いても同系既存鋼と同等以上の性能を有する極低Mn低
Crフェライト耐熱鋼を提供することにある。
め、本発明者らはVとNbによる析出強化と、WとMo
による固溶強化および微細炭化物による析出強化とを考
え、高温、特に550℃以上での組織の長時間安定性に
ついて多数の調査を繰り返した結果、次のような知見を
得た。
体としたCr−Mo鋼が一般的であったが、Moに比べ
て原子半径が大きく拡散係数の小さいWを多量に使用す
ることにより、格段の固溶強化が図れるのに加えて、ク
リープ強度に寄与する微細炭化物の高温での安定性が増
す。
量に添加した低Crフェライト鋼にあっても、550℃
以上の高温で長時間保持すると、Cr,Feを主成分と
した微細炭化物がW,MoおよびFeを主成分とした粗
大な炭化物や金属間化合物へ変化してしまう。そして、
これらの粗大な析出物がクリープ強度の低下や靱性低下
を誘発する上に、固溶強化を目的に添加したWやMoが
析出するため、長時間使用後は固溶強化の効果が低減す
る。
減、具体的には0.1%未満にすると、Cr,Feを主成
分とした微細炭化物の安定性が増加する一方で、W,M
o,Feを主成分とした析出物の生成が抑制され、高温
長時間側のクリープ強度が著しく向上する。なぜなら、
MnはCrやFeとともに炭化物として析出しやすい元
素であり、炭化物中にMnが濃化した場合は炭化物の粗
大化を促進するからである。
低下し、δフェライト相の生成または増加による強度、
靱性の低下が生ずる場合がある。しかしながら、ここに
Bを積極添加することにより十分な焼き入れ性が得ら
れ、常温から550℃以上の高温までδフェライト量の
増加による靱性低下は防止される。
にも寄与する。但し、Bは鋼中のNと結合してBNとし
て析出しやすい。しかし、固溶N量とのバランスを示す
下記(a)式が満足されるならば、固溶B量が十分に確
保され、クリープ強度は向上する。 (14/11)B>N-N(V/51)/{(C/12)+(N/14)}-N(Nb/93)/{(C/12)+(N/14)}…(a)
偏析により炭化物の析出量増加や粗大化を招く場合もあ
るが、に記載の低Mn化の効果により、この問題も回
避される。
添加との相乗により、550℃以上の高温でも組織が長
時間にわたって安定化し、高温長時間クリープ特性が著
しく向上すると共に、析出物の粗大化に伴う靱性低下等
の弊害が防止されることになり、この知見をもとに本発
明は完成された。
は、重量%でC:0.02〜0.20%、Si:0.7%以
下、Mn:0.1%未満、Ni:0.8%以下、Cr:0.8
〜3.5%、W:0.01〜3.0%、V:0.1〜0.5%、N
b:0.01〜0.20%、Al:0.001〜0.05%、M
g:0.0005〜0.05%、B:0.0020〜0.02
%、N:0.02%未満、P:0.03%以下、S:0.01
5%以下を含み、残部がFeおよび不可避不純物からな
り、且つ上記B含有量が下記(a)式の条件を満たすも
のである。 (14/11)B>N-N(V/51)/{(C/12)+(N/14)}-N(Nb/93)/{(C/12)+(N/14)}…(a)
のMoおよび/またはそれぞれ0.01〜0.2%のLa,
Ce,Y,CaおよびTaのうちの1種または2種以上
を含有することが可能である。
温長時間安定性を高めることと、W,Moを主成分とす
る粗大析出物の生成を抑制することを目的に、Wおよび
必要に応じてMoを適量添加し、その上でMn量の低減
およびBの適量添加を行う。これにより、高温で長時間
にわたって安定な組織が維持され、高温長時間側のクリ
ープ強度が改善される。本発明鋼において合金組成を上
述のように限定した理由は次の通りである。なお、本明
細書において%はすべて重量%を意味する。
し、高温強度に寄与するとともに、それ自体がオーステ
ナイト安定化元素として組織を安定化する。本発明鋼
は、焼ならし−焼もどし処理によって、フェライトとマ
ルテンサイト、ベーナイトおよびパーライトの混合した
組織になるが、C含有量はこれらの組織のバランス制御
のためにも重要である。
量が不十分となるとともに、δフェライト量が多くなり
すぎて、強度と靱性を損なう。一方、0.20%を超える
と炭化物が過剰に析出し、鋼が著しく硬化して加工性と
溶接性を損なう。よって、C含有量の範囲は0.02〜0.
20%とした。
高める元素である。しかし、Si含有量が0.7%を超え
ると、靱性が著しく低下し、クリープ強度に対しても有
害である。特に厚肉材料では、長時間加熱による脆化を
避けるためにも低く抑える方が望ましい。よって、Si
含有量は0.7%以下とした。
加工性を向上させる目的で添加されてきた。しかし、M
nは炭化物中に濃化し、クリープ強度に有効な微細炭化
物の安定性を損なう。特にMn含有量が0.1%以上で
は、550℃以上の高温での長時間使用時に、Cr,F
eを主成分とした微細炭化物からW,MoおよびFeを
主成分とした粗大炭化物や金属間化合物への変化が促進
され、これによる粗大析出物の生成とW,Moの析出に
より高温長時間のクリープ強度が低下する。
クリープ破断強度に及ぼす影響および600℃×300
0hr時効後の(W+Mo)析出量に及ぼす影響を示
す。同図から分かるように、Mn含有量が0.1%未満に
制限されると、600℃×3000hr時効後の(W+
Mo)析出量は0.5mass%未満に抑制され、その結果、
600×104 hrクリープ破断強度はMn含有量が0.
1%以上の場合に比して格段に向上する。Mn含有量の
かかる制限は、Bの添加による粒界近傍での炭化物の析
出や粗大化を抑制するのにも有効であり、この点からも
高温クリープ強度の改善を図る。よって、Mn含有量は
0.1%未満とした。
ばあるほど効果は大きい。しかしながら現在の製鋼技術
では、0.01%未満に抑えることはかえってコストの上
昇を招く。従って、0.01%以上が望ましい。
に寄与する。しかし、Ni含有量が0.8%を超えると高
温クリープ強度を低下させる。また、経済性の点からも
多量添加は好ましくない。従って、Ni含有量は0.8%
以下とする。
改善のために不可欠な元素である。Cr含有量が0.8%
未満ではこれらの効果が得られない。一方、3.5%を超
えると、靱性、溶接性、熱伝導性が高くなり、低Crフ
ェライト鋼の利点が少なくなる。よって、Cr含有量の
範囲は0.8〜3.5%とした。
し、クリープ強度の向上に有効な元素である。Moも同
様の作用を有するが、Moより原子半径が大きく拡散係
数の小さいWの方が、クリープ強度に寄与する微細炭化
物の高温での安定化に有効である。W含有量が0.01%
未満では、この効果は得られない。特に有効なのは0.1
%以上、望ましくは1.0%以上の多量添加である。Mn
含有量を制限しているので、Wによるこの効果は高温長
時間の使用後も維持される。一方、3.0%を超えると、
鋼が著しく硬化し、靱性、加工性、溶接性を損なう。よ
って、W含有量の範囲は0.01〜3.0%とした。Moと
複合添加された場合は、単独添加以上に強度が一層向上
し、特に高温クリープ強度が改善される。
し、高温長時間側のクリープ強度の向上に寄与する。し
かし、0.1%未満ではこの効果が十分得られない。一
方、0.5%を超える場合にはV(C,N)の析出量が過
剰となり、かえって強度と靱性を損なう。よって、V含
有量の範囲は0.1〜0.5%とした。
細炭化物を形成し、クリープ強度の向上に寄与する。特
に625℃以下では安定な微細析出物を形成してクリー
プ強度を著しく改善する効果がある。さらに結晶粒を微
細化し、靱性の改善にも有効である。しかし、Nb含有
量が0.01%未満では上記効果が得られない。一方、0.
20%を超えると鋼を著しく硬化させ、靱性、加工性、
溶接性を損なう。よって、Nb含有量の範囲は0.01〜
0.20%とした。
有量が0.001%未満では脱酸効果が得られない。一
方、0.05%を超えるとクリープ強度と加工性を損な
う。よって、Al含有量の範囲は0.001〜0.05%と
した。
性を改善する。また、クリープ延性の向上にも有効で強
度改善にも寄与する。特にW含有量が高く、V,Nbを
含む場合には、これらの効果が著しくなる。しかし、0.
0005%未満の含有量では上記の効果が得られず、一
方、含有量が0.05%を超えるとその効果が飽和し、か
えって加工性の低下を招く。従って、Mgの含有量は0.
0005〜0.05%とした。
n量の低減に伴う焼き入れ性の低下を防止し、その結
果、δフェライト量の増加による靱性低下を防止する。
B含有量が0.0020%未満では、この効果が得られな
い。Bは又、鋼中に単独(固溶状態)で存在する場合、
粒内の炭化物を分散かつ安定化させ、長時間クリープ強
度の改善に寄与する。特に、N含有量を低く抑えた時に
この効果が大きい。N含有量が高い場合は、BとNとの
結合力が強いため、固溶Nを固定し、高温でベイナイ
ト、マルテンサイトおよびパーライト組織を安定にす
る。B含有量が0.0020%未満では、この効果も得ら
れない。
n含有量が制限されていると言えども、Bが粒界に過剰
に偏析し、Cとの共偏析により炭化物が粗大化する。そ
の結果、加工性、靱性および溶接性を著しく損ねる。よ
って、B含有量の範囲は0.0020〜0.02%とした。
固溶B量を十分に確保する必要がある。そのためには固
溶N量とのバランスが必要であり、下記(a)式を満た
す必要がある。なお、下記(a)式の詳細は後述する。 (14/11)B>N-N(V/51)/{(C/12)+(N/14)}-N(Nb/93)/{(C/12)+(N/14)}…(a)
強度を著しく損なう。VやNbと結合した場合、微細な
窒化物、またはCとの複合析出で炭窒化物を生成し、ク
リープ強度の向上に寄与するが、N量が高くなると窒化
物が粗大化し、強度、靱性、溶接性、加工性を損なう。
さらに、過剰のNは、ベナイト、マルテンサイト、およ
びパーライト組織を高温で不安定にする。このため、N
含有量はできるだけ抑制する必要がある。この許容上限
が0.02%である。
性、溶接性に有害であり、特に焼戻し脆化を促進させ
る。このため、可能な限り低くすることが望ましい。P
の許容上限は0.03%、Sの許容上限は0.015%であ
る。
更に、次に述べる合金元素を選択的に含有することがで
きる。
化の作用を有し、クリープ強度の向上に有効な元素であ
るので、必要に応じて含有させる。しかし、Mo含有量
が0.01%未満ではこの効果は得られない。一方、1.5
%を超えるとその効果が飽和するとともに、かえって溶
接性と靱性を損なう。よって、Moを含有させる場合は
その範囲を0.01〜1.5%とした。MoはWと複合添加
すると、より強度向上に寄与する。
れ0.01〜0.2% La,Ce,Y,CaおよびTaは、不純物であるP,
S,Oとそれらの析出物(介在物)の形態制御を目的と
して必要に応じて添加される。これらの元素は、その1
種もしくは2種以上を、それぞれ0.01%以上含有させ
ると、上記の作用によって鋼の靱性、強度、加工性およ
び溶接性が改善される。これらを含有させる場合は、い
ずれも0.01%未満では効果がない。一方、いずれも0.
2%を超えると介在物が増加し、かえって靱性、強度な
どを損なう。よって、これらの元素を含有させる場合は
それぞれ0.01〜0.2%とした。
種以上を選択することもできるが、その場合には合計含
有量を0.2%以下とするのが望ましい。
は、焼入れ性およびクリープ強度の観点から、固溶B量
の確保が必要である。そのために、下記(a)式を満足
させる必要がある。 (14/11)B>N-N(V/51)/{(C/12)+(N/14)}-N(Nb/93)/{(C/12)+(N/14)}…(a)
力を有し、窒化物を形成する。一方、VおよびNbはV
(N,C)およびNb(N,C)などの炭窒化物として
Nを固定する。本発明の耐熱鋼では、十分な固溶B量の
確保のためNを完全に固定することが必要である。Nが
単独で残る状態ではBの析出が起こり、十分な固溶B量
は確保されない。上記(a)式はNがB窒化物および
V,Nb炭窒化物としてすべて固定されることにより、
固溶B量が十分に確保されることを示す関係式である。
この関係が満足されないと、Nの固定が不足し、残った
NがBを窒化物として析出させるので、固溶B量が十分
に確保されない。
することにより、本発明の有効性を明らかにする。
kg真空溶解炉で溶製し、鋳造して得たインゴットを1
150〜950℃で鍛造して厚さ20mmの板とした。
で、いずれも代表的な既存の低Crフェライト鋼であ
る。C鋼およびD鋼は2・1/4Cr−1Moを基本組
成とし、V,Nbを添加した析出強化型比較鋼、E〜K
鋼はMn量を変化させた比較鋼、L〜N鋼はBとNのバ
ランスを変化させた比較鋼、O〜S鋼は合金成分のうち
C,Ni,Mo,Mg,V,Nbをそれぞれ本発明範囲
外に変化させた比較鋼である。そして1〜34鋼が本発
明鋼である。
IS規格どおりに920℃×1hr→空冷の後、720
℃×1hr→空冷とし、C〜S鋼および1〜34鋼では
1050℃×0.5hr→空冷の後、780℃×1hr→
空冷の焼ならし焼もどし処理とした。
リープ破断試験、シャルピー衝撃試験により評価した。
評価試験の中、常温引張試験には外径6mm×GL30
mmの引張試験片を用いた。クリープ破断試験でも同じ
試験片を用い、600℃で最長15000hrの試験を
行い、600℃×104 hrのクリープ破断強度を求め
た。シャルピー衝撃試験では10×10×55(m
m)、2mmVノッチ試験片(JIS4号試験片)を用
い、延性−脆性破面遷移温度を求めた。
析出挙動を調査する目的で、E〜K鋼および1〜4、7
〜9鋼について600℃×3000hrの時効処理後、
非水溶媒SPEED法による抽出残渣の採取を行い、残
渣中のW量およびMo量を定量した。
鋼および1〜4、7〜9鋼について600℃×104 h
rのクリープ破断強度および長時間効果後の(W+M
o)析出量を調査した結果を図1に示す。
出強化型の比較鋼C,Dは、Wを含有しないため、高温
長時間クリープ強度(600℃×104 hr)が10k
gf/mm2 に達しない。
nを0.1%以上含有するため、図1に示される通り長時
間時効によりWおよびMoを主体とする粗大析出物が多
量に生成し、WおよびMoによる効果が減少する。その
ため高温長時間クリープ強度は最高でも13.4kgf/
mm2 である。
n量を0.1%未満に制限したが、(a)式を満足せず、
固溶B量が十分に確保されなかったために、焼き入れ性
の低下による靱性の低下と高温長時間クリープ強度の低
下を生じた。
較鋼O〜Sについては、過剰介在物の生成の生成または
過剰δフェライト相の生成により、靱性若しくはクリー
プ特性のいずれかが劣る。
も常温引張伸びが25%以上であり、優れた靱性を示
す。シャルピー衝撃試験の延性−脆性破面遷移温度で
は、本発明鋼はいずれも−25℃以下の優れた靱性を示
す。また600℃×104 hrでのクリープ破断強度が
15.0kgf/mm2 以上となり、高温長時間での強度
が大幅に向上する。これは、Mn含有量を極低位に抑制
することにより高温で長時間にわたり組織が安定化し、
WやMoの析出が抑制されるとともに、固溶B量を適正
量確保することによって、さらにクリープ特性が向上す
るためである。
低Crフェライト耐熱鋼は、Cr含有量が3.5%以下で
あるにもかかわらず、550℃以上で10000時間以
上の高温長時間クリープ強度が著しく高く、しかも靱
性、延性および溶接性に優れる。従って、従来の低Cr
フェライト鋼の代替鋼として用いて、部材性能を大幅に
高めることができる。また従来、強度の点から低Crフ
ェライト鋼の使用が制限され、高Crフェライト鋼やオ
ーステナイト鋼の使用を余儀なくされていた分野で、低
Crフェライト鋼の使用を可能にして、経済性を著しく
高めることができる。
断強度に及ぼす影響および600℃×3000hr時効
後のW,Mo析出量に及ぼす影響を示す図表である。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.02〜0.20%、S
i:0.7%以下、Mn:0.1%未満、Ni:0.8%以
下、Cr:0.8〜3.5%、W:0.01〜3.0%、V:0.
1〜0.5%、Nb:0.01〜0.20%、Al:0.001
〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、B:0.00
20〜0.02%、N:0.02%未満、P:0.03%以
下、S:0.015%以下を含み、残部がFeおよび不可
避不純物からなり、且つ上記B含有量が下記(a)式の
条件を満たす高温強度に優れた極低Mn低Crフェライ
ト耐熱鋼。 (14/11)B>N-N(V/51)/{(C/12)+(N/14)}-N(Nb/93)/{(C/12)+(N/14)}…(a) - 【請求項2】 請求項1に記載の成分に加えて更に、重
量%で0.01〜1.5%のMoを含有し、且つB含有量が
上記(a)式の条件を満たす高温強度に優れた極低Mn
低Crフェライト耐熱鋼。 - 【請求項3】 請求項1に記載の成分に加えて更に、重
量%でそれぞれ0.01〜0.2%のLa,Ce,Y,Ca
およびTaのうちの1種もしくは2種以上を含有し、且
つB含有量が上記(a)式の条件を満たす高温強度に優
れた極低Mn低Crフェライト耐熱鋼。 - 【請求項4】 請求項1に記載の成分に加えて更に、重
量%で0.01〜1.5%のMoと、それぞれ0.01〜0.2
%のLa,Ce,Y,CaおよびTaのうちの1種もし
くは2種以上とを含有し、且つB含有量が上記(a)式
の条件を満たす高温強度に優れた極低Mn低Crフェラ
イト耐熱鋼。
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JPH08325669A (ja) | 1996-12-10 |
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