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JP2013116848A - GaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板 - Google Patents

GaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板 Download PDF

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JP2013116848A
JP2013116848A JP2012128086A JP2012128086A JP2013116848A JP 2013116848 A JP2013116848 A JP 2013116848A JP 2012128086 A JP2012128086 A JP 2012128086A JP 2012128086 A JP2012128086 A JP 2012128086A JP 2013116848 A JP2013116848 A JP 2013116848A
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substrate
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JP2012128086A
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Kazunari Sato
一成 佐藤
Yuki Seki
裕紀 関
Koji Uematsu
康二 上松
Yoshiyuki Yamamoto
喜之 山本
Hideki Matsubara
秀樹 松原
Shinsuke Fujiwara
伸介 藤原
Masashi Yoshimura
雅司 吉村
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

【課題】主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs膜が低コストで得られるGaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板を提供する。
【解決手段】本GaAs系膜の製造方法は、フッ化水素酸に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板10を準備する工程と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13の主面13上にGaAs系膜20を成膜する工程と、支持基板11を、フッ化水素酸に溶解することにより、除去する工程と、を含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、主面の面積が大きく反りの小さいGaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板に関する。
GaAs系膜は、発光デバイス、電子デバイスなどの半導体デバイスの基板および半導体層として、好適に用いられる。かかるGaAs系膜を製造するための基板としては、その基板とGaAs系膜との間で、格子定数および熱膨張係数を一致させるまたは一致に近づける観点から、GaAs基板が最も優れている。ところが、GaAs基板は、希少金属であるGaを含有しているため、Si基板などに比べて非常に高価である。
このため、特開平07−014776号公報(特許文献1)は、シリコン基板上にGaAs層をエピタキシャル成長させたGaAs基板の製造方法を開示する。
特開平07−014776号公報
特開平07−014776号公報(特許文献1)で開示される製造方法により得られるシリコン基板上にGaAs層をエピタキシャル成長させたGaAs基板は、Si基板とGaAs層との間の熱膨張係数が異なるため、反りが発生する場合があり、また主面の面積を大きくすることが難しいという問題点があった。
本発明は、上記問題点を解決して、GaAs結晶と熱膨張係数が一致または近似しかつ除去が容易な支持基板を含む低コストの複合基板を用いて主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を成膜し、その後支持基板を除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を効率よく低コストで取り出すことができるGaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板を提供することを目的とする。
本発明は、フッ化水素酸に溶解する支持基板と支持基板の主面側に配置されている単結晶膜とを含み、支持基板の主面内の熱膨張係数がGaAs結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板である。
本発明にかかる複合基板において、支持基板は、ジルコニアとシリカとで形成されるZrO2−SiO2複合酸化物と、ジルコニアおよびシリカの少なくともいずれかと、を含むことができる。また、支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、イットリア安定化ジルコニアと、を含むことができる。また、支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、マグネシアと、を含むことができる。また、本発明にかかる複合基板における単結晶膜の主面の面積を45cm2以上とすることができる。
また、本発明は、フッ化水素酸に溶解する支持基板と支持基板の主面側に配置されている単結晶膜とを含み、支持基板の主面内の熱膨張係数がGaAs結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板を準備する工程と、支持基板の主面側に配置されている単結晶膜の主面上にGaAs系膜を成膜する工程と、支持基板をフッ化水素酸に溶解することにより除去する工程と、を含むGaAs系膜の製造方法である。
本発明にかかるGaAs系膜の製造方法において、支持基板は、ジルコニアとシリカとで形成されるZrO2−SiO2複合酸化物と、ジルコニアおよびシリカの少なくともいずれかと、を含むことができる。また、支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、イットリア安定化ジルコニアと、を含むことができる。また、支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、マグネシアと、を含むことができる。また、本発明にかかる複合基板における単結晶膜の主面の面積を45cm2以上とすることができる。また、GaAs系膜を成膜する工程は、単結晶膜の主面上にGaAs系バッファ層を形成するサブ工程と、GaAs系バッファ層の主面上にGaAs系単結晶層を形成するサブ工程と、を含むことができる。
本発明によれば、GaAs結晶と熱膨張係数が一致または近似しかつ除去が容易な支持基板を含む低コストの複合基板を用いて主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を成膜し、その後支持基板を除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を効率よく低コストで取り出すことができるGaAs系膜の製造方法およびそれに用いられる複合基板が提供される。
本発明にかかる複合基板の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかるGaAs系膜の製造方法の一例を示す概略断面図である。ここで、(A)は複合基板を準備する工程を示し、(B)はGaAs系膜を成膜する工程を示し、(C)は支持基板を除去する工程を示す。 本発明における複合基板を準備する工程の一例を示す概略断面図である。
[複合基板]
図1を参照して、本発明の一実施形態である複合基板10は、フッ化水素酸に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい。
本実施形態の複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さいため、支持基板11の主面11m上に形成された単結晶膜13の主面13m上に、主面13mの面積が大きくても、転位密度が低く結晶性が良好なGaAs系膜を成膜することができる。また、支持基板11がフッ化水素酸に溶解するため、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaAs系膜を成膜した後、支持基板11をフッ化水素酸により除去することにより、単結晶膜13の主面13m上に成膜された転位密度が低く結晶性が良好なGaAs系膜が効率よく低コストで得られる。
(支持基板)
本実施形態の複合基板10の支持基板11は、支持基板11の主面11m上に形成された単結晶膜13の主面13m上に、主面の面積が大きく転位密度が低く結晶性が良好なGaAs系膜を成膜する観点から、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さいことが必要であり、0.9倍より大きく1.15倍より小さいことが好ましく、0.95倍より大きく1.1倍より小さいことがより好ましい。また、支持基板11は、成膜したGaAs系膜から支持基板を効率よく低コストで除去する観点から、フッ化水素酸に溶解する必要がある。
支持基板11は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さく、かつ、フッ化水素酸で溶解するものであれば特に制限はなく、単結晶であっても、多結晶であっても、非結晶であってもよい。支持基板11は、その熱膨張係数の調整が容易で、フッ化水素酸に溶解する観点から、金属酸化物およびケイ素酸化物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
ここで、支持基板11は、ジルコニア(ZrO2)とシリカ(SiO2)とで形成されるZrO2−SiO2複合酸化物と、ジルコニアおよびシリカの少なくともいずれかと、を含むことが特に好ましい。ここで、ZrO2−SiO2複合酸化物とは、ZrO2とSiO2とにより形成されるジルコン(ZrSiO4)などの複合酸化物をいう。かかるZrO2−SiO2複合酸化物は、フッ化水素酸に溶解しないかまたは溶解し難い。このため、支持基板11は、ZrO2−SiO2複合酸化物に加えて、フッ化水素酸に溶解する観点から、ジルコニア(ZrO2)およびシリカ(SiO2)の少なくともいずれかを含む。ZrSiO4などの複合酸化物、ZrO2およびSiO2の存在の有無ならびにそれらの組成比率は、X線回折により測定することができる。
上記のようなZrO2−SiO2複合酸化物(たとえばZrSiO4)と、ジルコニア(ZrO2)およびシリカ(SiO2)の少なくともいずれかとを含む支持基板11は、ZrO2とSiO2とを1:1以外のモル比で完全に反応させることにより、または、ZrO2とSiO2とを1:1のモル比で不完全に反応させることにより、得られる。
また、支持基板11は、アルミナ(Al23)とシリカ(SiO2)とで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)と、を含むことが特に好ましい。ここで、Al23−SiO2複合酸化物とは、Al23とSiO2とにより形成されるムライト(3Al23・2SiO2〜2Al23・SiO2)などの複合酸化物をいう。また、YSZ(イットリア安定化ジルコニア、以下同じ)とは、ジルコニア(ZrO2)にイットリア(Y23)を添加することによりジルコニアの結晶構造を正方晶または立方晶で安定化させたものをいう。ムライトおよびYSZの存在の有無ならびにそれらの組成比率は、X線回折により測定することができる。
また、支持基板11は、アルミナ(Al23)とシリカ(SiO2)とで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、マグネシア(MgO)と、を含むことが特に好ましい。ムライトおよびMgOの存在の有無ならびにそれらの組成比率は、X線回折により測定することができる。
このとき、支持基板11およびGaAs結晶の熱膨張係数は、一般に、それらの温度により大きく変動することから、如何なる温度または温度領域における熱膨張係数によって決めるかが重要である。本発明においては、複合基板上に反りの小さいGaAs系膜を製造することを目的とするものであり、室温から昇温させてGaAs系膜の成膜温度で複合基板上にGaAs系膜を成膜した後室温まで降温させて複合基板上に成膜されたGaAs系膜を取り出すことから、室温からGaAs系膜の成膜温度までにおける支持基板およびGaAs結晶の平均熱膨張係数を、それぞれ支持基板およびGaAs結晶の熱膨張係数として取り扱うことが適正と考えられる。このため、本発明においては、支持基板およびGaAs結晶の熱膨張係数は、室温(具体的に25℃)から1000℃までにおける平均熱膨張係数により決定することにする。
(単結晶膜)
本実施形態の複合基板10の支持基板11の主面11m側に配置される単結晶膜13は、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaAs系膜を成長させる観点から、GaAs結晶(正方晶系の閃亜鉛鉱型構造)と同じ正方晶系の結晶構造を有するものが好ましく、主面13mが(001)面であるSi膜(正方晶系のダイヤモンド型構造)、主面13mが(001)面であるGaAs膜(正方晶系の閃亜鉛鉱型構造)などが好ましい。
また、複合基板10における単結晶膜13の主面13mの面積は、特に制限はいが、主面の面積が大きいGaAs系膜を成長させる観点から、45cm2以上であることが好ましい。
(接着層)
本実施形態の複合基板10は、支持基板11と単結晶膜13との接合強度を高める観点から、支持基板11と単結晶膜13との間に接着層12が形成されていることが好ましい。接着層12は、特に制限はないが、支持基板11と単結晶膜13との接合強度を高める効果が高い観点から、SiO2層、TiO2層などが好ましい。さらに、フッ化水素酸により除去できる観点から、SiO2層がより好ましい。
(複合基板の製造方法)
複合基板の製造方法は、後述するGaAs系膜の製造方法における複合基板の準備工程と同様である。
[GaAs系膜の製造方法]
図2を参照して、本発明の別の実施形態であるGaAs系膜の製造方法は、フッ化水素酸に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板10を準備する工程(図2(A))と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13の主面13m上にGaAs系膜を成膜する工程(図2(B))と、支持基板11を、フッ化水素酸に溶解することにより、除去する工程(図2(C))と、を含む。ここで、GaAs系膜とは、III族元素としてGaを含むIII族ヒ化物で形成されている膜をいい、たとえばGaxInyAl1-x-yAs膜(x>0、y≧0、x+y≦1)が挙げられる。
本実施形態のGaAsN系膜の製造方法によれば、フッ化水素酸に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板10を用いて、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaAs系膜20を成膜した後、複合基板10の支持基板11をフッ化水素酸に溶解して除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜が効率よく低コストで得られる。
(複合基板の準備工程)
図2(A)を参照して、本実施形態のGaAsN系膜の製造方法は、まず、フッ化水素酸に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板10を準備する工程を含む。
上記の複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい支持基板11と単結晶膜13を含んでいるため、単結晶膜13の主面13m上に主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を成膜することができる。また、上記の複合基板10は、支持基板11がフッ化水素酸に溶解するため、支持基板11を除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜を効率よく低コストで取り出すことができる。
また、複合基板10の支持基板11の主面11m側に単結晶膜13を配置する方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11m上に単結晶膜13を成長させる方法(第1の方法)、支持基板11の主面11mに、下地基板の主面上に成膜させた単結晶膜13を貼り合わせた後下地基板を除去する方法(第2の方法)、支持基板11の主面11mに単結晶(図示せず)を貼り合わせた後その単結晶を貼り合わせ面から所定の深さの面で分離することにより支持基板11の主面11m上に単結晶膜13を形成する方法(第3の方法)などが挙げられる。支持基板が多結晶の焼結体である場合には、上記の第1の方法が困難であるため、上記の第2および第3のいずれかの方法が好ましく用いられる。上記の第2の方法において、支持基板11に単結晶膜13を貼り合わせる方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11mに直接単結晶膜13を貼り合わせる方法、支持基板11の主面11mに接着層12を介在させて単結晶膜13を貼り合わせる方法などが挙げられる。上記の第3の方法において、支持基板11に単結晶を貼り合わせる方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11mに直接単結晶を貼り合わせる方法、支持基板11の主面11mに接着層12を介在させて単結晶を貼り合わせる方法などが挙げられる。
上記の複合基板10を準備する工程は、特に制限はないが、効率的に低コストで品質の高い複合基板10を準備する観点から、たとえば、図3を参照して、上記の第2の方法においては、支持基板11を準備するサブ工程(図3(A))と、下地基板30の主面30n上に単結晶膜13を成膜するサブ工程(図3(B))と、支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせるサブ工程(図3(C))と、下地基板30を除去するサブ工程(図3(D))と、含むことができる。
図3(C)では、支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせるサブ工程において、支持基板11の主面11m上に接着層12aに形成し(図3(C1))、下地基板30の主面30n上に成長させられた単結晶膜13の主面13n上に接着層12bを形成した(図3(C2))後、支持基板11上に形成された接着層12aの主面12amと下地基板30上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnとを貼り合わせることにより、接着層12aと接着層12bとが接合して形成された接着層12を介在させて支持基板11と単結晶膜13とが貼り合わされる(図3(C3))。しかし、支持基板11と単結晶膜13とが互いに接合可能なものであれば、支持基板11と単結晶膜13とを、接着層12を介在させることなく直接貼り合わせることができる。
支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせる具体的な手法としては、特に制限はないが、貼り合わせ後高温でも接合強度を保持できる観点から、貼り合わせ面を洗浄しそのまま貼り合わせた後600℃〜1200℃程度に昇温して接合する直接接合法、貼り合わせ面を洗浄しプラズマやイオンなどで活性化させた後に室温(たとえば25℃)〜400℃程度の低温で接合する表面活性化法などが好ましく用いられる。
こうして得られる複合基板10において、支持基板11、単結晶膜13および接着層12の材料および物性については、上述の通りであるため、ここでは繰り返さない。
(GaAs系膜の成膜工程)
図2(B)を参照して、本実施形態のGaAs系膜の製造方法は、次に、複合基板10における単結晶膜13の主面13m上にGaAs系膜20を成膜する工程を含む。
上記の複合基板の準備工程において準備された複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい支持基板11と単結晶膜13を含んでいるため、単結晶膜13の主面13m上に主面20mの面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜20を成膜することができる。
GaAs系膜を成膜する方法には、特に制限はないが、転位密度が低く結晶性の良好なGaAs系膜を成膜する観点から、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、MBE(分子線エピタキシ)法などの気相法、HB(水平ブリッジマン)法、VB(垂直ブリッジマン)法、LEC(液体封止チョクラルスキー)法などの液相法などが好ましく挙げられる。
GaAs系膜を成膜する工程は、特に制限はないが、転位密度が低く結晶性が良好なGaAs系膜を成膜する観点から、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaAs系バッファ層21を形成するサブ工程と、GaAs系バッファ層21の主面21m上にGaAs系単結晶層23を形成するサブ工程と、を含むことが好ましい。ここで、GaAs系バッファ層21とは、GaAs系膜20の一部分であり、GaAs系膜20の別の一部分であるGaAs系単結晶層23の成長温度に比べて低い温度で成長させられる結晶性が低いまたは非結晶の層をいう。
GaAs系バッファ層21を形成することにより、GaAs系バッファ層21上に形成されるGaAs系単結晶層23と単結晶膜13との間の格子定数の不整合が緩和されるため、GaAs系単結晶層23の結晶性が向上しその転位密度が低くなる。この結果、GaAs系膜20の結晶性が向上しその転位密度が低くなる。
なお、単結晶膜13上にGaAs系膜20として、GaAs系バッファ層21を成長させることなく、GaAs系単結晶層23を成長させることもできる。かかる方法は、単結晶膜13とその上に成膜するGaAs系膜20との間の格子定数の不整合が小さい場合に好適である。
(支持基板の除去工程)
図2(C)を参照して、本実施形態のGaAs系膜の製造方法は、次に、支持基板11を、フッ化水素酸に溶解することにより、除去する工程を含む。
上記の複合基板の準備工程において準備された複合基板10は、支持基板11がフッ化水素酸に溶解するため、フッ化水素酸に溶解させて支持基板11を除去することにより、単結晶膜13の主面13m上に成膜された主面20mの面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaAs系膜20が得られる。ここで、単結晶膜13がGaAs単結晶膜などのGaAs系単結晶膜で形成されている場合には、全体がGaAs系材料で形成されているGaAs系膜が得られる。
(実施例1)
1.GaAs結晶の熱膨張係数の測定
VB法により成長させた、転位密度が1×106cm-2、Si濃度が1×1018cm-2、酸素濃度が1×1017cm-2、炭素濃度が1×1016cm-2のGaAs単結晶から、サイズが2×2×20mmの評価用サンプルを切り出した。ここで、GaAs単結晶は熱膨張係数に関して方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。
上記の評価用サンプルについて、室温(25℃)から1000℃まで昇温したときの平均熱膨張係数をTMA(熱機械分析)により測定した。具体的には、(株)リガク製TMA8310を用いて示差膨張方式により窒素ガス流通雰囲気下で評価サンプルの熱膨張係数を測定した。かかる測定により得られたGaAs結晶の25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αGaAsは、5.84×10-6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、ZrO2とSiO2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のZrO2−SiO2系焼結体A〜Mを準備した。かかる13種類のZrO2−SiO2系焼結体A〜Mには、X線回折により確認したところ、いずれについてもZrSiO4、ZrO2およびSiO2が存在していた。また、上記13種類のZrO2−SiO2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、ZrO2−SiO2系焼結体は熱膨張係数に関して方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から1000℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
ZrO2−SiO2系焼結体Aは、ZrO2とSiO2とのモル比(以下、モル比ZrO2:SiO2という)が82:18であり、25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)は4.25×10-6/℃であり、GaAs結晶の平均熱膨張係数αGaAsに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaAs比という)は0.728であった。ZrO2−SiO2系焼結体Bは、モル比ZrO2:SiO2が77:23であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.813であった。ZrO2−SiO2系焼結体Cは、モル比ZrO2:SiO2が71:29であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.856であった。ZrO2−SiO2系焼結体Dは、モル比ZrO2:SiO2は69:31であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.890であった。ZrO2−SiO2系焼結体Eは、モル比ZrO2:SiO2が66:34であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.925であった。ZrO2−SiO2系焼結体Fは、モル比ZrO2:SiO2が63:37であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.959であった。ZrO2−SiO2系焼結体Gは、モル比ZrO2:SiO2が58:42であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.993であった。ZrO2−SiO2系焼結体Hは、モル比ZrO2:SiO2が57:43であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.027であった。ZrO2−SiO2系焼結体Iは、モル比ZrO2:SiO2が53:47であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.084であった。ZrO2−SiO2系焼結体Jは、モル比ZrO2:SiO2が46:54であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.142であった。ZrO2−SiO2系焼結体Kは、モル比ZrO2:SiO2が42:58であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.199であった。ZrO2−SiO2系焼結体Lは、モル比ZrO2:SiO2が38:62であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.241であった。ZrO2−SiO2系焼結体Mは、モル比ZrO2:SiO2が35:65であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.284であった。
上記のZrO2−SiO2系焼結体A〜Mから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、支持基板A〜Mとした。すなわち、支持基板A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれZrO2−SiO2系焼結体A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表1にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(001)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
上記のSi基板(下地基板30)の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaAs膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)620℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13mは、(001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有し、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した10μm×10μmの正方形領域におけるRMS(二乗平均平方根)粗さ(JIS B0601:2001に規定する二乗平均平方根粗さRqをいう。以下同じ)が1nm以下の鏡面であった。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、図3(A)の支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上の厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12aとした。これにより、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、平坦な主面12amを有する厚さ0.2μmのSiO2層(接着層12a)が得られた。
また、図3(C)中の(C2)を参照して、図3(B)のSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13n上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12bとした。
次いで、図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれに形成されたSiO2層(接着層12a)の主面12amおよびSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)上に形成されたSiO2層(接着層12b)の主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、SiO2層(接着層12a)の主面12amとSiO2層(接着層12b)の主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)の裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および3質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングによりSi基板(下地基板30)を除去した。こうして、図2(A)に示すように、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m側にGaAs膜(単結晶膜13)が配置された複合基板A〜M(複合基板10)が得られた。
3.GaAs系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板A〜M(複合基板10)のGaAs膜(単結晶膜13)の主面13m(かかる主面は(001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaAs膜(GaAs系膜20)を成膜した。GaAs膜(GaAs系膜20)の成膜においては、成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)680℃で厚さ5μmのGaAs単結晶層(GaAs系単結晶層23)を成長させた。ここで、GaAs単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、複合基板A〜MのそれぞれにGaAs膜が成膜されたウエハA〜Mを10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却後に成膜装置から取り出されたウエハA〜Mについて、ウエハの反り、GaAs膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaAs膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaAsN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaAs膜の転位密度は、L(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaAs膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハAは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハBは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハCは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハDは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2.5×104cm-2であった。ウエハEは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハFは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハGは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハHは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハIは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハJは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハKは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハLは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaAs膜が得られなかった。これらの結果を表1にまとめた。表1において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハA〜Lを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板A〜L(支持基板11)およびSiO2層を溶解させることにより除去して、GaAs単結晶膜(単結晶膜13)の主面13m上に成膜されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)が得られた。なお、ウエハA〜Lから支持基板A〜LおよびSiO2層が除去されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaAs膜A〜Lの反りの大小関係には、ウエハA〜Lにおける反りの大小関係が維持されていた。
Figure 2013116848
表1を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaAs比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハB〜K)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaAs膜を成膜することができた。また、GaAs膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaAs比)<1.15)(ウエハE〜J)が好ましく、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaAs比)<1.1)(ウエハF〜I)がより好ましい。
(実施例2)
1.GaAs結晶の熱膨張係数の測定
実施例1と同様に測定したところ、GaAs結晶の25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αGaAsは、5.84×10-6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、ムライトとYSZ(YSZにおけるY23含有率は30モル%)との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のムライト−YSZ系焼結体A〜Mを準備した。また、上記13種類のムライト−YSZ系焼結体のそれぞれからサイズが4×4×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、ムライト−YSZ系焼結体は熱膨張係数に関して方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から1000℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
ムライト−YSZ系焼結体Aは、ムライトとYSZとのモル比(以下、モル比ムライト:YSZという)が99.9:0.1であり、25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)は4.25×10-6/℃であり、GaAs結晶の平均熱膨張係数αGaAsに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaAs比という)は0.728であった。ムライト−YSZ系焼結体Bは、モル比ムライト:YSZが99.6:0.4であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.813であった。ムライト−YSZ系焼結体Cは、モル比ムライト:YSZが99.3:0.7であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.856であった。ムライト−YSZ系焼結体Dは、モル比ムライト:YSZは99:1であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.890であった。ムライト−YSZ系焼結体Eは、モル比ムライト:YSZが98.7:1.3であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.925であった。ムライト−YSZ系焼結体Fは、モル比ムライト:YSZが98.4:1.6であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.959であった。ムライト−YSZ系焼結体Gは、モル比ムライト:YSZが98.2:1.8であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.993であった。ムライト−YSZ系焼結体Hは、モル比ムライト:YSZが98:2であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.027であった。ムライト−YSZ系焼結体Iは、モル比ムライト:YSZが90:10であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.084であった。ムライト−YSZ系焼結体Jは、モル比ムライト:YSZが82:18であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.142であった。ムライト−YSZ系焼結体Kは、モル比ムライト:YSZが75:25であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.199であった。ムライト−YSZ系焼結体Lは、モル比ムライト:YSZが69:31であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.241であった。ムライト−YSZ系焼結体Mは、モル比ムライト:YSZが63:37であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.284であった。
上記のムライト−YSZ系焼結体A〜Mから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、支持基板A〜Mとした。すなわち、支持基板A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれムライト−YSZ系焼結体A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表2にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(001)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
上記のSi基板(下地基板30)の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaAs膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)620℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13mは、(001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有し、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した10μm×10μmの正方形領域におけるRMS(二乗平均平方根)粗さ(JIS B0601:2001に規定する二乗平均平方根粗さRqをいう。以下同じ)が1nm以下の鏡面であった。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、図3(A)の支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上の厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12aとした。これにより、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、平坦な主面12amを有する厚さ0.2μmのSiO2層(接着層12a)が得られた。
また、図3(C)中の(C2)を参照して、図3(B)のSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13n上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12bとした。
次いで、図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれに形成されたSiO2層(接着層12a)の主面12amおよびSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)上に形成されたSiO2層(接着層12b)の主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、SiO2層(接着層12a)の主面12amとSiO2層(接着層12b)の主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)の裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および3質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングによりSi基板(下地基板30)を除去した。こうして、図2(A)に示すように、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m側にGaAs膜(単結晶膜13)が配置された複合基板A〜M(複合基板10)が得られた。
3.GaAs系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板A〜M(複合基板10)のGaAs膜(単結晶膜13)の主面13m(かかる主面は(001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaAs膜(GaAs系膜20)を成膜した。GaAs膜(GaAs系膜20)の成膜においては、成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)680℃で厚さ5μmのGaAs単結晶層(GaAs系単結晶層23)を成長させた。ここで、GaAs単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、複合基板A〜MのそれぞれにGaAs膜が成膜されたウエハA〜Mを10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却後に成膜装置から取り出されたウエハA〜Mについて、ウエハの反り、GaAs膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaAs膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaAsN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaAs膜の転位密度は、L(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaAs膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハAは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハBは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハCは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハDは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2.5×104cm-2であった。ウエハEは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハFは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハGは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハHは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハIは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハJは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハKは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハLは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaAs膜が得られなかった。これらの結果を表2にまとめた。表2において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハA〜Lを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板A〜L(支持基板11)およびSiO2層を溶解させることにより除去して、GaAs単結晶膜(単結晶膜13)の主面13m上に成膜されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)が得られた。なお、ウエハA〜Lから支持基板A〜LおよびSiO2層が除去されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaAs膜A〜Lの反りの大小関係には、ウエハA〜Lにおける反りの大小関係が維持されていた。
Figure 2013116848
表2を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaAs比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハB〜K)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaAs膜を成膜することができた。また、GaAs膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaAs比)<1.15)(ウエハE〜J)が好ましく、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaAs比)<1.1)(ウエハF〜I)がより好ましい。
(実施例3)
1.GaAs結晶の熱膨張係数の測定
実施例1と同様に測定したところ、GaAs結晶の25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αGaAsは、5.84×10-6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、ムライトとMgOとの所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のムライト−MgO系焼結体A〜Mを準備した。また、上記13種類のムライト−MgO系焼結体のそれぞれからサイズが4×4×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、ムライト−MgO系焼結体は熱膨張係数に関して方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から1000℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
ムライト−MgO系焼結体Aは、ムライトとMgOとのモル比(以下、モル比ムライト:MgOという)が99.9:0.1であり、25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)は4.25×10-6/℃であり、GaAs結晶の平均熱膨張係数αGaAsに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaAs比という)は0.728であった。ムライト−MgO系焼結体Bは、モル比ムライト:MgOが99.8:0.2であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.813であった。ムライト−MgO系焼結体Cは、モル比ムライト:MgOが99.4:0.6であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.856であった。ムライト−MgO系焼結体Dは、モル比ムライト:MgOは99.1:0.9であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.890であった。ムライト−MgO系焼結体Eは、モル比ムライト:MgOが98.8:1.2であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.925であった。ムライト−MgO系焼結体Fは、モル比ムライト:MgOが98.5:1.5であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.959であった。ムライト−MgO系焼結体Gは、モル比ムライト:MgOが98.3:1.7であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が0.993であった。ムライト−MgO系焼結体Hは、モル比ムライト:MgOが98:2であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.027であった。ムライト−MgO系焼結体Iは、モル比ムライト:MgOが94:6であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.084であった。ムライト−MgO系焼結体Jは、モル比ムライト:MgOが89:11であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.142であった。ムライト−MgO系焼結体Kは、モル比ムライト:MgOが85:15であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.199であった。ムライト−MgO系焼結体Lは、モル比ムライト:MgOが81:19であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.241であった。ムライト−MgO系焼結体Mは、モル比ムライト:MgOが78:22であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10-6/℃であり、αS/αGaAs比が1.284であった。
上記のムライト−MgO系焼結体A〜Mから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、支持基板A〜Mとした。すなわち、支持基板A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれムライト−MgO系焼結体A〜Mの25℃から1000℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表3にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(001)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
上記のSi基板(下地基板30)の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaAs膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)620℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13mは、(001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有し、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて測定した10μm×10μmの正方形領域におけるRMS(二乗平均平方根)粗さ(JIS B0601:2001に規定する二乗平均平方根粗さRqをいう。以下同じ)が1nm以下の鏡面であった。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、図3(A)の支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m上の厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12aとした。これにより、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、平坦な主面12amを有する厚さ0.2μmのSiO2層(接着層12a)が得られた。
また、図3(C)中の(C2)を参照して、図3(B)のSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)の主面13n上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12bとした。
次いで、図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれに形成されたSiO2層(接着層12a)の主面12amおよびSi基板(下地基板30)上に成膜されたGaAs膜(単結晶膜13)上に形成されたSiO2層(接着層12b)の主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、SiO2層(接着層12a)の主面12amとSiO2層(接着層12b)の主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板A〜M(支持基板11)の裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および3質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングによりSi基板(下地基板30)を除去した。こうして、図2(A)に示すように、支持基板A〜M(支持基板11)のそれぞれの主面11m側にGaAs膜(単結晶膜13)が配置された複合基板A〜M(複合基板10)が得られた。
3.GaAs系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板A〜M(複合基板10)のGaAs膜(単結晶膜13)の主面13m(かかる主面は(001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaAs膜(GaAs系膜20)を成膜した。GaAs膜(GaAs系膜20)の成膜においては、成膜条件は、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびAsH3(アルシン)ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度(基板温度)680℃で厚さ5μmのGaAs単結晶層(GaAs系単結晶層23)を成長させた。ここで、GaAs単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、複合基板A〜MのそれぞれにGaAs膜が成膜されたウエハA〜Mを10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却後に成膜装置から取り出されたウエハA〜Mについて、ウエハの反り、GaAs膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaAs膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaAsN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaAs膜の転位密度は、L(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaAs膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハAは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハBは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハCは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハDは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2.5×104cm-2であった。ウエハEは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハFは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハGは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハHは、GaAs膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハIは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が極少であり、GaAs膜の転位密度が1×104cm-2であった。ウエハJは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が2×104cm-2であった。ウエハKは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が3×104cm-2であった。ウエハLは、GaAs膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaAs膜のクラック本数密度が少であり、GaAs膜の転位密度が4×104cm-2であった。ウエハMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaAs膜が得られなかった。これらの結果を表3にまとめた。表3において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハA〜Lを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板A〜L(支持基板11)およびSiO2層を溶解させることにより除去して、GaAs単結晶膜(単結晶膜13)の主面13m上に成膜されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)が得られた。なお、ウエハA〜Lから支持基板A〜LおよびSiO2層が除去されたGaAs膜A〜L(GaAs系膜20)においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaAs膜A〜Lの反りの大小関係には、ウエハA〜Lにおける反りの大小関係が維持されていた。
Figure 2013116848
表3を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaAs比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハB〜K)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaAs膜を成膜することができた。また、GaAs膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaAs比)<1.15)(ウエハE〜J)が好ましく、GaAs結晶の熱膨張係数αGaAsの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaAs比)<1.1)(ウエハF〜I)がより好ましい。
なお、上記実施例においては、複合基板上に非ドーピングのGaAs膜を成膜した例を示したが、ドーピングによりn型またはp型の導電性が付与されたGaAs膜を成膜した場合、ドーピングにより比抵抗が高められたGaAs膜を成膜した場合にも、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
また、GaAs膜に替えてGaxInyAl1-x-yAs膜(0<x<1、y≧0、x+y≦1)などのGaAs系膜を成膜した場合にも上記実施例と同様の結果が得られた。特に、GaAs膜に替えてGaxInyAl1-x-yAs膜(0.5<x<1、y≧0、x+y≦1)を成膜する場合には、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
また、GaAs系膜(具体的にはGaxInyAl1-x-yAs膜(x>0、y≧0、x+y≦1)など)は、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて複数成膜することもできる。すなわち、GaAs膜に替えてGaxInyAl1-x-yAs膜(x>0、y≧0、x+y≦1)などのGaAs系膜を、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて、複数成膜することができる。
本発明の実施においては、GaAs系膜の成膜の際にELO(Epitaxial Lateral Overgrowth;ラテラル成長)技術などの公知の転位低減技術を適用できる。
また、複合基板にGaAs系膜を成膜した後に、複合基板の支持基板などを除去する際には、GaAs系膜を別の支持基板に転写してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 複合基板、11 支持基板、11m,12m,12am,12bn,13m,13n,20m,21m,23m,30n 主面、12,12a,12b 接着層、13 単結晶膜、20 GaAs系膜、21 GaAs系バッファ層、23 GaAs系単結晶層、30 下地基板、40 ワックス。

Claims (11)

  1. フッ化水素酸に溶解する支持基板と、前記支持基板の主面側に配置されている単結晶膜と、を含み、
    前記支持基板の主面内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板。
  2. 前記支持基板は、ジルコニアとシリカとで形成されるZrO2−SiO2複合酸化物と、ジルコニアおよびシリカの少なくともいずれかと、を含む請求項1に記載の複合基板。
  3. 前記支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、イットリア安定化ジルコニアと、を含む請求項1に記載の複合基板。
  4. 前記支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、マグネシアと、を含む請求項1に記載の複合基板。
  5. 前記複合基板における前記単結晶膜の主面の面積が45cm2以上である請求項1から請求項4のいずれかに記載の複合基板。
  6. フッ化水素酸に溶解する支持基板と、前記支持基板の主面側に配置されている単結晶膜と、を含み、前記支持基板の主面内の熱膨張係数が、GaAs結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板を準備する工程と、
    前記支持基板の主面側に配置されている前記単結晶膜の主面上にGaAs系膜を成膜する工程と、
    前記支持基板を、フッ化水素酸に溶解することにより、除去する工程と、を含むGaAs系膜の製造方法。
  7. 前記支持基板は、ジルコニアとシリカとで形成されるZrO2−SiO2複合酸化物と、ジルコニアおよびシリカの少なくともいずれかと、を含む請求項6に記載のGaAs系膜の製造方法。
  8. 前記支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、イットリア安定化ジルコニアと、を含む請求項6に記載のGaAs系膜の製造方法。
  9. 前記支持基板は、アルミナとシリカとで形成されるAl23−SiO2複合酸化物と、マグネシアと、を含む請求項6に記載のGaAs系膜の製造方法。
  10. 前記複合基板における前記単結晶膜の主面の面積が45cm2以上である請求項6から請求項9のいずれかに記載のGaAs系膜の製造方法。
  11. 前記GaAs系膜を成膜する工程は、前記単結晶膜の主面上にGaAs系バッファ層を形成するサブ工程と、前記GaAs系バッファ層の主面上にGaAs系単結晶層を形成するサブ工程と、を含む請求項6から請求項10のいずれかに記載のGaAs系膜の製造方法。
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