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JP2013152927A - 燃料電池ガス拡散層、膜電極接合体、および燃料電池 - Google Patents

燃料電池ガス拡散層、膜電極接合体、および燃料電池 Download PDF

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JP2013152927A JP2012279212A JP2012279212A JP2013152927A JP 2013152927 A JP2013152927 A JP 2013152927A JP 2012279212 A JP2012279212 A JP 2012279212A JP 2012279212 A JP2012279212 A JP 2012279212A JP 2013152927 A JP2013152927 A JP 2013152927A
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Abstract

【課題】耐フラッディング・プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れ、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散層を提供することである。
【解決手段】マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で隣接して配置されてなり、マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末が平均直径1〜1000nmのカーボンナノファイバーを含み、マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末が粒子径3〜500nmの粒状炭素を含む燃料電池ガス拡散層。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に好適に用いられるガス拡散層に関する。より詳しくは、耐フラッディング・プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れ、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散層に関する。
水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る固体高分子型燃料電池は、一般的に、セパレータ、ガス拡散層、触媒層、電解質膜、触媒層、ガス拡散層、セパレータを順に積層して構成される。ガス拡散層にはセパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維などからなるガス拡散電極基材(以降、電極基材と記載)が広く用いられている。
しかしながら課題として、(1)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水で電極基材が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、発電性能が低下する問題(以下、フラッディングと記載)、(2)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水でセパレータのガス流路(以下、流路と記載)が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、瞬間的に発電性能が低下する問題(以下、プラッギングと記載)(3)80℃以上の比較的高い温度で作動させる場合、水蒸気拡散により電解質膜が乾燥し、プロトン伝導性が低下する結果、発電性能が低下する問題(以下、ドライアップと記載)が知られている。これら(1)〜(3)の問題を解決するために多くの取り組みがなされている。
特許文献1では、電極基材の触媒層側にカーボンブラックおよび疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成したガス拡散層が提案されている。このガス拡散層を用いた燃料電池によれば、マイクロポーラス部が撥水性を有する小さな細孔構造を形成するため、液水のカソード側への排水が抑えられ、フラッディングが改善される傾向にある。また、電解質膜に水分が押し戻される(以下、逆拡散と記載)ため、電解質膜が湿潤しドライアップが改善される傾向にある。しかしながら、フラッディング、ドライアップの抑制はまだ不十分であり、プラッギングは何ら改善されないという問題があった。
特許文献2には、電極基材の触媒層側にカーボンナノファイバーおよび疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成したガス拡散層が提案されている。このガス拡散層を用いた燃料電池によれば、マイクロポーラス部の撥水性が向上し、液水のカソード側への排出が抑えられ、フラッディングが改善される。また、電解質膜への水分の逆拡散により、電解質膜が湿潤しドライアップが改善される傾向にある。しかしながら、ドライアップの抑制はまだ不十分であり、プラッギングは何ら改善されないという問題があった。
特許文献3〜5では、電極基材の両面にカーボンブラック、疎水性樹脂からなるマイクロポーラス部を形成したガス拡散層を用いる燃料電池が提案されている。このガス拡散層を用いた燃料電池によれば、セパレータ側のマイクロポーラス部が平滑で高い撥水性を有することにより、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが改善される。また、触媒層側のマイクロポーラス部により電解質膜への水分の逆拡散が、加えてセパレータ側のマイクロポーラス部により水蒸気の拡散が抑えられる結果、電解質膜が湿潤しドライアップが改善される。しかしながら、セパレータ側のマイクロポーラス部により電極基材からセパレータへの排水が阻害されるため、フラッディングが顕著になるという問題があった。
これらのような多くの取り組みがなされているが、耐フラッディング・プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れたガス拡散層はまだ見出されていない。
特開2000−123842号公報 特開2006−120506号公報 特開平9−245800号公報 特開2008−293937号公報 特開2005−174607号公報
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐フラッディング・プラッギング性に優れ、なおかつ耐ドライアップ性に優れ、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散層を提供することである。
本発明者らは電極基材の両面にマイクロポーラス部を設けたガス拡散層を燃料電池に用いると、ドライアップ、プラッギングが改善されることに着目した。しかしながら従来技術と同様にマイクロポーラス部を構成する炭素質粉末にカーボンブラックを用いた場合、フラッディングが顕著であるという問題があった。これに対して、鋭意検討した結果、片面のマイクロポーラス部には粒子径3〜500nmの粒状炭素、もう片面のマイクロポーラス部にはカーボンナノファイバーを用いることにより、ドライアップ、プラッギングを改善しつつ、排水性をむしろ向上することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従来技術のような両面に同じ組成からなるマイクロポーラス部を設ける方法では、耐プラッギング性、耐ドライアップ性、耐フラッディング性を両立するのは困難である。
この考えに基づき、本発明のガス拡散層は次のような特徴を有する。すなわち、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で隣接して配置されてなり、マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末が平均直径1〜1000nmのカーボンナノファイバーを含み、マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末が粒子径3〜500nmの粒状炭素を含む燃料電池ガス拡散層である。
本発明において、電極基材の両面に、導電性を有するマイクロポーラス部、いわゆる、微小多孔層を形成する必要がある。電極基材の片面側のマイクロポーラス部をマイクロポーラス部[A]、反対面側のマイクロポーラス部をマイクロポーラス部[B]と称する。マイクロポーラス部[A]はカーボンナノファイバーを含むため、気孔率が高く、排水性および透気度が高い。これにより燃料電池のセパレータ側にマイクロポーラス部[A]を有しても電極基材からの排水を阻害せず、むしろ促進するため、低温性能が向上する。また、前記課題を解決するために、本発明の膜電極接合体は、電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側に前記燃料電池用ガス拡散層を有し、本発明の燃料電池は、前記膜電極接合体の両側にセパレータを有する。
本発明により、耐フラッディング・プラッギング性、および耐ドライアップ性を両立し、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能が発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散層を得ることができる。
本発明のガス拡散層は、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で隣接して配置されてなる。以下、各構成要素について、説明する。
まず、本発明の構成要素である電極基材について説明する。
本発明において、電極基材は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要である。このため、導電性を有し、平均細孔径が10〜100μmの多孔体を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、炭素繊維織物、炭素繊維抄紙体、炭素繊維不織布などの炭素繊維を含む多孔体、発泡焼結金属、金属メッシュ、エキスパンドメタルなどの金属多孔体を用いることが好ましい。中でも、耐腐食性が優れることから、炭素繊維を含む多孔体を用いることが好ましく、さらには、電解質膜の厚み方向の寸法変化を吸収する特性、すなわち「ばね性」に優れることから、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材、すなわち「カーボンペーパー」を用いることが好ましい。本発明において、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材は、通常、後述するように、炭素繊維の抄紙体に樹脂を含浸し炭素化することにより得られる。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。なかでも、機械強度に優れることから、PAN系、ピッチ系炭素繊維が本発明において好ましく用いられる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均直径が3〜20μmの範囲内であることが好ましく、5〜10μmの範囲内であることがより好ましい。平均直径が3μm以上であると、細孔径が大きくなり排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。一方、平均直径が20μm以下であると、水蒸気拡散性が小さくなり、ドライアップを抑制することができる。また、異なる平均直径を有する2種類以上の炭素繊維を用いると、電極基材の表面平滑性を向上できるために好ましい。
ここで、炭素繊維における単繊維の平均直径は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その直径を計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均長さが3〜20mmの範囲内にあることが好ましく、5〜15mmの範囲内にあることがより好ましい。平均長さが3mm以上であると、電極基材が機械強度、導電性、熱伝導性が優れたものとなり好ましい。一方、平均長さが20mm以下であると、抄紙の際の炭素繊維の分散性が優れ、均質な電極基材が得られるために好ましい。かかる平均長さを有する炭素繊維は、連続した炭素繊維を所望の長さにカットする方法などにより得られる。
ここで、炭素繊維の平均長さは、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その長さを計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。なお、炭素繊維における単繊維の平均直径や平均長さは、通常、原料となる炭素繊維についてその炭素繊維を直接観察して測定されるが、電極基材を観察して測定しても良い。
本発明において、電極基材の密度が0.2〜0.4g/cmの範囲内であることが好ましく、0.22〜0.35g/cmの範囲内であることがより好ましく、さらには0.24〜0.3g/cmの範囲内であることが好ましい。密度が0.2g/cm以上であると、水蒸気拡散性が小さく、ドライアップを抑制することができる。また、電極基材の機械特性が向上し、電解質膜、触媒層を十分に支えることができる。加えて、導電性が高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能が向上する。一方、密度が0.4g/cm以下であると、排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。かかる密度を有する電極基材は、後述する製法において、予備含浸体における炭素繊維目付、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量、および、電極基材の厚さを制御することにより得られる。なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に、樹脂組成物を含浸したものを「予備含浸体」と記載する。なかでも、予備含浸体における炭素繊維目付、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を制御することが有効である。ここで、予備含浸体の炭素繊維目付を小さくすることにより低密度の基材が得られ、炭素繊維目付を大きくすることにより高密度の基材が得られる。また、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を小さくすることにより低密度の基材が得られ、樹脂成分の配合量を大きくすることにより高密度の基材が得られる。また、電極基材の厚さを大きくすることにより低密度の基材が得られ、厚さを小さくすることにより高密度の基材が得られる。
ここで、電極基材の密度は、電子天秤を用いて秤量した電極基材の目付(単位面積当たりの質量)を、面圧0.15MPaで加圧した際の電極基材の厚みで除して求めることができる。
本発明において、電極基材の細孔径が30〜80μmの範囲内であることが好ましく、40〜75μmの範囲内であることがより好ましく、さらには50〜70μmの範囲内であることが好ましい。細孔径が30μm以上であると、排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。細孔径が80μm以下であると、導電性が高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能が向上する。かかる細孔径の範囲に設計するには、単繊維の平均直径が3μm以上8μm以下である炭素繊維と、単繊維の平均直径が8μmを越える炭素繊維の両方を含むことが有効である。
ここで、電極基材の細孔径は、水銀圧入法により、測定圧力6kPa〜414MPa(細孔径30nm〜400μm)の範囲で測定して得られる細孔径分布のピーク径を求めたものである。なお、複数のピークが現れる場合は、最も高いピークのピーク径を採用する。測定装置としては、島津製作所社製オートポア9520、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明において、電極基材の厚さは60〜200μmであることが好ましい。より好ましくは70〜170μmであり、さらに好ましくは70〜160μmであり、最も好ましくは80〜110μmである。電極基材の厚みが60μm以上であると、機械強度が高くなりハンドリングが容易となる。200μm以下であることで、電極基材の断面積が小さくなり、セパレータ流路の液水を流すガス量が多くなるため、プラッギングを抑制することができる。また、排水のためのパスが短くなり、フラッディングが改善され、低温での発電性能が向上する。
ここで、電極基材の厚さは、面圧0.15MPaで加圧した状態で、マイクロメーターを用いて求めることができる。
次に、本発明の構成要素であるマイクロポーラス部[A]、[B]について説明する。
マイクロポーラス部は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、加えて電解質膜への水分の逆拡散を促進することが必要である。このため導電性を有し、平均細孔径が1〜10μmの多孔体を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、炭素質粉末と疎水性樹脂を混合したものを用いることが好ましい。
マイクロポーラス部[A]は、平均直径1〜1000nmのカーボンナノファイバーを含むことが必要である。カーボンナノファイバーを含むことでマイクロポーラス部[A]の気孔率が大きく、導電性も良好となる。繊維の平均直径は10〜500nmであることがより好ましい。繊維の平均直径が1nm以下であると、マイクロポーラス部[A]の気孔率小さくなり、排水性が低下する。また、繊維の平均直径が1000nm以上であるとマイクロポーラス部[A]の平滑性が低下し、耐プラッギング性の低下および接触抵抗が増加する。なお、カーボンナノファイバーの平均直径は、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡で、カーボンファイバーを50万倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その直径を計測し、その平均値を求めたものである。透過型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製JEM−4000EX、あるいは同等品を用いることができる。
本発明においてカーボンナノファイバーとは、炭素原子比率が90%以上であり、アスペクト比が10以上のものをさす。炭素原子比率が90%以上であると、マイクロポーラス部の導電性、機械特性が向上する。一方、アスペクト比が10以上であると、マイクロポーラス部の導電性、機械特性が向上する。
本発明におけるカーボンナノファイバーとしては、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カップ積層型カーボンナノチューブ、竹状カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、グラファイトナノファイバーが挙げられる。中でも、アスペクト比が大きく、導電性、機械特性が優れることから、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維を用いることが好ましい。気相成長炭素繊維とは気相中の炭素を触媒により成長させたものであり、平均直径が5〜200nm、平均繊維長が1〜20μmの範囲のものが好ましい。
マイクロポーラス部[A]は、マイクロポーラス部[A]に疎水性樹脂を付与して、排水性を向上するため、上記カーボンナノファイバーと疎水性樹脂とを組み合わせて用いることができる。ここで、疎水性樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。
マイクロポーラス部[A]における疎水性樹脂の配合量は、マイクロポーラス部[A]の炭素質粉末100質量部に対して1〜70質量部であることが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましい。疎水性樹脂の配合量が1質量部以上であると、マイクロポーラス部[A]が排水性と機械強度に優れたものとなり好ましい。一方、70質量部以下であると、マイクロポーラス部[A]が導電性の優れたものとなり好ましい。
マイクロポーラス部[A]は、カーボンナノファイバー以外の炭素質粉末を含むことができる。カーボンナノファイバー以外の炭素質粉末としては、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、グラフェン、ミルド炭素繊維などが挙げられ、マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末は例えばカーボンナノファイバーとアセチレンブラックを混合したものでも良い。マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末を100質量部としたとき5〜100質量部がカーボンナノファイバーであることが好ましく、10〜100質量部がカーボンナノファイバーであることがより好ましく、50〜100質量部がカーボンナノファイバーであることがさらに好ましい。カーボンナノファイバーが5質量部以下ではマイクロポーラス部[A]の気孔率が低下するため、排水性とガス拡散性の低いガス拡散層となる。
マイクロポーラス部[A]の厚さは1〜20μmの範囲内であることが好ましく4〜16μmであることがより好ましい。1μm以上であると燃料電池のガス拡散層としてマイクロポーラス部[A]をセパレータ側に向けて使用した際に、セパレータとガス拡散層との界面の隙間の低減が可能となる。また、20μm以下であると、マイクロポーラス部[A]の電気抵抗を小さくできるため好ましい。
マイクロポーラス部[A]は、気孔率が70〜90%であることが好ましく、75〜90%であることがより好ましい。気孔率が70%以上であると、ガス拡散層からの排水性が高いため好ましい。また、気孔率が90%以下であると、マイクロポーラス部[A]が機械強度の優れたものとなり好ましい。気孔率の調整はカーボンナノファイバーの配合比率や疎水性樹脂の配合比率によって行うことができる。
なお、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の気孔率は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、ガス拡散層断面から無作為に異なる5箇所を選び、20000倍程度で拡大して写真撮影を行い、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の気孔率を計測し、それぞれの画像でのマイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の気孔率の平均値を指す。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいは同等品を用いることができる。ガス拡散層断面の作製方法としては(株)日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM4000、あるいは同等品を用いることができる。
一方、マイクロポーラス部[B]は、粒子径3〜500nmの粒状炭素を含むことが必要である。これにより、マイクロポーラス部[B]の気孔率を30〜70%に制御しつつ、1μm以下の細孔径と高い導電性を確保することができる。粒状炭素は粒子径3〜500nmの炭素微粒子であり、通常、導電性を有するものである。粒状炭素質の形状としては、球状、楕円球、鱗片状などを挙げることができる。具体的には黒鉛、カーボンブラック、マリモカーボンなどが挙げられ、なかでもカーボンブラックであることが好ましい。粒子経は20〜200nmであることがより好ましい。
なお、粒状炭素の粒子径は、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。測定倍率は50万倍で透過型電子顕微鏡による観察を行い、その画面に存在する100個の粒子径の外径を測定しその平均値を粒状炭素の粒子径とする。ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を指す。透過型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製JEM−4000EX、あるいは同等品を用いることができる。
マイクロポーラス部[B]を構成する特定粒子径の粒状炭素以外の炭素質粉末としては、マイクロポーラス部[A]と同様のものが挙げられ、特定粒子径の粒状炭素とその他の炭素質粉末とを混合して用いても良い。マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末を100質量部としたとき50〜100質量部が特定粒子径の粒状炭素であることが好ましく、70〜100質量部が特定粒子径の粒状炭素であることがより好ましい。特定粒子径の粒状炭素が50質量部以下ではマイクロポーラス部[B]の気孔率が大きくなるため、電解質膜の乾燥が起こりやすくなる。マイクロポーラス部[B]にカーボンナノファイバーを添加する際は、マイクロポーラス部[A]のカーボンナノファイバー配合比率よりも小さくすることが必要である。
本発明において、カーボンブラックとは、炭素原子比率が80%以上であり、一次粒子径3〜500nm程度の炭素の微粒子をさす。一次粒子の粒子径とは、凝集していない粒状炭素質粒子一個の直径を意味する。例えばカーボンブラックの場合、凝集していないカーボンブラック粒子一個の直径をいう。炭素原子比率が80%以上であると、マイクロポーラス部の導電性と耐腐食性が向上する。一方、直径が500nm以下であると、マイクロポーラス部の導電性、機械特性が向上する。
本発明において、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。なかでも導電性が高く不純物の含有が少ないアセチレンブラックを用いることが好ましい。
マイクロポーラス部[B]は、マイクロポーラス部[A]と同様、マイクロポーラス部[B]に撥水性を付与して、排水性を向上するため、上記カーボンブラックと疎水性樹脂とを組み合わせて用いることができる。ここで、疎水性樹脂としては、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。
マイクロポーラス部[B]における疎水性樹脂の配合量は、マイクロポーラス部[B]の炭素質粉末100質量部に対して1〜70質量部であることが好ましく、5〜60質量部であることがより好ましい。疎水性樹脂の配合量が1質量部以上であると、マイクロポーラス部[B]が排水性と機械強度に優れたものとなり好ましい。一方、70質量部以下であると、マイクロポーラス部[B]が導電性の優れたものとなり好ましい。
マイクロポーラス部[B]の厚さは1〜40μmの範囲内であることが好ましく10〜30μmであることがより好ましい。1μm以上であると燃料電池のガス拡散層としてマイクロポーラス部[B]をセパレータ側に向けて使用した際に、セパレータとガス拡散層との界面の隙間の低減が可能となる。また、30μm以下であると、マイクロポーラス部[B]の電気抵抗を小さくできるため好ましい。
マイクロポーラス部[B]は、気孔率が30〜70%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましい。気孔率が30%以上であると、ガス拡散層からの排水性が高いため好ましい。一方、気孔率が70%以下であると、逆拡散が促進されドライアップを抑制できるため好ましい。気孔率の調整はカーボンブラックの配合比率や疎水性樹脂の配合比率によって行うことができる。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]を形成したガス拡散層は両表面が共に算術平均表面粗さ0.1〜15μmであることが好ましい。より好ましくは算術平均表面粗さ0.1〜10μmであることである。ガス拡散層の両表面の算術平均粗さが15μm以下であることで、燃料電池のガス拡散層として用いた際に、セパレータとガス拡散層の界面の隙間が小さくなるため、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングを抑制できるため好ましい。また、触媒層およびセパレータとの密着性が向上し、セルの電気抵抗を低減できるため好ましい。電極基材の算術平均表面粗さは、表面粗さ計を用いて求めることができ、表面粗さ計としては、(株)小坂研究所surfcorder SE−2300、あるいはその同等品を用いることができる。
マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末としてカーボンナノファイバーを用いて、マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末としてカーボンブラックを用いる組み合わせによって初めて、マイクロポーラス部[A]が有する高い耐フラッディング性、マイクロポーラス部[B]の高い耐ドライアップ性、両面にマイクロポーラス部を有することによる高い耐プラッギング性を兼ね備えたガス拡散層となる。カーボンナノファイバーとしては気相成長炭素繊維、カーボンブラックとしてはアセチレンブラックを用いる組み合わせがより好ましい。マイクロポーラス部[A]の炭素質粉末を気相成長炭素繊維にすることで、マイクロポーラス部[A]の気孔率が特に大きくなり、排水性が高くなる。マイクロポーラス部[B]の炭素質粉末をアセチレンブラックとすることで、マイクロポーラス部[B]の電気抵抗を特に小さくすることができる。また、マイクロポーラス部[A]の炭素質粉末に気相成長炭素繊維、マイクロポーラス部[B]の炭素質粉末にアセチレンブラックを用いることで、マイクロポーラス部[A]とマイクロポーラス部[B]の性質が大きく変わり、ガス拡散層の面直方向に排水性の傾斜ができるため、ガス拡散層内でのフラッディングが抑制されやすくなる。
また、マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末を100質量部としたとき50質量部以上が気相成長炭素繊維であり、マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末を100質量部としたとき70質量部以上がアセチレンブラックである場合、前記の耐フラッディング性、耐ドライアップ性、耐プラッギング性が最も顕著に発現されるため特に好ましい。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の厚みの組み合わせとしては、マイクロポーラス部[A]とマイクロポーラス部[B]の厚みの合計が10〜50μmであることが好ましく、マイクロポーラス部[B]の厚みがマイクロポーラス部[A]とマイクロポーラス部[B]の厚みの合計の70%以上であることが好ましい。マイクロポーラス部の合計厚みを50μm以下にすることで、電気抵抗を小さくできる。また、マイクロポーラス部[B]の厚みを前記の割合以上にすることで、耐フラッディング性、耐ドライアップ性、耐プラッギング性が最も顕著に発現される。
次に、本発明のガス拡散層を得るに好適な方法について具体的に説明する。
<抄紙体、および抄紙体の製造方法>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体を得るためには、炭素繊維を液中に分散させて製造する湿式抄紙法や、空気中に分散させて製造する乾式抄紙法などが用いられる。なかでも、生産性が優れることから、湿式抄紙法が好ましく用いられる。
本発明において、電極基材の排水性、ガス拡散性を向上する目的で、炭素繊維に有機繊維を混合して抄紙することができる。有機繊維としては、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維などを用いることができる。
また、本発明において、抄紙体の形態保持性、ハンドリング性を向上する目的で、バインダーとして有機高分子を含むことができる。ここで、有機高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロースなどを用いることができる。
本発明における抄紙体は、面内の導電性、熱伝導性を等方的に保つという目的で、炭素繊維が二次元平面内にランダムに分散したシート状であることが好ましい。
抄紙体で得られる細孔径分布は、炭素繊維の含有率や分散状態に影響を受けるものの、概ね20〜500μm程度の大きさに形成することができる。
抄紙体は、炭素繊維の目付が10〜60g/mの範囲内にあることが好ましく、20〜50g/mの範囲内にあることがより好ましい。炭素繊維の目付が10g/m以上であると、電極基材が機械強度の優れたものとなり好ましい。60g/m以下であると、電極基材がガス拡散性と排水性の優れたものとなり好ましい。なお、抄紙体を複数枚張り合わせる場合は、張り合わせ後の炭素繊維の目付が上記の範囲内にあることが好ましい。
ここで、電極基材における炭素繊維目付は、10cm四方に切り取った抄紙体を、窒素雰囲気下、温度450℃の電気炉内に15分間保持し、有機物を除去して得た残瑳の重量を、抄紙体の面積(0.01m)で除して求めることができる。
<樹脂組成物の含浸>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸する方法として、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法、樹脂組成物を含む溶液を抄紙体に塗布する方法、樹脂組成物からなるフィルムを抄紙体に重ねて転写する方法などが用いられる。なかでも、生産性が優れることから、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法が好ましく用いられる。
本発明に用いる樹脂組成物は、焼成時に炭化して導電性の炭化物となるものが好ましい。樹脂組成物は、樹脂成分に溶媒などを必要に応じて添加したものをいう。ここで、樹脂成分とは、熱硬化性樹脂などの樹脂を含み、さらに、必要に応じて炭素系フィラー、界面活性剤などの添加物を含むものである。
本発明において、より詳しくは、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の炭化収率が40質量%以上であることが好ましい。炭化収率が40質量%以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
本発明において、樹脂成分を構成する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。なかでも、炭化収率が高いことから、フェノール樹脂が好ましく用いられる。また、樹脂成分に必要に応じて添加する添加物としては、電極基材の機械特性、導電性、熱伝導性を向上する目的で、炭素系フィラーを含むことができる。ここで、炭素系フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ミルド炭素繊維、黒鉛などを用いることができる。
本発明に用いる樹脂組成物は、前述の構成により得られた樹脂成分をそのまま使用することもできるし、必要に応じて、抄紙体への含浸性を高める目的で、各種溶媒を含むことができる。ここで、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。
本発明における樹脂組成物は、25℃、0.1MPaの状態で液状であることが好ましい。液状であると抄紙体への含浸性が優れ、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性に優れたものとなり好ましい。
本発明において、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分を30〜400質量部含浸することが好ましく、50〜300質量部含浸することがより好ましい。樹脂成分の含浸量が30質量部以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、樹脂成分の含浸量が400質量部以下であると、電極基材がガス拡散性の優れたものとなり好ましい。
<張り合わせ、熱処理>
本発明においては、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した予備含浸体を形成した後、炭素化を行うに先立って、予備含浸体の張り合わせや、熱処理を行うことができる。
本発明において、電極基材を所定の厚みにする目的で、予備含浸体の複数枚を張り合わせることができる。この場合、同一の性状を有する予備含浸体の複数枚を張り合わせることもできるし、異なる性状を有する予備含浸体の複数枚を張り合わせることもできる。具体的には、炭素繊維の平均直径、平均長さ、抄紙体の炭素繊維目付、樹脂成分の含浸量などが異なる複数の予備含浸体を張り合わせることもできる。
本発明において、樹脂組成物を増粘、部分的に架橋する目的で、予備含浸体を熱処理することができる。熱処理する方法としては、熱風を吹き付ける方法、プレス装置などの熱板にはさんで加熱する方法、連続ベルトにはさんで加熱する方法などを用いることができる。
<炭素化>
本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化するために、不活性雰囲気下で焼成を行う。かかる焼成は、バッチ式の加熱炉を用いることもできるし、連続式の加熱炉を用いることもできる。また、不活性雰囲気は、炉内に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを流すことにより得ることができる。
本発明において、焼成の最高温度が1300〜3000℃の範囲内であることが好ましく、1700〜3000℃の範囲内であることがより好ましく、さらには、1900〜3000℃の範囲内であることが好ましい。最高温度が1300℃以上であると、樹脂成分の炭素化が進み、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、最高温度が3000℃以下であると、加熱炉の運転コストが低くなるために好ましい。
本発明において、焼成にあたっては、昇温速度が80〜5000℃/分の範囲内であることが好ましい。昇温速度が80℃以上であると、生産性が優れるために好ましい。一方、5000℃以下であると、樹脂成分の炭素化が緩やかに進み緻密な構造が形成されるため、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化したものを、「炭素繊維焼成体」と記載する。
<撥水加工>
本発明において、排水性を向上する目的で、炭素繊維焼成体に撥水加工を施すことが好ましい。撥水加工は、炭素繊維焼成体に疎水性樹脂を塗布、熱処理することにより行うことができる。疎水性樹脂の塗布量は、炭素繊維焼成体100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましい。疎水性樹脂の塗布量が1質量部以上であると、電極基材が排水性に優れたものとなり好ましい。一方、50質量部以下であると、電極基材が導電性の優れたものとなり好ましい。
なお、本発明において、炭素繊維焼成体に、必要に応じて撥水加工を施したものを、「ガス拡散電極基材」あるいは「電極基材」と記載する。なお、撥水加工を施さない場合は、炭素繊維焼成体と、「ガス拡散電極基材」あるいは「電極基材」は同一のものを指す。
<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>
マイクロポーラス部[A]は、電極基材の片面に、上述した撥水加工で用いた疎水性樹脂と、カーボンナノファイバーを含む炭素質粉末との混合物であるカーボン塗液[A]を塗布することによって形成し、マイクロポーラス部[B]は、電極基材のもう一方の片面に、上述した撥水加工で用いた疎水性樹脂と、粒子径3〜500nmの粒状炭素を含む炭素質粉末との混合物であるカーボン塗液[B]を塗布することによって形成することができる。
それにより、本発明のガス拡散層は、マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で配置されてなることになる。
カーボン塗液[A]およびカーボン塗液[B]は水や有機溶媒などの分散媒を含んでも良いし、界面活性剤などの分散助剤を含んでもよい。分散媒としては水が好ましく、分散助剤にはノニオン性の界面活性剤を用いるのがより好ましい。
カーボン塗液[A]やカーボン塗液[B]の電極基材への塗工は、市販されているような各種の塗工装置を用いて行うことができる。塗工方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗工、バー塗工、ブレード塗工などが使用できるが、電極基材の表面粗さによらず塗工量の定量化を図ることができるため、ダイコーター塗工が好ましい。以上例示した塗工方法はあくまでも例示のためであり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の形成は、カーボン塗液[A]やカーボン塗液[B]をそれぞれ片面に塗工した塗工物を、80〜120℃の温度で塗料を乾かしてから行うことが好ましい。
すなわち、塗工物を、80〜120℃の温度に設定した乾燥器に投入し、5〜30分の範囲で乾燥する。乾燥風量は適宜決めればよいが、急激な乾燥は、表面の微小クラックを誘発する場合があるので望ましくない。乾燥後の塗工物は、マッフル炉や焼成炉または高温型の乾燥機に投入し、300〜380℃にて5〜20分間加熱して、疎水性樹脂を溶融し、炭素質粉末同士のバインダーにしてマイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]を形成することが好ましい。
次に、本発明のガス拡散層を用いた膜電極接合体および燃料電池について説明する。
本発明において、前記したガス拡散層を、両面に触媒層を有する固体高分子電解質膜の少なくとも片面に接合することで膜電極接合体を構成することができる。その際、触媒層側にマイクロポーラス部[B]を配置する、つまりマイクロポーラス部[B]が触媒層と接するように膜電極接合体を構成することが好ましい。マイクロポーラス部の気孔率が小さいマイクロポーラス部[B]が触媒層側に配置されることで、逆拡散が促進され、耐ドライアップ性が向上する。マイクロポーラス部[A]がセパレータ側にある場合はガス拡散層のセパレータ側の気孔率が小さくなりすぎないため、排水性が良いガス拡散とすることができる。
かかる膜電極接合体の両側にセパレータを有することで燃料電池を構成する。通常、かかる膜電極接合体の両側にガスケットを介してセパレータで挟んだものを複数個積層することによって固体高分子型燃料電池を構成する。触媒層は、固体高分子電解質と触媒担持炭素を含む層からなる。触媒としては、通常、白金が用いられる。アノード側に一酸化炭素を含む改質ガスが供給される燃料電池にあっては、アノード側の触媒としては白金およびルテニウムを用いるのが好ましい。固体高分子電解質は、プロトン伝導性、耐酸化性、耐熱性の高い、パーフルオロスルホン酸系の高分子材料を用いるのが好ましい。かかる燃料電池ユニットや燃料電池の構成自体は、よく知られているところである。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた電極基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
<電極基材の作製>
東レ(株)製ポリアクリルニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T300(平均炭素繊維径:7μm)を平均長さ12mmにカットし、水中に分散させて湿式抄紙法により連続的に抄紙した。さらに、バインダーとしてポリビニルアルコールの10質量%水溶液を当該抄紙に塗布し、乾燥させ、炭素繊維目付15.5g/mの抄紙体を作製した。ポリビニルアルコールの塗布量は、抄紙体100質量部に対して、22質量部であった。
熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を1:1の重量比で混合した樹脂、炭素系フィラーとして鱗片状黒鉛(平均粒子径5μm)、溶媒としてメタノールを用い、熱硬化性樹脂/炭素系フィラー/溶媒=10質量部/5質量部/85質量部の配合比でこれらを混合し、超音波分散装置を用いて1分間撹拌を行い、均一に分散した樹脂組成物を得た。
15cm×12.5cmにカットした抄紙体をアルミバットに満たした樹脂組成物に浸漬し、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂+炭素系フィラー)が130質量部となるように含浸させた後、100℃で5分間加熱して乾燥させ、予備含浸体を作製した。次に、平板プレスで加圧しながら、180℃で5分間熱処理を行った。なお、加圧の際に平板プレスにスペーサーを配置して、熱処理後の予備含浸体の厚さが160μmになるように上下プレス面板の間隔を調整した。
予備含浸体を熱処理した基材を、加熱炉において、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、炭素繊維焼成体を得た。
炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFE樹脂を付与し、100℃で5分間加熱して乾燥させ、厚さ160μmの電極基材を作製した。
<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>
マイクロポーラス部を形成するために、電極基材にカーボン塗液部を形成した。マイクロポーラス部[A]を形成するためのカーボン塗液をカーボン塗液[A]、マイクロポーラス部[B]を形成するためのカーボン塗液をカーボン塗液[B]と称する。
ここで用いたカーボン塗液[A]は、カーボンファイバーとして気相成長炭素繊維(昭和電工(株)製“VGCF”(登録商標)、平均直径0.15μm、平均繊維長8μm)を使用し、その他の材料としてPTFE樹脂(ダイキン工業(株)製“ポリフロン”(登録商標)D−1E)、界面活性剤(ナカライテスク(株)製“TRITON”(登録商標)X−100)、精製水を用い、気相成長炭素繊維/PTFE樹脂/界面活性剤/精製水=7.7質量部/2.5質量部/14質量部/75.8質量部の配合比でこれらを混合したものを用いた。カーボン塗液[A]はダイコーターを用いて電極基材上に塗工し、120℃で10分加熱乾燥させた。
ここで用いたカーボン塗液[B]は、カーボンブラックとしてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製“デンカブラック”(登録商標)、平均一次粒子径35nm )を使用し、その他の材料としてPTFE樹脂(ダイキン工業(株)製“ポリフロン”(登録商標)D−1E)、界面活性剤(ナカライテスク(株)製“TRITON”(登録商標)X−100)、精製水を用い、カーボンブラック/PTFE樹脂/界面活性剤/精製水=7.7質量部/2.5質量部/14質量部/75.8質量部の配合比でこれらを混合したものを用いた。カーボン塗液[B]はカーボン塗液[A]を塗工した面の反対側にダイコーターを用いて塗工し、120℃で10分加熱乾燥させた。
加熱乾燥させた塗工物を380℃で10分間加熱して、電極基材の表面にマイクロポーラス部[A]を有し、もう一方の面にマイクロポーラス部[B]を有するガス拡散層を作製した。
<電極基材の厚さ測定>
電極基材の厚さは、電極基材を面圧0.15MPaで加圧した状態で、マイクロメーターを用いて求めた。
<マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の厚さ測定>
マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の厚さは、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、ガス拡散層断面から無作為に異なる10箇所を選び、400倍程度で拡大して写真撮影を行い、マイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の厚さを計測し、それぞれの画像でのマイクロポーラス部[A]およびマイクロポーラス部[B]の厚さの平均値で示した。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、ガス拡散層断面の作製方法としては(株)日立ハイテクノロジーズ製イオンミリング装置IM4000を用いた。
<電極基材の表面粗さ測定>
電極基材の表面粗さは、表面粗さ計を用いて求めた算術平均粗さで示した。表面粗さ計としては、(株)小坂研究所surfcorder SE−2300を用いた。
<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>
白金担持炭素(田中貴金属工業(株)製、白金担持量:50質量%)1.00g、精製水 1.00g、“Nafion”(登録商標)溶液(Aldrich社製 “Nafion”(登録商標)5.0質量%)8.00g、イソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)18.00gを順に加えることにより、触媒液を作成した。
次に7cm×7cmにカットした “ナフロン”(登録商標)PTFEテープ“TOMBO”(登録商標)No.9001(ニチアス(株)製)に、触媒液をスプレーで塗布し、室温で乾燥させ、白金量が0.3mg/cmの触媒層付きPTFEシートを作製した。続いて、10cm×10cmにカットした固体高分子電解質膜“Nafion”(登録商標)NRE−211CS(DuPont社製)を2枚の触媒層付きPTFEシートで挟み、平板プレスで5MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、固体高分子電解質膜に触媒層を転写した。プレス後、PTFEシートを剥がし、触媒層付き固体高分子電解質膜を作製した。
次に、触媒層付き固体高分子電解質膜を、7cm×7cmにカットした2枚のガス拡散層で挟み、平板プレスで3MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし膜電極接合体を作製した。なお、ガス拡散層はマイクロポーラス部[B]を有する面が触媒層側と接するように配置した。
得られた膜電極接合体を燃料電池評価用単セルに組み込み、電流密度を変化させた際の電圧を測定した。ここで、セパレータとしては、溝幅1.5mm、溝深さ1.0mm、リブ幅1.1mmの一本流路のサーペンタイン型のものを用いた。また、アノード側には210kPaに加圧した水素を、カソード側には140kPaに加圧した空気を供給し、評価を行った。なお、水素、空気はともに70℃に設定した加湿ポットにより加湿を行った。また、水素、空気中の酸素の利用率はそれぞれ80%、67%とした。
まず、運転温度を65℃に保持し、電流密度を2.2A/cmにセットした場合の、出力電圧を測定し、低温性能(耐フラッディング性)の指標として用いた。
耐プラッギング性はこの電流密度2.2A/cmで30分保持した際の出力電圧の低下回数をカウントし、評価した。30分間の評価で出力電圧が0.2V以下になった回数が5回以上のものを×、3〜4回のものを○、2回以下のものを◎とした。
次に、電流密度を1.2A/cmにセットし、運転温度を80℃から、5分保持、5分かけて2℃上昇を繰り返しながら出力電圧を測定し、発電可能な限界温度を求め、高温性能(耐ドライアップ性)の指標として用いた。
(実施例1)
実施例1は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが15μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧が0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度が91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例2)
実施例2は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが20μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧が0.34V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度が92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例3)
実施例3は電極基材の厚みを220μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが20μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧が0.33V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例4)
実施例4は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが2μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は20μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧が0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
(実施例5)
実施例5は電極基材の厚みを100μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが15μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.37V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
(実施例6)
実施例6は電極基材の厚みを100μmとし、カーボン塗液[B]のカーボンブラックを鱗片状黒鉛(平均粒子径5μm)20質量部に対しアセチレンブラック80質量部の割合の混合物に変えた他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが15μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は5μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.34V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度92℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例7)
実施例7は電極基材の厚みを100μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが0.5μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は25μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
(実施例8)
実施例8は電極基材の厚みを100μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが30μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は4μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.36V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
(実施例9)
実施例9は電極基材の厚みを100μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが30μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが15μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は4μm、マイクロポーラス部[B]は4μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧0.34V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度90℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性、耐ドライアップ性ともに良好であった。
(実施例10)
実施例10は電極基材の厚みを100μmとした他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが10μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は6μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は極めて良好であった。出力電圧0.38V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度91℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は極めて良好であり、耐ドライアップ性も良好であった。
実施例での評価結果などを表1、表2にまとめて示す。
Figure 2013152927
Figure 2013152927
(比較例1)
比較例1は電極基材の厚みを220μmとし、マイクロポーラス部[A]を設けなかった他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性が低かった。これはセパレータ側のガス拡散層の表面が粗いため、流路で液水が滞留しにくくなることが原因である。出力電圧は0.35V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は良好であったが、耐ドライアップ性は低かった。
(比較例2)
比較例2は電極基材の厚みを220μmとし、マイクロポーラス部[A]を設けず、カーボン塗液[B]のカーボンブラックを気相成長炭素繊維に変えた他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性が低かった。これはセパレータ側のガス拡散層の表面が粗いため、流路で液水が滞留しにくくなることが原因である。出力電圧は0.34V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度86℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性は良好であったが、耐ドライアップ性は低かった。
(比較例3)
比較例3は電極基材の厚みを220μmとし、カーボン塗液[A]の気相成長炭素繊維をアセチレンブラック(電気化学工業(株)製“デンカブラック”(登録商標)、平均一次粒子径35nm )に変えた他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の形成>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが20μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、出力電圧が取り出せず(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度89℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性と耐ドライアップ性が共に低下した。耐フラッディング性が低いのは電極基材のセパレータ側にあるマイクロポーラス部[A]の気孔率が低いため、液水の排水が阻害されたためであり、耐ドライアップ性が低いのは両面に気孔率の低いマイクロポーラス部を有するためガス供給がされにくく基本性能が低いためである。
(比較例4)
比較例4は電極基材の厚みを220μmとし、カーボン塗液[B]のアセチレンブラックを気相成長炭素繊維(昭和電工(株)製“VGCF”(登録商標)、平均直径0.15μm、平均繊維長8μm)に変えた他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが20μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、耐プラッギング性は良好であった。出力電圧は0.30V(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度87℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性と耐ドライアップ性が共に低下した。耐フラッディング性が低いのは触媒層側のマイクロポーラス部[B]の気孔率が高く、逆拡散が弱いためカソード側への液水流入量が多くなったためであり、耐ドライアップ性が低下したのは逆拡散が弱いため電解質膜が乾燥しやすくなったためである。
(比較例5)
比較例5は電極基材の厚みを220μmとし、カーボン塗液[A]の気相成長炭素繊維をミルド炭素繊維(東レ(株)製 MLD‐30、平均繊維径7μm、平均繊維長30μm)に変えた他は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス部[A]、マイクロポーラス部[B]の作製>に記載したのと同様の方法で、マイクロポーラス部[A]の厚さが20μm、マイクロポーラス部[B]の厚さが30μmになるように作製し、ガス拡散層を得た。表面粗さを測定したところマイクロポーラス部[A]は5μm、マイクロポーラス部[B]は3μmであった。<固体高分子型燃料電池の電池性能評価>に記載した方法で、このガス拡散層の発電性能評価をした結果、出力電圧が取り出せず(運転温度65℃、加湿温度70℃、電流密度2.2A/cm)、限界温度88℃(加湿温度70℃、電流密度1.2A/cm)であり、耐フラッディング性と耐ドライアップ性が共に低下した。
比較例での評価結果などを表3にまとめて示す。
Figure 2013152927

Claims (9)

  1. マイクロポーラス部[A]、電極基材、マイクロポーラス部[B]が、この順番で隣接して配置されてなり、マイクロポーラス部[A]を構成する炭素質粉末が平均直径1〜1000nmのカーボンナノファイバーを含み、マイクロポーラス部[B]を構成する炭素質粉末が粒子径3〜500nmの粒状炭素を含む燃料電池ガス拡散層。
  2. 前記粒状炭素がカーボンブラックである請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  3. マイクロポーラス部[A]の気孔率が70〜90%であり、マイクロポーラス部[B]の気孔率が30〜70%である請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  4. マイクロポーラス部[A]の厚さが1μm以上20μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層。
  5. 両表面が共に算術平均表面粗さ0.1〜15μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層。
  6. 電極基材の厚さが60〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層。
  7. 電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側に請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用ガス拡散層を有する膜電極接合体。
  8. 触媒層側にマイクロポーラス部[B]を配置することを特徴とする請求項7に記載の膜電極接合体。
  9. 請求項8に記載の膜電極接合体の両側にセパレータを有する燃料電池。
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