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JP2780828B2 - ポリエーテル抗生物質mi215―nf3物質及びその製造法、並びに鶏のコクシジウム症の防除剤 - Google Patents

ポリエーテル抗生物質mi215―nf3物質及びその製造法、並びに鶏のコクシジウム症の防除剤

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Publication number
JP2780828B2
JP2780828B2 JP1336372A JP33637289A JP2780828B2 JP 2780828 B2 JP2780828 B2 JP 2780828B2 JP 1336372 A JP1336372 A JP 1336372A JP 33637289 A JP33637289 A JP 33637289A JP 2780828 B2 JP2780828 B2 JP 2780828B2
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JP
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salt
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culture
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JP1336372A
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富雄 竹内
良和 高橋
雅 浜田
博 長縄
聖 佐藤
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Microbial Chemistry Research Foundation
Hokko Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Microbial Chemistry Research Foundation
Hokko Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な抗生物質であるMI215−NF3物質及びそ
の塩に関し、またMI215−NF3物質又はその塩の製造法に
関する。さらに本発明はMI215−NF3物質又はその塩を有
効成分とする鶏のコクシジウム症の防除剤に関する。ま
た、本発明は新規な微生物であってMI215−NF3物質を生
産できる特性をもつアクチノマジュラsp.MI215−NF3株
に関する。
(従来技術) 各種のポリエーテル系抗生物質が殺菌活性を有するこ
とが知られている。また、ポリエーテル系抗生物質に属
するモネンシン(特公昭45−113号公報参照)あるいは
サリノマイシン(「ザ・ジャーナル・オブ・アンティビ
オティクス」27巻814〜821頁参照)などは、鶏のコクシ
ジウム症の防除剤として使用されている。
(発明が解決すべき課題) 養鶏においてはコクシジウム症は重大な問題であり、
従来知られるまたは使用されている既知の化合物より優
れた抗コクシジウム活性と性質を示す新しい化合物を発
見または創製することは常に要望されており、そのため
の研究が行なわれている。
(課題を解決するための手段) そこで本発明者らは有用な新規抗生物質を発見するべ
く研究を行い、その結果アクチノマジュラ(Actinomadu
ra)属に属する新規な菌株を分離することに成功し、ま
たこの菌株が新しいポリエーテル系抗生物質を産生する
ことを見い出し、これをMI215−NF3物質と命名した。そ
して、このMI215−NF3物質又はその塩(カルボキシレー
ト)が鶏のコクシジウム症の防除活性を示すことも見出
した。さらに研究を続け、MI215−NF3物質の化学構造を
決定して新規化合物であることを確認し、また後記の式
(I)より表わせることを知見した。
(式中、Rは水素原子である)。
しかして、本発明はアクチノマジュラ(Actinomadur
a)属に属する微生物を培養して得られて、本発明者ら
によりMI215−NF3物質と命名された物質及びその塩、並
びにその製造法、また更に鶏のコクシジウム症の防除剤
としての用途を提供するものである。
すなわち、第1の本発明によると、前記の式(I)を
有するMI215−NF3物質及びその塩が提供される。
式(I)のMI215−NF3物質は遊離カルボン酸の形〔式
(I)のRが水素原子である場合〕であるが、あるいは
式(I)のRが一般的には金属又はアンモニウム基であ
ることができるので、MI215−NF3物質の塩も本発明は包
含する。この塩はアルカリ金属塩の形〔式(I)のRが
アルカリ金属原子である場合〕、例えば、ナトリウム
塩、カリウム塩又はリチウム塩であることもでき、ある
いはアルカリ土類金属塩の形〔式(I)のRがアルカリ
土類金属原子である場合〕、例えばカルシウム塩又はマ
グネシウム塩であることができ、また他の金属塩、例え
ばアルミニウム塩、鉄塩であることができ、更にアンモ
ニウム塩であることができる。
本発明によるMI215−NF3物質の理化学的性質は次の通
りである。
以下に、MI215−NF3物質ナトリウム塩の理化学的性質
を示す。
(1)外観 無色板状結晶 (2)元素分析 実験値 計算値(C37H63O11Naとして) C 62.47% 62.87% H 8.96% 8.98% O 24.60% 24.90% Na 3.53% 3.25% (3)質量分析(SIMS) m/z 707(MH+) (4)融点 217〜218℃ (5)比旋光度 ▲〔α〕25 D▼=+30.6゜(c 1.0,クロロホルム) (6)赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法) 添付図面の第1図に示す通りである。
(7)プロトン核磁気共鳴スペクトル 400メガヘルツにおいて重クロロホルム中にて室温で
測定したプロトンNMRスペクトルは、添付図面の第2図
に示す通りである。
(8)溶解性 ベンゼン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル、エ
タノール、メタノールに可溶であるが水に不溶である。
本発明によるMI215−NF3物質の生物学的性質は次の通
りである。
以下に、MI215−NF3物質ナトリウム塩の生物学的性質
を示す。
(1)抗菌スペクトル 各種の微生物に対するMI215−NF3物質ナトリウム塩の
抗菌スペクトルはそれ自体公知の手法で寒天培地上で倍
数希釈法によって測定した。その結果を第1表に示す。
(2)毒 性 マウスを使用してMI215−NF3物質Na塩の急性毒性を試
験するに当って、10%ジメチルスルホキシド含有の生理
食塩水にMI215−NF3物質を懸濁し、その懸濁液を腹腔内
注射し、マウスを14日間観察した。その結果、MI215−N
F3物質のLD50値は56mg/kgであると推定された。
(3)抗コクシジウム活性 MI215−NF3の物質の鶏のコクシジウム症に対する防除
活性を以下に示す通り試験した。
1. 初生ヒナ(雄)を1週間にわたり予備的に飼育し、
2週令のヒナを試験に使用した。
2. 試験開始時、ヒナの体重を個体別に測定し、ばらつ
きが少ないように選定して10羽/群とした。
3. オーシストを1羽当り5×104個、胃ゾンデを用い
て経口投与した。
4. オーシストを投与後、特殊飼料(抗コクシジウム剤
を無添加のもの)に一定量のMI215−NF3物質(ナトリウ
ム塩)を混合含有させた飼料を自由に摂取させた。な
お、飲水も自由に摂取させた。
5. オーシスト投与後から7日目までは、毎日、糞便中
のオーシスト数および便の状態を観察した。
6. 感染7日目に解剖した。解剖の手順を下記に示す。
1)体重をヒナの個体別に測定した。
2)ヒナを頚椎脱臼して屠殺した。
3)開腹して盲腸を摘出し、盲腸の外部および内部にお
ける病変巣を肉眼検査した。
4)検査した盲腸は個体別にホモジナイザーで砕解して
盲腸懸濁液を作製し、懸濁液中のオーシスト数を算出し
た。
5)各検査結果を基にして下記の計算式により米国メル
ク社の提案する評価方法によるACI(Anticoccidial Ind
ex)の値を評定した。
ACI=(相対増体率+ヒナの生存率)−(病変値+オーシスト値) なお、上記のACIの値を評定するに当って、薬剤効力
試験期間中の各群ヒナの増体率、およびACIの計算に用
いる相対増体率は次式によって算出する。
増体率=〔(試験終了時ヒナの平均体重−試験開始時ヒナの 平均体重)÷試験開始時ヒナの平均体重〕×100。
相対増体率=(投薬群あるいは感染非投薬群の増体率÷ 非感染非投薬群の増体率)×100。
また、病変値とは、摘出した盲腸における病変巣を肉
眼検査した結果を指数化した値であり、またオーシスト
値とは、実測したオーシスト数を指数化した値である。
ACIの値の評定方法の詳細は、例えば文献「鶏コクシジ
ウム症」95〜101頁、角田清監修(チクサン出版社、昭
和58年5月発行)に記載されてある。
得られた結果を第2表に示す。
上記の結果から明らかなように、MI215−NF3物質又は
その塩は鶏のコクシジウム症に対する防除剤として実用
できる。
更に、第2の本発明によると、アクチノマジュラ属に
属する前記の式(I)のMI215−NF3物質の生産菌を培養
し、培養物からMI215−NF3物質又はその塩を採取するこ
とを特徴とする抗生物質MI215−NF3物質又はその塩の製
造法が提供される。
本発明の方法で用いられるMI215−NF3物質生産菌の菌
学的諸性質は次の通りである。
本発明で使用するMI215−NF3物質生産菌は前述した理
化学的性質および生物学的性質を有する抗生物質を生産
する能力を有するものであれば、その種を問わず使用で
き、広範な微生物から選ぶことができる。かかる微生物
のうち、MI215−NF3物質生産菌の具体的な好適の一例
は、本発明者らにより東京郡文京区の土壌より分離され
た放線菌で、MI215−NF3の菌株番号が付された菌株であ
る。
以下にMI215−NF3株の菌学的諸性質について記載す
る。
1. 形態 顕微鏡下で、分枝した基中菌糸より気菌糸を伸長す
る。基中菌糸の分断は認められない。気菌糸上に胞子鎖
を形成し、かぎ又はらせん状を呈する。成熟した胞子の
連鎖は通常7〜15個、胞子は卵円形(約0.7×1.0〜1.2
ミクロン)を呈し、その表面はいぼ状である。なお、輪
生枝および胞子のうは観察されない。
2. 各種培地における生育状態 色の記載について〔 〕内に示す標準は、コンティナ
ー・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハー
モニー・マニュアル(Container Corporation of Ameri
caのcolor harmony manual)を用いた。
(1)シュクロース・硝酸塩寒天培地(30℃培養) 無色〜うすだいだい〔3gc,Lt Tan〕の発育上に、白の
気菌糸をうっすらと着生する。溶解性色素は認められな
い。
(2)グルコース・アスパラギン寒天培地(30℃培養) うす黄茶〔3ic,Lt Amber〜3le,Cinnamon〕〜明るい茶
〔4ng,Lt Brown〕の発育上に、白の気菌糸をわずかに着
生する。溶解性色素はやゝ黄色味を帯びる。
(3)グリセリン・アスパラギン寒天培地(ISP−培地
5,30℃培養) うす黄〜うす黄茶〔2le,Mustard〜3le,Cinnamon〕の
発育上に、白〜灰白〔2dc,Natural〕の気菌糸をうっす
らと着生する。溶解性色素は、培養後21日目頃よりかす
かに黄茶を帯びる程度である。
(4)スターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4,30℃培
養) うす黄〜うす黄茶〔3ng,Yello Maple〕〜黄茶〔3pi,G
olden Brown〕の発育上に、ピンク白〔5ba,Shell Pin
k〕〜灰白〔2dc,Natural〕の気菌糸を着生する。溶解性
色素は、かすかに黄色味を帯びる。
(5)チロシン寒天培地(ISP−培地7,30℃培養) うす黄〜黄茶〔3ng,Yellw Maple〕〜灰味黄茶〔3ni,C
love Brown〕の発育上に、黄味灰〔1dc,Putty〜lec,Lt
Citron Gray〕の気菌糸を着生する。溶解性色素は、か
すかに黄色味を帯びる程度である。
(6)栄養寒天培地(30℃培養) うす黄茶〔3ic,Lt Amber〕〜灰味黄茶〔3ni,Clove Br
own〕の発育上に、白の気菌糸を部分的に着生する。溶
解性色素は、ごくかすかに黄色味を帯びる。
(7)イースト・麦芽寒天培地(ISP−培地2,30℃培
養) うす黄茶〔2le,Mustard〕〜灰味黄茶〔2nl,Covert Br
own〕の発育上に、白〜茶白の気菌糸を着生する。溶解
性色素は、かすかに茶色味を帯びる。
(8)オートミール寒天培地(ISP−培地3,30℃培養) うすだいだい〜うす茶〔4le,Maple〕〜黄茶〔3ng,Yel
low Maple〕の発育上に、白〜ピンク白〔5ba,Shell Pin
k〜7ba,Pink Tint〕の気菌糸を着生する。溶解性色素
は、かすかに黄色味を帯びる。
(9)グリセリン・硝酸塩寒天培地(30℃培養) 無色〜うす黄〜うす黄茶〔3le,Cinnamon〕の発育上
に、白〜ピンク白〔5ba,Shell Pink〕の気菌糸を着生す
る。溶解性色素は、かすかに黄色味を帯びる程度であ
る。
(10)スターチ寒天培地(30℃培養) うす黄茶〔2le,Mustard〕〜灰味黄茶〔3ni,Clove Bro
wn〕の発育上に、白の気菌糸をわずかに着生する。溶解
性色素は認められない。
(11)リンゴ酸石灰寒天培地(30℃培養) 無色〜うす黄の発育上に、白〜ピンク白〔5ba,Shell
Pink〕の気菌糸を着生する。溶解性色素は認められな
い。
(12)セルロース(濾紙片添加合成液,30℃培養) 発育は無色、白の気菌糸をわずかに着生する。溶解性
色素は認められない。
(13)ゼラチン穿刺培養 単純ゼラチン培地(20℃培養)で、発育は無色〜うす
黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素は認められない。グ
ルコース・ペプトン・ゼラチン培地(27℃培養)の場
合、発育はうす黄、気菌糸は着生せず、溶解性色素も認
められない。
(14)脱脂牛乳(37℃培養) 発育はうす黄〜うす黄茶、気菌糸は着生せず、溶解性
色素は培養後18日目頃よりかすかに茶色味を帯びる程度
である。
3. 生理的性質 (1)生育温度範囲 スターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4)を用い、2
0℃、24℃、27℃、30℃、37℃、50℃の各温度で試験の
結果、50℃を除いて、いずれの温度でも生育した。生育
至適温度は30℃付近である。
(2)ゼラチンの液化(15%単純ゼラチン培地,20℃培
養;グルコース・ペプトン・ゼラチン培地,27℃培養) 単純ゼラチン培地において、培養後11日目頃より液化
が始まるが、その作用は弱い方である。グルコース・ペ
プトン・ゼラチン培地の場合、培養後5日目頃より液化
が認められ、その作用は中等度〜弱い方である。
(3)スターチの加水分解(スターチ・無機塩寒天培
地,ISP−培地4,およびスターチ寒天培地,いずれも30℃
培養) いずれの培地においても水解性が認められ、その作用
は中等度である。
(4)脱脂牛乳の凝固・ペプトン化(脱脂牛乳,37℃培
養) 培養後5日目頃より、凝固状を呈し、ただちに完了
後、ペプトン化が始まる。ペプトン化の進度はゆっくり
で、3週間観察で未完了であった。
(5)メラニン様色素の生成(トリプトン・イースト・
ブロス,ISP−培地1;ペプトン・イースト・鉄寒天培地,I
SP−培地6;チロシン寒天培地,ISP−培地7;いずれも30℃
培養) トリプトン・イースト・ブロスおよびチロシン寒天培
地では、陰性、ペプトン・イースト鉄寒天培地では陽性
と思われる。
(6)炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ寒天培
地,ISP−培地9,30℃培養) L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコー
ス、D−フラクトース、ラムノース、D−マンニトール
を利用して生育し、シュクロース、イノシトール、ラフ
ィノース、ラクトースは利用しない。
(7)リンゴ酸石灰の溶解(リンゴ酸石灰寒天培地,30
℃培養) リンゴ酸石灰の溶解は認められない。
(8)硝酸塩の還元反応(0.1%硝酸カリウム含有ぺプ
トン水,ISP−培地8、30℃培養) 陽性である。
(9)セルロースの分解(濾紙片添加合成液、30℃培
養) 陰性である。
以上の性状を要約すると、MI215−NF3株は、気菌糸上
にかぎ又はらせん状の胞子鎖を形成し、胞子の連鎖は7
〜15個を数える。胞子の表面はいぼ状である。輪生枝お
よび胞子のうは認められない。また、基中菌糸の分断も
みられない。種々の培地で、うす黄〜うす黄茶〜灰味黄
茶の発育上に、白〜灰白、あるいはピンク白の基菌糸を
着生する。溶解性色素はかすかに黄色味を帯びる。
メラニン様色素の生成は、トリプトン・イースト・ブ
ロスおよびチロシン寒天培地で陰性を示し、ペプトン・
イースト・鉄寒天培地で陽性を示す。蛋白分解力は中等
度〜弱い方、スターチの水解性は中等度である。又、硝
酸塩の還元反応は陽性である。
ところで、MI215〜NF3株は、菌体成分として全菌体中
にメソ−ジアミノピメリン酸、および糖成分として、グ
ルコース、ガラクトース、マジュロース、リボースを有
し、リシバリエら(Lechevalier et al,「Internationa
l Journal of Systematic Bacteriology」20巻,435頁,1
970年)の提唱する細胞壁の主要構成成分のタイプIII B
を示した。また、リン脂質はPI型(ホスファチジルエタ
ノールアミン、ホスファチジルメチルエタノールアミ
ン、ホスファチジルコリンおよび未知のグルコサミン含
有リン脂質を含まず、ホスファチジルイノシトール、ホ
スファチジルイノシトールマンノシドを含む)。メナキ
ノンの組成はMK−9(H6)、MK−9(H8)および少量の
MK−9(H4)である。
以上の点より、MI215−NF3株はアクチノマジュラ(Ac
tinomadura)属に属する放線菌と考えられる。アクチノ
マジュラ属の既知菌種より、MI215−NF3株に類似の種を
検索すると、形態、メナキノン組成等の点で、アクチノ
マジュラ・シトレア(Actinomadura citrea,文献1「An
tibiotiki」17巻,965〜970頁,1972年;及び文献2「Sys
tematic&Applied Microbiology」6巻,264〜270頁,198
5年)があげられる。すなわち、かぎ又はらせん状を呈
する胞子鎖、いぼ状の胞子表面、種々の培地での黄色の
溶解性色素、および菌体のメナキノン組成がMK−9
(H6)、MK−9(H8)を示す点でよく類似している。し
かし、文献上では不明の点が多く、アクチノマジュラ・
シトレアの標準菌株を入手し比較実験を行なう予定であ
る。これらの事から、現時点ではMI215−NF3株をアクチ
ノマジュラ・エスピー(Actinomadura sp.)MI215−NF3
と命名する。なお、MI215−NF3株は、日本国茨城県つく
ば市にある通産省工業技術院微生物工業技術研究所に昭
和63年11月22日寄託申請し、微工研菌寄 第10397号と
して受託されたが、現在はブタペスト条約の規定の下に
寄託番号「FERM BP−2675」として寄託してある。
本発明の方法においてはMI215−NF3物質の製造は次の
通り行われる。
すなわち、MI215−NF3物質の製造はMI215−NF3物質生
産菌を栄養培地中で27〜30℃の温度で好気的深部条件下
に撹拌しながら培養して行うのが好ましい。このような
目的に用いる栄養培地は砂糖、でんぷん、グリセリンお
よび糖みつのような資化性炭素源、コーン・スチープ・
リカー、大豆粉、綿実粉、ペプトン、肉エキスおよびホ
ップかすのような有機窒素源、硫酸アンモニウム、硝酸
アンモニウムおよび塩化アンモニウムのような無機窒素
源を含有することができる。発酵の間に過剰の泡立ちが
生じた場合、植物油またはシリコーンのような消泡剤を
発酵培地に加えることができる。発酵中の培地のpHが変
化したら炭酸カルシウムのような緩衝剤を加えてもよ
い。深部培養用タンク中の培地の通気は1分間当りブロ
スの1容量に対し新鮮な空気の約1/2ないし2容量の割
合を維持するのが好ましい。撹拌は発酵工業において一
般によく知られた撹拌手段によって行なわれる。
MI215−NF3物質の生産のための種母としては、寒天培
地上、MI215−NF3株の斜面培養から得た生育物を使用す
る。この生育物は振とうフラスコまたは種母タンクのい
ずれかに接種する場合にも使用でき、あるいは種母タン
クに振とうフラスコからの生育物を接種してもよい。
このMI215−NF3株の生育は通常5ないし7日で最高に
達する。しかし使用する装置、通気速度、撹拌速度等に
よって使用菌が最高の生育に達する速度は変化する。一
般に、発酵は充分な抗菌活性が培地に付与されるまで続
ける。この培養液中のMI215−NF3物質の力価の経時変化
はスタフィロコッカス・アウレウス・スミスを試験菌と
する円筒平板評価法により測定できる。
本発明の方法においては、上記のようにして得られた
培養物からMI215−NF3物質を採取するが、採取法として
は微生物の生産する代謝産物を採取するのに通常用いら
れる手段を適宜利用することから成る。たとえば不純物
との溶解性の差を利用する手段、各種吸着剤に対する吸
着親和性の差を利用する手段、水と混ざらない溶媒によ
る抽出などが単独あるいは組み合わせて利用してMI215
−NF3物質を採取できる。原則的には、下記の方法によ
る採取法が好ましい。すなわち、培養物から菌体を濾取
または遠心法により分離し、得られる培養濾液から、水
と混和しない有機溶媒例えば酢酸n−ブチル、酢酸エチ
ル等で抽出し、その後、水洗し、有機溶媒を蒸発乾固す
る。この乾固物は通常10%前後の量でMI215−NF3物質が
含有される。更にこの乾固物として得られた粗製のMI21
5−NF3物質の純度を高めるために、シリカゲル系のカラ
ムクロマトグラフィーによる精製にかけ純度95%以上の
MI215−NF3物質を得ることができる。以上の方法で得ら
れるMI215−NF3物質はナトリウム、カリウム等の塩、若
しくは遊離カルボン酸の形であるが、公知の方法で単一
の塩とすることができる。例えば本MI215−NF3物質を酢
酸エチルに溶解させ、1モル塩酸水、飽和炭酸ナトリウ
ム溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機溶媒層
を乾燥した後、濃縮乾固し、酢酸エチル−ヘキサンで結
晶化させると、MI215−NF3物質のナトリウム塩が無色板
状結晶として得られる。
上記のように精製して収得されたMI215−NF3物質(ナ
トリウム塩)は、例えばこれを酢酸エチル又はメタノー
ルの如き有機溶媒に溶解させ、その溶液に強酸性イオン
交換樹脂(H+型)を加えて処理すると、遊離カルボン酸
の形のMI215−NF3物質が生成できる。この遊離酸の形の
MI215−NF3物質を例えば、有機溶媒中で塩基性のアルカ
リ金属無機塩、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム
の水溶液、あるいは塩基性水溶性アルカリ土類金属化合
物、例えば水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムで
処理すると、対応するアルカリ金属塩の形又はアルカリ
土類金属塩の形のMI215−NF3物質が生成できる。また同
様に、その他の金属塩例えば水酸化アルミニウム又は水
酸化第2鉄で処理して相当するアルミニウム塩又は鉄塩
を調製することができる。
更に、第3の本発明によると、前記の式(I)のMI21
5−NF3物質又はその塩を有効成分として含有する鶏コク
シジウム症の防除剤が提供される。
このコクシジウム症防除剤において、有効成分化合物
としてのMI215−NF3物質又はその塩は、同様な用途の既
知薬剤におけると同様に、動物医療上許容できる公知の
担体、例えば澱粉、セルローズ粉末、木粉、あるいはエ
タノール等若しくは食餌材料と混和できる。担体と混和
して得られた組成物中のMI215−NF3物質又はその塩の量
はコクシジウム症を治療するに有効である50〜100ppmの
濃度であることができる。本発明のコクシジウム症防除
剤はMI215−NF3物質又はその塩を適当な有機溶媒にとか
した溶液若しくは含水有機溶媒に懸濁した濃厚原液又は
分散液の形であることもできる。このような溶液又は分
散液を飼料に添加して、飼料中の有効成分物質の濃度が
50〜100ppmになるようにする。
本発明の他の要旨によれば、前記のように有用な式
(I)の抗生物質を生産できる有用で新規な微生物とし
て、アクチノマジュラ・エスピーMI215−NF3株が提供さ
れる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明する。
実施例1 アクチノマジュラ・エスピー(Actinomadura sp.)MI
215−NF3株(FERM BP−2675)の斜面培養物の菌体を110
ml種母培地(ガラクトース2%、化学用デキストリン2
%、ソイペプトン1%、コーン・スチープ・リカー0.5
%、硫酸アンモニウム0.2%、炭酸カルシウム0.2%より
なり、pH7.4)を含む500ml容ロータリーフラスコに接種
し、30℃、144時間、回転シェーカー上で培養した。得
られた培養液を主培養用の培地(グリセリン1.5%、可
溶性でん粉1.5%、大豆粉0.5%、魚粉1.5%、炭酸カル
シウム0.2%よりなり、pH7.4)5を110mlずつに分注
した500ml容ロータリーフラスコに3重量%の割合で接
種した。接種された培地を27℃、144時間、毎分180回転
の回転シェーカー上で培養した。得られた培養物から菌
体を濾取し、得られた培養濾液約4を酢酸エチル3
で抽出後、抽出液を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥
する。乾燥された酢酸エチル溶液から不溶部を濾別し、
濾液を蒸発乾固する。残査を酢酸エチル100mlに溶解さ
せ、再度不溶部を濾別し、濾液を蒸発乾固しMI215−NF3
物質の粗製物2.4gを得た。
実施例2 実施例1で得たMI215−NF3物質の粗製物2.4gをクロロ
ホルムに溶かし、メルク社製シリカゲルのキーゼルゲル
60(150g)をクロロホルム中で充填したカラム・クロマ
トグラフィーにかけ、クロロホルム/アセトン(5:1)
を展開溶媒として溶出する。MI215−NF3物質は溶出液の
画分1600ml〜3700mlに溶出する。活性画分から減圧下に
溶媒を留去した後、残査を酢酸エチル90mlに溶解させ、
0.1モル塩酸水、0.1モル水酸化ナトリウム水溶液、飽和
食塩水で順次洗浄してから無水硫酸ナトリウムで乾燥し
た。その後、溶液を減圧下に蒸留して溶媒を留去すると
255mgのオイル状物質を得た。得られたオイルをヘキサ
ン、酢酸エチルで結晶化させ、MI215−NF3物質のナトリ
ウム塩を無色板状結晶232mgとして得た。
実施例3 MI215−NF3物質のナトリウム塩200mgをクロロホルム1
00mlに溶解し、水10mlを加え、塩酸でpH3.0に調整後、
振盪抽出をしてクロロホルム層を得た。クロロホルム層
は水洗後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮乾固して
遊離カルボン酸の形のMI215−NF3物質の196mgを得た。
実施例4 MI215−NF3物質20mgをアセトン1mlに溶解した。これ
に水酸化アルミニウム2.5%サスペンジョンの0.3mlを添
加し、室温で18時間反応後、100mlの水を加え、100mlの
クロロホルムで2回抽出した。クロロホルム層は水洗、
脱水操作後に濃縮乾固してMI215−NF3物質のアルミニウ
ム塩の19.8mgを得た。
(発明の効果) 本発明の新規な抗生物質MI215−NF3物質又はその塩
は、鶏のコクシジウム症の防除剤として有用である。そ
して治療しうる鶏の種類は特定のものに限られない。ま
た、従来使用されているコクシジウム治療用抗生物質例
えばモネンシン又はサリノマイシンと比べて本発明に係
る抗生物質MI215−NF3物質又はその塩は小薬量でより有
効である。
【図面の簡単な説明】
第1図はMI215−NF3物質ナトリウム塩の、KBr錠剤法で
測定した赤外線吸収スペクトルである。第2図はMI215
−NF3物質ナトリウム塩の重クロロホルム中にて室温で
測定した400MHzにおけるプロトン核磁気共鳴スペクトル
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:03) (C12P 17/18 C12R 1:03) (72)発明者 浜田 雅 東京都新宿区内藤町1番地26 秀和レジ デンス405号 (72)発明者 長縄 博 東京都大田区田園調布本町3番17号 (72)発明者 佐藤 聖 神奈川県秦野市東田原200―96 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 493/10 A61K 31/35 C12P 17/00 - 17/18 C12N 1/20 WPI(DIALOG) REGISTRY(STN) CA(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の式(I) (式中、Rは水素原子である)を有する抗生物質MI215
    −NF3物質及び式(I)におけるRが金属又はアンモニ
    ウム基である場合のMI215−NF3物質の塩。
  2. 【請求項2】式(I)におけるRがアルカリ金属、アル
    カリ土類金属又はその他の金属あるいはアンモニウム基
    である請求項1記載のMI215−NF3物質の塩。
  3. 【請求項3】アクチノマジュラに属する請求項1に記載
    の式(I)のMI215−NF3物質又はその塩の生産菌を培養
    し、培養物からMI215−NF3物質又はその塩を採取するこ
    とを特徴とする抗生物質MI215−NF3物質又はその塩の製
    造方法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の式(I)のMI215−NF3物
    質又はその塩を有効成分として含有することを特徴とす
    る、鶏のコクシジウム症の防除剤。
  5. 【請求項5】請求項1に記載の式(I)のMI215−NF3物
    質を生産する特性をもつアクチノマジュラsp.MI215−NF
    3株。
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