上記従来の空気調和装置の運転制御装置では、室内ユニット毎の要求能力の指標値としての要求蒸発温度を演算する際に、室内温度を考慮しながら、できるだけ要求蒸発温度が高くなるようにしている。これにより、圧縮機の運転容量を小さく抑える等のように、室外ユニットを構成する機器の消費エネルギーを小さく抑えることができ、空気調和装置における省エネルギー性が図られている。
しかし、上記従来の空気調和装置の運転制御装置では、室内ユニット毎の要求蒸発温度を演算する際に、室内湿度を考慮していないため、室内空気の除湿が不十分になり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
本発明の課題は、室外ユニットと室内熱交換器を有する複数の室内ユニットとが接続されることによって構成された空気調和装置において、冷房運転時に室内ユニット毎に要求能力の指標値を演算し、これらの指標値に基づいて室外ユニットを構成する機器を制御するのにあたり、快適性を確保しつつ省エネルギー性を図れるようにすることにある。
第1の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、室外ユニットと、室内熱交換器を有する複数の室内ユニットと、が接続されることによって構成された空気調和装置において、複数の室内熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転時に、室内ユニット毎に要求能力の指標値を演算して、室内ユニット毎の要求能力の指標値に基づいて室外ユニットを構成する機器を制御する運転制御装置である。そして、ここでは、空気調和装置の運転制御装置が、室内温度及び除湿のための制限値に基づいて、室内ユニット毎の要求能力の指標値を演算する要求能力演算部を有している。ここで、除湿のための制限値とは、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保するための値である。
ここでは、上記のように、室内ユニット毎の要求能力の指標値の演算を、室内温度に基づいて行うとともに、除湿のための制限値に基づいて行うようにしているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室内空気を十分に除湿することが可能な値を得ることができる。
これにより、ここでは、室内空気の湿度を快適な状態に維持しつつ、室外ユニットを構成する機器の消費エネルギーを小さく抑えることができるようになるため、快適性を確保しつつ省エネルギー性を図ることができる。
第2の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第1の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、要求能力演算部が、第1要求能力演算部と、第2要求能力演算部と、第3要求能力演算部と、を有している。第1要求能力演算部は、室内温度に基づいて第1要求能力指標値を演算する第1要求能力演算を行う。第2要求能力演算部は、除湿のための制限値に基づいて第2要求能力指標値を演算する第2要求能力演算を行う。第3要求能力演算部は、第1要求能力指標値及び第2要求能力指標値のうち室内ユニット毎の要求能力が大きくなるほうを室内ユニット毎の要求能力の指標値として選択する第3要求能力演算を行う。
ここでは、上記のように、室内ユニット毎の要求能力の指標値の演算を、室内温度に基づく第1要求能力指標値及び除湿のための制限値に基づく第2要求能力指標値を別々に演算し、2つの要求能力指標値のうち室内ユニット毎の要求能力が大きくなるほうを選択することによって行うようにしている。このため、ここでは、除湿のための制限値に基づく第2要求能力指標値が選択される場合、及び、室内温度に基づく第1要求能力指標値が選択される場合のいずれにおいても、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室内空気を十分に除湿することが可能な値を得ることができる。
このように、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、第2要求能力指標値が考慮された値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
第3の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第2の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、除湿のための制限値が、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度の上限値として設定される除湿指標上限値である。
ここでは、上記のように、除湿のための制限値として、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度の上限値(=除湿指標上限値)を使用するようにしているため、除湿指標上限値に基づいて演算される第2要求能力指標値として、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度が除湿指標上限値を超えないようにする値を得ることができる。
これにより、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度を室内空気の除湿に適した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
第4の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第3の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、第2要求能力演算部が、室内熱交換器における冷媒の温度も考慮して第2要求能力演算を行う。
室外ユニットと複数の室内ユニットとが接続された空気調和装置では、各室内ユニットと室外ユニットとの間を接続する冷媒管の長さ等の違いに起因して、各室内ユニットから室外ユニットに至るまでの冷媒の圧力損失も室内ユニット毎に異なるものになる。そして、このような室内ユニット毎の圧力損失の違いに応じて、室内ユニット毎に室内熱交換器における冷媒の温度も異なることになる。それにもかかわらず、第2要求能力指標値の演算において、第2要求能力演算部が、室内熱交換器における冷媒の温度を考慮することなく第2要求能力演算を行うと、室内ユニット毎の圧力損失の違いが考慮されない形で第2要求能力指標値が得られてしまうことになる。
そこで、ここでは、上記のように、第2要求能力演算部が、除湿指標上限値とともに室内熱交換器における冷媒の温度も考慮して第2要求能力演算を行うようにしている。このため、ここでは、第2要求能力指標値の演算において、第2要求能力演算部が、室内熱交換器における冷媒の温度を考慮して第2要求能力演算を行うようになる。
これにより、ここでは、各室内ユニットから室外ユニットに至るまでの冷媒の圧力損失の違いが考慮された第2要求能力指標値を室内ユニット毎に演算することができるため、室内ユニット毎の要求能力の指標値をより正確に得ることができる。
第5の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第3又は第4の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、第2要求能力演算部が、ユーザからの指示によって除湿指標上限値を決定する除湿指標決定部をさらに有している。
ここでは、上記のように、ユーザからの指示によって除湿指標上限値を決定するようにしているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度をユーザからの室内空気の除湿要求に適した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度をより快適な状態にすることができる。
このように、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、ユーザからの室内空気の除湿要求が考慮された値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
これにより、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、ユーザからの指示が考慮された値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
第6の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第3又は第4の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、第2要求能力演算部が、室外温度、気象情報及び/又は室内状況に基づいて室内ユニット毎の要求能力における顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比を推定し、この負荷比に基づいて除湿指標上限値を決定する除湿指標決定部をさらに有している。
ここでは、上記のように、室内ユニット毎に要求負荷における顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比を推定して除湿指標上限値を決定するようにしているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、冷房運転時の室内熱交換器における冷媒の温度を推定された負荷比を考慮した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度をより快適な状態にすることができる。
このように、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室外温度、気象情報及び/又は室内状況を顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比として考慮した値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
第7の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第2〜第6の観点のいずれかにかかる空気調和装置の運転制御装置において、第1要求能力演算部が、室内温度と設定室内温度との温度差に基づいて第1要求能力演算を行う。
上記のような第1要求能力演算を行う場合には、室内温度と設定室内温度との温度差の大きさが小さくなるにしたがって、第1要求能力指標値として、室内ユニット毎の要求能力を小さくする方向の値が得られることになる。このため、室内湿度を考慮しなければ、室内ユニット毎の要求能力の指標値としても、室内ユニット毎の要求能力を小さくする方向の値が得られることになり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
しかし、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値の演算において、上記の第2及び第3要求能力演算を行うことによって、第1要求能力指標値とともに第2要求能力指標値も考慮しているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室内湿度を考慮した値を得ることができる。
このように、ここでは、第1要求能力演算において、室内温度と設定室内温度との温度差の大きさが小さくなることで室内ユニット毎の要求能力を小さくする方向の第1要求能力指標値が得られる場合であっても、室内ユニット毎の要求能力の指標値としては、第2及び第3要求能力演算によって、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保できる値を得ることができる。
第8の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第7の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、各室内ユニットが、室内熱交換器に室内空気を送る室内ファンをさらに有しており、第1要求能力演算部が、室内ファンの風量も考慮して第1要求能力演算を行う。
上記のような第1要求能力演算を行う場合には、室内ファンの風量を増加させることができる余裕の程度(風量の増加代)が大きくなるにしたがって、第1要求能力指標値として、室内ユニット毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになる。このため、室内ユニット毎の要求能力の指標値としては、室内ユニット毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
しかし、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値の演算において、上記の第2及び第3要求能力演算を行うことによって、第1要求能力指標値とともに第2要求能力指標値も考慮しているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室内湿度を考慮した値を得ることができる。
このように、ここでは、第1要求能力演算において、室内ファンの風量の増加代に応じて室内ユニット毎の要求能力を小さくする方向の第1要求能力指標値が得られる場合であっても、室内ユニット毎の要求能力の指標値としては、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保できる値を得ることができる。
第9の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置は、第7又は第8の観点にかかる空気調和装置の運転制御装置において、各室内ユニットが、室内熱交換器のガス側端における冷媒の過熱度を調節する室内膨張弁をさらに有しており、第1要求能力演算部が、過熱度も考慮して第1要求能力演算を行う。
上記のような第1要求能力演算を行う場合には、室内熱交換器のガス側端における冷媒の過熱度を低下させることができる余裕の程度(過熱度の低下代)が大きくなるにしたがって、第1要求能力指標値として、室内ユニット毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになる。このため、室内ユニット毎の要求能力の指標値としては、室内ユニット毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
しかし、ここでは、室内ユニット毎の要求能力の指標値の演算において、上記の第2及び第3要求能力演算を行うことによって、第1要求能力指標値とともに第2要求能力指標値も考慮しているため、室内ユニット毎の要求能力の指標値として、室内湿度を考慮した値を得ることができる。
このように、ここでは、第1要求能力演算において、室内熱交換器のガス側端における冷媒の過熱度の低下代に応じて室内ユニット毎の要求能力を小さくする方向の第1要求能力指標値が得られる場合であっても、室内ユニット毎の要求能力の指標値としては、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保できる値を得ることができる。
第10の観点にかかる空気調和装置は、室外ユニットと、室内熱交換器を有する複数の室内ユニットと、第1〜第9の観点のいずれかにかかる空気調和装置の運転制御装置と、を有している。
以上の説明に述べたように、本発明によれば、室外ユニットと室内熱交換器を有する複数の室内ユニットとが接続されることによって構成された空気調和装置において、冷房運転時に室内ユニット毎に要求能力の指標値を演算し、これらの指標値に基づいて室外ユニットを構成する機器を制御するのにあたり、快適性を確保しつつ省エネルギー性を図ることができる。
以下、本発明にかかる空気調和装置の運転制御装置及びそれを備えた空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の運転制御装置及びそれを備えた空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
(1)構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルによって、ビル等の室内の冷房を行う装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、互いが並列に接続された複数(ここでは、2つ)の室内ユニット4a、4bと、室外ユニット2と室内ユニット4a、4bとを接続する液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6と、を有している。そして、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と複数の室内ユニット4a、4bとが液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して接続されることによって構成されている。
<室内ユニット>
室内ユニット4a、4bは、ビル等の室内に設置されている。室内ユニット4a、4bは、上記のように、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
次に、室内ユニット4a、4bの構成について説明する。尚、室内ユニット4aと室内ユニット4bとは同様の構成であるため、ここでは、室内ユニット4aの構成のみ説明し、室内ユニット4bの構成については、それぞれ、室内ユニット4aの各部を示す添え字「a」の代わりに添え字「b」を付して、各部の説明を省略する。
室内ユニット4aは、主として、室内膨張弁41aと、室内熱交換器42aと、を有している。
室内膨張弁41aは、冷房運転時に冷媒を冷凍サイクルにおける低圧まで減圧しながら室内熱交換器42aを流れる冷媒の流量を調節する電動膨張弁であり、液冷媒連絡管5と室内熱交換器42aの液側端との間に接続されている。
室内熱交換器42aは、冷房運転時に冷凍サイクルにおける低圧の冷媒の蒸発器として機能して室内空気を冷却する熱交換器であり、その液側端が室内膨張弁41aに接続され、ガス側端がガス冷媒連絡管6に接続されている。
また、室内ユニット4aは、室内ユニット4a内に室内空気を吸入して、室内熱交換器42aにおいて冷媒と熱交換させた後に、供給空気として室内に供給するための室内ファン43aを有している。すなわち、室内ユニット4aは、室内熱交換器42aを流れる冷媒の加熱源としての室内空気を室内熱交換器42aに送るファンとして、室内ファン43aを有している。室内ファン43aは、室内熱交換器42aに供給する室内空気の風量を所定の風量設定範囲において変更することが可能なファンであり、ここでは、DCファンモータ等からなる室内ファン用モータ44aによって駆動される遠心ファンや多翼ファン等が使用されている。この室内ファン43aでは、リモコン(図示せず)等からの入力によって、風量が最も小さい弱風、風量が最も大きい強風、及び、弱風と強風との中間程度の中風の3種類のファンタップに設定する風量固定モードと、運転状態に応じて弱風から強風までの間で自動的にファンタップを変更する風量自動モードと、が設定できるようになっている。すなわち、ユーザが、「弱風」、「中風」、及び、「強風」のいずれかのファンタップに設定した場合には、設定したファンタップで固定される風量固定モードになり、「自動」に設定した場合には、運転状態に応じて自動的にファンタップが変更される風量自動モードになるのである。尚、ここでは、室内ファン43aのファンタップは、「弱風」、「中風」、及び、「強風」の3段階で切り換えることが可能であるが、3段階に限らずに、4段階以上であってもよい。また、室内ファン43aの風量である室内ファン風量Gaは、室内ファン用モータ44aの回転数によって演算される。室内ファン風量Gaは、室内ファン用モータ44aの回転数による演算に限定されるものではなく、室内ファン用モータ44aの電流値や設定中のファンタップに基づいて演算されてもよい。
また、室内ユニット4aには、各種のセンサが設けられている。具体的には、室内ユニット4aには、室内熱交換器42aの液側端における冷媒の温度(すなわち、冷房運転時の室内熱交換器42aにおける冷媒の温度Tla)を検出する室内熱交液側センサ45aと、室内熱交換器42aのガス側端における冷媒の温度Tgaを検出する室内熱交ガス側センサ46aと、室内ユニット4a内に吸入される室内空気の温度(すなわち、室内温度Tra)を検出する室内温度センサ47aと、が設けられている。
さらに、室内ユニット4aは、室内ユニット4aを構成する各部の動作を制御する室内側制御部40aを有している。そして、室内側制御部40aは、室内ユニット4aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、リモコン(図示せず)との間で制御信号等のやりとりを行ったり、通信線を介して室外ユニット2との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
<室外ユニット>
室外ユニット2は、ビル等の室外に設置されている。室外ユニット2は、上記のように、液冷媒連絡管5及びガス冷媒連絡管6を介して室内ユニット4a、4bに接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
次に、室外ユニット2の構成について説明する。
室外ユニット2は、主として、圧縮機21と、室外熱交換器24と、室外膨張弁25と、を有している。
圧縮機21は、冷凍サイクルにおける低圧の冷媒を高圧になるまで圧縮する機器である。ここでは、圧縮機21として、ロータリ式やスクロール式等の容積式の圧縮要素(図示せず)が圧縮機用モータ22によって回転駆動される密閉式構造の圧縮機が使用されている。また、ここでは、圧縮機用モータ22は、インバータ等により回転数制御が可能になっており、これにより、圧縮機21の容量制御が可能になっている。
室外熱交換器24は、冷房運転時に冷凍サイクルにおける高圧の冷媒の放熱器として機能する熱交換器であり、そのガス側端が圧縮機21の吐出側に接続されており、液側端が室外膨張弁25に接続されている。
室外膨張弁25は、室内ユニット4a、4bに送る冷媒の圧力等を調節する電動膨張弁であり、室外熱交換器24の液側端と液冷媒連絡管5との間に接続されている。
また、室外ユニット2は、室外ユニット2内に室外空気を吸入して、室外熱交換器24において冷媒と熱交換させた後に、室外に排出するための室外ファン26を有している。すなわち、室外ユニット2は、室外熱交換器24を流れる冷媒の冷却源としての室外空気を室外熱交換器24に送るファンとして、室外ファン26を有している。ここでは、室外ファン26として、室外ファン用モータ27によって駆動されるプロペラファン等が使用されている。
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。具体的には、室外ユニット2には、圧縮機21の吸入圧力Ps(すなわち、冷凍サイクルにおける低圧、又は、冷凍サイクルにおける蒸発温度Teの相当飽和圧力)を検出する吸入圧力センサ28と、室外ユニット2内に吸入される室外空気の温度(すなわち、室外温度To)を検出する室外温度センサ29と、が設けられている。
さらに、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部20を有している。そして、室外側制御部20は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4a、4bの室内側制御部40a、40bとの間で通信線を介して制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
このように、空気調和装置1は、室外ユニット2と、室内熱交換器42a、42bを有する複数の室内ユニット4a、4bと、が接続されることによって構成されており、複数の室内熱交換器42a、42bを冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転を行うことができるようになっている。そして、この冷房運転を含む空気調和装置1全体の運転制御は、室内側制御部40a、40bと室外側制御部20とが通信線を介して接続されることによって構成される運転制御装置7によって行われるようになっている。
<運転制御装置>
図2は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の運転制御装置7の概略構成図である。空気調和装置1の運転制御装置7は、室外側制御部20、及び、室内側制御部40a、40bによって構成されており、各種センサ28、29、45a、45b、46a、46b、47a、47bの検出信号を受けることができるように接続されるとともに、これらの検出信号等に基づいて各種機器21、25、26、41a、41b、43a、43a等を制御することができるように接続されている。具体的には、運転制御装置7の室外側制御部20には、センサ28、29及び機器21、25、26が接続されており、運転制御装置7の室内側制御部40aには、センサ45a、46a、47a及び機器41a、43aが接続されており、運転制御装置7の室内側制御部40bには、センサ45b、46b、47b及び機器41b、43bが接続されている。
室内側制御部40aには、後述の冷房運転における省エネルギー制御を行うために、室内ユニット4aの要求能力の指標値ΔTecaを演算する要求能力演算部71aが設けられており、演算された室内ユニット4aの要求能力の指標値ΔTecaを室外側制御部20に送信するようになっている。また、室内側制御部40bにも、後述の冷房運転における省エネルギー制御を行うために、室内ユニット4bの要求能力の指標値ΔTecbを演算する要求能力演算部71bが設けられており、演算された室内ユニット4bの要求能力の指標値ΔTecbを室外側制御部20に送信するようになっている。すなわち、運転制御装置7には、複数の室内熱交換器42a、42bを冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転時に、室内ユニット4a、4b毎に要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbを演算する要求能力演算部71a、71bが設けられている。
室外側制御部20には、後述の冷房運転における省エネルギー制御を行うために、室内側制御部40a、40bから送信された室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて、室外ユニット2を構成する機器を制御する際の目標値となる目標蒸発温度差ΔTesを演算する制御目標値演算部72が設けられている。
(2)動作及び制御
次に、空気調和装置1の動作及び制御について説明する。
空気調和装置1では、運転制御装置7が、下記の冷房運転を行うとともに、リモコン(図示せず)等からの入力によって設定された設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づける室内温度制御を、各室内ユニット4a、4bに対して行うようになっている。この室内温度制御は、室内ファン43a、43bが風量自動モードに設定されている場合には、設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbが収束するように、各室内ファン43a、43bの風量、及び、各室内膨張弁41a、41bの開度が調節されるものである。また、室内ファン43、53、63が風量固定モードに設定されている場合には、設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbが収束するように、各室内膨張弁41a、41bの開度が調節されるものである。尚、ここでいう各室内膨張弁41a、41bの開度の調節とは、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbの調節を行うことである。
<動作(冷房運転)>
空気調和装置1は、冷媒回路10に充填された冷媒が、主として、圧縮機21、室外熱交換器24、室外膨張弁25、液冷媒連絡管5、室内膨張弁41a、41b、室内熱交換器42a、42b、ガス冷媒連絡管6、圧縮機21の順に循環する冷房運転を行う。
この冷房運転において、室外膨張弁25は、所定開度に調節されている。また、各室内膨張弁41a、41bは、対応する室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbが目標過熱度SHta、SHtbになるように開度調節されるようになっている。ここで、目標過熱度SHta、SHtbは、所定の過熱度設定範囲のうちで設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づけるために最適な値に設定される。ここでは、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbは、室内熱交ガス側センサ46a、46bにより検出される冷媒の温度Tga、Tgbから室内熱交液側温度センサ45a、45bによって検出される冷媒の温度Tla、Tlb(冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度)を差し引くことによって得られる。但し、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbは、上記の方法で得るものに限られるものではない。例えば、ここでは採用していないが、各室内熱交換器42a、42bの中間部分における冷媒の温度を検出する温度センサを設ける場合には、室内熱交液側温度センサ45a、45bによって検出される冷媒の温度Tla、Tlbに代えて、この温度センサにより検出される室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度を室内熱交ガス側センサ46a、46bにより検出される冷媒の温度Tga、Tgbから差し引くことによって、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbを得るようにしてもよい。
そして、このような冷媒回路10の状態において、圧縮機21、室外ファン26、及び、室内ファン43a、43bを運転すると、冷媒回路10内の冷媒は、まず、圧縮機21に吸入されて冷凍サイクルにおける低圧から高圧になるまで圧縮された後に吐出される。
圧縮機21から吐出されたガス状態の冷媒は、室外熱交換器24のガス側端に流入する。室外熱交換器24のガス側端に流入した冷媒は、室外熱交換器24において、室外ファン28によって供給される室外空気と熱交換を行って放熱して液状態の冷媒になり、室外熱交換器24の液側端から流出する。
室外熱交換器24の液側端から流出した冷媒は、室外膨張弁25及び液冷媒連絡管5を通じて、室内ユニット4a、4bに送られる。
室内ユニット4a、4bに送られた冷媒は、室内膨張弁41a、41bによって冷凍サイクルにおける低圧付近まで減圧される。
室内膨張弁41a、41bによって減圧された後の冷媒は、室内熱交換器42a、42bの液側端に流入する。室内熱交換器42a、42bの液側端に流入した冷媒は、室内熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン43a、43bによって供給される室内空気と熱交換を行って蒸発してガス状態の冷媒になり、室内熱交換器42a、42bのガス側端から流出する。また、室内熱交換器42a、42bにおいて冷媒との熱交換によって冷却された室内空気は、室内に供給されて室内の冷房が行われる。
室内熱交換器42a、42bのガス側端から流出した冷媒は、ガス冷媒連絡管6を通じて、室外ユニット2に送られる。
室外ユニット2に送られた冷媒は、再び、圧縮機21に吸入される。
<省エネルギー制御>
空気調和装置1では、上記の冷房運転において、運転制御装置7が、省エネルギー制御を行うようになっている。以下、冷房運転における省エネルギー制御について、図1〜図4を用いて説明する。ここで、図3は、冷房運転における省エネルギー制御のフローチャートであり、図4は、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbを演算する処理のフローチャートである。尚、図4においては、室内ユニット4a、4bを区別するために各種値に付されている添字「a」や「b」を省略している。
冷房運転における省エネルギー制御は、複数の室内熱交換器42a、42bを冷媒の蒸発器として機能させる冷房運転時に、ステップST1a、ST1b、ST2、ST3の処理によって、室内ユニット4a、4b毎に要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbを演算して、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて室外ユニット2を構成する機器を制御するものである。
ここでは、運転制御装置7の要求能力演算部71a、71bが、ステップST1a、ST1bにおいて、室内ユニット4a、4b毎に要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算を行う。このステップST1a、ST1bの室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算は、室内温度Tra、Trb及び除湿のための制限値Thxa、Thxbに基づいて、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbを演算する処理であり、具体的には、第1要求能力演算、第2要求能力演算、及び、第3要求能力演算という3つの処理によって構成されている。そして、運転制御装置7の制御目標値演算部72が、ステップST2において、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて、室外ユニット2を構成する機器としての圧縮機21の制御目標値である目標蒸発温度差ΔTesを演算し、ステップST3において、目標蒸発温度差ΔTesに基づいて圧縮機21の運転容量を制御する。
−第1要求能力演算−
第1要求能力演算は、室内温度Tra、Trbに基づいて第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bを演算する処理(ステップST11〜ST15)であり、要求能力演算部71a、71bの一部を構成する第1要求能力演算部81a、81bによって行われる。具体的には、以下のようにして、第1要求能力演算が行われる。
まず、ステップST11において、各第1要求能力演算部81a、81bが、その時点における、各室内温度Tra、Trbと室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbとの温度差である温度差ΔTera、ΔTerb、各室内ファン43a、43bによる室内ファン風量Ga、Gb、及び、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbに基づいて、各室内ユニット4a、4bにおける空調能力Q1a、Q1bを演算する。ここでは、空調能力Q1a、Q1bが、温度差ΔTera、ΔTerb、風量Ga、Gb、及び、過熱度SHa、SHbの関数式として準備されており、この関数式を用いて、空調能力Q1a、Q1bが演算される。
次に、ステップST12において、各第1要求能力演算部81a、81bが、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbに基づいて、空調能力の偏差ΔQ1a、Q1bを演算し、空調能力Q1a、Q1bに加えることによって、室内ユニット4a、4b毎の要求能力Q2a、Q2bを演算する。ここでは、空調能力の偏差ΔQ1a、Q1bが、温度差ΔTra、ΔTrbの関数式として準備されており、この関数式を用いて、空調能力の偏差ΔQ1a、Q1bが演算される。このとき、各室内ユニット4a、4bにおいては、上記のように、室内ファン43a、43bが風量自動モードに設定されている場合には、室内ユニット4a、4b毎の要求能力Q2a、Q2bに基づいて、設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbが収束するように、各室内ファン43a、43bの風量、及び、各室内膨張弁41a、41bの開度を調節する室内温度制御が行われている。また、室内ファン43a、43bが風量固定モードに設定されている場合には、室内ユニット4a、4b毎の要求能力Q2a、Q2bに基づいて、設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbが収束するように、各室内膨張弁41a、41bの開度を調節する室内温度制御が行われている。このような室内温度制御によって、各室内ユニット4a、4bにおける空調能力は、空調能力Q1a、Q1bから要求能力Q2a、Q2bに近づくように変化することになる。
次に、ステップST13において、各第1要求能力演算部81a、81bが、各室内ファン43a、43bの風量設定モードが風量自動モードになっているか風量固定モードになっているかを判定する。各室内ファン43a、43bの風量設定モードが風量自動モードになっている場合には、ステップST14の処理に移行し、風量固定モードになっている場合には、ステップST15の処理に移行する。
ステップST14においては、各第1要求能力演算部81a、81bが、室内ユニット4a、4b毎の要求能力Q2a、Q2b、各室内ファン43a、43bの風量設定範囲のうちで設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づけるために最適な風量Gma、Gmb、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度の過熱度設定範囲のうちで設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づけるために最適な過熱度SHma、SHmb、及び、各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbに基づいて、各室内ユニット4a、4bについての第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bを演算する。ここでは、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bが、要求能力Q2a、Q2b、風量Gma、Gmb、過熱度SHma、SHmb、及び、各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbの関数式として準備されており、この関数式を用いて第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bが演算される。ここで、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bは、後述のステップST2において演算される目標蒸発温度差ΔTesと同様に、蒸発温度の増減の方向及び大きさを示す温度値としている。また、最適な風量Gma、Gmbとしては、現在の各室内ファン43a、43bの室内ファン風量Ga、Gbに対して風量を増加させることができる余裕の程度(風量の増加代ΔGa、ΔGb)を大きくできる値が好ましく、例えば、風量設定範囲の最大値である「強風」における風量Gxa、Gxbがある。また、最適な過熱度SHma、SHmbとしては、現在の各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbに対して冷媒の過熱度を低下させることができる余裕の程度(過熱度の低下代ΔSHa、ΔSHb)を大きくできる値が好ましく、例えば、過熱度設定範囲の最小値である過熱度SHia、SHibがある。
ステップST15においても、ステップST14と同様に、各第1要求能力演算部81a、81bが、室内ユニット4a、4b毎の要求能力Q2a、Q2b、各室内ファン43a、43bの風量設定範囲のうちで設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づけるために最適な風量Gma、Gmb、各室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度の過熱度設定範囲のうちで設定室内温度Trsa、Trsbに室内温度Tra、Trbを近づけるために最適な過熱度SHma、SHmb、及び、各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbに基づいて、各室内ユニット4a、4bについての第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bを演算する。但し、ここでは、各室内ファン43a、43bの風量設定モードが風量固定モードになっているため、現在設定されている室内ファン風量Ga、Gbが、最適な風量Gma、Gmbとなる。
−第2要求能力演算−
第2要求能力演算は、除湿のための制限値Thxa、Thxbに基づいて第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを演算する処理(ステップST16)であり、要求能力演算部71a、71bの一部を構成する第2要求能力演算部82a、82bによって行われる。具体的には、以下のようにして第2要求能力演算が行われる。
ステップST16において、各第2要求能力演算部82a、82bが、除湿のための制限値Thxa、Thxb、及び、各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbに基づいて、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを演算する。ここで、除湿のための制限値Thxa、Thxbとは、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保するための値であり、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbの上限値として設定される除湿指標上限値を採用している。ここで、除湿指標上限値Thxa、Thxbは、最小限の除湿が行えるようにするための所定値に設定されている。そして、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bは、除湿のための制限値としての除湿指標上限値Thxa、Thxbから各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを差し引くことによって演算される。この第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bも、後述のステップST2において演算される目標蒸発温度差ΔTesと同様に、蒸発温度の増減の方向及び大きさを示す温度値となっている。
−第3要求能力演算−
第3要求能力演算は、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1b及び第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bのうち室内ユニット4a、4b毎の要求能力が大きくなるほうを室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして選択する処理(ステップST17)であり、要求能力演算部71a、71bの一部を構成する第2要求能力演算部83a、83bによって行われる。具体的には、以下のようにして第3要求能力演算が行われる。
ステップST17において、各第3要求能力演算部83a、83bが、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bと第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bとを比較して、その値が小さいほうを室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして選択する。なぜなら、要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1b、ΔTec2a、ΔTec2bは、後述のステップST3において圧縮機21の運転容量の制御に使用される目標蒸発温度差ΔTesと同様に、蒸発温度の増減の方向及び大きさを示す温度値であり、これらの値が小さいほど、冷凍サイクルにおける蒸発温度Teを小さくするために、圧縮機21の運転容量が大きくなる方向に制御することが必要になるからである。そして、演算された室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbは、室内側制御部40a、40bから室外側制御部20に送信される。
−制御目標値演算、室外ユニットを構成する機器の制御−
制御目標値演算は、ステップST2において、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて、室外ユニット2を構成する機器としての圧縮機21の制御目標値である目標蒸発温度差ΔTesを演算する処理であり、制御目標値演算部73によって行われる。また、室外ユニット2を構成する機器の制御は、ステップST3において、目標蒸発温度差ΔTesに基づいて、圧縮機21の運転容量を制御する処理である。具体的には、以下のようにして制御目標値演算及び圧縮機21の運転容量の制御が行われる。
まず、ステップST2において、制御目標値演算部73が、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbのうちで要求能力が大きくなるほうを目標蒸発温度差ΔTesとして選択する。具体的には、制御目標値演算部73が、室内ユニット4aの要求能力の指標値ΔTecaと室内ユニット4bの要求能力の指標値ΔTecbとを比較して、その値が小さいほうを目標蒸発温度差ΔTesとして選択する。
次に、ステップST3において、目標蒸発温度差ΔTecに応じて圧縮機21の運転容量を制御する。すなわち、目標蒸発温度差ΔTecが正値であれば、その大きさに応じて決まる分だけ圧縮機21の運転容量を小さくする制御を行い、目標蒸発温度差ΔTecが負値であれば、その大きさに応じて決まる分だけ圧縮機21の運転容量を大きくする制御を行う。このように、目標蒸発温度差ΔTecに基づいて圧縮機21の運転容量が制御される結果として、室外ユニット4a、4bのうち目標蒸発温度差ΔTesとして採用された室内ユニット(4a又は4b)においては、室内ファン(43a又は43b)が風量自動モードに設定されている場合には、その風量(Ga又はGb)が、設定室内温度(Trsa又はTrsb)に室内温度(Tra又はTrb)を近づけるために最適な風量(Gma又はGmb)になるように調節される。また、室外ユニット4a、4bのうち目標蒸発温度差ΔTesとして採用された室内ユニット(4a又は4b)においては、室内熱交換器(42a又は42b)のガス側端における冷媒の過熱度(SHa、SHb)が、設定室内温度(Trsa又はTrsb)に室内温度(Tra又はTrb)を近づけるために最適な過熱度(SHma、SHmb)になるように室内膨張弁(41a又は41b)の開度も調節されることになる。
尚、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて目標蒸発温度差ΔTesを演算し、演算された目標蒸発温度差ΔTesに基づいて圧縮機21の運転容量を制御しているが、これに限定されるものではなく、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbに基づいて目標蒸発温度Tesを演算し、演算された目標蒸発温度Tesに基づいて圧縮機21の運転容量を制御してもよい。すなわち、冷凍サイクルにおける蒸発温度Te(ここでは、圧縮機21の吸入圧力Psの相当飽和温度)が目標蒸発温度Tesに近づくように、圧縮機21の運転容量を制御してもよい。
(3)省エネルギー制御の特徴
次に、上記の省エネルギー制御の特徴について説明する。
<A>
上記の省エネルギー制御では、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算を、室内温度Tra、Trbに基づいて行うとともに、除湿のための制限値Thxa、Thxbに基づいて行うようにしている。ここで、除湿のための制限値Thxa、Thxbとは、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保するための値である。このため、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、室内空気を十分に除湿することが可能な値を得ることができる。
これにより、ここでは、室内空気の湿度を快適な状態に維持しつつ、室外ユニット2を構成する機器としての圧縮機21の運転容量を小さく抑えることで、消費エネルギー(消費動力)を小さく抑えることができるようになるため、快適性を確保しつつ省エネルギー性を図ることができる。また、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算にあたり、除湿のための制限値Thxa、Thxbという湿度センサによる検知を要しない値によって室内空気の湿度を考慮するようにしているため、湿度センサを設置して室内空気の湿度を考慮する場合に比べて、コストアップを抑えることができる。
<B>
上記の省エネルギー制御では、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算を、室内温度Tra、Trbに基づく第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1b及び除湿のための制限値Thxa、Thxbに基づく第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを別々に演算し、2つの要求能力指標値のうち室内ユニット4a、4b毎の要求能力が大きくなるほうを選択することによって行うようにしている。このため、ここでは、除湿のための制限値Thxa、Thxbに基づく第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bが選択される場合、及び、室内温度Tra、Trbに基づく第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bが選択される場合のいずれにおいても、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、室内空気を十分に除湿することが可能な値を得ることができる。
このように、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bが考慮された値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
<C>
上記の省エネルギー制御では、室内温度Tra、Trbに基づく第1要求能力演算において、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbを考慮するようにしている。この場合には、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbの大きさが小さくなるにしたがって、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bとして、室内ユニット4a、4b毎の要求能力を小さくする方向の値が得られることになる。このため、室内湿度を考慮しなければ、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとしても、室内ユニット4a、4b毎の要求能力を小さくする方向の値が得られることになり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
しかし、ここでは、上記のように、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値Trsa、Trsbの演算において、上記の第2及び第3要求能力演算を行うことによって、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bとともに第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bも考慮しているため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値とΔTeca、ΔTecbして、室内湿度を考慮した値を得ることができる。
このように、ここでは、第1要求能力演算において、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbの大きさが小さくなることで室内ユニット4a、4b毎の要求能力を小さくする方向の第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bが得られる場合であっても、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとしては、第2及び第3要求能力演算によって、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保できる値を得ることができる。
また、上記の省エネルギー制御では、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbに基づく第1要求能力演算において、室内ファン43a、43bの風量Ga、Gbも考慮するようにしている。この場合には、室内ファンの風量Ga、Gbを増加させることができる余裕の程度(風量Ga、Gbの増加代)が大きくなるにしたがって、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bとして、室内ユニット4a、4b毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになる。また、上記の省エネルギー制御では、室内温度Tra、Trbと設定室内温度Trsa、Trsbとの温度差ΔTra、ΔTrbに基づく第1要求能力演算において、室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbも考慮するようにしている。この場合には、室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbを低下させることができる余裕の程度(過熱度SHa、SHbの低下代)が大きくなるにしたがって、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bとして、室内ユニット4a、4b毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになる。このため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとしては、室内ユニット4a、4b毎の要求能力をさらに小さくする方向の値が得られることになり、省エネルギー性と引き換えに快適性が損なわれるおそれがある。
しかし、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算において、上記の第2及び第3要求能力演算を行うことによって、第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bとともに第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bも考慮しているため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、室内湿度を考慮した値を得ることができる。
このように、ここでは、第1要求能力演算において、室内ファン43a、43bの風量Ga、Gbの増加代や室内熱交換器42a、42bのガス側端における冷媒の過熱度SHa、SHbの低下代に応じて室内ユニット4a、4b毎の要求能力を小さくする方向の第1要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1bが得られる場合であっても、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとしては、室内空気の除湿を行うための要求能力を確保できる値を得ることができる。
<D>
上記の省エネルギー制御では、除湿のための制限値Thxa、Thxbとして、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度の上限値(=除湿指標上限値)を使用するようにしているため、除湿指標上限値Thxa、Thxbに基づいて演算される第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bとして、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbが除湿指標上限値Thxa、Thxbを超えないようにする値を得ることができる。
これにより、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを室内空気の除湿に適した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
<E>
室外ユニット2と複数の室内ユニット4a、4bとが接続された空気調和装置1では、各室内ユニット4a、4bと室外ユニット2との間を接続する冷媒管の長さ等の違いに起因して、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失も室内ユニット4a、4b毎に異なるものになる。ここでは、各室内ユニット4a、4bのガス側端がガス冷媒連絡管6の分岐管62a、62bにそれぞれ接続され、分岐管62a、62bがガス冷媒連絡管6の母管61に合流して室外ユニット2のガス側端に接続されており、室内熱交換器42a、42bのガス側端には冷媒の圧力を調節する機構が接続されていない(図1参照)。このため、室内ユニット4a側の分岐管62aと室内ユニット4b側の分岐管62bとの長さや形状等の違いによって、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失が室内ユニット4a、4b毎に異なるのである。そして、このような室内ユニット4a、4b毎の圧力損失の違いに応じて、室内ユニット4a、4b毎に室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbも異なることになる。例えば、室内ユニット4aから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失のほうが室内ユニット4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失よりも大きい場合には、その圧力損失差に応じて室内ユニット4aにおける冷媒の温度Tlaのほうが室内ユニット4bにおける冷媒の温度Tlbよりも高くなるということである。それにもかかわらず、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bの演算において、第2要求能力演算部82a、82bが、室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを考慮することなく第2要求能力演算を行うと、室内ユニット4a、4b毎の圧力損失の違いが考慮されない形で第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bが得られてしまうことになる。
そこで、上記の省エネルギー制御では、第2要求能力演算部82a、82bが、除湿指標上限値Thxa、Thxbとともに室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbも考慮して第2要求能力演算を行うようにしている。このため、ここでは、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bの演算において、第2要求能力演算部82a、82bが、室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを考慮して第2要求能力演算を行うようになる。
これにより、ここでは、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失の違いが考慮された第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを室内ユニット4a、4b毎に演算することができるため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbをより正確に得ることができる。
尚、室内ユニット4a側の分岐管62aと室内ユニット4b側の分岐管62bとの長さや形状等の違いが小さい場合のように、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失差が小さく、室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbの差も小さい場合には、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失の違いを実質的に考慮する必要がない。このような場合には、第2要求能力演算の際に、各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbに代えて、圧縮機21の運転容量の制御に使用される目標蒸発温度Tesを使用してもよい。
また、各室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に至るまでの冷媒の圧力損失の違いを考慮する場合であっても、第2要求能力演算は、除湿指標上限値Thxa、Thxbから各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを差し引くことによって第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを演算するものに限定されるものではない。例えば、除湿指標上限値Thxa、Thxbから目標蒸発温度Tesを差し引き、この演算で得られた値に対して各室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbによる補正を施すことによって、第2要求能力指標値ΔTec2a、ΔTec2bを演算するようにしてもよい。
(4)変形例
<A>
上記実施形態では、省エネルギー制御における第2要求能力演算(ステップST16)に使用される除湿指標上限値Thxa、Thxbが所定値に固定設定されているが、これに限定されるものではなく、ユーザからの除湿の要求指示に応じて除湿指標上限値Thxa、Thxbを可変できるようにしてもよい。
例えば、リモコン(図示せず)等からの入力によって冷房運転における除湿の程度の強弱を選択できるようにしておく。そして、図5に示すように、第2要求能力演算部82a、82bにユーザからの指示によって除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定する除湿指標決定部84a、84bを設けておき、選択された除湿の程度の強弱に応じて除湿指標上限値Thxa、Thxbを変更して、第2要求能力演算を行うようにすればよい。ここで、「強」、「中」、「弱」の3種類の除湿の程度のいずれかを選択できるように構成する場合には、「強」を選択すると、除湿能力を大きくするために、除湿指標上限値Thxa、Thxbを3種類のうちで最も低い値に変更し、「弱」を選択すると、除湿能力を小さくするために、除湿指標上限値Thxa、Thxbを3種類のうちで最も高い値に変更し、「中」を選択すると、除湿指標上限値Thxa、Thxbを3種類の中間の値に変更する。また、このとき、除湿指標上限値Thxa、Thxbを設定室内温度Trsa、Trsbに依存した値に変更してもよい。
この省エネルギー制御では、ユーザからの指示によって除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定するようにしているため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、TLbをユーザからの室内空気の除湿要求に適した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度をより快適な状態にすることができる。
このように、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、ユーザからの除湿要求が考慮された値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
<B>
上記実施形態では、省エネルギー制御における第2要求能力演算(ステップST16)に使用される除湿指標上限値Thxa、Thxbが所定値に固定設定されており、また、上記変形例Aでは、ユーザからの指示によって除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定しているが、これらに限定されるものではない。
例えば、室外温度To、気象情報及び/又は室内状況に基づいて室内ユニット4a、4b毎の要求能力における顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比SHFを推定し、この負荷比SHFに基づいて除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定するようにしてもよい。具体的には、図5に示すように、除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定する除湿指標決定84a、84bを設けておく。そして、除湿指標決定部84a、84bにおいて、以下に説明するように、除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定する。具体的には、図6に示すように、乾球温度としての室内温度Tra、Trb及び確保すべき湿球温度Twa、Twbから空気線図上における状態(図6の点A参照)を設定する。また、室外温度Ta、気象情報及び/又は室内状況に基づいて室内ユニット4a、4b毎の要求能力における顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比SHF(=顕熱負荷/潜熱負荷)を推定する。負荷比SHFは空気線図上の傾きに相当するため、図6において、点Aを通り、かつ、傾きを負荷比SHFとする直線Lを引くと、飽和線と交差する点Bにおける乾球温度の値が除湿指標上限値Thxa、Thxbになる。そして、このようにして演算された除湿指標上限値Thxa、Thxbを用いて、第2要求能力演算を行うようにすればよい。
この省エネルギー制御では、室内ユニット4a、4b毎に要求負荷における顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比SHFを推定して除湿指標上限値Thxa、Thxbを決定するようにしているため、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、冷房運転時の室内熱交換器42a、42bにおける冷媒の温度Tla、Tlbを推定された負荷比SHFを考慮した温度以下にすることが可能な値が得られることになり、室内空気の湿度をより快適な状態にすることができる。
このように、ここでは、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbとして、室外温度To、気象情報及び/又は室内状況を顕熱負荷と潜熱負荷との負荷比SHFとして考慮した値が得られることになり、室内空気の湿度を快適な状態に維持することができる。
<C>
上記実施形態及び変形例A、Bでは、第1及び第2要求能力指標値ΔTec1a、ΔTec1b、ΔTec2a、ΔTec2b、及び、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbを、圧縮機21の運転容量の制御目標値である目標蒸発温度差ΔTesと同様に、蒸発温度Teの増減の方向及び大きさを示す温度値としているが、これに限定されるものではなく、他の値であってもよい。
<D>
上記実施形態及び変形例A〜Cでは、室内側制御部40a、40bに空調能力演算部71a、71bを設けて、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算を行うようにしているが、これに限定されるものではなく、室外側制御部20に空調能力演算部71a、71bを設けて、室内ユニット4a、4b毎の要求能力の指標値ΔTeca、ΔTecbの演算を行うようにしてもよい。
<E>
上記実施形態及び変形例A〜Dでは、室内温度センサ47a、47bが室内ユニット4a、4bに設けられているが、これに限定されるものではなく、室内ユニット4a、4b用のリモコン(図示せず)等に設けられていてもよい。
<F>
上記実施形態及び変形例A〜Eでは、冷房運転を行う空気調和装置1を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではなく、冷媒回路内の冷媒の流れを切り換えるための四路切換弁等を有する冷房運転と暖房運転との切り換えが可能な空気調和装置であってもよい。