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JP2015508644A - 癌の診断および治療のためのros1の融合体に関する方法および組成物 - Google Patents

癌の診断および治療のためのros1の融合体に関する方法および組成物 Download PDF

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JP2015508644A JP2014556726A JP2014556726A JP2015508644A JP 2015508644 A JP2015508644 A JP 2015508644A JP 2014556726 A JP2014556726 A JP 2014556726A JP 2014556726 A JP2014556726 A JP 2014556726A JP 2015508644 A JP2015508644 A JP 2015508644A
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Abstract

対象において癌の存在を検出する、および治療する効能を評価する方法および組成物が開示される。開示されている方法は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、インサイツハイブリッド形成、および/または多重ポリメラーゼ連鎖反の技術を使用して、ROS1の点突然変異、切断、または融合を検出する。【選択図】図1

Description

本出願は、2012年2月8日に出願した米国特許仮出願第61/596,720号の利益を主張し、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
ROS1チロシンキナーゼの発癌性融合体は、非小細胞肺癌(NSCLC)、多形性神経膠芽腫(GBM)脳腫瘍、および胆管癌(胆道の腫瘍)を含む幾つかのヒト癌のサブセットに生じることが最近報告されている。ROS1融合体を発現する癌細胞は、キナーゼの構成的に活性なキメラ形態と関連する異常なシグナル伝達を繁殖および生存のために「常用」している。異常なROS1シグナル伝達への依存性を踏まえて、前臨床研究は、ROS1誘導癌が突然変異キナーゼの薬理学的阻害剤に対して極めて感受性があることを実証している。小細胞阻害剤は、ROS1誘導性癌を有する患者の治療のために現在開発中であるが、ROS1融合体陽性癌を確実および効率的に診断する利用可能な市販の診断検査は、存在しない。したがって、必要なものは、この要求を満たすROS1融合体診断検査である。
本明細書に開示されている方法および組成物は、癌のような疾患または状態を検出または診断する、核酸の変異、切断、または遺伝子融合に関連する疾患または状態に対する感受性または危険性を評価する、疾患の進行をモニターする、ならびに治療処置に対する感受性または抵抗性を決定する分野に関する。一態様において、本明細書に開示されている検出および診断の方法は、ROS1融合体関連癌の検出および/または診断に関する。
本発明の目的によると、本明細書において具体化され、広義に記載されているように、本発明は、一態様において、目的の核酸内に融合体のようなヌクレオチド変異を検出することによりROS1関連癌の存在を検出する方法であって、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、およびまたは癌を有する対象の組織試料mRNAから抽出されたものに対して、もしくは癌を有する対象から抽出されたRNAから合成されたcDNAに対してPCRを実施することを含み、増幅産物の存在または対照と比べた増幅産物の増加が、ヌクレオチドの変異、切断、または過剰発現を示し、それによって癌の存在を検出する方法に関する。
別の態様において、ROS1関連癌を有するような、癌を有する対象を診断する方法の方法であって、野生型ROS1および野生型ROS1キナーゼのサイクル閾(Ct)値を決定することを更に含み、ROS1キナーゼと比べて野生型ROS1の高い(Ct)値が、融合体の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
別の態様において、ROS1関連癌を有するような、癌を有する対象を診断する方法の方法であって、融合体切断点の5′でROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーおよび融合体切断点の3′でROS1と結合する逆方向プライマーを含み、前記プライマーが、融合体の全体にわたって伸び、ROS1および融合パートナー核酸の両方を有するアンプリコンの存在の検出が、融合体の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
別の態様において、ROS1関連癌を有するような、癌を有する対象を診断する方法の方法であって、a)ROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーを使用する第1の増幅反応であって、第1の反応からのアンプリコンが第2の増幅反応にテンプレートとして使用されることと、b)第1の反応の後の第2の増幅反応であって、融合体切断点の3′でのROS1配列に特異的なプライマーが、第2の増幅反応に使用されることと、c)第2の反応からのアンプリコンにおいてROS1の存在を検出することであって、第2の反応からのアンプリコンにおけるROS1の検出が、ROS1融合体の存在を示すことと、を含む方法が、本明細書に開示されている。
別の態様において、目的の核酸内に融合体のようなヌクレオチド変異を検出することによりROS1関連癌の存在を検出する方法であって、癌を有する対象の組織試料に対する蛍光インザイツ(現場で)ハイブリッド形成(hybridization)(FISH)を実施することを含み、プローブがROS1融合体の切断点に隣接したハイブリッド形成に使用され、プローブが異なって標識され、プローブの分離がROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。FISHに基づいた検出方法の場合、近接して配置されたハイブリッド形成したプローブは、例えばROS1のような野生型RTKを示す。
別の態様において、(a)第1の検出試薬で標識された第1のプライマーであって、前記第1のプライマーが逆方向プライマーであり、前記逆方向プライマーが、配列番号1のアミノ酸配列またはその補体(complement)をコードする第1のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第1のプライマーと、(b)少なくとも1つの第2のプライマーであって、前記第2のプライマーが順方向プライマーであり、前記順方向プライマーが、野生型ROS1をコードする第2のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第2のプライマーと、を含むROS1関連癌を診断するキットが、本明細書に開示されている。
開示されている方法および組成物の追加の利点は、以下の記載に部分的に明記されており、部分的に記載から理解される、または開示されている方法および組成物の実施により学習され得る。開示されている方法の利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている要素および組み合わせによって実現および達成される。前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示および説明のためだけであり、主張される本発明を制限するものではないことが、理解されるべきである。
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付の図面は、開示されている方法および組成物の幾つかの実施形態を例示し、記載と一緒になって、開示されている方法および組成物の原理の説明に役立つ。
融合体キナーゼの生成に起因する発癌性に関与する受容体チロシンキナーゼ(RTK)の概略図を示す。図は、正常な膜貫通RTKを例示する。それぞれのRTKの下に赤色で示されているタンパク質は、キナーゼと、構成的に活性な発癌性融合体を形成する。 代表的なROS1融合体キナーゼである、CD74−ROS1融合体キナーゼを示す。(A)ヒトCD74CD74(5q32)およびROS1(6q22)遺伝子の染色体上の位置である。NSCLCにおいて、染色体5および6を伴う相互平衡再編成は、2つの遺伝子の範囲内の切断に続いて生じて、CD74−ROS1融合体を形成する。(B)正常なCD74およびROS1タンパク質、ならびにt(5;6)(q32;q22)染色体再編成により作り出されたCD74−ROS1融合タンパク質の概略図である。 NSCLCにおけるROS1融合体を示す。ROS1遺伝子による染色体転座により作り出された転写物の略図である。エクソンの位置は、融合体の立体配置の多様性を実証するために示されている。 ROS1のbreakapartFISHアッセイを示す。染色体再編成が生じてROS1融合体遺伝子をヒト癌の中に作り出すROS1遺伝子内の切断位置に隣接するゲノムDNAクローン(上側略図)を、緑色および赤色蛍光色素により異なって標識し、次に、正常な末梢血リンパ球からの間期核および中期染色体(左下パネル)、またはSLC34A2−ROS1−陽性NSCLC細胞株(右下パネル)とハイブリッド形成させた。 Insight ROS1融合体Screen法を示す。アッセイは、融合体特異的逆転写(FS−RT)を高温で使用して、RNA転写物内に位置するステムループ構造からのcDNA合成を逆転写酵素がプライムする混乱状態を防止する。アッセイを高温で実施することにより、これらの構造は、延長プロセスの際に最小化され、第一鎖cDNAの産生をROS1融合体だけに制限する。次に第一鎖反応は、全てのRNAを除去するためにRNアーゼ消費に付され、このことは、PCR検出相の下流の非特異的増幅を可能にし得る。次に融合体特異的cDNAを、汎用下流ROS1キナーゼ定量的PCR(qPCR)アッセイのテンプレートとして使用する。複数のROS1融合体を、逆転写相の際に多数のFS−RTプライマーを多重化することにより標的にすることができる。このFS−RTプライマーカクテルは、反応に対する特異性およびハイスループット能力を維持しながら、検出に使用されるプライマーの数を増加することなく、新たに同定された発癌性融合体を捕捉するように容易に修飾され得る。 Insight ROS1融合体Screen(商標)を示す。ROS1 cDNA、癌関連ROS1融合体の切断点の位置、およびリアルタイムqPCRアッセイに用いられるPCRプライマーセットの近似位置の概略図である。野生型ROS1の正常レベルの発現、野生型ROS1の過剰発現、またはROS1融合体の存在を示すCt値が下側パネルに示されている。 Insight ROS1Screen(商標)v2を示す。ROS1 RNA、癌関連ROS1融合体の切断点の位置、およびcDNA合成に使用されるプライマーの近似位置の概略図である。ROS1テンプレート特異的キナーゼ反応の位置も、反応のcDNA合成qPCR検出相の後に示されている。青色矢印は、SLC34A2 cDNAプライマーの相対位置を示し、赤色矢印は、実際のROS1転座に近似するCD74特異的cDNAプライマーの相対位置を示す。
本発明の化合物、組成物、物品、装置、および/または方法が開示および記載される前に、これらは、特に特定されない限り、特定の合成方法もしくは特定の組み換えバイオテクノロジーの方法、または特に特定されない限り、特定の試薬に限定されず、これらは当然のことながら変わり得ることが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語法は、特定の実施形態を記載するだけの目的であり、限定的であることを意図しないことが理解されるべきである。
明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に文脈から明白に示されない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への参照には、2つ以上のそのような担体の混合物などが含まれる。
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値へとして本明細書において表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または別の特定の値へのものを含む。同様に、値が近似として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。それぞれの範囲の終点は、他の終点と関連しても、他の終点とは無関係であっても有意であることが、更に理解される。本明細書に開示されている多数の値があり、それぞれの値が、値それ自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されていることも、また理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。値が値「以下」を開示する場合、「値以上」および値の間の可能な範囲も開示されていることも理解され、これは当業者により適切に理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示されている。明細書の全体にわたって、データは多数の異なった様式で提供されていること、このデータは、データポイントの任意の組み合わせの終点および出発点、ならびに範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント15が開示される場合、10および15を超える、以上、未満、以下、に等しいは、10〜15と同様に開示されていると考慮されることが理解される。
本明細書、および後に続く特許請求の範囲において、以下の意味を有すると定義される多数の用語が参照される。
「場合による」または「場合により」は、後に続く記載の事象または状況が起こっても起らなくてもよいこと、かつ、その記載が前記事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。
「増加」は、対照と比べて、大量の増幅産物のような組成物または化合物がもたらされる任意の変化を意味することができる。したがって、例えば、増幅産物の量の増加には、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の増加が含まれ得るが、これらに限定されない。対照と比べたDNA、mRNA、またはタンパク質の発現または存在量の増加を検出することは、DNA、mRNA、またはタンパク質が対照に存在しない状況において、DNA、mRNA、またはタンパク質の存在を検出することを含む必要があることが、本明細書において更に考慮される。
「組織試料を得ること」または「組織試料を得る」は、対象から組織の試料を収集すること、または対象において組織を測定することを意味する。組織試料は、侵襲的および非侵襲的技術を含む当該技術に既知の任意の方法により得ることができることが理解され、本明細書において考慮される。測定の方法は、直接的または間接的であり得ることも理解される。組織試料を得る、または測定する方法の例には、組織生検、組織洗浄、吸引、組織拭き取り、脊椎穿刺、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)走査、陽電子放射断層撮影(PET)走査、およびX腺(造影剤を用いる、用いない)が含まれ得るが、これらに限定されない。
DNAの既知部位での突然変異の高感度な検出は、現存の技術により既に実行されている。対立遺伝子特異的プライマーは、シグナルが野生型DNAより優先的に増幅され得るように、既知の位置の突然変異を標的にするように設計され得る。残念なことに、これは、標的配列の任意の位置(塩基)に起こり得る不明の突然変異では可能なことではない。
組織試料は体内の任意の組織由来であり得ることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、本明細書で使用されるとき、「組織」は、血液、神経組織(例えば、脳組織または脊髄組織)、リンパ組織、肝臓組織、脾臓組織、肺組織、心臓組織、胃組織、腸組織、膵臓組織、甲状腺の組織、唾液腺の組織、関節の組織、および皮膚の組織を意味する。組織試料は、少なければ標的試料からの単一細胞または画分を含み得ることが理解される。例えば、組織細胞は、末梢血単核球、B細胞、T細胞、マクロファージ、赤血球、血小板、または他の血液細胞であり得る。同様に、細胞は、上皮細胞、肝細胞、神経細胞、または他の細胞であり得る。
ROS1関連癌の検出方法
癌を有すると以前に診断されている対象において、ROS1関連癌(例えば、小細胞肺癌(NSCLC)、神経膠芽腫、または胆管癌)のような疾患または状態の存在を検出または診断する、ROS1関連癌(例えば、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌)のような疾患または状態の感受性または危険性を評価する、ROS1関連癌(例えば、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌)のような疾患または状態の進行をモニターする、およびROS1関連癌(例えば、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌)のような疾患または状態の治療処置に対する感受性または抵抗性を決定する方法であって、組織試料を得ることと、被験者の組織試料においてROS1 mRNAの存在を検出すること、または発現レベルを測定することと、を含み、対照と比べた増幅産物の量における増加、またはアンプリコンの単なる検出が癌の存在を示し、癌が、ROS1の核酸変異、切断、または遺伝子融合に関連する(すなわち、ROS1関連癌)方法に関する、一態様に開示されている方法。別の実施形態において、ROS1関連癌のような疾患または状態の存在を検出または診断することは、インサイツハイブリッド形成の使用により達成され得、ここで、癌内の別の遺伝子への融合部位である遺伝子の切断点に隣接するプローブの分離が、ROS1関連癌の存在を示す。別の実施形態において、
癌原遺伝子チロシンタンパク質キナーゼROS前駆体(ROS1)
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、細胞の繁殖、分化、遊走、および死を調節することにより正常の発達において重要な役割を果たす細胞シグナル伝達経路である。多様な遺伝子変化を介したRTKシグナル伝達における摂動は、調節解除されたキナーゼ活性、続いて悪性変換をもたらし得る(図1)。
既知の58個全てのヒトRTKの系統発生学的関係分析は、ROS1が、未分化リンパ腫キナーゼ/白血球チロシンキナーゼ(ALK/LTK)およびインスリン受容体(INSR)ファミリーの遠縁である特徴的な受容体であることを実証している。ROS1は、ショウジョウバエのセブンレス受容体チロシンキナーゼ(セブンレスの受容体、別名ROS)の孤児(すなわち、リガンドが依然として決定されていない)脊椎動物対応物であり、リガンドBOSS(セブンレスの花嫁)により活性化されたとき、ハエの複眼の発達におけるR7光受容体の分化に関与する。哺乳類ROSの機能は、Ros1ヌルマウスにおいて観察された異常のみが、(ROSが発現している)精巣上体の上皮の無能に関連する欠損精子機能に起因する男性の不妊症に関与することを考慮すると、精母細胞の分化を支持するためにはほぼ不必要であると思われる。白血球チロシンキナーゼ(LTK)の他に、ROSは、ALKに対して最も高度に関連する受容体チロシンキナーゼである。
最近、自発生的に生じた3つの種類のROS1が記載されている。2003年には、FIG(神経膠芽腫に融合した)と呼ばれる新規遺伝子と、ROS1の細胞内部分をコードする配列との融合事象をもたらす、染色体6q21における中間部マイクロ欠失が、ヒト神経膠芽腫細胞株において発見された。遺伝子操作された成体マウスのCNSにおけるFIG−ROS1の実験的に強制された発現は、多形性神経膠芽腫の腫瘍の形成をもたらし、この融合キナーゼの発癌活性が確認されている。多形性神経膠芽腫の脳腫瘍におけるFIG−ROS1融合体の正確な詳細な発生を記載する臨床研究は、未だ報告されていない。FIG−ROS1融合体は、神経膠芽腫のみに限定されているわけではなく、2011年には、このキメラキナーゼは、胆管癌(胆道の癌)にも発現していることが示されており、原発性腫瘍試験片において8.7%(23個のうちの2個)に現れている。神経膠芽腫およびNSCLCと同様に、2番目に多い原発性肝癌である胆管癌を有する患者の予後は、極めて不良なものであり、生存期間中央値は2年未満である。
2007年には、2つの新規ROS1融合体がNSCLCにおいて最初に報告されており、染色体間転座は、NSCLC細胞株および患者の腫瘍の両方において、SLC34A2およびCD74遺伝子と、ROS1の細胞外膜近傍部分との融合体をもたらすことが示されている(例として、CD74−ROS1融合体が図2に示されている)。神経膠芽腫、胆管癌、およびNSCLCにおける、FIG、CD74、SLC34A2、TPM3、SDC4、EZR、およびLRIG3のN末端部分とROS1キナーゼドメインとの融合は、腫瘍増殖を誘導する構成的キナーゼ活性をもたらす(図3)。発癌誘導突然変異体としてのこれらのROS1融合体の役割と合致して、SLC34A2−ROS1のsiRNA仲介下方制御は、ヒトNSCLC細胞のアポトーシス死を誘発した。同様に、FIG−ROS1発現により実験的に腫瘍原性にした細胞のROS1小分子阻害剤による処理は、強力な腫瘍細胞死滅と関連する。
NSCLCにおけるEGFRまたはALK RTK突然変異と同じように一般的ではないが、ROS融合体は明らかに反復性があり、最近の研究ではNSCLS試験片の2.6%(17/656)が、免疫組織化学およびFISHによるとROS1融合体陽性であることを示し、ALKとROS1の融合体は、同じ腫瘍において観察されることがなかった。加えて、腫瘍試験片の幾つかの独立した分析により、NSCLCの20〜30%においてROS1の有意に上昇した発現が明らかになり、肺癌病理発生におけるキナーゼの更に広範囲な役割を支持している。なお追加の悪性腫瘍が、異常ROS1シグナル伝達により誘導され得、例えば、高レベルのROS1発現が、神経膠芽腫の外科的腫瘍の30〜40%に見出されており、ROS1突然変異体が、結腸直腸および腎臓の癌細胞株において同定されている。腫瘍においてROS1融合体の存在を検出する市販の効率的で確実な診断検査は、これらの突然変異体による他の癌をプロファイルするための橋渡し研究も大きく促進し、同時に、特定の癌のより効果的で費用の少ない診断を提供し、この突然変異キナーゼの阻害剤の使用によるROS1融合体陽性腫瘍を有する患者のより効果的で費用の少ない個別化療法も可能にする。
したがって、既知のROS1融合体は、このチロシンキナーゼの大部分の一般的な突然変異体を表さないが、チロシンキナーゼ融合体関連癌の有意な割合を依然として占めており、その有意性は、追加の融合パートナーの同定により増加する。そのような融合体には、神経膠芽腫に融合した(FIG)−ROS1、SLC34A2−ROS1、TPM3−ROS1、SDC4−ROS1、EZR−ROS1、LRIG3−ROS1、およびCD74−ROS1が含まれるが、これらに限定されない。3つの融合体は全て、胆管癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、および神経膠芽腫において見出されている。したがって、一態様では、癌を有する対象において、ROS1関連癌のような疾患または状態の存在を検出または診断する、ROS1関連癌のような疾患または状態を発生する感受性または危険性を評価する、ROS1関連癌のような疾患の進行をモニターする、およびROS1関連癌の治療処置に対する感受性または抵抗性を決定する方法であって、被験者の組織試料においてROS1アンプリコンの存在を検出すること、または量を測定することと、を含み、核酸の存在、または対照と比べた核酸の増加が、RO1融合体を有する癌のような、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。本明細書で使用されるとき、「ROS−1関連癌」は、ROS1がROS1融合体の存在、過剰発現、突然変異、または他の機構を介して調節不全になる任意の癌を意味する。
一態様において、開示されている方法は、定量的PCR(qPCR)アッセイにより達成され得る。したがって、一態様では、癌を有する対象においてROS1関連融合体の存在を検出する(すなわち、存在を診断する)方法であって、組織試料を得ることと、試料から核酸を単離することと、対象の組織試料から単離された核酸にPCRを実行することと、を含み、qPCRアッセイのプライマーが、ROS1キナーゼに特異的なプライマー対および融合体切断点の5′でのwt ROS1に特異的なプライマー対を含み、サイクル閾(Ct)値が決定され、ROS1キナーゼと比べた野生型ROS1(例えば、ROS1の細胞外ドメイン(ECD))の高い(Ct)値が、融合体の、したがってROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。あるいは、Ct値の測定を伴わないが、融合体切断点の5′でROS1融合パートナーと結合する順方向プライマー、融合体切断点の3′でROS1と結合する逆方向プライマーを含み、前記プライマーが、前記融合体の全体にわたって伸び、ROS1および融合パートナー核酸の両方を有するアンプリコンの存在の検出が、融合体の、したがってROS1関連癌の存在を示す、qPCRを伴う方法が、本明細書に開示されている。したがって、開示されている方法を、ROS1関連癌の診断に使用することができる。
組織試料が対象から取り出された後、核酸(例えば、DNAまたはmRNAのようなRNA)を組織の細胞から単離できることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、更なる態様において、開示されている方法は、組織試料を得ること、および組織試料から核酸を単離することを含む。例えば、方法は、肺組織生検または喀痰試料を取り、試料からmRNAを単離することを含むことができる。mRNAが組織試料から単離される場合、cDNAをmRNAから合成することができ、PCRをcDNAに対して(例えば、RT−PCR反応の一部として)実施できることが更に理解される。したがって、一態様では、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸(例えば、mRNA)を単離することと、核酸にRT−PCR、リアルタイムPCR、またはリアルタイムRT−PCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1(例えば、ROS1のECD)およびROS1キナーゼドメインのうちの1つまたは組み合わせに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、またはリアルタイムRT−PCR反応が、野生型ROS1配列と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対(例えば、配列番号13、14、20、および21のようなROS1の細胞外ドメイン(ECD)とハイブリッド形成するプライマー)、ならびに/または野生型ROS1キナーゼドメイン配列(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対の使用を含むことと、組織試料における野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせと関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、正常な対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在が、対象がROS1関連癌を有することを示すことと、を含む方法が、本明細書に開示されている。また、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することであって、組織試料の核酸がRNAであることと、を含み、方法が、RNA試料からcDNAを合成することと、cDNAにPCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1(例えば、ROS1のECD)およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、正常対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在が、対象がROS1関連癌を有することを示すことと、を更に含むことが開示されている。開示されている方法は、サイクル閾(Ct)値を決定することであって、ROS1キナーゼと比べた野生型ROS1の高い(Ct)値が、融合体、したがってROS1関連癌の存在を示すことと、または、アンプリコンを、アンプリコンの量を検出および測定するために、アンプリコンの配列に相補的な標識プローブと接触させることと、を更に含み得ることも開示されている。
更なる代替的な方法において、ROS1融合体は、ROS1融パートナーに結合する順方向プライマーのみが第1の反応に使用され、第1の反応に続く第2の反応において、第1の反応のアンプリコンが第2の増幅、プローブに基づいた検出、または配列決定反応におけるテンプレートとして使用され、使用されるプローブまたはプライマーが、融合体切断点の3′でのROS1に特異的であり、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の検出が、融合体を示す、2ステップ検出を使用するqPCR法により検出される。また、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、ROS1融合パートナーに結合する順方向プライマーの使用による第1の増幅反応を実施することであって、第1の反応のアンプリコンが第2の増幅反応のテンプレートとして使用されることと、第1の反応の後に第2の増幅反応を実施することであって、融合体切断点の3′でのROS1配列に特異的なプライマーが、第2の増幅反応に使用されることと、c)第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の存在を検出することであって、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の検出が、ROS1融合体の存在を示すことと、組織試料においてROS1キナーゼドメインと関連する核酸の存在を検出することであって、アンプリコンの存在が、対象がROS1関連癌を有することを示すことと、を含む方法が開示されている。上記に記載された方法のように、この2ステップ検出は、C(t)値を決定すること、またはアンプリコンを、アンプリコンに相補的な標識プローブと接触させることを更に含むことができる。
追加のqPCRアッセイ法を用いて同じ情報に達し得ることが理解され、本明細書において考慮される。例えば、一態様において、ROS1関連融合体の存在を検出する対立遺伝子特異的な方法であって、対象の組織試料にqPCRを実施することであり、qPCRアッセイのプライマーがROS1キナーゼに特異的な逆方向プライマー、およびROS1融合パートナーの融合体切断点の5′に結合する順方向プライマーを含み、融合体切断点を横断して読み取るアンプリコンの存在が融合体の存在を示し、したがってROS1関連癌を示すことを含む方法が、本明細書に開示されている。そのような方法において、逆方向プライマーまたは順方向プライマーからもたらされるアンプリコンが存在するが、そのようなアンプリコンは、単一方向プライマーのみからもたらされ、シグナルは、融合事象からのシグナルよりも有意に少ないことが理解される。更に、そのようなアンプリコンのサイズは、順方向プライマーが融合パートナーの残留部分のみを増幅し、逆方向プライマーが、使用された逆方向ROS1キナーゼプライマーの5′でのROS1の部分のみを増幅するので、融合体アンプリコンのサイズと異なっている。
なお別の態様において、目的の核酸内に融合体のようなヌクレオチド変異を検出することによりROS1関連癌の存在を検出する方法であって、癌を有する対象の組織試料に対して蛍光インサイツハイブリッド形成(FISH)を実施することを含み、プローブがROS1融合体の切断点に隣接したハイブリッド形成に使用され、プローブが異なって標識され、プローブの分離がROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。FISHに基づいた検出方法の場合、近接して配置されたハイブリッド形成したプローブは、例えばROS1のような野生型RTKを示す。
ROS1融合体は、幾つかの既知の種類の癌と関連している。1つ以上のROS1融合体が特定の癌と関連し得ることが、理解される。未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、直腸結腸癌、腎癌、肝癌、胆管癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道扁平上皮癌、未分化大細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽腫瘍、悪性組織球増殖症、および神経膠芽腫が含まれるが、これらに限定されない、ROS1融合体に関連する幾つかの種類の癌が存在することが、更に理解される。したがって、一態様において、ROS−1関連癌を診断する方法であって、癌が、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌であることを含む方法が、本明細書に開示されている。また、ROS1関連癌のROS1阻害剤による治療処置に対する感受性または抵抗性を決定する方法であって、癌が、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌であることを含む方法が、開示されている。一態様において、対象は、例えば、NSCLC、神経膠芽腫、または胆管癌のような癌が以前に診断されていると理解される。
最近の研究は、小分子薬剤候補による受容体チロシンキナーゼ(RTK)の突然変異形態への阻害が、この異常細胞の繁殖を抑止し、神経芽細胞腫および他のRTK誘導腫瘍の細胞株にアポトーシスを促進することを実証している。これらの発見は、複数の臨床用途を有する検査である、RTK突然変異の個別化診断検査の必要性を強調している。例えば、そのようなアッセイは、遺伝性神経芽細胞腫に罹患している家族の子供をスクリーンして、治療がより受け入れやすい初期段階における腫瘍の検出の促進を助けるために使用され得る。RTK仲介性癌の早期検出および診断は、患者集団において生存率を顕著に増加させる。一態様において、癌、例えばROS1関連癌のような疾患または状態の存在を検出または診断する方法であって、対象の組織試料において野生型ROS1核酸、またはその変異、切断、もしくは融合体に関連するレベル、またはDNA、cDNA、またはmRNAの発現レベルの存在を検出すること、または測定することを含み、対応する増加が野生型ROS1に不在である対照と比べたROS1キナーゼの増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
したがって、一態様において、対応するROS1野生型配列を有さないROS1キナーゼ配列、またはROS1野生型配列と比べた存在量の検出は、ROS1融合体配列の存在、したがって癌の存在を示す。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の組織試料からのmRNAの存在を検出すること、または発現レベルを測定することを含み、mRNAがROS1融合体に特異的であり、対照と比べたmRNAの量の増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
ROS1阻害剤治療に対する感受性または抵抗性を診断および決定する開示されている方法は、以前に癌を有すると診断されていない対象に、対象が癌を有することを確認するためのみならず、特に、以前に癌を有すると診断された対象に対しても使用することができ、方法は、癌が特にROS1関連性である、または治療に感受性があるかを診断するため、したがって、癌を診断するためではなく、対象における既知の癌がROS1関連性である、またはROS1阻害剤による治療に感受性があるかを決定するために使用できることが理解され、本明細書において考慮される。
ROS1関連癌の原因は、野生型ROS1または既知のROS1融合体の調節不全のみならず、1つ以上の未同定ROS1融合体にも起因し得ることも理解され、本明細書において考慮される。既知の融合体のみを検出することができる方法は、以前から不明の融合体またはROS1の突然変異を検出することができない。ROS1、ROS1融合体、および/または野生型ROS1の切断、核酸変異の存在を検出するのみならず、ROS1キナーゼ活性またはROS1キナーゼアンプリコンの存在も検出することによって、当業者は、癌が、調節不全野生型ROS1、既知のROS1融合体、または以前から未同定のROS1融合体もしくはROS1の突然変異に起因するかを決定することができる。したがって、ROS1関連癌を診断する、癌の感受性もしくは危険性を評価する、またはROS1の調節不全の存在および/もしくは野生型ROS1の存在を検出する、ならびにROS1キナーゼ活性の存在を検出することを更に含む方法が、本明細書に開示されている。したがって、例えば、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の組織試料においてROS1融合体、野生型ROS1、および/またはROS1キナーゼドメインに関連する核酸の存在を検出することを含む方法が、本明細書に開示されている。本明細書に開示されている方法の一態様では、野生型ROS1およびROS1キナーゼ単独の存在または増加が検査され得ることが理解され、本明細書において考慮される。そのような態様において、野生型ROS1およびROS1キナーゼの存在、または対照と比べたその増幅の増加は、融合事象に起因しないROS−1関連癌に関与し得るROS1の調節不全を示すことができる。対照と比べて変化がないことは、ROS1が癌に関与しないことを示す。対照的に、ROS1キナーゼのみの対照と比べた存在または増幅は、ROS1融合体を示す。例えば、サイクル閾(Ct)値を測定するアッセイにおいて、サイクル閾値は、内部対照に基づいた相対値であり、高いCtは、低い発現レベルを示すことが理解される。したがって、野生型ROS1プライマー対とROS1キナーゼプライマー対の両方のCt値が内部対照と比べて高く、互いに統計的に有意な差がない場合、正常なROS1発現が観察されることが理解される。野生型およびROS1キナーゼの両方のCt値が低い(すなわち、発現レベルが高い)が、キナーゼと野生型のプライマー対の間に統計的に有意な差がない場合、ROS1は過剰発現している。ROS1のCt値がROS1キナーゼのCt値と比べて高い(すなわち、発現が低い)場合、ROS1融合体が存在する。
ROS1関連癌を診断する代替的な方法において、方法は第1の増幅反応を含むことができ、融合体切断点の5′でROS1融合体に結合する順方向プライマーのみが、アンプリコンの生成に使用される。アンプリコンは、融合体切断点の3′でのROS1に特異的なプライマーまたはプローブを使用する配列決定、増幅、またはプローブに基づいた検出のテンプレートとして使用される。アンプリコンにおけるROS1の存在は、ROS1融合体、したがってROS1関連癌の存在を示す。
したがって、上記に開示されているように、癌を有する患者においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の核酸に第1のPCRに基づいた反応を実施することと、第1の反応のアンプリコンに、第2のPCRに基づいた反応、配列決定反応、またはプローブに基づいた検出を実施することと、を含み、第1のPCR反応のプライマーが、融合体切断点の5′でROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーであり、第2のPCR反応または検出に使用される任意のプライマーまたはプローブが、融合体切断点の3′でのROS1に特異的であり(例えば、配列番号、4、5、7、8、15、16、17、および18)、第1の反応のアンプリコンにおけるROS1の存在が、ROS1融合体、したがってROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
別の態様では、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の核酸にPCRに基づいた反応を実施することを含み、順方向プライマーが、ROS1融合パートナーに特異的であり、融合体切断点の5′に結合し、逆方向プライマーが、ROS1に特異的であり、融合体切断点の3′に結合し、ROS1およびROS1融合パートナーを含有するアンプリコンの検出が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。
あるいは、FISHが検出アッセイとして使用される場合、ROS1の切断点に隣接する配列とハイブリッド形成する、間隔を開けて分離されたプローブの存在は、融合事象、したがって癌の存在を示す。
いったんROS1関連癌が、前述の診断方法のいずれかの使用により検出される、またはその存在が診断されると、次に方法は、ROS1関連癌を有する対象に、ROS1阻害剤を投与することを更に含むことができる。
一態様では、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、ROS1キナーゼ活性の存在を検出することを含む方法が、本明細書に開示されている。したがって、例えば、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、核酸にRT−PCR、リアルタイムPCR、またはリアルタイムRT−PCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、RT−PCRまたはリアルタイムPCR反応が、野生型ROS1配列(例えば、配列番号13、14、20、および21)と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対、ならびに野生型ROS1キナーゼドメイン配列(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対のうちの1つ、または組み合わせの使用を含むことと、組織試料における野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせと関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、正常な対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在が、対象がROS1関連癌を有することを示すことと、を含む方法が、本明細書に開示されている。アンプリコンの不在、または正常な対照と等しいアンプリコンのレベルは、癌がROS1関連癌であることを示す。また、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することであって、組織試料の核酸がRNAであることと、を含む方法が開示されており、ここで方法は、RNA試料からcDNAを合成することと、cDNAにPCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することを更に含み、正常対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在は、対象がROS1関連癌を有することを示す。更なる態様において、開示されている方法は、リアルタイムRT−PCRの産物の配列(例えば、配列番号6、8、19、および22)と相補的なプローブを利用することができる、または方法は、野生型ROS1および野生型ROS1キナーゼのサイクル閾(Ct)値を決定することを含むことができ、ROS1キナーゼと比べた野生型ROS1の高い(Ct)値は、融合体の存在を示す。癌がROS1関連癌であると決定されたとき、ROS1阻害剤治療に感受性のある癌を有する対象に、ROS1阻害剤を投与することを更に含む方法も開示されている。逆に、癌がrOS1関連癌ではない場合、方法は、ROS1阻害剤以外の治療の形態を使用して、癌を有する患者を治療することを更に含むことができる。
癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する更なる代替的な方法において、ROS1融合体は、ROS1融合体パートナーに結合する順方向プライマーのみが第1の反応に使用され、第1の反応に続く第2の反応において、第1の反応のアンプリコンが第2の増幅、プローブに基づいた検出、または配列決定反応におけるテンプレートとして使用され、使用されるプローブまたはプライマーが、融合体切断点の3′でのROS1に特異的であり、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の検出が、融合体、したがってROS1関連癌を示す、2ステップ検出を使用するqPCR法により検出される。また、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、ROS1融合パートナーに結合する順方向プライマーの使用による第1の増幅反応を実施することであって、第1の反応のアンプリコンが第2の増幅反応のテンプレートとして使用されることと、第1の反応の後に第2の増幅反応を実施することであって、融合体切断点の3′でのROS1配列(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)に特異的なプライマーが、第2の増幅反応に使用されることと、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の存在を検出することであって、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の検出が、ROS1融合体、したがってROS1関連癌を有することを示すことと、を含む方法が開示されている。癌がROS1関連癌であると決定されたとき、ROS1阻害剤治療に感受性のある癌を有する対象に、ROS1阻害剤を投与することを更に含む方法も開示されている。逆に、癌がrOS1関連癌ではない場合、方法は、ROS1阻害剤以外の治療の形態を使用して、癌を有する患者を治療することを更に含むことができる。
また、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、細胞内の核酸を、ROS1キナーゼとハイブリッド形成する第1のプローブおよびROS1の融合体切断点の3′でのROS1配列とハイブリッド形成する第2のプローブと接触させることを含み、異なって標識されるプローブ、分離されたプローブにより示されている分裂遺伝子座の検出が、ROS1融合体の存在を示し、そのことがROS1関連癌の存在を示す方法が、開示されている。一態様において、プローブが、リアルタイムRT−PCRの産物の配列と相補的な配列を含み、プローブが、その末端にレポーター色素およびその別の末端に消光剤色素を有することが、開示されている。プローブは、配列番号6、8、19、および22が含まれるが、これらに限定されない表7のプローブのいずれかから選択され得ることが、更に理解される。
mRNAの検出および定量化
本明細書に開示されている方法は、例えば、点突然変異および切断の形態の核酸変異の検出、またはROS1融合体の発現、異常野生型ROS1の発現、野生型ROS1の発現、もしくはROS1切断突然変異体の発現の検出に関する。これら後者の発現レベルの検出では、方法は、mRNAの存在量もしくは存在のいずれか、または両方を検出することを含む。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法および組成物であって、対象の組織試料におけるmRNAの存在またはレベルを測定することを含み、対象と比べたmRNAの量の増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法および組成物が、本明細書に開示されている。
多数の広範囲に使用されている手順が、全またはポリ(A)RNA試料における特定のmRNAの存在量を検出および決定するために存在する。例えば、特定のmRNAは、ノーザンブロット分析、ヌクレアーゼ保護アッセイ(NPA)、インサイツハイブリッド形成(例えば、蛍光インサイツハイブリッド形成)、リアルタイムPCR反応、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、およびマイクロアレイの使用により検出され得る。
これらの技術は、それぞれ、特定のRNAを検出するため、およびこれらの発現レベルを正確に決定するために使用され得る。一般に、ノーザン分析は、転写物のサイズについての情報を提供する唯一の方法であり、一方、NPAは、複数のメッセージを同時に調べる最も容易な方法である。インサイツハイブリッド形成は、組織または細胞型の範囲内の特定の遺伝子の発現を局在化するために使用され、RT−PCRは、遺伝子発現を検出および定量化する最も感度の高い方法である。
リアルタイムPCR、RT−PCR、およびリアルタイムRT−PCRは、出発材料の不足または特定のmRNAの相対存在量に関わらず、任意の遺伝子のRNA転写物の検出を可能にする。RT−PCRにおいて、RNAテンプレートは、レトロウイルスリバーストランスクリプターゼを使用して相補的DNA(cDNA)にクローンされる。次にcDNAは、DNAポリメラーゼを使用して、PCRにより指数関数的に増幅される。逆転写およびPCR反応は、同じ、または異なった管において生じ得る。RT−PCRは、分解したRNAにいくらか耐容性がある。RNAが、プライマーがまたがっている領域内で無傷である限り、標的は増幅される。
相対的な定量的RT−PCRは、内部対照を目的の遺伝子と同時に増幅することを伴う。内部対照は、試料を正規化するために使用される。いったん正規化されると、特定のmRNAの相対存在量の直接比較を、試料の全体にわたって行うことができる。全ての実験試料にわたって一定レベルの発現を有する(すなわち、実験処理により影響を受けない)内部対照を選択することが、重要である。一般的に使用される内部対照(例えば、GAPDH、β−アクチン、シクロフィリン)は、多くの場合に発現が変動し、したがって適切な内部対照となり得ない。加えて、最も一般的な内部対照は、研究されるmRNAよりもはるかに高いレベルで発現する。相対RT−PCRの結果が有意義なものになるため、PRC反応の全ての産物は、増幅の線形範囲で分析されなければならない。このことは、存在量のレベルが広範囲に異なる転写物では困難になる。
競合的RT−PCRは、絶対定量化に使用される。この技術は、サイズまたは配列における小さな差により内在性標的と区別され得る競合者RNAを設計、合成、および正確に定量化することを伴う。競合者RNAの既知の量を実験試料に加え、RT−PCRを実施する。内在性標的からのシグナルを競合者のシグナルと比較して、試料中に存在する標的の量が決定される。
一態様では、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の試験試料における、例えばmRNAまたはDNAのような核酸に、リアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書において開示されている。また、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の組織試料にFISHを実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、ROS1融合体切断点の別々の側面における1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができるプローブを含み、分離されたプローブにより示されている分裂遺伝子座が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。このアッセイに使用されるプローブの例には、表7において見出されるものが含まれる。
開示されている方法が野生型ROS1、ROS1融合体、およびROS1キナーゼドメイン活性の検出に使用され得るので、また、対象においてROS1関連を診断する、またはROS1キナーゼの調節不全を検出する方法であって、対象の組織試料からのmRNAに第1のRT−PCRを実施することであって、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)が、ROS1キナーゼ配列(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)と特異的にハイブリッド形成することができる1つのプライマー対、ならびに任意の融合体切断点(すなわち、例えば配列番号13、14、20、および21のような外部野生型ROS1部位)の5′でのROS1と特異的にハイブリッド形成することができる少なくとも1つのプライマー対を含むことと、それぞれのプライマー対のアンプリコンのサイクル閾値を決定することであって、野生型プライマー対のアンプリコンのサイクル閾値が、統計的に有意な量でROS1キナーゼのサイクル閾値より高いことが、融合体または突然変位ROS1の存在を示すことと、を含む方法が、本明細書において開示されている。また、対象においてROS1関連癌を診断する、またはROS1キナーゼの調節不全を検出する方法であって、対象の組織試料からのmRNAに第1のRT−PCR反応を実施することであって、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)が、任意の融合体切断点の5′でROS1融合パートナーと特異的にハイブリッド形成することができる1つのプライマー対を含むことと、順方向でのみ増幅することと、を含む方法が開示されており、ここで方法は、融合体切断点の3′でROS1配列と特異的にハイブリッド形成する1つ以上のプライマーを使用して、第1の反応におけるアンプリコンの存在を検出すること、または増幅することを更に含み、第1の反応のアンプリコンにおけるROS1配列の存在は、ROS1融合体の存在を示す。
ノーザン分析は、転写物のサイズを決定するため、ならびに代替的にスプライスされた転写物および多重遺伝子ファミリーメンバーを同定するための最も容易な方法である。これを、ブロットにおける全ての試料間の所定のメッセージの相対存在量を直接比較するために使用することもできる。ノーザンブロット手順は、直接的であり、多様な時点での進行を評価する機会を提供する(例えば、RNA試料の無傷性、およびRNA試料が膜に移動する効率)。RNA試料は、最初に、変性条件下でアガロースゲルの電気泳動を介してサイズにより分けられる。次にRNAは、膜に移され、架橋され、標識プローブとハイブリッド形成する。非同位体または高比活性放射標識プローブを使用することができ、ランダム刺激、ニック翻訳、またはPCR生成DNAプローブ、インビトロ転写RNAプローブ、およびオリゴヌクレオチドが含まれる。加えて、部分的な相同性のみを有する配列(例えば、異なる種からのcDNA、またはエクソンを含有し得るゲノムDNAフラグメント)を、プローブとして使用することができる。
ヌクレアーゼ保護アッセイ(NPA)(リボヌクレアーゼ保護アッセイとS1ヌクレアーゼアッセイの両方を含む)は、特定のmRNAを検出および定量化する感度の高い方法である。NPAの基礎は、アンチセンスプローブ(放射標識または非同位体)とRNA試料との溶液ハイブリッド形成である。ハイブリッド形成した後、一本鎖非ハイブリッド形成プローブおよびRNAは、ヌクレアーゼにより分解される。残りの保護されたフラグメントが、アクリルアミドゲルにおいて分けられる。溶液ハイブリッド形成は、典型的には、膜に基づいたハイブリッド形成よりも効率的であり、20〜30μgが最大のブロットハイブリッド形成と比較して、100μgまでの試料RNAを収容することができる。NPAも、RNA試料分解に対してノーザン分析より感度が低く、それは、切断がプローブと重複した領域のみにおいて検出されるからである(プローブは、通常、約100〜400個の塩基長さである)。
NPAは、幾つかのRNA種の同時検出における選択法である。溶液ハイブリッド形成および後に続く分析の際に、個別のプローブ/標的相互作用は、互いに完全に独立している。したがって、幾つかのRNA標的および適切な対照は、個別のプローブが異なる長さのものである限り、同時にアッセイされ得る(同じ反応において12個まで使用される)。NPAも、mRNA末端およびイントロン/エクソン接合部を正確にマップするために一般的に使用される。
インサイツハイブリッド形成(ISH)は、細胞または組織において特定のmRNAを局在化する強力で多用途のツールである。ノーザン分析およびヌクレアーゼ保護アッセイと異なり、ISHは、RNAの単離または電気泳動分離を必要としない。プローブのハイブリッド形成は、細胞または組織内で生じる。細胞構造が手順の全体にわたって維持されるので、ISHは、組織試料内のmRNAの位置についての情報を提供する。ISHは、蛍光インサイツハイブリッド形成(FISH)に達する蛍光マーカーと組み合わされ得る。
手順は、中性緩衝ホルマリンに試料を固定し、組織をパラフィンに埋め込むことにより開始される。次に試料を薄く切って薄切片にし、顕微鏡スライドに載せる。(あるいは、組織を凍結して薄切りにし、パラホルムアルデヒドに後固定することができる。)一連の洗浄を行って、切片を脱ロウおよび再水和した後、プロテイナーゼK消化を実施して、プローブの利用可能性を増加し、次に標識されたプローブを試料切片とハイブリッド形成させる。放射標識プローブを、スライド上の乾燥させた液体膜により可視化し、同時に、非同位体標識プローブを、比色または蛍光試薬により都合良く検出する。
DNAの検出および定量化
本明細書に開示されている方法は、例えば、点突然変異および切断の形態の核酸変異の検出、またはROS1融合体の発現、異常野生型ROS1の発現、もしくはROS1切断突然変異体の発現の検出に関する。これら後者の発現レベルの検出では、方法は、mRNAの存在量もしくは存在のいずれか、または両方を検出することを含む。あるいは、検出を、DNA、例えばcDNAの存在量または存在に向けることができる。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法および組成物であって、対象の組織試料におけるDNAの存在またはレベルを測定することを含み、対照と比べたDNAの量の増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法および組成物が、本明細書に開示されている。
広範囲に使用されている多数の手順が、試料における特定のDNAの存在量を検出および決定するために存在する。例えば、PCRの技術は、微量の標的核酸の増幅、後に続く検出を可能にする。PCRの詳細は当該技術において十分に記載されており、例えば、米国特許第4,683,195号、Mullis et al、同第4,683,202号、Mullis、および同第4,965,188号、Mullis et alが含まれる。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸の変性鎖にアニールされ、プライマー延長産物は、ポリメラーゼによるデオキシヌクレオシド三リン酸の重合により形成される。典型的なPCR法は、テンプレート核酸変性、プライマーアニーリング、および熱安定ポリメラーゼの作用によるアニールプライマーの延長の反復サイクルを伴う。プロセスは、標的核酸の指数関数的増幅をもたらし、したがって試料において非常に低い濃度で存在する標的の検出を可能にする。開示されている方法に利用することもできる、当該技術において既知の変形PCR法が存在することが理解され、本明細書において考慮され、例えば、定量的PCR(QPCR)、マイクロアレイ、リアルタイムPCT、ホットスタートPCR、ネステッドPCR、対立遺伝子特異的PCR、およびタッチダウンPCRである。
マイクロアレイ
アレイは、試料の整然とした配列であり、既知と不明のDNA試料を塩基対形成規則に従って整合させ、不明のものを同定するプロセスを自動化する媒体を提供する。アレイ実験は、マイクロプレートまたは標準的なブロット膜のような一般的なアッセイ系を使用することができ、手作業により作り出すことができる、またはロボット工学を使用して試料を沈着させることができる。一般に、アレイは、マクロアレイまたはマイクロアレイとして記載され、差は、試料スポットのサイズである。マクロアレイは、約300ミクロン以上の試料スポットのサイズを含有し、現存のゲルおよびブロットスキャナーにより容易に画像化され得る。マイクロアレイの試料スポットサイズは、300ミクロン以下であるが、典型的には、直径が200ミクロン未満であり、これらのアレイは、通常、数千のスポットを含有する。マイクロアレイは、完全な系として一般に市販されていない特殊なロボット工学および/または画像化器機を必要とする。この技術を記載するために文献において使用されている用語には、バイオチップ、DNAチップ、DNAマイクロアレイ、GENECHIP(登録商標)(Affymetrix,Inc.,高密度の、オリゴヌクレオチドに基づいたDNAアレイを意味する)、および遺伝子アレイが含まれるが、これらに限定されない。
DNAマイクロアレイまたはDNAチップは、高速ロボット工学により、一般に、ガラスまたはナイロン基板上に作製され、それに、既知の同一性を有するプローブを使用して相補的結合を決定し、したがって大量の平行遺伝子発現および遺伝子発見の研究を可能にする。単一のDNAチップによる実験は、数千の遺伝子の情報を同時に提供することができる。開示されているマイクロアレイを使用して、遺伝子発現、疾患診断、遺伝子発見、薬剤発見(薬理ゲノミクス)、および毒物学研究または毒物ゲノミクスをモニターできることが、本明細書において考慮される。
既知の同一性を有する整列されたDNA配列の特性に関して、DNAマイクロアレイ技術に2つの変形がある。I型マイクロアレイは、ロボットスポット形成を使用してガラスのような固体表面に固定化され、かつ別々に、または混合物として一連の標的に曝露されたプローブcDNA(500〜5,000個の塩基長さ)を含む。この方法は、伝統的にDNAマイクロアレイと呼ばれる。I型マイクロアレイにより、1つ以上のポリヌクレオチド配列の局在化された複数のコピー、好ましくは単一ポリヌクレオチド配列のコピーが、基板表面の複数の画定された領域に固定化される。ポリヌクレオチドは、5〜10,000個のヌクレオチドの範囲のヌクレオチドの鎖を意味する。これらのポリヌクレオチド配列の固定化コピーは、ハイブリッド形成実験におけるプローブとしての使用に適している。
固定化プローブにより被覆されたビーズを調製するため、ビーズを、所望のプローブ配列を含有する溶液に浸漬し、次に共有または非共有的な方法によりビーズ上に固定化する。あるいは、プローブがロッド上に固定化される場合、所定のプローブをロッドの画定された領域にスポット形成することができる。典型的な分配器には、基板に対してマイクロピペットの位置を制御するロボット系により基板に溶液を送達するマイクロピペットが含まれる。試薬が反応領域に同時に送達され得るように、分配器は多重式であり得る。一実施形態において、マイクロアレイは、オリゴヌクレオチド合成試薬のような目的の液体を含有する細管がアダプターに囲まれている、圧電効果に基づいたインクジェット技術の使用により形成される。アダプター全体に送られた電荷は、アダプターを管と異なる速度で拡張させ、液体の小滴を基板に向かって押し出す。
試料は、目的のポリヌクレオチド(ポリヌクレオチド標的)を含有する任意の試料であり得、任意の体液(血液、尿、唾液、粘液、胃液など)、培養細胞、生検、または他の組織調製物から得られ得る。DNAまたはRNAは、当業者に周知の多数の方法のいずれかに従って試料から単離され得る。一実施形態において、全RNAは、TRIzol全RNA単離試薬(Life Technologies,Inc.,Rockville,Md.)を使用して単離され、RNAは、オリゴd(T)カラムクロマトグラフィーまたはガラスビーズを使用して単離される。ハイブリッド形成およびプロセシングの後、得られたハイブリッド形成シグナルは、試料に添加された対照標的ポリヌクレオチド配列の量を正確に反映するべきである。
基板上の複数の画定領域は、多様な様式により配列され得る。例えば、領域は、ケーシングの長さに対して垂直または平行に配列され得る。更に、標的は、基板に直接結合される必要はなく、むしろリンカー基を介して基板に結合され得る。リンカー基は、典型的には、6〜50個の原子長さに変わり得る。リンカー基には、エチレングルコールオリゴマー、ジアミン、二酸などが含まれる。基板表面上の反応性基は、リンカーの一方の末端部分と反応して、リンカーを基板に結合させる。次にリンカーの他方の末端部分は、プローブと結合するために官能化される。
試料のポリヌクレオチドを1つ以上の標識部分により標識して、ハイブリッド形成したプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の検出を可能にすることができる。標識部分には、分光学的、光化学的、生化学的、生体電子的、免疫学的、電気的、または化学的な方法により検出され得る組成物が含まれ得る。標識部分には、32P、33P、または35Sのような放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーおよび色素のような分光マーカー、磁気標識、結合酵素、質量分析タグ、スピン標識、電子移動供与体および受容体、ビオチンなどが含まれる。
標識化は、ポリメラーゼ連鎖反応、およびインビトロまたはインビボ転写反応のような増幅反応の際に実施することができる。あるいは、標識部分を、プローブ標的複合体が形成された後に組み込むことができる。一実施形態では、ビオチンが、上記に記載された増幅ステップの際に最初に組み込まれる。ハイブリッド形成反応の後、非結合核酸をすすぎ洗い流して、それにより、ポリヌクレオチドプローブとハイブリッド形成した標的ポリヌクレオチドに結合しているビオチンのみが、基板に結合したままとなる。次に、ビオチンに高い親和性で結合する、アビジン−フィコエリトリンのようなアビジン結合蛍光体が添加される。
ハイブリッド形成は、ポリヌクレオチドプローブおよび相補的な標的に、塩基対形成を介して安定した二重鎖を形成させる。ハイブリッド形成方法は当業者に良く知られている。ハイブリッド形成のための厳密な条件は、塩濃度、温度、ならびに他の化学薬品および条件によって確定され得る。ハイブリッド形成時間、洗剤(ドデシル硫酸ナトリウム、SDS)または溶媒(ホルムアミド)の濃度、および担体DNAの包含または除外のような多様な追加のパラメーターも、当業者には良く知られている。これらの条件に対する追加的な変動は、当業者に容易に理解される。
複合体形成を検出する方法は、当業者に良く知られている。一実施形態において、ポリヌクレオチドプローブは、蛍光標識により標識され、複合体形成のレベルおよびパターンの測定は、蛍光顕微鏡法、好ましくは共焦点蛍光顕微鏡法によって達成される。アルゴンイオンレーザーは、蛍光標識を励起させ、放射は光電子増倍管に向けられて、発光の量が検出および定量化される。検出されたシグナルは、マイクロアレイの各位置におけるプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の量と比例するべきである。蛍光顕微鏡をコンピューター作動型スキャナー装置と関連させて、ハイブリッド形成の強度の定量的な二次元画像を生成することができる。走査画像を検査して、それぞれのハイブリッド形成標的ポリヌクレオチドの存在量/発現レベルが決定される。
異なるハイブリッド形成実験において、2つ以上の異なる生物学的試料からのポリヌクレオチド標的は、異なる放射波長を有する2つ以上の異なる蛍光標識により標識される。蛍光シグナルは、特定の波長を検出するために異なる光電子増倍管セットにより別々に検出される。2つ以上の試料における標的ポリヌクレオチドの相対存在量/発現レベルが得られる。典型的には、マイクロアレイ蛍光強度は、1つを超えるマイクロアレイが類似の試験条件下で使用される場合、ハイブリッド形成強度の変動を考慮して正規化され得る。一実施形態において、個別のポリヌクレオチドプローブ/標的複合体のハイブリッド形成強度は、それぞれのマイクロアレイに含有されている内部正規化標準から導きだされた強度を使用して正規化される。
II型マイクロアレイは、インサイツ(チップ上)、または従来の合成、続くチップ上の固定化のいずれかにより合成されるオリゴヌクレオチド(20〜80塩基長のオリゴ)またはペプチド核酸(PNA)プローブのアレイを含む。アレイは、標識試料DNAに曝露され、ハイブリッド形成され、相補配列の同一性/存在量が決定される。「歴史的に」DNAチップと呼ばれるこの方法は、Affymetrix,Inc.により開発され、GENECHIP(登録商標)の商標でフォトリソグラフィー的に製作された製品が販売されている。
遺伝子発現にII型アレイを使用することについての基本的な概念は、単純である。実験試料のmRNAから誘導された標識cDNAまたはcRNA標的を、固体支持体に結合された核酸プローブとハイブリッド形成させる。それぞれのDNA位置に関連する標識の量をモニターすることにより、それぞれのmRNA種が表す存在量を推測することが可能である。ハイブリッド形成は核酸を検出および定量化するために数十年間使用されてきたが、小型化技術と大量の増加しつつある配列情報との組み合わせは、遺伝子発現を研究することができる規模を桁外れに広げている。
マイクロアレイの製造は、5平方インチの石英ウエハにより開始することができる。最初に、石英を洗浄して、表面全体の均一なヒドロキシル化を確実にする。石英は、天然にヒドロキシル化されているので、プローブをアレイに位置させるために後に使用されるリンカー分子のような化学薬品の結合に優れた基板を提供する。
ウエハは、石英のヒドロキシル基と反応し、かつ共有結合分子のマトリックスを形成するシランの浴の中に配置される。これらのシラン分子間の距離が、プローブの実装密度を決定し、アレイが僅か1.28平方センチメートルの範囲内に500,000個を超えるプローブ位置または特徴を保持することを可能にする。これらの特徴は、それぞれ数百万の同一DNA分子を有する。シラン膜は、プローブの組み立てを開始させる均一のヒドロキシル密度を提供する。シランマトリックスに結合しているリンカー分子は、光により空間的に活性化され得る表面を提供する。
プローブ合成は並行して生じ、複数の成長している鎖へのA、C、T、またはGヌクレオチドの付加をもたらす。どのオリゴヌクレオチド鎖がそれぞれのステップにおいてヌクレオチドを受け取るかを確定するために、個別の特徴の寸法に対応する18〜20平方ミクロンの窓を有するフォトリソグラフマスクが、被覆ウエハを覆って配置される。窓は、それぞれのプローブの所望の配列に基づいて、マスクの全体にわたって分布されている。紫外線を合成の第1ステップにおいてマスクの上から照らすと、曝露されたリンカーは脱保護され、ヌクレオチドカップリングに利用可能になる。
所望の特徴が活性化されると、除去可能な保護基を有する単一種類のデオキシヌクレオチドを含有する溶液は、ウエハの表面に融合される。核酸が活性化リンカーと結合し、合成プロセスを開始する。
オリゴヌクレオチドの配列におけるそれぞれの位置が1〜4個のヌクレオチドに占められ、ウエハ1個あたり25×4、または100個の異なるマスクの見掛けの必要性をもたらし得るが、合成プロセスは、この必要条件を有意に低減するように設計され得る。マスクの使用を最小限にすることを助けるアルゴリズムは、個別のプローブの合成速度を調整し、同じマスクを複数回使用できる状況を確認することによって、プローブ成長をどのように最適に協調させるかを計算する。
選択および設計における幾つかの主要な要素は、意図される用途に関わりなく、全てのマイクロアレイの製造に共通している。プローブのハイブリッド形成を最適化する戦略は、例えば、プローブ選択の過程において必ず含まれる。特定のpH、塩、および温度条件下でのハイブリッド形成は、融解温度を考慮に入れ、所望のハイブリッド形成挙動と相関する経験則を用いて、最適化され得る。
遺伝子の活性の全体像を得るために、幾つかのプローブは、複数のスプライスまたはポリアデニル化変種により共有されている領域から選択される。他の場合では、変種の間で区別される特有のプローブが好ましい。プローブ間の距離も、選択過程に要素として含まれる。
一連の異なる戦略を使用して、配列における個別のヌクレオチドを調査するのに複数のプローブに依存する遺伝子型判定アレイのためにプローブを選択する。標的塩基の同一性は、それぞれが4個の可能な塩基のうちの1個を含有する、標的位置のみが異なる4個の同一プローブを使用して推定され得る。
あるいは、コンセンサス配列の存在を、特定の対立遺伝子を表す1または2個のプローブの使用により検査することができる。ヘテロ接合性または遺伝子混合型試料を遺伝子型判定するため、多くのプローブを有するアレイを作り出して、重複性情報を提供し、明確な遺伝子判定をもたらすことができる。加えて、遺伝子プローブを幾つかの用途に使用して、適応性を最大化することができる。例えば、幾つかのプローブアレイは、単一ヌクレオチド多型(SNP)を同定する幾つかのプロトコールに使用されるもののように、複合体混合物から個別の反応生成物を分離および分析することを可能にする。
リアルタイムPCR
一態様において、開示されている診断方法は、リアルタイムPCR反応法により実施することができる。例えば、一態様では、ROS1関連融合体の存在を検出する方法、または対象においてROS1関連癌を診断する、もしくはROS1キナーゼの調節不全を検出する方法であって、対象の組織試料からのmRNAに第1のRT−PCR反応を実施することであって、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)が、ROS1キナーゼ配列と特異的にハイブリッド形成することができる1つのプライマー対、および任意の融合体切断点(すなわち、外部野生型ROS1部位)の5′でのROS1に特異的にハイブリッド形成することができる少なくとも1つのプライマー対を含むことと、それぞれのプライマー対のアンプリコンのサイクル閾値を決定することであって、野生型プライマー対のアンプリコンのサイクル閾値が、統計的に有意な量でROS1キナーゼのサイクル閾値より高いことが、融合体または突然変位ROS1の存在を示すことと、を含む方法が、本明細書において開示されている。
リアルタイムPCRは、終点検出と対照的に、それぞれのPCRサイクルの際に(すなわち、リアルタイムに)、アンプリコン産生の指標として反応の際に放射される蛍光をモニターする。反応のリアルタイム進行を、幾つかの系において見ることができる。リアルタイムPCRは、アンプリコンのサイズを検出しないので、DNAとcDNAの増幅の差異化は可能ではないが、SYBRグリーンが使用されない限り、非特異的増幅により影響を受けない。リアルタイムPCR定量化は、PCR産物の後PCRプロセシングを排除する。このことは、処理量を増加すること、および汚染を持ち越す機会を低減することの助けとなる。リアルタイムPCRは、107倍までの広いダイナミックレンジも提供する。任意のアッセイのダイナミックレンジは、標的濃度がどれほど変化し、依然として定量化され得るかを決定する。広いダイナミックレンジは、標的と正規化群との広範囲の比率を、等しい感受性および特異性によりアッセイできることを意味する。したがって、ダイナミックレンジが広いほど、正確な定量化になる、ということである。RT−PCRと組み合わされたとき、リアルタイムRT−PCR反応は、増幅プロセスが進行すると、アンプリコンの可視化を提供することによって、アンプリコンの量を測定するために必要な時間を低減する。
リアルタイムPCR系は、蛍光レポーターの検出および定量化に基づいている。このシグナルは、反応におけるPCR産物の量と正比例して増加する。それぞれのサイクルにおける蛍光放射の量を記録することによって、PCR産物の量における第1の有意な増加が標的テンプレートの初回量と相関する対数期において、PCR反応をモニターすることが可能である。核酸標的の出発コピー数が多いほど、早期に蛍光の有意な増加が観察される。3〜15サイクルで測定されたベースライン値を超える蛍光の有意な増加は、蓄積されたPCR産物の検出を示すことができる。
固定蛍光閾値は、ベースラインを有意に超えて設定され、操作者により変更され得る。パラメーターCT(閾値サイクル)は、蛍光放射が固定閾値を超えるサイクル数として定義される。
DNA増幅についての3つの主な蛍光モニター系があり、(1)加水分解プローブ、(2)ハイブリッド形成プローブ、および(3)DNA結合剤である。加水分解プローブには、TaqManプローブ、モレキュラービーコン、およびスコーピオンが含まれる。これらは、cDNA試料における標的配列の量を測定するため、Taqポリメラーゼの蛍光発生5′エキソヌクレアーゼ活性を使用する。
TaqManプローブは、通常5′塩基に蛍光色素および典型的には3′塩基に消光色素(通常、TAMRA)を含有するプライマー(10℃を超えるTm値の20〜30個の塩基長さ)よりも長いオリゴヌクレオチドである。照射されると、励起蛍光色素は、蛍光ではなく近くの消光色素分子にエネルギーを移動する(これは、FRET=Forsterまたは蛍光共鳴エネルギー移動と呼ばれる)。したがって、レポーターおよび消光剤の近接性は、任意の蛍光の放射を防止し、一方、プローブは無傷である。TaqManプローブは、PCR産物の内部領域にアニールするように設計される。ポリメラーゼが、TaqManプローブが結合しているテンプレートを複製する場合、その5′エキソヌクレアーゼ活性がプローブを切断する。このことは、消光剤の活性を終了させ(FRETなし)、レポーター色素が蛍光の放射を開始し、これはそれぞれのサイクルにおいてプローブ切断の率に比例して増加する。PCR産物の蓄積は、レポーター色素の蛍光における増加をモニターすることにより検出される(プライマーが標識されていないことに留意すること)。TaqManアッセイは、包括的熱サイクルパラメーターおよびPCR反応条件を使用する。プローブが標的とハイブリッド形成する場合にのみ切断が生じるので、検出された蛍光の源は特定の増幅である。ハイブリッド形成および切断のプロセスは、産物の指数関数的蓄積を妨げない。蛍光発生プローブの1つの特定の必要条件は、5′末端にGがないことである。レポーター色素に隣接する「G」は、切断の後であってもレポーターの蛍光を消光し得る。
モレキュラービーコンも、蛍光(FAM、TAMRA、TET、ROX)および消光色素(典型的には、DABCYL)をいずれかの末端に含有するが、これらはヘアピン構造に適合するように設計され、一方、溶液中に遊離して、FRETが生じるように蛍光色素と消光剤とを近接させるように設計される。これらは、非常に安定したハイブリッドまたはステムを形成する相補的配列を持つ2つのアームを有する。このヘアピン立体配置におけるレポーターと消光剤の近接性は、レポーターの蛍光を抑制する。ビーコンが、アニーリングステップの際に標的とハイブリッド形成する場合、レポーター色素は、消光剤から離され、レポーターが蛍光する(FRETは生じない)。モレキュラービーコンは、PCRの際に無傷のままであり、蛍光放射のあらゆるサイクルにおいて標的と結合していなければならない。このことは、利用可能なPCR産物の量と相関する。全てのリアルタイムPCR化学薬品は、SYBRグリーンが使用される場合、プラットフォームが融解曲線分析に適している限り、スペクトル的に特有の蛍光/消光対を有するそれぞれのプローブ/ビーコンを設計することによって、複数のDNA種(多重化されたもの)の検出を可能にする。多重化により、標的(複数可)および内在性対照を単一管において増幅することができる。
スコーピオンプローブでは、配列特異的刺激およびPCR産物検出が、単一のオリゴヌクレオチドの使用により達成される。スコーピオンプローブは、非ハイブリッド形成状態においてステム−ループ立体配置を維持する。蛍光体は、5′末端に結合され、3′末端に結合した部分により消光される。ステムの3′部分も、プライマーの延長産物に相補的である配列を含有する。配列は、非増幅性モノマーを介して特定のプライマーの5′末端に結合している。スコーピオンプライマーが延長した後、特定のプローブ配列は、延長したアンプリコンの範囲内で補体に結合することができ、それによりヘアピンループを開放することができる。このことは、蛍光が消光するのを防止し、シグナルが観察される。
別の代替案は、二本鎖DNA結合色素化学であり、これは、非配列特異的蛍光挿入剤(SYBR−グリーンIまたは臭化エチジウム)の使用により、(非特異的増幅およびプライマー−二量体複合体を含む)アンプリコン産物を定量化する。これはssDNAに結合しない。SYBRグリーンは、溶液中ではほとんど蛍光を示さないが、二本鎖DNAと結合すると強力な蛍光シグナルを放射する、蛍光発生副溝結合色素である。SYBRグリーンに基づいたリアルタイムPCRの欠点には、広範囲な最適化の必要性が含まれる。更に、非特異的増幅は、アンプリコン同定のために追跡アッセイ(融点曲線または解離分析)を必要とする。方法は、HFE−C282Y遺伝子型判定に使用されてきた。別の制御可能な問題は、アンプリコンが長いほど強力なシグナルを作り出すことである(他の要素と組み合わせると、このことはCDCカメラに飽和を引き起こす。下記を参照すること)。通常、SYBRグリーンは、単一反応に使用されるが、融点分析と合わせると、多重反応に使用することができる。
閾値サイクルまたはCT値は、ΔRnにおける有意な増加が最初に検出されるサイクルである(ΔRnの定義は、下記を参照すること)。閾値サイクルは、系が対数線形相におけるPCR産物の指数関数的成長に関連するシグナルの増加を検出し始めた時である。この相は、反応について最も有用な情報を提供する(当然のことながら、終点よりも重要である)。対数線形相の勾配は、増幅効率の反映である。反応の効率(Eff)は、式:Eff=10(-1/勾配)−1により計算され得る。PCRの効率は、90〜100%(3.6>勾配>3.1)であるべきである。多数の変数がPCRの効率に影響を与え得る。これらの要素には、アンプリコンの長さ、二次構造、およびプライマー品質が含まれる。効率範囲外の有効データが得られ得るが、qRT−PCRは、更に最適化されるべきである、または代替的なアンプリコンが設計されるべきである。勾配が、(シグナルのドリフトではなく)実際の増幅の指標であるためには、屈曲点の存在が必要である。これは、対数線形相が始まるときの成長曲線上の点である。これは、成長曲線に沿った最大変化率も表す。(シグナルのドリフトは、産物の増幅のない蛍光の漸進的な増加または減少であると特徴付けられる。)定量化に重要なパラメーターはCTである。ゲノムDNAの初回量が多いほど、早期に蓄積産物がPCRプロセスにより検出され、CT値が低くなる。閾値は、任意のベースライン活性を超えて、(対数変換により線形に見える)指数関数的増加相の範囲内に置かれる。幾つかのソフトウエアは、成長曲線の数学的分析によりサイクル閾値(CT)の決定を可能にする。これは、良好な実行毎の再現性を提供する。CT値の40は増幅がないことを意味し、この値を計算の中に含めることはできない。定量化に使用される以外に、CT値は、合否手段として定量化分析に使用され得る。
多重TaqManアッセイは、異なる放射波長を有する複数の色素を使用して実施することができる。この目的に利用可能な色素は、FAM、TET、VIC、およびJOE(最も高価なもの)である。TAMRAはプローブの消光剤として、ROXはパッシブレファレンスとして確保される。最適な結果のためには、FAM(標的)とVIC(内在性対照)の組み合わせが推奨され(これらは、最大放射に最も大きな差を有する)、一方、JOEをVICと組み合わせるべきではない。色素相が正確に選択されない場合、機械は、依然として他の色素のスペクトルを読み取ることが重要である。例えば、VICとFAMの両方が、互いに類似の範囲で蛍光を放射し、単一の色素を用いるとき、ウエルは、正確に標識されるべきである。多重化の場合では、後実施分析のスペクトル補正をオンにするべきである(ABI 7700:Instrument/Diagnostics/Advanced Options/Miscellaneous)。スペクトル補正を作動させると、色素スペクトル解像度が改善される。
ネステッドPCR
開示されている方法は、更に、ネステッドPCRを利用することができる。ネステッドPCRは、DNAの非特異的増幅に起因するバックグラウンドを低減することによって、DNA増幅の特異性を増加させる。2つのセットのプライマーが2つの連続的PCRに使用される。第1の反応において、1対のプライマーがDNA産物の生成に使用され、これは、意図される標的の他に、依然として、非特異的に増幅されたDNAフラグメントから構成されている。次に産物(複数可)は、結合部位が、第1の反応に使用されたそれぞれのプライマーと完全または部分的に異なり、かつ3′に位置する1セットのプライマーを用いる第2のPCRに使用される。ネステッドPCRは、多くの場合、従来のPCRよりも、長DNAフラグメントを特異的に増幅することに成功しているが、標的配列についてのより詳細な知識を必要とする。
したがって、一態様では、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の試験試料におけるDNAにPCR反応を実施することを含み、PCR反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書において開示されている。
プライマーおよびプローブ
本明細書で使用されるとき、「プライマー」は、ある種類の酵素操作を支持することができ、かつ酵素操作が生じ得るように標的核酸とハイブリッド形成することができるプローブのサブセットである。プライマーは、酵素操作を妨げない、当該技術において利用可能なヌクレオチド、またはヌクレオチド誘導体もしくは類縁体の任意の組み合わせから作製され得る。
本明細書で使用されるとき、「プローブ」は、例えばハイブリッド形成を介して、典型的には配列特異的な方法で標的核酸と相互作用することができる分子である。核酸のハイブリッド形成は、当該技術において良く理解されており、本明細書において考察されている。典型的には、プローブは、当該技術において利用可能なヌクレオチド、またはヌクレオチド誘導体もしくは類縁体の任意の組み合わせから作製され得る。本明細書で使用されるとき、プローブは、その末端にレポーター色素およびその別の末端に消光剤色素を含むことができる。
配列番号1のような開示されている核酸、または表7に列記されているもののようなその補体と相互作用することができるプライマーおよびプローブ(例えば、配列番号1と相互作用するプライマーである配列番号4、5、7、8、12、13、14、15、16、17、18、20、および21、ならびに配列番号1と相互作用するプローブである配列番号6、8、19、および22)を含む組成物が開示されている。開示されているプラマーおよびプローブは、本明細書に開示されているROS1関連癌を診断する開示されている方法、ならびに癌がROS1阻害剤による治療に感受性または抵抗性があるかを決定する方法のいずれかに使用され得る。特定の実施形態において、プライマーは、核酸延長反応、核酸複製反応、および/または核酸増幅反応を支持するために使用される。典型的には、プライマーは、配列特異的な方法で延長され得る。配列特異的な方法によるプライマーの延長には、プライマーがハイブリッド形成する、そうでなければ関連する核酸分子の配列および/または組成物が、プライマーの延長により産生される産物の組成または配列に対して指示する、または影響を与える任意の方法が含まれる。したがって、配列特異的な方法によるプライマーの延長には、PCR、DNA配列決定、DNA延長、DNA重合、RNA転写、または逆転写が含まれるが、これらに限定されない。配列特異的な方法でプライマーを増幅する技術および条件は、開示されている。特定の実施形態において、プライマーは、PCRまたは直接配列決定のようなDNA増幅反応に使用される。特定の実施形態において、プライマーは、非酵素技術の使用によっても延長され得ることが理解され、例えば、プライマーの延長に使用されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、化学的に反応してプライマーを配列特異的な方法で延長するように修飾される。典型的には、開示されているプライマーは、開示されている核酸もしくは核酸の領域とハイブリッド形成する、または核酸の補体もしくは核酸の領域の補体とハイブリッド形成する。プライマーの使用の例として、1つ以上のプライマーは、第1の核酸から、または第1の核酸によりテンプレート化された延長産物を作り出すために使用され得る。
核酸と相互作用するプライマーまたはプローブのサイズは、DNA増幅のようなプライマーの所望の酵素操作、またはプローブもしくはプライマーの単純なハイブリッド形成を支持する任意のサイズであり得る。典型的なプライマーまたはプローブは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000個のヌクレオチド長さである。
他の実施形態において、プライマーまたはプローブは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000個以下のヌクレオチド長さであり得る。
目的の核酸のプライマーは、典型的には、目的の核酸の領域を含有する、延長産物、および/または他の複製もしくは増幅産物を産生するために使用される。産物のサイズは、サイズが3個、または2個、または1個のヌクレオチド内で正確に決定され得るようなものであり得る。
特定の実施形態において、産物は、例えば、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000個のヌクレオチド長さであり得る。
他の実施形態において、産物は、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000個以下のヌクレオチド長さであり得る。
したがって、開示されているRT−PCRおよびPCR反応は、標的核酸を増幅するために少なくとも1つの順方向プライマーおよび/または少なくとも1つの逆方向プライマーを必要とすることが理解され、本明細書において考慮される。ここで開示されているのは、順方向プライマーが、例えば、細胞内(すなわち、ROS1切断点の3′)ROS1プライマー、または例えば配列番号4、7、15、17、もしくは20のようなROS1キナーゼ順方向プライマーであり得ること。逆方向プライマーが、例えば配列番号5、8、12、16、18、または21のような、例えばROS1キナーゼ逆方向プライマーであり得ること、である。方法は、少なくとも1つの順方向プライマーおよび逆方向プライマーを含み得ることが理解される。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の組織試料におけるmRNAまたはDNAのような核酸に、リアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる1つ以上の逆方向プライマーおよび少なくとも1つの順方向プライマーを含み、順方向プライマーが、例えばCD74−ROS1プライマー(例えば、配列番号2および10)、FIG−ROS1プライマー、SLC34A2−ROS(短)プライマー、SLC34A2−ROS(短および長)プライマー(例えば、配列番号3および11)、SLC34A2−ROS(長)プライマー、ROS1キナーゼプライマー(例えば、配列番号4、7、15、もしくは17)、ならびに/または融合体接合点の5′に結合する野生型ROS1プライマーを含む野生型ROS1プライマー(例えば、配列番号13もしくは20)であり得、野生型ROS1に対応する増加を有さない対照と比べたROS1キナーゼの増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されている。ROS1融合パートナーと結合するプライマーが使用されるとき、既知のROS1融合体関連癌の存在は、対照と比べたROS1キナーゼの増幅産物の量における増加および融合パートナーの増幅における増加によって示される。融合パートナーの増幅は、切断点の3′でROS1とハイブリッド形成する逆方向プライマー、および切断点の5′で融合パートナーとハイブリッド形成する順方向プライマーまたは融合パートナーのみとハイブリッド形成する順方向プライマーを含むプライマー対の使用を介して生じ得ることが理解される。融合パートナーと結合する順方向プライマー、および融合体切断点の3′でROS1と結合する逆方向プライマーからなるプライマー対を使用する方法において、アンプリコンにおけるROS1と融合パートナーの両方の検出、プライマー間の融合体を含むアンプリコンにとって適切なサイズのアンプリコンの検出、または順方法もしくは逆方向プライマーのみを使用する、対照より大きな量のアンプリコンの検出は、ROS1融合体を示す。融合パートナーと結合する順方向プライマーを有するプライマー対が使用される場合、切断点の5′でROS1とハイブリッド形成するプライマー対は、融合事象の誤同定および不明な融合体の決定に対する対照として役立つ。あるいは、一態様において、本明細書に開示されている方法は、融合パートナーと結合した順方向プライマーのみを、対象からの核酸を増幅するために第1の反応に使用すること、および融合体切断点の3′でROS1と結合したプライマー対を、第1の反応のアンプリコンを増幅するために使用することを含み得、ROS1配列を含有するアンプリコンは、ROS1関連癌の存在を示す。
また別の態様では、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の試験試料におけるmRNAまたはDNAのような核酸に、リアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる1つ以上の逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、順方向プライマーが、外部野生型ROS1プライマー(すなわち、融合体切断点の5′)であり、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書において開示されている。
1つを超えるプライマー対を利用して、融合体、切断、または過剰発現突然変異の存在を検出することが有利であり得る状況が存在することが理解され、本明細書において考慮される。そのようなリアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を別々に、または単一反応として実施することができる。複数のプライマー対が単一反応のために配置される場合、これは、「多重PCR」と呼ばれる。例えば、反応は、逆方向プライマーを有する野生型ROS1プライマー対、ならびに同じ逆方向プライマーを有するROS1キナーゼプライマー対を含むことができる。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の試験試料におけるmRNAにリアルタイムまたはRT−PCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも2つの順方向プライマーを含み、両方のプライマーではなくROS1キナーゼにおいて、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示す方法が、本明細書において開示されている。少なくとも3つの順方向プライマーを含む方法が、同様に開示されている。2つ以上または3つ以上の本明細書に開示されている順方向プライマー任意の組み合わせを多重反応に使用できることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、例えば、順方向プライマーが、ROS1融合体プライマー(例えば、CD74−ROS1、FIG−ROS1、またはSLC34−ROS1)、ROS1キナーゼプライマー、および野生型ROS1プライマーである診断方法が、本明細書に開示されている。
また、癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、核酸に核酸増幅プロセスを実施することと、組織試料における野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つまたは両方の組み合わせに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することと、を含み、増幅プロセスが、cDNAに対するPCR、またはmRNAに対するリアルタイムPCR、RT−PCR、もしくはリアルタイムRT−PCRであり、PCR、RT−PCR、リアルタイムPCR、またはリアルタイムRT−PCR反応が、野生型ROS1配列と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対(例えば、配列番号13および20の順方向プライマーと配列番号14および21の逆方向プライマーのような、ROS1の細胞外ドメインに結合するプライマー)、ならびに野生型ROS1キナーゼドメイン配列と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対(例えば、配列番号4、7、13、15、17、または20の順方向プライマーと(配列番号5、8、12、14、18、または21の逆方向プライマー)の使用を含む方法が、本明細書に開示されている。順方向および逆方向プライマーの任意の組み合わせを、特定の野生型ROS1またはROS1キナーゼドメインに使用できることが理解される。例えば、野生型ROS1(例えば、ROS1のECD)の順方向および逆方向プライマー対は、配列番号13および14、配列番号13および21、配列番号20および21、または配列番号20および14であり得る。同様に、ROS1のキナーゼドメインに特異的なプライマーは、例えば、配列番号4および5、配列番号4および8、配列番号4および14、配列番号4および16、配列番号4および18、配列番号4および21、配列番号7および5、配列番号7および8、配列番号7および14、配列番号7および16、配列番号7および18、配列番号7および21、配列番号13および5、配列番号13および8、配列番号13および14、配列番号13および16、配列番号13および18、配列番号13および21、配列番号15および5、配列番号15および8、配列番号15および14、配列番号15および16、配列番号15および18、配列番号15および21、配列番号17および5、配列番号17および8、配列番号17および14、配列番号17および16、配列番号17および18、配列番号17および21、配列番号20および5、配列番号20および8、配列番号20および14、配列番号20および16、配列番号20および18、ならびに配列番号20および21のように、キナーゼドメインの順方向および逆方向プライマーの任意の組み合わせであり得る。
蛍光変化プローブおよびプライマー
蛍光変化プローブおよび蛍光変化プライマーは、検出、アッセイ、または複製されるプローブまたはプライマー、および核酸の形態または構造の変化に基づいた蛍光強度または波長の変化を伴う、全てのプローブおよびプライマーを意味する。蛍光変化プローブおよびプライマーの例には、モレキュラービーコン、Amplifluor、FRETプローブ、切断可能なFRETプローブ、TaqManプローブ、スコーピオンプライマー、三重モレキュラービーコンまたは三重FRETプローブが含まれるが、これらに限定されない蛍光三重オリゴ、蛍光水溶性共役ポリマー、PNAプローブ、およびQPNAプローブが含まれる。
蛍光変化プローブおよびプライマーは、それらの構造および/または機能に従って分類され得る。蛍光変化プローブには、ヘアピン消光プローブ、切断消光プローブ、切断活性化プローブ、および蛍光活性化プローブが含まれる。蛍光変化プライマーには、ステム消光プライマーおよびヘアピン消光プライマーが含まれる。
ヘアピン消光プローブは、標的配列に結合していない場合、蛍光標識と消光部分を、標識からの蛍光を消光するように近接させるヘアピン構造(典型的にはループ)を形成するプローブである。プローブが標的配列に結合する場合、ステムが分裂し、消光部分は、もはや蛍光標識と近接しておらず、蛍光が増加する。ヘアピン消光プローブの例は、モレキュラービーコン、蛍光三重オリゴ、三重モレキュラービーコン、三重FRETプローブ、およびQPNAプローブである。
切断活性化プローブは、蛍光がプローブの切断により増加するプローブである。切断活性化プローブは、蛍光標識および消光部分を、標識からの蛍光が消光するように近接して含むことができる。プローブが、(典型的には、増幅の際にポリメラーゼの5′−3′エキソヌクレアーゼ活性により)せん断または消化される場合、消光部分は、もはや蛍光標識と近接しておらず、蛍光が増加する。TaqManプローブは、切断活性化プローブの例である。
切断消光プローブは、蛍光がプローブの切断により減少または変化するプローブである。切断消光プローブは、受容体蛍光標識および供与体部分を、受容体と供与体が近接している場合、供与体から受容体への蛍光共鳴エネルギー移動が受容体を蛍光させるように含むことができる。したがって、プローブは、標的配列とハイブリッド形成したときに蛍光する。プローブが、(典型的には、増幅の際にポリメラーゼの5′−3′エキソヌクレアーゼ活性により)せん断または消化される場合、供与体部分は、もはや受容体蛍光標識と近接しておらず、受容体からの蛍光が減少する。供与体部分がそれ自体蛍光標識である場合、受容体に近接していない場合、蛍光として(典型的には、受容体の蛍光と異なる波長で)エネルギーを放出することができる。全体的な効果は、受容体蛍光の低減および供与体蛍光の増加である。切断消光プローブの場合、供与体蛍光は、切断活性化プローブにより生成された蛍光と同等であり、受容体が消光部分であり、供与体が蛍光標識である。切断可能なFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)プローブは、切断消光プローブの例である。
蛍光活性化プローブは、蛍光がプローブと標的配列とのハイブリッド形成により増加または変化するプローブまたはプローブ対である。蛍光活性化プローブは、受容体蛍光標識および供与体部分を、受容体と供与体が近接している場合(プローブが標的配列とハイブリッド形成している場合)、供与体から受容体への蛍光共鳴エネルギー移動が受容体を蛍光させるように含むことができる。蛍光活性化プローブは、典型的には、受容体と供与体が近接するように、隣接配列とハイブリッド形成するために設計されるプローブ対である。蛍光活性化プローブは、プローブが標的配列とハイブリッド形成していないとき、供与体と受容体は近接していないが、プローブが標的配列とハイブリッド形成しているとき、供与体と受容体は近接しているように供与体と受容体の両方を含む単一プローブでもあり得る。これは、例えば、供与体と受容体をプローブの対向する末端に配置し、プローブのそれぞれの末端に標的相補配列を配置することによって達成することでき、標的相補配列は標的配列の隣接配列に相補的である。蛍光活性化プローブの供与体部分がそれ自体蛍光標識である場合、受容体と近接していないとき(すなわち、プローブが標的配列とハイブリッド形成していないとき)、蛍光として(典型的には受容体の蛍光と異なる波長で)エネルギーを放出することができる。プローブが標的配列とハイブリッド形成する場合、全体的な効果は、供与体蛍光の低減および受容体蛍光の増加である。FRETプローブは、蛍光活性化プローブの例である。
ステム消光プライマーは、相補配列とハイブリッド形成しない場合、蛍光標識と消光部分を、標識からの蛍光が消光するように近接させるステム構造(分子内ステム構造または分子間ステム構造のいずれか)を形成するプライマーである。プライマーが相補配列に結合する場合、ステムは分裂し、消光部分は、もはや蛍光標識と近接しておらず、蛍光が増加する。開示されている方法において、ステム消光プライマーは、核酸合成用のプライマーとして使用され、したがって、合成または増幅核酸に組み込まれる。ステム消光プライマーの例は、ペプチド核酸消光プライマーおよびヘアピン消光プライマーである。
ペプチド核酸消光プライマーは、ペプチド核酸消光剤またはペプチド核酸蛍光体と関連して、ステム構造を形成するプライマーである。プライマーは、蛍光標識または消光部分を含み、ペプチド核酸消光剤またはペプチド核酸蛍光体のいずれかにそれぞれ関連している。このことは、蛍光標識を消光部分に近接して配置する。プライマーが複製される場合、ペプチド核酸は置き換えられ、したがって、蛍光標識が蛍光シグナルを生じることを可能にする。
ヘアピン消光プライマーは、相補配列とハイブリッド形成していない場合、蛍光標識と消光部分を、標識からの蛍光を消光するように近接させる、ヘアピン構造(典型的にはループ)を形成するプライマーである。プライマーが相補配列に結合する場合、ステムが分裂し、消光部分は、もはや蛍光標識と近接しておらず、蛍光が増加する。ヘアピン消光プライマーは、典型的には、核酸合成用のプライマーとして使用され、したがって、合成または増幅核酸に組み込まれる。ヘアピン消光プライマーの例は、Amplifluorプライマーおよびスコーピオンプライマーである。
切断活性化プライマーは、複製鎖に組み込まれ、次に後で切断されるプライマーであることを除いて、切断活性化プローブと類似している。
標識
開示されている方法を使用して産生される核酸の検出および定量化を助けるために、標識を、ヌクレオチドおよび核酸に直接組み込むことができる、またはプローブおよびプライマーのような検出分子と結合することができる。本明細書で使用されるとき、標識は、ヌクレオチドまたは核酸と直接的または間接的に関連することができ、かつ測定可能で検出可能なシグナルを直接的または間接的にもたらす任意の分子である。ヌクレオチドおよび核酸に組み込むため、または核酸プローブと結合するための多くのそのような標識は、当業者に知られている。開示されている方法における使用に適した標識の例は、放射性同位体、蛍光分子、リン光性分子、酵素、抗体、およびリガンドである。特に蛍光変化プローブおよびプライマーの文脈における蛍光標識は、増幅のリアルタイム検出に有用である。
適切な蛍光標識の例には、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、5,6−カルボキシメチルフルオレセイン、テキサスレッド、ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル(NBD)、クマリン、ダンシルクロリド、ローダミン、アミノ−メチルクマリン(AMCA)、エオシン、エリトロシン、BODIPY(登録商標)、CASCADE BLUE(登録商標)、OREGON GREEN(登録商標)、ピレン、リサミン、キサンテン、アクリジン、オキサジン、フィコエリトリン、quantum dye(商標)のようなランタニドイオンの大環状キレート、チアゾールオレンジ−エチジウムヘテロ二量体のような蛍光エネルギー移動色素、ならびにシアニン色素のCy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、およびCy7が含まれる。他の特定の蛍光標識の例には、3−ヒドロキシピレン5,8,10−トリスルホン酸、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、酸性フクシン、アリザリンコンプレクソン、アリザリンレッド、アロフィコシアニン、アミノクマリン、ステアリン酸アントロイル、アストラゾンブリリアントレッド4G、アストラゾンオレンジR、アストラゾンレッド6B、アストラゾンイエロー7GLL、アタブリン、オーラミン、オーロホスフィン、オーロホスフィンG、BAO9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール)、BCECF、硫酸ベルベリン、ビスベンズアミド、ブランコホルFFG溶液、ブランコホルSV、Bodipy F1、ブリリアントスルホフラビンFF、カルシエンブルー、カルシウムグリーン、カルコフロールRW溶液、カルコフロールホワイト、カルコホールホワイトABT溶液、カルコホールホワイトスタンダード溶液、カルボスチリル、カスケードイエロー、カテコールアミン、キナクリン、コリホスフィンO、クマリン−ファロイジン、CY3.1 8、CY5.1 8、CY7、ダンス(1−ジメチルアミノナファリン5スルホン酸)、ダンサ(ジアミノナフチルスルホン酸)、ダンシルNH−CH3、ジアミノフェニルオキサジアゾール(DAO)、ジメチルアミノ−5−スルホン酸、ジピロメテンホウ素二フッ化物、ジフェニルブリリアントフラビン7GFF、ドーパミン、エリトロシンITC、オイクリシン、FIF(ホルムアルデヒド誘導蛍光)、フラゾオレンジ、フルオ3、フルオレスカミン、フラ−2、ゲンアクリルブリリアントレッドB、ゲンアクリルブリリアントイエロー10GF、ゲンアクリルピンク3G、ゲンアクリルイエロー5GF、グルシュウ酸、グラニュラーブルー、ヘマトポルフィリン、インド−1、イントラホワイトCf液、ロイコホルPAF、ロイコホルSF、ロイコホルWS、リサミンローダミンB200(RD200)、ルシフェールイエローCH、ルシフェールイエローVS、マグダラレッド、マリーナブルー、マキシロンブリリアントフラビン10GFF、マキシロンブリリアントフラビン8GFF、MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン)、ミトラマイシン、NBDアミン、ニトロベンゾオキサジドール、ノルアドレナリン、ヌクレアファーストレッド、ヌクレアイエロー、ナイロサンブリリアントフラビンE8G、オキサジアゾール、パシフィックブルー、パラローザニリン(ホイルゲン)、ホルウィットAR溶液、ホルウィットBKL、ホルウィットRev、ホルウィットRPA、ホスフィン3R、フタロシアニン、フィコエリトリンR、フィコエリトリンB、ポリアザインダセンポントクロムブルーブラック、ポルフィリン、プリムリン、プロシオンイエロー、ピロニン、ピロニンB、ピロザールブリリアントフラビン7GF、キナクリンマスタード、ローダミン123、ローダミン5GLD、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンB200、ローダミンBエキストラ、ローダミンBB、ローダミンBG、ローダミンWT、セロトニン、セブロンブリリアントレッド2B、セブロンブリリアントレッド4G、セブロンブリリアントレッドB、セブロンオレンジ、セブロンイエローL、SITS(プリムリン)、SITS(スチルベンイソチオスルホン酸)、スチルベン、スナーフ1、スルホローダミンB Can C、スルホローダミンGエキストラ、テトラサイクリン、チアジンレッドR、チオフラビンS、チオフラビンTCN、チオフラビン5、チオライト、チオゾールオレンジ、チノポールCBS、トゥルーブルー、ウルトラライト、ウラニンB、ウビテックスSFC、キシレンオレンジ、およびXRITCが含まれる。
これらの蛍光体のうちの幾つかにおける、吸収および発光のそれぞれの極大は、FITC(490nm;520nm)、Cy3(554nm;568nm)、Cy3.5(581nm;588nm)、Cy5(652nm:672nm)、Cy5.5(682nm;703nm)、およびCy7(755nm;778nm)であり、したがって、同時検出を可能にする。フルオレセイン色素の他の例には、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2′,4′,1,4,−テトラクロロフルオレセイン(TET)、2′,4′,5′,7′,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、2′,7′−ジメトキシ−4′,5′−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)、2′−クロロ−5′−フルオロ−7′,8′−縮合フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(NED)、および2′−クロロ−7′−フェニル−1,4−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(VIC)が含まれる。蛍光標識は、Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ、Molecular Probes,Eugene,OR、およびResearch Organics,Cleveland,Ohioを含む多様な商業供給者から得ることができる。
目的の追加的な標識には、それらが関連するプローブが標的分子に特異的に結合している場合にのみシグナルを提供するものが含まれ、そのような標識には、Tyagi&Kramer,Nature Biotechnology(1996)14:303およびヨーロッパ特許第0 070 685 B1号に記載されている「モレキュラービーコン」が含まれる。目的の他の標識には、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,563,037号に記載されているものが含まれる。
標識ヌクレオチドは、これらを、合成の際に増幅産物に直接組み込まれ得る形態の標識である。増幅核酸に組み込まれ得る標識の例には、BrdUrd、アミノアリルデオキシウリジン、5−メチルシトシン、ブロモウリジン、およびビオチンにより、またはジゴキシゲニンのような適切なヘプテンにより修飾されたヌクレオチドのような、ヌクレオチド類縁体が含まれる。適切な蛍光標識ヌクレオチドは、フルオレセイン−イソチオシアネートdUTP、シアニン−3−dUTP及びシアニン−5−dUTPである。DNAのヌクレオチド類縁体標識の一例、はBrdUrd(ブロモデオキシウリジン、BrdUrd、BrdU、BUdR、Sigma−Aldrich Co)である。DNAへの標識の組み込みのためのヌクレオチド類縁体の他の例は、AA−dUTP(アミノアリル−デオキシウリジントリホスフェート、Sigma−Aldrich Co.)および5−メチル−dCTP(Roche Molecular Biochemicals)である。RNAへの標識の組み込みのためのヌクレオチド類縁体の一例は、ビオチン−16−UTP(ビオチン−16−ウリジン−5′−トリホスフェート、Roche Molecular Biochemicals)である。フルオレセイン、Cy3、およびCy5は、直接標識化のためにdUTPに結合することができる。Cy3.5およびCy7は、ビオチン−またはジゴキシゲニン標識プローブの二次検出用のアビジンまたは抗ジゴキシゲニン接合体として利用可能である。
ビオチンのような増幅核酸に組み込まれる標識を、後に当該技術に周知の高感度法を使用して検出することができる。例えば、ビオチンは、ビオチンに結合しているストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ接合体(Tropix,Inc.)を使用して検出することができ、後に適切な基質(例えば、化学発光基質CSPD:3−(4−メトキシスピロ−[1,2,−ジオキセタン−3−2′−(5′−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル)フェニルリン酸二ナトリウム;Tropix,Inc.)の化学発光により検出することができる。標識は、例えば化学シグナル増幅により、または光を生じる酵素(例えば、化学発光1,2−ジオキセタン基質)もしくは蛍光シグナルを生じる酵素に対する基質を使用することにより検出され得る、アルカリホスファターゼ、ダイズペルオキシダーゼ、ホールラディッシュペルオキシダーゼ、およびポリメラーゼのような酵素でもあり得る。
これらの2つ以上の標識を組み合わせる分子も標識と考慮される。既知の標識のいずれかを、開示されているプローブ、タグ、および方法と共に使用して、開示されている方法を使用して増幅された核酸を標識および検出することができる。標識により生成されたシグナルを検出および測定する方法も、当業者に知られている。例えば、放射性同位体を、シンチレーションカウントまたは直接可視化により検出することができ、蛍光分子を、蛍光分光光度計により検出することができ、リン光性分子を、分光光度計またはカメラによる直接可視化により検出することができ、酵素を、酵素により触媒された反応の産物の検出または可視化により検出することができ、抗体を、抗体に結合した二次標識を検出することによって検出することができる。本明細書で使用されるとき、検出分子は、増幅核酸と相互作用する分子、および1つ以上の標識が結合している分子である。
特定のmRNAの増加もしくはmRNAの発現が生じているか、または特定のmRNAが存在しているかを評価する1つの方法は、対照との比較によるものであることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、対象において癌を診断する方法であって、対象の組織試料においてmRNAにリアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特的にハイブリッド形成することができる少なくとも1つの逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方法プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示し、対照組織が、非癌性組織から得られる方法が、本明細書において考慮される。ROS1関連癌に関して、非癌性組織対照の使用を利用することができるが、非ROS1関連癌からの癌性組織も使用できるので、必ずしも必要ではないことが更に理解される。したがって、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の試験試料におけるmRNAにリアルタイムPCRまたは逆転写−PCR(RT−PCR)反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示し、対照組織が、非ROS1関連癌性組織から得られる方法が、本明細書において開示されている。
開示されている方法は、本明細書において「癌」と呼ばれる、制御されない細胞繁殖が生じる任意の疾患の診断に使用され得る。異なる種類のROS1関連癌の非限定列記は、以下である。リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、癌腫、固形組織の癌腫、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素性腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫もしくは肉腫、転移性癌、または一般的な癌。
開示されている方法を使用して診断され得る癌の代表的であるが非限定的な列記は、以下である。リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系の癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌のような肺癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝癌、黒色腫、口腔、咽喉、咽頭、および肺の扁平上皮癌、結腸癌、胆管癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、および上皮癌、腎癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部の癌、大腸癌、造血性癌、卵巣癌、結腸および直腸の癌、前立腺性癌、または膵癌。
したがって、癌を診断する方法であって、癌が、非小細胞肺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、全身性組織球増殖症、乳癌、結腸直腸癌、食道扁平上皮癌、未分化大細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、胆管癌、腎癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫、および炎症性筋線維芽腫瘍、(IMT)からなる群から選択される方法が、本明細書に開示されている。例えば、対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、対象の組織試料におけるmRNAにリアルタイムPCR、RT−PCR、またはPCR反応を実施することを含み、ポリメラーゼ連鎖反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌の存在を示し、癌が、非小細胞肺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、全身性組織球増殖症、乳癌、結腸直腸癌、食道扁平上皮癌、未分化大細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、胆管癌、腎癌、結腸直腸癌、神経膠芽腫、および炎症性筋線維芽腫瘍、(IMT)からなる群から選択される方法が、本明細書に開示されている。
ROS1指向治療の適合性を評価する方法
現在の理論に束縛されるものではないが、小分子薬剤候補によるこれらの形態のRTK遺伝子の阻害は、関連する異常細胞の繁殖を抑止し、神経芽細胞腫および他のRTK関連腫瘍の細胞株にアポトーシスを促進すると考えられ、更に、これらの阻害剤による臨床前動物モデルおよび初期臨床経験の両方は、RTK小分子阻害剤が、RTK関連癌に対して著しい抗腫瘍活性を有するのみならず、標的関連毒性に制限されずに非常に良好に耐容されることも示す。
これらの発見は、ROS1突然変異についての特殊な診断検査の必要性を強調する。例えば、そのようなアッセイは、遺伝性神経芽細胞腫に罹患している家族の子供をスクリーンして、治療がより受け入れやすい初期段階における腫瘍の検出の促進を助けるために使用され得る。したがって、対象においてROS1阻害剤治療の適合性を評価する方法であって、対象の組織試料において核酸を測定することを含み、対照と比べたROS1配列mRNAの量における増加が、ROS1阻害剤により治療され得る癌を示す方法が、本明細書に開示されている。
開示されているmRNAを測定する本明細書に開示されている技術のいずれかを、これらの方法に使用できることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、例えば、対象においてROS1阻害剤治療の適合性を評価する方法であって、対象の組織試料におけるmRNAまたはDNAにリアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することを含み、PCR反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、対照と比べた増幅産物の量における増加が、ROS1阻害剤により治療され得る癌を示す方法が、本明細書に開示されている。開示されている方法が、更に、本明細書に開示されているプライマーいずれかを含むことができ、開示されている多重化PCR技術を利用できることが、更に理解される。
したがって、一態様では、対象において、疾患もしくは状態の感受性もしくは危険性を評価する、疾患の進行をモニターする、治療的ROS1阻害剤の治療への感受性もしくは抵抗性を決定する、または核酸変異、切断、もしくはROS1融合体に関連する癌のROS1阻害剤治療への適合性を決定する方法であって、対象の組織試料におけるレベル、またはDNA、cDNA、またはmRNAの発現レベルの存在を検出する、または測定することを含み、対応する増加が野生型ROS1に不在である対照と比べたROS1キナーゼの増幅産物の量における増加が、ROS1関連癌、したがってROS1阻害剤治療に感受性のある癌の存在を示す方法が、本明細書に開示されているそのような方法は、PCR、リアルタイムPCR、RT−PCR、もしくはリアルタイムRT−PCRのような増幅方法により、またはFISHのようなインサイツハイブリッド形成の実施により達成され得る。
一態様では、癌を有する対象において、ROS1阻害剤に対する癌の治療処置への感受性もしくは抵抗性、またはROS1阻害剤治療の適合性を決定する方法であって、ROS1キナーゼ活性の存在を検出することを含む方法が、本明細書に開示されている。したがって、例えば、癌を有する対象において、ROS1関連癌の治療処置への感受性もしくは抵抗性、またはROS1阻害剤により治療される癌への適合性を診断する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、核酸にRT−PCR、リアルタイムPCR、またはリアルタイムRT−PCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、RT−PCRまたはリアルタイムPCR反応が、野生型ROS1配列(配列番号13、14、20、および21のような、ROS1の細胞外ドメイン配列)と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対、ならびに/または野生型ROS1キナーゼドメイン配列(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対の使用を含むことと、組織試料における野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせと関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することであって、正常な対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在が、対象がROS1関連癌を有すること、したがって、ROS1阻害剤による治療に感受性があることを示すことと、を含む方法が、本明細書に開示されている。アンプリコンの不在、または正常な対照と等しいアンプリコンのレベルは、癌がROS1治療に感受性がないこと、およびそのような治療に抵抗性があることを示す。また、癌を有する対象において、ROS1関連癌の治療処置に対する感受性もしくは抵抗性、またはROS1阻害剤により治療される癌の適合性を決定する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することであって、組織試料の核酸がRNAであることと、を含む方法が開示されており、ここで方法は、RNA試料からcDNAを合成することと、cDNAにPCRを実施することと、組織試料において野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの1つ、または両方の組み合わせに関連する核酸の存在を検出すること、または量を測定することを更に含み、正常対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在は、対象がROS1関連癌を有することを示す。更なる態様において、開示されている方法は、リアルタイムRT−PCRの産物の配列(例えば、配列番号6、8、19、および22)と相補的なプローブを利用することができる、または方法は、野生型ROS1および野生型ROS1キナーゼのサイクル閾(Ct)値を決定することを含むことができ、ROS1キナーゼと比べた野生型ROS1の高い(Ct)値は、融合体の存在を示し、したがって、癌がROS1阻害剤による治療に感受性があること、もしくはROS1阻害剤の治療がその癌に適していることを示す。プローブが使用されるとき、プローブは、その末端にレポーター色素およびその別の末端に消光剤色素を含み得ることが理解される。癌がROS1阻害剤による治療に適合性がある、または適していると決定されたとき、ROS1阻害剤治療に感受性のある癌を有する対象に、ROS1阻害剤を投与することを更に含む方法も開示されている。逆に、癌がROS1関連阻害剤に感受性がない場合、方法は、ROS1阻害剤以外の治療の形態を使用して、癌を有する患者を治療することを更に含むことができる。
癌を有する対象において、ROS1関連癌の治療処置への感受性もしくは抵抗性、またはROS1阻害剤により治療される癌の適合性を決定する更なる代替的な方法において、ROS1融合体は、ROS1融合体に結合する順方向プライマーのみが第1の反応に使用され、第1の反応に続く第2の反応において、第1の反応のアンプリコンが第2の増幅、プローブに基づいた検出、または配列決定反応におけるテンプレートとして使用され、使用されるプローブまたはプライマーが、融合体切断点の3′でのROS1に特異的であり、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の検出が、ROS1融合体、したがってROS1阻害剤治療に感受性のあるROS1関連癌を示す、2ステップ検出を使用するqPCR法により検出される。また、癌を有する態様において、RO1関連眼の治療処置への感受性もしくは抵抗性、またはROS1阻害剤により治療される癌の適合性を決定する方法であって、対象から組織試料を得ることと、組織試料から核酸を単離することと、ROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーを使用して第1の増幅反応を実施することであって、第1の反応のアンプリコンが、第2の増幅反応のテンプレートとして使用されることと、第1の反応の後に第2の増幅反応を実施することであって、融合体切断点の3′でのROS1配列に特異的なプライマーが、第2の増幅反応に使用されることと(例えば、配列番号4、5、7、8、15、16、17、および18)、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の存在を検出することであって、第2の反応のアンプリコンにおけるROS1の存在の検出が、ROS1融合体の存在を示すことと、組織試料におけるROS1キナーゼドメインと関連する核酸の存在を検出することであって、アンプリコンの存在が、対象がROS1阻害剤による治療に感受性があることを示し、アンプリコンの不在が、癌がROS1阻害剤治療に抵抗性がある、または感受性がないことを示すことと、を含む方法が本明細書に開示されている。癌がROS1阻害剤による治療に適合性がある、または適していると決定されたとき、ROS1阻害剤治療に感受性のある癌を有する対象に、ROS1阻害剤を投与することを更に含む方法も開示されている。逆に、癌がROS1関連阻害剤に感受性がない場合、方法は、ROS1阻害剤以外の治療の形態を使用して、癌を有する患者を治療することを更に含むことができる。
スクリーンする方法
本明細書に開示されているROS1融合体は、癌治療の標的である。したがって、対象においてROS1関連癌を阻害する薬剤をスクリーンする方法であって、
a)ROS1関連癌を有する対象から組織試料を得ることと、
b)組織試料からmRNAを抽出することと、
c)組織試料を薬剤と接触させることと、
d)組織試料におけるmRNAにリアルタイムPCR、RT−PCR、または他のPCR反応を実施することと、
を含み、
RT−PCR反応が、1つ以上のROS1配列と特異的にハイブリッド形成することができる逆方向プライマー、および少なくとも1つの順方向プライマーを含み、未処理対照と比べたROS1融合体を示す増幅産物の量における減少が、ROS1関連癌を阻害し得る薬剤を示す方法が、本明細書に開示されている。薬剤による有効治療の測度は、未処理対照と比べた、融合体切断点の5′でのROS1のアンプリコンのサイクル閾値の減少であることが理解され、本明細書において考慮される。RT−PCR反応を実施する過程は、単離されたRNAからcDNAを合成すること、およびcDNAにPCRを実施することを伴うことが理解され、本明細書において考慮される。
核酸
開示されている方法および組成物は、多様な核酸を使用する。一般に、任意の核酸を、開示されている方法に使用することができる。例えば、目的の開示されている核酸および開示されている基準核酸は、得られる、または評価される所望の分析および情報に基づいて選択され得る。開示されている方法は、新たな変化させた核酸も産生する。そのような核酸の性質および構造は、これらが方法において産生および操作された方法により確立される。したがって、例えば、延長産物およびハイブリッド形成核酸は、開示されている方法により産生される。本明細書で使用されるとき、ハイブリッド形成核酸は、延長産物と第2核酸のハイブリッドである。
目的の核酸は、ヌクレオチド変異の存在または不在の決定が望ましい任意の核酸であり得ることが理解され、本明細書において考慮される。したがって、例えば、目的の核酸は、基準核酸の野生型配列に対応する配列を含むことができる。開示されている方法は、第1の核酸が基準核酸であり、第2の核酸が目的の核酸である場合、または第1の核酸が目的の核酸であり、第2の核酸が規準核酸である場合に実施され得ることが、本明細書において更に開示されている。
基準核酸は、目的の核酸が比較される任意の核酸であり得ることが理解され、本明細書において考慮される。典型的には、基準核酸は、既知の配列を有する(および/または基準として目的の配列を有することが知られている)。必要ではないが、基準配列が、目的の核酸と既知または推定される密接な関係を有することは有用である。例えば、単一のヌクレオチド変異が、検出されることが望ましい場合、基準配列は、同じまたは関連する生物体または個体からの同じ遺伝子または遺伝的要素から誘導される核酸のような、目的の核酸と相同性または密接な整合性がある配列であるように選択されることが有用であり得る。したがって、例えば、基準核酸は、野生型配列を含み得る、または代替的に、例えば存在もしくは不在が疾患もしくは治療処置に対する抵抗性に関連する突然変異を含む、既知の突然変異を含み得ることが、本明細書において考慮される。したがって、例えば、開示されている方法は、目的の核酸を、野生型配列を含む(すなわち、突然変異を有さないことが知られている)基準核酸と比較し、目的の核酸における変異の存在または不在を検査して、変異の不在が突然変異の不在を示すことによって、目的の核酸における既知の変異の存在を検出または診断するために使用され得ることが考慮される。あるいは、基準核酸は既知の突然変異を有することができる。したがって、例えば、開示されている方法は、目的の核酸を、疾患への感受性を示す既知の突然変異を含む基準核酸と比較し、突然変異の存在または不在を検査し、突然変異の存在が疾患を示すことよって、疾患または状態への感受性を検出するために使用され得ることが考慮される。
ここで、用語「ヌクレオチド変異」は、基準核酸のヌクレオチド配列と比べた目的の核酸のヌクレオチド配列における任意の変化または差異を意味する。したがって、ヌクレオチド変異は、基準核酸と目的の核酸(または、文脈において適切であればその補体)との間の配列が異なる場合に生じると言われている。したがって、例えば、核酸における特定の位置でのアデニン(A)からグアニン(G)への置換は、基準核酸が対応する位置にAを含む限り核酸変異である。変異の決定は基準核酸に基づいており、配列が野生型であるかを示すのではないことが理解され、本明細書において考慮される。したがって、例えば、既知の突然変異を有する核酸が基準核酸として使用される場合、突然変異を有さない核酸(野生型核酸を含む)は、ヌクレオチド変異(基準核酸と比べた)を有すると考慮される。
ヌクレオチド
開示されている方法および組成物は、多様なヌクレオチドを使用する。本出願および本明細書に開示されている方法の全体にわたって、ヌクレオチドの塩基の種類が参照される。塩基の種類が参照される場合、このことは、核酸鎖におけるヌクレオチドが1個以上の限界塩基の確定されたセットとハイブリッド形成(結合)することができる塩基を意味することが理解され、本明細書において考慮される。したがって、例えば、修飾ヌクレオチドと同じ種類の塩基を含むヌクレオチドの存在下ではなく、3種類のヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドの存在下で延長された延長産物が参照される場合、これは、例えば、修飾ヌクレオチドの塩基がアデニン(A)である場合、ヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドは、例えば、グアニン(G)、チミン(T)、およびシトシン(C)であり得ることを意味する。これらの塩基(4個の限界塩基を表す)のそれぞれは、4個の限界塩基のうちの異なる1個とハイブリッド形成することができ、したがって、それぞれ異なる種類の塩基として適任であり、本明細書において定義されている。別の例としては、イノシン塩基は、主にアデニンおよびシトシン(DNA中)と対を形成し、したがって、チロシンおよびグアニンとそれぞれ塩基対を形成するアデニンと、およびシトシンと異なる種類の塩基と考慮され得るが、シトシンおよびアデニンとそれぞれ塩基対を形成するグアニンまたはチミンと異なる種類の塩基と考慮され得ず、それは、グアニンおよびチミンの塩基対形成がイノシンのハイブリッド形成パターンと重複する(すなわち、異なっていない)からである。
任意の種類の修飾または代替塩基を、そのような塩基を使用するために使用される酵素の能力によってのみ一般に限定されている、開示されている方法および組成物に使用することができる。多くの修飾および代替ヌクレオチドおよび塩基が知られており、そのうちの幾つかは下記および本明細書の他の部分に記載されている。そのような修飾および代替塩基が表す塩基の種類は、本明細書に記載されているように、その塩基の塩基対形成のパターンにより決定され得る。したがって、例えば、修飾ヌクレオチドがアデニンである場合、主にチミンとの対に基づいた任意の類縁体、誘導体、修飾されたもの、または変種の塩基が、アデニンと同じ種類の塩基と考慮される。換言すると、類縁体、誘導体、修飾されたもの、または変種が別の塩基と塩基対形成の同じパターンを有する限り、同じ種類の塩基と考慮され得る。修飾は、ヌクレオチドの糖またはリン酸基に行うことができる。一般に、そのような修飾は、塩基の塩基対形成パターンを変化させない。しかし、核酸鎖におけるヌクレオチドの塩基対形成パターンは、ヌクレオチドにおける塩基の塩基の種類を決定する。
開示されている方法によって、延長産物に組み込まれる、および開示されている薬剤により選択的に除去される修飾ヌクレオチドは、開示されている方法において必要に応じて機能する任意の修飾ヌクレオチドであり得、本明細書の他の部分に記載されている。修飾ヌクレオチドは、また、例えば化学修飾、酵素修飾、または組み合わせにより、延長産物のような存在する核酸鎖において産生され得る。
多くの種類のヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドは、知られており、開示されている方法に使用され得る。例えば、ヌクレオチドは、修飾リン酸基および/または修飾糖基を有し、1つ以上のヌクレアーゼに抵抗性であり得る。ヌクレアーゼ抵抗性は、任意の1つ以上のヌクレアーゼにより核酸から除去されることに抵抗性があると、本明細書において定義される。一般に、特定のヌクレオチドのヌクレアーゼ抵抗性は、関連するヌクレアーゼに関して定義され得る。したがって、例えば、特定のヌクレアーゼが開示されている方法において使用される場合、ヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドは、その特定のヌクレアーゼに対してのみ抵抗性であることが必要である。有用なヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチドの例には、チオ修飾ヌクレオチドおよびボラノ修飾ヌクレオチドが含まれる。
核酸の基づいた、本明細書に開示されている多様な分子が存在する。これらおよび他の分子の非限定例は、本明細書において考察されている。例えば、ヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、およびリン酸部分を含有する分子であることが理解される。ヌクレオチドは、これらのリン酸部分および糖部分を介して一緒に結合して、ヌクレオシド間架橋を作り出す。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン−9−イル(アデニン、A)、シトシン−1−イル(シトシン、C)、グアニン−9−イル(グアニン、G)、ウラシラ−1−イル(ウラシル、U)、およびチミン−1−イル(チミン、T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価リン酸である。ヌクレオチドの非限定例は、3′−AMP(3′−アデノシン一リン酸)または5′−GMP(5′−グアノシン一リン酸塩)である。
ヌクレオチド類似体は、ある種の修飾を塩基、糖またはリン酸部分に含むヌクレオチドである。塩基部分に対する修飾には、A、C、G、およびT/U、ならびに異なるプリン、またはピリミジン塩基の天然及び合成修飾が含まれ、例えば、ウラシル−5−イル(Ψ)、ヒポキサンチン−9−イル(イノシン)、および2−アミノアデニン−9−イルである。修飾塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニジンの6−メチル、およびのアルキル誘導体、アデニンおよびグアニジンの2−プロピル、および他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオサイトシン、5−ハロウラシルおよびサイトシン、5−プロピニルウラシルおよびサイトシン、6−アゾウラシル、サイトシン及びチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換のアデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換のウラシルおよびサイトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれるが、これらに限定されない。追加の塩基修飾は、例えば米国特許第3,687,808号において見出され得、その塩基修飾についての教示は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルサイトシンを含む、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6、およびO−6置換プリンのような、特定のヌクレオチド類縁体。5−メチルサイトシンは、二重鎖形成の安定性を増加することができる。多くの場合に塩基修飾は、例えば2′−O−メトキシエチルのように糖修飾と組み合わせて、二重鎖の安定性の増加のような特有の特性を達成することができる。
核酸類縁体は、糖部分の修飾を含むこともできる。糖部分の修飾には、リボースおよびデオキシリボースの天然修飾、ならびに合成修飾が含まれる。糖修飾には、2′位置で以下の修飾が含まれるが、これらに限定されない。OH;F;O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;O−、S−、もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルであり、ここで、アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換または非置換のC1〜C10アルキル、またはC2〜C10アルケニル、およびアルキニルであり得る。また2′糖修飾には、−O[(CH2)nO]mCH3、−O(CH2)nOCH3、−O(CH2)nNH2、−O(CH2)nCH3、−O(CH2)n−ONH2、および−O(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2が含まれるが、これらに限定されず、ここで、nおよびmは、1〜約10である。
2′位置での他の修飾には、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリル、もしくはO−アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシルロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、介入物質、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善する基、および同様な特性を有する他の置換基が含まれるが、これらに限定されない。同様な修飾を、糖の他の位置、特に3′末端ヌクレオチドまたは2′−5′結合オリゴヌクレオチドの糖の3′位置、および5′末端ヌクレオチドの5′位置で行うこともできる。また修飾糖には、CH2およびSのような架橋環酸素において修飾を含むものが含まれる。ヌクレオチド糖類似体は、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分のような糖擬態を有することもできる。
ヌクレオチド類似体は、リン酸部分も修飾され得る。修飾リン酸部分には、2つのヌクレオチド間の架橋が、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3′−アルキレンホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、キラルホスホネート、ホスフィネート、3′−アミノホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、アミノアルキルホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにボラノホスフェートを含有するように修飾され得るものが含まれるが、これらに限定されない。2つのヌクレオチド間のこれらのリン酸または修飾リン酸架橋は、3′−5′架橋または−2′−5′架橋を介することができ、架橋は、3′−5′から−5′−3′、または2′−5′から−5′−2′のような逆の方向性を含み得ることが理解される。多様な塩、混合塩および遊離塩の形態も含まれる。
ヌクレオチド類縁体は、単一の修飾のみの含有しか必要ないが、1つまたは異なる部分の間に複数の修飾を含有し得ることが理解される。
ヌクレオチド置換体は、ヌクレオチドと同様の機能性を有するが、ペプチド核酸(PNA)のように、リン酸部分を含まない分子である。ヌクレオチド置換体は、ワトソン・クリックまたはフーグスティーン様式で核酸を認識する分子であるが、リン酸部分以外の部分を介して一緒に結合する分子である。ヌクレオチド置換体は、適切な標的核酸と相互作用する場合、二重らせん型構造に適合することができる。
ヌクレオチド置換体は、リン酸部分および/または糖部分が代えられているヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体である。ヌクレオチド置換体は、標準的なリン原子を含まない。リン酸の置換体は、例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間架橋、混合ヘテロ原子、およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間架橋、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間架橋であることができる。これらには、モルホリノ架橋(ヌクレオシドの糖部分で部分的に形成されている);シロキサン主鎖;硫化物、スルホキシド及びスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファミン酸主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホン酸およびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖を有するもの、ならびに混合N、O、SおよびCH2成分部分を有する他のものが含まれる。
また、ヌクレオチドの糖とリン酸の両方の部分を、例えばアミド型架橋(アミノエチルグリシン)(PNA)に代え得ることが、核酸置換体において理解される。米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号、および同第5,719,262号は、PNA分子をどのように作製し、使用するかを教示しており、それぞれ参照として本明細書に組み込まれる。
他の種類の分子(接合体)を、他のヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体に結合することも可能である。接合体は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体に化学的に結合することができる。そのような接合体には、コレステロール部分のような脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセリンもしくはトリエチルアンモニウム1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、またはアダマンタン酢酸、パルミチル部分、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分が含まれるが、これらに限定されない。
ワトソン・クリック相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類縁体、またはヌクレオチド置換体のワトソン・クリック面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチド類縁体、またはヌクレオチド置換体のワトソン・クリック面には、プリンに基づいたヌクレオチド、ヌクレオチド類縁体、またはヌクレオチド置換体のC2、N1、およびC6位置、ならびにピリミジンに基づいたヌクレオチド、ヌクレオチド類縁体、またはヌクレオチド置換体のC2、N3、C4位置が含まれる。
フーグスティーン相互作用は、二本鎖DNAの主溝に曝露される、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類縁体のフーグスティーン面において生じる相互作用である。フーグスティーン面には、N7位置、およびプリンヌクレオチドのC6位置の反応性基(NH2またはO)が含まれる。
ハイブリッド形成/選択的ハイブリッド形成
ハイブリッド形成という用語は、典型的には、プライマーまたはプローブ、および遺伝子のような、少なくとも2つの核酸分子の間に相互作用を誘導する配列を意味する。配列誘導性相互作用は、ヌクレオチド特異的な方法により2つのヌクレオチド、またはヌクレオチド類縁体もしくはヌクレオチド誘導体の間に生じる相互作用を意味する。例えば、Cと相互作用するG、またはTと相互作用するAは、配列誘導性相互作用である。典型的な配列誘導性相互作用は、ヌクレオチドのワトソン・クリック面またはフーグスティーン面において生じる。2つの核酸のハイブリッド形成は、当業者に既知の多数の条件およびパラメーターにより影響を受ける。例えば、反応の塩濃度、pH、および温度は、すべて、核酸分子がハイブリッド形成するかについて影響を与える。
2つの核酸分子の間の選択的ハイブリッド形成のパラメーターは、当業者に良く知られている。例えば、幾つかの実施形態において、選択的ハイブリッド形成条件は、厳密なハイブリッド形成条件と定義される。例えば、ハイブリッド形成の厳密性は、ハイブリッド形成および洗浄のステップのいずれかまたは両方における温度および塩濃度の両方によって制御される。例えば、選択的ハイブリッド形成を達成するハイブリッド形成の条件は、Tm(ハイブリッド形成パートナーから半分の分子が解離する融解温度)より約12〜25℃下回る温度で強イオン強度溶液(6×SSCまたは6×SSPE)におけるハイブリッド形成、続いて洗浄温度がTmを約5℃〜20℃下回る温度であるように選択された温度と塩濃度の組み合わせによる洗浄を伴い得る。温度および塩濃度は、フィルターに固定化された基準DNAの試料が目的の標識核酸とハイブリッド形成し、次に異なる厳密性の条件下で洗浄される予備実験において、経験的に容易に決定される。ハイブリッド形成温度は、典型的には、DNA−RNAおよびRNA−RNAハイブリッド形成において高い。条件は、厳密性を達成するために上記に記載されたように使用され得る、または当業者に知られている。DNA:DNAハイブリッド形成に好ましい厳密なハイブリッド形成条件は、6×SSCまたは6×SSPE中(水溶液中)での約68℃、続く68℃での洗浄であり得る。ハイブリッド形成および洗浄の厳密性は、望ましい場合、望ましい相補性が減少するに従って、更に、変異性が探求される任意の領域におけるG−CまたはA−Tの豊富さに応じて、減少され得る。同様に、ハイブリッド形成および洗浄の厳密性は、望ましい場合、望ましい相同性が増加するに従って、更に、高い相同性が求められる任意の領域におけるG−CまたはA−Tの豊富さに応じて、増加され得、全て当該技術において知られている。
選択的ハイブリッド形成を定義する別の方法は、一方の核酸が他方の核酸に結合している量(率)を見ることである。例えば、幾つかの実施形態において、選択的ハイブリッド形成条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントの制限核酸が非制限核酸に結合している場合である。典型的には、非制限プライマーは、例えば、10、または100、または1000倍の過剰量である。この種類のアッセイは、制限および非制限プライマーの両方が、例えば、これらのkdより10倍、もしくは100倍、もしくは1000倍低い、または核酸分子の一方が10倍、もしくは100倍、もしくは1000倍である、または一方もしくは両方の核酸分子が、これらのkdを超える条件下で実施され得る。
選択的ハイブリッド形成を定義する別の方法は、ハイブリッド形成が望ましい操作を促進する条件化で酵素的に操作されるプライマーの率を見ることである。例えば、幾つかの実施形態において、選択的ハイブリッド形成条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマーが、酵素操作を促進する条件化で酵素的操作される場合であり、例えば、酵素操作がDNA延長である場合、選択的ハイブリッド形成条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100パーセントのプライマー分子が延長される場合である。条件は、操作を酵素的に実施するために適していると製造会社から提案されたもの、また当該技術において示されたものも含まれる。
相同性と同様に、2つの核酸分子の間のハイブリッド形成レベルを決定するために、本明細書に開示されている多様な方法が存在することが理解される。これらの方法および条件は、2つの核酸分子の間のハイブリッド形成の異なる率をもたらし得ることが理解されるが、特に示されない限り、いずれかの方法のパラメーターを満たすことで十分である。例えば、80%のハイブリッド形成が必要であり、ハイブリッド形成がこれらの方法のいずれかにおいて必要なパラメーターの範囲内で生じる場合、本明細書に開示されていると考慮される。
当業者は、組成物または方法が、ハイブリッド形成を決定する基準のうちのいずれか1つを集合的に、または単独で満たす場合、これは本明細書に開示されている組成物または方法であることを理解することが、理解される。
キット
本明細書に開示されている方法の実施に使用され得る試薬が引き出されるキットが、本明細書に開示されている。特に、キットは、本明細書において考察されている、または開示されている方法の実施に必要もしくは有益であることが理解される任意の試薬または試薬の組み合わせを含むことができる。例えば、キットは、方法の特定の実施形態において考察されている延長、複製、および増幅反応を実施する、本明細書に開示されている1つ以上のプライマー、ならびにプライマーを意図されたように使用するために必要な緩衝剤および酵素を含むことができる。
ROS1関連融合体を検出するため、野生型ROS1とハイブリッド形成する逆方向プライマーを使用できることが理解される。したがって、逆方向プライマーが野生型ROS1のキナーゼドメインのような野生型ROS1の部分とハイブリッド形成する、少なくとも1つの逆方向プライマーを含むキットが、本明細書に開示されている。加えて、本明細書に開示されているキットは、ROS1および/または野生型ROS1の融合パートナーと特異的にハイブリッド形成する1つ以上の順方向プライマーを含み得ることが理解される。したがって、例えば、順方向プライマーは、ROS1融合体の切断点領域の外部(すなわち、融合体切断点の3′)のROS1配列、CD74、FIG、SLC34A2、または他の融合パートナーのような野生型ROS1とハイブリッド形成することができる。当業者は、単一を超えるプライマーまたはプライマー対を含み、例えば、配列番号5、8、12、14、15、18、または21のような単一の逆方向プライマーと複数の順方向プライマーを含み得るキットを有することが適していることを理解し得る。あるいは、キットは、融合体切断点の外部(すなわち、融合体切断点の3′)の野生型ROS1にプライマー対、およびROS1キナーゼにプライマー対を含むことができる。キットは、野生型ROS1、CD74、FIG、SLC34A2と特異的にハイブリッド形成する、1つ以上の順方向プライマー、および/または1つ以上の逆方向プライマーを更に含むことができる。
したがって、一態様において、(a)第1の検出試薬で標識された第1のプライマーであって、前記第1のプライマーが逆方向プライマーであり、前記逆方向プライマーが、配列番号1のアミノ酸配列またはその補体をコードする第1のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第1のプライマーと、(b)少なくとも1つの第2のプライマーであって、前記第2のプライマーが順方向プライマーであり、前記順方向プライマーが、野生型ROS1をコードする第2のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第2のプライマーと、を含むROS1関連癌を診断する、または治療に対する癌の適合性、もしくは癌の治療の適合性を決定するキットが、本明細書に開示されている。
また、ROS1のECDに特異的に結合する1つ以上の順方向プライマー(例えば、配列番号13および20)を含むキットが、本明細書に開示されている。また、ROS1キナーゼドメインに特異的に結合する1つ以上の順方向プライマー(例えば、配列番号4、7、15、または17)を含むキットが、本明細書に開示されている。キットは、ROS1のECDおよびキナーゼドメインに特異的な1つ以上の順方向プライマーを含み得ることが、理解される。また、ROS1のECDに特異的な1つ以上の逆方向プライマー(例えば、配列番号14および21)を更に含むキットが開示されている。また、ROS1キナーゼドメインに特異的に結合する1つ以上の逆方向プライマー(例えば、配列番号5、8、12、16、および18)を含むキットであるまた、ROS1のECDおよびキナーゼドメインに特異的な1つ以上の逆方向プライマーの組み合わせを含むキットが、本明細書に開示されている。本明細書に開示されている1つ以上の順方向プライマーのいずれかを、1つ以上の逆方向プライマーとキットにおいて組み合わせ得ることが、更に理解される。したがって、例えばROS1特異的順方向プライマー配列番号4、7、13、15、17、もしくは20)のような1つ以上の順方向プライマー、および/または1つ以上のROS1特異的逆方向プライマー配列番号5、8、12、14、16、18、および21)を含むキットが、本明細書に開示されている。
また、1つ以上のポリヌクレオチドプローブを含み、前記プローブが、約20〜約30個のヌクレオチド長さであり、その1つの末端にレポーター色素およびその別の末端に消光色素を含み、例えば、配列番号6、9、19、または22のものであるキットが、本明細書に開示されている。
開示されているキットは、本明細書に開示されている方法が正確に機能することを確実にするため、およびアッセイ間の結果を正規化するために対照も含み得ることが、理解される。したがって、例えば、陽性cDNA対照、陰性cDNA対照、および対照プライマー対が本明細書に開示されている。例えば、開示されているキットは、ホモサピエンスATPシンターゼ、H+輸送、ミトコンドリアF1複合体、Oサブユニット(ATP5O)、核遺伝子コードミトコンドリアタンパク質mRNA;ホモサピエンスNADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)1アルファ部分複合体、2,8kDa(NDUFA2)、mRNA;ホモサピエンスグリセルアルデヒド−3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、mRNA;ホモサピエンスH3ヒストン、ファミリー3A(H3F3A)、mRNA;ホモサピエンスプロテアソーム(プロソーム、マクロペイン)サブユニット、ベータ型、4(PSMB4)、mRNA;ホモサピエンスリボソームタンパク質S27a(RPS27A)、転写物変種、1、mRNA;ホモサピエンス真核生物翻訳開始因子4A、アイソフォーム2(EIF4A2)、mRNA;ホモサピエンスリボソームタンパク質L18(RPL18)、mRNA;ホモサピエンスアデノシンデアミナーゼ、RNA特異的(ADAR)、転写物変種1、mRNA;またはホモサピエンスチトクロムcオキダーゼサブユニットVb(COX5B)、mRNAを検出するために対照プライマー対を含むことができる。プライマー対の例には、表1において見出されるプライマー対が含まれるが、これらに限定されない。
加えて、開示されているキットは、酵素(例えば、ポリメラーゼ)、緩衝剤、滅菌水、反応管のような、開示されている方法を実施するためのそのような他の試薬および材料を含み得ることが、理解される。加えて、キットは、修飾ヌクレオチド、ヌクレアーゼ抵抗性ヌクレオチド、およびまたは標識ヌクレオチドも含むことができる。加えて、開示されているキットは、本明細書に開示されている方法を実施するための説明書、およびROS1突然変異の存在を計算することができるソフトウエアを含むことができる。
一態様において、開示されているキットは、使用が野生型ROS1、既知のROS1融合体、または以前から未同定nROS1融合体を含有するかを決定する方法を実施するために、単一のアッセイを同時に、または別々に行うのに十分な材料を含むことができる。キットは、対照反応を行うのに十分な材料を含むこともできる。したがって、一態様において、陽性cDNA対照反応管、陰性cDNA対照反応管、対照プライマー反応管、既知のROS1融合体を検出するための反応管、および/または野生型ROS1を検出するための反応管、ならびにROS1キナーゼ活性を検出するための反応管を含むキットが、本明細書に開示されている。
別の形状では、開示されているキットは、内部対照遺伝子と比べた測定に基づいて、野生型発現、キナーゼドメイン過剰発現、または融合体突然変異過剰発現のいずれかである、ROS1の状態を決定するために使用され得る。内部対照遺伝子は、本開示の他の部分において記載されており、細胞周期、発達、または環境因子に関わりなく、安定的および構成的に発現すると理解される。したがって、一態様において、ROS1の状態は、ROS1(分子)/内部対照(分母)の方程式により決定され得、得られる商は、試験組織、細胞株、または他の試料がROS1陽性またはROS1陰性のいずれかであることを示す結果の範囲である。特定の組織が内部対照転写物を異なるレベルで発現するという理解によって、ROS1陽性または陰性の状態を示す決定された比および商は、それぞれの組織および試験片の種類によって別々に確立される。
本明細書に開示されている組成物、および開示されている方法を実施するために必要な組成物は、特に示されない限り、特定の試薬または化合物のための当業者に既知の任意の方法を使用して作製され得る。
核酸合成
プライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドのような開示されている核酸は、標準的な化学合成方法を使用して作製され得る、または酵素法もしくは任意の他の方法を使用して産生され得る。そのような方法は、標準的な酵素消化から、続いてヌクレオチドフラグメント単離、純粋な合成方法まで、例えば、MilligenまたはBeckman System 1Plus DNA合成器(例えば、Milligen−Biosearch,Burlington,MAのModel 8700自動合成器、またはABI Model 380B)を使用するシアノエチルホスホラミド法の範囲であり得る。
実施例
以下の実施例は、当業者に、本明細書において主張されている化合物、組成物、物品、装置、および/または方法がどのように作製され、評価されているかについての完全な開示および記載を提供するために記述されており、純粋に説明であることが意図され、開示を制限することを意図しない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確実にする努力がなされてきたが、幾らかの誤差および偏差が釈明されるべきである。特に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、または周囲温度であり、圧力は大気圧または近大気圧である。
実施例1:ROS1融合体を検出するFISHアッセイの開発および確認
上記に示されているように、3つの異なるROS1パートナー、RIG、CD74、およびSLC34A2は、癌関連ROS1融合体に関与することがこれまで同定されている。現在は不明であるが、これらのROS1の3つのパートナーは、他の融合体キナーゼとの経験に基づいて、癌においてキナーゼと融合体を形成する唯一の遺伝子であるということはなく、例えば、>15個の異なる遺伝子(そのうちの幾つかは図1に示されている)は、切断ALK受容体チロシンキナーゼ(RTK)と融合して、癌の発達を誘導するキメラキナーゼを形成することが、現在知られている。ROS1融合体FISHアッセイは、関与する3つの既知の融合パートーのそれぞれに特異的に設計され得るが、そのような手法は、未だ同定されていない融合パートナーが関与するROS1融合体を見つけ損なう可能性のある危険を冒し、更に、腫瘍試験片においてROS1融合体を検出する3つの異なるFISHアッセイの臨床用途は、極めて時間的および労力的に非効率である。
ROS1融合体アッセイは、切断が癌関連染色体再編成の際に生じるROS1遺伝子座内の位置に隣接した、大型のゲノムクローン(典型的には、BACおよび/またはPACクローン)を使用する。そのような「breakapart」FISHアッセイは、異なって着色された蛍光色素により標識された隣接したゲノムクローンを使用する。正常な細胞において、異なる色(例えば、赤色および緑色、色が重複すると、時々、黄色に見える)は、遺伝子座が無傷なので物理的に対形成されており、対照的に、目的の遺伝子の再編成を含有する癌細胞において、色は物理的に分離されている。図4に示されているように、ROS1breakapartFISHアッセイは、予測されたように、正常とROS1融合体含有の細胞において作動する。
実施例2:ROS1融合体を検出するPCRに基づいたアッセイの開発
ROS1breakapartFISHアッセイは、関与するパートナー遺伝子に関わりなく、大多数のROS1融合体を検出する。しかし、追加のROS1融合体臨床診断は、依然として有意であり、それは、1)幾つかの国々および特定の状況が、FISH(幾分、技術的に要求の高いことがあり得る)以外の診断プラットフォームを好むため、ならびに2)隣接プローブの切断によりもたらされないROS1座内のマイクロ欠失により生成される(FIG遺伝子は、実際はROS1遺伝子のイントロンに埋め込まれ、座内のマイクロ欠失の結果、FIG−ROS1において見出されるROS1の一部をコードするROS1エクソンに隣接して並置される)ので、FIG−ROS1融合体をFISHにより検出することができないためであるこれらの問題に対処するため、PCRに基づいたアッセイを、ROS1融合体突然変異を検出するためのFISHへの相補的プラットフォームとして開発した。
ROS1のPCR診断(Insight ROS1 Screen(商標)と商標が付けられている)は、肺癌試験片においてROS1融合体を選択的に増幅する異なったRTプライマーを利用する、リアルタイムPCR診断である。Insight ROS1 Screenの基礎的な設計が図5および6に例示されている。
NSCLCにおける発癌性ALK発現と対照的に、ROS1は、基本的に、NSCLCと正常の肺組織の両方に発現する。したがって、有効なROS1アッセイは、正常な発現を発癌性の発現と区別しなければならない。伝統的なリアルタイムRT−PCR戦略は、1ステップ反応においてそれぞれの融合体転写物を標的にする対立遺伝子特異的プライマーセットを利用する。しかし、この方法は、融合体のばらつき、ならびに拡大し続ける検出プライマーの混合物を使用した、新たに発見された融合パートナーおよび変種のために繰り返す最適化のような欠点を有する。Insight ROS1 Fusion Screenは、ROS1キナーゼドメインの包括的PCR検出方法を維持することによって、これらの問題を回避する。発癌性ROS1融合体は、腫瘍肺組織における基本的な全長ROS1発現の増幅に対して選択する第一鎖合成ステップにおいて標的化される。この方法において、アッセイの検出相は、融合パートナーに関わりなく一定のままである。
アッセイは、2つの別々のPCRプライマーセットを利用し、一方は、(ROS1融合体ではなく)正常なRTKのみに見出されるROS1細胞外ドメインをコードするROS1遺伝子の領域を増幅し、他方のプライマーセットは、正常と融合したROS1の両方に見出されるキナーゼドメインをコードするROS1遺伝子セグメントを増幅する。このアッセイ設計は、ROS1融合体の存在のみならず、無傷のROS1遺伝子の(遺伝子座のDNA増幅と最も頻繁に相関する)過剰発現も検出することができる。正常なROS1 RTK mRNA発現は、内部対照標準と相関し、正常なROS1の過剰発現は、内部対照より低い閾Ct値により示され、一方、ROS1融合体の存在は、野生型とキナーゼのリアルタイムPCR反応の間の閾Ct値の差(キナーゼドメイン反応のCtは、野生型反応よりも低い)により明白である。示されているように、この洗練された簡単な設計は、全てのROS1誘導体を、関与する融合体パートナーに関わりなく同定し、加えて、野生型ROS1の過剰発現を同定および定量化する。癌におけるROS1増幅/過剰発現の発生率および有意性は依然として不明であるが、ROS1増幅/過剰発現は、特定の閾値にわたったとき、腫瘍増殖を誘導する構成的キナーゼ活性化をもたらすことが知られている他のRTK(例えば、ALKおよびEGFR)の増幅/過剰発現のパターンに従うことが、本明細書において考慮され、重要なことに、そのようなRTK増幅/過剰発現を有する癌は、誘導性キナーゼの薬理学的阻害に感受性がある。
実施例3:Insight ROS1 Fusion Screenの開発
上記に記載された方法論は、融合体特異的オリゴヌクレオチド(ROS1融合体を標的にするため)、ランダム六量体ミックス(全ROS1を推定するため)、またはプライマーなし(偽刺激を確認するため)により刺激された異なるリバーストランスクリプターゼ酵素を異なる反応温度で試験することによって確立された。これらの条件は、SLC34A2−ROS1融合体発現細胞株または正常肺のテンプレート(表2)において最初に最適化された。シグナルがRTプライマーの不在下で検出された場合、反応条件は、無差別なRT活性を防止するには十分な厳密性がないと認められた(Superscript III@56℃を参照すること)。この問題に対処するため、60℃を超える温度で活性を有する熱安定性酵素(Thermoscript,Invitrogen)を使用した。高温での反応の実施は、RNA二次構造を低減するが、FS−RTプライマーの特異性も低減する。シグナルが、FS−RTプライマーを使用して正常な肺において検出される場合、反応はROS1融合体から全長ROS1を識別することに特異性がない(57℃のTmプライマーによるThermoscriptを参照すること)。特異性の損失は、一連のプライマーをほぼ延長温度(すなわち、63〜65℃)の融解温度で再設計することにより対処した。高融解温度のプライマーは、正常な肺試料における全長ROS1転写物の非特異的cDNA合成を排除した(表2)。
次にSLC34A2−ROS1融合体アッセイにおける同じ設計のパラメーターを、Insightの目録から入手可能なCD74−ROS1融合転写物である追加のROS1融合体の検出に適用した。別の一連のFS−RTプライマーを、63℃を超える融解温度で設計し、CD74−ROS1融合体を発現し、かつ全長ROS1発現を欠失しているBa/F3細胞株から誘導されたテンプレートRNAへのThermoscript酵素による第一鎖合成を刺激することに使用した。表3に示されているように、ROS1キナーゼドメインの特異的検出は、FS−RT CD74−ROS1融合体プライマーを使用した融合体発現細胞株においてのみ検出された。ここでも正常な肺を対照として使用して、あらゆる全長ROS1の非特異的増幅を同定した(表2)。
ROS1融合体の日常的なPCR試験は、現在、融合体接合点に隣接する対立遺伝子特異的プライマーを使用して実施される。対照的にInsight ROS1 Fusion Screenは、融合体特異的第一鎖合成の後にROS1キナーゼドメインの検出に包括的なPCRプライマーセットを利用する。両方の方法をPCR効率について比較し、対比するために、FS−RTプライマーおよびランダム六量体を使用して生成されたcDNAを、両方の種類の後検出法に個別に付した。表4は、ROS1キナーゼ特異的アッセイが、同一濃度の出発全RNAを使用して特定の試料に対する対立遺伝子特異的プライマーと比較したとき、類似した交差点(Ct)値を有することを示す。加えて、ROS1キナーゼ特異的アッセイは、多様な融合点にわたる共通の遺伝子領域の増幅/検出に基づいて融合体転写物における差を検出する能力を組み込む。対照的に対立遺伝子特異的アッセイは、それぞれの反応に追加のテンプレート入力、および/または反応の検出相に複合体多重化を必要とする。
FS−RT法の感受性を評価するため、CD74−ROS1発現Ba/F3細胞株を、正常な肺から抽出したRNAに希釈した。正常な肺は全長ROS1のみを発現し、Ba/F3細胞株はCD74−ROS1融合転のみを発現するので、正常な肺のRNAを使用して、検出の限界を決定するため消光するまでBa/F3 RNAに希釈することができる。それぞれのRNA希釈系列を、ROS1キナーゼqPCRアッセイ(すなわち、Insight ROS1 Fusion Screen)による融合体特異的第一鎖合成におよび増幅に付した。表5の結果は、アッセイの感受性が1:10であること、または10%の検出レベルを有することを示す。
実施例4:FFPEにおけるInsight ROS1 Screenの最適化
IGI Biobank貯蔵所内のROS1融合体を同定するため、伝統的な対立遺伝子特異的検出法を使用して、多様なROS1融合体について169FFPE肺腺癌試験片をスクリーンした。2つのROS1融合体が検出され(頻度率1.2%)、これらの試料のうちの1つはCD74−ROS1融合体を有すると同定された。セカンドサイトRT−PCRおよびサンガー配列決定は、2つの独立した単離試料においてCD74−ROS1融合体の存在を確認した。次にCD74−ROS1陽性FFPEを、インビトロ確認Insight ROS1 Fusion Screenにより試験した。結果は、細胞株において最適化されたリバーストランスクリプターゼの高温パラメーターが、FFPE試料に成功裏に翻訳されたことを示す。しかし、ROS1キナーゼ発現を検出するPCR反応は、細胞株において試験したときよりも大量のcDNAテンプレートの入力を必要とした(表6)。最後に、高温RT反応によるCD74−ROS1特異的増幅の確認は、ROS1 ECDの発現についてcDNAを試験することにより決定され、全長ROS1発現(および無差別なRT増幅)を検出する。表6から分かるように、全長ROS1はこれらの試料において検出されず、Insight ROS1 Fusion Screenが、FFPE試料においてROS1融合体を特異的に検出するために最適化されたことを確認している。
実施例5:Insight ROS1 Screen(商標)バージョン2の開発
肺組織において構成的に発現された野生型RO1の高いバックグラウンドレベルは、Insight ROS1 Screen PCRに基づいたアッセイに記載されている野生型とキナードメインのリアルタイムPCR反応の閾Ct値のあらゆる検出可能な差を遮蔽し得る。検出可能な差が遮蔽される場合、代替的なqPCR手法が、NSCLC細胞株、または患者の腫瘍において現在報告されている3つのROS1融合体、SLC34A2−ROS(長い形態)、SLC34A2−ROS(短い形態)、およびCD74−ROSの排他的検出に使用される。qPCRアッセイは、多重cDNA合成反応に2つの異なるプライマーを利用し、1つのcDNAプライマーは、長および短の両方の形態のSLC34A2に存在する領域に特異的であり得、別のcDNAプライマーは、C74遺伝子に排他的に存在する。両方のcDNAプライマーは、3つの異なるROS1融合体の転座領域を介したcDNA延長の容易さのため、それぞれの融合体切断点の僅かに5′に戦略的に配置される。
本明細書に記載されている第2のqPCR Insight ROS1 Fusion Screenは、本出願においてInsight ROS1 Fusion Screen(商標)v2と呼ばれる。要約すると、Insight ROS1 Fusion Screen(商標)v2は、3つの可能なcDNAを生成するcDNA合成相、切断野生型SLC34A2、切断野生型CD74、および特定の患者試験片に存在する場合は、SLC34A2−ROS1またはCD74−ROS1融合体の即時転座領域の潜在的な延長および合成から構成される。反応の1ステップ相の検出相への持ち越しを防止するため、全てのcDNAプライマーは低いTmを(高温のリアルタイム反応の際にアニールするのを防止するために)有し、リバーストランスクリプターゼは、65℃で20分間不活性化される。次に新生cDNAを、SLC34A2またはCD74 ROS1融合体の両方における転座点に並置しているROS1領域に特異的なプライマーを使用するqPCR検出反応に使用することができる(図7)。ここでも、cDNA合成の開始部位と、実際のqPCR検出反応を仲介するプライマーの位置を分離しているヌクレオチドの距離は、分解したFFPE RNAによる問題を迂回するために最小限に保持される。次にROS1特異的qPCRキナーゼ反応は、SLC34A2−ROS1またはCD74−ROS1に転座された融合形態でのみ存在するROS1のcDNA領域を増幅する。野生型ROS1キナーゼ領域は、アッセイの逆転写相に存在するあらゆるROS1特異的cDNAプライマーを欠いているので、それぞれの試料において存在しない(図7)。特定の配列が表7に列記されている。

実施例6:Insight ROS1 FISHとqPCRに基づいたアッセイの両方の感受性および特異性の決定
Insight ROS1 FISHアッセイおよびRT−qPCRアッセイの両方を、多様な癌細胞株または組織試料の使用により評価した。例えば、表8は、2つの種類の細胞株を示し、1つの細胞株は、FIG−ROS誘導体を発現し、1つは、両方のSLC34A2−ROS融合体(長および短)を多様な発現レベルで発現する。野生型レベルのみの全長ROS1からなる正常肺の全RNAを、バックグラウンド対照として使用することができる。
RNA抽出および1ステップqPCR手順は、十分に確立された実験プロトコールに従っている。
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Claims (34)

  1. 癌を有する対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、前記対象から組織試料を得ることと、前記組織試料から核酸を単離することと、前記核酸に核酸増幅プロセスを実施することと、前記組織試料における野生型ROS1およびROS1キナーゼドメインのうちの一方または両方の組み合わせと関連する核酸の存在を検出する、またはその量を測定することと、を含み、正常な対照と比べたアンプリコンの増加、またはアンプリコンの存在が、前記対象がROS1関連癌を有することを示している、方法。
  2. 前記組織試料からの前記核酸が、RNAであり、前記方法が、前記RNA試料からcDNAを合成することを更に含み、前記方法が、前記cDNAにPCRを実施することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記核酸増幅プロセスが、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記RT−PCRがリアルタイムRT−PCRである、請求項2に記載の方法。
  5. 前記リアルタイムRT−PCRが、前記リアルタイムRT−PCRの産物の配列と相補的であるプローブを用い、前記プローブが、その末端にレポーター色素およびその他端に消光剤色素を有する、請求項4に記載の方法。
  6. 前記プローブが、配列番号6、9、19、または22からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記核酸増幅プロセスが、リアルタイムPCRである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記PCR、RT−PCR、またはリアルタイムPCR反応が、野生型ROS1配列と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対、ならびに野生型ROS1キナーゼドメイン配列と特異的にハイブリッド形成する順方向および逆方向プライマー対の使用を含む、請求項2、3、または7に記載の方法。
  9. 少なくとも1つの逆方向プライマーが、配列番号5、8、12、14、15、18、または21を含む、請求項8に記載の方法。
  10. 少なくとも1つの順方向プライマーが、配列番号4、7、13、15、17、または20を含む、請求項9に記載の方法。
  11. 少なくとも1つの順方向プライマーが、野生型ROS1の細胞外領域とハイブリッド形成する、請求項8に記載の方法。
  12. 前記順方向プライマーが、配列番号13または20である、請求項12に記載の方法。
  13. 前記RT−PCRまたはリアルタイムPCR反応が、ROS1キナーゼドメインと特異的にハイブリッド形成することができる順方向の使用を含む、請求項8に記載の方法。
  14. 前記順方向プライマーが、配列番号4、7、15、または17のものである、請求項13に記載の方法。
  15. 前記逆方向プライマーまたは前記野生型ROS1およびROS1キナーゼが、同じプライマーである、請求項8に記載の方法。
  16. 野生型ROS1および野生型ROS1キナーゼのサイクル閾(Ct)値を決定することを更に含み、ROS1キナーゼと比べた野生型ROS1の高い(Ct)値が、融合体の存在を示す、請求項8に記載の方法。
  17. 融合体切断点の5′でROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーおよび融合体切断点の3′でROS1と結合する逆方向プライマーを含み、前記プライマーが、前記融合体の全体にわたって伸び、ROS1および融合パートナー核酸の両方を有するアンプリコンの存在の検出が、融合体の存在を示す、請求項1に記載の方法。
  18. a)ROS1融合パートナーと結合する順方向プライマーを使用する第1の増幅反応であって、前記第1の反応からのアンプリコンが第2の増幅反応にテンプレートとして使用されることと、
    b)前記第1の反応の後の第2の増幅反応であって、前記融合体切断点の3′でのROS1配列に特異的なプライマーが、前記第2の増幅反応に使用されることと、
    c)前記第2の反応からのアンプリコンにおいてROS1の存在を検出することであって、前記第2の反応からの前記アンプリコンにおけるROS1の検出が、ROS1融合体の存在を示すことと、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  19. 前記癌が、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道扁平上皮癌、未分化大細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、炎症性筋線維芽腫瘍、悪性組織球増殖症、胆管癌、腎癌、および神経膠芽腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  20. ROS1関連癌を有すると確認された対象を、前記対象にROS1阻害剤を投与することによって続けて治療することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  21. 対象においてROS1関連癌を診断する方法であって、細胞内の核酸を、ROS1キナーゼとハイブリッド形成する第1のプローブおよびROS1の前記融合体切断点の3′でのROS1配列とハイブリッド形成する第2のプローブと接触させることを含み、異なって標識されている前記プローブ、分離されたプローブにより示されている破壊された遺伝子座の検出が、ROS1融合体の存在を示し、そのことがROS1関連癌の存在を示す、方法。
  22. (a)第1の検出試薬で標識された第1のプライマーであって、前記第1のプライマーが逆方向プライマーであり、前記逆方向プライマーが、配列番号1のアミノ酸配列またはその補体をコードする第1のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第1のプライマーと、(b)少なくとも1つの第2のプライマーであって、前記第2のプライマーが順方向プライマーであり、前記順方向プライマーが、野生型ROS1をコードする第2のポリヌクレオチドとハイブリッド形成する1つ以上のポリヌクレオチドである、第2のプライマーと、を含むROS1関連癌を診断するキット。
  23. 野生型ROS1の細胞外領域と特異的にハイブリッド形成する前記順方向プライマーである、請求項22に記載のキット。
  24. 前記順方向プライマーが、配列番号13または20である、請求項23に記載のキット。
  25. 前記ROS1キナーゼドメインと特異的にハイブリッド形成する前記順方向プライマーである、請求項22に記載のキット。
  26. 前記順方向プライマーが、配列番号4、7、15、または17のものである、請求項25に記載のキット。
  27. 第2の順方向および逆方向プライマーを更に含む、請求項22に記載のキット。
  28. 前記逆方向プライマーが、配列番号5、8、12、14、16、18、または21である、請求項22に記載のキット。
  29. 前記第1の順方向および逆方向プライマーが、野生型ROS1のキナーゼドメインと特異的にハイブリッド形成し、前記第2の順方向および逆方向プライマーが野生型ROS1と特異的にハイブリッド形成する、請求項22に記載のキット。
  30. 対照プライマー対を更に含む、請求項22に記載のキット。
  31. 前記対照プライマー対が、COX5Bと特異的にハイブリッド形成する、請求項30に記載のキット。
  32. 前記第1および第2のプライマーが、第1および第2の検出試薬によりそれぞれ標識されている、請求項22に記載のキット。
  33. ポリヌクレオチドプローブを更に含み、前記プローブが約20〜約30個のヌクレオチド長さであり、その1つの末端にレポーター色素を含み、他端に消光色素を含む、請求項22に記載キット。
  34. 前記ポリヌクレオチドプローブが、配列番号6、9、19、または22に記載された配列を含む、請求項33に記載のキット。
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