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JP2016156811A - 粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法 - Google Patents

粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法 Download PDF

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JP2016156811A JP2016024028A JP2016024028A JP2016156811A JP 2016156811 A JP2016156811 A JP 2016156811A JP 2016024028 A JP2016024028 A JP 2016024028A JP 2016024028 A JP2016024028 A JP 2016024028A JP 2016156811 A JP2016156811 A JP 2016156811A
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Abstract

【課題】本発明は、酸洗後の熱延鋼板表面の粒界酸化物の有無を判定できる粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係る酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化検出装置は、第1放射温度計と、上記酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計と、上記第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する機構とを備えることを特徴とする。本発明に係る酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化検出方法は、第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程とを備えることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法に関する。
例えばSiを含有する高強度鋼等を熱延(熱間圧延)処理して鋼板を製造する際、外面に酸化物からなる黒皮状のスケールが形成されると共に、このスケールの内側の地鉄表層の結晶粒界が酸化されることにより粒界酸化物が形成される場合がある。このような粒界酸化物は、高強度冷延鋼板の最終製品に存在していると化成処理性を悪化させる原因となることが知られている。
熱延鋼板のスケール及び粒界酸化層(周囲に粒界酸化物が形成された結晶粒の層であって、酸化物が析出した粒状物を含み得る)は、酸洗により除去することができる。そこで、スケール及び粒界酸化層の厚さに応じて酸洗の時間を決定することで、スケール及び粒界酸化物の除去を確実にする方法が提案されている(特開2013−237924号公報)参照。
このように、熱延鋼板から粒界酸化層を除去する方法については公知であるが、鋼板の製造ラインにおいて、粒界酸化層の除去を確認、つまり粒界酸化物の残留の有無を確認する方法については、有効な手段が提案されていない。
特開2013−237924号公報
上記不都合に鑑みて、本発明は、酸洗後の熱延鋼板表面の粒界酸化物の有無を判定できる粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化検出装置であって、第1放射温度計と、上記酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計と、上記第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する機構とを備えることを特徴とする粒界酸化検出装置である。
当該粒界酸化検出装置は、第1放射温度計と酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計とを備えるので、粒界酸化層の有無によって第1放射温度計の測定温度と第2放射温度計の測定温度との関係が変化する。これにより、当該粒界酸化検出装置は、上記判定機構によって、第1放射温度計の測定温度と第2温度計の測定温度に基づいて算出されるパラメータが所定範囲となったときに粒界酸化物が除去されたと判定することができる。従って、当該粒界酸化検出装置は、酸洗後の熱延鋼板表面の粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度から得られる熱延鋼板の放射率に基づいて上記判定を行うとよい。このように熱延鋼板の放射率を算出し、あらかじめ求めた酸洗後の熱延鋼板の放射率と比較することで、粒界酸化物の判定精度を向上することができる。
上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度の差に基づいて上記判定を行ってもよい。このように第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度の差に基づいて判定を行うことで、比較的容易に粒界酸化物の有無を判定することができる。
上記第1放射温度計の熱放射率の設定値としては、0.5以上0.9以下が好ましい。上記第1放射温度計の熱放射率の設定値を上記範囲内とすることにより、Si含有高強度鋼板の表面に粒界酸化層がない場合に第1放射温度計の測定温度と第2温度計の測定温度とが略一致するため、Si含有高強度鋼板の粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
上記第1放射温度計の測定中心波長としては、4μm以上14μm以下が好ましい。このように、上記第1放射温度計の測定中心波長を上記範囲内とすることによって、Si含有高強度鋼板に形成される厚さが5μmから10μm程度の粒界酸化層の有無による熱放射率の変化が比較的大きくなるので、粒界酸化物の有無をより正確に判定することができる。
上記第2温度計が多重反射を利用した放射温度計であるとよい。このように、上記第2温度計が多重反射を利用した放射温度計であることによって、酸洗後の熱延鋼板の見かけの熱放射率をスケールや粒界酸化物の有無に拘わらず略1にすることができ、酸洗後の熱延鋼板の温度を放射光量によって比較的正確に検出できる。これにより、粒界酸化物の有無をより正確に判定することができる。
上記第2温度計が接触式温度計であってもよい。このように、上記第2温度計が接触式温度計であることによって、酸洗後の熱延鋼板の温度を比較的正確に検出できるので、粒界酸化物の有無をより正確に判定することができる。
上記第2温度計が、上記酸洗後の熱延鋼板に対向して設置される温度制御可能な参照板と、上記酸洗後の熱延鋼板から放射され、上記参照板で反射される放射光量を検出する放射温度センサーと、参照板の温度調節により上記放射温度センサーの検出値から算出される温度と上記参照板の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させたときの上記放射温度センサーの検出値から酸洗後の熱延鋼板の温度を算出する制御部とを有してもよい。このように、上記第2温度計が上記参照板、放射温度センサー及び制御部を有することによって、酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず比較的正確に測定することができるので、粒界酸化物の有無をより正確に判定することができる。
上記第2温度計が、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出し、第1放射温度計が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板の温度を算出する温度計であってもよい。このように、上記第2温度計が、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出し、第1放射温度計が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板の温度を算出する温度計であることによって、いわゆる二色温度計として酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず比較的正確に測定することができ、粒界酸化物の有無をより正確に判定することができる。
上記判定機構が、測定環境の雰囲気温度による上記第1放射温度計の測定温度への影響を補正するとよい。このように第1放射温度計の測定温度への雰囲気温度による影響を補正することで、粒界酸化物の有無の判定精度を向上することができる。
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化を検出する方法であって、第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程とを備えることを特徴とする粒界酸化検出方法である。
当該粒界酸化検出方法は、第1放射温度計による第1の温度と、第2温度計による第2の温度とに基づいて算出されるパラメータが所定範囲となったときに粒界酸化物が除去されたと判定することができる。従って、当該粒界酸化検出方法は、酸洗後の熱延鋼板表面の粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
なお、温度を「測定可能」とは、測定温度と実際の温度との差が絶対値で5℃以下、好ましくは3℃以下であることを意味する。
本発明の粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法は、酸洗後の熱延鋼板表面の粒界酸化物の有無を判定することができる。
本発明の一実施形態の粒界酸化検出装置が設けられた鋼板製造装置の部分的構成を示す模式図である。 本発明の図1とは異なる実施形態の粒界酸化検出装置が設けられた鋼板製造装置の部分的構成を示す模式図である。 本発明の図1及び図2とは異なる実施形態の粒界酸化検出装置が設けられた鋼板製造装置の部分的構成を示す模式図である。 本発明の図1乃至図3とは異なる実施形態の粒界酸化検出装置が設けられた鋼板製造装置の部分的構成を示す模式図である。 本発明の実施例1における測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例2における測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例3における測定結果を示すグラフである。 本発明の実施例4における測定結果を示すグラフである。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
[第一実施形態]
図1の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬する酸洗槽2と、搬送ローラー1の下流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第一実施形態に係る粒界酸化検出装置3とを有する。
<熱延鋼板>
熱延鋼板Sとしては、特に限定されるものではないが、粒界酸化物の検出への要請が高いSi(ケイ素)含有高強度鋼板等が想定される。そのようなSi含有高強度鋼板の具体例としては、Siを1.0質量%以上かつMn(マンガン)を1.5質量%以上含有するSi高Mn含有鋼等が挙げられる。
粒界酸化検出装置3により粒界酸化を検出する時点での熱延鋼板Sの平均表面温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。一方、上記粒界酸化検出時の熱延鋼板Sの平均表面温度の上限としては、300℃が好ましく、200℃がより好ましい。上記粒界酸化検出時の熱延鋼板Sの平均表面温度が上記下限に満たない場合、後述するように温度計の測定誤差を利用する粒界酸化検出装置3による粒界酸化物の検出精度が不十分となるおそれがある。逆に、上記粒界酸化検出時の熱延鋼板Sの平均表面温度が上記上限を超える場合、粒界酸化検出後にも粒界酸化物が生成されるおそれがある。
<粒界酸化検出装置>
当該粒界酸化検出装置3は、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5と、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6と、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
(第1放射温度計)
第1放射温度計4は、熱延鋼板Sの一定の視野内の領域から放射される放射光のうち、所定波長領域の放射光の光量(放射光の輝度)を検出する放射光量センサーと、放射光量センサーの検出値を温度(熱延鋼板Sを黒体と仮定して放射光量から求められる温度)に換算する換算部と、この温度を予め設定された熱放射率で除することにより測定値として第1の温度を算出する補正部とを有する放射温度計である。この第1放射温度計4は、その視野に搬送ローラー1が入らない位置に配置される。第1放射温度計4は、熱放射率を設定可能であることが好ましい。
第1放射温度計4の測定中心波長の下限としては、4μmが好ましく、8μmがより好ましい。一方、第1放射温度計4の測定中心波長の上限としては、14μmが好ましく、12μmがより好ましい。第1放射温度計4の測定中心波長が上記下限に満たない場合や上記上限を超える場合、測定波長における熱延鋼板Sの熱放射率が小さくなり、粒界酸化物の検出精度が不十分となるおそれがある。
第1放射温度計4に予め設定される熱放射率の上限としては、0.9が好ましく、0.8がより好ましい。第1放射温度計4に予め設定される熱放射率が上記上限を超える場合、粒界酸化物の有無による第1放射温度計4の測定値の変化が小さくなることにより、第1放射温度計4と第2温度計5との測定値の差の変化率が小さくなるので、粒界酸化物の検出精度が不十分となるおそれがある。
また、第1放射温度計4に予め設定される熱放射率としては、酸洗槽2での酸洗により熱延鋼板Sの粒界酸化物を完全に除去した場合の熱延鋼板Sの平均熱放射率に略一致するよう、具体的には上記平均熱放射率との誤差の絶対値が好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下となるよう設定される。酸洗により粒界酸化物を完全に除去した場合の熱延鋼板Sの平均熱放射率は、熱延鋼板Sの組成等によっても異なるが、上記高Si高Mn含有鋼の場合、0.5以上0.8以下となるものと考えられる。
従って、熱延鋼板Sが高Si高Mn含有鋼である場合に第1放射温度計4に予め設定される熱放射率の下限としては、0.5が好ましく、0.6がより好ましい。一方、上記の場合に第1放射温度計4に予め設定される熱放射率の上限としては、0.8が好ましく、0.7がより好ましい。熱延鋼板Sが高Si高Mn含有鋼である場合に第1放射温度計4に設定される熱放射率が上記下限に満たない場合、熱延鋼板Sの表面にスケール層がある場合の熱放射率(0.3〜0.4程度)に近くなるため、スケール層が残留している場合に粒界酸化が除去されたものと誤認するおそれがある。逆に、熱延鋼板Sが高Si高Mn含有鋼である場合に第1放射温度計4に設定される熱放射率が上記上限を超える場合、粒界酸化物の有無による第1放射温度計4と第2温度計5との測定値の差の変化率が小さくなることにより、粒界酸化物の判定精度が不十分となるおそれがある。
(第2温度計)
第2温度計5は、上記第1放射温度計4と同様の構成を有する放射温度計であって、多重反射を利用して熱延鋼板Sの見かけの熱放射率を1に近い値とすることにより、熱延鋼板Sの実際の放射光量に拘わらず熱延鋼板Sの温度(表面温度)を比較的正確に測定可能な温度計である。具体的には、第2温度計5は、熱延鋼板Sの温度の測定誤差が5℃以下、好ましくは3℃以下、より好ましくは2℃以下となる放射温度計である。
具体的に説明すると、第2温度計5は、熱延鋼板Sと、この熱延鋼板Sと十分に接触することにより表面温度が熱延鋼板Sと略等しい搬送ローラー1との間に形成される楔状の部分から放射される放射光量を検出する。このようにすれば、熱延鋼板S及び搬送ローラー1から放射される放射光が、熱延鋼板S及び搬送ローラー1の間で繰り返し反射して第2温度計5に入射することにより、熱延鋼板S及び搬送ローラー1の見かけの熱放射率が例えば0.9を超える1に近い値となる。
このため、第2温度計5は、熱延鋼板S及び搬送ローラー1の実際の熱放射率に拘わらず熱延鋼板Sの温度を比較的正確に測定できる。このように、多重反射を利用する第2温度計5を用いることによって、当該粒界酸化検出装置の構成を簡素化できると共に、温度測定による熱延鋼板Sへの影響を極めて小さくできる。
(気温計)
気温計12は、第1放射温度計4及び第2温度計5の測定環境の雰囲気温度を測定する。この気温計12としては、公知の気温計を用いることができる。
(判定機構)
判定機構6は、上記第1放射温度計4の測定値(測定温度)及び第2温度計5の測定値(測定温度)に基づき、熱延鋼板Sの粒界酸化の有無を判定する。
この判定機構6としては、第1放射温度計4及び第2温度計5の測定値を示す電気信号を受信するマイコン等が用いられる。
具体的な粒界酸化の判断の方法としては、(1)第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度から得られる熱延鋼板の放射率に基づいて粒界酸化の有無の判定を行う第1の方法、及び(2)第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度の差に基づいて粒界酸化の有無の判定を行う第2の方法が適用できる。以下、それぞれの方法について説明する。
(1)第1の方法
この方法では、まず、第1放射温度計4により測定される第1の温度T1[K]及び第2温度計5により測定される第2の温度T2[K]から、例えば下記式(1)に基づいてそれぞれの測定温度での分光放射輝度L[W・sr−1・m−2]を求める。
Figure 2016156811
上記式(1)中、λは第1放射温度計4の測定中心波長[m]、Tは第1の温度T1又は第2の温度T2、Cは下記式(2)で表される定数[W・m]、Cは下記式(3)で表される定数[m・K]である。
=ch=5.9548×10−17[W・m] ・・・(2)
=ch/k=0.014388[m・K] ・・・(3)
ここで、cは真空中の光の速度(2.99792458×10[m/s])、hはプランク定数(6.6256×10−34[J・s])、kはボルツマン定数(1.38054×10−23[J/K])である。
次に、上記式(1)より求めた第1の温度T1での分光放射輝度L1と、第2の温度T2での分光放射輝度L2と、第1放射温度計4の設定熱放射率ε1とを用いて、熱延鋼板の放射率ε2を下記式(4)より求める。
ε2=ε1×L1/L2 ・・・(4)
最後に、上記式(4)より求めた放射率ε2と、予測される熱延鋼板の放射率ε0とを比較し、両者の差(ε2−ε0)が設定範囲内の場合に粒界酸化が無いと判断し、この差が設定範囲から外れる場合には粒界酸化が有ると判断する。
上記放射率ε0には判定公差があるため、上記差(ε2−ε0)の設定範囲の下限としては、−0.1が好ましく、−0.05がより好ましい。一方、上記差(ε2−ε0)の設定範囲の上限としては、0.3が好ましく、0.1がより好ましい。
また、第1の方法では、判定機構6が、算出した放射率ε2と、予測される放射率ε0とを共に表示するデバイスを備えるとよい。このようにε2とε0とを同時に表示することで、作業者が目視等で判断を行うことができる。なお、予測される放射率ε0は幅を持った値でもよい。また、放射率ε0は、例えばSi量などによる鋼種、コイル巻取り温度等の条件ごとに試験等により予め決定又は予測し、これらの情報に紐づけされたテーブルとして用意したデータが好適に使用できる。
(2)第2の方法
この方法では、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5の測定温度の差を算出し、算出した温度差の絶対値が予め設定される閾値以下である場合に、熱延鋼板Sに粒界酸化がないと判断する。
上記閾値の下限としては、第2温度計5の摂氏温度での測定温度(熱延鋼板Sの実温度)の2%が好ましく、3%がより好ましく、4%がさらに好ましい。一方、上記閾値の上限としては、第2温度計5の測定温度の15%が好ましく、10%がより好ましく、7%がさらに好ましい。上記閾値が上記下限に満たない場合、第1放射温度計4及び第2温度計5の測定誤差によって粒界酸化物が除去されているのに粒界酸化物があると誤って判定するおそれがある。逆に、上記閾値が上記上限を超える場合、熱延鋼板Sからの粒界酸化層の除去が不十分であるにも拘わらず粒界酸化がなくなったと誤判定するおそれがある。
また、判定機構6は、測定環境の雰囲気温度による第1放射温度計4の測定温度への影響を補正するとよい。第1放射温度計4は、周囲環境の雰囲気温度(気温計12の測定温度)の影響を受けるため、この雰囲気温度に合わせて判定に用いる数値を補正することで、より正確に粒界酸化の有無を判定できる。
具体的な補正方法を以下に説明する。第1放射温度計4により測定される第1の温度T1に対応する分光放射輝度L1と、雰囲気温度の影響を考慮した分光放射輝度L1’との差ΔL(=L1’−L1)は、下記式(5)として表すことができる。下記式(5)中、Lbは、第1放射温度計4の測定中心波長における雰囲気温度Tb[℃]での分光放射輝度であり、上記式(1)により求められる。
ΔL=(1−ε2)×Lb ・・・(5)
なお、上記差ΔLは、放射率の安定しているSi量の少ない鋼板に対し、周囲環境温度を変化させながら分光放射輝度を複数回測定することで求めてもよい。
このΔLにより第1の温度T1に対応する分光放射輝度L1を補正することで、判定機構6の判定精度を高めることができる。なお、判定方法として第2の方法を用いる場合、雰囲気温度の影響を考慮した分光放射輝度L1’から補正した第1の温度T1’を逆算することで、精度を高めることができる。
<利点>
当該粒界酸化検出装置は、上記判定機構6が、第1放射温度計4の測定温度と第2温度計5の測定温度との差に基づいて、第1放射温度計4に設定された粒界酸化層の除去を想定した熱放射率と熱延鋼板Sの表面の熱放射率とが略等しくなったこと、つまり熱延鋼板Sから粒界酸化層が除去されたことを検出する。従って、当該粒界酸化検出装置は、熱延鋼板Sの表面の粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
[第二実施形態]
図2の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3aと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
図2の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12の構成は、図1の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12と同様であるため、重複する説明を省略する。
<粒界酸化検出装置>
当該粒界酸化検出装置3aは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5aと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5aの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
当該粒界酸化検出装置3aにおける第1放射温度計4及び判定機構6の構成は、図1の鋼板製造装置の粒界酸化検出装置3における第1放射温度計4及び判定機構6の構成と同様であるため重複する説明を省略する。つまり、当該粒界酸化検出装置3aは、第2温度計5aの構成及び温度検出方法が図1の第2温度計5とは異なることを除いて、図1の粒界酸化検出装置3と同様に機能する。
(第2温度計)
第2温度計5aは、熱延鋼板Sに接触することにより、直接熱延鋼板Sの温度を測定する接触式温度計である。この第2温度計5aを構成する接触式温度計としては、例えば熱電対等を用いることができる。また、第2温度計5aは、第1放射温度計4の視野の外で、なるべく第1放射温度計4の視野の近傍に配設されることが好ましい。
このように、第2温度計5aとして接触式温度計を使用することによって、熱延鋼板Sの温度を比較的正確に検出できるので、熱延鋼板Sの表面に粒界酸化があるか否かを比較的正確に判定することができる。
[第三実施形態]
図3の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3bと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
図3の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12の構成は、図1の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12と同様であるため、重複する説明を省略する。
<粒界酸化検出装置>
当該粒界酸化検出装置3bは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5bと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5bの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
当該粒界酸化検出装置3bにおける第1放射温度計4及び判定機構6の構成は、図1の鋼板製造装置の粒界酸化検出装置3における第1放射温度計4及び判定機構6の構成と同様であるため重複する説明を省略する。つまり、当該粒界酸化検出装置3bは、第2温度計5bの構成及び温度検出方法が図1の第2温度計5とは異なることを除いて、図1の粒界酸化検出装置3と同様に機能する。
(第2温度計)
第2温度計5bは、参照板7と、放射温度センサー8と、制御部9とを有する参照板式温度計である。上記参照板7は、熱延鋼板Sに対向して設置され温度制御可能に構成される。上記放射温度センサー8は、熱延鋼板Sから放射され、参照板7で反射される放射光量を検出する。上記制御部9は、参照板7の温度調節により放射温度センサー8の検出値から算出される温度と参照板7の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させたときの放射温度センサー8の検出値から熱延鋼板Sの温度を算出する。この、第2温度計5bは、第1放射温度計4の視野の外で、なるべく第1放射温度計4の視野の近傍に配設されることが好ましい。
放射温度センサー8は、熱延鋼板Sからの放射光と、参照板7からの放射光の熱延鋼板Sにおける反射光との合計光量を検出する。従って、放射温度センサー8の検出値から算出される温度と参照板7の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させることにより、放射温度センサー8の検出値と熱延鋼板Sの温度とが一致する。このようにして第2温度計5bは、熱延鋼板Sの温度を熱延鋼板Sの熱放射率に拘わらず比較的正確に測定することができるので、当該粒界酸化検出装置3bは、粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
[第四実施形態]
図4の鋼板製造装置は、帯状の熱延鋼板Sを長手方向に連続搬送する搬送ローラー1と、搬送ローラー1の上流側で酸性液を貯留し、搬送される熱延鋼板Sを酸性液に浸漬して酸洗する酸洗槽2と、搬送ローラー1の上流側で熱延鋼板Sの表面の粒界酸化を検出する本発明の第二実施形態に係る粒界酸化検出装置3cと、測定環境の雰囲気温度を測定する気温計12とを主に備える。
図4の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12の構成は、図1の鋼板製造装置における熱延鋼板S、搬送ローラー1、酸洗槽2及び気温計12と同様であるため、重複する説明を省略する。
<粒界酸化検出装置>
当該粒界酸化検出装置3cは、測定対象の熱放射率の値が予め設定される第1放射温度計4と、上記熱延鋼板Sの温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計5cと、上記第1放射温度計4の測定温度及び第2温度計5cの測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する判定機構6とを備える。
当該粒界酸化検出装置3cにおける第1放射温度計4及び判定機構6の構成は、図1の鋼板製造装置の粒界酸化検出装置3における第1放射温度計4及び判定機構6の構成と同様であるため重複する説明を省略する。つまり、当該粒界酸化検出装置3cは、第2温度計5cの構成及び温度検出方法が図1の第2温度計5とは異なることを除いて、図1の粒界酸化検出装置3と同様に機能する。
(第2温度計)
第2温度計5cは、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出する放射温度センサー10と、放射温度センサー10が検出する放射光量と第1放射温度計4が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板Sの温度を算出する演算部11とを有し、いわゆる二色温度計として機能する。この第2温度計5cは、その視野が第1放射温度計4の視野と重複又は近接するよう配設されることが好ましい。また、第1放射温度計4及び第2温度計5cは、互いの視野の中に入らないように配設されることが好ましい。
放射温度センサー10が検出する放射光の中心波長としては、特に限定されないが、例えば0.8μm以上1.6μm以下とすることができる。
このように、放射温度センサー10が検出する放射光量と第1放射温度計4が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板Sの温度を算出することによって、熱延鋼板Sの熱放射率に拘わらず熱延鋼板Sの温度を比較的正確に測定することができる。このため、当該粒界酸化検出装置3cは、熱延鋼板Sの粒界酸化物の有無を比較的正確に判定することができる。
[粒界酸化検出方法の実施形態]
本発明の一実施形態に係る粒界酸化検出方法は、酸洗による粒界酸化物除去後の熱延鋼板に合わせて熱放射率を設定した第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程とを備える。
当該粒界酸化検出方法に用いる第1放射温度計としては、上記粒界酸化検出装置の第一実施形態乃至第四実施形態の第1放射温度計4と同様のものを使用することができる。また、当該粒界酸化検出方法に用いる第2温度計としては、上記実施形態の上記粒界酸化検出装置の第一実施形態乃至第四実施形態の第2温度計4,4a,4b,4cのいずれかと同様のものを使用することができる。
当該粒界酸化検出方法における上記判定工程は、第1の温度及び第2の温度から得られる熱延鋼板の放射率に基づいて粒界酸化の有無の判定を行う第1の方法、又は第1の温度及び第2の温度の差に基づいて粒界酸化の有無の判定を行う第2の方法により行うことができる。
上記第1の方法及び第2の方法の詳細並びにこれらの方法における判定の閾値については、上述の第一実施形態乃至第四実施形態の判定機構6について説明したものと同様である。つまり、この判定工程は、上記粒界酸化検出装置の第一実施形態乃至第四実施形態の判定機構6を用いて行ってもよい。また、この判定工程は、オペレーターが上記放射率又は温度差をマニュアルで計算することにより行ってもよい。
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
当該粒界酸化検出装置における第2温度計及び当該粒界酸化検出方法に使用する第2温度計は、上記実施形態の構成を有するものに限定されず、熱延鋼板の熱放射率に拘わらず酸洗後の熱延鋼板の表面温度を測定可能なものであればどのような温度計であってもよい。例えば、第2温度計は、搬送ローラー以外の部材と酸洗後の熱延鋼板との間の多重反射を利用する放射温度計であってもよい。
また、当該粒界酸化検出装置における第1放射温度計又は第2温度計は、それぞれ複数設けられて第1の温度又は第2の温度をそれらの複数の測定温度から求めるものであってもよい。
また、当該粒界酸化検出装置の判定機構は、第1放射温度計の測定値(第1の温度)と第2温度計の測定値(第2の温度)との差が所定の下限からこの下限とは絶対値が異なる上限までの範囲内である場合に、粒界酸化物がないと判定してもよい。具体的には、第1放射温度計に設定した熱放射率が粒界酸化物を除去した熱延鋼板の熱放射率と異なる場合には、熱延鋼板が粒界酸化層を有しないとき、第1の温度と第2の温度との差の理論値がゼロではない値となるので、この理論値を中心とする範囲を粒界酸化物がないと判定する範囲とすればよい。
さらに、当該粒界酸化検出装置において、気温計は必須ではなく、必ずしも測定環境の雰囲気温度による第1放射温度計の測定温度への影響を補正する必要はない。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
<実施例1>
実施例1として、上記図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、酸洗時間が30秒、60秒、90秒、120秒、150秒、180秒、200秒と異なる熱延鋼板の第1の温度及び第2の温度を測定し、その差を算出した。
酸洗後の熱延鋼板の表面を顕微鏡により観察し、粒界酸化層の除去の程度を確認した。酸洗時間が30秒及び60秒の熱延鋼板は、粒界酸化層が殆ど除去されず、粒界酸化層の上にスケールが残存していた。また、酸洗時間が90秒及び120秒の熱延鋼板は、粒界酸化層が部分的に除去されていたが、粒界酸化物が残存していた。酸洗時間が150秒、180秒及び200秒の熱延鋼板は、粒界酸化物が略全て除去されていた。
(熱延鋼板)
熱延鋼板としては、Siを1.4質量%含有する高強度鋼を熱延後600℃で巻き取ったものを使用した。酸洗後に粒界酸化を検出(第1の温度及び第2の温度を測定)する際の熱延鋼板の温度としては80℃±2℃とした。なお、検出時の熱延鋼板の温度は、duplex社の熱電対「K−CERAC」を使用して測定した。
(第1放射温度計)
第1放射温度計としては、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を使用し、熱放射率を0.65に設定した。
(第2温度計)
第2温度計としては、第1放射温度計と同じ放射温度計を、熱放射率を0.95に設定して使用した。
<実施例2>
実施例2として、上記図2に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板及び第1放射温度計は、実施例1と同じものを使用した。
(第2温度計)
第2温度計としては、duplex社の熱電対「K−CERAC」を使用した。
<実施例3>
実施例3として、上記図3に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板及び第1放射温度計は、実施例1と同じものを使用した。
(第2温度計)
第2温度計の構成は、放射温度センサーとしてオプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)、参照板として電気ヒーターを備える十分な大きさの平板を使用した。
<実施例4>
実施例4として、上記図4に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、粒界酸化を検出する試験を行った。熱延鋼板は実施例1と同じものを異なる温度で使用した。また、第1放射温度計は実施例1と同じものを使用した。
(熱延鋼板)
熱延鋼板は実施例1と同じものを使用したが、測定時の熱延鋼板の温度を250℃±2℃とした。
(第2温度計)
第2温度計としては、ジャパンセンサ社の「FTC6−P200−100R」(測定波長域0.8μmから1.6μm)を使用した。なお、この第2温度計の測定中心波長における熱延鋼板の放射輝度と第1放射温度計の測定中心波長における熱延鋼板の放射輝度との比を2546として第2の温度を算出した。
<評価>
図5乃至図8に、実施例1乃至4における酸洗時間と第1の温度及び第2の温度間の温度差との関係を示す。
図示するように、いずれの実施例においても、酸洗時間が短く、熱延鋼板の表面にスケールが存在する場合には、第1の温度と第2の温度との差が大きかったが、粒界酸化層が除去されるに従って第1の温度と第2の温度との差が小さくなり、粒界酸化層が完全に除去されると、第1の温度と第2の温度との差が殆どなくなった。なお、酸洗時間が十分に長く粒界酸化層が完全に除去されていると考えられる場合の第1の温度と第2の温度との差は、温度計の測定誤差に起因していると考えられる。
従って、この測定誤差を考慮して、実施例1乃至実施例3の場合、第1の温度と第2の温度との差の絶対値が例えば5℃以下(第2の温度の6.3%以下)となった場合に熱延鋼板から粒界酸化層が完全に除去されたと判定することが適当と考えられる。一方、鋼板温度が高い実施例4の場合、第1の温度と第2の温度との差の絶対値が例えば15℃以下(第2の温度の6.0%以下)となった場合に熱延鋼板から粒界酸化層が完全に除去されたと判定することが適当と考えられる。
<実施例5>
図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、第1放射温度計及び第2温度計として、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を用いて熱延鋼板の温度測定を実施した。第1放射温度計の熱放射率は0.65、第2温度計の熱放射率は0.95に設定した。熱延鋼板としては、Siを2.0質量%含有する高強度鋼を熱延後600℃で巻取りしたものを用いた。第1放射温度計の測定温度T1及び第2温度計の測定温度T2から、熱延鋼板の放射率ε2を逆算し、予測される熱延鋼板の放射率ε0との差(ε2−ε0)が−0.1未満であれば粒界酸化が残存する(有)と判定し、−0.1以上0.3以下であれば粒界酸化が残存しない(無)と判定した。また、この放射率による判定に加えて目視での粒界酸化の残存の判定も行った。これらの測定及び判定を異なる熱延鋼板を用いて3回行った。その結果を表1に示す。
Figure 2016156811
表1に示されるように、放射率の差(ε2−ε0)を用いた判定により目視による判定と同じ結果が得られた。
<実施例6>
図1に示す鋼板製造装置に準ずる構成を有する装置により、第1放射温度計及び第2温度計として、オプテックス社の「CS−40TAC」(測定波長域8μmから14μm)を用いて粒界酸化層が発生しない軟鋼材の温度測定を実施した。この軟鋼材は酸洗後の表面放射率が略一定と考えられる。第1放射温度計の熱放射率は0.65、第2温度計の熱放射率は0.95に設定した。また、雰囲気温度Tbも合わせて測定した。第1放射温度計の測定温度T1及び第2温度計の測定温度T2から、鋼材の放射率ε2を逆算した。また、雰囲気温度Tbを用いて放射率ε2を補正した放射率ε2’を算出した。これらの測定及び計算を異なる鋼材を用いて3回行った。その結果を表2に示す。
Figure 2016156811
表2に示されるように、補正前の放射率ε2は3回の計測でバラツキが大きく、最大差が0.08であったが、補正後の放射率ε2’はバラツキが小さく、最大差が0.03であった。従って、雰囲気温度Tbを用いて放射率を補正することで、より正確に粒界酸化物の有無を判定することができる。
本発明の粒界酸化検出装置及び粒界酸化検出方法は、特にSi含有高強度鋼板の製造において粒界酸化層の除去を確認するために好適に利用される。
S 熱延鋼板
1 搬送ローラー
2 酸洗槽
3,3a,3b,3c 粒界酸化検出装置
4 第1放射温度計
5,5a,5b,5c 第2温度計
6 判定機構
7 参照板
8 放射温度センサー
9 制御部
10 放射温度センサー
11 演算部
12 気温計

Claims (11)

  1. 酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化検出装置であって、
    第1放射温度計と、
    上記酸洗後の熱延鋼板の温度を熱放射率に拘わらず測定可能な第2温度計と、
    上記第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度に基づいて粒界酸化物の有無を判定する機構と
    を備えることを特徴とする粒界酸化検出装置。
  2. 上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度から得られる熱延鋼板の放射率に基づいて上記判定を行う請求項1に記載の粒界酸化検出装置。
  3. 上記判定機構が、第1放射温度計の測定温度及び第2温度計の測定温度の差に基づいて上記判定を行う請求項1に記載の粒界酸化検出装置。
  4. 上記第1放射温度計の熱放射率の設定値が0.5以上0.9以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の粒界酸化検出装置。
  5. 上記第1放射温度計の測定中心波長が4μm以上14μm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  6. 上記第2温度計が多重反射を利用した放射温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  7. 上記第2温度計が接触式温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  8. 上記第2温度計が、
    上記酸洗後の熱延鋼板に対向して設置される温度制御可能な参照板と、
    上記酸洗後の熱延鋼板から放射され、上記参照板で反射される放射光量を検出する放射温度センサーと、
    参照板の温度調節により上記放射温度センサーの検出値から算出される温度と上記参照板の放射光量を黒体の温度に換算した値とを一致させたときの上記放射温度センサーの検出値から酸洗後の熱延鋼板の温度を算出する制御部と
    を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  9. 上記第2温度計が、第1放射温度計とは異なる中心波長の放射光量を検出し、第1放射温度計が検出する放射光量との比に基づいて熱延鋼板の温度を算出する温度計である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  10. 上記判定機構が、測定環境の雰囲気温度による上記第1放射温度計の測定温度への影響を補正する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の粒界酸化検出装置。
  11. 酸洗後の熱延鋼板の粒界酸化を検出する方法であって、
    第1放射温度計により酸洗後の熱延鋼板の第1の温度を測定する工程と、
    熱放射率に拘わらず温度測定可能な第2温度計により酸洗後の熱延鋼板の第2の温度を測定する工程と、
    上記第1の温度と第2の温度とに基づいて粒界酸化物の有無を判定する工程と
    を備えることを特徴とする粒界酸化検出方法。
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