JP2016156811A - 粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬する酸洗槽2と、搬送ローラー1の下流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第一実施形態に係る粒界酸化検出装置3とを有する。
熱延鋼板Sとしては、特に限定されるものではないが、粒界酸化物の検出への要請が高いSi(ケイ素)含有高強度鋼板等が想定される。そのようなSi含有高強度鋼板の具体例としては、Siを1.0質量%以上かつMn(マンガン)を1.5質量%以上含有するSi高Mn含有鋼等が挙げられる。
当該粒界酸化検出装置3は、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5と、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6と、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
第1放射温度計4は、熱延鋼板Sの一定の視野内の領域から放射される放射光のうち、所定波長領域の放射光の光量(放射光の輝度)を検出する放射光量センサーと、放射光量センサーの検出値を温度(熱延鋼板Sを黒体と仮定して放射光量から求められる温度)に換算する換算部と、この温度を予め設定された熱放射率で除することにより測定値として第1の温度を算出する補正部とを有する放射温度計である。この第1放射温度計4は、その視野に搬送ローラー1が入らない位置に配置される。第1放射温度計4は、熱放射率を設定可能であることが好ましい。
第2温度計5は、上記第1放射温度計4と同様の構成を有する放射温度計であって、多重反射を利用して熱延鋼板Sの見かけの熱放射率を1に近い値とすることにより、熱延鋼板Sの実際の放射光量に拘わらず熱延鋼板Sの温度(表面温度)を比較的正確に測定可能な温度計である。具体的には、第2温度計5は、熱延鋼板Sの温度の測定誤差が5℃以下、好ましくは3℃以下、より好ましくは2℃以下となる放射温度計である。
気温計12は、第1放射温度計4及び第2温度計5の測定環境の雰囲気温度を測定する。この気温計12としては、公知の気温計を用いることができる。
判定機構6は、上記第1放射温度計4の測定値(測定温度)及び第2温度計5の測定値(測定温度)に基づき、熱延鋼板Sの粒界酸化の有無を判定する。
この方法では、まず、第1放射温度計4により測定される第1の温度T1[K]及び第2温度計5により測定される第2の温度T2[K]から、例えば下記式(1)に基づいてそれぞれの測定温度での分光放射輝度L[W・sr−1・m−2]を求める。
C1=c2h=5.9548×10−17[W・m2] ・・・(2)
C2=ch/k=0.014388[m・K] ・・・(3)
ここで、cは真空中の光の速度(2.99792458×108[m/s])、hはプランク定数(6.6256×10−34[J・s])、kはボルツマン定数(1.38054×10−23[J/K])である。
ε2=ε1×L1/L2 ・・・(4)
この方法では、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度の差を算出し、算出した温度差の絶対値が予め設定される閾値以下である場合に、熱延鋼板Sに粒界酸化がないと判断する。
ΔL=(1−ε2)×Lb ・・・(5)
当該粒界酸化検出装置は、上記判定機構6が、第1放射温度計4の測定温度と第2温度計5の測定温度との差に基づいて、第1放射温度計4に設定された粒界酸化層の除去を想定した熱放射率と熱延鋼板Sの表面の熱放射率とが略等しくなったこと、つまり熱延鋼板Sから粒界酸化層が除去されたことを検出する。従って、当該粒界酸化検出装置は、熱延鋼板Sの表面の粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
図2の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3aと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
当該粒界酸化検出装置3aは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5aと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5aの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
第2温度計5aは、熱延鋼板Sに接触することにより、直接熱延鋼板Sの温度を測定する接触式温度計である。この第2温度計5aを構成する接触式温度計としては、例えば熱電対等を用いることができる。また、第2温度計5aは、第1放射温度計4の視野の外で、なるべく第1放射温度計4の視野の近傍に配設されることが好ましい。
図3の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3bと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
当該粒界酸化検出装置3bは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5bと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5bの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
第2温度計5bは、参照板7と、放射温度センサー8と、制御部9とを有する参照板式温度計である。上記参照板7は、熱延鋼板Sに対向して設置され温度制御可能に構成される。上記放射温度センサー8は、熱延鋼板Sから放射され、参照板7で反射される放射光量を検出する。上記制御部9は、参照板7の温度調節により放射温度センサー8の検出値から算出される温度と参照板7の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させたときの放射温度センサー8の検出値から熱延鋼板Sの温度を算出する。この、第2温度計5bは、第1放射温度計4の視野の外で、なるべく第1放射温度計4の視野の近傍に配設されることが好ましい。
図4の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3cと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
当該粒界酸化検出装置3cは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5cと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5cの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
第2温度計5cは、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出する放射温度センサー10と、放射温度センサー10が検出する放射光量と第1放射温度計4が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板Sの温度を算出する演算部11とを有し、いわゆる二色温度計として機能する。この第2温度計5cは、その視野が第1放射温度計4の視野と重複又は近接するよう配設されることが好ましい。また、第1放射温度計4及び第2温度計5cは、互いの視野の中に入らないように配設されることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る粒界酸化検出方法は、酸洗による粒界酸化物除去後の熱延鋼板に合わせて熱放射率を設定した第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程とを備える。
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
実施例1として、上記図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、酸洗時間が30秒、60秒、90秒、120秒、150秒、180秒、200秒と異なる熱延鋼板の第1の温度及び第2の温度を測定し、その差を算出した。
熱延鋼板としては、Siを1.4質量%含有する高強度鋼を熱延後600℃で巻き取ったものを使用した。酸洗後に粒界酸化を検出(第1の温度及び第2の温度を測定)する際の熱延鋼板の温度としては80℃±2℃とした。なお、検出時の熱延鋼板の温度は、duplex社の熱電対「K−CERAC」を使用して測定した。
第1放射温度計としては、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を使用し、熱放射率を0.65に設定した。
第2温度計としては、第1放射温度計と同じ放射温度計を、熱放射率を0.95に設定して使用した。
実施例2として、上記図2に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板及び第1放射温度計は、実施例1と同じものを使用した。
第2温度計としては、duplex社の熱電対「K−CERAC」を使用した。
実施例3として、上記図3に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板及び第1放射温度計は、実施例1と同じものを使用した。
第2温度計の構成は、放射温度センサーとしてオプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)、参照板として電気ヒーターを備える十分な大きさの平板を使用した。
実施例4として、上記図4に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板は実施例1と同じものを異なる温度で使用した。また、第1放射温度計は実施例1と同じものを使用した。
熱延鋼板は実施例1と同じものを使用したが、測定時の熱延鋼板の温度を250℃±2℃とした。
第2温度計としては、ジャパンセンサ社の「FTC6−P200−100R」(測定波長域0.8μmから1.6μm)を使用した。なお、この第2温度計の測定中心波長における熱延鋼板の放射輝度と第1放射温度計の測定中心波長における熱延鋼板の放射輝度との比を2546として第2の温度を算出した。
図5乃至図8に、実施例1乃至4における酸洗時間と第1の温度及び第2の温度間の温度差との関係を示す。
図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、第1放射温度計及び第2温度計として、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を用いて熱延鋼板の温度測定を実施した。第1放射温度計の熱放射率は0.65、第2温度計の熱放射率は0.95に設定した。熱延鋼板としては、Siを2.0質量%含有する高強度鋼を熱延後600℃で巻取りしたものを用いた。第1放射温度計の測定温度T1及び第2温度計の測定温度T2から、熱延鋼板の放射率ε2を逆算し、予測される熱延鋼板の放射率ε0との差(ε2−ε0)が−0.1未満であれば粒界酸化が残存する(有)と判定し、−0.1以上0.3以下であれば粒界酸化が残存しない(無)と判定した。また、この放射率による判定に加えて目視での粒界酸化の残存の判定も行った。これらの測定及び判定を異なる熱延鋼板を用いて3回行った。その結果を表1に示す。
図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、第1放射温度計及び第2温度計として、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を用いて粒界酸化層が発生しない軟鋼材の温度測定を実施した。この軟鋼材は酸洗後の表面放射率が略一定と考えられる。第1放射温度計の熱放射率は0.65、第2温度計の熱放射率は0.95に設定した。また、雰囲気温度Tbも合わせて測定した。第1放射温度計の測定温度T1及び第2温度計の測定温度T2から、鋼材の放射率ε2を逆算した。また、雰囲気温度Tbを用いて放射率ε2を補正した放射率ε2’を算出した。これらの測定及び計算を異なる鋼材を用いて3回行った。その結果を表2に示す。
1 搬送ローラー
2 酸洗槽
3,3a,3b,3c 粒界酸化検出装置
4 第1放射温度計
5,5a,5b,5c 第2温度計
6 判定機構
7 参照板
8 放射温度センサー
9 制御部
10 放射温度センサー
11 演算部
12 気温計
Claims (11)
- 酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化検出装置であって、
第1放射温度計と、
上記酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計と、
上記第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する機構と
を備えることを特徴とする粒界酸化検出装置。 - 上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度から得られる熱延鋼板の放射率に基づいて上記判定を行う請求項1に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度の差に基づいて上記判定を行う請求項1に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記第1放射温度計の熱放射率の設定値が0.5以上0.9以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記第1放射温度計の測定中心波長が4μm以上14μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記第2温度計が多重反射を利用した放射温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記第2温度計が接触式温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記第2温度計が、
上記酸洗後の熱延鋼板に対向して設置される温度制御可能な参照板と、
上記酸洗後の熱延鋼板から放射され、上記参照板で反射される放射光量を検出する放射温度センサーと、
参照板の温度調節により上記放射温度センサーの検出値から算出される温度と上記参照板の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させたときの上記放射温度センサーの検出値から酸洗後の熱延鋼板の温度を算出する制御部と
を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。 - 上記第2温度計が、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出し、第1放射温度計が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板の温度を算出する温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
- 上記判定機構が、測定環境の雰囲気温度による上記第1放射温度計の測定温度への影響を補正する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
- 酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化を検出する方法であって、
第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、
熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、
上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程と
を備えることを特徴とする粒界酸化検出方法。
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