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JP2015057979A - 酸化安定性が向上した油脂及びその製造法 - Google Patents

酸化安定性が向上した油脂及びその製造法 Download PDF

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JP2015057979A JP2013193786A JP2013193786A JP2015057979A JP 2015057979 A JP2015057979 A JP 2015057979A JP 2013193786 A JP2013193786 A JP 2013193786A JP 2013193786 A JP2013193786 A JP 2013193786A JP 2015057979 A JP2015057979 A JP 2015057979A
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Shigeki Mizushima
茂樹 水嶋
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Abstract

【課題】入手が容易で安価な物質を用いて、高い酸化安定性を有した油脂組成物及びその製造法を提供する事。【解決手段】油脂中に、弱酸のカリウム塩を20〜1000ppm含有することで、脂肪酸組成や物理性状を変化させることなく、安価に、高い酸化安定性を付与できる。弱酸のカリウム塩が炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウムから選ばれる1以上の化合物である。また、酸化安定性が向上した油脂を使用した食品は、油脂や油脂類の酸化による酸敗臭の発生、品質劣化を防止する。【選択図】なし

Description

本発明は酸化安定性が向上した油脂及び製造法、更にそれを含有してなる食品に関する。
油脂類、または油脂類を含有する食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料などの製品が酸化され、樹脂化、異臭、着色、変色、毒性物質の生成あるいは栄養価の低下を引き起こし、品質の劣化をまねくことはよく知られている。
従来から、酸化安定性を高める為に、様々な手法が用いられてきた。
1つ目は、油脂に含まれるトリグリセリドの脂肪酸組成を分別・水素添加等方法にての改変する方法である。例えば、特許文献1には、パーム油分別軟質油と硬質油を混合し、脂肪酸組成を調製する方法が記載されているが、この様な方法では、融点や各温度における固体脂含量、つまり物理性状が変化してしまい、好ましくない。
2つ目は、油脂を精製する際に、酸化安定性を阻害する物質を除去する方法である。例えば、特許文献2には、油脂を脱酸処理後、フィチン酸と接触させ、その後活性炭及び/又は白土により脱色することを特徴とする油脂の精製方法が記載されているが、この様な方法は、酸化安定性を阻害する物質(例えば鉄分等)が極めて多い、魚油や珪藻類等の特殊な油脂原料には適切であるものの、一般に多く流通するパーム油や菜種油、大豆油及びその加工油脂に対しては十分な効果を有しない。
3つ目は、酸化防止効果を有する物質、つまり抗酸化剤を油脂に添加する方法である。従来から抗酸化剤としてブチルヒドロキシアニソール(以下、BHAという)やブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTという)などの合成抗酸化剤が、また、天然物を起源とする抗酸化剤としてトコフェロール類、カテキン類、L−アスコルビン酸、ゴマ油中のセザモリン、コーヒー酸誘導体、メラノイジン、アミノ酸、フィチン酸、茶葉抽出物、ローズマリーやセージ等の香辛料抽出物、その他等の単独物またはそれらの混合物が用いられてきた。(例えば、特許文献3)しかし合成抗酸化剤の一部は国によっては法規制により使用が規制されている問題があり、また天然抗酸化剤では、ビタミンEやその誘導体は、酸化防止作用が比較的弱く、反面カテキン類等、比較的強い酸化防止作用のある物質は高価である。
カリウム塩が添加された油脂として、特許文献4には、カリウム塩、及びナトリウム塩を含有し、カリウムの含有量が0.05〜0.3重量%、ナトリウムとカリウムとの重量比率が1:2.0〜4.0であることを特徴とする可塑性乳化油脂組成物が開示されているが、その効果は乳の風味を付与するものであり、本発明とは目的及び効果が大きく異なるものである。
また、特許文献5には、原子吸光光度法による定量により、ナトリウム、カリウムから選ばれる1以上の成分を油脂中に0.1〜1μmol/g含有することを特徴とする、加熱による酸価の上昇が抑制された加熱調理用油脂が開示されているが、その効果は、加熱調理時の加水分解による酸価の上昇を抑制するものであり、本発明とは目的及び効果が異なるものである。
このように、これまでいくつかの検討が行われていきたが、いずれの方法においても、油脂の酸化安定性を高めるに十分な効果を得られるものではなく、また、消費者のおいしさ、安心、低価格の要望の高まりから、安価で既知の物質により油脂の酸化安定性を高める技術の開発が望まれてきた。
特願2011−103084号公報 特願2004−225128号公報 特願2004−554998号公報 特願2002−95701号公報 特願2010−550977号公報
本発明の目的は、入手が容易で安価な物質を用いて、高い酸化安定性を有した油脂組成物及びその製造法を提供する事である。
本発明者らは、これらの諸問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、弱酸のカリウム塩を油脂に添加する事で、高い酸化安定性を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、
(1) 弱酸のカリウム塩を油脂中に20〜1000ppm含有することを特徴とする、酸化安定性が向上した油脂組成物。
(2) 弱酸のカリウム塩が炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウムから選ばれる1以上の化合物である事を特徴とする油脂組成物。
(3) 油脂組成物に弱酸のカリウム塩を添加することを特徴とする(1)に記載の油脂組成物の製造方法。
(4) 弱酸のカリウム塩の水溶液を、油脂組成物中に分散させる事を特徴とする(1)に記載の油脂組成物の製造方法。
(5) (1)又は(2)に記載の油脂組成物を含有する食品。
(6) 弱酸のカリウム塩を油脂中に20〜1000ppm含有することを特徴とする、油脂組成物の酸化安定性を向上させる方法。
(7) 弱酸のカリウム塩を含有する油脂の酸化安定性向上剤。
(8) 弱酸のカリウム塩の水溶液、油状物質及び乳化剤を含有する油中水型乳化組成物であることを特徴とする(7)に記載の酸化安定性向上剤。
(9) 弱酸のカリウム塩を含有する粉末油脂製剤であることを特徴とする(7)に記載の酸化安定性向上剤。
に関するものである。
本発明により、油脂の組成や物理性状を変化させることなく、安価に、高い酸化安定性が付与された油脂組成物を得る事が出来る。これにより、様々な油脂利用食品において、油脂や油脂類の酸化による酸敗臭の発生などによる品質劣化を防止することが出来る。
以下、本発明の油脂組成物の好ましい実施形態について詳述する。
本発明の油脂組成物は、油脂中に弱酸のカリウム塩を含有することを特徴とするが、本発明に使用する弱酸のカリウム塩としては、アミノ酸、核酸、有機酸、無機酸等が挙げられ、有機酸の具体例として、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、ギ酸などが挙げられる。また無機酸の具体例として炭酸、炭酸水素などが挙げられる。これら弱酸のカリウム塩のうち、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウムの使用が好ましい。
本発明の油脂組成物中の弱酸のカリウム塩の含有量は、20〜1000ppmである。また好ましくは35〜1000ppm、更に好ましくは50〜750ppm、最も好ましくは150〜500ppmである。弱酸のカリウム塩の含有量が少ないと、十分な酸化安定性を付与できない。また、弱酸のカリウム塩の含有量に応じ高い酸化安定性を付与できるが、多すぎると油脂組成物を保存する際に、弱酸のカリウム塩が沈降してしまうため、好ましくない。
本発明の油脂組成物に含まれるカリウム含量は、原子吸光分析法や、蛍光X線元素分析法などの既知の分析方法により測定することができる。
本発明の油脂組成物として使用できる油脂は、特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、胡麻油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、落下生油、米糠油、小麦胚芽油、玄米胚芽油、ハトムギ油、ガーリックオイル、椿油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油、ホホバ油、マカダミアンナッツ油、アボガド油、ひまし油、亜麻仁油、紫蘇油、ユーカリ油、豚脂、牛脂、馬油、魚油、卵油、乳脂肪などの食用油脂およびこれらを分別、水素添加またはエステル交換等を施した加工油脂を1種または2種以上組み合わせて、使用することができる。
本発明の油脂組成物は、既知の酸化防止剤を併用する事が出来る。併用する酸化防止剤としては、天然及び合成された酸化防止剤が使用でき、例えば、各種トコフェロール類が挙げられ、α、β、γ、δ等が濃縮されたトコフェロール製剤やミックストコフェロール、あるいはトコフェロールと同等の機能を有するトコトリエノール類も使用できる。その他、L−アスコルビン酸ステアレート、L−アスコルビン酸パルミテート、エリソルビン酸ナトリウム、ごま抽出物、カテキン類、茶抽出物等、油脂の酸化防止剤として使用可能な酸化防止剤は、上記例に限定すること無く使用することができる。その添加量は、通常0.0002〜2重量%であり、好ましくは0.002〜0.05重量%である。
本発明の油脂組成物は、本発明の有効成分を油脂組成物中に多く含有させるために、乳化剤を用いる事ができる。乳化剤は、W/O型乳化作用を有する乳化剤であれば特に制限はなく、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等を使用することができる。好ましい乳化剤として、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが使用できる。例えば、市販されている理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100、ポエム PR−300、阪本薬品工業株式会社製 SYグリスターCRS−75、SYグリスターCR−ED、太陽化学株式会社製 サンソフト818H等が例示できる。
本発明の油脂組成物は、必要に応じて、香料、色素、シリコーン等を添加することができる。
本発明の油脂組成物は、本来油脂中にほとんど溶けることのない弱酸のカリウム塩を含有することを特徴とする。これは、弱酸のカリウム塩を油脂中添加し、分散させる事で製造することができるが、弱酸のカリウム塩の水溶液を、油脂中に添加し分散させる事で、より高濃度な弱酸のカリウム塩を含有する油脂を安定し製造することができる。弱酸のカリウム塩の水溶液を添加した油脂組成物は、必要に応じ、加温・減圧下で脱水処理する事も出来る。この際、温度50〜180℃、真空度0.5〜100Torrの条件下で脱水処理することが好ましい。
本発明の油脂組成物は、バター、マーガリン、ショートニング、ドレッシングなどの油脂加工食品に使用することができる。
また、油脂を含む食品、例えば、おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、飴などの和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ドーナツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パンなどの各種洋菓子、ポテトチップスなどのスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベットなどの氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料などの清涼飲料水、緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク、業務用コーヒーなどの嗜好飲料、発酵乳、加工乳、チーズなどの乳製品、豆乳などの大豆加工食品、マーマレード、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、漬物類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキーなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、チクワ、ハンペン、てんぷらなどの魚貝類製品及びその干物、魚の干物、鰹、鯖、鯵などの各種節、煮干、ウニ、イカの塩辛、スルメ、魚のみりん干、貝の干物、鱈の干物、鮭などの燻製品などの各種珍味類、のり、小魚、貝類、するめ、山菜、茸、昆布などで作られる佃煮類、即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレーなどのカレー類、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、蛎油、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素などの各種調味料類、油脂を含有する各種レンジ食品及び冷凍食品などの各種飲食物、嗜好品に使用することができる。
さらに本発明を用い、弱酸のカリウム塩、油状物質(例えば、パームオレインなどの油脂)、乳化剤を混合することで、油中水型乳化組成物である酸化防止剤を得ることができ、この酸化防止剤を油脂に少量添加することで、油脂に酸化防止効果を付与できる。
例えば、70℃に加温したパームオレイン65重量部に対し、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)5重量部加えた後、50重量%炭酸カリウム水溶液を30重量部加え良く攪拌し、炭酸カリウムを15重量%含有する酸化防止剤を得ることができる。使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては特に制限はなく理研ビタミン(株)製ポエムPR−100、ポエムPR−300等市販されている乳化剤を使用することができる。
さらに本発明を用い、酸化防止粉末製剤を得る事が出来る。この粉末製剤の作成法は、弱酸のカリウム塩、油状物質、乳化剤を混合し、得られた混合液を自体公知の方法で粉末化することが挙げられるが、特に限定されることはない。この粉末製剤を油脂に添加することで酸化防止付与効果を得ることができる。粉末油脂製剤として用いられる油脂は、食用油であれば特に限定されない。例えば、パーム油、菜種油、大豆油、ひまわり油、コーン油、綿実油、サフラワー油、米糠油、ヤシ油、パーム核油等、およびこれらの硬化油・エステル交換油・分別油等が挙げられる。これらの油脂のうち、融点45〜75℃、さらには融点50〜65℃である油脂が好ましい。
酸化防止粉末製剤の作製法としては、弱酸のカリウム塩、油状物質、乳化剤を混合し、得られた混合油脂組成物を冷却塔(チラー)の中へ噴霧して粉末化するスプレークーリング法や、混合油脂組成物を冷却されたドラム上に流し、固化せしめてかきとるドラムフレーク法、噴霧乾燥法などが挙げられるが、特に限定されることはない。この酸化防止粉末製剤を油脂に少量添加することで、油脂の酸化安定性を向上させる事が出来る。
例えば、70℃に加温し完全に溶解した精製パーム油の極度硬化油65重量部に対し、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)を5重量部加えた後、50重量%炭酸カリウム水溶液を30重量部加え良く攪拌し冷却されたドラム上に流し、固化した油脂をかきとり粉砕した後、10メッシュの篩を通過させ、炭酸カリウム15重量%含有する酸化防止粉末製剤を得ることができる。使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしては特に制限はなく理研ビタミン(株)製ポエムPR−100、ポエムPR−300等市販されている乳化剤を使用することができる。
以下、実施例を示し、本発明の効果をより明確にする。なお、例中のppmおよび%は重量基準を意味する。
(実施例1)
50%炭酸カリウム水溶液を、品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量120ppmの油脂組成物を得た。この油脂組成物の安定性試験を実施した。油脂安定化試験は、自動油脂安定性試験装置(商品名:ランシマット743、スイス・メトローム社製)を使用した。この原理は加熱した油脂に空気を吹込み、この空気を次いで純水中に吹込む。油脂の酸化に伴って揮発性二次生成物質が生じてくる。油脂層をバブリングさせた空気により二次生成物質が運ばれ、水層に移行する。それに伴って水の導電率が変化する。時間に対して導電率をプロットして、得られた曲線の変曲点を求め、この時間を誘導時間(CDM)とする。誘導時間が長い方が高い酸化安定性を有する事を意味する。
油脂の安定性の判定は、油脂の安定性の増加に伴って誘導時間が伸びることにより誘導時間の長短の比較によりおこなうものである。測定条件として加熱温度120℃、空気流量20L/時、試料量3.0gで行った。誘導時間における数字の単位は時間(hr)を示す。誘導時間は、22.0時間であった。
(実施例2)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量60ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、15.6時間であった。
(実施例3)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量180ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、26.2時間であった。
(実施例4)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量360ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、33.0時間であった。
(実施例5)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量720ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、41.3時間であった。
(実施例6)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量1000ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、45.5時間であった。
(実施例7)
50%乳酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、乳酸カリウム含量360ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、19.0時間であった。
(比較例1)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)を用いた。誘導時間は、11.2時間であった。
(比較例2)
食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に抽出トコフェロール(理研ビタミン株式会社製、Eオイル805−D、トコフェロール含量70%)500ppmを添加した。誘導時間は、12.7時間であった。
(実施例8)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量30ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、12.3時間であった。
(比較例3)
20%塩化カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、塩化カリウム含量240ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、11.6時間であった。
(比較例4)
20%リン酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、リン酸カリウム含量240ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、11.7時間であった。
(比較例5)
40%炭酸ナトリウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸ナトリウム含量240ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、11.6時間であった。
(比較例6)
30%硫酸マグネシウム水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、硫酸マグネシウム含量240ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、11.6時間であった。
(比較例7)
50%乳酸水溶液を品温70℃の食用パームオレイン(不二製油株式会社製、パームエースN、ヨウ素価:67)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、乳酸含量240ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、11.6時間であった。
表1
Figure 2015057979
以上の結果を表1にまとめた。表1より弱酸のカリウム塩の濃度が増加するに従い、食用パームオレインの酸化安定性が向上する事が明らかである。また炭酸カリウム30ppm添加の実施例8は、既知の酸化防止剤であるトコフェロールを500ppm添加した比較例2に匹敵する酸化安定性を示しており、弱酸のカリウム塩が従来の酸化防止剤よりもはるかに少量で同等な効果を発揮していることが明らかである。
(実施例9)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量120ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、6.2時間であった。
(比較例8)
食用大豆油(不二製油株式会社製、大豆白絞油、ヨウ素価:131)を用いた。誘導時間は、4.1時間であった。
(実施例10)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用米糠油(不二製油株式会社製、食用こめ油、ヨウ素価:103)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量120ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、7.1時間であった。
(比較例9)
食用米糠油(不二製油株式会社製、食用こめ油、ヨウ素価:103)を用いた。誘導時間は、4.8時間であった。
(実施例11)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用菜種油(不二製油株式会社製、菜種白絞油、ヨウ素価:117)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量120ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、10.5時間であった。
(比較例10)
食用菜種油(不二製油株式会社製、菜種白絞油、ヨウ素価:117)を用いた。誘導時間は、5.1時間であった。
(実施例12)
50%炭酸カリウム水溶液を品温70℃の食用パームミッドフラクション(不二製油株式会社製、メルバ26、ヨウ素価:46)に添加し、乳化剤(理研ビタミン株式会社製 ポエムPR−100)を100ppm添加し、温度70℃、真空度10Torrで15分間脱水処理を行い、炭酸カリウム含量120ppmの油脂組成物を得た。誘導時間は、34.5時間であった。
(比較例11)
食用パームミッドフラクション(不二製油株式会社製、メルバ26、ヨウ素価:46)を用いた。誘導時間は、19.0時間であった。
表2
Figure 2015057979
以上の結果を表2にまとめた。表2より、弱酸のカリウム塩を添加する事による酸化安定性の向上効果が、幅広い油脂に応用可能であることが明らかである。
(実験例1)
実施例1の油脂組成物を用い、生麺を170±5℃で約1分間フライして揚げ麺を調製した。同様に比較例1の油脂組成物でフライして揚げ麺対照品を調製した。フライ麺をそれぞれポリエチレン袋に密封し、60℃の恒温機の中で1カ月保存したのち取りだして官能比較を行ったところ、実施例1の油脂組成物を用いた物はフライ直後のものと殆ど変化していなかったが、比較例1の油脂組成物を用いたものは油の酸化臭がして、また味も変わっていた。
(実験例2)
実施例1の油脂組成物20部を市販のコーンスナック80部に噴霧しスプレースナックを調製した。同様に比較例1の油脂組成物20部を市販のコーンスナック80部に噴霧しスプレースナック対照品を調製した。各スプレースナックをポリエチレン袋に密封し、60℃の恒温機の中で1カ月保存したのち取りだして官能比較を行ったところ、実施例1の油脂組成物を用いた物はスプレー直後のものと殆ど変化していなかったが、比較例1の油脂組成物を用いたものは油の酸化臭がして、また味も変わっていた。

Claims (9)

  1. 弱酸のカリウム塩を油脂中に20〜1000ppm含有することを特徴とする、酸化安定性が向上した油脂組成物。
  2. 弱酸のカリウム塩が炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウムから選ばれる1以上の化合物である請求項1に記載の油脂組成物。
  3. 油脂組成物に弱酸のカリウム塩を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の油脂組成物の製造方法。
  4. 弱酸のカリウム塩の水溶液を、油脂組成物中に分散させる事を特徴とする請求項1又は2に記載の油脂組成物の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の油脂組成物を含有する食品。
  6. 弱酸のカリウム塩を油脂中に20〜1000ppm含有することを特徴とする、油脂組成物の酸化安定性を向上させる方法。
  7. 弱酸のカリウム塩を含有する油脂の酸化安定性向上剤。
  8. 弱酸のカリウム塩の水溶液、油状物質及び乳化剤を含有する油中水型乳化組成物であることを特徴とする請求項7に記載の酸化安定性向上剤。
  9. 弱酸のカリウム塩を含有する粉末油脂製剤であることを特徴とする請求項7に記載の酸化安定性向上剤。
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