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JP2013163794A - インク組成物、及び画像形成方法 - Google Patents

インク組成物、及び画像形成方法 Download PDF

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JP2013163794A JP2012028925A JP2012028925A JP2013163794A JP 2013163794 A JP2013163794 A JP 2013163794A JP 2012028925 A JP2012028925 A JP 2012028925A JP 2012028925 A JP2012028925 A JP 2012028925A JP 2013163794 A JP2013163794 A JP 2013163794A
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Abstract

【課題】インクジェット記録法に適用される、記録した画像の耐擦性、耐ブロッキング性に優れたインク組成物及び、該インク組成物を用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】(a)エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する高分子化合物の粒子、(b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物、(c)着色剤及び(d)水溶性溶剤を含むインクジェット用インク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インク組成物、及び、該インク組成物を用いた画像形成方法に関する。
近年、資源保護、環境保全、作業安定性向上等のニーズの高まりによって塗料ならびにインクの水性化が進行しつつある。水性塗料ならびに水性インクに要求される品質は、油性塗料ならびに油性インクと同様、流動性、貯蔵安定性、皮膜の光沢、鮮明性、及び着色力等である。水性インクでは、インクにより形成された画像の色再現性を高めるために、高分子化合物の微粒子を添加することがしばしば行われる。たとえば、高分子化合物の微粒子と、水不溶性有機化合物を含有するインクジェット記録用インクセットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ここに記載のインクセットを用いて得られた画像は強度に乏しく、耐擦過性に劣るという問題があった。
上記に関連して、インクの耐擦過性を向上させるために、カルボニル基を有する高分子微粒子と、ヒドラジド化合物を含有し、溶媒の減少に伴ってカルボニル基とヒドラジド化合物とが互いに架橋反応を生じて高強度の画像が形成される水性インク組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、インクジェット方式では、インクの打滴後、再打滴されるまでに時間が経過する場合があり、このようなインク組成物がインクジェット記録装置のノズル近傍に付着すると、経時により架橋反応が進行して所望されない硬化が進行し、再打滴時にインクが再分散し難く、結果としてノズルの詰まりを引き起こすという問題があった。
特開2008−186416号公報。 特開2004−149600号公報。
本発明は、上記従来における諸問題を解決すべくなされ、耐擦性、耐ブロッキング性に優れた画像が形成され、且つ、吐出回復性に優れたインクジェット用インク組成物を提供することを課題とする。
また、本発明のさらなる課題は、本発明のインクジェット用インク組成物を使用した、耐擦性、耐ブロッキング性に優れた画像が形成され、且つ、インクの打滴後に経時した後においても、インクジェットノズル付近に付着したインクの固化が低減され、インクが乾燥固化した場合でも簡単なメンテナンスで固着物が除去できる、吐出回復性が良好な画像形成方法を提供することにある。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> (a)エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する高分子化合物の粒子、(b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物、(c)着色剤、及び(d)水溶性有機溶剤を含むインクジェット用インク組成物である。
<2> 前記(a)高分子化合物の粒子を構成する高分子化合物が、親水性基を有する<1>に記載のインクジェット用インク組成物である。
<3> 前記(a)高分子化合物の粒子を構成する高分子化合物が、親水性基を有する繰り返し単位を共重合成分として含み、高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する該親水性基を有する繰り返し単位の含有率が3質量%〜50質量%の範囲にある<1>又は<2>に記載のインクジェット用インク組成物である。
<4> 前記(b)反応性化合物の数平均分子量が500未満である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<5> 前記(b)反応性化合物の数平均分子量が500以上である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<6> 前記(b)反応性化合物が水分散性である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<7> 前記(b)反応性化合物が水溶性である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<8> 前記(a)高分子化合物の粒子の粒子径が、100nm〜300nmである、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<9> 前記エネルギー付与が、加熱及び活性光線の照射から選ばれる<1>〜<8>のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物である。
<10> 前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基がエポキシ基、カルボキシ基、及びアセトアセトキシ基から選ばれ、且つ、(b)反応性化合物が有する前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基が、前記反応性官能基とは異なる官能基であって、エポキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基から選ばれる官能基である<1>〜<9>のいずれか1項に記載のインク組成物である。
<11> <1>〜<10>のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、記録媒体上に付与されたインク組成物にエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含む、画像形成方法である。
<12> 前記エネルギー付与工程が、記録媒体上に付与されたインク組成物を加熱する工程である、<11>に記載の画像形成方法である。
<13> 前記エネルギー付与工程の前に、さらに、記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる、水溶性有機溶剤を含む溶媒を除去する工程をさらに含む、<11>又は<12>に記載の画像形成方法である。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明によれば、耐擦性、耐ブロッキング性に優れた画像が形成され、且つ、吐出回復性に優れたインクジェット用インク組成物が提供される。
また、本発明によれば、本発明のインクジェット用インク組成物を使用することで、耐擦性、耐ブロッキング性に優れた画像が形成され、且つ、インクの打滴後に経時した後においても、インクジェットノズル付近に付着したインクの固化が低減され、インクが乾燥固化した場合でも簡単なメンテナンスで固着物が除去できる、吐出回復性が良好な画像形成方法が提供される。
[インク組成物]
本発明のインク組成物は、(a)エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する高分子化合物の粒子(以下、適宜(a)高分子粒子と称する)、(b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物(以下、適宜、(b)反応性化合物と称する)、(c)着色剤、及び(d)水溶性有機溶剤を含むインクジェット用インク組成物である。
本発明において、カルボン酸無水物とは、2価のカルボキシ基が縮合してなる反応性官能基を意味するものとする。
本発明の作用は明確ではないが、以下のように考えている。
本発明のインク組成物は、(a)高分子粒子と、(b)反応性化合物とを含むが、(a)高分子粒子が有するエポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基と、(b)反応性化合物が有する前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基とは、例えば、インク組成物の溶媒の含有量が減少しても両者が反応することが無いため、例えば、インクジェット記録装置のノズルに付着した後、経時により固着した場合でも、再度インク組成物が提供されると、インク組成物が含有する溶剤と接触することで固着物が速やかに再溶解、或いは再分散され、ノズル詰まりを引き起こす懸念がない。また、固着物は溶剤や水などで速やかに除去されるのでメンテナンス性も良好である。一方、インク組成物により形成された画像は、エネルギー付与により、前記した官能基同士が反応して架橋構造を形成し、これにより画像の耐擦性、耐ブロッキング性が大幅に向上するものと考えられる。
本発明に用いられるインク組成物は、少なくとも(a)高分子粒子を水性の分散媒中に分散状態で含むものであり、(a)高分子粒子が有する反応性官能基とエネルギー付与により反応しうる官能基を有する(b)反応性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であっても、また、固体粒子の形態であってもよい。
本発明のインク組成物は、さらに、(c)着色剤、及び分散媒としての(d)水溶性有機溶剤を含むことを要し、また、媒体としての水を含有するが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて添加剤として液体または固体の種々の化合物を含んでもよい。
以下、本発明に使用される各成分について順次説明する。
<(a)エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する高分子化合物の粒子>
本発明のインク組成物は既述の特定反応性基を有する高分子化合物の粒子を含有する。本発明に係る(a)高分子粒子を構成する、特定の反応性官能基を有する高分子化合物を以下、適宜、「(a−I)特定高分子」と称する。
本発明に係る(a−I)特定高分子は、エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有するものであれば特に制限はなく、このような反応性官能基は、特定高分子の側鎖に有しても、主鎖末端に有しても、双方に有してもよい。
(a−I)特定高分子は、これら特定の反応性官能基を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、(a)高分子粒子は、単一の高分子化合物からなる粒子でもよく、二種以上の高分子化合物を含んで構成される粒子であってもよい。高分子粒子が、二種以上の高分子化合物を含む場合、二種以上の高分子化合物の混合物からなる粒子であっても、二種以上の高分子化合物を含む複合粒子であってもよい。
本発明に係る(a)高分子粒子を構成する(a−I)特定高分子が有する反応性官能基としては、エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、なかでも、反応性や形成された画像の耐擦性、耐ブロッキング性が良好であるといった観点からは、カルボキシ基、エポキシ基、及び、アセトアセトキシ基が好ましい。
このような反応性官能基は、高分子を合成した後に反応性官能基を導入してもよく、またはこれらを含む繰り返し単位とその他の繰り返し単位を反応させることで導入してもよい。これらを含む繰り返し単位の形態で(a−I)特定高分子に含まれることが好ましく、反応性官能基を有するモノマーを重合させて(a−I)特定高分子を得ることが好ましい。(a−I)特定高分子を形成するために用いられる、エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むモノマーとしては、例えば、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジルメタクリレート(GMA)が、アセトアセトキシ基を有するモノマーとしては、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)が挙げられる。ハロメチル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ブロモエチル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、4−クロロメチルスチレン(CMS−P)が挙げられ、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、4−クロロメチルスチレンが特に好ましい。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸が、アミノ基を有するモノマーとしては、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、が挙げられ、4−ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルが特に好ましい。水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノメタクリレートが挙げられ、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
重合後に加水分解を行うことでフェノール性水酸基を生成するモノマーとしては、4−アセトキシスチレンが、カルボキシ基を有するモノマーとしては、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、4−ビニル安息香酸が挙げられ、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチルが特に好ましい。
前記の如き反応性官能基を有するモノマー由来の繰り返し単位の含有率は、(a−I)特定高分子の全繰り返し単位に対して、2質量%〜70質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
なお、(a)高分子粒子が前記特定の反応性官能基の有無や導入量は、赤外分光法や核磁気共鳴(NMR)などの汎用の方法によって確認することが可能である。
(a)高分子粒子を構成する(a−I)特定高分子は、分子内にさらに親水性基を含む化合物であることが好ましく、(a−I)特定高分子が親水性基を含むことで、(a)高分子粒子の水系溶剤に対する分散安定性が向上する。
ここで親水性基とは、(a−I)特定高分子の親水性を高める機能を有する基であれば、ノニオン性親水性基でもよいし、アニオン性もしくはカチオン性のようなイオン性親水性基のいずれでもよく、特に限定されない。
(a−I)特定高分子に含まれる親水性基の量には限定はなく、親水性基の種類や(a−I)特定高分子の分子量等に応じて、適宜選択されるが、(a−I)特定高分子の酸価が後述する好ましい範囲となる量で含まれることが好ましい。
(親水性を有する繰り返し単位)
本発明に係る(a−I)特定高分子が前記親水性基を含む化合物である場合、親水性基は、(a−1)特定高分子中に、親水性基を有する繰り返し単位の態様で含まれることが、合成適性や親水性基含有量制御の容易性の観点から好ましい。
親水性を有する繰り返し単位は(a−1)特定高分子中に1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。前記「親水性を有する繰り返し単位」を形成するモノマー(以下、親水性を有するモノマー」ということがある)は、既述のように、ノニオン性親水性基を有していてもよく、アニオン性又はカチオン性のイオン性親水性基を有していてもよい。
前記ノニオン性親水性基としては、限定的ではないが、例えば、水酸基、アミド基(−CONH、−CONHR又は―CONR、Rは置換基を表す。)又は[−(R11−O)−R12]で表される基が好ましく、水酸基または[−(R11−O)−R12]で表される基がより好ましい。
前記アミド基におけるRで表される置換基は、限定的ではないが、炭素数1〜6の鎖状又は環状アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
前記[−(R11−O)−R12]で表される基中のR11は、水酸基を有していてもよい炭素数1〜6の鎖状又は環状アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表し、R12は水酸基又は水素原子を表す。nは1〜6の整数を表し、2〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい。
前記ノニオン性親水性基を含む繰り返し単位を構成しうるモノマーの具体例としては、
アミドを有するものとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−イソプロピルアクリルアミドが挙げられる。
水酸基を有するものとしては、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
[−(R11−O)−R12で表される基を有するものとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アニオン性親水性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
アニオン性親水性基を含む繰り返し単位を構成しうるモノマーの具体例としては、限定的ではないが、アニオン性親水性基として、カルボキシル基を含むものとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸モノマー類及び、2−(メタ)アクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
リン酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
これらの具体例の中でも、アニオン性親水性基としてカルボキシル基を含むものが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸モノマーに由来する繰り返し単位を含むことが特に好ましい。
また、これらのアニオン性親水性基は、塩を形成しても良い。
前記カチオン性親水性基としては、3級アミノ基、含窒素芳香族基、及びアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
前記カチオン性親水性基である3級アミノ基としては、限定的ではないが、−NR(Rは置換基)で表される3級アミノ基が挙げられる。前記3級アミノ基とのRで表される置換基は各々異なっていてもよく、例えば、炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、炭素数6〜20のアリール基(好ましくはフェニル基)等が挙げられる。また、カチオン性親水性基としては、ピリジン環構造の如き含窒素芳香族基であってもよく、含窒素芳香族基が有する芳香環は置換基を有していてもよい。
カチオン性親水性基を有する親水性の繰り返し単位を構成しうるモノマーの具体例としては、限定的ではないが、3級アミン含有ビニルモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドンが挙げられ、含窒素芳香族基を有するモノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−6−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。
アンモニウム塩含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート四級化物等が挙げられる。
これらの中でも、イオン性親水性基を含む繰り返し単位を構成しうるモノマーとして、アニオン性親水性基を含むモノマーが好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
既述の親水性基を有する繰り返し単位を共重合成分として含む場合の含有率は、(a−1)特定高分子を構成する全繰り返し単位に対して3質量%〜50質量%の範囲にあることが好ましく、5質量%〜25質量%の範囲であることがより好ましい。
なお、親水性基は、(a−I)特定高分子が有する反応性官能基としての機能を有していても、有していなくてもよい。例えば、(a−I)特定高分子が反応性官能基としてエポキシ基を有し、且つ、親水性基としてカルボキシ基を有する場合、エポキシ基と反応しうる官能基であるアミノ基を有する(b)反応性化合物と組みあわせて用いる場合には、この親水性基は反応性官能基としての機能を有しないものとなる。一方、(a−I)特定高分子が有する反応性官能基が親水性の官能基である場合、反応性官能基以外の親水性基をさらに含まなくてもよい。
本発明に係る(a)高分子粒子の酸価は30mgKOH/g〜200KOH/gが好ましく、50KOH/g〜150KOH/gが特に好ましい。酸価をこの範囲とすることで、高分子粒子の分散安定性がより良好なものとなる。
なお、ここでいう酸価とは、前記分散剤の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、(a)高分子粒子の酸価はJIS規格(JISK0070:1992)記載の方法で測定することができ、本発明においてはこの方法で測定した値を採用する。
(その他の繰り返し単位)
本発明に係る(a−I)特定高分子は、前記反応性官能基を有する繰り返し単位、及び所望により含まれる親水性基を有する繰り返し単位に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記以外の「その他の繰り返し単位」を含んでもよい。その他の繰り返し単位を含む場合、前記反応性基を有する繰り返し単位とその他の繰り返し単位とを含み、親水性基を有する繰り返し単位を含まない態様をとることもできる。
その他の繰り返し単位は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
その他の繰り返し単位としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はない。例えば、「ポリマーハンドブック第4版John Wiley & Sons」に記載の、通常用いられるモノマーに由来する繰り返し単位を挙げることができる。以下、これらの繰り返し単位を形成しうるモノマーを「他の共重合可能なモノマー」ということがある。他の共重合可能なモノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
(a−I)特定高分子がその他の繰り返し単位を含む場合の、当該繰り返し単位の含有率としては、0質量%〜95質量%の範囲であることが好ましく、0質量%〜90質量%の範囲であることがより好ましい。
(a−I)特定高分子の重量平均分子量は、3000〜1000000の範囲であることが、インクの吐出安定性の観点から好ましく、6000〜200000の範囲であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ポリスチレン換算でGPC法により測定した値である。
(a−I)特定高分子を用いて(a)高分子粒子を形成する方法としては、特定高分子の合成時に乳化重合を行うことで粒子形成する方法、懸濁重合を行う方法、転相乳化による方法などが挙げられ、合成の容易さから乳化重合による方法が好ましい。
本発明に係る(a)高分子粒子の粒径は、100nm〜300nmの範囲であることが好ましく、130nm〜270nmの範囲であることが特に好ましい。粒径が100nm以上であることで、インク組成物中での高分子粒子の凝集が抑制され、分散安定性が良好となり、300nm以下とすることでインクジェット法による吐出性が良好となる。なお、高分子粒子の体積平均粒径は、例えば、動的光散乱法を用いて測定することができる。本発明の高分子粒子の粒径は、マイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)を用いて定法により測定した値を採用しており、必ずしも一次粒径を指すものではない。
以下、本発明に用いうる(a)高分子粒子の例を、(a)高分子粒子を形成する(a−I)特定高分子の合成に用いられたモノマー種と含有率(質量%)、重量平均分子量(Mw)、及び形成された(a)高分子粒子が有する反応性官能基と、高分子粒子の平均粒径(nm)により示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、前記モノマー種の詳細は以下の通りである。
GMA:グリシジルメタクリレート
AAEM:2−アセトアセトキシエチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
BuMA:n−ブチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CMS−P:4−クロロメチルスチレン
M−90G:メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業株式会社製、下記構造)
本発明のインク組成物には、(a)高分子粒子は1種のみを含んでいてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、(a)高分子粒子が有する反応性基は互いに同じでも異なっていてもよいが、インクの保存安定性の観点からは、同じであることが好ましい。また、同種の(a−I)特定高分子からなり、互いに粒径の異なる(a)高分子粒子を併用してもよい。
インク組成物中における(a)高分子粒子の含有率は目的に応じて適宜選択されるが、吐出安定性及び形成される画像の強度の観点から、インク組成物全量に対し、1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、3質量%〜15質量%の範囲であることがより好ましい。
<(b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物>
本発明のインク組成物には、(b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物を含有する。
(b)反応性化合物は、数平均分子量が500未満の化合物であってもよく、数平均分子量が500以上の化合物であってもよい。数平均分子量が500以下であることで、インクの粘度への影響が少なくなり、吐出性を悪化させることがないため好ましい。また、数平均分子量が500以上の場合は、(a)高分子化合物の粒子と(b)反応性化合物の反応の架橋反応がごく少量であっても強固な膜を形成することが出来、好ましい。(b)反応性化合物の数平均分子量が500以上の固体分散しているものは、分散状態にあることで、インクの粘度上昇が抑えられ、吐出性が良好なものとなり、さらにインクの再分散性が良好で放置回復性が良好なインクが得られる。また、数平均分子量が500以上の化合物である場合には、後述する(c)水溶性有機溶剤に溶解した状態でインク組成物中に含まれてもよく、固体分散した状態、例えば、固体粒子の形態で分散されて含まれていてもよい。
また、(b)反応性化合物は、前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を、分子内に2以上有するものであってもよい。分子内に2以上の当該官能基を有することで、反応により、高密度の架橋構造が形成され、形成されたインク画像の耐擦性、耐ブロッキング性がより向上する。
(b)反応性化合物が有する前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基は、(a)高分子粒子が有する反応性官能基との関連で選択され、(a)高分子粒子と(b)反応性化合物を効率的に反応させ、強固な皮膜を形成する観点から、(a)高分子粒子が有する反応性官能基とは異なる官能基が選択される。即ち、(b)反応性化合物は、併用する(a)高分子粒子とは異なる化合物であることが好ましい。
(b)反応性化合物が、当該官能基を有する高分子化合物の粒子の形態をとる場合には、前記(a)高分子粒子自体を(b)反応性化合物として用いることができるが、両者が有する、エネルギー付与により互いに反応する官能基同士は、互いに異なることが必要であるため、例えば、(a)高分子粒子としてエポキシ基を有するものを用いる場合、(b)反応性化合物として、(a)高分子粒子であってカルボキシ基を有するものなど、エポキシ基と反応しうる官能基を有する高分子粒子を組み合わせて用いればよい。
以下、(a)高分子粒子が有する反応性官能基により選択される、(b)反応性化合物が有する官能基の好ましい組み合わせについて説明する。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がエポキシ基である場合、(b)反応性化合物は、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、フェノール性水酸基、及び、カルボニル基から選ばれる官能基を有する化合物であることが好ましく、なかでも、カルボキシ基、又はアミノ基を有する化合物がより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がアセトアセトキシ基である場合、(b)反応性化合物は、アミノ基、又は水酸基を有する化合物が好ましく、アミノ基を有する化合物がより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がハロメチル基である場合、(b)反応性化合物は、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基から選ばれる官能基を持つ化合物であることが好ましく、アミノ基を有する化合物がより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がカルボン酸無水物である場合、(b)反応性化合物はアミノ基、水酸基、又はフェノール性水酸基を持つ化合物であることが好ましく、アミノ基を有する化合物であることがより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がアミノ基である場合、(b)反応性化合物はカルボキシ基、エポキシ基、ハロメチル基、カルボニル基、エステル基、及び、アセトアセトキシ基から選ばれる官能基を持つ化合物であることが好ましく、カルボキシ基、エポキシ基、又はアセトアセトキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基が水酸基である場合、(b)反応性化合物は酸ハロゲン化物であるか、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアナート基、ハロメチル基、カルボニル基、及び、エステル基から選ばれる官能基を持つ化合物であることが好ましく、エポキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がフェノール性水酸基である場合、(b)反応性化合物は、カルボキシ基、エポキシ基、ハロメチル基、カルボニル基、エステル基、及び、アセトアセトキシ基から選ばれる官能基を持つ化合物であることが好ましく、エポキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
(a)高分子粒子が有する反応性官能基がカルボキシ基である場合、(b)反応性化合物は、アミノ基、イソシアナート基、又はエポキシ基を持つ化合物であることが好ましく、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物であることがより好ましい。
本発明のインク組成物に使用される(a)高分子粒子は、カルボキシ基、エポキシ基、又はアセトアセトキシ基を有することが(a)高分子粒子と(b)反応性化合物を効率的に反応させ、強固な皮膜を形成する観点から好ましく、このような好適な(a)高分子粒子には、(b)反応性化合物として、カルボキシ基、エポキシ基、又はアミノ基を有する化合物を組みあわせて用いることが好ましい。
なかでも、(a)高分子粒子としてエポキシ基を有するものと、(b)カルボキシ基を有する反応性化合物の組み合わせ、または(a)高分子粒子としてカルボキシ基を有するものと、(b)エポキシ基を有する反応性化合物との組み合わせが特に好ましい。
本発明のインク組成物に使用される(b)反応性化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されない。
(カルボキシ基を有する化合物)
(b)反応性化合物として、カルボキシ基を有するものとしては、例えば、数平均分子量が500未満の低分子化合物としては、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマル酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、シュウ酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イソクエン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、安息香酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリト酸、サリチル酸、アニス酸、クレアチンリン酸、及びこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。また、数平均分子量500以上の高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等が挙げられ、これらは市販品であってもよく、市販品としては、カーボポールUltrez20(日光ケミカルズ株式会社製)、アロンNS−1200(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
(b)反応性化合物が、カルボキシ基を有する高分子粒子の形態をとる場合には、既述の(a)高分子粒子の欄において例示した、カルボキシ基を有する高分子からなる平均粒径が100nm〜300nm程度の粒子が、同様に、好ましい例として挙げられる。
(エポキシ基を有する化合物)
(b)反応性化合物として、エポキシ基を有するものとしては、例えば、数平均分子量が500未満の低分子化合物としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えば、デナコールEX−145(商品名:ナガセケムテックス社製)、デナコールEX−313(商品名:ナガセケムテックス社製)が、数平均分子量500以上の高分子化合物としては、例えば、市販品であるデナコールEX−861(商品名:ナガセケムテックス社製)が挙げられる。高分子粒子の形態をとる場合には、既述の(a)高分子粒子の欄において例示した、エポキシ基を有する高分子からなる平均粒径が100nm〜300nm程度の粒子であることが好ましい。
(アミノ基を有する化合物)
(b)反応性化合物として、アミノ基を有するものとしては、例えば、数平均分子量が500未満の低分子化合物としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン、N−(β‐アミノエチル)イソプロパノールアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミン、p−フェニレンジアミン、ピリジン−2,3,6−トリアミンなどが、数平均分子量500以上の高分子化合物としては、例えば、市販品であるEPICLON B−065(商品名:DIC社製)、およびその塩などが好ましく挙げられ、高分子粒子の形態をとる場合には、該低分子化合物由来の繰り返し単位を含む重合体、共重合体等の高分子からなる平均粒径が100nm〜300nm程度の粒子であることが好ましい。
(ハロメチル基を有する化合物)、
また、ハロメチル基を有する(b)反応性化合物としては、1,3−ジブロモ−2−プロパノール(分子量:217.89)が挙げられる。
(アセトアセトキシ基を有する化合物)
アセトアセトキシ基を有する化合物としては、1,3−アセトンジカルボン酸ジメチル、1,3−アセトンジカルボン酸ジエチル、1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボン酸ジメチル、2−エチル−2−アセチル酪酸エチル、2−アミルアセト酢酸エチル、2−エチル−2−メチルアセト酢酸エチル、2−シクロヘキサノンカルボン酸エチルなどが挙げられる。
また、(b)反応性化合物は、(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基を有する繰り返し単位を重合させて得られる任意のインク溶媒に溶解または分散した高分子を用いても良い。
<エネルギー付与について>
既述のように、本発明のインク組成物に使用される(a)高分子粒子が有する反応性官能基と、(b)反応性化合物が有する官能基とは、エネルギーを付与することで反応するものであり、常温乾燥、或いは減圧乾燥などによってインク組成物中の溶剤が減少した場合においては、互いに反応することはない。
本発明におけるエネルギー付与とは、インクを記録媒体上に打滴したのちに行われるエネルギー付与であり、このエネルギー付与を行うことで(a)高分子粒子が有する反応性官能基と(b)反応性化合物が有する官能基との反応が初めて進行する。このとき用いられるエネルギー付与とは、加熱、又は、活性放射線の照射(光照射など)が好ましく、加熱であることがさらに好ましい。
エネルギー付与工程は、記録媒体上にインクを打滴した後に、インク画像の乾燥と同時に行ってもよく、まず記録媒体上におけるインク画像の乾燥工程を行い、その後、エネルギー付与工程を実施してもよい。
エネルギー付与を加熱により行う場合は、加熱温度は50℃〜110℃の範囲であること好ましく、50℃〜90℃の範囲であることがより好ましい。
また、加熱時間は、0.1秒〜3分であることが好ましく、0.1秒〜90秒であることがさらに好ましい。
加熱温度を上記範囲とすることで、記録媒体を劣化させることなく、しかも効率的に反応を進めることができ、耐擦性、耐ブロッキング性に優れたインク画像が形成される。
また、エネルギー付与を活性放射線照射により行う場合には、紫外線(以下、UV光とも称する)、可視光腺、電子線等の活性放射線を用いることができるが、UV光照射が好ましい。
UV光のピーク波長は、必要に応じて用いられる増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜405nmであることが好ましく、220〜390nmであることがより好ましく、220〜350nmであることがさらに好ましい。本発明では増感色素や光重合開始剤を併用しない場合は200〜310nmであることが好ましく200〜280nmがより好ましい。
UV光は、露光面照度が、例えば、10mW/cm〜2,000mW/cm、好ましくは、20mW/cm〜1,000mW/cmで照射されることが適当である。
UV光源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプやUV蛍光灯が広く知られている。本発明のインク組成物に、任意成分として増感色素や光重合開始剤を併用する場合は、メタルハライドランプや、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、UV−LEDが好ましく、増感色素や光重合開始剤を併用しない場合は、中圧水銀ランプや低圧水銀ランプが好ましい。
光照射によるエネルギー付与工程では、UV光の照射時間は、例えば、0.01秒間〜120秒間、好ましくは、0.1秒間〜90秒間照射されることが適当である。
<(c)着色剤>
本発明のインク組成物は(c)着色剤を含有する。本発明のインク組成物が着色剤を含有することで、着色インク組成物となる。
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられ、形成されるインク画像の耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点からは、顔料であることが好ましい。
着色剤として顔料を用いる場合、該顔料は顔料分散物としてインク組成物に含有させることができる。顔料分散物としては、顔料を顔料分散剤で分散したものの他、自己分散顔料も用いることができる。
(顔料)
インク組成物の顔料分散物に含まれていてもよい顔料は、一般に用いられる有機顔料、無機顔料、さらには、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。通常、市販されている顔料はいずれも使用でき、さらに、市販の顔料分散体や表面処理剤などで予め処理された顔料、例えば、顔料を分散媒としての不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明に用いうる有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー219の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料、C.I.ピグメントイエロー120(ベンズイミダゾロンイエロー)C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー194等の如きアセトロン顔料等が挙げられる。
赤あるいはマゼンタ色を呈するものとしては、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド6等の如きB−ナフトール顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B等)、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド48(B−オキシナフト酸レーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッド等)、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)、C.I.ピグメントレッド172(エリスロシンレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、
C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド224の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208の如きナフトロン顔料、C.I.ピグメントレッド247の如きナフトールAS系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269の如きナフトールAS顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド27の如きジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
青あるいはシアン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)、C.I.ピグメントグリーン10等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5の如きΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等の如きナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等の如きアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等の如きピラゾロン顔料、が挙げられる。
茶色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
黒色を呈する顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)等の如きインダジン顔料、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32の如きペリレン顔料等が挙げられる。
白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCOPb(OH)、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、さらに、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
白色以外の顔料は、平均粒径が小さいほど発色性に優れるため、本発明に係る顔料分散物を白色以外の顔料分散物に適用する場合であれば、顔料分散物に含有される顔料の平均粒径は、0.01μm〜0.4μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm〜0.3μmの範囲である。また、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下がより好ましい。顔料の粒径は、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができる。また、本発明の顔料分散物を、白色のインク組成物などに適用しうる白色の顔料分散物として調製する場合であれば、顔料分散物に含有される顔料の平均粒径は、充分な隠蔽性を与える観点から、0.05μm〜1.0μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜0.4μm程度である。白色の顔料分散物とする場合についても、顔料の最大粒径は、3μm以下、好ましくは1μm以下であることが好ましい。
(分散剤)
着色剤として顔料を用いる場合には、顔料粒子を調製する際に、必要に応じて顔料分散剤を用いてもよく、用いることのできる顔料分散剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、(メタ)アクリレート誘導体、ビニルナフタレン誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
また、本発明のインク組成物には、自己分散顔料を用いることもできる。本発明でいう自己分散顔料とは、分散剤なしで分散が可能な顔料を指し、特に好ましくは、表面に極性基を有している顔料粒子である。
本発明でいう表面に極性基を有する顔料粒子とは、顔料粒子表面に直接極性基で修飾させた顔料、あるいは有機顔料母核を有する有機物で直接に又はジョイントを介して極性基が結合しているもの(以下、顔料誘導体という)をいう。
極性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、硼酸基、水酸基が挙げられるが、好ましくはスルホン酸基、カルボン酸基であり、さらに好ましくは、スルホン酸基である。
このような表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、例えば、WO97/48769号公報、特開平10−110129号公報、特開平11−246807号公報、特開平11−57458号公報、同11−189739号公報、特開平11−323232号公報、特開2000−265094公報等に記載の顔料粒子表面を適当な酸化剤で酸化させることにより、顔料表面の少なくとも一部に、スルホン酸基もしくはその塩といった極性基を導入する方法が挙げられる。具体的には、カーボンブラックを濃硝酸で酸化したり、カラー顔料の場合は、スルホランやN−メチル−2−ピロリドン中で、スルファミン酸、スルホン化ピリジン塩、アミド硫酸などで酸化したりすることにより調製することができる。これらの反応で、酸化が進みすぎ、水溶性となってしまった物は除去、精製することにより、顔料分散体を得ることができる。また、酸化によりスルホン酸基を表面に導入した場合は、酸性基を必要に応じて、塩基性化合物を用いて中和してもよい。
そのほかの表面に極性基を有する顔料粒子を得る方法としては、特開平11−49974号公報、特開2000−273383公報、同2000−303014公報等に記載の顔料誘導体をミリングなどの処理で顔料粒子表面に吸着させる方法、特願2000−377068、同2001−1495、同2001−234966に記載の顔料を顔料誘導体と共に溶剤で溶解した後、貧溶剤中で晶析させる方法等を挙げることができ、いずれの方法でも容易に、表面に極性基を有する顔料粒子を得ることができる。
顔料表面における極性基は、フリーでも塩の状態でもよいし、あるいはカウンター塩を有していてもよい。カウンター塩としては、例えば、無機塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ニッケル、アンモニウム)、有機塩(トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピリジニウム、トリエタノールアンモニウム等)が挙げられ、好ましくは1価の価数を有するカウンター塩である。
インク組成物中の着色剤の含有量はインク組成物の使用目的に応じて、インクの硬化性を阻害しない範囲で適宜選択される。
本発明に用いられる顔料は、インク組成物の総量に対して0.1質量%〜15質量%の範囲で含まれることが好ましく、0.5質量%〜9質量%の範囲であることが特に好ましい。この範囲とすることで、画像の彩度が良好であり、かつ、架橋反応が阻害されず強固な皮膜を形成することが可能となる。
<(d)水溶性有機溶剤>
本発明のインク組成物は、水溶性有機溶剤を含有する。本発明における水溶性有機溶剤とは、25℃の水に対する溶解度が10質量%以上である有機溶剤をいう。
本発明のインク組成物は、水性媒体を含み、水性媒体として少なくとも水を含むものであるが、(d)水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことで、インク組成物において、水溶性有機溶剤は、併用される水とともに溶媒或いは分散媒として機能するが、さらに、例えば、乾燥防止剤、浸透促進剤、粘度調整剤としての機能を有する水溶性有機溶剤を用いてもよい。本発明における水溶性有機溶剤は、前記の機能を2以上有するものであってもよい。
本発明のインク組成物はインクジェット方式による画像記録方法に適用されるが、水溶性有機溶剤が乾燥防止剤として機能するため、水溶性有機溶剤を用いることで、インク噴射口において、インクの乾燥によって発生するノズルの目詰まり発生を効果的に防止することができる。
乾燥防止剤として機能する水溶性有機溶剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。
これらのなかでも、乾燥防止能に優れるという観点からは、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。
また、水溶性有機溶剤のなかには、浸透促進剤として機能する溶剤があり、このような浸透促進能を有する水溶性有機溶剤を用いることで、インク組成物の記録媒体(印刷用紙)への浸透性が改良される。浸透促進能に優れる水溶性有機溶剤の具体的な例としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
本発明のインク組成物において浸透促進能を有する水溶性有機溶剤を用いる場合には、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で使用するように留意することが好ましい。
また、本発明に用いうる水溶性有機溶剤としては、上記機能を有する溶剤以外にも、インク組成物の粘度調整を目的として用いられる溶剤が挙げられる。インク組成物の粘度調整に用いることができる水溶性有機溶剤の具体的な例としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶剤(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
水溶性有機溶剤は、溶媒、分散媒としてのみならず、既述のように種々の機能を発現させる目的で選択してもよい。
本発明のインク組成物には、水溶性有機溶剤を1種単独で用いてもよく、目的に応じて2種類以上を併用してもよい。
本発明における水性インク組成物中の前記水溶性有機溶剤の含有量としては、乾燥防止、被着体への浸透性、粘度等の液物性の観点から、1質量%〜70質量%が好ましく、2質量%〜60質量%がより好ましく、5質量%〜50質量%が特に好ましい。水溶性有機溶剤の含有量を前記範囲とすることにより、インク組成物の乾燥速度、被着体への浸透性、及び粘度等の液物性を適切な状態に調整することができる。
また、本発明のインク組成物には、媒体として水を含有してもよい。インク組成物中の水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10質量%〜95質量%であることが好ましく、30質量%〜90質量%であることがより好ましい。
本発明のインク組成物には、前記(a)成分〜(d)成分に加えて、目的に応じて、インク組成物に使用される種々の添加剤を、本発明の効果を損なわない限りにおいて使用してもよい。
(界面活性剤)
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加することができる。好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインク組成物には、上述した各成分に加えて、必要に応じて、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤、固体湿潤剤、シリカ微粒子等を適宜選択して用いてもよい。
使用可能な添加剤としては、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤等を挙げることができる。
<インク組成物の調製方法>
本発明のインク組成物の調製方法としては、特に制限はなく、各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル、ディスパーなどの簡単な分散機により撹拌、混合し、分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序については任意である。好ましくは、着色剤としての顔料、高分子分散剤及び水溶性有機溶剤をプレミックスした後に分散処理し、得られた分散物を高分子粒子と有機溶剤とともに混合する。この場合、添加時や添加後、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどの簡単な撹拌機にて均一に混合する。ラインミキサーなどの混合機を用いて混合してもよい。また、顔料粒子をより微細化するために、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて混合してもよい。また、顔料や高分子分散剤の種類によっては、顔料分散前のプレミックス時に高分子粒子を添加するようにしてもよい。
本発明のインク組成物は、25℃における表面張力が20mN/m〜40mN/mであることが好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。また、粘度は、1mPa・s〜40mPa・sが好ましく、3mPa・s〜30mPa・sがより好ましい。インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYOCO.LTD製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記インク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、前記記録媒体上に付与されたインク組成物にエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含むことを特徴とする。これらの工程を行うことで、記録媒体上に、インク組成物による耐擦性、耐ブロッキング性に優れた画像が形成される。
前記エネルギー付与工程としては、記録媒体上に付与されたインク組成物を加熱する工程であることが好ましく、また、エネルギー付与工程と同時に、又は、該工程の前に、さらに、記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる水溶性溶剤、及び必要に応じて併用される他の媒体を除去する溶剤除去工程を行ってもよい。溶剤除去工程は、インク組成物中に含まれる、水溶性溶剤を含む液状の溶媒、分散媒の含有量を減少させる工程であり、本工程で溶剤を完全に除去することを意味するものではない。
(インク付与工程)
以下、本発明の画像形成方法における、インク付与工程について説明する。本発明におけるインク付与工程は、前記インク組成物を記録媒体上に付与する工程であれば限定されない。
本発明の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明の画像形成方法における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi(dot per inch)、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm(1inch)当たりのドット数を表す。
本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク組成物の粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
吐出時のインク組成物の温度は一定であることが好ましく、インク組成物の温度の制御幅は、より好ましくは設定温度の±5℃、さらに好ましくは設定温度の±2℃、最も好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
本発明において、記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の記録媒体を使用することができる。記録媒体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられ、なかでも、紙又はプラスチックがラミネートされた紙などが好ましい。
(エネルギー付与工程)
以下、本発明の画像形成方法における、エネルギー付与工程について説明する。本発明におけるエネルギー付与工程は、前記記録媒体上に付与されたインク組成物にエネルギーを付与して、(a)高分子粒子が有する反応性官能基と(b)反応性化合物が有する官能基とを反応させる工程であれば特に限定されず、例えば、加熱工程、或いは、活性光線照射工程などを実施すればよい。なかでも、反応性及び処理の簡易性の観点からは、加熱工程を行うことが好ましい。
加熱工程における加熱温度は、官能基同士の反応が進行し、且つ、記録媒体やインク中に含まれる各成分に悪影響を与えない範囲で適宜選択され、具体的には、既述の如く、50℃〜110℃の範囲であることが好ましく、50℃〜90℃の範囲であることが好ましい。また、加熱時間は、官能基同士の反応が進行する条件で選択され、一般的には、加熱は、0.1秒間〜3分間行うことが好ましく、0.1秒分間〜90秒間行うことがさらに好ましい。
加熱手段には特に制限はなく、温風、赤外線照射、或いは、ヒータ等の加熱手段により所定の温度に維持された加熱ゾーン中を搬送する方法、などの非接触加熱手段であっても、インクを付与された記録媒体の裏面にヒータを備えた熱ロールを接触させる接触加熱手段であってもよいが、なかでも、生産安定性の観点から温風による加熱方法が好ましい。
また、エネルギー付与を活性放射線照射により行う場合には、紫外線(以下、UV光とも称する)、可視光腺、電子線等の活性放射線を用いることができるが、UV光照射が好ましい。
UV光の照射条件としては、露光面照度が、10mW/cm〜2,000mW/cmの範囲であることが好ましく、20mW/cm〜1,000mW/cmで照射されることが更に好ましい。
UV光源としては、公知のものを適宜使用すればよく、例えば、水銀ランプ、ガスレーザー、固体レーザー等が挙げられる。
UV光の照射時間は、0.01秒間〜120秒間が好ましく、0.1秒間〜90秒間照射されることが更に好ましい。
本発明のインク組成物にエネルギーを付与することで、インク組成物中の(a)高分子粒子が有する反応性官能基と、(b)反応性化合物が有する官能基とが反応し、インク画像中に架橋構造が形成され、画像の定着性と強度が向上し、結果として耐擦性、耐ブロッキング性等を向上させることが可能となる。なお、反応性の官能基として、ラジカルを介在しない反応を生起する官能基同士の組み合わせを選択することにより、酸素により架橋反応阻害の懸念がないという利点をも有するようになる。
なお、エネルギー付与工程に先だって、或いは、エネルギー付与工程と同時に、インク画像中の溶媒を減じる乾燥工程を実施してもよい。
即ち、記録媒体上にインクを打滴した後に、インク画像の乾燥工程とエネルギー付与工程とを同時に行ってもよく、まず記録媒体上おけるインク画像の溶媒量を減じる乾燥工程を行い、その後、エネルギー付与工程を実施してもよい。エネルギー付与工程に先だって行われる乾燥工程は、反応性官能基の反応が進行しない温度範囲で行われ、例えば、常温での減圧乾燥、10℃〜40℃の送風による送風乾燥等の方法が挙げられる。
前記本発明のインク組成物を使用して、本発明の画像形成方法により形成されたインク画像は、架橋構造の形成により画像強度が向上し、耐擦過性、耐ブロッキング性に優れたものとなる。また、エネルギー付与を実施しない場合には反応が生じないため、インクジェット装置の吐出ノズルに付着したインク組成物は、経時により固着しても、再度インク組成物を吐出する際に、過剰の溶媒に接触すると容易に固着物が再溶解或いは再分散するため、本発明のインク組成物は吐出回復性に優れる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<合成例1:高分子粒子(a−1)の合成>
反応容器に純水を120ml入れて90℃まで加熱した。3mlの水に溶かした0.03gの過硫酸カリウムの開始剤溶液をこの容器に加えて撹拌した。
メタクリル酸グリシジル5g、M−90G 45g、イソオクチルチオグリコレート連鎖移動剤0.25g、及び1.2gの30% Rhodafac RS710、純水20mlを含むモノマーエマルションを調製し、このエマルションを30分間にわたって反応容器に滴下添加した。同時に、12mlの水に溶かした0.11gの過硫酸カリウムの開始剤溶液を同一の時間にわたって反応容器に滴下添加した。
当該反応物を、90℃に保ち、3時間撹拌した。次いで、その反応物を50℃にまで冷却した。次いで、50wt%水酸化カリウム水溶液を添加し、形成されたラテックス溶液をpH8.5に調整した。
室温(25℃)となるまで放冷し、得られたラテックス溶液を200メッシュフィルターでろ過して固形分15.4%の高分子粒子(a−1)の分散液を得た。得られた高分子粒子は、原料モノマーであるメタクリル酸グリシジルに由来するエポキシ基を有する粒子である。
得られた高分子粒子(a−1)の粒径をマイクロトラックUPA EX−150を用いて既述の条件にて測定したところ、平均粒子径は205nmであった。
<合成例2:高分子粒子(a−8)の合成>
モノマー組成を、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を75質量%、4−クロロメチルスチレン(CMS−P)を15質量%、メタクリル酸(MAA)を10質量%とした以外は、合成例1と同様にして得られたラテックス溶液に対して、0.1N塩酸水溶液を添加して溶液を酸性(pH2.5)とした。酸性に調整したラテックス溶液を60℃で12時間反応させた後に限外ろ過を行い、50%水酸化カリウム水溶液を添加し、pH8.5に調整した。室温(25℃)となるまで放冷し、得られたラテックス溶液を200メッシュフィルターでろ過して、固形分16.2%のフェノール性水酸基を有する高分子粒子(a−8)の分散液を得た。
得られた高分子粒子(a−8)の粒径を、高分子粒子(a−1)と同様に測定したところ、平均粒子径は220nmであった。
<顔料分散物の調製>
(ポリマー分散剤E−1の合成)
撹拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコにメチルエチルケトン44gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン25gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.43g、ベンジルメタクリレート30g、メタクリル酸5g、及びメチルメタクリレート15gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン1gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.21gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤E−1を43g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は42,000であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.4mgKOH/gであった。
(樹脂被覆シアン顔料分散物の調製)
ピグメントブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤E−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆されたピグメントブルー15:3の分散物(以下、「PB15:3分散物」と記載)を得た。
<インク組成物の調製>
(実施例1)
(組成1)
合成例1で得られた(a)高分子粒子(a−1) 5%
(b)反応性化合物(b−1) 2%
上記で得られたPB15:3分散物〔(c)着色剤〕 3%
2−ピロリドン〔(d)水溶性有機溶剤〕 20%
2−メチル−1,3−プロパンジオール〔(d)水溶性有機溶剤〕 5%
zonyl FNS(デュポン社製、フッ素系界面活性剤) 1%
水 (残量)
上記の組成1の各成分を、ミキサー(シルバーソン社製、L4R)を用いて2,500回転/分にて撹拌して、それぞれ調製した。得られたインク組成物は、200メッシュフィルターにて濾過して実施例1のインク組成物を得た。
(実施例2〜23,比較例1〜3)
実施例1において用いた(a)高分子粒子、(b)反応性化合物、(d)水溶性有機溶剤を下記表1に示すものに代えた以外は実施例1と同様にして実施例2〜22、及び比較例1〜3のインク組成物を得た。なお、実施例に使用した(a)高分子粒子、(a’)比較高分子、(b)反応性化合物の詳細は以下に示すとおりである。また、比較高分子であるニッポランWL−530(日本ポリウレタン工業社製)は、ウレタンアクリル樹脂粒子である。
(実施例24)
(a)高分子粒子として、高分子粒子(a−4)を構成するのと同じ特定高分子を用い、粒子径を340nmとした以外は同様にして作製した高分子粒子(a−10)を用いた以外は実施例9と同様にしてインク組成物を調整した。
<インク画像の形成>
1.実施例1〜24、比較例1〜3のインクジェット記録方法
王子製紙(株)製、OKトップコート+(商品名:記録媒体)を500mm/秒で稼動するステージ上に固定した。その後、走査方向に対して斜め(75.5度)に配置して固定してあるリコー社製GELJET GX5000プリンターヘッドで解像度1200×1200dpi、打滴量2.4pL、ライン方式でインク組成物の各々の画像をベタ印画した。印画直後、60℃に加熱された温風を供給する送風乾燥機を3秒間かけて通過させて乾燥と架橋処理とを実施して、記録媒体上にインク画像が形成された評価サンプル(印画物)を得た。
(実施例25)
(組成2)
合成例1で得られた(a)高分子粒子(a−1) 6%
(b)反応性化合物(b−9) 4%
上記で得られたPB15:3分散物〔(c)着色剤〕 3%
2−ピロリドン〔(d)水溶性有機溶剤〕 20%
2−メチル−1,3−プロパンジオール〔(d)水溶性有機溶剤〕 5%
zonyl FNS(デュポン社製、フッ素系界面活性剤) 1%
イルガキュア907(BASF・ジャパン製) 3%
水 (残量)
上記の組成2の各成分を、ミキサー(シルバーソン社製、L4R)を用いて2,500回転/分にて撹拌して、それぞれ調製した。得られたインク組成物は、200メッシュフィルターにて濾過して実施例22のインク組成物を得た。
2.実施例25のインクジェット記録方法
王子製紙(株)製、OKトップコート+(商品名:記録媒体)を500mm/秒で稼動するステージ上に固定した。その後、走査方向に対して斜め(75.5度)に配置して固定してあるリコー社製GELJET GX5000プリンターヘッドで解像度1200×1200dpi、打滴量2.4pL、ライン方式でインク組成物の各々の画像をベタ印画した。印画直後、60℃で3秒間乾燥させ、さらにUVランプ(商品名:アイグラフィック(株)社製、メタルハライドランプ)を用いて、露光量2.5J/cm露光して架橋処理を実施し、記録媒体上にインク画像が形成された評価サンプル(印画物)を得た。
<インク画像(印画物)の評価>
上記で得られた実施例1〜25及び比較例1〜3の印画物(評価サンプル)について、以下の評価を行った。結果を上記表1に併記した。
1.耐擦性評価
上記で得られた評価サンプルについて、王子製紙(株)製OKトップコート+を文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm、荷重260kg/mに相当)に巻きつけたもので、評価サンプルを3往復擦って画像はがれを目視で観察し、下記評価基準にしたがって評価した。
なお、3往復で画像はがれが確認できなかった場合には、更に6往復まで擦った。下記評価基準において、D評価が、実用上問題があるレベルである。
〜評価基準〜
A:6往復擦りでも画像のはがれが視認できなかった。
B:4往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できなかったが、6往復擦りでは確認できた。
C:2往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できなかったが、4往復擦りでは確認できた。
D:2往復擦りで印画サンプル面に画像のはがれが視認できた。
2.耐ブロッキング性評価
上記で得られた評価サンプルを3.5cm×4cmのサイズに2枚裁断し、10cm×10cmのアクリル板(厚み7mm)の上に印画面同士が向かい合うように評価サンプルを重ねて載せ、更にこの評価サンプルの上に重ねて同じサイズに裁断した未印画の特菱アート両面N(三菱製紙(株)製)を10枚載せ、更に10cm×10cmのアクリル板(厚み7mm)を載せ、25℃、50%RHの環境条件下で12時間放置した。
放置後、最上部のアクリル板の上に1kgの分銅を載せて更に24時間放置した(加重700kg/mに相当)。
更に、25℃、50%RHの環境条件下で2時間保管した後、評価サンプル上に重ねた未印画の特菱アート(未印画紙)を剥がした。このときの剥がれ易さ及び剥がした後の接着を目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。下記評価基準において、D評価が、実用上問題があるレベルである。
〜評価基準〜
A:剥がす際に引っかかりは無く、紙の接着は確認されなかった。
B:剥がす際に引っかかりはあったが、紙の接着は確認されなかった。
C:印画面に接着が生じ、ルーペで観察すると、紙の付着が確認できた。
D:印画面に接着が生じ、紙の付着が目視で確認できた。
3.放置回復性評価
リコー社製GELJET GX5000プリンターヘッドで解像度1200×1200dpi、打滴量2.4pL、ライン方式でベタ印画した。10分間連続して印画した後、プリンタを停止し、キャップをせずに40℃、25%RHの環境下、2週間放置した。放置後再びベタ画像を印刷し、放置前と同等の印画が得られるまでに要した復帰動作の回数を調べた。下記評価基準において、D評価が、実用上問題があるレベルである。
A:0〜1回の復帰動作で初期と同等の印画が可能
B:2〜3回の復帰動作で初期と同等の印画が可能
C:4〜6回の復帰動作で初期と同等の印画が可能
D:6回以上の復帰動作を行っても初期と同等の印画が不可能
表1の結果より明らかなように、本発明に係る実施例1〜25のインク組成物を用いて形成された画像は、画像形成に際して加熱処理したもの、UV照射したもののいずれにおいても、耐擦性、耐ブロッキング性に優れ、且つ、インク組成物をインクジェット方式に適用した場合の放置回復性が良好であることがわかる。
また、各実施例の結果を対比すると、(a)高分子粒子として、エポキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基を有するものの効果がより良好であり、なかでも、(a)高分子粒子としてエポキシ基を有するものと、(b)反応性化合物としてカルボキシ基を有する化合物とを用いた実施例1、3、及び4、(a)高分子粒子としてカルボキシ基を有し、(b)反応性化合物としてエポキシ基を有するものとを用いた実施例7、及び8は、その効果が著しいことが確認された。
他方、反応性の官能基を有しない高分子粒子’(a’−9)を含む比較例1、反応性官能基を有するが、粒子の形状を有しない水溶性の比較高分子化合物(a’−10)を使用した比較例2は、いずれも、画像の耐擦性、耐ブロッキング性が実用上問題となるレベルであった。また、ヒドラジド化合物を有する高分子粒子を含有するインク組成物を使用した比較例3は、画像の耐擦性、耐ブロッキング性は良好であったが、放置回復性に劣る結果となった。

Claims (13)

  1. (a)エポキシ基、アセトアセトキシ基、ハロメチル基、カルボン酸無水物、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、及びカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する高分子化合物の粒子、
    (b)前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基を有する反応性化合物、
    (c)着色剤及び
    (d)水溶性有機溶剤
    を含むインクジェット用インク組成物。
  2. 前記(a)高分子化合物の粒子を構成する高分子化合物が、親水性基を有する請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
  3. 前記(a)高分子化合物の粒子を構成する高分子化合物が、親水性基を有する繰り返し単位を共重合成分として含み、高分子化合物を構成する全繰り返し単位に対する該親水性基を有する繰り返し単位の含有率が3質量%〜50質量%の範囲にある請求項1又は請求項2に記載のインクジェット用インク組成物。
  4. 前記(b)反応性化合物の数平均分子量が500未満である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物。
  5. 前記(b)反応性化合物の数平均分子量が500以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物。
  6. 前記(b)反応性化合物が水分散性である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物。
  7. 前記(b)反応性化合物が水溶性である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物。
  8. 前記(a)高分子化合物の粒子の粒子径が、100nm〜300nmである、請求項1から請求項7のいずれかに記載のインクジェット用インク組成物。
  9. 前記エネルギー付与が、加熱及び活性光線の照射から選ばれる請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット用インク組成物。
  10. 前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基がエポキシ基、カルボキシ基、及びアセトアセトキシ基から選ばれ、且つ、(b)反応性化合物が有する前記(a)高分子化合物の粒子が有する反応性官能基と、エネルギー付与により反応する官能基が、前記反応性官能基とは異なる官能基であって、エポキシ基、カルボキシ基、及びアミノ基から選ばれる官能基である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のインク組成物。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のインク組成物を記録媒体上に付与するインク付与工程と、
    記録媒体上に付与されたインク組成物にエネルギーを付与するエネルギー付与工程と、を含む、画像形成方法。
  12. 前記エネルギー付与工程が、記録媒体上に付与されたインク組成物を加熱する工程である、請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 前記エネルギー付与工程と同時に、又は、前記エネルギー付与工程の前に、記録媒体上に付与されたインク組成物に含まれる、水溶性有機溶剤を含む溶媒を除去する工程を、さらに含む、請求項11又は請求項12に記載の画像形成方法。
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