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JP2016121427A - 不織布及び不織布の製造方法 - Google Patents

不織布及び不織布の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、熱膨張性粒子を含む嵩高不織布に関し、熱膨張性粒子の脱落が起こり難く、強度、特に湿潤時の引張強度及び摩擦堅牢度が改良された嵩高不織布及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明の嵩高不織布の製造方法は、第1の面及び該第1の面と相反する第2の面を有する不織繊維シートであって、膨張した熱膨張性粒子と繊維とを含み且つ前記第1の面を構成する嵩高不織繊維層を含む前記不織繊維シートを準備する工程Aと、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面を熱ロール又は熱エンボスロールにより加熱し、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を溶融させる工程Bと、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、嵩高不織布及びその製造方法に関する。
近年、ワイプスや吸収性物品などに用いられる不織布として、膨張した熱膨張性粒子を含むパルプ繊維層を備えた、嵩高不織布が検討されている。そのような嵩高不織布として、特許文献1には、複数の溝部を有し且つ繊維を含む第1の層を一方の面に備え、膨張した熱膨張性粒子と繊維とを含む第2の層を他方の面に備えた不織布が提案されている。
この特許文献1に開示された不織布は、前記第1の層を設けることによって不織布の乾燥引張強度及び湿潤引張強度、並びに摩擦堅牢度を高くし、また、熱膨張性粒子を含む前記第2の層を設けることによって不織布の嵩を高くしたものである。
特開2013−209767号公報
しかしながら、熱膨張性粒子を含む従来の嵩高不織布は、熱膨張性粒子が繊維層中に分散しているのみで固定されていないため、このような不織布をワイプスや吸収性物品などに適用すると、使用時の振動等により熱膨張性粒子が不織布から脱落してしまう虞があった。さらに、熱膨張性粒子を含む従来の嵩高不織布は、強度、特に湿潤時の引張強度及び摩擦堅牢度の点で、依然として改良の余地があった。
そこで、本発明は、熱膨張性粒子を含む嵩高不織布に関し、熱膨張性粒子の脱落が起こり難く、強度、特に湿潤時の引張強度及び摩擦堅牢度が改良された嵩高不織布及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の嵩高不織布の製造方法は、第1の面及び該第1の面と相反する第2の面を有する不織繊維シートであって、膨張した熱膨張性粒子と繊維とを含み且つ前記第1の面を構成する嵩高不織繊維層を含む前記不織繊維シートを準備する工程Aと、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面を熱ロール又は熱エンボスロールにより加熱し、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を溶融させる工程Bと、を含む。
本発明の嵩高不織布の製造方法は、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面を熱ロール又は熱エンボスロールにより加熱し、前記不織繊維シートの第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を優先的に加熱して溶融させることで、該熱膨張性粒子の溶融物が、繊維間に少なくとも部分的に充填されて繊維同士を結合し、前記不織繊維シートの内部に存在する前記熱膨張性粒子が前記不織繊維シートの外部へ脱落するのを防止し且つ前記不織繊維シートの表層部の強度を向上させる補強被膜として機能するため、前記工程B以降の工程や嵩高不織布を各種製品へ加工する工程、嵩高不織布を用いた製品を使用するときなどに振動が付与されても、嵩高不織布の内部に存在する熱膨張性粒子が脱落し難く、また、引張強度(特に湿潤時の引張強度)や摩擦堅牢度等の表面強度の優れた嵩高不織布を得ることができる。
そして、本発明の製造方法においては、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面を熱ロール又は熱エンボスロールにより加熱するため、当該熱ロール又は熱エンボスロールが、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面の表面に対して、一定時間以上、均一に接触して熱を加え、上述の不織繊維シートの表層部に位置する前記熱膨張性粒子を優先的に加熱して溶融させることができる。したがって、前記熱膨張性粒子の溶融物によって奏される上述の作用効果をより確実に得ることができる。
本発明の嵩高不織布の製造方法によれば、熱膨張性粒子の脱落が起こり難く、強度、特に湿潤時の引張強度及び摩擦堅牢度が改良された嵩高不織布を得ることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の概略図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法によって得られた嵩高不織布の断面模式図である。 図3は、本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用する不織布製造装置の概略図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法によって得られた嵩高不織布の断面模式図である。 図5(a)は、本発明の実施例に係る嵩高不織布の断面の電子顕微鏡写真であり、図5(b)は、本発明の実施例に係る嵩高不織布の第1の面(熱処理をした面)の電子顕微鏡写真である。 図6(a)は、本発明の比較例に係る嵩高不織布の断面の電子顕微鏡写真であり、図6(b)は、本発明の比較例に係る嵩高不織布の第1の面(実施例1の熱処理をした面に相当する面)の電子顕微鏡写真である。
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用する不織布製造装置1の概略図である。
図1に示すように、不織布製造装置1は、初期ウェブ61を形成するための原料供給ヘッド11、第1の搬送コンベア12及び第2の搬送コンベア13を有するウェブ形成部10と、前記初期ウェブ61を脱水するためのプレス脱水部14と、脱水後ウェブ62を乾燥するためのヤンキードライヤ等の乾燥ロール21を有する乾燥部20と、乾燥後ウェブ63(すなわち、混抄シート)中に分散した熱膨張性粒子を高温処理により膨張させるための蒸気ノズルを備えた高温高圧水蒸気供給装置31及び前記高温高圧水蒸気供給装置31から供給された水蒸気を吸引するサクションドラムを備えた高温高圧水蒸気吸引装置32を有する高温処理部30と、高温処理後ウェブ64(すなわち、不織繊維シート)の第1の面を熱処理するための第1の面側熱処理加熱ロール41及び第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面を熱処理するための第2の面側熱処理加熱ロール42を有する表面熱処理部40と、第2の面側熱処理後ウェブ66を巻き取るための巻取ロール51を有する巻取部50と、を備えている。なお、本実施形態においては、後述するウェブ形成部10における初期ウェブ形成工程から高温処理部30における高温処理工程に至るまでの工程が、本発明の工程Aに該当する工程である。
このような不織布製造装置1を用いて、本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法を実施することができる。以下、本実施形態に係る嵩高不織布の製造方法について詳細に説明する。まず、繊維、熱膨張性粒子及び水を含むウェブ原料(例えば、繊維及び熱膨張性粒子を水中に分散させた懸濁液など)が、原料供給ヘッド11に供給される。この原料供給ヘッド11に供給されたウェブ原料は、原料供給ヘッド11から第1の搬送コンベア12の搬送ベルト上に供給されて、該ベルト上に堆積し、初期ウェブ61を形成する(初期ウェブ形成工程)。なお、第1の搬送コンベア12の搬送ベルトは、蒸気が通過可能な通気性を有する支持体であることが好ましく、例えば、ワイヤーメッシュ、毛布などを使用することができる。
本発明において、ウェブ原料に含まれる繊維は、特に限定されないが、例えば、繊維長が20mm以下の短繊維を用いることが好ましい。このような短繊維としては、例えば、針葉樹や広葉樹等の化学パルプ、半化学パルプ又は機械パルプなどの木材パルプ;これら木材パルプを化学処理したマーセル化パルプ又は架橋パルプ;麻や綿などの非木材系繊維;レーヨン繊維などの再生繊維を含むセルロース系繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維などが挙げられるが、中でも、木材パルプ、非木材系繊維又はセルロース系繊維が好ましい。
本発明において、前記ウェブ原料に含まれる熱膨張性粒子は、熱によって膨張することができる粒子であれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂からなる殻部と、該殻部の内部に封入された低沸点溶剤等の膨張剤とを含む粒子などが挙げられる。この熱膨張性粒子の殻部に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の共重合体などが挙げられる。熱膨張性粒子の膨張剤に用いられる低沸点溶剤としては、例えば、イソブタン、ペンタン、石油エーテル、ヘキサン、低沸点ハロゲン化炭化水素、メチルシランなどが挙げられる。
また、前記ウェブ原料に含まれる熱膨張性粒子の割合は、特に限定されないが、100質量部の繊維に対して、好ましくは1〜40質量部であり、更に好ましくは3〜20質量部である。前記ウェブ原料に含まれる熱膨張性粒子の割合が、100質量部の繊維に対して1質量部以上であると、後述する高温処理工程の際に、熱膨張性粒子を充分に膨張させることができる。また、前記ウェブ原料に含まれる熱膨張性粒子の割合が、100質量部の繊維に対して40質量部以下であると、後述する高温処理工程の際に、膨張性粒子の膨張を効率よく行うことができる。
本発明において、熱膨張性粒子の膨張前の平均粒径は、好ましくは5〜30μmであり、より好ましくは8〜14μmである。熱膨張性粒子は、膨張開始温度以上の温度に加熱すると、熱可塑性樹脂からなる殻部が軟化するとともに殻部に内包された低沸点溶剤が気化し、体積がより大きな中空の熱膨張性粒子へと膨張する。膨張した後の熱膨張性粒子の体積は、膨張前の熱膨張性粒子の体積に比べて、好ましくは20〜125倍であり、より好ましくは50〜80倍である。このような熱膨張性粒子としては、特に限定されないが、例えば、マツモトマイクロスフェアー(F−36,F−30D,F−30GS,F−20D,F−50D,F−80D)(松本油脂製薬(株)製)、エクスパンセル(WU,DU)(スウェーデン製、販売元日本フィライト(株))などを用いることができる。
また、本発明において、前記ウェブ原料は、該ウェブ原料に含まれる繊維に対して熱膨張性粒子を定着し易くするために、例えば、ファイレックスRC−104(明成化学工業(株)製、カチオン変性アクリル系重合体)、ファイレックスM(明成化学工業(株)製、アクリル系共重合体)などの定着剤を含んでいてもよい。さらに、前記ウェブ原料は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性の歩留まり向上剤、サイズ剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
本実施形態において、前記第1の搬送コンベア12の搬送ベルト上に形成された初期ウェブ61は、該初期ウェブ61の上面(第1の搬送コンベア12の搬送ベルトに接する面とは反対側の面)側から供給される第2の搬送コンベア13の搬送ベルト(例えば、搬送用毛布など)と、前記第1の搬送コンベア12の搬送ベルトとによって挟持及び加圧された後、前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルト上に転写されて所定の搬送方向(MD方向)に搬送される。なお、前記初期ウェブ61は、熱膨張性粒子が繊維中に分散して存在している。
次に、前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルト上の初期ウェブ61は、図1に示すように、プレス脱水部14に搬送される。このプレス脱水部14では、前記初期ウェブ61が、該初期ウェブ61の上面(第2の搬送コンベア13の搬送ベルトに接する面とは反対側の面)側から供給される第3の搬送コンベア15の搬送ベルト(例えば、搬送用毛布など)と、前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルトとによって圧縮されて、初期ウェブ61中の水分が脱水されるとともに、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルト上に転写される(脱水工程)。さらに、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルト上に転写された脱水後のウェブ(脱水後ウェブ62)は、その後、図1に示すように、乾燥部20の乾燥ロール21と、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルトとによって挟持及び加圧されて、前記乾燥ロール21の表面上に転写される。
本実施形態において、前記乾燥ロール21は、脱水後ウェブ62をMD方向に搬送しながら加熱して、当該脱水後ウェブ62を乾燥する(乾燥工程)。この乾燥ロール21には、例えば、ヤンキードライヤなどが用いられる。前記乾燥ロール21は、表面を蒸気などにより所定温度(例えば、105℃)に加熱された、回転する円筒状ドライヤを備えており、この回転する円筒状ドライヤの表面に前記脱水後ウェブ62を付着させ、MD方向に搬送しながら前記脱水後ウェブ62を乾燥する。なお、乾燥ロールの温度は、ウェブ中の繊維(特に、熱融着繊維)の融点以下の温度(例えば、110℃未満)であることが好ましい。乾燥ロールの温度が、ウェブ中の繊維の融点よりも高い温度であると、乾燥工程において繊維同士が熱融着して、ウェブの強度が強くなり過ぎてしまい、後述する高温処理工程において、熱膨張性粒子の膨張を妨げる場合がある。
前記乾燥ロール21は、乾燥後のウェブ(乾燥後ウェブ63)の水分率が好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは20〜60%となるように、前記脱水後ウェブ62を乾燥する。ここで、水分率とは、ウェブの乾燥質量を100%としたときのウェブに含有している水の質量の割合である。
前記乾燥後ウェブ63の水分率が10%よりも小さいと、ウェブ中の繊維間の水素結合力が強くなり過ぎて、後述する高温処理工程において、高温高圧の水蒸気による熱膨張性粒子の膨張が前記繊維間の水素結合によって妨げられる場合がある。一方、前記乾燥後ウェブ63の水分率が80%よりも大きいと、後述する高温処理工程において、高温高圧の水蒸気により付与される熱の多くがウェブ中の水分の蒸発に使用されてしまい、熱膨張性粒子に十分な熱を付与できない場合がある。加えて、後述する高温処理工程において、前記乾燥後ウェブ63を所定の水分率以下に乾燥させるのに必要なエネルギーが、増大する場合がある。
次に、前記乾燥後ウェブ63は、図1に示すように、高温処理部30へ搬送されて、高温高圧水蒸気吸引装置32の円筒状サクションドラムのメッシュ状の外周面上に移動する。このとき、サクションドラムの外周面の上方に配置された高温高圧水蒸気供給装置31の蒸気ノズルから高温高圧の水蒸気が、前記乾燥後ウェブ63の上面(ウェブの第2面側の面)に対して噴射される(高温処理工程)。前記サクションドラムは、吸引装置を内蔵しており、前記蒸気ノズルから噴射された水蒸気は、前記乾燥後ウェブ63を透過してこの吸引装置により吸引される。この高温高圧の水蒸気は、ウェブ中の水分を蒸発させながら、ウェブを瞬間的に熱膨張性粒子の熱膨張開始温度以上の温度に加熱することができるため、ウェブ中の水分率が低くなり過ぎて繊維間に水素結合が発現するのを防ぐことができる上、繊維(特に、熱融着繊維)の熱融着を生じさせずに前記熱融着性粒子を加熱することができる。このような高温高圧の水蒸気の熱によって、前記乾燥後ウェブ63中に分散した熱膨張性粒子は、瞬間的に熱膨張性粒子の熱膨張開始温度以上の温度に加熱されて膨張し、前記乾燥後ウェブ63の嵩が、例えば30%以上高くなる。なお、本実施形態においては、嵩高不織繊維層からなる単層構造の高温処理後ウェブ64が、本発明の不織繊維シートに該当する。
本発明において、高温処理工程で使用される高温高圧の水蒸気は、100%の水からなる水蒸気であってもよいし、空気などの他の気体を含んだ水蒸気(湿熱空気)であってもよい。熱膨張性粒子の加熱手段として、このような湿熱空気又は水蒸気を用いると、高温の液体を用いた場合のように、高温流体の圧力によって熱膨張性粒子が脱落するようなことが起こり難い。
また、前記水蒸気の温度は、熱膨張性粒子が膨張し得る温度であれば特に限定されず、使用する熱膨張性粒子の種類などによって適宜選択され得るが、好ましくは、熱膨張性粒子の殻部が軟化して、熱膨張性粒子が膨張し始める温度(熱膨張性粒子の膨張開始温度)以上の温度(例えば、140℃)である。また、熱膨張性粒子は、所定温度以上になると収縮するため、前記水蒸気の温度は、熱膨張性粒子が収縮し始める温度(熱膨張性粒子の収縮開始温度)以下の温度であることが好ましい。このような温度としては、例えば、120〜190℃の範囲内の温度が挙げられる。なお、前記水蒸気の温度は、後述する水蒸気の蒸気圧力と相関関係があるため、水蒸気の蒸気圧力を測定することによって、容易に算出することができる。
本実施形態において、前記サクションドラムの上方に配置された蒸気ノズルの構成及び配置形態は、熱膨張性粒子が膨張するのに十分な熱量を前記乾燥後ウェブ63に付与し得る限り、特に限定されず、任意の構成及び配置形態を採用することができる。例えば、前記蒸気ノズルは、複数のノズル穴をMD方向及び該MD方向に直交するCD方向にそれぞれ4列以上並べて配置するように構成してもよい。
また、前記蒸気ノズルのノズル穴の穴径は、特に制限されないが、好ましくは100〜250μmである。ノズル穴の穴径が100μmよりも小さいと、前記乾燥後ウェブ63に付与される熱エネルギーが不足し、熱膨張性粒子を十分に加熱できない場合がある。前記蒸気ノズルの穴径が250μmよりも大きいと、前記乾燥後ウェブ63に付与される熱エネルギーが大き過ぎてしまい、前記乾燥後ウェブ63が損傷する場合がある。また、前記蒸気ノズルのノズル穴の穴ピッチ(CD方向に隣接するノズル穴の中心間の距離)は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜1.0mmである。ノズル穴の穴ピッチが0.5mmよりも小さいと、蒸気ノズルの耐圧が低下して、破損する虞がある。ノズル穴の穴ピッチが1.0mmよりも大きいと、前記乾燥後ウェブ63に加熱不足の領域が生じる場合がある。前記乾燥後ウェブ63にこのような加熱不足の領域が生じると、高温処理工程後の高温処理後ウェブ64(不織繊維シート)に大きな嵩のばらつきが生じる虞がある。
本実施形態において、高温高圧水蒸気供給装置31の蒸気ノズルから噴射される水蒸気の蒸気圧力は、特に限定されないが、好ましくは0.2〜1.5MPaである。この水蒸気の蒸気圧力が0.2MPaよりも小さいと、ウェブ中に分散した熱膨張性粒子に高温高圧の水蒸気が十分に当たらず、熱膨張性粒子が十分に加熱されない場合がある。また、水蒸気の蒸気圧力が1.5MPaよりも大きいと、ウェブに穴が開いたり、ウェブが破れたり、或いはウェブが吹き飛んだりする場合がある。
また、本実施形態において、前記高温処理部30に搬送された前記乾燥後ウェブ63は、高温高圧水蒸気吸引装置32のサクションドラムに内蔵された吸引装置によって、該サクションドラムの表面上に吸引される。このサクションドラムの吸引力は、特に限定されないが、好ましくは−5〜−12kPaである。サクションドラムの吸引力が−5kPaよりも小さいと、上述の蒸気ノズルから噴射された水蒸気を吸引しきれず、吹き上がりが生じる場合がある。また、サクションドラムの吸引力が−12kPaよりも大きいと、サクション内への繊維の脱落が多くなる場合がある。
本実施形態において、高温高圧水蒸気供給装置31の蒸気ノズルの先端と乾燥後ウェブ63の表面との間の距離は、特に制限されないが、好ましくは1.0〜10mmである。この距離が1.0mmよりも小さいと、ウェブに穴が開いたり、ウェブが破れたり、或いはウェブが吹き飛んだりする場合がある。また、この距離が10mmよりも大きいと、高温高圧の水蒸気が分散してしまい、ウェブ中に分散した熱膨張性粒子に熱を効率よく付与することができない場合がある。
本発明において、高温処理工程後のウェブ(不織繊維シート)の水分率は、好ましくは40%以下であり、更に好ましくは30%以下である。この水分率が40%よりも大きいと、後述する熱処理工程において、ウェブに付与される熱の多くがウェブ中の水分の蒸発に使用されてしまい、ウェブに十分な熱を付与することができない場合があり、更には、第1の面の熱処理後のウェブの水分率を5%以下にすることが難しくなる虞がある。したがって、高温処理工程後のウェブ(不織繊維シート)の水分率を40%以下とすることで、上述のような熱損失を低減することができ、高温処理工程後のウェブ(不織繊維シート)を効率よく加熱することができる。
本実施形態において、前記高温処理工程を経た高温処理後ウェブ64は、その後、図1に示すように、表面熱処理部40の第1の面側熱処理用加熱ロール41に転写される。この第1の面側熱処理用加熱ロールは、高温処理後ウェブ64をMD方向に搬送しながら前記高温処理後ウェブ64の第1の面を加熱し、前記高温処理後ウェブ64の第1の面側の表層部に位置する膨張した熱膨張性粒子を溶融させる(第1の面側熱処理工程)。なお、本明細書において、「表層部」とは、シートの各表面を基準にして、それぞれ全体の厚さの15%以内の領域を意味し、例えば、表面から0.1mm以内の領域である。前記第1の面側熱処理用加熱ロール41は、表面を所定温度、好ましくは熱膨張性粒子の殻部を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度、より好ましくは熱膨張性粒子の殻部を構成する熱可塑性樹脂の融点以上、該融点よりも10℃高い温度以下の温度(例えば、200℃)に加熱された、回転する円筒状の熱ロールを備えており、この熱ロールの表面に前記高温処理後ウェブ64を付着させてMD方向に搬送しながら、前記高温処理後ウェブ64の第1の面を加熱する。このとき、前記高温処理後ウェブ64(不織繊維シート)の第1の面を、前記熱膨張性粒子を構成する殻部の熱可塑性樹脂の融点以上、前記熱可塑性樹脂の融点よりも10℃高い温度以下の温度で加熱すると、前記高温処理後ウェブ64の第1の面側の表層部に位置する熱膨張性粒子をより確実に溶融させることができるとともに、前記熱可塑性樹脂の融点以上の熱が前記高温処理後ウェブ64の内部まで伝わり難く、該内部に内包された熱膨張性粒子の溶融を防ぐことができるため、前記高温処理後ウェブ64の嵩高い構造をより確実に保持することができる。なお、本明細書において、「第1の面」は、不織布が有する二面のうち、熱膨張性粒子を含む層によって形成される一方側の面を意味し、また、「第2の面」は、不織布が有する二面のうち、前記第1の面とは相反する他方側の面を意味する。したがって、本第1実施形態のように、嵩高不織布が嵩高不織繊維層の単層からなる場合は、当該嵩高不織繊維層のいずれの面も「第1の面」となり得るが、後述する第2実施形態のように、嵩高不織布が、熱膨張性粒子を含む嵩高不織繊維層と、熱膨張性粒子を含まない繊維層(非嵩高不織繊維層)との二層の積層体からなる場合は、前記嵩高不織繊維層の前記非嵩高不織繊維層とは反対側の面が「第1の面」となる。
そして、本実施形態においては、前記高温処理後ウェブ64(不織繊維シート)の第1の面を第1の面側熱処理用加熱ロール41(熱ロール)により加熱するため、当該第1の面側熱処理用加熱ロール41が、前記高温処理後ウェブ64の表面に対して、一定時間以上、均一に接触して熱を加え、上述の高温処理後ウェブ64の第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を優先的に加熱して溶融させることができる。
また、本発明において、前記第1の面側熱処理工程後のウェブは、水分率が好ましくは5%以下であり、更に好ましくは3%以下である。この水分率が5%よりも大きいと、後述する第2の面側熱処理工程においてウェブに付与される熱の多くがウェブ中の水分の蒸発に使用されてしまい、ウェブに十分な熱を付与することができない場合がある。したがって、前記第1の面側熱処理工程後のウェブの水分率を5%以下とすることで、上述のような熱損失を低減することができ、前記第1の面側熱処理工程後のウェブを効率よく加熱することができる。さらに、後述する第2の面側熱処理工程において、加熱手段として熱ロール又は熱エンボスロールを用いる場合、サイズの小さいロールを採用することができるため、製造設備の小型化や省エネルギーを図ることもできる。
そして、本発明の第1実施形態において、前記第1の面側熱処理工程を経たウェブ(第1の面側熱処理後ウェブ65)は、図1に示すように、前記第1の面側熱処理用加熱ロール41から剥離されるとともに反転されて、前記第1の面側熱処理用加熱ロール41のMD方向下流側に配置された第2の面側熱処理用加熱ロール42に転写される。この第2の面側熱処理用加熱ロール42は、前記第1の面側熱処理後ウェブ65をMD方向に搬送しながら前記第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面を加熱して、前記第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面側の表層部に位置する膨張した熱膨張性粒子を溶融させる(第2の面側熱処理工程)。前記第2の面側熱処理用加熱ロール42は、表面を所定温度、好ましくは熱膨張性粒子の殻部を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度、更に好ましくは熱膨張性粒子の殻部を構成する熱可塑性樹脂の融点以上、該融点よりも10℃高い温度以下の温度(例えば、200℃)に加熱された、回転する円筒状の熱ロールを備えており、この熱ロールの表面に前記第1の面側熱処理後ウェブ65を付着させてMD方向に搬送しながら、前記第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面を加熱する。このとき、前記第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面を、前記熱膨張性粒子を構成する殻部の熱可塑性樹脂の融点以上、前記熱可塑性樹脂の融点よりも10℃高い温度以下の温度で加熱すると、前記第1の面側熱処理後ウェブ65の第2の面側の表層部に位置する熱膨張性粒子をより確実に溶融させることができるとともに、前記熱可塑性樹脂の融点以上の熱が前記第1の面側熱処理後ウェブ65の内部まで伝わり難く、該内部に内包された熱膨張性粒子の溶融を防ぐことができるため、前記第1の面側熱処理後ウェブ65の嵩高い構造をより確実に保持することができる。
なお、本発明において、高温処理工程後のウェブ(不織繊維シート)の第1の面又は第1の面側熱処理工程後のウェブの第2の面を加熱する手段は、シート表面を加熱することができるものであれば特に制限されず、上述の熱ロールのほか、熱エンボスロールも好適に用いることができる。不織繊維シートの表面の加熱手段として熱ロール又は熱エンボスロールを用いると、当該熱ロール又は熱エンボスロールが、前記不織繊維シートの表面に対して、一定時間以上、均一に接触して熱を加え、前記不織繊維シートの各表層部に位置する熱膨張性粒子を優先的に効率よく加熱して溶融させることができるため、前記熱膨張性粒子の溶融物によって、得られる嵩高不織布の表面強度、特に摩擦堅牢度を向上させることができる。
一方、不織繊維シートの表面の加熱手段として、例えば、熱風を用いた場合は、不織繊維シートの(特に表層部の)熱膨張性粒子が吹き飛ばされてしまう虞があり、また、高温雰囲気下の温室を用いた場合は、不織繊維シートの内部まで熱が伝わり、当該内部に存在する膨張した熱膨張性粒子に起因する不織繊維シートの柔らかくて心地よい肌触り(ふんわり感)が損なわれる虞がある。
また、前記不織繊維シートの表面の加熱手段に用いられる熱ロールとしては、例えば、ヤンキードライヤを用いることができる。本発明においては、通常、乾燥機として使用されるヤンキードライヤを、上述の不織繊維シート表面の加熱手段として用いることができるため、嵩高不織布の製造装置として特段熱ロール装置を設置する必要がなく、設備投資の増大を抑制することができる。
そして、前記第2の面側熱処理工程を経たウェブ(第2の面側熱処理後ウェブ66)は、図1に示すように、巻取部50へ搬送されて、巻取ロール51に巻き取られる。なお、本実施形態においては、前記第1の面側熱処理工程及び前記第2の面側熱処理工程が、本発明の工程Bに該当する。
このようにして得られた嵩高不織布の断面模式図を図2に示す。図2に示すように、嵩高不織布100は、第1の面側の表層部110及び第2の面側の表層部120において、それぞれ熱膨張性粒子の溶融物140が繊維150の間に少なくとも部分的に充填されて繊維150同士を結合し、当該熱膨張性粒子の溶融物140が、不織繊維シート(嵩高不織繊維層105)の内部130(すなわち、両表層部間)に存在する熱膨張性粒子160が前記不織繊維シートの両面側から外部へ脱落するのを防止し且つ前記不織繊維シートの各表面強度を向上させる補強被膜として機能するため、嵩高不織布100を各種製品へ加工する工程や嵩高不織布100を用いた製品を使用するときなどに振動が付与されたとしても、嵩高不織布100の内部130に存在する熱膨張性粒子160が脱落し難く、また、強度、特に湿潤時の引張強度及び摩擦堅牢度に優れたものとなる。
次に、本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法を説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用する不織布製造装置1’の概略図である。
図3に示すように、不織布製造装置1’は、第1ウェブ81を形成するための原料供給ヘッド16、第1の搬送コンベア12及び第2の搬送コンベア13、前記第1ウェブ81の表面に溝部を形成するための高圧水流処理部70、並びに第2ウェブ82を形成するための円網17及び抄造槽18を有するウェブ形成部10と、前記第1ウェブ81及び第2ウェブ82を積層してなる積層ウェブ83を脱水するためのプレス脱水部14と、脱水後積層ウェブ84を2段階で乾燥するための第1乾燥ロール22及び第2乾燥ロール23を有する乾燥部20と、第1乾燥後積層ウェブ85の前記第2ウェブ中に分散した熱膨張性粒子を高温処理により膨張させるための蒸気ノズルを備えた高温高圧水蒸気供給装置31及び前記高温高圧水蒸気供給装置31から供給された水蒸気を吸引するサクションドラムを備えた高温高圧水蒸気吸引装置32を有する高温処理部30と、高温処理後積層ウェブ86(すなわち、不織繊維シート)を上述の第2乾燥ロール23により乾燥した後に、第2乾燥後積層ウェブ87の第1の面(第2ウェブ側の面)を熱処理するための第1の面側熱処理加熱ロール41を有する表面熱処理部40と、熱処理後積層ウェブ88を巻き取るための巻取ロール51を備えた巻取部50と、を備えている。なお、本実施形態においては、後述するウェブ形成部10における第1ウェブ形成工程から第2乾燥ロール23による第2乾燥工程に至るまでの工程が、本発明の工程Aに該当する工程である。
このような不織布製造装置1’を用いて、本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法を実施することができる。以下、本実施形態に係る嵩高不織布の製造方法について詳細に説明する。まず、繊維及び水を含む第1ウェブ原料(例えば、繊維を水中に分散させた繊維懸濁液など)が、原料供給ヘッド16に供給される。この原料供給ヘッド16に供給されたウェブ原料は、図3に示すように、原料供給ヘッド16から第1の搬送コンベア12の搬送ベルト上に供給され、該ベルト上に堆積し、第1ウェブ81を形成する(第1ウェブ形成工程)。なお、第1の搬送コンベア12及び第2の搬送コンベア13の搬送ベルトは、上述の第1実施形態と同様のものを使用することができる。
本実施形態において、第1ウェブ原料に含まれる繊維は、上述の第1実施形態のウェブ原料に用いられるものと同様のものを使用することができる。
本実施形態において、前記第1の搬送コンベア12の搬送ベルト上に形成された第1ウェブ81は、図3に示すように、搬送方向(MD方向)に搬送されながら、前記第1の搬送コンベア12の搬送ベルトの上方に配置された高圧水流処理部70の高圧水流ノズル72と、前記搬送ベルトの下方において前記高圧水流ノズル72と対向する位置に配置された吸引ボックス71との間を通過する。この通過の際に、前記高圧水流ノズル72は、前記第1ウェブ81の幅方向(CD方向)に並んだ複数の高圧水流を前記第1ウェブ81に噴射して、前記第1ウェブ81の表面に、前記MD方向に延びる複数本の溝部を形成し、一方、前記吸引ボックス71は、前記高圧水流ノズル72から噴射された水を吸引して回収する(高圧水流処理工程)。なお、前記高圧水流ノズル72のノズル穴の穴径や配置は、形成したい溝部の形態や処理効率等に応じて適宜設定することができる。
この高圧水流処理工程において、前記第1ウェブ81は、上述の高圧水流によって、表面に複数本の溝部が形成されるとともに、第1ウェブ81中の繊維同士が交絡して、ウェブの強度が増大するため、後述する高温処理工程において、高温高圧の水蒸気を第1乾燥後積層ウェブ85に噴射しても、ウェブに穴が開いたり、ウェブが破れたり、或いはウェブが吹き飛んだりするようなことが起こり難くなる。また、上述の第1ウェブ原料に増強剤等を添加しなくても、第1ウェブ81の湿潤時引張強度を増大させることができる。
本実施形態において、前記高圧水流処理工程を経た第1ウェブ81は、図3に示すように、該第1ウェブ81の上面(第1の搬送コンベア12の搬送ベルトに接する面とは反対側の面)側から供給される第2の搬送コンベア13の搬送ベルト(例えば、搬送用毛布など)と、前記第1の搬送コンベア12の搬送ベルトとによって挟持及び加圧された後、前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルト上に転写されて搬送方向(MD方向)に搬送される。そして、前記第1ウェブ81は、前記搬送ベルトに接する面とは反対側の面から第2ウェブ82が積層され、積層ウェブ83が形成される。
ここで、第2ウェブ82は、次のようにして作製される。まず、回転する円網17(第2ウェブ形成手段)が設けられた抄造槽18(第2ウェブ原料供給手段)の中に、繊維、熱膨張性粒子及び水を含む第2ウェブ原料(例えば、繊維及び熱膨張性粒子を水中に分散させた懸濁液など)が供給される。なお、第2ウェブ原料に含まれる繊維及び熱膨張性粒子は、上述の第1実施形態のウェブ原料に用いられるものと同様のものを使用することができる。また、前記第2ウェブ原料に含まれる繊維及び熱膨張性粒子の含有割合、並びに前記第2ウェブ原料に含み得る添加剤等についても、上述の第1実施形態と同様である。
そして、前記抄造槽18の中に供給された第2ウェブ原料は、図3に示すように、回転する円網17に吸引されて、該円網17の表面上にシート状の第2ウェブ82が形成される(第2ウェブ形成工程)。なお、前記第2ウェブ82は、熱膨張性粒子が繊維中に分散して存在している。このようにして形成された第2ウェブ82は、図3に示すように、回転する前記円網17により、前記第2の搬送コンベア13によって搬送されている前記第1ウェブ81の表面(第2の搬送コンベア13の搬送ベルトに接する面とは反対側の面)に重ねられながら圧縮されて、前記第1ウェブ81と前記第2ウェブ82とが積層した積層ウェブ83が形成される(積層ウェブ形成工程)。
前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルト上に形成された前記積層ウェブ83は、図3に示すように、プレス脱水部14に搬送される。このプレス脱水部14では、前記積層ウェブ83の上面(第2の搬送コンベア13の搬送ベルトに接する面と反対側の面)側から供給される第3の搬送コンベア15の搬送ベルト(例えば、搬送用毛布など)と、前記第2の搬送コンベア13の搬送ベルトとによって圧縮されて、前記積層ウェブ83中の水分が脱水されるとともに、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルト上に転写される(脱水工程)。さらに、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルト上に転写された脱水後積層ウェブ84は、その後、図3に示すように、乾燥部20の第1乾燥ロール22と、前記第3の搬送コンベア15の搬送ベルトとによって挟持及び加圧されて、前記第1乾燥ロール22の表面上に転写される。
本実施形態において、前記第1乾燥ロール22は、脱水後積層ウェブ84をMD方向に搬送しながら加熱して、当該脱水後積層ウェブ84を乾燥する(第1乾燥工程)。この第1乾燥ロール22には、例えば、ヤンキードライヤなどが用いられる。前記第1乾燥ロール22は、表面を蒸気などにより所定温度(例えば、105℃)に加熱された、回転する円筒状ドライヤを備えており、この回転する円筒状ドライヤの表面に前記脱水後積層ウェブ84を付着させ、MD方向に搬送しながら前記脱水後積層ウェブ84を乾燥する。なお、この第1乾燥ロール22の好ましい温度は、上述の第1実施形態の乾燥ロールと同様である。
前記第1乾燥ロール22は、乾燥後のウェブ(第1乾燥後積層ウェブ85)の水分率が好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは20〜60%となるように、前記脱水後積層ウェブ84を乾燥する。この第1乾燥後積層ウェブ85の水分率が10%よりも小さいと、ウェブ中の繊維間の水素結合力が強くなり過ぎて、後述する高温処理工程において、高温高圧の水蒸気による熱膨張性粒子の膨張が前記繊維間の水素結合によって妨げられる場合がある。一方、前記第1乾燥後積層ウェブ85の水分率が80%よりも大きいと、後述する高温処理工程において、高温高圧の水蒸気により付与される熱の多くがウェブ中の水分の蒸発に使用されてしまい、熱膨張性粒子に十分な熱を付与できない場合がある。加えて、後述する高温処理工程において、前記第1乾燥後積層ウェブ85を所定の水分率以下に乾燥させるのに必要なエネルギーが、増大する場合がある。
次に、前記第1乾燥後積層ウェブ85は、図3に示すように、高温処理部30へ搬送されて、高温高圧水蒸気吸引装置32の円筒状のサクションドラムのメッシュ状の外周面上に移動する。このとき、サクションドラムの外周面の上方に配置された高温高圧水蒸気供給装置31の蒸気ノズルから高温高圧の水蒸気が、前記第1乾燥後積層ウェブ85の上面(ウェブの第1面側の面(すなわち、第2ウェブ側の表面))に噴射される(高温処理工程)。前記サクションドラムは、吸引装置を内蔵しており、前記蒸気ノズルから噴射された水蒸気は、前記第1乾燥後積層ウェブ85を透過してこの吸引装置により吸引される。なお、この高温処理工程で使用される高温高圧の水蒸気は、上述の第1実施形態と同様のものを使用することができる。
そして、このような高温高圧の水蒸気の熱によって、前記第1乾燥後積層ウェブ85の前記第2ウェブに由来する繊維層中に分散した熱膨張性粒子は、ウェブ中の水分を蒸発させながら、瞬間的に熱膨張性粒子の熱膨張開始温度以上の温度に加熱されて膨張し、前記第2ウェブに由来する繊維層の嵩が、例えば30%以上高くなって、嵩高不織繊維層を形成する。なお、本実施形態においては、膨張した熱膨張性粒子を含む第2ウェブに由来する繊維層(嵩高不織繊維層)と、熱膨張性粒子を含まない第1ウェブに由来する繊維層(非嵩高不織繊維層)とが積層した高温処理後積層ウェブが、本発明の不織繊維シートに該当する。
また、上述の高温処理工程後の高温処理後積層ウェブ86(不織繊維シート)において、熱膨張性粒子を含まない第1ウェブに由来する繊維層(非嵩高不織繊維層)は、上述のとおり、高圧水流処理工程によって強度が増大している層である一方、膨張した熱膨張性粒子を含む第2ウェブに由来する繊維層(嵩高不織繊維層)は、熱膨張性粒子の膨張によって繊維同士が解れて該繊維層の強度が低下しているものの、嵩(厚さ)が増大している層である。このように、強度の高い非嵩高不織繊維層と、強度は低いが嵩は高い嵩高不織繊維層とを備えることによって、嵩高であり且つ強度が高い不織繊維シートを形成することができる。なお、本発明において、不織繊維シートは、前記嵩高不織繊維層の厚さが前記非嵩高不織繊維層の厚さの2倍以上であることが好ましい。各繊維層の厚さがこのような関係にあると、嵩高性と強度のバランスがとれた不織繊維シートを実現することができる。
なお、本発明においては、前記嵩高不織繊維層と、前記非嵩高不織繊維層との間に、1層以上の他の層を設けてもよい。このような場合においても、前記嵩高不織繊維層と前記非嵩高不織繊維層とを備えることによって、嵩高であり且つ強度が高い不織繊維シートを実現することができる。
本実施形態において、上述の高温処理工程に用いられる高温高圧の水蒸気の温度、蒸気ノズルの構成及び配置形態、蒸気ノズルから噴射される水蒸気の蒸気圧力、サクションドラムの吸引力などは、いずれも上述の第1実施形態と同様である。
なお、高温処理工程後の高温処理後積層ウェブ86(不織繊維シート)の水分率は、好ましくは40%以下であり、更に好ましくは30%以下である。この水分率が40%よりも大きいと、後述する第2乾燥工程及び熱処理工程において、積層ウェブに付与される熱の多くがウェブ中の水分の蒸発に使用されてしまい、前記積層ウェブに十分な熱を付与することができない場合があり、更には、後述する第2乾燥工程後の積層ウェブ(第2乾燥後積層ウェブ87)の水分率を5%以下にすることが難しくなる虞がある。したがって、高温処理後積層ウェブ86の水分率を40%以下とすることで、上述のような熱損失を低減することができ、前記高温処理後積層ウェブ86を効率よく加熱することができる。さらに、後述する第1の面側熱処理工程において、加熱手段として熱ロール又は熱エンボスロールを用いる場合、サイズの小さいロールを採用することができるため、製造設備の小型化や省エネルギーを図ることもできる。
本実施形態において、前記高温処理工程を経た高温処理後積層ウェブ86は、その後、図3に示すように、第2乾燥ロール23に転写される。この第2乾燥ロール23は、高温処理後積層ウェブ86を、水分率が5%以下となるまで乾燥する(第2乾燥工程)。第2乾燥ロール23には、例えば、ヤンキードライヤが用いられる。第2乾燥ロール23は、表面を蒸気などにより所定温度(例えば、160℃等)に加熱された、回転する円筒状ドライヤを備えており、この回転する円筒状ドライヤの表面に前記高温処理後積層ウェブ86を付着させ、MD方向に搬送しながら前記高温処理後積層ウェブ86を乾燥する。前記第2乾燥ロール23は、乾燥後のウェブ(第2乾燥後積層ウェブ87)の水分率が5%以下、より好ましくは3%以下となるように、前記高温処理後積層ウェブ86を乾燥する。
そして、前記第2乾燥工程を経た第2乾燥後積層ウェブ87は、図3に示すように、表面熱処理部40の第1の面側熱処理用加熱ロール41に転写される。この第1の面側熱処理用加熱ロールは、前記第2乾燥後積層ウェブ87をMD方向に搬送しながら前記第2乾燥後積層ウェブ87の第1の面(すなわち、膨張した熱膨張性粒子を含む嵩高不織繊維層側の面)を加熱し、前記第2乾燥後積層ウェブ87の第1の面側の表層部に位置する膨張した熱膨張性粒子を溶融させる(第1の面側熱処理工程)。
なお、本実施形態において、前記第1の面側熱処理用加熱ロール41の種類、構成、設定温度及び機能等は、上述の第1実施形態と同様である。
そして、前記第1の面側熱処理工程を経たウェブ(熱処理後積層ウェブ88)は、図3に示すように、巻取部50へ搬送されて、巻取ロール51に巻き取られる。なお、本実施形態においては、前記第1の面側熱処理工程が、本発明の工程Bに該当する。
このようにして得られた嵩高不織布の断面模式図を図4に示す。図4に示すように、嵩高不織布200は、不織繊維シートの第2の面側に、熱膨張性粒子を含まない不織繊維層(非嵩高不織繊維層230)が存在することによって、不織繊維シートの第1の面側に位置する嵩高不織繊維層205中に分散した熱膨張性粒子260が、不織繊維シートの第2の面側から脱落するのを防ぐことができるとともに、嵩高不織布200に一定の柔軟性を付与することができる。また、不織繊維シートの第1の面側の表層部210は、前記熱膨張性粒子の溶融物240が繊維250の間に少なくとも部分的に充填されて繊維250同士を結合し、当該熱膨張性粒子の溶融物240が、嵩高不織繊維層205の内部220(すなわち、第1の面側の表層部210と前記非嵩高不織繊維層230との間)に存在する前記熱膨張性粒子260が前記不織繊維シートの第1の面側から外部へ脱落するのを防止し且つ前記不織繊維シートの表面強度を向上させる補強被膜として機能するため、嵩高不織布200の内部に存在する熱膨張性粒子260が脱落し難く、嵩高不織布200の引張強度(特に、湿潤時引張強度)及び前記第1の面の表面強度(摩擦堅牢度)を向上させることができる。さらに、熱処理工程において、積層ウェブの一方の面(第1の面)のみが加熱されるため、熱が前記嵩高不織繊維層205の内部220まで伝わり難く、前記第1の面の表層部210に位置する熱膨張性粒子をより効率よく、より確実に溶融させることができる。
なお、上記した各実施形態においては、工程Aが、膨張した熱膨張性粒子を含む不織繊維シートを、ウェブ原料から連続的に製造する工程としているが、本発明においては、このような形態に限定されず、例えば、膨張した熱膨張性粒子を含む不織繊維シートを準備する工程Aは、別の工程等で製造された不織繊維シート又は市販の不織繊維シートなどを用意する工程などであってもよい。さらに、本発明は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや変更等が可能である。
本発明の製造方法に従って製造された嵩高不織布は、嵩高に起因して汚れに対する捕捉性能が高い上に、振動等が付与されても熱膨張性粒子が脱落し難いため、ワイプスなどに適用した際に、優れた拭き取り性を長期に亘って発揮することができる。さらに、本発明の嵩高不織布は、嵩高に起因して不織布内に水を蓄積するための空間が多く存在し、保水力が高い上に、内部に膨張した熱膨張性粒子を多く含有していることによって、柔らかくて心地よい肌触りを有しているため、お尻拭き等の柔らかい風合いが求められる対人用ワイプスとして好適に用いることができる。また、本発明の嵩高不織布は、表層部に位置する熱膨張性粒子の溶融物が表面強度を向上させる補強被膜として機能していることによって、表面の強度、特に、湿潤時引張強度及び摩擦堅牢度が高い上に、形態安定性にも優れているため、パンティライナー等の吸収性物品の吸収体に適用した際に、嵩がへたり難く、変形し難い吸収体を実現することができる。
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の第1実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用される不織布製造装置1を使用し、上述の第1実施形態の各工程に従って実施例1の嵩高不織布を作製した。まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)48質量%と、繊度が0.7dtex、繊維長が4mmであるレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製、コロナ)18質量%と、粒径が5〜15μm、膨張開始温度が75℃、殻部を形成する熱可塑性樹脂の融点が190℃である熱膨張性粒子(松本油脂製薬(株)製、マツモトマイクロスフィアー F−36)10質量%と、繊度が1.1dtex、繊維長が5mmであるPET/低融点PET(融点110℃)の芯鞘構造を有する熱融着繊維(帝人(株)製、TJ04CN)18質量%と、カチオン変性アクリル系共重合体の熱膨張性粒子定着剤(明成化学工業(株)製、ファイレックスRC−104)3.0質量%と、アニオン性アクリル系共重合体の熱膨張性粒子定着剤(明成化学工業(株)製、ファイレックスM)3.0質量%と、を含むウェブ原料を調製した。このウェブ原料を、図1に示すように、原料供給ヘッドを使用して第1の搬送コンベアの搬送ベルト上に供給し、坪量が40g/mの初期ウェブを形成した。その後、前記初期ウェブを、図1に示すように、第2の搬送コンベアの搬送ベルト上に転写して搬送し、プレス脱水部にて脱水した後、105℃に加熱したヤンキードライヤ(乾燥ロール)に転写して、水分率が60%になるまで脱水後ウェブを乾燥した。
次に、蒸気ノズル(ノズル孔径200μm、MD方向に6列、穴ピッチ1mm)を使用して、約140℃の水蒸気を0.4MPaの蒸気圧力で乾燥後ウェブ(混抄シート)の第2の面に噴射した。この高温処理により、前記乾燥後ウェブ内に分散する熱膨張性粒子を膨張させた。前記蒸気ノズルと乾燥後ウェブとの間の距離は2.0mmとした。また、前記乾燥後ウェブの第1の面側において前記蒸気ノズルに対向する位置に配置されたサクションドラムは、外周にステンレス製の18メッシュ開孔スリーブを備えたものを使用し、サクションドラムの吸引力は、−5.0kPaとした。
そして、高温処理後のウェブを、200℃に加熱した第1の面側熱処理用加熱ロールに転写して加熱し、前記ウェブの第1の面側の表層部に存在する熱膨張性粒子を溶融させてウェブ内の構成繊維と融着させた。さらに、第1の面側熱処理後のウェブを、200℃に加熱した第2の面側熱処理用加熱ロールに転写して加熱し、前記ウェブの第2の面側の表層部に存在する熱膨張性粒子を溶融させてウェブ内の構成繊維と融着させた。前記第1の面側熱処理後のウェブ及び第2の面側熱処理後のウェブの各水分率は、それぞれ5%以下及び3%以下であった。そして、第2の面側熱処理後のウェブを巻取ロールにより巻き取り、実施例1の嵩高不織布を得た。なお、上述のウェブの坪量及び水分率は、後述する測定方法に従って測定した。
[実施例2]
本発明の第2実施形態に係る嵩高不織布の製造方法に使用される不織布製造装置1’を使用し、上述の第2実施形態の手順に従って実施例2の嵩高不織布を作製した。まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)50質量%と、繊度が0.7dtex、繊維長が7mmであるレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製、コロナ)50質量%と、を含む第1ウェブ原料を調製した。そして、この第1ウェブ原料を、図3に示すように、第1ウェブ原料供給ヘッドを使用して第1の搬送コンベアの搬送ベルト(日本フィルコン(株)製 OS−80)上に供給し、坪量が20g/mの第1ウェブを形成した。その後、高圧水流ノズルを使用して高圧水流を前記第1ウェブに噴射して、前記第1ウェブを高圧水流処理した。この高圧水流処理の条件は、高圧水流エネルギーが0.28460kW/m(0.14230kW/mの2回実施)、処理速度が70m/分、高圧水流ノズルの先端と前記第1ウェブとの間の距離が10mmであり、前記高圧水流ノズルは、孔径92μmのノズル穴を0.5mmピッチで配列したものを使用した。なお、上述の高圧水流エネルギーは、下記の式により算出することができる。
エネルギー量(kW/m)=1.63×噴射圧力(kg/cm)×噴射流量(m/分)/処理速度(m/分)/60
ここで、噴射流量(m/分)=750×オリフィス開孔総面積(m)×噴射圧力(kg/cm)0.495である。
そして、高圧水流処理後の第1ウェブを第2の搬送コンベアの搬送ベルト上に転写して搬送する一方、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)48質量%と、繊度が0.7dtex、繊維長が4mmであるレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン(株)製、コロナ)18質量%と、粒径が5〜15μm、膨張開始温度が75℃、殻部を形成する熱可塑性樹脂の融点が190℃である熱膨張性粒子(松本油脂製薬(株)製、マツモトマイクロスフィアー F−36)10質量%と、繊度が1.1dtex、繊維長が5mmであるPET/低融点PET(融点110℃)の芯鞘構造を有する熱融着繊維(帝人(株)製、TJ04CN)18質量%と、カチオン変性アクリル系共重合体の熱膨張性粒子定着剤(明成化学工業(株)製、ファイレックスRC−104)3.0質量%と、アニオン性アクリル系共重合体の熱膨張性粒子定着剤(明成化学工業(株)製、ファイレックスM)3.0質量%と、を含む第2ウェブ原料を調製した。この第2ウェブ原料を抄造槽の中に供給し、回転する円網に吸引させることにより、坪量が20g/mの第2ウェブを円網上に形成した。そして、円網上に形成した第2ウェブを、上述の第2の搬送コンベアの搬送ベルト上に転写した第1ウェブ上に積層して、積層ウェブを作製した。
その後、前記積層ウェブを、図3に示すように、プレス脱水部にて脱水した後、105℃に加熱した第1ヤンキードライヤ(第1乾燥ロール)に転写して、水分率が60%になるまで脱水後の積層ウェブを乾燥した。次に、蒸気ノズル(ノズル孔径200μm、MD方向に6列、穴ピッチ1mm)を使用して、約140℃の水蒸気を0.4MPaの蒸気圧力で乾燥後の積層ウェブの第1の面(第2ウェブ側の面)に噴射した。この高温処理により、前記積層ウェブの第2ウェブに由来する繊維層中に分散した熱膨張性粒子を膨張させた。前記蒸気ノズルと乾燥後ウェブとの間の距離は2.0mmとした。また、前記蒸気ノズルに対向する位置に配置されたサクションドラム及びその吸引力は、実施例1と同様である。
そして、高温処理後の積層ウェブを、160℃に加熱した第2ヤンキードライヤ(第2乾燥ロール)に転写して、水分率が5%以下となるまで乾燥した。さらに、前記第2ヤンキードライヤによる乾燥後の積層ウェブを、200℃に加熱した第1の面側熱処理用加熱ロールに転写して加熱し、前記積層ウェブの第1の面側(第2ウェブ側)の表層部に存在する熱膨張性粒子を溶融させてウェブ内の構成繊維と融着させた。この第1の面側熱処理後の積層ウェブの水分率は、3%以下であった。そして、第1の面側熱処理後の積層ウェブを巻取ロールにより巻き取り、実施例2の嵩高不織布を得た。なお、上述のウェブの坪量及び水分率は、後述する測定方法に従って測定した。
[実施例3]
表面熱処理部の第1の面側及び第2の面側熱処理用加熱ロールに熱エンボスロールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の嵩高不織布を得た。
[比較例1]
表面熱処理部の第1の面側及び第2の面側熱処理用加熱ロールによる熱処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の嵩高不織布を得た。
実施例1〜3及び比較例1の嵩高不織布について、各乾燥ロールによる乾燥後及び各熱処理用加熱ロールによる熱処理後の水分率、初期ウェブ、第1ウェブ及び第2ウェブの坪量、並びに嵩高不織布の厚さ、密度、乾燥時引張強度、湿潤時引張強度、水分吸収量、摩擦堅牢度及び熱膨張性粒子の脱落の有無を、以下の各測定方法に従って測定した。測定した嵩高不織布の厚さ、密度、乾燥時引張強度、湿潤時引張強度、水分吸収量、摩擦堅牢度及び熱膨張性粒子の脱落の有無は、表1に示す。また、実施例1及び比較例1の嵩高不織布について、嵩高不織布の断面と、第1の面の表面とを、電子顕微鏡写真により撮影した。撮影した電子顕微鏡写真は、図5及び図6に示す。
<水分率>
30cm×30cmの大きさの試験片をサンプリングし、その試験片の重量(W)を測定する。重量を測定した試験片を105℃の恒温槽に1時間静置して乾燥させた後、重量(D)を測定する。水分率を下記の式に基づいて算出する。なお、水分率は、10個の試験片の平均値である。
水分率=(W−D)/W×100(%)
<坪量>
初期ウェブ、第1ウェブ及び第2ウェブの測定用ウェブを、それぞれ不織布製造装置により作製する。そして、各ウェブから30cm×30cmの大きさの測定用試料をそれぞれサンプリングし、サンプリングした測定用試料の重量をそれぞれ測定することにより、各ウェブの坪量(g/m)を算出する。なお、坪量は、10個の測定用試料の平均値である。
<厚さ>
製造した嵩高不織布から10cm×10cmの大きさの測定用試料をサンプリングする。15cmの測定子を備えた厚み計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS−60DS)を使用して、3gf/cmの測定荷重の測定条件で、測定用試料の厚さを測定する。1つの測定用試料について3箇所の厚さを測定し、当該3箇所の厚さの平均値を嵩高不織布の厚さ(mm)とする。
<密度>
製造した嵩高不織布から10cm×10cmの大きさの測定用試料をサンプリングする。測定用試料の重量を測定し、当該重量と上記厚さから嵩高不織布の密度(g/cm)を算出する。
<乾燥時引張強度>
製造した嵩高不織布から、長手方向がMD方向と一致する25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向がCD方向と一致する25mm幅の短冊状の試験片とを切り取り、測定用試料を作製する。MD方向及びCD方向の測定用試料を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS−1kNG)を使用して、100mmのチャック間距離、100mm/分の引張速度の条件にて引張強度を測定する。測定は、それぞれ3つの測定用試料を用いて3回行い、その3回の測定値の平均値を、それぞれMD方向及びCD方向の乾燥時引張強度(N/25mm)とする。
<湿潤引張強度>
製造した嵩高不織布から長手方向がMD方向と一致する25mm幅の短冊状の試験片と、長手方向がCD方向である25mm幅の短冊状の試験片とを切り取り、測定用試料を作製する。作製した測定用試料の質量の2.5倍の蒸留水を、測定用試料に含浸させる(含水倍率、250%)。MD方向及びCD方向の測定用試料を、最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ 型式AGS−1kNG)を使用して、100mmのチャック間距離、100mm/分の引張速度の条件にて引張強度を測定する。測定は、それぞれ3つの測定用試料を用いて3回行い、その3回の測定値の平均値を、それぞれMD方向及びCD方向の湿潤時引張強度(N/25mm)とする。
<水分吸収量>
製造した嵩高不織布から10cm×10cmの大きさの測定用試料をサンプリングする。測定用試料の質量を測定した後、測定用試料を蒸留水の中に1分間浸漬する。次に、網(80メッシュ)の上にて1分間放置した後、その測定用試料の質量を測定する。蒸留水に浸漬した後の測定用試料の質量から蒸留水に浸漬する前の測定用試料の質量を差し引いた値を、不織布1m当たりの値に換算し、この換算した値を水分吸収量(g/m)とする。
<摩擦堅牢度>
製造した嵩高不織布から幅300mm×長さ200mmの大きさの測定用試料をサンプリングし、染色物摩擦堅牢度試験機((株)大栄科学精機製作所製)に、測定する面が上面になるように測定用試料を取り付ける。このとき、試験機の取付け面における測定用試料に接する面に布粘着テープを取り付け、滑り片の移動方向が測定用試料の200mmの長さ方向と一致するように測定用試料を配置する。そして、30回/分の摩擦往復速度及び200g荷重の条件にて、測定用試料の表面に破れが発生するまで摩擦係数測定を行う。この測定用試料の表面に破れが発生するまでの摩擦係数測定の回数を、摩擦堅牢度(回)とする。
<熱膨張性粒子脱落試験>
製造した嵩高不織布から幅150mm×長さ150mmの大きさの測定用試料をサンプリングする。測定用試料をA4サイズの黒画用紙で挟み、縦型振盪機(IWAKI社製、SHKV−200)を使用して、300rpmにて10分間振盪した後、黒画用紙上に熱膨張性粒子が脱落しているか否かを目視にて確認する。
表1に示すように、表面の熱処理を行っていない比較例1の嵩高不織布は、熱膨張性粒子の脱落が確認されたが、実施例1〜3の嵩高不織布は、いずれも熱膨張性粒子の脱落が見られなかった。また、実施例1〜3の嵩高不織布は、いずれも比較例1の嵩高不織布と比べて乾燥時引張強度、湿潤時引張強度及び摩擦堅牢度に優れていた。
また、図5(a)及び(b)に示す電子顕微鏡写真によれば、実施例1の嵩高不織布は、表層部において、熱膨張性粒子が溶融して構成繊維と融着し、嵩高不織布表面の大部分を被覆していることが分かった。さらに、実施例1の嵩高不織布は、表層部よりも更に内側の内部において、熱膨張性粒子が膨張した粒子状の形態を維持していることが分かった。
一方、図6(a)及び(b)に示す電子顕微鏡写真によれば、表面の熱処理を行っていない比較例1の嵩高不織布は、多くの熱膨張性粒子が嵩高不織布の表面及び表層部に存在しており、使用時の振動等によって脱落し易い状態にあることが分かった。
1 不織布製造装置
1’ 不織布製造装置
10 ウェブ形成部
11 原料供給ヘッド
12 第1の搬送コンベア
13 第2の搬送コンベア
14 プレス脱水部
15 第3の搬送コンベア
16 第1ウェブ原料供給ヘッド
17 円網(第2ウェブ形成手段)
18 抄造槽(第2ウェブ原料供給手段)
20 乾燥部
21 乾燥ロール(ヤンキードライヤ)
22 第1乾燥ロール(ヤンキードライヤ)
23 第2乾燥ロール(ヤンキードライヤ)
30 高温処理部
31 高温高圧水蒸気供給装置
32 高温高圧水蒸気吸引装置
40 表面熱処理部
41 第1の面側熱処理用加熱ロール
42 第2の面側熱処理用加熱ロール
50 巻取部
51 巻取ロール
61 初期ウェブ
62 脱水後ウェブ
63 乾燥後ウェブ(混抄シート)
64 高温処理後ウェブ(不織繊維シート)
65 第1の面側熱処理後ウェブ
66 第2の面側熱処理後ウェブ
70 高圧水流処理部
71 吸引ボックス
72 高圧水流ノズル
81 第1ウェブ
82 第2ウェブ
83 積層ウェブ
84 脱水後積層ウェブ
85 第1乾燥後積層ウェブ(混抄シート)
86 高温処理後積層ウェブ(不織繊維シート)
87 第2乾燥後積層ウェブ
88 熱処理後積層ウェブ
100 嵩高不織布
105 嵩高不織繊維層
110 第1の面側の表層部
120 第2の面側の表層部
130 不織繊維シートの内部
140 熱膨張性粒子の溶融物
150 繊維
160 熱膨張性粒子
200 嵩高不織布
205 嵩高不織繊維層
210 第1の面側の表層部
220 嵩高不織繊維層の内部
230 非嵩高不織繊維層
240 熱膨張性粒子の溶融物
250 繊維
260 熱膨張性粒子

Claims (9)

  1. 第1の面及び該第1の面と相反する第2の面を有する不織繊維シートであって、膨張した熱膨張性粒子と繊維とを含み且つ前記第1の面を構成する嵩高不織繊維層を含む前記不織繊維シートを準備する工程Aと、
    前記不織繊維シートの少なくとも第1の面を熱ロール又は熱エンボスロールにより加熱し、前記不織繊維シートの少なくとも第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を溶融させる工程Bと、
    を含む、嵩高不織布の製造方法。
  2. 前記工程Aは、未膨張の熱膨張性粒子と繊維とを混抄した混抄シートに、熱膨張性粒子の膨張開始温度以上の湿熱空気又は水蒸気を接触させることにより、前記未膨張の熱膨張性粒子を膨張させて前記嵩高不織繊維層を形成する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記熱膨張性粒子が、熱可塑性樹脂からなる殻部と、該殻部に内包された膨張剤とを含み、前記工程Bは、前記熱可塑性樹脂の融点以上、前記熱可塑性樹脂の融点よりも10℃高い温度以下の温度で、前記不織繊維シートを加熱することを含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記不織繊維シートを加熱する前の前記不織繊維シートの含水率が、5質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記嵩高不織繊維層が、前記第1の面と相反する前記第2の面を構成し、前記工程Bは、前記不織繊維シートの第1の面及び第2の面を加熱して、前記不織繊維シートの第1の面側及び第2の面側の各表層部のそれぞれに位置する前記熱膨張性粒子を溶融させることを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記不織繊維シートが、前記第2の面を構成し且つ熱膨張性粒子を含まない不織繊維層を更に含み、前記工程Bは、前記不織繊維シートの第1の面のみを加熱して、前記不織繊維シートの第1の面側の表層部に位置する前記熱膨張性粒子を溶融させることを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 第1の面及び該第1の面と相反する第2の面を有する嵩高不織布であって、
    前記嵩高不織布は、膨張した熱膨張性粒子と繊維とを含み且つ前記第1の面を構成する嵩高不織繊維層を含み、
    前記嵩高不織布の少なくとも第1の面側の表層部は、繊維間に少なくとも部分的に充填されて前記繊維同士を結合する前記熱膨張性粒子の溶融物を含む、前記嵩高不織布。
  8. 前記嵩高不織繊維層が、前記第1の面と相反する前記第2の面を構成し、前記嵩高不織布の第1の面側及び第2の面側の各表層部は、それぞれ、繊維間に少なくとも部分的に充填されて前記繊維同士を結合する前記熱膨張性粒子の溶融物を含む、請求項7に記載の嵩高不織布。
  9. 前記嵩高不織布が、前記第2の面を構成し且つ熱膨張性粒子を含まない不織繊維層を更に含み、前記嵩高不織布の第1の面側の表層部は、繊維間に少なくとも部分的に充填されて前記繊維同士を結合する前記熱膨張性粒子の溶融物を含む、請求項7に記載の嵩高不織布。
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