JP2021173340A - 多板クラッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のクラッチプレートが押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することが可能な多板クラッチを提供する。【解決手段】メインクラッチ10は、潤滑油によって摩擦摺動が潤滑される複数のメインアウタクラッチプレート4及び複数のメインインナクラッチプレート5からなる多板クラッチである。メインインナクラッチプレート5は、硬質材からなる円盤状の基材51の表面に弾性を有する摩擦材52が貼り付けられている。摩擦材52には、基材51に向かって窪む凹部520が形成されており、メインアウタクラッチプレート4及びメインインナクラッチプレート5が軸方向に押圧された際、凹部520に潤滑油が収容された状態で摩擦材52が圧縮される。【選択図】図4
Description
本発明は、複数のクラッチプレートからなる多板クラッチに関する。
従来、複数のクラッチプレートからなる多板クラッチが、例えば車両における駆動力の伝達経路に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の駆動力伝達装置は、複数のクラッチプレートからなる多板クラッチと、多板クラッチを押圧するカム推力を発生するカム機構と、カム機構を作動させる電磁クラッチ機構とを備えている。複数のクラッチプレートの間の摩擦摺動は、潤滑油によって潤滑され、摩耗や発熱が抑制される。また、この駆動力伝達装置は、4輪駆動車に搭載されてプロペラシャフトと後輪側のディファレンシャル装置との間に配置され、電磁クラッチ機構の電磁コイルに供給される電流の大きさに応じた駆動力(トルク)を後輪側のディファレンシャル装置側に伝達する。
潤滑油によってクラッチプレート間の摩擦摺動が潤滑される多板クラッチでは、例えばカム機構から受ける押圧力が急激に立ち上がると、多板クラッチによって伝達されるトルクが一時的に押圧力に応じた値よりも大きくなってオーバーシュート(上振れ)してしまう場合がある。また、多板クラッチを有する駆動力伝達装置が搭載された車両では、駆動力の伝達経路における部材の強度を、駆動力伝達装置によって伝達される駆動力のオーバーシュートを見込んだ強度にしなければならず、車両重量が増大する一因となっていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のクラッチプレートが押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することが可能な多板クラッチを提供することにある。
本発明は、上記の目的を達成するため、潤滑油によって摩擦摺動が潤滑される複数のクラッチプレートからなる多板クラッチであって、前記複数のクラッチプレートは、硬質材からなる円盤状の基材の表面に弾性を有する摩擦材を貼り付けてなる第1のクラッチプレートと、前記摩擦材が摺接する摩擦面を有する第2のクラッチプレートとを備え、前記摩擦材には、前記基材に向かって窪む凹部が形成されており、前記複数のクラッチプレートが軸方向に押圧された際、前記凹部に前記潤滑油が収容された状態で前記摩擦材が圧縮される、多板クラッチを提供する。
本発明に係る多板クラッチによれば、複数のクラッチプレートが押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することが可能となる。
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
本発明の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る駆動力伝達装置の制御装置が搭載された4輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。
図1に示すように、4輪駆動車100は、アクセルペダル111の踏み込み量に応じた走行用の駆動力(トルク)を発生する駆動源としてのエンジン11と、エンジン11の出力を変速するトランスミッション12と、トランスミッション12で変速されたエンジン11の駆動力が常に伝達される主駆動輪としての左右前輪181,182と、エンジン11の駆動力が4輪駆動車100の走行状態に応じて伝達される副駆動輪としての左右後輪191,192とを備えている。左右前輪181,182は、運転者によるステアリングホイール112の操舵操作によって転舵される転舵輪である。左右前輪181,182及び左右後輪191,192には、車輪速センサ101〜104がそれぞれ対応して設けられている。
また、4輪駆動車100には、フロントディファレンシャル13と、プロペラシャフト14と、リヤディファレンシャル15と、左右の前輪側のドライブシャフト161,162と、左右の後輪側のドライブシャフト171,172と、プロペラシャフト14とリヤディファレンシャル15との間に配置された駆動力伝達装置1と、駆動力伝達装置1を制御する制御装置8とが搭載されている。制御装置8は、車輪速センサ101〜104によって検出される左右前輪181,182及び左右後輪191,192の回転速度の情報、アクセルペダルセンサ105によって検出されるアクセルペダル111の操作量の情報、及び操舵角センサ106によって検出されるステアリングホイール112の操舵角の情報を取得可能である。制御装置8は、これらの車両情報に応じて駆動力伝達装置1を制御する。
駆動力伝達装置1は、制御装置8から供給される電流に応じた駆動力をプロペラシャフト14からリヤディファレンシャル15に伝達する。左右後輪191,192には、駆動力伝達装置1を介してエンジン11の駆動力が伝達される。制御装置8は、駆動力伝達装置1に電流を供給することで駆動力伝達装置1を制御する。以下、制御装置8が駆動力伝達装置1を制御するために出力する電流を制御電流という。
なお、4輪駆動車100の駆動源としては、内燃機関であるエンジンに限らず、例えばIPM(Interior Permanent Magnet)モータ等の高出力モータを用いてもよい。また、エンジンと高出力モータとの組み合わせによって駆動源を構成してもよい。
左右前輪181,182には、エンジン11の駆動力が、トランスミッション12、フロントディファレンシャル13、及び左右の前輪側のドライブシャフト161,162を介して伝達される。フロントディファレンシャル13は、左右の前輪側のドライブシャフト161,162にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ131,131と、一対のサイドギヤ131,131にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ132,132と、一対のピニオンギヤ132,132を支持するピニオンギヤシャフト133と、これらを収容するフロントデフケース134とを有している。
フロントデフケース134には、リングギヤ135が固定され、このリングギヤ135がプロペラシャフト14の車両前方側の端部に設けられたピニオンギヤ141に噛み合っている。プロペラシャフト14の車両後方側の端部は、駆動力伝達装置1のハウジング2に連結されている。駆動力伝達装置1は、多板クラッチとして構成されたメインクラッチ10と、メインクラッチ10によってハウジング2から駆動力(トルク)が伝達されるインナシャフト3を有している。また、駆動力伝達装置1は、制御装置8から供給される制御電流に応じた駆動力を、インナシャフト3と相対回転不能に連結されたピニオンギヤシャフト150を介してリヤディファレンシャル15に伝達する。駆動力伝達装置1の詳細については後述する。
リヤディファレンシャル15は、左右の後輪側のドライブシャフト171,172にそれぞれ相対回転不能に連結された一対のサイドギヤ151,151と、一対のサイドギヤ151,151にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ152,152と、一対のピニオンギヤ152,152を支持するピニオンギヤシャフト153と、これらを収容するリヤデフケース154と、リヤデフケース154に固定されてピニオンギヤシャフト150と噛み合うリングギヤ155とを有している。
(駆動力伝達装置の構成)
図2は、駆動力伝達装置1の構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は駆動力伝達装置1の作動状態(トルク伝達状態)を、下側は駆動力伝達装置1の非作動状態(トルク非伝達状態)を、それぞれ示す。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
図2は、駆動力伝達装置1の構成例を示す断面図である。図2において、回転軸線Oよりも上側は駆動力伝達装置1の作動状態(トルク伝達状態)を、下側は駆動力伝達装置1の非作動状態(トルク非伝達状態)を、それぞれ示す。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
駆動力伝達装置1は、フロントハウジング21及びリヤハウジング22からなるハウジング2と、ハウジング2と同軸上で相対回転可能に支持されたインナシャフト3と、ハウジング2とインナシャフト3との間に配置された複数のクラッチプレートからなるメインクラッチ10と、メインクラッチ10を押圧する押圧力を発生するカム機構6と、フロントハウジング21の回転力を受けてカム機構6を作動させる電磁クラッチ機構7とを有して構成されている。ハウジング2の内部には、図略の潤滑油が封入されている。
フロントハウジング21は、円筒状の筒部21aと底部21bとを一体に有する有底円筒状である。筒部21aの開口端部における内面には、雌ねじ部21cが形成されている。フロントハウジング21の底部21bには、プロペラシャフト14(図1参照)が例えば十字継手を介して連結される。また、フロントハウジング21は、軸方向に延びる複数の外側スプライン突起211を筒部21aの内周面に有している。
リヤハウジング22は、鉄等の磁性材料からなる第1環状部材221、第1環状部材221の内周側に溶接等により一体に結合されたオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料からなる第2環状部材222、及び第2環状部材222の内周側に溶接等により一体に結合された鉄等の磁性材料からなる第3環状部材223からなる。第1環状部材221と第3環状部材223との間には、後述する電磁コイル73を収容する環状の収容空間22aが形成されている。また、第1環状部材221の外周面には、フロントハウジング21の雌ねじ部21cに螺合する雄ねじ部221aが形成されている。
インナシャフト3は、玉軸受23及び針状ころ軸受24によってハウジング2の内周側に支持されている。インナシャフト3は、軸方向に延びる複数の内側スプライン突起31を外周面に有している。また、インナシャフト3の一端部における内面には、ピニオンギヤシャフト150(図1参照)の一端部が相対回転不能に嵌合されるスプライン嵌合部32が形成されている。
メインクラッチ10は、軸方向に沿って交互に配置された複数のメインアウタクラッチプレート4及び複数のメインインナクラッチプレート5からなる。メインインナクラッチプレート5は、本発明の第1のクラッチプレートの一態様であり、インナシャフト3と共に回転する。メインアウタクラッチプレート4は、本発明の第2のクラッチプレートの一態様であり、フロントハウジング21と共に回転する。メインアウタクラッチプレート4とメインインナクラッチプレート5との摩擦摺動は、ハウジング2とインナシャフト3との間に封入された図略の潤滑油によって潤滑され、摩耗や焼き付きが抑制されている。
メインアウタクラッチプレート4は、金属からなる円環板状であり、フロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起41を外周端部に有している。メインアウタクラッチプレート4は、係合突起41が外側スプライン突起211に係合することにより、フロントハウジング21との相対回転が規制され、かつフロントハウジング21に対して軸方向に移動可能である。
メインインナクラッチプレート5は、インナシャフト3の内側スプライン突起31に係合する複数の係合突起511を内周端部に有している。メインインナクラッチプレート5は、係合突起511が内側スプライン突起31に係合することにより、インナシャフト3との相対回転が規制され、かつインナシャフト3に対して軸方向に移動可能である。
また、メインインナクラッチプレート5は、鉄系金属等の硬質材からなる平坦な円盤状の基材51と、基材51の表面に貼り付けられた摩擦材52とを有している。基材51は、例えば鋼板を打ち抜き加工して形成されている。摩擦材52は、押圧されることにより圧縮される弾性を有しており、基材51の外周側の端部を含む範囲に一定の径方向幅で環状に配置されている。基材51には、その内周端部に複数の係合突起511が設けられていると共に、摩擦材52が貼り付けられた部分よりも内側に、潤滑油を流通させる複数の油孔510が形成されている。摩擦材52は、基材51の両面に貼り付けられている。メインアウタクラッチプレート4は、摩擦材52が摺接する摩擦面4aを有している。
摩擦材52は、例えばペーパー摩擦材や不織布からなり、メインアウタクラッチプレート4と軸方向に対向する部分に貼り付けられている。ペーパー系の湿式摩擦材としてより具体的には、例えば木材パルプ或いはアラミド繊維等の繊維基材と、カシューダスト等の摩擦調整剤や炭酸カルシウム或いは珪藻土等の体質充填剤等の充填剤とを抄造して抄紙体を形成し、その抄紙体に熱硬化性樹脂からなる樹脂結合剤を含浸し、次いで熱成形により加熱硬化したものを用いることができる。
カム機構6は、電磁クラッチ機構7を介してハウジング2の回転力を受けるパイロットカム61と、メインクラッチ10を軸方向に押圧する押圧部材としてのメインカム62と、パイロットカム61とメインカム62との間に配置された複数の球状のカムボール63とを有して構成されている。
メインカム62は、メインクラッチ10の一端におけるメインインナクラッチプレート5に接触してメインクラッチ10を押圧する環板状の押圧部621と、押圧部621よりもメインカム62の内周側に設けられたカム部622とを一体に有している。メインカム62は、押圧部621の内周端部に形成されたスプライン係合部621aがインナシャフト3の内側スプライン突起31に係合し、インナシャフト3に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能である。また、メインカム62は、インナシャフト3に形成された段差面3aとの間に配置された皿ばね64により、メインクラッチ10から軸方向に離間するように付勢されている。
パイロットカム61は、メインカム62に対して相対回転する回転力を電磁クラッチ機構7から受けるスプライン突起611を外周端部に有している。パイロットカム61とリヤハウジング22の第3環状部材223との間には、スラスト針状ころ軸受65が配置されている。
パイロットカム61とメインカム62のカム部622との対向面には、周方向に沿って軸方向の深さが変化する複数のカム溝61a,622aが形成されている。カムボール63は、パイロットカム61のカム溝61aとメインカム62のカム溝622aとの間に配置されている。そして、カム機構6は、パイロットカム61がメインカム62に対して相対回転することにより、メインクラッチ10をフロントハウジング21の底部21bに向かって押し付ける軸方向の押圧力を発生する。メインクラッチ10は、カム機構6から押圧力を受けてメインアウタクラッチプレート4とメインインナクラッチプレート5とが摩擦接触し、この摩擦力によって駆動力を伝達する。
電磁クラッチ機構7は、アーマチャ70と、複数のパイロットアウタクラッチプレート71と、複数のパイロットインナクラッチプレート72と、制御装置8からの制御電流が供給される電磁コイル73と、電磁コイル73を支持するヨーク74とを有して構成されている。電磁コイル73は、リヤハウジング22の収容空間22aに収容されている。ヨーク74は、玉軸受25によってリヤハウジング22の第3環状部材223に支持されている。電磁コイル73は、電線731を介して制御装置8から供給される制御電流によって、図2に破線で示す磁路Gに磁束を発生させる。
複数のパイロットアウタクラッチプレート71及び複数のパイロットインナクラッチプレート72は、アーマチャ70とリヤハウジング22との間に、軸方向に沿って交互に配置されている。パイロットアウタクラッチプレート71及びパイロットインナクラッチプレート72には、電磁コイル73の通電により発生する磁束の短絡を防ぐための複数の円弧状のスリットが形成されている。
パイロットアウタクラッチプレート71は、フロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起711を外周端部に有している。パイロットインナクラッチプレート72は、パイロットカム61のスプライン突起611に係合する複数の係合突起721を内周端部に有している。
アーマチャ70は、鉄等の磁性材料からなる環状の部材であり、外周部にはフロントハウジング21の外側スプライン突起211に係合する複数の係合突起701が形成されている。これにより、アーマチャ70は、フロントハウジング21に対して軸方向に移動可能かつ相対回転不能である。
上記のように構成された駆動力伝達装置1は、電磁コイル73に制御電流が供給されることにより発生する磁力によってアーマチャ70がリヤハウジング22側に引き寄せられ、パイロットアウタクラッチプレート71とパイロットインナクラッチプレート72とが摩擦接触する。これにより、制御電流に応じた回転力がパイロットカム61に伝達され、パイロットカム61がメインカム62に対して相対回転し、カムボール63がカム溝61a,622aを転動する。このカムボール63の転動により、メインカム62にメインクラッチ10を軸方向に押圧する押圧力が発生する。
カム機構6は、制御装置8から電磁コイル73に供給される制御電流に応じた押圧力で、メインカム62がメインクラッチ10を押圧する。メインクラッチ10によって伝達されるトルクは、電磁コイル73に供給される制御電流に応じて増減する。すなわち、駆動力伝達装置1は、供給される電流に応じて左右後輪191,192に伝達される駆動力を調節可能である。
ところで、例えば左右前輪181,182のみに駆動力が伝達される2輪駆動状態での発進時又は走行時において左右前輪181,182にスリップが発生したとき、制御装置8は、左右後輪191,192に駆動力を配分して左右前輪181,182のスリップを収束させるべく、制御電流を急激に増大させる。この際、特に潤滑油が低温で粘度が高いと、メインクラッチ10によってハウジング2とインナシャフト3との間で伝達される駆動力が一時的に制御電流に応じた値よりも大きくなり、オーバーシュートしてしまう場合がある。
本実施の形態では、このようなオーバーシュートを抑制すべく、潤滑油の粘性を利用して、ハウジング2とインナシャフト3との間で伝達される駆動力の立ち上がりを緩やかにするようにメインクラッチ10が構成されている。次に、この構成について図3及び図4を参照して詳細に説明する。
図3は、メインインナクラッチプレート5を示し、(a)は軸方向から見た正面図、(b)は(a)のA−A線断面を示す斜視図である。図4は、メインクラッチ10が押圧されたときのメインアウタクラッチプレート4及びメインインナクラッチプレート5の位置関係の変化を示す説明図であり、(a)は押圧前の状態を、(b)は押圧途中の状態を、(c)は押圧された状態を、それぞれ示す。
メインインナクラッチプレート5の摩擦材52には、基材51に向かって窪む凹部520が形成されており、メインアウタクラッチプレート4及びメインインナクラッチプレート5が軸方向に押圧された際には、凹部520に潤滑油が収容された状態で摩擦材52が圧縮される。本実施の形態では、凹部520が基材51の周方向に沿って環状に形成されている。凹部520は、例えば研削によって摩擦材52の一部を削り取ることによって形成することができる。
凹部520は、メインインナクラッチプレート5の軸方向に対して垂直な断面における形状が略三角形状であり、基材51の径方向に対して傾斜した外側及び内側の傾斜面520a,520bを内面に有している。外側の傾斜面520aは、凹部520の最深部520cよりも径方向外側に形成され、内側の傾斜面520bは、凹部520の最深部520cよりも径方向内側に形成されている。また、摩擦材52は、凹部520の径方向外側に外側平面52aを有し、凹部520の径方向内側に内側平面52bを有している。外側平面52a及び内側平面52bは、軸方向に対して垂直な環状の平坦面である。
図4(a)は、摩擦材52の外側平面52a及び内側平面52bとメインアウタクラッチプレート4の摩擦面4aとが非接触である状態を示している。この状態では、摩擦材52と摩擦面4aとの接触によるトルク伝達はなされず、メインアウタクラッチプレート4とメインインナクラッチプレート5との間では潤滑油の粘性による引き摺りトルクのみが伝達される。メインアウタクラッチプレート4の摩擦面4aは、溝や窪みのない平坦面である。
図4(b)では、メインクラッチ10が押圧されて摩擦材52の外側平面52a及び内側平面52bとメインアウタクラッチプレート4の摩擦面4aとが接したときの状態を示している。この状態では、潤滑油が凹部520内に閉じ込められ、ハウジング2とインナシャフト3との相対回転に応じて摩擦材52の外側平面52a及び内側平面52bが摩擦面4aを摺動する。
図4(b)に示す状態からさらにメインクラッチ10が押圧されると、図4(c)に示すように摩擦材52が弾性変形して凹部520の容積が小さくなり、凹部520に収容されていた潤滑油が摩擦材52の繊維の隙間などから排出される。この際、凹部520に収容されていた潤滑油の粘性抵抗により、メインアウタクラッチプレート4の摩擦面4aとメインインナクラッチプレート5の基材51との間隔が狭くなる速度を抑制するダンパ効果が発揮される。このダンパ効果は、潤滑油の温度が低いほど、すなわち潤滑油の粘性が高いほど大きくなる。また、摩擦材52が圧縮されるにつれて、傾斜面520a,520bのうち摩擦面4aに接触する面積が増大する。つまり、メインクラッチ10に作用する押圧力の増大に応じて、摩擦材52と摩擦面4aとの接触面積が徐々に拡大する。
図5は、潤滑油の温度が−30℃の場合において、ハウジング2とインナシャフト3との相対回転速度、及びハウジング2とインナシャフト3との間の伝達トルクの時間的な変化の一例を示すグラフである。このグラフでは、本実施の形態に係る駆動力伝達装置1を用いた場合と、メインインナクラッチプレート5の摩擦材52に凹部520が形成されていない従来の駆動力伝達装置を用いた場合とについて、伝達トルクの時間的な変化を示している。
ハウジング2とインナシャフト3との相対回転速度が大きくなると、制御装置8が制御電流を大きくし、メインクラッチ10が押圧されて伝達トルクが増大する。そして、伝達トルクの増大に応じて相対回転速度が低下すると、制御電流が小さくなって伝達トルクが減少する。従来品の場合には、伝達トルクの立ち上がり時において、図5におけるB部のように伝達トルクがオーバーシュートするが、本実施の形態に係る駆動力伝達装置1では、このようなオーバーシュートが抑制されている。
(実施の形態の効果)
以上説明した実施の形態によれば、メインクラッチ10が押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することができる。これにより、例えばプロペラシャフト14やリヤディファレンシャル15及び後輪側のドライブシャフト171,172等の駆動力の伝達経路における部材の強度を駆動力のオーバーシュートを見込んだ強度にした場合に比較して、これら各部材の小型軽量化を図ることが可能となる。
以上説明した実施の形態によれば、メインクラッチ10が押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することができる。これにより、例えばプロペラシャフト14やリヤディファレンシャル15及び後輪側のドライブシャフト171,172等の駆動力の伝達経路における部材の強度を駆動力のオーバーシュートを見込んだ強度にした場合に比較して、これら各部材の小型軽量化を図ることが可能となる。
[変形例]
図6は、変形例に係るメインインナクラッチプレート5Aを示し、(a)は軸方向から見た正面図、(b)は(a)のC−C線断面を示す斜視図である。このメインインナクラッチプレート5Aは、上記の実施の形態と同様に、硬質材からなる平坦な円盤状の基材51と、基材51の両面に貼り付けられた摩擦材52とを有しているが、凹部520が基材51の周方向における複数個所に形成されている構成が上記の実施の形態とは異なっている。
図6は、変形例に係るメインインナクラッチプレート5Aを示し、(a)は軸方向から見た正面図、(b)は(a)のC−C線断面を示す斜視図である。このメインインナクラッチプレート5Aは、上記の実施の形態と同様に、硬質材からなる平坦な円盤状の基材51と、基材51の両面に貼り付けられた摩擦材52とを有しているが、凹部520が基材51の周方向における複数個所に形成されている構成が上記の実施の形態とは異なっている。
変形例に係るメインインナクラッチプレート5Aでは、図6に示すように、凹部520が摩擦材52の12か所に等間隔に形成されている。それぞれの凹部520は、最深部520cよりも径方向外側に形成された外側の傾斜面520aと、最深部520cよりも径方向内側に形成された内側の傾斜面520bとを内面に有している。また、摩擦材52は、凹部520の径方向外側に外側平面52aを有し、凹部520の径方向内側に内側平面52bを有している。隣り合う二つの凹部520の間には、軸方向に対して垂直な平坦面52cが形成されている。
このような変形例によっても、上記の実施の形態と同様に、複数の凹部520に収容された潤滑油の粘性によるダンパ効果により、メインクラッチ10が押圧された際の伝達トルクのオーバーシュートを抑制することができる。
(付記)
以上、本発明を実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、この実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
以上、本発明を実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、この実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、凹部520の径方向外側に外側平面52aが形成され、凹部520の径方向内側に内側平面52bが形成された場合について説明したが、外側平面52a及び内側平面52bはなくともよい。すなわち、凹部520の外側の傾斜面520aが摩擦材52の外周端部に至り、凹部520の内側の傾斜面520bが摩擦材52の内周端部に至っていてもよい。
また、上記の実施の形態では、駆動力伝達装置1をプロペラシャフト14とリヤディファレンシャル15との間に配置した場合について説明したが、駆動力伝達装置1の配置場所はこれに限らない。また、本発明に係る多板クラッチは、車両の駆動力を伝達するものに限らず、様々な用途に用いることが可能である。
10…メインクラッチ(多板クラッチ)
4…メインアウタクラッチプレート(第2のクラッチプレート)
4a…摩擦面
5,5A…メインインナクラッチプレート(第1のクラッチプレート)
51…基材
52…摩擦材
520…凹部
520a,520b…傾斜面
4…メインアウタクラッチプレート(第2のクラッチプレート)
4a…摩擦面
5,5A…メインインナクラッチプレート(第1のクラッチプレート)
51…基材
52…摩擦材
520…凹部
520a,520b…傾斜面
Claims (5)
- 潤滑油によって摩擦摺動が潤滑される複数のクラッチプレートからなる多板クラッチであって、
前記複数のクラッチプレートは、硬質材からなる円盤状の基材の表面に弾性を有する摩擦材を貼り付けてなる第1のクラッチプレートと、前記摩擦材が摺接する摩擦面を有する第2のクラッチプレートとを備え、
前記摩擦材には、前記基材に向かって窪む凹部が形成されており、
前記複数のクラッチプレートが軸方向に押圧された際、前記凹部に前記潤滑油が収容された状態で前記摩擦材が圧縮される、
多板クラッチ。 - 前記凹部は、前記基材の径方向に対して傾斜した傾斜面を内面に有し、前記摩擦材が圧縮されるにつれて前記傾斜面のうち前記摩擦面に接触する面積が増大する、
請求項1に記載の多板クラッチ。 - 前記凹部は、前記基材の周方向に沿って環状に形成されている、
請求項1又は2に記載の多板クラッチ。 - 前記凹部は、前記基材の周方向における複数個所に形成されている、
請求項1又は2に記載の多板クラッチ。 - 前記第2のクラッチプレートは、前記摩擦面が平坦面である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の多板クラッチ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020077743A JP2021173340A (ja) | 2020-04-24 | 2020-04-24 | 多板クラッチ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020077743A JP2021173340A (ja) | 2020-04-24 | 2020-04-24 | 多板クラッチ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021173340A true JP2021173340A (ja) | 2021-11-01 |
Family
ID=78281369
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020077743A Pending JP2021173340A (ja) | 2020-04-24 | 2020-04-24 | 多板クラッチ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021173340A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7553708B2 (ja) | 2020-10-14 | 2024-09-18 | シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー | 摩擦部品 |
-
2020
- 2020-04-24 JP JP2020077743A patent/JP2021173340A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7553708B2 (ja) | 2020-10-14 | 2024-09-18 | シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー | 摩擦部品 |
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