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JP2986962B2 - 防錆顔料組成物およびそれを配合した塗料 - Google Patents

防錆顔料組成物およびそれを配合した塗料

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JP2986962B2
JP2986962B2 JP3145510A JP14551091A JP2986962B2 JP 2986962 B2 JP2986962 B2 JP 2986962B2 JP 3145510 A JP3145510 A JP 3145510A JP 14551091 A JP14551091 A JP 14551091A JP 2986962 B2 JP2986962 B2 JP 2986962B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防錆顔料組成物および
それを配合した塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、油性塗料、溶剤系塗料、水系塗料
などの塗料用の防錆顔料としては、クロム系顔料(たと
えば、ジンククロメート、ストロンチウムクロメートな
ど)、鉛系顔料(たとえば、鉛丹、塩基性クロム酸鉛、
シアナミド鉛、鉛酸カルシウムなど)、リン酸系顔料
(たとえば、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸
カルシウムなど)、モリブデン酸系顔料(たとえば、モ
リブデン酸亜鉛など)、ホウ酸系顔料(たとえば、メタ
ホウ酸バリウムなど)などが使用されていた(たとえ
ば、特公昭53−31495号公報、特公昭54−53
99号公報、特開昭56−129638号公報など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、クロム系防錆
顔料や鉛系防錆顔料は、防錆力が優れているものの、有
害金属であるクロムや鉛を含有するため、人の健康を損
なうおそれがあるなど、安全性面で問題があった。
【0004】一方、リン酸系防錆顔料、モリブデン酸系
防錆顔料、ホウ酸系防錆顔料などは、有害金属を含ま
ず、いわゆる無公害防錆顔料であって、安全性面での問
題は少ないが、それらの防錆力は低く、また、一部の樹
脂系塗料に対しては貯蔵安定性を低下させるなど、改善
すべき問題が残されていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、クロムや鉛
などの有害金属を含まず、無公害で、かつ防錆力の優れ
た防錆顔料組成物を開発すべく、鋭意研究を重ねた結
果、結晶性層状リン酸塩を基材とする本発明に到達した
のである。
【0006】すなわち、本発明は、層間に2価金属イオ
ンをイオン交換させるか、またはインヒビターをインタ
ーカレートさせた一般式M(HPO4 2 ・xH2
(式中、MはTi、ZrおよびCeよりなる群から選ば
れた少なくとも1種の4価元素を示す。xは0〜2であ
る)で示される結晶性層状リン酸塩と酸化亜鉛との混合
物からなり、上記イオン交換させた2価金属イオンまた
はインターカレートさせたインヒビターが結晶性層状リ
ン酸塩の重量に対して0.1〜50%であり、かつ上記
結晶性層状リン酸塩と酸化亜鉛との混合比が重量比で9
0:10〜50:50である防錆顔料組成物に関する。
【0007】
【0008】
【0009】本発明の防錆顔料組成物が優れた防錆作用
を発揮する理由は、現在のところ必ずしも明確ではない
が、まず、結晶性層状リン酸塩が腐食により被塗装金属
から溶出してきたFe3+、Al3+、Zn2+などのカチオ
ンをイオン交換またはインターカレーションにより結晶
性層状リン酸塩中に固定化して腐食電流が大きくなるの
を抑制し、かつ酸化亜鉛が結晶性層状リン酸塩の溶解性
をコントロールして、結晶性層状リン酸塩の防錆作用を
長時間持続させて、被塗装金属の腐食を防止するものと
考えられる。
【0010】酸化亜鉛は、上記のように結晶性層状リン
酸塩の溶解性をコントロールして結晶性層状リン酸塩の
防錆作用を長時間持続させるとともに、アルカリ性物質
であるため、酸性物質である結晶性層状リン酸塩のpH
を中性化して、塗膜への水の浸透を少なくさせ、塗膜の
ふくれを防止する作用を有する。
【0011】また、結晶性層状リン酸塩の層間にイオン
交換させた2価金属イオンまたはインターカレートさせ
たインヒビター適度に溶解または溶出し、被塗装金属
の表面に化学変化を起こさせて不動態化作用を生じさせ
たり、あるいは被塗装金属の表面に物理的または化学的
に吸着して腐食性物質が被塗装金属の表面に接近するの
を妨害して優れた防錆作用を発揮するものと考えられ
る。
【0012】本発明の内容を詳細に説明すると、本発明
において使用する結晶性層状リン酸塩は、一般式M(H
PO4 2 ・xH2 O(式中、MはTi、ZrおよびC
よりなる群から選ばれた少なくとも1種の4価元素を
示す。xは0〜2である)で示される化合物であり、こ
のような結晶性層状リン酸塩の具体例としては、結晶性
層状リン酸チタニウム、結晶性層状リン酸ジルコニウ
ム、結晶性層状リン酸セリウムが挙げられる。
【0013】また、上記一般式M(HPO4 2 ・xH
2 Oで示される結晶性層状リン酸塩は、X線回折におい
て、低角度に特徴的なピークを有する層状化合物であ
り、しかも固体酸性化合物であるため、イオン交換性能
やインターカレート性能を有している。
【0014】上記一般式M(HPO4 2 ・xH2 Oで
示される結晶性層状リン酸塩は、その合成方法に関して
特に限定されることはないが、本発明者らが、開発し、
特願平1−286684号明細書において詳細を開示し
た方法で合成するのが適している。
【0015】すなわち、上記特願平1−286684号
明細書に開示の方法は、4価金属化合物とリン酸源とを
水蒸気の存在下で反応させることにより、従来は高濃度
のリン酸中での長時間還流や有毒なフッ素化水素の使用
でしか得られなかった結晶性層状リン酸塩を、短時間で
かつ高効率に合成できるようにしたものである。
【0016】そして、このように結晶性層状リン酸塩を
短時間でかつ高効率に合成できるようになり、結晶性層
状リン酸塩の入手が容易になったことが、本発明が開発
されるようになった要因になっている。
【0017】上記結晶性層状リン酸塩にイオン交換させ
る2価金属イオンとしては、たとえば亜鉛、鉛、カルシ
ウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、ストロンチ
ウム、マンガン、バリウム、鉄、銅などの2価金属のイ
オンが使用されるが、特に亜鉛イオン、鉛イオン、カル
シウムイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、
コバルトイオン、ストロンチウムイオン、マンガンイオ
ン、バリウムイオンなどが好ましい。
【0018】また、インターカレートされるインヒビタ
ーとしては、通常、腐食抑制剤として使用されているア
ルキルアミン、アルキルジアミン、エタノールアミンな
どのアミン類、ホスホン酸類、フィチン酸などの含リン
系化合物、タンニン類などが使用される。
【0019】上記2価金属イオンを結晶性層状リン酸塩
の層間にイオン交換させる方法としては、たとえば、亜
鉛イオンの場合、酢酸亜鉛や塩化亜鉛などの水に可溶な
亜鉛化合物の水溶液に、結晶性層状リン酸塩を添加し
て、攪拌混合を行いながらイオン交換を行わせる方法が
採用される。
【0020】イオン交換時の温度は、特に限定されるこ
とはないが、高温になるほどイオン交換容量は大きくな
るので、100℃以下の温度で、交換量に合わせて適宜
選択すれば良い。そして、イオン交換にかける時間とし
ては30分から5時間程度で良い。イオン交換処理後、
スラリーを濾過、乾燥、粉砕すれば、イオン交換処理に
より防錆性能が付与された結晶性層状リン酸塩が得られ
る。
【0021】インヒビターを結晶性層状リン酸塩の層間
にインターカレートさせる場合も、上記イオン交換処理
の場合と同様の方法が適用可能である。ただし、アルキ
ルアミンなどのアミン類をインターカレートさせる場合
には、有機溶媒中で行っても良い。
【0022】イオン交換させる2価金属イオンの量、あ
るいはインターカレートさせるインヒビターの量は、結
晶性層状リン酸塩の重量に対して0.1〜50%であ
り、特に1〜10%が好ましい。2価金属イオンやイン
ヒビターの結晶性層状リン酸の重量に対する量が0.
1%より少ない場合はイオン交換させた2価金属イオン
やインターカレートさせたインヒビターによる防錆性能
の付与効果が充分に現れず、また50%を超えると2価
金属イオンやインヒビターが塗膜のふくれを誘起させる
要因になり、防錆顔料組成物の機能を損なわせてしま
う。
【0023】
【0024】
【0025】本発明において、層間に2価金属イオンを
イオン交換させるか、またはインヒビターをインターカ
レートさせた結晶性層状リン酸塩と酸化亜鉛混合比
、重量比で前者:後者=90:10〜50:50の範
である。
【0026】本発明の防錆顔料組成物の塗料化にあたっ
ては、油系、溶剤系、水溶系、エマルション系など、各
種の塗料用樹脂を用いることができる。その具体例を挙
げると、たとえば、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、
アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹
脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリ
エステル樹脂などの各種塗料用合成樹脂、ボイル油、油
性ワニスなどの油系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴ
ム誘導体、その他繊維素誘導体などが、単独でまたは2
種以上併用して使用される。
【0027】本発明の防錆顔料組成物を用いて塗料化す
る場合、塗料用樹脂100重量部(ただし、固形分量)
に対して防錆顔料組成物を10〜150重量部の範囲で
使用すればよい。
【0028】本発明の層間に2価金属イオンをイオン交
させるか、またはインヒビターをインターカレートさ
せた結晶性層状リン酸塩と酸化亜鉛との混合物からなる
防錆顔料組成物を塗料化するにあたっては、両成分をあ
らかじめ乾式または湿式で混合しておいてから塗料の調
製に使用してもよいし、また、それらの両成分を別々に
配合して塗料中で混合するようにしてもよい。
【0029】本発明の防錆顔料組成物は、防錆力が優れ
ている上に、クロム、鉛などを含まず無公害であるた
め、用途に制約を受けることがなく、食品機器、幼児用
玩具などに使用される塗料にも好適に使用できる。
【0030】また、本発明の防錆顔料組成物は、白色な
いしは淡彩色の色調であるから、色彩を自由に選択で
き、上塗塗料の隠蔽力不足もカバーすることができる。
【0031】
【実施例】つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的
に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限
定されるものではない。なお、実施例に先立ち、実施例
で用いる結晶性層状リン酸塩の合成例を合成例1〜3で
示し、結晶性層状リン酸塩の層間への2価金属イオンの
イオン交換やインヒビターのインターカレートを反応例
1〜13で示す。また、以後において、配合量などの各
種の量はいずれも重量基準によるものである。
【0032】 合成例1 結晶性層状リン酸チタニウムの合成 水酸化チタニウム、〔TiO2 ・xH2 O(TiO2
として70%)〕11.4gと、85%リン酸34.6
g(P2 5 /TiO2 のモル比に換算して1.5)と
を、磁製ルツボ中でよく攪拌混合した後、得られた混合
物をルツボごと110℃に温度設定した電気炉に入れ、
そこに110℃に加熱した水蒸気を吹き込みながら5時
間反応させた。
【0033】反応生成物は白色を呈していた。この反応
生成物を水洗した後、100℃で乾燥し、ジェットミル
粉砕を行い、微粉末状物質を得た。そして、粉砕後の物
質のX線回折により、得られた物質がTi(HPO4
2・H2 Oで示される結晶性層状リン酸チタニウムであ
ることを確認した。
【0034】 合成例2 結晶性層状リン酸ジルコニウムの合成 水酸化ジルコニウム〔ZrO2 ・xH2 O(ZrO2
として80%)〕15.4gと、85%リン酸34.6
g(P2 5 /ZrO2 のモル比に換算して1.5)と
を、磁製ルツボ中でよく攪拌混合した後、得られた混合
物をルツボごと110℃に温度設定した電気炉に入れ、
そこに110℃に加熱した水蒸気を吹き込みながら5時
間反応させた。
【0035】反応生成物は白色を呈していた。この反応
生成物を水洗した後、風乾し、ジェットミル粉砕を行
い、微粉末状物質を得た。そして、粉砕後の物質のX線
回折により、得られた物質がZr(HPO4 2 ・H2
Oで示される結晶性層状リン酸ジルコニウムであること
を確認した。
【0036】 合成例3 結晶性層状リン酸セリウムの合成 水酸化セリウム〔CeO2 ・xH2 O(CeO2 分とし
て73.2%)〕23.5gと、85%リン酸34.6
g(P2 5 /CeO2 のモル比に換算して1.5)と
を磁製ルツボ中でよく攪拌混合した後、得られた混合物
をルツボごと190℃に温度設定した電気炉に入れ、そ
こに190℃に加熱した水蒸気を吹き込みながら5時間
反応させた。
【0037】反応生成物は淡黄色を呈していた。この反
応生成物を水洗し、80℃で乾燥した後、1日放置して
吸湿させてからジェットミル粉砕を行い、微粉末状物質
を得た。そして、粉砕後の物質のX線回折により、得ら
れた物質がCe(HPO4 2 ・1.33H2 Oで示さ
れる結晶性層状リン酸セリウムであることを確認した。
【0038】反応例1 結晶性層状リン酸チタニウム
の層間への亜鉛イオンのイオン交換 150mmol/lの酢酸亜鉛水溶液2リットルに、合
成例1で得られた結晶性層状リン酸チタニウムを200
g添加し、室温で3時間攪拌しながら、イオン交換を行
った。イオン交換後、反応物を分離し、水洗、乾燥、粉
砕を行い、イオン交換処理品を得た。
【0039】反応後の濾液中の亜鉛イオンをプラズマ発
光分光法により分析して、結晶性層状リン酸チタニウム
の重量に対して亜鉛イオンが9.0%イオン交換された
ことを確認した。
【0040】反応例2 結晶性層状リン酸ジルコニウ
ムの層間への亜鉛イオンのイオン交換 合成例2で得られた結晶性層状リン酸ジルコニウムを用
いて、反応例1と同様にイオン交換処理を行った。反応
後の濾液中の亜鉛イオンのプラズマ発光分光分析によ
り、結晶性層状リン酸ジルコニウムの重量に対して亜鉛
イオンが8.5%イオン交換されたことを確認した。
【0041】反応例3 結晶性層状リン酸セリウムの
層間への亜鉛イオンのイオン交換 合成例3で得られた結晶性層状リン酸セリウムを用い
て、反応例1と同様にイオン交換処理を行った。反応後
の濾液中の亜鉛イオンのプラズマ発光分光分析により、
結晶性層状リン酸セリウムの重量に対して亜鉛イオンが
6.5%イオン交換されたことを確認した。
【0042】反応例4 結晶性層状リン酸チタニウム
の層間へのニッケルイオンのイオン交換 150mmol/lの酢酸ニッケル水溶液2リットル
に、合成例1で得られた結晶性層状リン酸チタニウム2
00gを添加し、反応例1と同様にイオン交換処理を行
った。反応後の濾液中のニッケルイオンのプラズマ発光
分光分析により、結晶性層状リン酸チタニウムの重量に
対してニッケルイオンが4.0%イオン交換されたこと
を確認した。
【0043】反応例5 結晶性層状リン酸チタニウム
の層間へのコバルトイオンのイオン交換 150mmol/lの酢酸コバルト水溶液2リットル
に、合成例1で得られた結晶性層状リン酸チタニウム2
00gを添加し、反応例1と同様にイオン交換処理を行
った。反応後の濾液中のコバルトイオンのプラズマ発光
分光分析により、結晶性層状リン酸チタニウムの重量に
対してコバルトイオンが8.0%イオン交換されたこと
を確認した。
【0044】反応例6 結晶性層状リン酸チタニウム
の層間へのブチルアミンのインターカレート 0.1Nのブチルアミン水溶液5リットルに、合成例1
で得られた結晶性層状リン酸チタニウム200gを添加
し、室温で3時間攪拌しながら、インターカレートを行
った。インターカレート後、反応物を分離し、水洗、乾
燥、粉砕を行い、インターカレート処理品を得た。
【0045】上記インターカレート処理品のX線回折に
より、結晶性層状リン酸チタニウムの層間距離が7.6
Åから16.7Åへと増加していることを確認し、示差
熱/熱天秤同時測定により、結晶性層状リン酸チタニウ
ムの重量に対してブチルアミンが2.5%インターカレ
ートされたことを確認した。
【0046】反応例7 結晶性層状リン酸ジルコニウ
ムの層間へのブチルアミンのインターカレート 合成例2で得られた結晶性層状リン酸ジルコニウムに対
し反応例6と同様にインターカレート処理を行った。
【0047】上記インターカレート処理品のX線回折に
より、結晶性層状リン酸ジルコニウムの層間距離が7.
6Åから18.6Åへと増加していることを確認し、示
差熱/熱天秤同時測定により、結晶性層状リン酸ジルコ
ニウムの重量に対してブチルアミンが3.8%インター
カレートされたことを確認した。
【0048】反応例8 結晶性層状リン酸セリウムの
層間へのブチルアミンのインターカレート 合成例3で得られた結晶性層状リン酸セリウムに対し、
反応例6と同様にインターカレート処理を行った。
【0049】上記インターカレート処理品のX線回折に
より、結晶性層状リン酸セリウムの層間距離が16.0
Åから24.0Åへと増加していることを確認し、示差
熱/熱天秤同時測定により、結晶性層状リン酸セリウム
の重量に対してブチルアミンが3.2%インターカレー
トされたことを確認した。
【0050】反応例9 結晶性層状リン酸チタニウム
の層間へのモノエタノールアミンのインターカレート 0.1Nのモノエタノールアミン水溶液5リットルに、
合成例2で得られた結晶性層状リン酸チタニウム200
gを添加して、反応例6と同様にインターカレート処理
を行った。
【0051】上記インターカレート処理品のX線回折に
より、結晶性層状リン酸チタニウムの層間距離が7.6
Åから10.9Åへと増加し、示差熱/熱天秤同時測定
により、結晶性層状リン酸チタニウムの重量に対してモ
ノエタノールアミンが4.0%インターカレートされた
ことを確認した。
【0052】反応例10 結晶性層状リン酸ジルコニ
ウムの層間へのモノエタノールアミンのインターカレー
0.1Nのモノエタノールアミン水溶液5リットルに、
合成例2で得られた結晶性層状リン酸ジルコニウム20
0gを添加して、反応例6と同様にインターカレート処
理を行った。
【0053】上記インターカレート処理品のX線回折に
より、結晶性層状リン酸ジルコニウムの層間距離が7.
6Åから10.2Åへと増加していることを確認し、示
差熱/熱天秤同時測定により、結晶性層状リン酸ジルコ
ニウムの重量に対してモノエタノールアミンが4.0%
インターカレートされたことを確認した。
【0054】反応例11 結晶性層状リン酸チタニウ
ムの層間へのエチドロン酸のインターカレート 10%エチドロン酸水溶液〔三菱モンサント化成社製、
ディクエスト2010使用)2リットルに、合成例1で
得られた結晶性層状リン酸チタニウム200gを添加し
て、反応例6と同様にインターカレート処理を行った。
【0055】上記インターカレート処理品の示差熱/熱
天秤同時測定により、結晶性層状リン酸チタニウムの重
量に対してエチドロン酸が1.0%インターカレートさ
たことを確認した。
【0056】反応例12 結晶性層状リン酸チタニウ
ムの層間へのフィチン酸のインターカレート 10%フィチン酸水溶液2リットルに、合成例1で得ら
れた結晶性層状リン酸チタニウム200gを添加して、
反応例6と同様にインターカレート処理を行った。
【0057】上記インターカレート処理品の示差熱/熱
天秤同時測定により、結晶性層状リン酸チタニウムの重
量に対してフィチン酸が1.2%インターカレートされ
たことを確認した。
【0058】反応例13 結晶性層状リン酸チタニウ
ムの層間へのタンニン酸のインターカレート 10%タンニン酸水溶液〔大日本製薬社製、タンニン酸
エキスA使用)2リットルに、合成例1で得られた結晶
性層状リン酸チタニウム200gを添加して、反応例6
と同様にインターカレート処理を行った。
【0059】上記インターカレート処理品の示差熱/熱
天秤同時測定により、結晶性層状リン酸チタニウムの重
量に対してタンニン酸が2.6%インターカレートされ
たことを確認した。
【0060】つぎに、上記反応例1〜13で得られた結
晶性層状リン酸塩のイオン交換処理品またはインターカ
レート処理品を用いて調製した防錆顔料組成物を実施例
として示す。
【0061】
【0062】
【0063】実施例1〜15 反応例1〜13により得られた結晶性層状リン酸塩のイ
オン交換処理品またはインターカレート処理品と酸化亜
鉛とを表に示す割合で混合して、15種類の防錆顔料
組成物を得た。なお、表においては、結晶性層状リン
酸塩のイオン交換処理品および結晶性層状リン酸塩のイ
ンターカレート処理品をまとめて、結晶性層状リン酸塩
処理品と表示し、また、その処理品の種類(内容)を反
応例番号で示した。
【0064】
【表1】
【0065】比較例1〜3 合成例1〜3により得られた結晶性層状リン酸塩をその
まま用いて、比較用の防錆顔料組成物とした。比較例番
号と結晶性層状リン酸塩の種類との関係を表に示す。
【0066】
【表2】
【0067】つぎに、上記実施例1〜15および比較例
1〜3の防錆顔料組成物を用いて常乾型中油アルキッド
樹脂系防錆塗料を調製し、塗膜形成後、塩水噴霧試験を
行い、その防錆効果を調べた。その結果を試験例1にお
いて示す。また、試験例1においては従来の防錆顔料と
の比較のため、リン酸亜鉛およびンククロメート(Z
PC型)を防錆顔料として用いて常乾型中油アルキッド
樹脂系防錆塗料を調製し、同様の試験を行った。
【0068】また、実施例1〜15および比較例1〜3
の防錆顔料組成物を用いて常乾型水性アルキッド樹脂系
防錆塗料を調製し、塗膜形成後、塩水噴霧試験を行い、
その防錆効果を調べた。その結果を試験例2において示
す。また、試験例2においても、従来の防錆顔料との比
較のため、リン酸亜鉛およびジンククロメート(ZPC
型)を防錆顔料として用いて常乾型水性アルキッド樹脂
系防錆塗料を調製し、同様の試験を行った。
【0069】試験例1表に示す配合の常乾型中油アル
キッド樹脂系防錆塗料を調製し、塗膜形成後、塩水噴霧
試験を行い、その防錆効果を調べた。
【0070】1−1 防錆塗料の調製 防錆顔料組成物として、実施例1〜15および比較例1
〜3の防錆顔料組成物、リン酸亜鉛およびンククロメ
ートを用い、それぞれ表に示す配合で、20種類の常
乾型中油アルキッド樹脂系防錆塗料を調製した。
【0071】
【表3】 (注)※1 商品名、大日本インキ化学工業社製の固形分濃度 50%の常乾型中油アルキッド樹脂液 ※2 24%ナフテン酸鉛と6%ナフテン酸コバルトと の重量比2:1の混合物 ※3 商品名、楠本化成社製のポリエステル樹脂系皮張 り防止剤 ※4 商品名、楠本化成社製の流れ止め剤
【0072】1−2 塗装および塗装条件 上記20種類の常乾型中油アルキッド樹脂系防錆塗料を
それぞれ下記の塗装条件で被塗板上に塗装し、常温で乾
燥して塗膜を形成した。
【0073】塗 装:バーコーター塗装 被塗板:脱脂処理軟鋼板 JIS G 3141(SP
CC−SB)(日本テストパネル工業社製) 膜 厚:30μm 乾 燥:室温 1週間
【0074】1−3 塩水噴霧試験 上記のように被塗板上に塗膜を形成することによって作
製した試験板を、機内温度を35℃に保った塩水噴霧機
内に入れ、5%塩化ナトリウム水溶液を1kg/cm2
で168時間塗膜に噴霧し、試験板のサビ(錆)の発生
および塗膜のふくれ(膨れ)を観察した。
【0075】1−4 試験結果 上記塩水噴霧試験の結果を実施例1〜の防錆顔料組成
物については表に、実施例以降の防錆顔料組成物に
ついては表に示す。
【0076】防錆効果は、試験板のサビ発生防止効果お
よび塗膜のフクレ発生防止効果で評価するが、それらの
評価基準は次の通りである。なお、サビ発生防止効果の
評価基準はASTM D610−68(1970)に準
拠し、フクレ発生防止効果の評価基準はASTM D7
14−59(1965)に準拠している。なお、下記の
評価基準からも明らかなように、サビ発生防止効果、フ
クレ発生防止効果とも、評価値が高いほど効果が優れて
いる。
【0077】サビ発生防止効果の評価基準 5: サビ発生面積 0.1%未満 4: サビ発生面積 0.1%以上〜1%未満 3: サビ発生面積 1%以上〜10%未満 2: サビ発生面積 10%以上〜33%未満 1: サビ発生面積 33%以上
【0078】フクレ発生防止効果の評価基準 5: 8F以下 4: 8M、6F 3: 8MD、6M、4F 2: 8D、6MD、4M、2F 1: 6D、4MD以上、2M以上
【0079】なお、表〜表には、各塗料の40℃で
70日間貯蔵後の貯蔵安定性を調べた結果を示す。貯蔵
安定性の評価基準は次の通りである。 ◎: ほとんど変化なし ○: 少し増粘の傾向あり △: 増粘の傾向大 ×: 増粘後ゲル化
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】表〜表に示すように、実施例1〜15
の防錆顔料組成物は、サビ、フクレのいずれに対しても
防錆効果の評価値が高く、従来の無公害防錆顔料である
リン酸亜鉛に比べて防錆効果が優れており、クロム系顔
料であるジンククロメートと同等の防錆効果を有してい
た。
【0083】また、実施例1〜15の防錆顔料組成物を
配合した塗料は、貯蔵安定性が良好であり、貯蔵安定性
面での問題もなかった。
【0084】試験例2 表に示す配合の常乾型水性アルキッド樹脂系防錆塗料
を調製し、塗膜形成後、塩水噴霧試験を行って、その防
錆効果を調べた。
【0085】2−1 防錆塗料の調製 防錆顔料組成物として、実施例1〜15および比較例1
〜3の防錆顔料組成物、リン酸亜鉛およびジンククロメ
ートを用い、それぞれ表に示す配合で20種類の常乾
型水性アルキッド樹脂系防錆塗料を調製した。
【0086】
【表6】 (注)※5 商品名、日本触媒化学工業社製の固形分濃度50%の 常乾型水性アルキッド樹脂液 ※6 24%ナフテン酸鉛と6%ナフテン酸コバルトとの重 量比2:1の混合物 ※7 ブチルセロソルブと水との重量比2:8の混合物
【0087】2−2 塗装および塗装条件 上記20種類の常乾型水性アルキッド樹脂系防錆塗料を
それぞれ下記の塗装条件で被塗板上に塗装し、常温で乾
燥して塗膜を形成した。
【0088】塗 装:バーコーター塗装 被塗板:脱脂処理軟鋼板 JIS G 3141(SP
CC−SB)(日本テストパネル工業社製) 膜 厚:30μm 乾 燥:室温 1週間
【0089】2−3 塩水噴霧試験 上記のように被塗板上に塗膜を形成することによって作
製した試験板を、機内温度を35℃に保った塩水噴霧機
内に入れ、5%塩化ナトリウム水溶液を1kg/cm2
で216時間塗膜に噴霧し、試験板のサビ(錆)の発生
および塗膜のふくれ(膨れ)を観察した。
【0090】2−4 試験結果 上記塩水噴霧試験の結果を実施例1〜の防錆顔料組成
物については表に、実施例以降の防錆顔料組成物に
ついては表に示す。防錆効果の評価基準は試験例1の
場合と同様である。また、試験例1の場合と同様に各塗
料の貯蔵安定性を調べた結果を表〜表に示す。貯蔵
安定性の評価基準も試験例1の場合と同じである。
【0091】
【表7】
【0092】
【表8】
【0093】表〜表に示すように、実施例1〜15
の防錆顔料組成物は、サビ、フクレのいずれに対しても
防錆効果の評価値が高く、従来の無公害防錆顔料である
リン酸亜鉛に比べて防錆効果が優れており、クロム系顔
料であるジンククロメートと同等の防錆効果を有してい
た。また、実施例1〜15の防錆顔料組成物を配合した
塗料は、貯蔵安定性が良好であり、貯蔵安定性面でも問
題がなかった。
【0094】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、無公害
で、かつ防錆効果の優れた防錆顔料組成物を提供するこ
とができた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C23F 11/18 102 C23F 11/18 102 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09D 5/08 C09C 1/00 - 1/08 C09C 1/36 C09C 3/06 - 3/08 C23F 11/00 - 11/18 C01B 25/26 - 25/46

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 層間に2価金属イオンをイオン交換させ
    るか、またはインヒビターをインターカレートさせた
    般式M(HPO4 2 ・xH2 O(式中、MはTi、Z
    rおよびCeよりなる群から選ばれた少なくとも1種の
    4価元素を示す。xは0〜2である)で示される結晶性
    層状リン酸塩と、酸化亜鉛との混合物からなり、上記イ
    オン交換させた2価金属イオンまたはインターカレート
    させたインヒビターが結晶性層状リン酸塩の重量に対し
    て0.1〜50%であり、かつ上記結晶性層状リン酸塩
    と酸化亜鉛との混合比が重量比で90:10〜50:5
    0であることを特徴とする防錆顔料組成物。
  2. 【請求項2】 2価金属イオンが、亜鉛イオン、カルシ
    ウムイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コ
    バルトイオン、ストロンチウムイオン、マンガンイオン
    およびバリウムイオンよりなる群から選ばれた少なくと
    も1種である請求項記載の防錆顔料組成物。
  3. 【請求項3】 インヒビターが、アルキルアミン、アル
    キルジアミン、エタノールアミン、ホスホン酸類、フィ
    チン酸およびタンニン類よりなる群から選ばれた少なく
    とも1種である請求項記載の防錆顔料組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の防錆顔料組成物を配合し
    たことを特徴とする塗料。
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