JP2721165B2 - チョークコイル用磁心 - Google Patents
チョークコイル用磁心Info
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明はスイッチング電源等の平滑回路や、ノーマル
モードのノイズや信号を除却する等の用途に使用するの
に好適なチョークコイル用磁心に関するものである。 〔従来の技術〕 従来、平滑チョークコイル用磁心としては、ギャップ
付きのケイ素鋼磁心,ギャップ付きのフェライト磁心,M
oパーマロイ圧粉磁心、Fe−Al−Si圧粉磁心やギャップ
付きのアモルファス磁心が用いられていた。これらの磁
心の特性等については、たとえば日本応用磁気学会第37
回研究会資料P41〜P58に記載されている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら、フェライト磁心は飽和磁束密度が低い
ため直流重畳特性が悪い、ケイ素鋼は高周波におけるコ
ア損失が大きい問題がある。また、Moパーマロイ磁心は
直流重畳特性はフェライトより優れるものの飽和磁束密
度は7〜8KGであり、直流重畳特性も必ずしも十分では
ない。 Fe系のアモルファス合金を用いたギャップ付きの磁心
は、合金の磁歪が大きいためうなりを生じたり、含浸や
カットによる歪によりコア損失が増加したり、直流重畳
特性の温度特性が悪い欠点がある。一方、ギャップ付き
のCo基アモルファス磁心は、飽和磁束密度が通常10KG以
下であり、直流重畳特性はMoパーマロイ圧粉磁心等と同
様十分ではない。 また、ノイズフィルタ等に用いられるノーマルモード
チョークコイル用の磁心としては、従来、金属系の鉄圧
粉磁心が主に用いられていたが、これらの磁心も透磁率
が低く、直流重畳特性も悪いため満足すべき特性とは言
い難い。 本発明の目的は、透磁率の周波数特性,直流重畳特
性,温度特性に優れ、かつコア損失が小さい新規のチョ
ークコイル用磁心を提供することを目的とする。 〔問題点を解決するための手段〕 上記問題点を解決するために鋭意研究の結果、本発明
者等は、 組成式: (Fe1-aMa)100−x−y−z−α−β−γCuxSiyM′
αM″βXγ (原子%) (ただし、MはCo及び/又はNiであり、M′はNb,Ta,Z
r,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種
の元素、MはV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,Au,Zn,Sn,R
e,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、X
はC,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた
少なくとも1種の元素であり、a,x,y,z,α,βおよびγ
はそれぞれ、 0≦a≦0.3,0.1≦x≦3,0≦y≦25, 3≦z≦17,10≦y+z≦30,0.1≦α≦10, 0≦β≦10,0≦γ≦10を満たす。) により表わされる組成を有し、組織の少なくとも50%が
微細なbccFe固溶体の結晶粒からなり、各結晶粒の最大
寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下である合金薄帯
あるいは合金膜から形成された磁心において、磁路の少
なくとも1箇所以上にギャップをもうけた磁心が、透磁
率の周波数特性,直流重畳特性,温度特性に優れかつコ
ア損失も小さく、平滑チョークやノーマルモードチョー
ク等のチョークコイル用磁心に最適であることを見い出
し本発明に想到した。 本発明において、Cuは必須元素であり、その含有量x
は0.1〜3原子%の範囲である。0.1原子%より少ないと
Cu添加によるコア損失低下の効果がほとんどなく、一方
3原子%より多いとコア損失が未添加のものよりかえっ
て大きくなることがある。また本発明において特に好ま
しいCuの含有量xは0.5〜2原子%であり、この範囲で
はコア損失が特に小さく高透磁率のものが得られる。 本発明に係る合金は、前記組成の非晶質合金を溶湯か
ら急冷することにより得る工程、あるいはスパッター
法,蒸着法等の気相急冷法により得る工程と、これを加
熱し微細な結晶粒を形成する熱処理工程に依って通常得
ることができる。 Cuによるコア損失低下作用の原因は明らかではないが
次のように考えられる。 CuとFeの相互作用パラメータは正であり、固溶度が低
く分離する傾向があるため非晶質状態の合金を加熱する
とFe原子同志またはCu原子またはCu原子同志が寄り集ま
り、クラスターを形成し、組成ゆらぎが生じる。このた
め部分的に結晶化しやすい領域が多数でき、そこを核と
した微細な結晶粒が生成される。この結晶はFeを主成分
とするものであり、FeとCuの固溶度はほとんどないため
結晶化によりCuは微細結晶粒の周囲にはき出され、結晶
粒周辺のCu濃度が高くなる。このため結晶粒は成長しに
くいと考えられる。 Cu添加により結晶核が多数できることと、結晶粒が成
長しにくいため結晶微細化が起こると考えられるが、こ
の作用はNb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等の存在により特に著し
く強められると考えられる。 Nb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等が存在しない場合は結晶粒は
あまり微細化されず軟磁気特性も悪い。 また本合金はFeを主成分とする微細結晶相が生ずるた
めFe基非晶質合金に比べ磁歪が小さくなっており、磁歪
が小さくなることにより、内部応力−歪による磁気異方
性が小さくなることも軟磁気特性が改善される理由の1
つと考えられる。 Cuを添加しない場合は結晶粒は微細化されにくく、化
合物相が形成しやすいため結晶化により磁気特性は劣化
する。 Si及びBは合金の微細化および磁歪調整に有用な元素
である。本発明の合金は、好ましくは、一旦Si,B添加効
果により非晶質合金とした後で、熱処理により微細結晶
粒を形成することにより得られる。Si含有量yの限定理
由は、yが25原子%を超えると軟磁気特性の良好な条件
では磁歪が大きくなってしまい好ましくないためであ
る。Bの含有量zの限定理由は、zが3原子%未満では
均一な結晶粒組織が得にくくコア損失が増加し劣化し好
ましくなく、zが17原子%を超えると軟磁気特性の良好
な熱処理条件では磁歪が大きくなってしまい好ましくな
いためである。SiとBの総和量y+zの値に関しては、
y+zが10原子%未満では非晶質化が困難になり磁気特
性が劣化し好ましくなく、一方、y+zが30原子%を超
えると飽和磁束密度の著しい低下およびコア損失の増加
および磁歪の増加がある。より好ましいSi,B含有量の範
囲は10≦y≦25,3≦z≦12,18≦y+z≦28であり、こ
の範囲では−5×10-6〜+5×10-6の範囲の飽和磁歪で
低損失の合金が得られやすい。 特に好ましくは11≦y≦24,3≦z≦9,18≦y+z≦27
であり、この範囲では−1.5×10-6〜+1.5×10-6の範囲
の飽和磁歪で含浸等による劣化の小さい合金が得られや
すく、含浸した磁心の温度特性も良好となる。 本発明に係る合金においてM′はCuとの複合添加によ
り析出する結晶粒を微細化する作用を有するものであ
り、Nb,W,Ta,Zr,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素である。Nb等は合金の結晶化温度を
上昇させる作用を有するが、クラスターを形成し結晶化
温度を低下させる作用を有するCuとの相互作用により結
晶粒の成長を抑え析出する結晶粒が微細化するものと考
えられる。M′の含有量αは0.1≦α≦10の範囲が望ま
しい。αが0.1原子%未満ではコア損失が低いものが得
にくく、10原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下
を招くためである。好ましいαの範囲は2≦α≦8であ
り、この範囲で特に低損失特性が得られる。 M″の添加により、耐食性の改善、磁気特性の改善、
又は磁歪調整効果等が得られる。 M″が10原子%を超えると、飽和磁束密度の低下が著
しい。 本発明の磁心においてC,Ge,P,Ga,Sb,In,Be,As等から
なる群から選ばれた少なくとも1種の元素を10原子%以
下含む合金を使用できる。これらの元素は非晶質化に有
効な元素であり、Si,Bと共に添加することにより合金の
非晶質化を助けたり、磁歪やキュリー温度調整に効果で
ある。 残部は不純物を除いて実質的にFeが主体であるが、Fe
の1部は成分M(Co及び/又はNi)により置換されてい
ても良い。Mの含有量は0≦a≦0.3であるが、0.3を超
えると磁歪が大きくなったり、コア損失が増加するため
である。 本発明磁心に係る合金はbcc構造の鉄固溶体を主体と
する合金であるが、非晶質相やFe2B,Fe3B,Nb等の遷移
金属の化合物、Fe3Si規則相等を含む場合もある。これ
らの相は磁気特性を劣化させる場合がある。特にFe2B等
の化合物相は軟磁気特性を劣化させやすい。したがって
これらの相はできるだけ存在しない方が望ましい。 本発明磁心に係る合金は1000Å以下の粒径の超微細な
均一に分布した結晶粒からなるが、優れた軟磁性を示す
合金の場合はその粒径が500Å以下の場合が多い。特に
優れた軟磁性は20〜200Åの平均粒径を有する場合に得
やすく、チョークコイル用磁心に用いた場合優れた特性
が得られる。 この結晶粒はα−Fe固溶体を主体とするものでSiやB
等が固溶していると考えられる。合金組織のうち微細結
晶粒以外の部分は主に非晶質である。なお、微細結晶粒
の割合が実質的に100%になっても本発明磁心は十分に
低いコア損失を示す。 なお、N,O,S等の不可避的不純物やCa,Sr,Ba,Mg等につ
いては所望の特性が劣化しない程度に含有していても本
発明の磁心に用いられる合金組成と同一とみなすことが
できるのはもちろんである。 本発明の磁心に用いられる合金は、単ロール法,双ロ
ール法,遠心急冷法等により非晶質薄帯を作製後熱処理
を行ない微細な結晶粒を形成する方法、蒸着法,スパッ
ター法やイオンプレーティング等により非晶質膜を作製
後熱処理し結晶化させる方法や回転液中紡糸法やガラス
被覆紡糸法により、非晶質線を得た後熱処理し結晶化さ
せる方法等いろいろな方法で作製することができる。し
たがって、本発明のチョークコイル用磁心は線,薄帯,
膜などいろいろな形状のものを使用できる。しかし、一
般的には薄帯を用いるのが最もチョークコイル用磁心と
しては適している。 本発明磁心を得る際行われる熱処理は内部歪を小さく
することと、微細結晶粒組織としコア損失を減少させる
とともに磁歪を小さくする目的で行われる。 熱処理は通常真空中または水素ガス,窒素ガス,アル
ゴンガス等の不活性ガス雰囲気中において行なわれる。
しかし場合によっては大気中等の酸化性雰囲気で行って
も良い。 熱処理温度及び時間は非晶質合金リボンからなる磁心
の形状,サイズ,組成により異なるが一般的に結晶化温
度より高い450℃〜700℃で5分から24時間程度が望まし
い。 熱処理の際の昇温や冷却の条件は状況に応じて任意に
変えることができる。また同一温度または異なる温度で
複数回にわけ熱処理を行ったり、多段の熱処理パターン
で熱処理を行なうこともできる。更には、本合金は熱処
理を直流あるいは交流の磁場中で行なうこともできる。
磁場中熱処理により本合金に磁気異方性を生じさせるこ
とができる。 磁場は熱処理の間中かける必要はなく、本発明に係る
合金のキュリー温度Tcより低い温度で印加すれば十分効
果が得られる。本発明に係る合金のキュリー温度は非晶
質の場合より熱処理により形成される主相のキュリー温
度が上昇しており、非晶質合金のキュリー温度より高い
温度でも磁場中熱処理が適用できる。また回転磁場中熱
処理を熱処理工程の1部または全部で行っても良い。ま
た、熱処理の際磁心に電流を流したり、高周波磁界を印
加し合金を発熱させることにより磁心を熱処理すること
もできる。また磁場中熱処理の場合、熱処理を2段階以
上で行うことができる。また、張力や圧縮力を加えなが
ら熱処理を行ない磁気特性を調整することもできる。 本発明のチョークコイル用磁心は次のようにして通常
作製される。 まず、前述のように単ロール法,双ロール法等により
非晶質薄帯を作製し、トロイダル状に巻き回したり、E
型,I型,コの字型,U型,C型等の形状にホトエッチング,
プレスあるいは切断などにより成形し、前述のように熱
処理した後、含浸や積層し接着する等の工程を行った
後、トロイダル巻磁心の場合はスライサー等によりギャ
ップを形成したり、切断しカットコアとする。積層磁心
の場合は必要に応じて切断する場合があるが、通常は組
合せコアとし、磁路の1部にスペーサーを入れたり空間
をもうけることによりギャップを形成する。カットコア
の場合は、つき合わせ面にスペーサーを配置しギャップ
を形成する。 ギャップは磁心の磁気飽和を防ぎ、直流重畳特性を改
善するために形成される。巻磁心の場合は含浸した方が
ギャップを精度よく形成するのが容易となり好ましい結
果が得られる。 また、ギャップ部にスペーサーを配置することは、ギ
ャップ幅の変動を小さくできばらつきの小さいチョーク
コイル用磁心を得ることができ好ましい。 また、スイッチング電源等の平滑チョークに用いる場
合、低電流の場合に出力電圧が上昇する問題を解決する
ため、低電流時にインダクタンスが大きくなるような非
線形特性を有するチョークコイルが要求される場合があ
る。 このような目的に対しては、次の様な構造の磁心が好
ましい。 1つの構造としてはスペーサーに飽和磁束密度が低い
板状のフェライト磁心を用いた磁心であり、フェライト
が先に飽和し非線形特性が得られる。 また、高透磁率磁心たとえば閉磁路のフェライト磁
心,パーマロイ磁心,アモルファス磁心等と前述のギャ
ップが磁路の少なくとも1箇所以上にもうけられた磁心
を複合したものも良好な非線形の直流重畳特性を得るこ
とができる。高透磁率磁心として、フェライトボビンや
ケースを使用した場合は、非線形特性が得られる上に磁
心を保護する効果もありより好ましい。 また、前記ギャップ付き磁心のギャップ近傍に高透磁
率磁心たとえばフェライト,アモルファス,パーマロイ
等を配置する(はりつけたり、巻いたりする)ことによ
っても非線形の直流重畳特性を得ることができる。 また、ギャップを磁心の1部がつながるように部分的
にギャップを形成した場合も非線形の直流重畳特性を得
ることができる。 チョークコイル用の本発明磁心を更に小型にし使用す
るためにはギャップ部にSm−Co磁石やFe−Nd−B磁石等
を配置しバイアス磁界を印加し有極チョークにすること
もできる。この場合直流重畳特性はある方向に直流を重
畳した場合著しく改善される。 本発明磁心は巻磁心や積層磁心等が含まれ、特に高周
波で使用したり、広幅の合金薄帯を使用する場合は合金
薄帯表面の1部または前面に絶縁層を形成した方がコア
損失を低減できるため好ましい結果が得られる。この絶
縁層は合金薄帯の片面でも両面でも良いのはもちろんで
ある。 形成する絶縁層の形成方法はたとえばSiO2,MgO,Al2O3
等の粉末を浸漬,スプレー法や電気泳動法により付着さ
せたり、スパッター法や蒸着法でSiO2や窒化物等の膜を
つける、あるいは変性アルキルシリケートを含むアルコ
ール溶液に酸を添加し、この溶液を塗布し乾燥させた
り、フォルステライト(Mg2SiO4)層を熱処理により形
成させたりする方法,Cr酸化物を形成する方法がある。
また、SiO2−TiO2系金属アルコキシド部分加水分解ゾル
に各種セラミックス粉末原料を混合したものを塗布す
る、合金薄帯を浸せきした後乾燥加熱する、チラノポリ
マーを主体とする溶液を塗布あるいは浸せき後、加熱す
る、リン酸塩溶液を塗布後加熱すること等により絶縁層
を形成することができる。また熱処理により表面にSi等
の酸化物層や窒化物層を形成したり、薬品により表面処
理し酸化物層や窒化物層を形成し絶縁層を合金表面に形
成することができる。 巻磁心の場合、前記合金薄帯と絶縁テープを重ねて巻
回し層間絶縁を行うこともできる。 絶縁テープとしてはポリイミドテープやセラミックス
繊維製のテープ,ポリエステルテープ,アラシドテー
プ,ガラス繊維製のテープ等を使用することができる。 耐熱性の優れたテープを使用する場合は前記合金薄帯
と同組成の非晶質合金薄帯と重ねて巻回し巻磁心とした
後熱処理し合金を結晶化させることにより本発明磁心を
得ることができる。 また、高さの高い磁心の場合はギャップ部からのもれ
磁束により生ずる渦電流損失を低減するために、巻磁心
の高さ方向に複数個の巻磁心を重ね合わせ一体化した構
造とした方が好ましい。 積層磁心の場合は、前記合金薄帯の一層あるいは複数
層ごとに薄板状の絶縁物を挿入し層間絶縁を行うことも
できる。この場合は可塑性のない絶縁物を使用すること
もできる。たとえば、セラミックス板やガラス板,雲母
板等を挙げることができる。この場合も耐熱性の優れた
絶縁物を使用した場合、前記合金薄帯と同組成の非晶質
合金薄帯の一層あるいは複数層ごとに薄板状の絶縁物を
挿入し積層した後熱処理を行ない結晶化させ本発明磁心
を得ることもできる。 本発明磁心は、含浸しても従来のFe基アモルファス磁
心のような著しい特性劣化がない特徴があり、含浸した
後ギャップを形成したギャップ付き磁心、カットコア等
の本発明磁心は、優れた特性のものとして得ることがで
きる。含浸は通常は熱処理後に行われるが、耐熱性のあ
る含浸剤を用いた場合は熱処理前に含浸しても良い。こ
の場合硬化を熱処理と兼ねて行うこともできる。 含浸材としてはエポキシ系樹脂,ポリイミド系樹脂,
変性アルキルシリケートを主成分とするワニス,シリコ
ーン系樹脂等を使用することができる。 単ロール法で作製された合金薄帯を用いた巻磁心の場
合、薄帯作製の際ロールと接触した面を内側にして巻い
ても、外側にして巻いても良いが、絶縁テープと重ねて
巻く場合はロールと接触した面を外側にして巻いた方が
巻磁心作製が容易であり磁心の占積率を上げることがで
きる。 また巻磁心を作製する場合、張力をかけながら薄帯を
巻いた方が占積率が上がり好ましい結果が得られる。 巻磁心を作製する際巻初め及びまたは巻終りの部分は
固定されている方が望ましく、固定方法としてはレーザ
ー光照射あるいは電気エネルギーにより局部的に溶融し
接合する方法や耐熱性の接着剤あるいはテープにより固
定する方法がある。 このような方法を行なった磁心は熱処理の際巻磁心の
形がくずれにくく熱処理後の取扱いも容易であり好まし
い結果を得ることができる。 本発明磁心は使用する薄帯表面をメッキしたりコーテ
ィングして耐食性等を改善することもできる。また絶縁
物からなるボビンやケースに入れたり磁心の周囲をコー
ティングすることにより、さびによる特性劣化,破損等
を防いだり、チョークコイルを作成する際巻線との絶縁
をとることができる。 ボビンやケースの材質としては、フェノール樹脂やセ
ラミックスを挙げることができる。ボビンとしては金属
たとえばアルミニウムやステンレスを使用する場合もあ
るがこの場合は更にコーティングする場合が多い。 コーティング材としてはエポキシ系樹脂等を使用する
ことができる。 特にさびが問題となる場合はシリコンオイル等につけ
た方が好ましい。ケースやボビンを使用する場合は緩衝
剤としてシリコンゴムやグリースを充填する場合もあ
る。 また大型の磁心やカットコアの場合、中心部あるいは
外周部に金属を配置し変形や損傷を防いだり、外周部を
金属バンドでしめ固定する等により変形を防ぐ等の方法
も行なえる。 また絶縁テープを磁心周囲に巻くことにより、さびを
防いだり、損傷を防ぐ、電気的絶縁を行うこともでき
る。 薄膜化した本発明磁心の場合も切断しギャップを形成
したり、磁路の1部に本発明に係る合金膜が形成されな
い部分をつくり、ギャップを形成することによりチョー
クコイルに適する合金膜からなる磁心を得ることができ
る。また、高周波特性を改善するためにSiO2等の絶縁層
を介して積層膜とし使用することもできる。 〔実施例〕 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 原子%でCu 1%,Si 13.5%,B 9%,Nb 3%及び残部実
質的にFeからなる組成の溶湯から、単ロール法により幅
5mm,厚さ18μmのリボンを作製した。このリボンのX線
回折を行ったところ非晶質特有のハローパターンが得ら
れほとんどが非晶質相からなることが確認された。 次にの合金薄帯を外径18mm,内径11mmに巻き回し、巻
磁心とし窒素ガスを流し550℃に昇温した管状炉に入れ
1時間保持後炉から取り出し空冷した。次にこの巻磁心
をエポキシ系樹脂で真空含浸し、硬化後外周スライサー
により切断しギャップを形成し、更にギャップ部に0.5m
mの非磁性のスペーサーをはさみ、第1図のような形の
本発明チョークコイル用磁心を作製した。磁心は更にエ
ポキシ樹脂を用い粉体コーティングを行ない、0.8mmφ
の巻線を30ターンほどこし、直流重畳特性を測定した。
得られた結果を第2図に示す。なお比較のため従来の磁
心の直流重畳特性も示す。また第3図にFe基アモルファ
スを用いたチョークコイル用磁心と本発明磁心の室温お
よび100℃の直流重畳特性を示す。 図からわかるように本発明磁心の直流重畳特性は従来
のMoパーマロイ圧粉磁心,フェライト磁心,Fe圧粉磁心
等より著しく優れており、Fe基アモルファス磁心と比較
し、直流重畳特性の温度変化が著しく小さい。 このため高信頼性でかつ高性能小型のチョークコイル
を作製することができる。 また、第4図にコア損失の周波数依存性を示す。 本発明磁心はFe基アモルファス磁心よりコア損失が小
さく、磁心の発熱が小さいため熱設計の点でも有利であ
る。 なお熱処理を行った本発明に係る合金の組織は第5図
に示すように100〜200Åの粒径の超微細なbccFe固溶体
結晶粒を主体とした合金であることが確認された。 このように本発明磁心は直流重畳特性に優れ、温度特
性も良好であり、コア損失も低いため平滑チョークやノ
ーマルモードチョークに最適である。 実施例2 原子%でCu 1%,Si 13%,B 8%,Nb 3%,Cr 1%及び残
部実質的にFeからなる組成の溶湯から、幅10mm,厚さ15
μmのリボンを作製した。次にこの薄帯表面に電気泳動
法によりMgO粉末を付着させ絶縁層を形成しながら第6
図に示すような形の巻磁心を作製した。 次にこの巻磁心を530℃で1時間Arガス中で熱処理し
室温まで冷却した。なお、用いた合金の組織は実施例1
と同様であった。 次にの巻磁心をエポキシ樹脂で真空含浸し、硬化さ
せ、中央部を切断しカットコアを作製した。次に切断面
を平研し0.2mmの非磁性スペーサーを介し第7図に示す
ような本発明磁心を作製した。実効透磁率μeの周波数
依存性を第8図に示す。なお比較のため従来のギャップ
付きFe基アモルファス磁心,Moパーマロイ圧粉磁心のμ
eの周波数依存性も示す。 本発明のチョークコイル用磁心のμeの値は広い周波
数範囲にわたりMoパーマロイ圧粉磁心等より高く、周波
数特性が良好である。 実施例3 幅25mm,厚さ20μmのFe76Cu1Nb2.5Si13.5B7合金薄帯
を単ロール法により作製し、ホトエッチングによりE型
の形の薄帯を作製しAl2O3粉末を溶かしたアルコール溶
液中につけ表面に絶縁層を形成し、次にこれを550℃で
1時間熱処理した。なお、用いた合金の組織は実施例1
と同様であった。次にこのE型の薄帯表面にエポキシ系
の接着剤を塗布し積層し硬化させ、第9図に示すような
ギャップを有する本発明のEE型コアを作製した。比較の
ため同様の形のFe基アモルファス磁心を作製し巻線をほ
どこしたボビンを中央脚にはめ、スイッチング電源の平
滑チョークに用い温度上昇を測定した。その結果、本発
明磁心の温度上昇は36℃、Fe基アモルファス磁心は43℃
であり、本発明磁心の方が温度上昇が低かった。 実施例4 原子%でCu 1%,Si 17%,B 6.5%,Ge 0.5%,Nb 3%及
び残部実質的にFeからなる組成の溶湯から、幅5mm,厚さ
18μmのアモルファスリボンを作製した。次にこのリボ
ンを外径18mm,内径11mmに巻き回しトロイダル磁心を2
個作製し、530℃で1時間熱処理し、エポキシ樹脂で含
浸した。なお、熱処理後の合金のミクロ組織は実施例1
と同様であった。次に1つの磁心は外周スライサーによ
り0.5mmのギャップを形成し、非磁性スペーサーを入れ
もう一方の磁心はギャップを形成せず、この2つの磁心
を2段に重ね接着し複合コアを形成した。次にこの磁心
をエポキシ樹脂により粉体コーティングし、直流重畳特
性を測定した。得られた結果を第10図に示す。 図からわかるように低電流側のインダクタンヌが高い
非線形特性を示すため、スイッチング電源の平滑チョー
ク等に適する。 実施例5 原子%でCu 1.5%,Mo 3%,Si 13.5%,B 9%,Ti 0.5%
の組成の合金溶湯から幅10mm,板厚20μmのアモルファ
スリボンを作製した。次にこの磁心を外径18mm,内径11m
mに巻き回しトロイダル磁心とし、変成アルキルシリケ
ートを主成分とする無機ワニスで含浸し、520℃で1時
間熱処理後外周スライサーで第11図に示すような部分ギ
ャップを形成した。なお、熱処理後の合金のミクロ組織
は実施例1と同様であった。 次にこの磁心をフェノール樹脂製のケースに入れ、直
流重畳特性を測定した。その結果実施例4と同様な非線
形特性が得られた。 実施例6 原子%でCu 1%,W 3%,Si 13%,B 8%,Ga 1%の組成
の合金溶湯から幅5mm,板厚18μmのアモルファス合金リ
ボンを作製後、外径21mm,内径16mmのトロイダル磁心を
作製し、530℃で1時間熱処理を行った後ワニスで含浸
し、更に外周スライサーにより0.5mmのギャップを形成
し、0.5mmの板厚のMn−Znフェライト板をスペーサーと
してギャップ部にはさみ込んだ。熱処理後の合金リボン
は実施例1と同様超微細な結晶粒を主体とする組織を有
していた。 次にこの磁心をフェノール樹脂製のケースに入れ、直
流重畳特性を測定した。その結果実施例4,実施例5と同
様非線形の直流重畳特性を示すことが確認された。 実施例7 原子%でCu 1.5%,Mo 3%,Si 14%,B 8%,Al 1%の組
成の合金溶湯から幅5mm,板厚15μmのアモルファス合金
リボンを単ロール法により作製後、外径21mm,内径16mm
のトロイダル磁心を作製し、520℃で1時間熱処理後、
ポリイミド樹脂で含浸後0.5mmのギャップをスライサー
により一ケ所作製し、ギャップにスペーサーを入れ、ギ
ャップを固定した後、Mn−Znフェライト製のコアケース
に入れ、直流重畳特性を測定した。その結果実施例6と
同様、低電流側でインダクタンスの高い非線形の直流重
畳特性を示すことが確認された。なお、熱処理後の磁心
材は実施例1と同様の超微細な結晶粒組織であった。 実施例8 原子%でCu 1%,Nb 3%,Si 7%,B 9%,Co 10%、残部
Feからなる組成の合金溶湯から双ロール法により、幅10
mm,厚さ28μmのアモルファスリボンを作製した。 次にこの合金表面に変成アルキルシリケートを主成分
とするワニスを塗布しながら、実施例2と同様の形状の
巻磁心を作製した。次にこの巻磁心を、550℃で1時間N
2ガス中で熱処理し室温まで冷却した。熱処理後の合金
のミクロ組織は実施例1と同様であった。 次に、この巻磁心を中央部で切断しカットコアを作製
した。次いでカット面をラップした後、0.3mmの非磁性
スペーサーを介して接合し、更に磁歪がほぼ零のCo67Fe
4Mo1.5Si16.5B11アモルファス合金リボンをギャップ部
に巻きつけ、巻線を行ない直流重畳特性を測定した。 その結果、低電流側でインダクタンスが大きい非線形
特性が得られ非線形チョークに好適であることが確認さ
れた。 実施例9 原子%でCu 0.9%,Nb 2%,Si 13.5%,B 9%,V 1%残
部Feの組成を有する合金溶湯から幅10mm,厚さ17μmの
アモルファス合金薄帯を作製し、実施例2と同様な方法
でU型のカットコアを作製し、Sm−Co磁石をつき合わせ
面に接着し、2つのU型コアとつき合わせ、固定した
後、巻線を行ない直流重畳特性を測定した。 得られた結果を第12図に示す。 永久磁石をギャップ部に配置することにより有極特性
となり、直流重畳特性が改善され、大電流側まで高いイ
ンダクタンスが得られることが確認された。 実施例10 第1表に示す組成の微細結晶粒組織からなる本発明合
金からなる外径18mm,内径11mm,ギャップ0.5mmの含浸し
た巻磁心を作製し、30ターン0.7mmφの巻線を行ない、
Aの直流重畳電流を流した場合の25℃のインダクタンス
L25と、100℃のインダクタンスL100を測定し、 を求めた。得られた結果を第1表に示す。本発明のチョ
ークコイル用磁心はインダクタンスの温度変化が従来の
Fe基アモルファスを用いたチョークコイル用磁心に比べ
て著しく小さく、温度特性が優れている。 〔発明の効果〕 本発明によれば、透磁率の周波数特性,直流重畳特
性,温度特性に優れ、かつコア損失が小さい新規のチョ
ークコイル用磁心を得ることがで、小型で信頼性の高い
チョークコイルを得ることができるため、その効果は著
しいものがある。
モードのノイズや信号を除却する等の用途に使用するの
に好適なチョークコイル用磁心に関するものである。 〔従来の技術〕 従来、平滑チョークコイル用磁心としては、ギャップ
付きのケイ素鋼磁心,ギャップ付きのフェライト磁心,M
oパーマロイ圧粉磁心、Fe−Al−Si圧粉磁心やギャップ
付きのアモルファス磁心が用いられていた。これらの磁
心の特性等については、たとえば日本応用磁気学会第37
回研究会資料P41〜P58に記載されている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 しかしながら、フェライト磁心は飽和磁束密度が低い
ため直流重畳特性が悪い、ケイ素鋼は高周波におけるコ
ア損失が大きい問題がある。また、Moパーマロイ磁心は
直流重畳特性はフェライトより優れるものの飽和磁束密
度は7〜8KGであり、直流重畳特性も必ずしも十分では
ない。 Fe系のアモルファス合金を用いたギャップ付きの磁心
は、合金の磁歪が大きいためうなりを生じたり、含浸や
カットによる歪によりコア損失が増加したり、直流重畳
特性の温度特性が悪い欠点がある。一方、ギャップ付き
のCo基アモルファス磁心は、飽和磁束密度が通常10KG以
下であり、直流重畳特性はMoパーマロイ圧粉磁心等と同
様十分ではない。 また、ノイズフィルタ等に用いられるノーマルモード
チョークコイル用の磁心としては、従来、金属系の鉄圧
粉磁心が主に用いられていたが、これらの磁心も透磁率
が低く、直流重畳特性も悪いため満足すべき特性とは言
い難い。 本発明の目的は、透磁率の周波数特性,直流重畳特
性,温度特性に優れ、かつコア損失が小さい新規のチョ
ークコイル用磁心を提供することを目的とする。 〔問題点を解決するための手段〕 上記問題点を解決するために鋭意研究の結果、本発明
者等は、 組成式: (Fe1-aMa)100−x−y−z−α−β−γCuxSiyM′
αM″βXγ (原子%) (ただし、MはCo及び/又はNiであり、M′はNb,Ta,Z
r,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種
の元素、MはV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,Au,Zn,Sn,R
e,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、X
はC,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれた
少なくとも1種の元素であり、a,x,y,z,α,βおよびγ
はそれぞれ、 0≦a≦0.3,0.1≦x≦3,0≦y≦25, 3≦z≦17,10≦y+z≦30,0.1≦α≦10, 0≦β≦10,0≦γ≦10を満たす。) により表わされる組成を有し、組織の少なくとも50%が
微細なbccFe固溶体の結晶粒からなり、各結晶粒の最大
寸法で測定した粒径の平均が1000Å以下である合金薄帯
あるいは合金膜から形成された磁心において、磁路の少
なくとも1箇所以上にギャップをもうけた磁心が、透磁
率の周波数特性,直流重畳特性,温度特性に優れかつコ
ア損失も小さく、平滑チョークやノーマルモードチョー
ク等のチョークコイル用磁心に最適であることを見い出
し本発明に想到した。 本発明において、Cuは必須元素であり、その含有量x
は0.1〜3原子%の範囲である。0.1原子%より少ないと
Cu添加によるコア損失低下の効果がほとんどなく、一方
3原子%より多いとコア損失が未添加のものよりかえっ
て大きくなることがある。また本発明において特に好ま
しいCuの含有量xは0.5〜2原子%であり、この範囲で
はコア損失が特に小さく高透磁率のものが得られる。 本発明に係る合金は、前記組成の非晶質合金を溶湯か
ら急冷することにより得る工程、あるいはスパッター
法,蒸着法等の気相急冷法により得る工程と、これを加
熱し微細な結晶粒を形成する熱処理工程に依って通常得
ることができる。 Cuによるコア損失低下作用の原因は明らかではないが
次のように考えられる。 CuとFeの相互作用パラメータは正であり、固溶度が低
く分離する傾向があるため非晶質状態の合金を加熱する
とFe原子同志またはCu原子またはCu原子同志が寄り集ま
り、クラスターを形成し、組成ゆらぎが生じる。このた
め部分的に結晶化しやすい領域が多数でき、そこを核と
した微細な結晶粒が生成される。この結晶はFeを主成分
とするものであり、FeとCuの固溶度はほとんどないため
結晶化によりCuは微細結晶粒の周囲にはき出され、結晶
粒周辺のCu濃度が高くなる。このため結晶粒は成長しに
くいと考えられる。 Cu添加により結晶核が多数できることと、結晶粒が成
長しにくいため結晶微細化が起こると考えられるが、こ
の作用はNb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等の存在により特に著し
く強められると考えられる。 Nb,Ta,W,Mo,Zr,Hf,Ti等が存在しない場合は結晶粒は
あまり微細化されず軟磁気特性も悪い。 また本合金はFeを主成分とする微細結晶相が生ずるた
めFe基非晶質合金に比べ磁歪が小さくなっており、磁歪
が小さくなることにより、内部応力−歪による磁気異方
性が小さくなることも軟磁気特性が改善される理由の1
つと考えられる。 Cuを添加しない場合は結晶粒は微細化されにくく、化
合物相が形成しやすいため結晶化により磁気特性は劣化
する。 Si及びBは合金の微細化および磁歪調整に有用な元素
である。本発明の合金は、好ましくは、一旦Si,B添加効
果により非晶質合金とした後で、熱処理により微細結晶
粒を形成することにより得られる。Si含有量yの限定理
由は、yが25原子%を超えると軟磁気特性の良好な条件
では磁歪が大きくなってしまい好ましくないためであ
る。Bの含有量zの限定理由は、zが3原子%未満では
均一な結晶粒組織が得にくくコア損失が増加し劣化し好
ましくなく、zが17原子%を超えると軟磁気特性の良好
な熱処理条件では磁歪が大きくなってしまい好ましくな
いためである。SiとBの総和量y+zの値に関しては、
y+zが10原子%未満では非晶質化が困難になり磁気特
性が劣化し好ましくなく、一方、y+zが30原子%を超
えると飽和磁束密度の著しい低下およびコア損失の増加
および磁歪の増加がある。より好ましいSi,B含有量の範
囲は10≦y≦25,3≦z≦12,18≦y+z≦28であり、こ
の範囲では−5×10-6〜+5×10-6の範囲の飽和磁歪で
低損失の合金が得られやすい。 特に好ましくは11≦y≦24,3≦z≦9,18≦y+z≦27
であり、この範囲では−1.5×10-6〜+1.5×10-6の範囲
の飽和磁歪で含浸等による劣化の小さい合金が得られや
すく、含浸した磁心の温度特性も良好となる。 本発明に係る合金においてM′はCuとの複合添加によ
り析出する結晶粒を微細化する作用を有するものであ
り、Nb,W,Ta,Zr,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少
なくとも1種の元素である。Nb等は合金の結晶化温度を
上昇させる作用を有するが、クラスターを形成し結晶化
温度を低下させる作用を有するCuとの相互作用により結
晶粒の成長を抑え析出する結晶粒が微細化するものと考
えられる。M′の含有量αは0.1≦α≦10の範囲が望ま
しい。αが0.1原子%未満ではコア損失が低いものが得
にくく、10原子%を超えると飽和磁束密度の著しい低下
を招くためである。好ましいαの範囲は2≦α≦8であ
り、この範囲で特に低損失特性が得られる。 M″の添加により、耐食性の改善、磁気特性の改善、
又は磁歪調整効果等が得られる。 M″が10原子%を超えると、飽和磁束密度の低下が著
しい。 本発明の磁心においてC,Ge,P,Ga,Sb,In,Be,As等から
なる群から選ばれた少なくとも1種の元素を10原子%以
下含む合金を使用できる。これらの元素は非晶質化に有
効な元素であり、Si,Bと共に添加することにより合金の
非晶質化を助けたり、磁歪やキュリー温度調整に効果で
ある。 残部は不純物を除いて実質的にFeが主体であるが、Fe
の1部は成分M(Co及び/又はNi)により置換されてい
ても良い。Mの含有量は0≦a≦0.3であるが、0.3を超
えると磁歪が大きくなったり、コア損失が増加するため
である。 本発明磁心に係る合金はbcc構造の鉄固溶体を主体と
する合金であるが、非晶質相やFe2B,Fe3B,Nb等の遷移
金属の化合物、Fe3Si規則相等を含む場合もある。これ
らの相は磁気特性を劣化させる場合がある。特にFe2B等
の化合物相は軟磁気特性を劣化させやすい。したがって
これらの相はできるだけ存在しない方が望ましい。 本発明磁心に係る合金は1000Å以下の粒径の超微細な
均一に分布した結晶粒からなるが、優れた軟磁性を示す
合金の場合はその粒径が500Å以下の場合が多い。特に
優れた軟磁性は20〜200Åの平均粒径を有する場合に得
やすく、チョークコイル用磁心に用いた場合優れた特性
が得られる。 この結晶粒はα−Fe固溶体を主体とするものでSiやB
等が固溶していると考えられる。合金組織のうち微細結
晶粒以外の部分は主に非晶質である。なお、微細結晶粒
の割合が実質的に100%になっても本発明磁心は十分に
低いコア損失を示す。 なお、N,O,S等の不可避的不純物やCa,Sr,Ba,Mg等につ
いては所望の特性が劣化しない程度に含有していても本
発明の磁心に用いられる合金組成と同一とみなすことが
できるのはもちろんである。 本発明の磁心に用いられる合金は、単ロール法,双ロ
ール法,遠心急冷法等により非晶質薄帯を作製後熱処理
を行ない微細な結晶粒を形成する方法、蒸着法,スパッ
ター法やイオンプレーティング等により非晶質膜を作製
後熱処理し結晶化させる方法や回転液中紡糸法やガラス
被覆紡糸法により、非晶質線を得た後熱処理し結晶化さ
せる方法等いろいろな方法で作製することができる。し
たがって、本発明のチョークコイル用磁心は線,薄帯,
膜などいろいろな形状のものを使用できる。しかし、一
般的には薄帯を用いるのが最もチョークコイル用磁心と
しては適している。 本発明磁心を得る際行われる熱処理は内部歪を小さく
することと、微細結晶粒組織としコア損失を減少させる
とともに磁歪を小さくする目的で行われる。 熱処理は通常真空中または水素ガス,窒素ガス,アル
ゴンガス等の不活性ガス雰囲気中において行なわれる。
しかし場合によっては大気中等の酸化性雰囲気で行って
も良い。 熱処理温度及び時間は非晶質合金リボンからなる磁心
の形状,サイズ,組成により異なるが一般的に結晶化温
度より高い450℃〜700℃で5分から24時間程度が望まし
い。 熱処理の際の昇温や冷却の条件は状況に応じて任意に
変えることができる。また同一温度または異なる温度で
複数回にわけ熱処理を行ったり、多段の熱処理パターン
で熱処理を行なうこともできる。更には、本合金は熱処
理を直流あるいは交流の磁場中で行なうこともできる。
磁場中熱処理により本合金に磁気異方性を生じさせるこ
とができる。 磁場は熱処理の間中かける必要はなく、本発明に係る
合金のキュリー温度Tcより低い温度で印加すれば十分効
果が得られる。本発明に係る合金のキュリー温度は非晶
質の場合より熱処理により形成される主相のキュリー温
度が上昇しており、非晶質合金のキュリー温度より高い
温度でも磁場中熱処理が適用できる。また回転磁場中熱
処理を熱処理工程の1部または全部で行っても良い。ま
た、熱処理の際磁心に電流を流したり、高周波磁界を印
加し合金を発熱させることにより磁心を熱処理すること
もできる。また磁場中熱処理の場合、熱処理を2段階以
上で行うことができる。また、張力や圧縮力を加えなが
ら熱処理を行ない磁気特性を調整することもできる。 本発明のチョークコイル用磁心は次のようにして通常
作製される。 まず、前述のように単ロール法,双ロール法等により
非晶質薄帯を作製し、トロイダル状に巻き回したり、E
型,I型,コの字型,U型,C型等の形状にホトエッチング,
プレスあるいは切断などにより成形し、前述のように熱
処理した後、含浸や積層し接着する等の工程を行った
後、トロイダル巻磁心の場合はスライサー等によりギャ
ップを形成したり、切断しカットコアとする。積層磁心
の場合は必要に応じて切断する場合があるが、通常は組
合せコアとし、磁路の1部にスペーサーを入れたり空間
をもうけることによりギャップを形成する。カットコア
の場合は、つき合わせ面にスペーサーを配置しギャップ
を形成する。 ギャップは磁心の磁気飽和を防ぎ、直流重畳特性を改
善するために形成される。巻磁心の場合は含浸した方が
ギャップを精度よく形成するのが容易となり好ましい結
果が得られる。 また、ギャップ部にスペーサーを配置することは、ギ
ャップ幅の変動を小さくできばらつきの小さいチョーク
コイル用磁心を得ることができ好ましい。 また、スイッチング電源等の平滑チョークに用いる場
合、低電流の場合に出力電圧が上昇する問題を解決する
ため、低電流時にインダクタンスが大きくなるような非
線形特性を有するチョークコイルが要求される場合があ
る。 このような目的に対しては、次の様な構造の磁心が好
ましい。 1つの構造としてはスペーサーに飽和磁束密度が低い
板状のフェライト磁心を用いた磁心であり、フェライト
が先に飽和し非線形特性が得られる。 また、高透磁率磁心たとえば閉磁路のフェライト磁
心,パーマロイ磁心,アモルファス磁心等と前述のギャ
ップが磁路の少なくとも1箇所以上にもうけられた磁心
を複合したものも良好な非線形の直流重畳特性を得るこ
とができる。高透磁率磁心として、フェライトボビンや
ケースを使用した場合は、非線形特性が得られる上に磁
心を保護する効果もありより好ましい。 また、前記ギャップ付き磁心のギャップ近傍に高透磁
率磁心たとえばフェライト,アモルファス,パーマロイ
等を配置する(はりつけたり、巻いたりする)ことによ
っても非線形の直流重畳特性を得ることができる。 また、ギャップを磁心の1部がつながるように部分的
にギャップを形成した場合も非線形の直流重畳特性を得
ることができる。 チョークコイル用の本発明磁心を更に小型にし使用す
るためにはギャップ部にSm−Co磁石やFe−Nd−B磁石等
を配置しバイアス磁界を印加し有極チョークにすること
もできる。この場合直流重畳特性はある方向に直流を重
畳した場合著しく改善される。 本発明磁心は巻磁心や積層磁心等が含まれ、特に高周
波で使用したり、広幅の合金薄帯を使用する場合は合金
薄帯表面の1部または前面に絶縁層を形成した方がコア
損失を低減できるため好ましい結果が得られる。この絶
縁層は合金薄帯の片面でも両面でも良いのはもちろんで
ある。 形成する絶縁層の形成方法はたとえばSiO2,MgO,Al2O3
等の粉末を浸漬,スプレー法や電気泳動法により付着さ
せたり、スパッター法や蒸着法でSiO2や窒化物等の膜を
つける、あるいは変性アルキルシリケートを含むアルコ
ール溶液に酸を添加し、この溶液を塗布し乾燥させた
り、フォルステライト(Mg2SiO4)層を熱処理により形
成させたりする方法,Cr酸化物を形成する方法がある。
また、SiO2−TiO2系金属アルコキシド部分加水分解ゾル
に各種セラミックス粉末原料を混合したものを塗布す
る、合金薄帯を浸せきした後乾燥加熱する、チラノポリ
マーを主体とする溶液を塗布あるいは浸せき後、加熱す
る、リン酸塩溶液を塗布後加熱すること等により絶縁層
を形成することができる。また熱処理により表面にSi等
の酸化物層や窒化物層を形成したり、薬品により表面処
理し酸化物層や窒化物層を形成し絶縁層を合金表面に形
成することができる。 巻磁心の場合、前記合金薄帯と絶縁テープを重ねて巻
回し層間絶縁を行うこともできる。 絶縁テープとしてはポリイミドテープやセラミックス
繊維製のテープ,ポリエステルテープ,アラシドテー
プ,ガラス繊維製のテープ等を使用することができる。 耐熱性の優れたテープを使用する場合は前記合金薄帯
と同組成の非晶質合金薄帯と重ねて巻回し巻磁心とした
後熱処理し合金を結晶化させることにより本発明磁心を
得ることができる。 また、高さの高い磁心の場合はギャップ部からのもれ
磁束により生ずる渦電流損失を低減するために、巻磁心
の高さ方向に複数個の巻磁心を重ね合わせ一体化した構
造とした方が好ましい。 積層磁心の場合は、前記合金薄帯の一層あるいは複数
層ごとに薄板状の絶縁物を挿入し層間絶縁を行うことも
できる。この場合は可塑性のない絶縁物を使用すること
もできる。たとえば、セラミックス板やガラス板,雲母
板等を挙げることができる。この場合も耐熱性の優れた
絶縁物を使用した場合、前記合金薄帯と同組成の非晶質
合金薄帯の一層あるいは複数層ごとに薄板状の絶縁物を
挿入し積層した後熱処理を行ない結晶化させ本発明磁心
を得ることもできる。 本発明磁心は、含浸しても従来のFe基アモルファス磁
心のような著しい特性劣化がない特徴があり、含浸した
後ギャップを形成したギャップ付き磁心、カットコア等
の本発明磁心は、優れた特性のものとして得ることがで
きる。含浸は通常は熱処理後に行われるが、耐熱性のあ
る含浸剤を用いた場合は熱処理前に含浸しても良い。こ
の場合硬化を熱処理と兼ねて行うこともできる。 含浸材としてはエポキシ系樹脂,ポリイミド系樹脂,
変性アルキルシリケートを主成分とするワニス,シリコ
ーン系樹脂等を使用することができる。 単ロール法で作製された合金薄帯を用いた巻磁心の場
合、薄帯作製の際ロールと接触した面を内側にして巻い
ても、外側にして巻いても良いが、絶縁テープと重ねて
巻く場合はロールと接触した面を外側にして巻いた方が
巻磁心作製が容易であり磁心の占積率を上げることがで
きる。 また巻磁心を作製する場合、張力をかけながら薄帯を
巻いた方が占積率が上がり好ましい結果が得られる。 巻磁心を作製する際巻初め及びまたは巻終りの部分は
固定されている方が望ましく、固定方法としてはレーザ
ー光照射あるいは電気エネルギーにより局部的に溶融し
接合する方法や耐熱性の接着剤あるいはテープにより固
定する方法がある。 このような方法を行なった磁心は熱処理の際巻磁心の
形がくずれにくく熱処理後の取扱いも容易であり好まし
い結果を得ることができる。 本発明磁心は使用する薄帯表面をメッキしたりコーテ
ィングして耐食性等を改善することもできる。また絶縁
物からなるボビンやケースに入れたり磁心の周囲をコー
ティングすることにより、さびによる特性劣化,破損等
を防いだり、チョークコイルを作成する際巻線との絶縁
をとることができる。 ボビンやケースの材質としては、フェノール樹脂やセ
ラミックスを挙げることができる。ボビンとしては金属
たとえばアルミニウムやステンレスを使用する場合もあ
るがこの場合は更にコーティングする場合が多い。 コーティング材としてはエポキシ系樹脂等を使用する
ことができる。 特にさびが問題となる場合はシリコンオイル等につけ
た方が好ましい。ケースやボビンを使用する場合は緩衝
剤としてシリコンゴムやグリースを充填する場合もあ
る。 また大型の磁心やカットコアの場合、中心部あるいは
外周部に金属を配置し変形や損傷を防いだり、外周部を
金属バンドでしめ固定する等により変形を防ぐ等の方法
も行なえる。 また絶縁テープを磁心周囲に巻くことにより、さびを
防いだり、損傷を防ぐ、電気的絶縁を行うこともでき
る。 薄膜化した本発明磁心の場合も切断しギャップを形成
したり、磁路の1部に本発明に係る合金膜が形成されな
い部分をつくり、ギャップを形成することによりチョー
クコイルに適する合金膜からなる磁心を得ることができ
る。また、高周波特性を改善するためにSiO2等の絶縁層
を介して積層膜とし使用することもできる。 〔実施例〕 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 原子%でCu 1%,Si 13.5%,B 9%,Nb 3%及び残部実
質的にFeからなる組成の溶湯から、単ロール法により幅
5mm,厚さ18μmのリボンを作製した。このリボンのX線
回折を行ったところ非晶質特有のハローパターンが得ら
れほとんどが非晶質相からなることが確認された。 次にの合金薄帯を外径18mm,内径11mmに巻き回し、巻
磁心とし窒素ガスを流し550℃に昇温した管状炉に入れ
1時間保持後炉から取り出し空冷した。次にこの巻磁心
をエポキシ系樹脂で真空含浸し、硬化後外周スライサー
により切断しギャップを形成し、更にギャップ部に0.5m
mの非磁性のスペーサーをはさみ、第1図のような形の
本発明チョークコイル用磁心を作製した。磁心は更にエ
ポキシ樹脂を用い粉体コーティングを行ない、0.8mmφ
の巻線を30ターンほどこし、直流重畳特性を測定した。
得られた結果を第2図に示す。なお比較のため従来の磁
心の直流重畳特性も示す。また第3図にFe基アモルファ
スを用いたチョークコイル用磁心と本発明磁心の室温お
よび100℃の直流重畳特性を示す。 図からわかるように本発明磁心の直流重畳特性は従来
のMoパーマロイ圧粉磁心,フェライト磁心,Fe圧粉磁心
等より著しく優れており、Fe基アモルファス磁心と比較
し、直流重畳特性の温度変化が著しく小さい。 このため高信頼性でかつ高性能小型のチョークコイル
を作製することができる。 また、第4図にコア損失の周波数依存性を示す。 本発明磁心はFe基アモルファス磁心よりコア損失が小
さく、磁心の発熱が小さいため熱設計の点でも有利であ
る。 なお熱処理を行った本発明に係る合金の組織は第5図
に示すように100〜200Åの粒径の超微細なbccFe固溶体
結晶粒を主体とした合金であることが確認された。 このように本発明磁心は直流重畳特性に優れ、温度特
性も良好であり、コア損失も低いため平滑チョークやノ
ーマルモードチョークに最適である。 実施例2 原子%でCu 1%,Si 13%,B 8%,Nb 3%,Cr 1%及び残
部実質的にFeからなる組成の溶湯から、幅10mm,厚さ15
μmのリボンを作製した。次にこの薄帯表面に電気泳動
法によりMgO粉末を付着させ絶縁層を形成しながら第6
図に示すような形の巻磁心を作製した。 次にこの巻磁心を530℃で1時間Arガス中で熱処理し
室温まで冷却した。なお、用いた合金の組織は実施例1
と同様であった。 次にの巻磁心をエポキシ樹脂で真空含浸し、硬化さ
せ、中央部を切断しカットコアを作製した。次に切断面
を平研し0.2mmの非磁性スペーサーを介し第7図に示す
ような本発明磁心を作製した。実効透磁率μeの周波数
依存性を第8図に示す。なお比較のため従来のギャップ
付きFe基アモルファス磁心,Moパーマロイ圧粉磁心のμ
eの周波数依存性も示す。 本発明のチョークコイル用磁心のμeの値は広い周波
数範囲にわたりMoパーマロイ圧粉磁心等より高く、周波
数特性が良好である。 実施例3 幅25mm,厚さ20μmのFe76Cu1Nb2.5Si13.5B7合金薄帯
を単ロール法により作製し、ホトエッチングによりE型
の形の薄帯を作製しAl2O3粉末を溶かしたアルコール溶
液中につけ表面に絶縁層を形成し、次にこれを550℃で
1時間熱処理した。なお、用いた合金の組織は実施例1
と同様であった。次にこのE型の薄帯表面にエポキシ系
の接着剤を塗布し積層し硬化させ、第9図に示すような
ギャップを有する本発明のEE型コアを作製した。比較の
ため同様の形のFe基アモルファス磁心を作製し巻線をほ
どこしたボビンを中央脚にはめ、スイッチング電源の平
滑チョークに用い温度上昇を測定した。その結果、本発
明磁心の温度上昇は36℃、Fe基アモルファス磁心は43℃
であり、本発明磁心の方が温度上昇が低かった。 実施例4 原子%でCu 1%,Si 17%,B 6.5%,Ge 0.5%,Nb 3%及
び残部実質的にFeからなる組成の溶湯から、幅5mm,厚さ
18μmのアモルファスリボンを作製した。次にこのリボ
ンを外径18mm,内径11mmに巻き回しトロイダル磁心を2
個作製し、530℃で1時間熱処理し、エポキシ樹脂で含
浸した。なお、熱処理後の合金のミクロ組織は実施例1
と同様であった。次に1つの磁心は外周スライサーによ
り0.5mmのギャップを形成し、非磁性スペーサーを入れ
もう一方の磁心はギャップを形成せず、この2つの磁心
を2段に重ね接着し複合コアを形成した。次にこの磁心
をエポキシ樹脂により粉体コーティングし、直流重畳特
性を測定した。得られた結果を第10図に示す。 図からわかるように低電流側のインダクタンヌが高い
非線形特性を示すため、スイッチング電源の平滑チョー
ク等に適する。 実施例5 原子%でCu 1.5%,Mo 3%,Si 13.5%,B 9%,Ti 0.5%
の組成の合金溶湯から幅10mm,板厚20μmのアモルファ
スリボンを作製した。次にこの磁心を外径18mm,内径11m
mに巻き回しトロイダル磁心とし、変成アルキルシリケ
ートを主成分とする無機ワニスで含浸し、520℃で1時
間熱処理後外周スライサーで第11図に示すような部分ギ
ャップを形成した。なお、熱処理後の合金のミクロ組織
は実施例1と同様であった。 次にこの磁心をフェノール樹脂製のケースに入れ、直
流重畳特性を測定した。その結果実施例4と同様な非線
形特性が得られた。 実施例6 原子%でCu 1%,W 3%,Si 13%,B 8%,Ga 1%の組成
の合金溶湯から幅5mm,板厚18μmのアモルファス合金リ
ボンを作製後、外径21mm,内径16mmのトロイダル磁心を
作製し、530℃で1時間熱処理を行った後ワニスで含浸
し、更に外周スライサーにより0.5mmのギャップを形成
し、0.5mmの板厚のMn−Znフェライト板をスペーサーと
してギャップ部にはさみ込んだ。熱処理後の合金リボン
は実施例1と同様超微細な結晶粒を主体とする組織を有
していた。 次にこの磁心をフェノール樹脂製のケースに入れ、直
流重畳特性を測定した。その結果実施例4,実施例5と同
様非線形の直流重畳特性を示すことが確認された。 実施例7 原子%でCu 1.5%,Mo 3%,Si 14%,B 8%,Al 1%の組
成の合金溶湯から幅5mm,板厚15μmのアモルファス合金
リボンを単ロール法により作製後、外径21mm,内径16mm
のトロイダル磁心を作製し、520℃で1時間熱処理後、
ポリイミド樹脂で含浸後0.5mmのギャップをスライサー
により一ケ所作製し、ギャップにスペーサーを入れ、ギ
ャップを固定した後、Mn−Znフェライト製のコアケース
に入れ、直流重畳特性を測定した。その結果実施例6と
同様、低電流側でインダクタンスの高い非線形の直流重
畳特性を示すことが確認された。なお、熱処理後の磁心
材は実施例1と同様の超微細な結晶粒組織であった。 実施例8 原子%でCu 1%,Nb 3%,Si 7%,B 9%,Co 10%、残部
Feからなる組成の合金溶湯から双ロール法により、幅10
mm,厚さ28μmのアモルファスリボンを作製した。 次にこの合金表面に変成アルキルシリケートを主成分
とするワニスを塗布しながら、実施例2と同様の形状の
巻磁心を作製した。次にこの巻磁心を、550℃で1時間N
2ガス中で熱処理し室温まで冷却した。熱処理後の合金
のミクロ組織は実施例1と同様であった。 次に、この巻磁心を中央部で切断しカットコアを作製
した。次いでカット面をラップした後、0.3mmの非磁性
スペーサーを介して接合し、更に磁歪がほぼ零のCo67Fe
4Mo1.5Si16.5B11アモルファス合金リボンをギャップ部
に巻きつけ、巻線を行ない直流重畳特性を測定した。 その結果、低電流側でインダクタンスが大きい非線形
特性が得られ非線形チョークに好適であることが確認さ
れた。 実施例9 原子%でCu 0.9%,Nb 2%,Si 13.5%,B 9%,V 1%残
部Feの組成を有する合金溶湯から幅10mm,厚さ17μmの
アモルファス合金薄帯を作製し、実施例2と同様な方法
でU型のカットコアを作製し、Sm−Co磁石をつき合わせ
面に接着し、2つのU型コアとつき合わせ、固定した
後、巻線を行ない直流重畳特性を測定した。 得られた結果を第12図に示す。 永久磁石をギャップ部に配置することにより有極特性
となり、直流重畳特性が改善され、大電流側まで高いイ
ンダクタンスが得られることが確認された。 実施例10 第1表に示す組成の微細結晶粒組織からなる本発明合
金からなる外径18mm,内径11mm,ギャップ0.5mmの含浸し
た巻磁心を作製し、30ターン0.7mmφの巻線を行ない、
Aの直流重畳電流を流した場合の25℃のインダクタンス
L25と、100℃のインダクタンスL100を測定し、 を求めた。得られた結果を第1表に示す。本発明のチョ
ークコイル用磁心はインダクタンスの温度変化が従来の
Fe基アモルファスを用いたチョークコイル用磁心に比べ
て著しく小さく、温度特性が優れている。 〔発明の効果〕 本発明によれば、透磁率の周波数特性,直流重畳特
性,温度特性に優れ、かつコア損失が小さい新規のチョ
ークコイル用磁心を得ることがで、小型で信頼性の高い
チョークコイルを得ることができるため、その効果は著
しいものがある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るチョークコイル用磁心の一実施例
を示す概略図、第2図は本発明に係る磁心の直流重畳特
性の一例を従来の磁心と比較した図、第3図は本発明に
係る磁心と従来のFe基アモルファス合金からなるチョー
クコイル用磁心の25℃および100℃の直流重畳特性を示
した図、第4図は本発明に係る磁心と、従来のチョーク
コイル用磁心のコア損失の周波数依存性を示した図、第
5図は本発明に係る合金の透過電子顕微鏡により観察し
た組織の概略図、第6図は本発明磁心を作製する中間段
階で形成される巻磁心の一実施例を示した図、第7図
は、本発明に係るチョークコイル用磁心の一実施例を示
す図、第8図は本発明に係る磁心および従来のチョーク
コイル用磁心の実効透磁率μeの周波数依存性の一例を
示した図、第9図は本発明に係る非線形特性を示すチョ
ークコイル用磁心の一実施例を示す概略図、第10図は本
発明に係る非線形特性を示す磁心の直流重畳特性の一例
を示した図、第11図は本発明に係る非線形特性を示す磁
心の一実施例を示す概略図、第12図は本発明に係る有極
チョークコイル用磁心と通常の有極でないチョークコイ
ル用磁心の直流重畳特性の一例を示した図である。
を示す概略図、第2図は本発明に係る磁心の直流重畳特
性の一例を従来の磁心と比較した図、第3図は本発明に
係る磁心と従来のFe基アモルファス合金からなるチョー
クコイル用磁心の25℃および100℃の直流重畳特性を示
した図、第4図は本発明に係る磁心と、従来のチョーク
コイル用磁心のコア損失の周波数依存性を示した図、第
5図は本発明に係る合金の透過電子顕微鏡により観察し
た組織の概略図、第6図は本発明磁心を作製する中間段
階で形成される巻磁心の一実施例を示した図、第7図
は、本発明に係るチョークコイル用磁心の一実施例を示
す図、第8図は本発明に係る磁心および従来のチョーク
コイル用磁心の実効透磁率μeの周波数依存性の一例を
示した図、第9図は本発明に係る非線形特性を示すチョ
ークコイル用磁心の一実施例を示す概略図、第10図は本
発明に係る非線形特性を示す磁心の直流重畳特性の一例
を示した図、第11図は本発明に係る非線形特性を示す磁
心の一実施例を示す概略図、第12図は本発明に係る有極
チョークコイル用磁心と通常の有極でないチョークコイ
ル用磁心の直流重畳特性の一例を示した図である。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.一般式 (Fe1-aMa)100−x−y−z−α−β−γCuxSiyM′
αM″βXγ (原子%) (ただし、MはCo及び/又はNiであり、M′はNb,W,Ta,
Zr,Hf,Ti及びMoからなる群から選ばれた少なくとも1種
の元素、M″はV,Cr,Mn,Al,白金属元素,Sc,Y,Au,Zn,Sn,
Re,Agからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素、
XはC,Ge,P,Ga,Sb,In,BeおよびAsからなる群から選ばれ
た少なくとも1種の元素であり、a,x,y,z,α,β及びγ
はそれぞれ、 0≦a≦0.3、0.1≦x≦3、0≦y≦25、3≦z≦17、
10≦y+z≦30、 0.1≦α≦10、0≦β≦10、0≦γ≦10を満たす。) により表される組成を有し、組織の少なくとも50%が微
細なbccFe固溶体の結晶粒からなり、各結晶粒の最大寸
法で測定した粒径の平均が1000Å以下である合金薄帯あ
るいは合金膜から形成された磁心において、磁路の少な
くとも1個所以上にギャップをもうけたことを特徴とす
るチョークコイル用磁心。 2.磁心が含浸されていることを特徴とする特許請求の
範囲第1項に記載のチョークコイル用磁心。 3.ギャップ部にスペーサーを配置したことを特徴とす
る特許請求の範囲第1項または第2項に記載のチョーク
コイル用磁心。 4.スペーサーにフェライト磁心を用い非線形特性とし
たことを特徴とする特許請求の範囲第3項に記載のチョ
ークコイル用磁心。 5.特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記
載の磁心と高透磁率磁心とを複合し、非線形特性とした
ことを特徴とするチョークコイル用磁心。 6.高透磁率磁心がフェライトボビンあるいはケースで
あることを特徴とする特許請求の範囲第5項に記載のチ
ョークコイル用磁心。 7.高透磁率磁心をギャップ近傍に配置したことを特徴
とする特許請求の範囲第5項に記載のチョークコイル用
磁心。 8.磁心の1部がつながるように部分的にギャップを形
成し、非線形特性としたことを特徴とする特許請求の範
囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のチョークコイル
用磁心。 9.ギャップ部に永久磁石を配置したことを特徴とする
特許請求の範囲第1項または第2項に記載のチョークコ
イル用磁心。 10.前記合金薄帯を巻回したトロイダル巻磁心におい
て、巻磁心の高さ方向に複数個の巻磁心が重ね合わされ
1体化された構造であることを特徴とする特許請求の範
囲第1項乃至第9項のいずれかに記載のチョークコイル
用磁心。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62328123A JP2721165B2 (ja) | 1987-12-24 | 1987-12-24 | チョークコイル用磁心 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62328123A JP2721165B2 (ja) | 1987-12-24 | 1987-12-24 | チョークコイル用磁心 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH01169905A JPH01169905A (ja) | 1989-07-05 |
JP2721165B2 true JP2721165B2 (ja) | 1998-03-04 |
Family
ID=18206741
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62328123A Expired - Lifetime JP2721165B2 (ja) | 1987-12-24 | 1987-12-24 | チョークコイル用磁心 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2721165B2 (ja) |
Families Citing this family (7)
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---|---|---|---|---|
JPH07153628A (ja) * | 1993-11-26 | 1995-06-16 | Hitachi Metals Ltd | アクティブフィルタ用チョークコイルおよびアクティブフィルタ回路ならびにこれを用いた電源装置 |
US6778056B2 (en) | 2000-08-04 | 2004-08-17 | Nec Tokin Corporation | Inductance component having a permanent magnet in the vicinity of a magnetic gap |
JP2002158124A (ja) | 2000-11-20 | 2002-05-31 | Tokin Corp | インダクタンス部品 |
JP2002222714A (ja) * | 2001-01-26 | 2002-08-09 | Nec Tokin Corp | インダクタ |
WO2013137117A1 (ja) | 2012-03-15 | 2013-09-19 | 日立金属株式会社 | アモルファス合金薄帯及びその製造方法 |
JP7423915B2 (ja) * | 2019-06-18 | 2024-01-30 | 大同特殊鋼株式会社 | 圧粉磁心の製造方法 |
JPWO2021132254A1 (ja) * | 2019-12-25 | 2021-07-01 |
-
1987
- 1987-12-24 JP JP62328123A patent/JP2721165B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH01169905A (ja) | 1989-07-05 |
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