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JP2013199412A - Iii族窒化物半導体結晶の製造方法 - Google Patents

Iii族窒化物半導体結晶の製造方法 Download PDF

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JP2013199412A
JP2013199412A JP2012069281A JP2012069281A JP2013199412A JP 2013199412 A JP2013199412 A JP 2013199412A JP 2012069281 A JP2012069281 A JP 2012069281A JP 2012069281 A JP2012069281 A JP 2012069281A JP 2013199412 A JP2013199412 A JP 2013199412A
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So Matsumoto
創 松本
Yuki Enatsu
悠貴 江夏
Kunito Suzaki
訓任 洲崎
Hirotsugu Niwa
博嗣 丹羽
Hirotaka Ikeda
宏隆 池田
Takeshi Fujito
健史 藤戸
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Abstract

【課題】積層欠陥が少ない領域を広範に有するIII族窒化物半導体結晶の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させることにより、積層欠陥が少ない領域を広範に有する高品質なIII族窒化物半導体結晶を提供することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、結晶品質に優れたIII族窒化物半導体結晶とそのような特性を備えたIII族窒化物半導体結晶の製造方法に関する。
III族窒化物半導体結晶は、発光ダイオード(LED)や半導体レーザ(LD)といった発光素子の基板等として種々利用されている。なかでも、GaN結晶は、青色発光ダイオードや青色半導体レーザなど青色発光素子の基板として有用であり、活発な研究がなされている。
最近では、C面を表面とするGaN基板を用いたInGaN系青色、緑色LEDやLDにおいて、その成長軸であるc軸方向にピエゾ電界の発生が発光デバイスの外部量子効率の低下につながることが明らかとなり、その影響を弱めるためにGaN結晶のC面に垂直なA面、M面と呼ばれる非極性面を成長面としたInGaN系青色、緑色LEDやLD研究がさかんになりつつある(非特許文献1)。
しかしながら、III族窒化物半導体結晶基板を応用した電子デバイスは、III族窒化物半導体結晶基板に内在する転位や応力によっても素子寿命を含めた基本特性が大きく左右される。しかし、サファイア等の異種ウェハを用いたヘテロエピタキシャル成長を行っている限り、格子欠陥や応力の低減には限界がある。そこでサファイア等の異種ウェハに代えて、ホモエピタキシャル成長が可能なIII族窒化物半導体結晶を作製する試みが検討されている。
例えば、サファイアウェハ上に有機金属化学的気相成長法によりGaN薄膜を形成後、ストライプ状のマスクを形成させ、ハライド気相成長法によってGaN層を厚膜に成長し、その後サファイアウェハを削除すれば、転位が10/cm2以下に低減したGaN単結晶が得られることが特許文献1で開示されている。
また、非極性窒化物結晶基板を提供するにあたっては、特許文献1の製法を改良してc軸方向に厚めに成長した結晶をM面に沿って切り出すことによって、数センチ角の基板が得られることが特許文献2で開示されている。
さらに、特許文献2の方法で得たM面基板を、互いのC面同士が対向し、且つ互いのA面同士が対向するようにマトリックス状に配列させた後に、M面を主面とするハライド気相成長を行う、M面GaN層のホモエピタキシャル成長法が特許文献3で開示されている。
また、C面およびM面を有する複数の窒化物半導体バーをC面同士が対向しM面が上面となるように配列し、M面上に窒化物半導体を成長させることが特許文献4で開示されている。
またさらに、融液中で種結晶GaNのA面またはM面にGaNを成長させた後に、更に−c軸方向にGaNを成長させることが特許文献5で開示されている。
またさらに、側面にM面を有する主面C面の種結晶板を準備し、側面M面から+c軸方向に伸びるように拡大M面を成長させることが特許文献6で開示されている。
特開平11−43398号公報 特開2002−29897号公報 特開2010−275171号公報 特開2006−315947号公報 特開2006−160568号公報 特開2008−308401号公報
「第27回薄膜・表面物理基礎講座」、応用物理学会 薄膜・表面物理分科会、1998年11月16日、p.75 C. Stampfl and Chris G. Van de Walle, "Energetics and electronic structure of stacking faults in AlN, GaN, and InN", PHYSICAL REVIEW B, 1998, VOLUME 57, NUMBER 24, pp. R15 052- R15 055 Koji Maeda, Kunio Suzuki, Masaki Ichihara, Satoshi Nishiguchi, Kana Ono, Yutaka Mera and Shin Takeuchi, Physica B, 1999, Condensed Matter, Volumes 273-274, pp. 134-13
特許文献2に記載の方法は、c軸方向に厚膜成長させたGaN結晶をその成長方向と平行にスライスして基板を得るものであるが、この方法によってインチサイズの基板を製造するためには、GaN単結晶を少なくとも数cm以上の厚さに成長させる必要がある。ところが、現状の気相成長技術では、数cm以上の厚さにGaN単結晶を成長させようとした場合、種々の問題が発生する。例えば、一般的なハライド気相成長法(HVPE法)によってGaN単結晶を成長させる場合、長時間に渡って気相成長を続けると気相成長装置内にGaメタルが付着し、原料ガスの流量バランスが乱れやすくなる。また、GaN種結晶は元々特許文献1の方法にあるように異種基板からヘテロエピタキシャル成長させて得ているため、異種基板との界面で発生した歪みが残存している。また、その歪みによる応力の影響はGaN単結晶の膜厚が大になるほど大きくなる。従って、数cm以上もの厚さにGaN単結晶を成長させると、表面平坦性を損なったり、歪み緩和の格子欠陥が新たに発生したりする。
そのような問題を鑑みて特許文献3は、c軸方向に数cmに成長を留めたGaN単結晶から成長方向と平行にスライスし、主面M面、側面C面、側面A面を備えた板上基板を複数準備し、互いのC面同士が対向し、且つ互いのA面同士が対向するようにマトリックス状に配列させた後に、M面を主面とするHVPE法を行う、M面GaN層のホモエピタキシャル成長法である。この製法でインチサイズの基板は得られるようになったが、再成長結晶層中には1cmあたり3乗以上の積層欠陥を内在する課題に直面した。積層欠陥を含んだ非極性GaN結晶基板のInGaN系青色、緑色LEDやLDは発光強度の分布・分散の課題を与えることから、積層欠陥は非極性GaN結晶中から抑制が望まれている。
特許文献4には、低い転位密度と広いウェハ面積を兼ねる手段は記載されているものの、本発明が着目している積層欠陥については何も記載されておらず、結晶品質という点でもなお改良の必要性があることが判明した。
特許文献5に記載された方法では、−c軸への成長は不純物の取り込みが多く、結晶の品質には問題があった。
特許文献6に記載された方法では、積層欠陥の抑制の観点では言及されていないものの、貫通転位の低減には有効である。しかしながら、c軸方向への成長距離は数cmに限ら
れるので、広いウェハ面積を兼ねることには問題があった。
即ち、本発明は以上の背景を鑑みてなされた発明であり、積層欠陥が少ない領域を広範に有するIII族窒化物半導体結晶の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させることにより、積層欠陥が少ない領域を広範に有する高品質なIII族窒化物半導体結晶が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の内容は以下に示すとおりである。
(1) 下地結晶上にIII族窒化物半導体結晶を結晶成長させる成長工程を含むIII族窒化物半導体結晶の製造方法であって、前記成長工程が、前記下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、前記下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる工程である、III族窒化物半導体結晶の製造方法。
(2) 前記成長開始面が非極性面又は半極性面である、(1)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(3) 前記2つ以上の成長開始面の結晶面が、全て同一であり、かつ前記結晶面の角度差の絶対値が1°以内である、(1)又は(2)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(4) 前記成長工程が、2つ以上の種結晶を下地結晶として用い、それぞれの種結晶の成長開始面からIII族窒化物半導体結晶を成長させる工程である、(1)〜(3)の何れかに記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(5) 前記種結晶が、狭側面アスペクト比(高さ/短辺)3以上の直方体形状又は直方体派生型形状である、(4)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(6) 前記2つ以上の種結晶が、曲率半径が3m以上の面上に設置されている、(4)又は(5)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(7) 前記2つ以上の種結晶が、それぞれ成長開始面に直交する側面を有し、前記側面同士の間に支持体を挟むように設置されている、(4)〜(6)の何れかに記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(8) 前記支持体が、直径公差の絶対値が50μm以下の球形状である、(7)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(9) 前記支持体が、寸法精度の絶対値が50μm以下の直方体形状である、(7)に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
(10) 前記成長工程が、成長開始面以外の下地結晶上の面からも結晶成長させる工程である、(1)〜(9)の何れかに記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
本発明によれば、積層欠陥が少ない領域を広範に有するIII族窒化物半導体結晶を簡便に製造することができる。
本発明に係る成長工程の結晶成長を表す概念図である。 成長開始面の結晶面の角度差、結晶面に平行な結晶軸の角度差を表す概念図である。 2つ以上の成長開始面を設定する方法を表す概念図である。 種結晶の形状を表す概念図である。 2つ以上の種結晶と支持体の設置方法を表す概念図である。 HVPE法に用いられる製造装置の概念図である。 低基底面転位密度領域及び高基底面積層欠陥密度領域を有するIII族窒化物半導体結晶を表す概念図である。 横方向成長領域の電子顕微鏡写真である(図面代用写真)。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。例えば、III族窒化物半導体結晶の代表例としてGaN結晶を例に挙げて説明がなされることがあるが、本発明はGaN結晶およびその製造方法に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「C面」ないし「基底面」とは、六方晶構造(ウルツ鋼型結晶構造)における{0001}面と等価な面を意味する。III族窒化物半導体結晶ではC面は極性面であり、+C面はIII族面、窒化ガリウムの場合にはGa面に相当する。
また、本明細書において「M面」とは、{1−100}面として包括的に表される面であり、具体的には(1−100)面、(01−10)面、(−1010)面、(−1100)面、(0−110)面、および(10−10)面を意味する。かかる面は非極性面である。
さらに、本明細書において「A面」とは、{2−1−10}面として包括的に表される面であり、具体的には(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面、および(11−20)面を意味する。かかる面は非極性面である。
本明細書において「半極性面」とは、結晶面に第13族元素と窒素元素の両方が存在しており、その存在比が1:1でない面であれば特に限定されないが、例えば{20−21}面、{10−11}面、{10−12}面、{11−21}面、{11−22}面、{11−23}面、{11−24}面などがあげられる。
なお、本明細書において<・・・・>との表記は方向の集合表現、[・・・・]との表記は方向の個別表現を表す。それに対して{・・・・}との表記は面の集合表現、(・・・・)との表記は面の個別表現を表す。
また、本明細書においてC面、M面、A面や特定の指数面を称する場合には、±0.01°以内の精度で計測される各結晶軸から10°以内のオフ角を有する範囲内の面を含む。好ましくはオフ角が5°以内であり、より好ましくは3°以内である。
なお、本明細書において主面とは、デバイスを形成すべき面、あるいは構造体において最も広い面を意味する。
[III族窒化物半導体結晶の製造方法]
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法は、下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる工程(以下、「本発明に係る成長工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。本発明者らは、III族窒化物半導体結晶が成長し始める下地結晶上の成長開始面の面積を、目的とするIII族窒化物半導体結晶に比べて小さく設定し、成長開始面に平行な方向への結晶成長(以下、「横方向成長」と略す場合がある。)を促して、横方向成長によって形成される成長面上の領域をより広く確保することにより、積層欠陥が少ない領域を広範に有する高品質なIII族窒化物半導体結晶が得られることを見出した。これは成長開始面(図1中の1)上に形成される結晶領域(図1中の4 以下、「成長開始面上領域」と略す場合がある。
)に多く積層欠陥が発生するのに対し、横方向成長によって形成される結晶領域(図1中の5 以下、「横方向成長領域」と略す場合がある。)には積層欠陥の発生が少なくなることに基づいている。また、本発明者らは、前述の知見を応用して、2つ以上の成長開始面を設定・配置し、それぞれの成長開始面から形成される結晶を会合結合させて、1つの大きな結晶に成長させることにより、広い成長開始面を有する下地結晶上から成長させる場合に比べて、積層欠陥の少ない高品質なIII族窒化物半導体結晶が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づく発明であり、発光素子の基板等として実用性の高いIII族窒化物半導体結晶を得る観点から、成長開始面の総面積に対して成長面が3倍以上の面積になるように成長させることを特徴としている。成長面の面積が3倍よりも小さいと、例えば積層欠陥の少ない基板を効率的に製造することが困難となる。
なお、成長開始面とは、III族窒化物半導体結晶が成長し始める下地結晶上の一面又は部分面であって、結晶全体としての成長方向(結晶全体として結晶厚みが増加する方向。つまり、それぞれの成長開始面から成長したそれぞれの結晶同士が会合結合して1つの大きな結晶に成長した後に、さらに成長を続けた場合において、結晶厚みが増加する方向。)に対して垂直な面を意味するものとする。図1を参照して説明すると、1が成長開始面、2が結晶全体としての成長方向である。
また、本発明において成長面とは、結晶成長によって形成したIII族窒化物半導体結晶上の面のうち、特に結晶全体としての成長方向に対して垂直な面、即ち成長開始面に平行な面を意味するものとする。図1を参照して説明すると、3が成長面である。
さらに積層欠陥とは、GaN結晶で広く知られている基底面の積層不整である(非特許文献2を参照)。
本発明に係る成長工程は、下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させることを特徴とするものであるが、「下地結晶の2つ以上の成長開始面」とは、1つの下地結晶上に面方向に物理的に離れている2つ以上の成長開始面が設定されていること、或いは2つ以上の種結晶を下地結晶とし、それぞれの種結晶上に1つ以上の成長開始面が設定されていること(それぞれの成長開始面は面方向に物理的に離れている)を意味するものとする。また、「2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させる」とは、2つ以上の成長開始面それぞれから形成される結晶を会合結合させて、1つの大きな結晶に成長させることを意味するものとする。
なお、成長開始面の数は、目的とするIII族窒化物半導体結晶の大きさ等によって適宜設定することができるが、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
また、本発明に係る成長工程は、成長開始面のみから結晶成長が進行する結晶成長を意図しているものではなく、成長開始面以外の下地結晶上の面から結晶成長が進行するものであってもよい。一方、成長開始面となりうる一面又は部分面が複数存在し、その一部を成長開始面として設定したい場合には、例えば選択した一面又は部分面に特に原料成分を供給し易くする、或いは選択した一面又は部分面以外の面からの成長を阻害する等によって、意図的に設定することができる。
本発明に係る成長工程は、III族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させるものであるが、成長開始面の総面積の4倍以上の面積に成長させるものであることが好ましく、成長開始面の総面積の5倍以上の面積に成長させるものであることがより好ましい。また、上限値として、通常は、成長開始面の総面積の400倍以下に成長させるものであるが、成長開始面の総面積の100倍以下に成長させることが好ましく、50倍以下に成長させることがより好ましく、10倍以下に成長させることがさらに好ましい。
本発明に係る成長工程は、III族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させるものであるが、成長開始面の具体的な総面積は
特に限定されない。具体的な成長開始面の総面積としては、通常16cm2以下、好ましくは8cm2以下、より好ましくは4cm2以下であり、通常0.03cm2より大きく、好ましくは0.06cm2以上、より好ましくは0.15cm2以上である。
また、1つ当たりの成長開始面の面積も特に限定されないが、通常16cm2未満、好ましくは8cm2以下、より好ましくは4cm2以下、さらに好ましくは1cm2以下、よりさらに好ましくは0.5cm2以下、特に好ましくは0.1cm2以下であり、通常0.03cm2以上、好ましくは0.06cm2以上、より好ましくは0.15cm2以上である。
成長開始面の結晶面(指数面)は、目的とするIII族窒化物半導体結晶によって適宜設定することができるが、非極性面又は半極性面であることが好ましく、M面であることがより好ましい。また、成長開始面のオフ角は10°以内であることが好ましく、5°以内がより好ましく、3°以内であることが好ましい。
また、2つ以上の成長開始面の結晶面(指数面)は全て同一であることが好ましい。結晶面を統一することで、会合結合する領域での転位の発生を軽減することができる。結晶面が同一である場合、結晶面の角度差の絶対値は、1°以内にすることが好ましく、0.5°以内にすることがより好ましい。また、結晶面上の結晶軸の方位も同一であることが好ましく、結晶軸の角度差の絶対値は、0.5°以内にすることが好ましく、0.3°以内にすることがより好ましい。なお、図2を参照して説明すると(成長開始面のオフ角=0°とした場合である)、2aは2つの成長開始面の斜視図、2bが2つの成長開始面(結晶面)の角度差を表す図、2cは2つの成長開始面の上面図であり、6と7が成長開始面(結晶面)、8が結晶面上の結晶軸、9は結晶面の角度差、10は結晶面上の結晶軸の角度差を表す。
本発明に係る成長工程は、成長開始面以外の下地結晶上の面から結晶成長が進行するものであってもよいことを前述したが、成長開始面以外の面は+C面及び/又は半極性面であることが好ましい。かかる面が存在することによって、横方向成長を促進し、効率よく結晶成長を進めることができる。
また、2つ以上の成長開始面同士の間の空間に成長開始面以外の面が存在する場合には、かかる面も+C面及び/又は半極性面であることが好ましい。成長開始面同士の間の空間にC面及び/又は半極性面が存在することによって、空間を埋め込んでバルク結晶を得やすくすることができる。さらに、当該空間が複数存在し、各々の空間ごとに成長開始面以外の面が存在する場合には、前記成長開始面以外の面同士を同じ方向に揃えることが好ましく、具体的には、それぞれの空間に+C面が存在する場合には、+C面同士を同じ方向に揃えることが好ましく、それぞれの空間に同一の半極性面が存在する場合には、半極性面同士を同じ方向に揃えることが好ましい。また、前記成長開始面以外の面同士の結晶面の角度差の絶対値を1°以内にすることが好ましく、0.5°以内にすることがより好ましい。さらに結晶面上の結晶軸の方位も同一であることが好ましく、結晶軸の角度差の絶対値は、0.5°以内にすることが好ましく、0.3°以内にすることがより好ましい。成長開始面以外の面を統一することによって、かかる空間に形成される結晶の品質を均一にすることができる。
成長開始面の形状は、アスペクト比の大きな矩形であることが好ましい。矩形の成長開始面を平行(特に矩形の長辺が横並びになるような平行)に配列することにより、横方向成長を一定方向に制御することができ、より高品質なIII族窒化物半導体結晶を得ることができる。矩形の成長開始面である場合、短辺の長さは通常1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.01mm以下であり、通常0.001mm以上である。矩形の成長開始面の長辺の長さは、目的とするIII族窒化物半導体結晶の形状によって適宜設定することができるが、通常1〜15cmである。
隣接した成長開始面同士の間隔は、成長開始面の形状等によって適宜設定することができるが、通常1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは10mm以上であり、通常50mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。上記範囲であると、積層欠陥の少ない領域を十分に確保することができる。なお、3つ以上の成長開始面を設定する場合には、それぞれの成長開始面同士の間隔は、同一であっても、異なっていてもよい。また、成長開始面が位置する高さについても特に限定されないが、全ての成長開始面を同一の高さに揃えることが好ましい。
2つ以上の成長開始面を設定する方法としては、例えば2つ以上の種結晶を下地結晶として用い、それぞれの種結晶に成長開始面を設定する方法(図3中の3a)、大きな下地結晶上にマスク層を形成する方法(図3の3b)、大きな下地結晶を切削して溝を形成する方法(図3中の3c)等が挙げられる。操作の簡便性から、2つ以上の種結晶を下地結晶として用い、それぞれの種結晶に成長開始面を設定する方法が好ましい。
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法に用いる下地結晶の種類としては、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaN等のIII族窒化物半導体結晶、サファイア、ZnO、BeO等の金属酸化物、SiC、Si等の珪素含有物、及びGaAs等が挙げられる。これらの中で、GaN、AlN、InN等の目的とするIII族窒化物半導体結晶と同種の結晶を用いることが好ましい。
下地結晶は、熱処理を施したものを用いることが好ましい。具体的な熱処理条件として、GaNの場合の条件を以下に説明する。GaNを熱処理する場合、雰囲気ガスとしてN2、NH3又はこれらの混合ガスが挙げられる。熱処理は、密閉系でも或いは流通系でもよいが、流通系が好ましく、その流量は通常50ml/min以上、好ましくは150ml/min以上、より好ましくは180ml/min以上である。温度条件は通常900℃以上、好ましくは1100℃以上、より好ましくは1250℃以上であり、通常2500℃以下、好ましくは2220℃以下、より好ましくは1400℃以下である。加熱時間は、通常1分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常1666時間以下、好ましくは833時間以下、より好ましくは240時間以下である。上記条件で熱処理された下地結晶は、基底面転位が熱力学的に安定な位置に集合化して、残留応力が少なくなっているため、本願発明において熱処理された下地結晶を用いた場合には、より積層欠陥が少ない高品質なIII族窒化物半導体結晶が得られる傾向がある。
また、前述の熱処理によって、下地結晶表面にIII族金属層、酸化物層、水酸化物層、又はオキシ水酸化物等の表面変質層が形成される場合がある。従って、結晶成長に使用する前にかかる表面変質層を除去することが好ましい。表面変質層の具体的な除去方法としては、下地結晶を酸溶液中に浸漬する方法や機械研磨方法が挙げられる。下地結晶を酸溶液中に浸漬する場合に使用する酸溶液の種類は特に限定されないが、塩酸、硫酸、硝酸が挙げられ、特に硝酸が好ましい。また、酸溶液の濃度も特に限定されないが、通常10%以上、好ましくは30%以上である。高濃度の酸溶液又は混酸溶液を使用することによって、被膜除去が効率的になる。さらに酸溶液中に浸漬する際は、スターラー、超音波振動装置等を用いて撹拌しながら行われることが好ましく、さらに60℃以上、好ましくは80℃以上の温度で加熱しながら行うことが好ましい。
下地結晶の形状は、前述の成長開始面を設定することができるものであれば特に限定されないが、前述したような2つ以上の種結晶を下地結晶として用いる場合の好ましい形状について以下に説明する。
成長開始面の形状は矩形であることが好ましいことを前述したが、種結晶の形状としてもこのような矩形の一面を有することが好ましい。また、矩形の成長開始面を平行に配列するために、種結晶は成長開始面となる面に直交する側面を有することが好ましい。具体的な種結晶の形状としては、図4に示すような直方体形状又は直方体派生型形状を有する
ものが挙げられる(図4の上側は種結晶の斜視図、下側は種結晶の側面図である)。直方体派生型形状とは、例えば図4の4b又は4cに示されるような形状であり、特に成長開始面となる面の面積が小さくなるように直方体形状を変形させた形状を意味するものとする。このような直方体派生型形状は、例えば図4の4aの直方体形状の種結晶を、回転研磨機、イオンビーム等を用いて加工することにより得ることができる。
種結晶の寸法は、成長開始面の形状や間隔によって適宜設定することができるが、図4を参照して説明すると、短辺(図4中の13)は通常1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下であり、通常0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上である。高さ(図4中の14)は、通常10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下であり、通常0.5mm以上、好ましくは1mm以上である。長辺(図4中の15)は、通常5mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは50mm以上である。また、高さ(図中4の14)/短辺(図4中の13)とするアスペクト比(以下、「狭側面アスペクト比」と略す場合がある。)は、通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、通常100以下、好ましくは50以下、より好ましくは20以下である。
2つ以上の成長開始面の結晶面(指数面)は全て同一であることが好ましいこと、さらに結晶面上の結晶軸の方位も同一であることが好ましいことを前述したが、このように設定するために、設置する全ての種結晶の成長開始面となる面がそれぞれ同一になるように設定することが好ましい。
また、成長開始面同士の間の空間に成長開始面以外の面が存在する場合には、かかる面は+C面及び/又は半極性面であることが好ましいことを前述したが、このように設定するために、設置する全ての種結晶について、成長開始面となる面に直交する側面が+C面又は半極性面になるように設定することが好ましい。具体的には、設置する全ての種結晶の成長開始面をM面とし、対向する各種結晶の側面を+C面及び−C面とし、かつ、全ての種結晶の+C面を同じ方向に揃える態様が好ましい。
種結晶は曲率半径が3m以上の面上に設置されることが好ましく、5m以上の面上に設置されることがより好ましく、10m以上の面上に設置することがさらに好ましい。
種結晶を設置する方法は特に限定されないが、目的とする成長開始面同士の間隔を保つために、成長開始面となる面に直交する側面を利用する方法が挙げられる。例えば、図5に示されるように種結晶の側面同士を接触させる方法(図5の5a)、種結晶同士の間に支持体を挟む方法(図5の5b、5c)が挙げられる。これらの中で、操作の簡便性から、種結晶同士の間に支持体を挟む方法を採用することが好ましい。
支持体の形状は、目的とする成長開始面同士の間隔を保てるものであれば、特に限定されないが、例えば球形状(図5の5b)、直方体形状(図5の5c)等が挙げられる。
球形状の支持体を用いる場合、支持体の直径公差の絶対値は、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは、10μm以下である。用いる球形状の支持体の数は、種結晶の形状等によって適宜設定することができるが、最密に充填することが好ましい。
また、直方体形状の支持体を用いる場合、支持体の寸法精度の絶対値は、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、支持体の寸法精度の絶対値とは、種結晶の側面と接する支持体の両側側面間の距離のバラつき指す。
支持体の材質は、結晶成長を阻害せず、かつ成長開始面同士の間隔を保てるものであれば特に限定されないが、熱膨張率の小さい材質であることが好ましく、具体的には石英又は成長結晶と同一の材料(この場合はGaN結晶)が挙げられる。
本発明に係る成長工程は、III族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる工程であるが、このような成長は前述したような成長開始面を設定し、特に横方向成長を阻害するものでなければ、ハライド気相成長法(HVPE法)、有機金属化学蒸着法(MOCVD法)、有機金属塩化物気相成長法(MOC法)、昇華法、融液成長、高圧溶液法、フラックス法、安熱法等の公知の成長方法の何れを採用しても行うことができる。これらの中で、特にHVPE法を採用することが好ましく、本発明に係る成長工程の詳細を説明するに当たり、HVPE法を用いGaN半導体結晶を得る場合の製造装置の構成及び成長条件の具体例を挙げて説明する。
<製造装置の構成>
HVPE法に用いる製造装置の構成について、図6を参照して説明する。製造装置には、リアクター(反応容器 図6中の100)が備えられており、かかるリアクター内にはサセプター(図6中の107)、III族窒化物半導体結晶の原料を入れるリザーバー(図6中の105)を備えられている。また、リアクター内にガスを導入するための導入管(図6中の101〜104)、排気するための排気管(図6中の108)、さらにリアクターを加熱するためのヒーター(図6中の106)が設置されている。
リアクターの材質としては、石英、焼結体窒化ホウ素、ステンレス等が挙げられるが、好ましい材質は石英である。サセプターの材質としてはカーボンが好ましく、SiCで表面をコーティングしているものがより好ましい。サセプターの形状特に限定されないが、結晶成長する際に結晶成長面付近に構造物が存在しないものであることが好ましい。結晶成長面付近に成長する可能性のある構造物が存在すると、そこに多結晶体が付着し、その生成物としてHClガスが発生して、結晶成長させようとしている結晶に悪影響が出る場合がある。
リザーバーには、例えば目的とするIII族窒化物半導体結晶の原料を入れることができ、例えばGa、Al、In等のIII族源となる原料が挙られる。リザーバーに接続した導入管(図6中の103)からは、III族源となる原料と反応するガス、例えばHClガスを供給することが挙げられる。このとき、HClガスとともに、導入管からはキャリアガスを供給してもよい。キャリアガスとしては、例えば水素、窒素、He、Ne、Ar等が挙げられ、これらのガスは1種のみでも、混合して用いてもよい。
リザーバーに接続した導入管以外の導入管(図6中の101、102、104)からは、例えば、窒素源となる原料ガス、キャリアガス、ドーパントガス等を供給することができる。窒素源となる原料ガスとしては通常NH3が、キャリアガスとしては水素、窒素、He、Ne、Arが、ドーパントガスとしては、酸素、水、SiH4、SiH2Cl2、H2S等が挙げられる。これらのガスは1種のみでも、混合して用いてもよい。また、導入管の数は特に限定されず、供給するガスの種類に応じて、導入管の数を増減してもよい。
排気管は、リアクター内壁の上面、底面、側面に設置することができる。不純物落ちの観点から結晶成長端よりも下部にあることが好ましく、図6に示されるようにリアクター底面にガス排気管が設置されていることがより好ましい。
本発明に係る成長工程は、III族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる、即ち横方向成長を進行させる結晶成長であることを特徴とするが、横方向成長は、原料が到達しにくい、或いは構造的な障害がある等の横方向成長を阻害する要因がなければ、通常の成長条件においても進めることができる。横方向成長を制御することができる具体的な成長条件としては、温度、原料分圧、窒素原料/III族原料比、原料供給口−結晶成長端距離等が挙げられる。以下、本発明に係る成長工程の条件(HVPE法の場合)について好ましい態様を説明する。
<初期低速成長>
前述のように本発明に係る成長工程は、III族窒化物半導体結晶が成長し始める下地結晶上の成長開始面の面積を、目的とするIII族窒化物半導体結晶の成長面に比べて小さく設定することを特徴としており、一般的な下地結晶を用いる場合に比べて、成長初期の成長領域(成長面)は小さい傾向にある。そのため、一般的な下地結晶を用いる場合と同程度の原料ガス量を供給してしまうと原料過度となり、多結晶部位が発生しまう可能性が高くなる。従って、成長領域が比較的小さい成長初期は、原料ガス供給量を小さくし、成長速度を遅くすることが好ましい(以下、成長速度を遅めに設定する初期成長を「初期低速成長」と略す場合がある)。
成長速度としては、通常10μm/h以上、好ましくは15μm/h以上、より好ましくは20μm/h以上であり、通常70μm/h以下、好ましくは60μm/h以下、より好ましくは50μm/h以下である。
原料ガス供給量は、成長開始面の面積によって適宜設定することができるが、原料ガス供給分圧(NH3)として、通常1.50×104Pa以下、好ましくは1.15×104Pa以下、より好ましくは8.00×103Pa以下であり、通常3.00×103Pa以上、好ましくは3.60×103Pa以上、より好ましくは4.20×102Pa以上である。また、原料ガス供給分圧(GaCl)として、通常9.00×102Pa以下、好ましくは7.00×102Pa以下、より好ましくは5.00×102Pa以下であり、通常1.20×102Pa以上、好ましくは1.60×102Pa以上、より好ましくは2.00×102Pa以上である。
初期低速成長の温度条件は、通常800℃以上、好ましくは860℃以上、より好ましくは920℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下である。
初期低速成長の成長時間は、通常4時間以上、好ましくは10時間以上、より好ましくは16時間以上である。上記範囲であると、多結晶部位の発生を抑制することができる。
<本成長>
前述した初期低速成長を経た後の本成長の成長速度としては、通常25μm/h以上、好ましくは30μm/h以上、より好ましくは35μm/h以上であり、通常150μm/h以下、好ましくは100μm/h以下、より好ましくは80μm/h以下である。
原料ガス供給分圧(NH3)として、通常1.50×104Pa以下、好ましくは1.15×104Pa以下、より好ましくは8.00×103Pa以下であり、通常3.00×103Pa以上、好ましくは3.60×103Pa以上、より好ましくは4.20×102Pa以上である。また、原料ガス供給分圧(GaCl)として、通常9.00×102Pa以下、好ましくは7.00×102Pa以下、より好ましくは5.00×102Pa以下であり、通常1.20×102Pa以上、好ましくは1.60×102Pa以上、より好ましくは2.00×102Pa以上である。
本成長の温度条件は、通常800℃以上、好ましくは860℃以上、より好ましくは920℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下である。
本成長の成長時間は、通常20hr以上、好ましくは30hr以上、より好ましくは40hr以上であり、通常150hr以下、好ましくは120hr以下、より好ましくは100hr以下である。
<間欠成長>
成長時間の経過ともに成長領域が大きくなり、前述したような多結晶部位の発生の危険性も少なくなるが、依然として多結晶部位が発生してしまう可能性もある。例えば、M面を成長面(成長開始面)とする結晶成長の場合、+C軸方向へのオフ角が大きい又−C軸方向へのオフ角が小さい場合には多結晶部位が発生しやすくなる。そこで、原料供給を一時的に断つ或いは減らすことによって、成長面上の原料濃度を下げ、結晶成長を遅くする
ことにより、多結晶部位の発生を抑制することができる(以下、一時的に成長速度を遅くする成長を「間欠成長」と略す場合がある)。間欠成長においては、原料ガス供給分圧(GaCl)を4.50×101Paに下げることが好ましく、4.50Pa以下に下げることがより好ましい。
本発明の製造方法には、前述した成長工程のほか、III族窒化物半導体結晶を目的の大きさにするスライスするスライス工程、表面を研磨する表面研磨工程等が含まれてもよい。スライス工程としては、具体的にはワイヤースライス、内周刃スライス等が挙げられ、表面研磨工程としては、例えばダイヤモンド砥粒等の砥粒を用いて表面を研磨する操作、CMP(chemical mechanical polishing)、機械研磨後RIEでダメージ層エッチングする操作が挙げられる。
本発明の製造方法によって製造するIII族窒化物半導体結晶の種類は、III族元素を含む窒化物半導体結晶であれば特に限定されないが、例えば、GaN、AlN、InN等の1種類のIII族元素からなる窒化物の他に、GaInN、GaAlN等の2種類以上のIII族元素からなる複合窒化物が挙げられる。
[III族窒化物半導体結晶]
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法は、下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる工程を含むことを特徴としているが、前述したように成長開始面上に形成される結晶領域(図7中の4)に多く積層欠陥が発生するのに対し、横方向成長によって形成される結晶領域(図7中の5)には積層欠陥の発生が少なくなる傾向にある。本発明者らは、横方向成長によって形成される結晶領域にはほとんど積層欠陥が観察されないものの、基底面転位が存在していることを確認し、さらに基底面転位密度(成長面側から観察した値)が1.0×107cm-2以下であることを確認した。また、成長開始面上に形成される結晶領域の積層欠陥密度(成長面側から観察した値)が、1.0×104cm-1以上であることを確認した。即ち、本発明の製造方法によって、基底面転位密度が1.0×107cm-2以下である領域(以下、「低基底面転位密度領域」と略す場合がある。)及び積層欠陥密度が1.0×104cm-1以上である領域(以下、「高基底面積層欠陥密度領域」と略す場合がある。)を有するIII族窒化物半導体結晶であって、低基底面転位密度領域に属する部分(図7中の19)が、高基底面積層欠陥密度領域(図7中の20)に属する部分の2倍以上の面積である主面を有するIII族窒化物半導体結晶を製造することが可能であると言える。
なお、積層欠陥とは、前述のようにGaN結晶で広く知られている基底面の積層不整である。積層欠陥の有無の判定は、例えば低温PL(Photo Luminessence)測定に依って可能である。また、積層欠陥種の判定は透過型電子顕微鏡によって可能である。さらに、積層欠陥密度が部分的に1.0×105cm-1に達する特徴を示す結晶の場合、蛍光顕微鏡によって基底面に平行な暗線として積層欠陥領域と積層欠陥フリー領域を判別することが可能になる。一方、基底面転位は、GaN結晶等で広く知られている貫通転位(threading dislocation)とは異なるものである。貫通転位は、サファイア基板などの異種基板上にGaN結晶を気相成長した際に、格子定数が大きく異なるために発生するGaN結晶中の1.0×109cm-2程度の相当数の転位である。これに対して本発明でいう基底面転位は、応力誘起で底面上すべりが生じた際に導入する転位であり、その伝幡方向がGaNの結晶成長方向と垂直であることからbasal dislocationとも呼ばれているものである。
本発明の製造方法によって、低基底面転位密度領域、即ち基底面転位密度が1.0×107cm-2以下である領域、及び高基底面積層欠陥密度領域、即ち積層欠陥密度が1.0×104cm-1以上である領域を有するIII族窒化物半導体結晶を製造することができ
るが、低基底面転位密度領域の基底面転位密度は、1.0×106cm-2以下であることが好ましく、1.0×105cm-2以下であることが好ましい。また、下限値としては、通常1.0×103cm-2以上である。一方、高基底面積層欠陥密度領域の積層欠陥密度(成長表面側から観察した値)は、1.0×104cm-1以上であるが、上限値としては、通常1.0×106cm-1以下である。
本発明の製造方法によって、低基底面転位密度領域に属する部分の面積が、高基底面積層欠陥密度領域に属する部分の面積の2倍以上である主面を有するIII族窒化物半導体結晶を製造することが可能であるが、低基底面転位密度領域に属する部分の面積が、高基底面積層欠陥密度領域に属する部分の面積の10倍以上である主面を有することが好ましく、40倍以上である主面を有することが好ましい。また、通常低基底面転位密度領域に属する部分の面積は、高基底面積層欠陥密度領域に属する部分の面積の500倍以下である。
低基底面転位密度領域に属する部分の面積は特に限定されないが、通常2cm2以下、好ましくは4cm2以下、より好ましくは10cm2以下であり、通常0.2cm2以上、好ましくは0.4cm2以上、より好ましくは1cm2以上である。
高基底面積層欠陥密度領域に属する部分の面積は特に限定されないが、通常0.25cm2以下、好ましくは0.1cm2以下、より好ましくは0.05cm2以下である。
本発明の製造方法によって製造されるIII族窒化物半導体結晶は、低基底面転位密度領域が、200μm間隔のXRC曲率半径が6m以上であることが好ましく、10m以上であることがより好ましい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
(1)種結晶の作製
直径76mmΦのサファイア基板上にMOCVDでGaNを成長したC面を主面とするテンプレート基板を準備し、これを下地結晶として、直径85mm、厚さ20mmのSiCコーティングしたカーボン製の基板ホルダー上に置いてHVPE装置のリアクター内に配置した。リアクター内を1020℃まで加熱後、導入管を通してHClガスを供給し、リザーバー中のGaと反応して発生したGaClガスを導入管を通してリアクター内へ供給した。このような下地結晶の上でのGaN層成長工程において、リアクター温度1020℃を29時間保持し、また、成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスの分圧を6.52×102Paとし、NH3ガスの分圧を7.54×103Paとし、塩化水素(HCl)の分圧を3.55×101Paとした。GaN層成長工程終了後、リアクター内を室温まで降温し、III族窒化物半導体結晶であるC面成長GaN結晶を得た。得られたGaN結晶は、成長面表面状態は鏡面であり、触針式の膜厚計で測定した厚さは3.5mmであった。得られたGaN結晶は洗浄、エッチング、キャップ等の前処理を行わずに、次の熱処理(高温腐食アニール)を行った。
(熱処理)
熱処理は、アルミナ管(Al23 99.7%)内にGaN結晶を設置して、アンモニア・窒素混合ガスを200ml/minの流量でガス導入管から導入
しながら実施した。アンモニア・窒素混合ガス(NH3 8.5%+N2 91.5%)は、4
.9MPaの47リットルボンベ中でアンモニアガスと窒素ガスを配合した後、均一な混合ガスになるまで45日以上放置してから用いた。昇温時には、ヒーターを用いて室温から600℃を300℃/時間で昇温させ、600℃から1300℃が250℃/時間で昇温させた。その後、1300℃で6時間にわたって熱処理を行った。その後、1300℃から600℃まで100℃/時間で冷却した。
(洗浄)
得られた結晶を120℃の濃硝酸(HNO3 69%含有)に浸漬し、表面に付着したガリウムメタルを除去し、クリーム色を呈するオキシ水酸化ガリウムと白色の酸化ガリウムが表面に存在する結晶サンプルを得た。
(加工(エッチング、キャップ))
C面表裏の水酸化ガリウム層、酸化ガリウム層を除去するためにC面表裏を500μm以上研削研磨した後、+C面に化学研磨を施して、0.4mm±0.05mmの一様な厚みを有するC面研磨ウェハーを得た。同C面研磨ウェハーから形状は、短辺:0.4mm、高さ:2.5mm:長辺:20mm超の板状種結晶を得た。なお、板状種結晶表面の結晶面(指数面)を図4(4a)の種結晶概念図で表すと、成長開始面となる図4中の1がM面であり、広側面(高さ×長辺の面)がC面である。
(2)板状種結晶(下地結晶)の配置と結晶成長
カーボン製の板を用意し、その上に(10−1−1)GaN基板を置いて、作製した板状種結晶を置く台とした。板状種結晶のM面の1つが台と面するように板状種結晶を縦置きに置き、次の別の種結晶板についても同様に縦置きに置いて平行に並べた。このとき、C面の平行性を確保するために、ヒューマニティー社製の石英ボール(直径2mm、直径公差;±2.5μm)を種結晶の間に備え、個々の石英ボールは両板状種結晶に接触するように配置した。このように2つの板状種結晶を平行に配置した状態を保存し、直径85mm、厚さ20mmのSiCコーティングしたカーボン製の基板ホルダー上に置いてHVPE装置のリアクター内に配置して、反応室の温度を1000℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶膜を40時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、成長開始から8時間はGaClガスの分圧を2.75×102Paとし、NH3ガスの分圧を3.89×103Paとして初期低速成長を実施し、その後GaClガスの分圧を4.12×102Paとし、NH3ガスの分圧を8.24×103Paと変化させて本成長を実施した。単結晶成長工程が終了後室温まで降温し、III族窒化物半導体結晶であるM面成長GaN結晶を得た。得られたGaN結晶は1つであり、板状種結晶間の上に鏡面の成長面表面が得られており、触針式の膜厚計で測定した厚さは3.5mmであった。また石英球も板状結晶間に閉じ込められていることが確認できた。得られたGaN結晶は洗浄、エッチング、キャップ等の前処理を行わずに、次の評価用の加工を施した。
(3)結晶の品質
得られたGaN結晶は主面がM面であり、その面内にはc軸とa軸が直角交差することがXRDにより確かめられた。得られたGaN結晶のA面を#3000のダイヤモンド研摩布で鏡面加工を施し、光学顕微鏡に適した板状結晶を含んだ再成長結晶のA面断面評価サンプルを得た。
断面観察した結果、板状種結晶のC面のm軸方向に沿った角度差は0.33°であることが画像処理計測によって明らかになった。
低温PL測定により、得られたGaN結晶の成長開始面上領域及び横方向成長領域の基底面積層欠陥密度、並びに基底面転位密度を測定した。結果を表1に、さらに横方向成長領域の電子顕微鏡写真を図8(8a)に示す。
両板状結晶のM面上にある成長開始面上領域には積層欠陥が存在したが、横方向成長領域には検出されなかった。
また、X線回折法によって結晶の曲率半径を測定した。同じく結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同様の方法で当該結晶を作製した。断面観察した結果、板状種結晶のC面のm軸方向に沿った角度差が1.52°と非常に悪かった。
同じく低温PL測定により、得られたGaN結晶の成長開始面上領域及び横方向成長領域の基底面積層欠陥密度、並びに基底面転位密度を測定した。結果を表1に、さらに横方向成長領域の電子顕微鏡写真を図8(8b)に示す。
両板状結晶のM面上にある成長開始面上領域には積層欠陥が存在したが、横方向成長領域には検出されなかった。しかしながら、積層欠陥の出発起源となりうる基底面転位の密度が非常に高かった。
本発明の製造方法によって製造されるIII族窒化物半導体結晶は、さまざまな用途に用いることができる。特に紫外〜青色の発光ダイオード又は半導体レーザ等の比較的短波長側の発光素子、及び緑色〜赤色の比較的長波長側の発光素子を製造するための基板として、さらに電子デバイス等の半導体デバイスの基板としても有用である。
1 成長開始面
2 成長方向
3 成長面
4 成長開始面上に形成される結晶領域(成長開始面上領域)
5 横方向成長によって形成される結晶領域(横方向成長領域)
6・7 成長開始面(結晶面)
8 結晶面上の結晶軸
9 結晶面の角度差
10 結晶面上の結晶軸の角度差
11 下地結晶
12 マスク層
13 下地結晶の短辺
14 下地結晶の高さ
15 下地結晶の長辺
16 下地結晶(種結晶)
17 球形状の支持体
18 直方体形状の支持体
19 基底面転位密度が1.0×107cm-2以下である領域(低基底面転位密度領域)
20 積層欠陥密度が1.0×104cm-1以上である領域(高基底面積層欠陥密度領域)
100 リアクター(反応容器)
101〜104 導入管
105 リザーバー
106 ヒーター
107 サセプター
108 排気管
109 基板ホルダー

Claims (10)

  1. 下地結晶上にIII族窒化物半導体結晶を結晶成長させる成長工程を含むIII族窒化物半導体結晶の製造方法であって、
    前記成長工程が、前記下地結晶の2つ以上の成長開始面から1つのIII族窒化物半導体結晶を成長させ、かつIII族窒化物半導体結晶の成長面を、前記下地結晶の成長開始面の総面積の3倍以上の面積に成長させる工程である、III族窒化物半導体結晶の製造方法。
  2. 前記成長開始面が非極性面又は半極性面である、請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  3. 前記2つ以上の成長開始面の結晶面が、全て同一であり、かつ前記結晶面の角度差の絶対値が1°以内である、請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  4. 前記成長工程が、2つ以上の種結晶を下地結晶として用い、それぞれの種結晶の成長開始面からIII族窒化物半導体結晶を成長させる工程である、請求項1〜3の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  5. 前記種結晶が、狭側面アスペクト比(高さ/短辺)3以上の直方体形状又は直方体派生型形状である、請求項4に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  6. 前記2つ以上の種結晶が、曲率半径が3m以上の面上に設置されている、請求項4又は5に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  7. 前記2つ以上の種結晶が、それぞれ成長開始面に直交する側面を有し、前記側面同士の間に支持体を挟むように設置されている、請求項4〜6の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  8. 前記支持体が、直径公差の絶対値が50μm以下の球形状である、請求項7に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  9. 前記支持体が、寸法精度の絶対値が50μm以下の直方体形状である、請求項7に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  10. 前記成長工程が、成長開始面以外の下地結晶上の面からも結晶成長させる工程である、請求項1〜9の何れか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
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