JP2017205057A - 生分解性農業用フィルム - Google Patents
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Abstract
地中部と地表部の境界においても、使用する期間の初期で発生する分解を抑制することによって、長期間に亘って使用が可能であり、使用後は生分解される農業用フィルムを提供すること。
【解決手段】
生分解性を有する農業用フィルムであって、前記農業用フィルムの少なくとも片面に、生分解性樹脂粒子を含有する塗膜層が少なくとも部分的に設けられていることを特徴とする生分解性農業用フィルム。
【選択図】なし
Description
[1]生分解性を有する農業用フィルムであって、
前記農業用フィルムの少なくとも片面に、生分解性樹脂粒子を含有する塗膜層が少なくとも部分的に設けられていることを特徴とする生分解性農業用フィルム。
[2]前記塗膜層が、少なくとも、フィルムを固定するために土を被せた地中部と土を被せない地表部の境界部位となる位置に設けられている、[1]に記載の生分解性農業用フィルム。
[3]前記塗膜層の塗工量は、0.2〜20g/m2であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の生分解性農業用フィルム。
[4]前記生分解性樹脂粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
[5]前記生分解性樹脂粒子が、ポリ乳酸系樹脂粒子であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
[6]前記生分解性農業用フィルムの機械方向(MD)の引裂き強さが30N/mm以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
に関する。
地中部と地表部の境界部位においては、原因は明確となっていないが、特異的に早期に分解される現象が発生する。この早期の分解を抑制するには、生分解性の発生を遅らせる方法があるが、公知に知られている方法で生分解性を長期に持たせる配合とすると、フィルムそのものの物性は脆性の性質を示す方向となり、例えば、農業用のマルチフィルムとして使用する場合には、柔軟性や引裂き性に劣ってしまう。これに対し、生分解性樹脂粒子を含む塗膜層を、地中部と地表部の境界部位となる位置に設けることで、特異的な部位に発生する早期の分解を抑制することができる。
また、該塗膜層は、農業用フィルムの全面に又は部分的に塗布してもよいが、塗膜量が増えると、塗工作業や塗膜量増加により、費用が増加していく点を考慮すると、塗膜層は部分的に塗布するのが好ましく、また、適宜必要な個所に塗膜層を設けることがより好ましい。
このような樹脂粒子の具体例としては、樹脂粒子を含有するエマルションとして入手できるものとして、ミヨシ油脂社製のポリ乳酸樹脂エマルション「ランディPLシリーズ」や第一工業製薬社製「プラセマ」などが挙げられる。
なお、樹脂粒子の平均粒子径は、散乱型粒度分布計で測定した平均粒子径をいう。
本発明に使用できる脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂は、脂肪族ジカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、鎖状脂肪族及び/または脂環式ジオール単位とを含み、芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、5〜60モル%である。
−O−R1−O− (1)
(式中、R1は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
−OC−R2−CO− (2)
(式中、R2は直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
−OC−R3CO− (3)
(式中、R3は2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。)
本発明に使用できる脂肪族ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を含む脂肪族ポリエステル系樹脂やジカルボン酸単位としてアジピン酸単位を含まない脂肪族ポリエステル系樹脂等を使用することができる。
−O−R4−O− (4)
(式中、R4は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のR4が含まれていてもよい。)
−OC−R5−CO− (5)
(式中、R5は2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に二種以上のR5が含まれていてもよい。)
なお、上記式(4)、式(5)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/または2価の脂環式炭化水素基」とは、2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下「鎖状脂肪族及び/または脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
1,4ブタンジオール単位以外のジオール単位としては特に限定されないが、炭素数3〜10個の脂肪族ジオール単位が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール単位が特に好ましい。具体的には1,3−プロパンジオール、1,4−ヘキサンジメタノール等が挙げられる。前記脂肪族ジオール単位を与えるジオール成分は2種類以上を用いることもできる。
また、脂肪族ポリエステル系樹脂はジカルボン酸単位としてアジピン酸を必須成分として含む場合、アジピン酸単位の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0.5〜20モル%であるのが好ましく、1〜15モル%であるのが更に好ましい。
コハク酸単位、アジピン酸単位以外のジカルボン酸単位としては特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸単位が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸単位が特に好ましい。具体的には、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。前記脂肪族ジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
脂肪族オキシカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、0〜30モル%であるのが好ましく、更に0.01〜20モル%であるのが好ましく、特に0.01〜10モル%であるのが好ましい。
このような脂肪族ポリエステル系樹脂の具体例としては、三菱化学社製「GSPla」、昭和電工社製「ビオノーレ」などが挙げられる。
本発明に使用できる乳酸系ポリエステル系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、ラクチドなどのホモポリマーまたはコポリマーなどが使用できる。乳酸系ポリエステル系樹脂は、これらの原料から直接脱水縮合またはラクチドの開環重合などによって製造することができるが、製法は特に限定されない。また、乳酸系ポリエステル系樹脂の性質を損なわない程度に、乳酸以外の他のヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多塩基酸等を共重合してもかまわない。
このような乳酸系ポリエステル系樹脂の具体例としては、Nature Works社製「Ingeo Biopolymer」、浙江海正生物材料社製「REVODE」などが挙げられる。
また、この様にして製造された乳酸系ポリエステル系樹脂を、他の脂肪族ポリエステル系樹脂、または、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂と事前に混合した原料を用いることもできる。
このような乳酸系ポリエステル系樹脂との混合系樹脂の具体例としては、BASFジャパン社製「Ecovio Fブレンド C2224」などが挙げられる。
本発明の生分解性農業用フィルムに使用できる生分解性樹脂は、さらに、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑剤、分散剤や各種界面活性剤、加水分解防止剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤は配合した方が好ましい。
一方、金属原子としては、周期表の1A、2A、2B及び3B族の原子が好ましい。好ましい例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛などが挙げられる。
また、本発明の生分解性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で他の生分解性樹脂及び天然物、例えば、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等や澱粉、セルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末またはこれらの混合物を配合することができる。
生分解性樹脂組成物からフィルムを成形加工する方法は、押出機を用いてTダイにて押出ししたフィルムをキャストロールで冷却固化する押出成形や、インフレーション成形機により成形する方法が適している。
(1) 引裂き性の評価(引裂強さ)
JISK7128−1に準拠した方法で、(株)島津製作所製の引張試験機を用いて、機械の成形方向(MD)のトラウザー引裂法による引裂き試験を行い、試験力と試験片の厚さから次の計算式により算出した。
引裂強さ(N/mm)=試験力(N)/試験片厚さ(mm)
(2)分解性の評価
三重県松阪市の農地にフィルムを幅100cm、長さ300cmに展張し、展張2ヶ月後の地中部と地表部の境界を目視で観察した。
<分解性の評価基準>
◎:破れの発生が見られない、または1cm未満の破れが発生している。
○:1cmより大きく3cm未満の破れが発生している。
△:3cmより大きく5cm未満の破れが発生している。
×:5cm以上の破れが発生している。
・脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂(A):BASF社製 商品名「Ecoflex」
・脂肪族ポリエステル系樹脂(B):三菱化学社製 商品名「GSPla FZ91PN」、
・脂肪族−芳香族ポリエステル系樹脂と乳酸系ポリエステル系樹脂の混合物(C):BASFジャパン社「Ecovio FブレンドC2224」(Ecoflex/PLA:55/45)
・生分解性樹脂粒子(D−1):ミヨシ油脂社製 商品名「ランディ PL−1000」(ポリ乳酸の平均粒子径:5μm)
・生分解性樹脂粒子(D−2):ミヨシ油脂社製 商品名「ランディ PL−3000」(ポリ乳酸の平均粒子径:1μm)
・キトサン(E):大日精化工業社製 商品名「ダイキトサン キトサン溶液A」
・無機充填材(F):タルク(イメリス・スペシャリティーズジャパン社製 商品名「MISTRON850JS」(タルクの平均粒子径:5μm))
<農業用フィルムの作製>
各々表1に記載されている配合により、ペレット状態でドライブレンドし、シリンダ及びダイス温度は脂肪族芳香族−ポリエステル系樹脂の溶融温度+40℃に設定し、モダン社製のインフレーション成形機を用いて、厚み18μmのフィルムを成形した。
<塗膜層の形成>
乾燥後の塗工量が表1及び表2に記載する塗工量となるように、事前に調整した塗布液(樹脂エマルション(D)等)をバーコートにて塗工し、80℃に設定したオーブンで乾燥させて塗膜層を形成した。なお、基材フィルムの表面は、塗工前にコロナ処理を行い、塗膜層の幅は、地中部と地表部の境界線を中心に、左右に50mm(合計幅:100mm)とした。
また、実施例1〜12のいずれも、農地での展張試験において、栽培期間を想定した展張2ヶ月後も地中部と地表部の境界で破損していないことが確認された。
これに対して、本発明で規定する塗膜層を持たない比較例1〜3においては、展張2ヶ月経過時に分解が進行しており、栽培期間中マルチフィルムとして十分な性能を保有しない結果となった。また、比較例4および5は、フィルムの引裂き性が劣るため、展張の作業性に劣る結果となり、比較例6の抗菌剤を塗布したものは、地中部と地表部の境界部位において早期の分解を抑制することができない結果となった。
Claims (6)
- 生分解性を有する農業用フィルムであって、
前記農業用フィルムの少なくとも片面に、生分解性樹脂粒子を含有する塗膜層が少なくとも部分的に設けられていることを特徴とする生分解性農業用フィルム。 - 前記塗膜層が、少なくとも、フィルムを固定するために土を被せた地中部と土を被せない地表部の境界部位となる位置に設けられている、請求項1に記載の生分解性農業用フィルム。
- 前記塗膜層の塗工量は、0.2〜20g/m2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性農業用フィルム。
- 前記生分解性樹脂粒子の平均粒子径は、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
- 前記生分解性樹脂粒子が、ポリ乳酸系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
- 前記生分解性農業用フィルムの機械方向(MD)の引裂き強さが30N/mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生分解性農業用フィルム。
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