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JP2013030284A - 非水系電解液電池 - Google Patents

非水系電解液電池 Download PDF

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JP2013030284A
JP2013030284A JP2011163677A JP2011163677A JP2013030284A JP 2013030284 A JP2013030284 A JP 2013030284A JP 2011163677 A JP2011163677 A JP 2011163677A JP 2011163677 A JP2011163677 A JP 2011163677A JP 2013030284 A JP2013030284 A JP 2013030284A
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carbon atoms
compound
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JP2011163677A
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Nobu Watanabe
展 渡邉
Hiroshi Wada
博 和田
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

【課題】 本発明によれば、放電容量及び初回の充放電効率が高く、レート特性に優れた高性能の非水系電解液電池を安定して効率的に実現することができる。
【解決手段】
正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水溶媒が、フッ素化溶媒を含有し、かつフッ素化溶媒の合計量が、非水溶媒中、20〜100体積%の範囲にあることを特徴とする、非水系電解液電池であるか、
正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水系電解液が、さらに炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする、非水系電解液電池である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウム遷移金属系化合物を含む正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池に関する。
非水系電解液電池は、エネルギー密度及び出力密度等に優れ、小型、軽量化に有効であるため、ノート型パソコン、携帯電話及びハンディビデオカメラ等の携帯機器の電源としてその需要は急激な伸びを示している。非水系電解液電池はまた、電気自動車や電力のロードレベリング等の電源としても注目されている。
非水系電解液電池用の正極活物質材料としては、スピネル構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物、層状リチウムニッケル系複合酸化物、層状リチウムコバルト系複合酸化物が用いられてきた。近年では、コバルト含有量を低減させながらも電池性能バランスに優れたリチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物、ポリアニオン系正極材料ではリン酸鉄が実用化されている。
市販の非水系電解液電池にとって電池エネルギー密度の向上は至上命題のひとつである。そのため、活物質の重量当りの容量を増大させ、平均放電電圧を高めることが検討されている。
例えば、下記一般式(A)で表される正極活物質は、4.4V(Li基準)以上の高電圧充電で高容量を発現することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
(一般式中、
xは、0<x<1を満たす数であり、
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種の金属元素である。)
この正極活物質の電気化学的な活性化の機構は、非特許文献2〜4で詳細に議論されており、LiMnO相(213相)が、Li基準で4.4V以上において形式的にはLiOが脱離する不可逆な過程を経て、可逆的に充放電可能な複合酸化物へと変化するとされている。その過程では、正極活物質中の酸素イオン(O2−)が酸化されると想定されている。非特許文献5では、該活物質の高容量の一部がこの酸素イオンの酸化還元に由来することを報告している。非特許文献4では、計算によって、Mnと結合する格子酸素の電子密度が充電によって低下することが報告されている。実験的な証拠として、非特許文献3では、充電時に電極から発生した酸素を質量分析で検出したとの報告がなされている他、非特許文献5では、活物質から失われた酸素量の推算がなされている。
上記の正極活物質を用いた二次電池の劣化は、このような、該活物質の4.4V超(Li基準)での特異な電気化学挙動と密接に関連するものである。そこで、電池の劣化をその電気化学過程の制御によって克服しようという試みもなされている。例えば、特許文献7、非特許文献2では、高電圧充電で発生する正極の構造破壊が以下のようなコンディショニングで軽減されることを教示している。すなわち、充電電圧を3.9V以上4.6V未満(Li基準)から段階的に高めながら、充電−放電サイクルを複数回実施し、最終的に4.7−4.8V程度の充電電圧(Li基準)とする方法である。この方法により、該正極活物質表面の構造破壊が抑制される結果、サイクル寿命が改善されると報告されている。
上記の正極活物質を使用した二次電池の耐久性は、実用化における最大の障害であり、その克服を意図して、他にもさまざまな提案がなされている。例えば、特許文献2では、該活物質にフッ素をドープすることによって、また、特許文献3〜6、非特許文献1では、該活物質の表面処理によって寿命を改善する試みが提案されている。
米国特許7,135,252 米国特許7,435,402 US20100190058 US20070281212 WO2008054547 WO2010039732 特開2008−270201号公報
Kang, S.-H.; Thackeray, M. M., Electrochemistry Communications 2009, 11 (4), 748-751 Ito, A.; Li, D.; Sato, Y.; Arao, M.; Watanabe, M.; Hatano, M.; Horie, H.; Ohsawa, Y., Journal of Power Sources 2010, 195 (2), 567-573. Armstrong, A. R.; Holzapfel, M.; Novak, P.; Johnson, C. S.; Kang, S.-H.; Thackeray, M. M.; Bruce, P. G., Journal of the American Chemical Society 2006, 128 (26), 8694-8698. Xu, B.; Fell, C. R.; Chi, M.; Meng, Y. S., Energy & Environmental Science 2011. Yabuuchi, N.; Yoshii, K.; Myung, S.-T.; Nakai, I.; Komaba, S., Journal of the American Chemical Society 2011, 133 (12), 4404-4419.
しかしながら、本発明者らの検討によると、表面修飾は、効果が不十分であるばかりか、正極活物質製造プロセスが複雑となり、量産した場合の安定性、経済性に無視できない悪影響がある。また、コンディショニングのみで、高温保存を含めた長期の信頼性を担保することは困難である。
さらに、本発明者らの検討により、一般式(A)で表される正極活物質は、同程度の電位まで充電された通常の層状酸化物(LiNi0.33Mn0.33Co0.33等)と比較して、活性酸素を発生する傾向が強いことが判明した。さらに、この正極活物質を用いた場合の二次電池の劣化は、正極の4.4V(Li基準)での充電で、初回以降も継続して微量発生する活性酸素による周辺部材(電解液、バインダー、セパレーター等)の酸化、そして、この副反応の結果生じる該活物質からの金属イオンの溶出の寄与が大きく、コンディショニング、被覆等でこの活性酸素発生自体を抑制することは困難であることが判明した。
従って、本発明者らは、通常の層状酸化物(LiNi0.33Mn0.33Co0.33等)で広く知られている、従来の被覆処理や、初期の急激な構造変化を緩和する目的で実施されるコンディショニング以外の方法で、該活物質を用いた非水系電解液電池の寿命を向上させる必要があると考えた。
そこで、想定される劣化機構をもとに種々検討を重ね、非水系電解液の非水溶媒として、特定の溶媒を使用することにより、かつ/又は特定の添加剤を配合することにより、正極活物質表面との相互作用が抑制され、該活物質を用いた非水系電解液電池の寿命を改善し得ることを見出し、本発明を完成した。
本発明1は、正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水溶媒が、フッ素化溶媒を含有し、かつフッ素化溶媒の合計量が、非水溶媒中、20〜100体積%の範囲にあることを特徴とする、非水系電解液電池に関する。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
(一般式中、
xは、0<x<1を満たす数であり、
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種の金属元素である。)
本発明2は、フッ素化溶媒が、フッ素化カーボネート、フッ素化カルボン酸エステル、フッ素化エーテル、フッ素化スルホン及びフッ素化リン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒である、本発明1の非水系電解液電池に関する。
本発明3は、非水系電解液が、さらに、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する、本発明1又は2の非水系電解液電池に関する。
本発明4は、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物又はスルホン酸エステル構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(9)のいずれかで表される、本発明3に記載の非水系電解液電池に関する。

(一般式(1)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたp価の有機基であり、
pは、1以上の整数である。)

(一般式(2)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたq価の有機基であり、
qは1以上の整数である。)


(一般式(3)及び(4)中、
XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであり、互いに同一であっても異っていてもよく、
Yは、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
n及びmは0以上の整数であり、
ここで、隣接する環内の炭素原子に結合したR、R、R及びRは、互いに結合していてもよく、
Wは、前記Rと同義である。)


(一般式(5)及び(6)中、
〜R24は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異っていてもよく、
12とR13、R18とR19、R20とR21は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なっていてもよい。)



(一般式(7)及び(8)中、
26〜R32は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
26とR27、R29とR30、R31とR32は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、前記一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なってもよく、
Wは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である。)

(一般式(9)中、
33及びR34は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
33とR34は、一緒になって炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していてもよい。)
本発明5は、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物の合計量が、非水系電解液中、0.001〜10質量%である、本発明3又は4に記載の非水系電解液電池に関する。
本発明6は、正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水系電解液が、さらに炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする、非水系電解液電池に関する。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
(一般式中、
xは、0<x<1を満たす数であり、
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種金属元素である。)
本発明7は、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物又はスルホン酸エステル構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(9)のいずれかで表される、本発明6の非水系電解液電池に関する。

(一般式(1)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたp価の有機基であり、
pは、1以上の整数である。)

(一般式(2)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたq価の有機基であり、
qは1以上の整数である。)


(一般式(3)及び(4)中、
XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであり、互いに同一であっても異っていてもよく、
Yは、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
n及びmは0以上の整数であり、
ここで、隣接する環内の炭素原子に結合したR、R、R及びRは、互いに結合していてもよく、
Wは、前記Rと同義である。)


(一般式(5)及び(6)中、
〜R24は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異っていてもよく、
12とR13、R18とR19、R20とR21は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なっていてもよい。)



(一般式(7)及び(8)中、
26〜R32は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
26とR27、R29とR30、R31とR32は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、前記一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なってもよく、
Wは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である。)

(一般式(9)中、
33及びR34は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
33とR34は、一緒になって炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していてもよい。)
本発明8は、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物の合計量が、非水系電解液中、0.001〜10質量%である、本発明6又は7の非水系電解液電池に関する。
本発明によれば、放電容量及び初回の充放電効率が高く、レート特性に優れた高性能の非水系電解液電池を安定して効率的に実現することができる。
実施例のイオンセルの初回充放電結果を示す図である。 実施例のイオンセルについて、60℃に保たれた恒温槽内にて測定された開回路電位の結果を示す図である。 実施例のイオンセルについて、60℃に保たれた恒温槽内にて測定された充放電サイクル試験の結果を示す図である。 実施例のイオンセルについて、コンディショニングの経過を示す図である。 実施例のイオンセルについて、コンディショニングの経過を示す図である。 実施例のイオンセルについて、コンディショニングの経過を示す図である。 実施例のイオンセルについて、コンディショニングの経過を示す図である。 実施例のイオンセルについて、コンディショニングの経過を示す図である。 実施例のイオンセルについて、負極の容量/電位(Li/Li)の関係から、正極の電位(Li/Li)を計算した結果を示す図である。 実施例のイオンセルについて、開回路電位の変化を示す図である。 実施例のイオンセルについて、充放電サイクル試験の結果を示す図である。 実施例のイオンセルについて、充放電サイクル試験の結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
1.非水系電解液電池
第一の態様によれば、本発明の非水系電解液電池は、正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水溶媒が、フッ素化溶媒を含有し、かつフッ素化溶媒の合計量が、非水溶媒中、20〜100体積%の範囲にあることを特徴とする。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
(一般式中、
xは、0<x<1を満たす数であり、
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種の金属元素である。)
第一の態様の非水系電解液電池によって、放電容量および初回の充放電効率が高く、レート特性に優れた高性能の非水系電解液電池が得られる理由は、必ずしも明らかではないが、以下が推察される。
本発明において使用される正極との組み合わせにおいて、非水系電解液電池は高電圧充電で高容量を発現する。充電の電位範囲は、従来の溶媒系(例えば、アルキルカーボネート等)で形成される正極表面の被膜がその有効性を失う範囲に渡る。一方、本発明の第一の態様では、非水系電解液にフッ素化溶媒が使用されており、これによって、正極活物質表面に形成される被膜の耐酸化性が高められ、あるいは活性点がフッ素化される等の機構によって正極活物質表面が副反応に対して不活性化しており、加えて、フッ素化により、溶媒の双極子モーメントが低下すると考えられ、正極活物質層への吸着が起こり難くなり、その結果、副反応が一層、抑制されると考えられる。
なお、本発明において使用される正極との組み合わせにおいて、非水系電解液電池の高容量の発現は、特異な電気化学的活性化過程を経たものであり、その特質上、活性酸素を発生し易い。この活性酸素によって、溶媒が酸化されることを防止することが、本発明において使用される正極を用いた電池の寿命を決定する重要な要素となると考えられる。フッ素化溶媒は、通常の電気化学的な酸化安定性とは異なる、活性酸素に対する耐性の観点から選択されたものである。
第二の態様によれは、本発明の非水系電解液電池は、正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
非水系電解液が、さらに炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする、非水系電解液電池。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
(一般式中、
xは、0<x<1を満たす数であり、
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種金属元素である。)
第二の態様においては、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物が非水系電解液に添加されているところ、これらの化合物が、本発明において使用される正極に含まれる遷移金属上に強く配位し、接触酸化反応が効果的に抑制され、副反応が回避されると考えられる。
2.正極
2−1.正極活物質
本発明の非水系電解液電池に用いる正極活物質は、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることを特徴とする。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
一般式中、xは、0<x<1を満たす数である。
Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、好ましくは、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Zr及びTiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素である。
<結晶構造>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物は、リチウムイオン拡散の点から、結晶構造として、オリビン構造、層状構造を有するものが好ましい。これらの中でも、固体の導電性が良好であり本発明の効果が顕著である点から、層状構造を有するものが好ましい。
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物には、上記のMn、Zr、Ti、Ru、Re、Pt、V、Fe、Co及びNiに加えて、その他の異元素が導入されてもよい。異元素としては、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、Cr、Cu、Zn、Sr、Y、Nb、Rh、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、Mo、W、Os、Ir、Au、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi、N、F、Cl、Br及びIからなる群より一種以上を選択することができる。これらは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいはリチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界等に、単体又は化合物として偏在していてもよい。
本明細書において、層状構造を有するリチウム遷移金属系化合物は、一般的に、LiMeO(ここで、Meは遷移金属である)で表され、リチウム層、遷移金属層及び酸素層が一軸方向に積層したリチウム遷移金属酸化物と同等の構造を有するものである。LiMeOの代表的なものとしては、LiCoO、LiNiOのようなα−NaFeO型に属するものがあり、これらは六方晶系であり、その対称性から空間群

(以下「層状R(−3)m構造」と表記する。)に帰属する。
ただし、層状LiMeOは、層状R(−3)m構造に限るものではない。これ以外にも、いわゆる層状Mnと呼ばれるLiMnOは、斜方晶系で空間群Pm2mの層状化合物であり、いわゆる213相と呼ばれるLiMnOは、Li[Li1/3Mn2/3]Oとも表記でき、単斜晶系の空間群C2/m構造であるが、やはりLi層と[Li1/3Mn2/3]層及び酸素層が積層した層状化合物である。
上記のように層状構造は必ずしもR(−3)m構造に限られるものではないが、R(−3)m構造に帰属し得るものであることが電気化学的な性能面から好ましい。詳細に説明するため、以下層状構造をR(−3)m構造に仮定して説明する。
本発明では、正極活物質として、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いることを特徴とする。
xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
より好ましくは、正極活物質として、層状構造を有する
・LiNiaMn(1-a))の割合が(1−3x)(1−y)、
・Li[Li1/3Mn2/3]O2の割合が3x(1−y)、
・LiCoO2の割合がy
で固溶したと仮定される層状リチウム遷移金属複合酸化物を用いる。
上記リチウム遷移金属系化合物は、式(II)で表される基本構造を有する。
[Li](3a)[(LixNia(1-3x)Mn(3a-1)x+1-a)(1-y)Coy](3b)2 …(II)
(式中、(3a)、(3b)はそれぞれ層状R(−3)m構造中の異なる金属サイトを表す。)
式(II)において、x値は0.13≦x≦0.26であることが好ましい。Mn/Ni原子比が1より大きな範囲にあると、高い充電電位で充電するように設計された非水系電解液電池として使用した場合において、充放電容量が向上する。これはMn/Ni原子比が増加した結果、同時に(3b)サイトに存在するLiの割合も増加するため、充放電に関与できるLiの総量が増したためと考えられる。
y値は0≦y≦0.30であることが好ましい。原材料のコストを考慮した場合、必ずしもLiCoO組成は固溶させる必要はないが、y値を増やすほど電池のレート特性は向上する点において好ましい。
a値は0≦a≦1の範囲で任意の値をとることができるが、0.30≦a≦0.80であることが好ましい。この範囲であれば、LiNiaMn(1-a))の放電容量が良好で、構造安定性も確保することができる。
なお、本発明においては、さらに(II)式の組成に対して、Liをzモルだけ過剰に加え、固溶させてもよい。この場合、リチウム遷移金属系化合物は、式(I)で表される基本構造を有する。
[Li](3a)[Liz/(2+z){(LixNia(1-3x)Mn(3a-1)x+1-a)(1-y)Coy}2/(2+z)](3b)2 …(I)
(式中、0.13≦x≦0.26、0≦y≦0.30、0.30≦a≦0.80、0.02(1−y)(1−3x)≦z≦0.15(1−y)(1−3x)であり、
(3a)、(3b)はそれぞれ層状R(−3)m構造中の異なる金属サイトを表す。)で表されることを特徴とする。
なお、この表記は、LiMeO(Meは遷移金属)と表される層状リチウム遷移金属複合酸化物において、zモル分の過剰Liが遷移金属サイト(3bサイト)に固溶する場合、
[Li](3a)[Liz/(2+z)Me2/(2+z)](3b)2
と表されることと同様に表したものである。
前記(I)式のx、y、zを求めるには、各遷移金属とLiを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で分析して、Li/Ni/Mn/Coの比を求めることで計算される。
構造的視点では、zに係るLiも、xに係るLiも、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、xに係るLiとzに係るLiとの差異は、Niの価数が2価より大きくなるか否か(3価のNiが生成するか否か)ということになる。すなわち、xは、Mn/Ni比(Mnリッチ度合い)と連動した値であるから、このx値のみによってNi価数が変動することはなく、Niは2価のままとなる。一方、zはNi価数を上昇させるLiと捉えることができ、zは、Ni価数(Ni(III)の割合)の指標となる。
<BET比表面積>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物は粉体状であり、電池性能の低下を抑制する点から、BET比表面積(SSA)を、0.3m/g以上とすることができ、好ましくは0.5m/g以上、より好ましくは0.6m/g以上であり、また、副反応の抑制の点から、20m/g以下とすることができ、好ましくは16m/g以下、より好ましくは13m/g以下、さらに好ましくは10m/g以下である。
本明細書において、BET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置によって測定できる。具体的には、シスメックス社製 NOVA1200型全自動粉体比表面積測定装置を用い、吸着ガスに窒素を使用し、連続流動法によるBET5点式法により測定することができる。より詳細には、粉体試料を混合ガスにより150℃の温度で加熱脱気し、次いで液体窒素温度まで冷却してガスを吸着させた後、これを室温まで加温して吸着された窒素ガスを脱着させ、その量を定量することにより、試料の比表面積を算出できる。
<嵩密度>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物粉体は、粉体充填性や電極調製への悪影響を抑制し、単位容積当たりの容量密度を適切な範囲とするため、嵩密度を、0.3g/cc以上とすることができ、好ましくは0.4g/cc以上、より好ましくは0.5g/cc以上、さらに好ましくは0.7g/cc以上である。また、比表面積が低くなり過ぎて、電池性能が低下するといった事態を容易に回避できるため、嵩密度は、3g/cc以下とすることができ、好ましくは2.8g/cc以下、より好ましくは2.6g/cc以下である。ただし、嵩密度がこの上限を上回ることは、粉体充填性や電極密度向上の点からは好ましい。
本明細書において、嵩密度は、リチウム遷移金属系化合物粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップしたときの粉体充填密度(タップ密度)g/ccを求めることにより得ることができる。
<平均一次粒子径>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物粉体は、表面積が大きくなり過ぎて、電池内での望ましくない反応を促進するおそれを取り除く点から、平均一次粒子径(一次粒子の平均粒子径)を、0.01μm以上とすることができ、好ましくは0.03μm以上、より好ましくは0.05μm以上である。また、本発明は、固体内のLi拡散係数が比較的小さな正極を対象としていることから、平均一粒子径が大きくなるとLi拡散抵抗が増して、充放電特性が低下する等の問題を生ずるおそれがある。このおそれを回避する点から、平均一次粒子径を、1.5μm以下とすることができ、好ましくは1.3μm以下、より好ましくは1.2μm以下、さらに好ましくは1.1μm以下である。
本明細書において、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した平均径であり、30,000〜100,000倍のSEM画像を用いて、10〜30個程度の一次粒子の粒子径の平均値として求めることができる。
<二次粒子のメジアン径>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物粉体は、導電材含有量の削減効果を効果的に得るため、二次粒子のメジアン径を、1μm以上とすることができ、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、粒子強度の低下により、混錬時の破砕粒子が発生することを抑制するため、20μm以下とすることができ、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
本明細書において、メジアン径は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって、屈折率1.24を設定し、粒子径基準を体積基準として、d50を測定することにより得ることができる。測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用いることができる。
<製造方法>
本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ニッケル化合物、マンガン化合物及びコバルト化合物等のリチウム遷移金属系化合物に含まれる金属元素の化合物を液体媒体中に、分散又は溶解させて、スラリー又は溶液を得て、これを噴霧乾燥及び/又は熱分解した後、リチウム化合物と混合し、得られた混合物を焼成して製造してもよい。あるいは、ニッケル化合物、マンガン化合物、コバルト化合物等のリチウム遷移金属系化合物に含まれる金属元素の化合物と、リチウム化合物とを分散又は溶解させたスラリー又は溶液を、噴霧乾燥及び/又は噴霧熱分解し、必要に応じて焼成して製造してもよい。
以下、本発明で使用されるリチウム遷移金属系化合物の製造方法を、リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体の製造方法を例にとって、さらに詳細に説明する。
リチウムニッケルマンガンコバルト系複合酸化物粉体を製造するに当たり、スラリーの調製に用いる原料化合物のうち、ニッケル化合物としては、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO、2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、酢酸ニッケル、脂肪酸ニッケル、ニッケルハロゲン化物等が挙げられる。中でも、水に対する溶解性が高い、Ni(NO・6HO、NiSO・6HO、酢酸ニッケルが好ましく、噴霧熱分解において一次粒子径を細かくできる点から、特に好ましいのは、Ni(NO・6HO、酢酸ニッケルである。これらのニッケル化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
マンガン化合物としては、Mn、MnO、Mn等のマンガン酸化物、MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン等のマンガン塩、オキシ水酸化物、塩化マンガン等のハロゲン化物等が挙げられる。中でも、水に対する溶解性が高い、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガンが好ましく、噴霧熱分解において一次粒子径を細かくできる点から、特に好ましいのは、Mn(NO、酢酸マンガンである。これらのマンガン化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
コバルト化合物としては、Co(OH)、CoOOH、CoO、Co、Co、Co(OCOCH・4HO、CoCl、Co(NO・6HO、Co(SO・7HO等が挙げられる。中でも、水に対する溶解性が高い、Co(NO・6HO、Co(OCOCH・4HO、CoCl、Co(SO・7HOが好ましく、噴霧熱分解において一次粒子径を細かくできる点から、特に好ましいのは、Co(NO・6HO、Co(OCOCH・4HOである。これらのコバルト化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
リチウム化合物としては、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHOOLi、LiO、LiSO、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキルリチウム等が挙げられる。これらのリチウム化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
原料化合物の混合方法は、特に限定されず、湿式でも、乾式でもよい。結果的に、混合塩が完全に溶解しているか、あるいは、スラリーであれば、固体が100nm程度以下にまで微細化されて分散していることが望ましい。液体媒体としては、有機溶媒、水のいずれも用いることができるが、水を用いるのが好ましい。原料化合物を溶解した溶液、又は分散したスラリーを、そのまま、乾燥及び/又は熱分解工程に供してもよいし、後工程での排ガス処理の問題を回避するため、共沈法によって、水酸化物、炭酸塩等に変換し、水洗等を行って、リチウム原料と混合した混合溶液を、乾燥及び/又は熱分解工程に供してもよい。微細な原料粒子が分散したスラリーを得る方法としては、均一溶液から共沈によって得る方法、固体粉末を混合−粉砕する方法を選択することができるが、廃液処理の観点から固体粉末を混合−粉砕する方法が好ましい。
乾燥及び/又は熱分解工程における、乾燥方法は特に限定されないが、一次粒子を微細化し、かつ略球状の二次粒子を効率よく形成できるといった点から、噴霧熱分解法又は噴霧乾燥法が好ましい。乾燥及び/又は熱分解工程における、焼成条件は、組成、使用する原料化合物にも依存するが、焼成温度が高すぎると一次粒子が成長しすぎ、逆に低すぎると嵩密度が小さく、また比表面積が大きくなりすぎる傾向がある。このため、焼成温度としては、800℃以上とすることができ、好ましくは900℃以上、より好ましくは950℃以上であり、また、1100℃以下とすることができ、好ましくは1075℃以下、より好ましくは1050℃以下である。
焼成時に、焼成時の粒成長や焼結の制御のために、Mo、W、Nb、Ta、Reといった元素から選ばれる元素を含有する化合物を添加することもできる。このような添加剤としては、MoO、MoO、MoO、MoO、Mo、Mo、LiMoO、WO、WO、WO、WO、W、W、W1849、W2058、W2470,W2573、W40118、LiWO、NbO、NbO、NbO、Nb、NbO、NbO、LiNbO、TaO、TaO、Ta、LiTaO、ReO、ReO、Re等が挙げられ、好ましくはMoO、LiMoO、WO、LiWO、LiNbO、Ta、LiTaO、ReOが挙げられ、特に好ましくはWO、LiWO、ReOが挙げられる。これらの添加量の範囲としては、主成分原料を構成する遷移金属元素の合計モル量に対して、0.01モル%以上とすることができ、好ましくは0.03モル%以上、より好ましくは0.04モル%以上、さらに好ましくは0.05モル%以上であり、また、2モル%未満とすることができ、好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1.3モル%以下である。
<表面被覆>
正極活物質であるリチウム遷移金属系化合物粉体の表面を被覆処理に付すことができる。表面は、正極活物質以外の無機酸化物の微粒子で覆われていてもよく、無機酸化物によって薄膜状に覆われていることもできる。無機酸化物としては、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素、チタン、亜鉛、スズ、ランタン、イットリウム等の酸化物、又はこれらの複合酸化物を用いることができる。中でも、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素の酸化物、又はこれらの複合酸化物を用いることが好ましく、特にホウ素、アルミニウムの酸化物、又はこれらの複合酸化物を用いることが好ましく、容量の低下が少なく、寿命の改善効果が大きいためホウ素の酸化物、又はこれらの複合酸化物を用いることより好ましい。リチウムを含有する複合酸化物も好適に用いることができる。例えば、ホウ酸リチウムが挙げられる。
レート特性を損なわずに寿命を改善する点からは、上記の無機酸化物の数10nmまでの微細粒子によって、活物質表面が均一に被覆されていることが好ましい。微細粒子の平均粒子径は、調製の容易性の点から、0.5nm以上とすることができ、好ましくは2nm以上であり、また、十分な寿命改善効果を得る点から、50nm以下とすることができ、好ましくは10nm以下である。被覆量は、十分な寿命改善効果を得る点から、活物質に対して、0.1質量%以上とすることができ、好ましくは0.5質量%以上であり、また、容量低下を抑制する点から、20質量%以下とすることができ、好ましくは10質量%以下である。被覆方法は、微細粒子を均一に被覆できる方法であれば、特に限定されないが、ゾル−ゲル法によって、酸化物の微細粒子のゾル溶液を調製し、活物質を浸漬するか、又は活物質にスプレー塗布し、活物質表面上で、微細粒子形状を保ったまま焼成する方法等が挙げられる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した平均径である。
2−2.集電体
集電体としては、例えば、金属円柱、金属コイル、金属板、金属箔膜、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等を用いることができる。中でも、金属箔膜が、現在工業化製品に使用されているために好ましい。なお、金属箔膜は、適宣、メッシュ状にして用いてもよい。
金属箔膜の厚さは、特に限定されないが、集電体として必要な強度の点から、1μm以上とすることができ、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また、100μm以下とすることができ、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
集電体に用いられる金属としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。中でも、高電位での電気化学的安定性、経済性の点から、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金がさらに好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
2−3.物性
<充填密度>
正極の充填密度は、特に限定されないが、高容量の電池を得る点から、0.1g/cm以上とすることができ、好ましくは0.5g/cm以上であり、また、正極中の気孔量を適切な範囲とし、好ましい電池特性を得る点から、5.0g/cm以下とすることができ、好ましくは4.0g/cm以下である。正極の充填密度は、集電体を除く正極重量を、正極面積と正極厚みで除して求めた値を用いる。
<空隙率>
正極の空隙率は、特に限定されないが、良好な電解液の浸透性の点から、10%以上とすることができ、好ましくは20%以上であり、良好な正極強度を確保する点から、50%以下とすることができ、好ましくは40%以下である。正極の空隙率は、正極の水銀ポロシメータによる細孔分布測定によって得られる全細孔容積を、集電体を除いた正極活物質層の見掛け体積で割った値の百分率を用いる。
2−4.導電材
正極は、導電材を含んでもよい。導電材は、用いる正極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば、特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、銅等の金属粉末類等が挙げられる。中でも、ファーネスブラック、アセチレンブラック、VGCFが好ましく、ファーネスブラック、アセチレンブラックがより好ましい。本発明において、正極活物質であるリチウム遷移金属系化合物粉体は、微細な一次粒子であることが好ましく、その場合、表面積は大きくなる傾向がある。このような活物質を、比較的少量の導電材を用いて、導電パスを形成させる点からは、導電材も高表面積であることが好ましく、具体的には、表面積が100m/g以上であるカーボンブラックが好ましい。これらの導電材は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
2−5.結着材
正極は、結着材を含んでもよい。結着材は、後述する液体溶媒に対して安定な高分子が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、又はプロピレン・α−オレフィン(炭素原子数2〜12)共重合体等の軟質樹脂状高分子、少なくともポリアクリロニトリルを含む共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のイオン伝導性を有する高分子組成物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物や、ポリエーテル化合物の架橋体高分子や、ポリエピクロロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、又はポリアクリロニトリル等の高分子化合物に、リチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩を複合化させた高分子、又はこれにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高い誘電率又はイオン−双極子相互作用力を有する有機化合物を配合した高分子を用いることができる。
具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、又はセルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース)等の樹脂系高分子、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、又はエチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、又はポリエチレンオキシドが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、又はポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。これらは、現在工業的に一般に使用されており、扱い易いため好適である。
2−6.構造
正極は、正極活物質として上記リチウム遷移金属系化合物、必要に応じて導電材及び結着材を液体媒体中に分散させスラリーとして、これを、集電体基板上に薄く塗布し、乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により製造することができる。
スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を、水に対して、30質量%以下程度まで添加することもできる。
有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
上記スラリーを、これを正極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより正極活物質層を形成することができる。正極活物質は、スラリー中、凝集防止のため点から、70質量%以下とすることができ、好ましくは55質量%以下であり、また、スラリーの保存中に正極活物質が沈降を防止する点から、30質量%以上、好ましくは40質量%以上である。
結着材は、スラリー中、得られる正極の内部抵抗を小さくする点から、30質量%以下とすることができ、好ましくは10質量%以下であり、また、正極活物質層の結着性の点から、0.1質量%以上とすることができ、好ましくは0.5重量%以上である。
乾燥工程、プレス工程については、特に限定されず、公知の手法を使用することができる。
上記のようにして形成される正極活物質層は、正極活物質、必要に応じて導電材及び結着材で構成される。正極活物質は、正極のエネルギー密度の点から、正極活物質層中、84質量%以上とすることができ、好ましくは85質量%以上であり、また、強度の点から、99質量%以下とすることができ、好ましくは97質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは94質量%以下である。
必要に応じて使用される導電材は、正極活物質層中、活物質重量当りの容量/出力保持の点から、0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、また、内部抵抗の増大防止の点から、15質量%以下とすることができ、好ましくは13質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
必要に応じて使用される結着材は、正極活物質層中、正極活物質を保持して、正極の機械的強度を確保し、良好なサイクル特性等の電池性能を得る点から、0.1質量%以上とすることができ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、電池容量や導電性の低下を回避する点から、80質量%以下とすることができ、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
3.非水系電解液
3−1.電解質塩
<リチウム塩>
電解質塩としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩は、特に限定されず、この用途において公知のものを用いることができる。具体的には、以下が挙げられる。
例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;
LiPOF、LiPO等のフルオロリン酸リチウム類;
LiWOF等のタングステン酸リチウム類;
HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;
FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類;
等が挙げられる。
中でも、LiPF、LiBF、LiSbF、LiTaF、LiPO、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
リチウム塩は、単独で用いても、二種以上を併用してもよい。非水系電解液中のリチウム塩の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、さらに好ましくは2.0mol/L以下である。この範囲であれば、低温特性、サイクル特性、高温特性等の効果を向上させることができる。また、リチウムの総モル濃度が低すぎて、電解液の電気伝導率が不十分となることを容易に回避でき、濃度が高すぎて、粘度上昇のため電気伝導度が低下し、電池性能が低下することも容易に回避することができる。
3−2.非水溶媒
本発明の非水系電解液は、非水溶媒を含む。第一の態様では、非水溶媒が20〜100体積%の非水系フッ素化溶媒を含むことを特徴とする。
フッ素化溶媒としては、フッ素化カーボネート、フッ素化カルボン酸エステル、フッ素化エーテル、フッ素化スルホン、フッ素化リン酸エステルが挙げられる。
<フッ素化カーボネート>
フッ素化カーボネートは、水素原子がフッ素原子にて置換されているカーボネート化合物をいい、環状又は鎖状のカーボネートの誘導体であることが好ましく、また、飽和カーボネートの誘導体であることが好ましい。
(フッ素化飽和環状カーボネート)
フッ素化飽和環状カーボネートは、特に限定されないが、例えば、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する飽和環状カーボネートの誘導体が挙げられ、具体的にはエチレンカーボネート誘導体が挙げられる。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
(フッ素化飽和鎖状カーボネート)
フッ素化飽和鎖状カーボネートも好適に用いることができる。フッ素化飽和鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1個以上であれば特に限定されないが、通常6個以下であることが好ましい。フッ素化飽和鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化カーボネートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
<フッ素化カルボン酸エステル>
フッ素化カルボン酸エステルは、水素原子がフッ素原子にて置換されているカルボン酸エステル化合物をいい、環状のフッ素化カルボン酸エステルの誘導体であることが好ましく、また、フッ素化飽和カルボン酸エステルの誘導体であることが好ましい。なお、フッ素化飽和カーボネートは、フッ素化飽和カルボン酸エステルに含まれないものとする。
(フッ素化飽和環状カルボン酸エステル)
フッ素化飽和環状カルボン酸エステルは、特に限定されないが、例えば、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する飽和環状カーボネートの誘導体の水素原子がフッ素原子に置き換えられたものが挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
具体的には、α−フルオロ−γ−ブチロラクトン、β−フルオロ−γ−ブチロラクトン、γ−フルオロ−γ−ブチロラクトン、α、α−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、α、β−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、α、γ−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、β、β−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、β、γ−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、γ、γ−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、α−フルオロ−δ−バレロラクトン、β−フルオロ−δ−バレロラクトン、γ−フルオロ−δ−バレロラクトン、δ−フルオロ−δ−バレロラクトン、α、α−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、α、β−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、α、γ−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、α、δ−ジフルオロ−γ−ブチロラクトン、β、β−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、β、γ−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、β、δ−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、γ、γ−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、γ、δ−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、δ、δ−ジフルオロ−δ−バレロラクトン、2−フルオロ−γ−バレロラクトン、3−フルオロ−γ−バレロラクトン、4−フルオロ−γ−バレロラクトン等をあげることができる。
中でも、過度のフッ素化による不安定化を回避し、かつ異性体との分離も容易で調製が容易である点から、α−フルオロ−γ−ブチロラクトン、β−フルオロ−γ−ブチロラクトン、γ−フルオロ−γ−ブチロラクトン、α−フルオロ−δ−バレロラクトン、β−フルオロ−δ−バレロラクトン、γ−フルオロ−δ−バレロラクトン、δ−フルオロ−δ−バレロラクトン、2−フルオロ−γ−バレロラクトン、3−フルオロ−γ−バレロラクトン、4−フルオロ−γ−バレロラクトン等のモノフルオロラクトンがより好ましく、さらに好ましくはα−フルオロ−γ−ブチロラクトン、β−フルオロ−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらは、二種類以上が混合されていてもよく、分離困難な異性体を分離せずに用いてもよい。また、リチウム二次電池の電解液に添加することができる公知の化合物と混合して用いてもよい。
<フッ素化エーテル>
フッ素化エーテルとしては、炭素原子数3〜10であり、水素原子がフッ素原子にて置換されているフッ素化エーテルが好ましい。
炭素原子数3〜10のフッ素化鎖状エーテルとしては、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。
中でも、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテルが、製造し易く、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
<フッ素化スルホン>
フッ素化スルホンとしては、炭素原子数3〜6の環状フッ素化スルホン、及び炭素原子数2〜6の鎖状フッ素化スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状フッ素化スルホンとしては、モノスルホン化合物であるフッ素化トリメチレンスルホン類、フッ素化テトラメチレンスルホン類、フッ素化ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるフッ素化トリメチレンジスルホン類、フッ素化テトラメチレンジスルホン類、フッ素化ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、フッ素化テトラメチレンスルホン類、フッ素化テトラメチレンジスルホン類、フッ素化ヘキサメチレンスルホン類、フッ素化ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、フッ素化テトラメチレンスルホン類(フッ素化スルホラン類)が特に好ましい。
フッ素化スルホラン類としては、フッ素化スルホラン及び/又はフッ素化スルホラン誘導体(以下、フッ素化スルホランも含めて「フッ素化スルホラン類」と略記する場合がある)が好ましい。フッ素化スルホラン誘導体としては、フッ素化スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1個以上がフッ素原子やフッ素化アルキル基(例えば、フッ素原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基)で置換されたものが好ましい。
中でも、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く、入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
中でも、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
<フッ素化リン酸エステル>
フッ素化リン酸エステルとしては、炭素原子数3〜6のリン酸エステルであって、水素原子がフッ素原子に置換されたものを挙げることができる。フッ素化リン酸エステルは比較的耐酸化性が高いために、上記正極活物質を用いた電池での高電圧サイクル特性に優れ、かつ電解液に自己消火性を与える点で好ましい。
フッ素化リン酸エステルとしては、リン酸トリス(2−フルオロエチル)、リン酸トリス(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジメチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジエチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸エチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)等を挙げることができる。
中でも、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジメチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸メチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸ジエチル(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸エチルビス(2,2,2−トリフルオロエチル)等が安価に製造できる点で特に好ましい。
本発明の非水系電解液電池においては、上記フッ素化溶媒以外にも、非水溶媒として、カーボネート化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、スルホン化合物、リン酸エステル化合物等を使用することが可能である。
<カーボネート化合物>
カーボネート化合物としては、環状又は鎖状のカーボネートであることが好ましく、また、飽和カーボネートであることが好ましい。
<飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられる。
具体的には、炭素原子数2〜4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
飽和環状カーボネートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
<飽和鎖状カーボネート>
飽和鎖状カーボネートとしては、炭素原子数3〜7のものが好ましい。
具体的には、炭素原子数3〜7の飽和鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
飽和鎖状カーボネートは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
<環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。
具体的には、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。中でも、γ−ブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
<鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3〜7のものが挙げられる。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
<エーテル化合物>
エーテル化合物としては、炭素原子数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素原子数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素原子数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
炭素原子数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
<スルホン化合物>
スルホン化合物としては、炭素原子数3〜6の環状スルホン、及び炭素原子数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン等が挙げられる。
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
<リン酸エステル化合物>
リン酸エステル化合物としては、炭素原子数3〜6のリン酸エステルが好ましい。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等を挙げることができる。
これらは比較的耐酸化性が高いために該正極活物質を用いた電池での高電圧サイクル特性に優れ、かつ電解液に自己消火性を与える点で好ましいが、この中でも、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が安価に製造できる点で特に好ましい。
本発明の第一の態様は、非水系電解液における、非水溶媒がフッ素化溶媒を含有し、フッ素化溶媒の合計量が非水溶媒中、20〜100体積%である、非水系電解液電池に関する。フッ素化溶媒としては、上記の非水溶媒中の水素原子がフッ素原子で置換されている溶媒を使用することができる。フッ素化溶媒の合計量は、好ましくは、30〜100体積%であり、より好ましくは、50〜100体積%である。フッ素化溶媒と他の非水溶媒とを組み合わせる場合、他の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、スルホラン、エチルメチルスルホン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が好ましい。
フッ素化溶媒としては、フッ素化カーボネート、フッ素化カルボン酸エステル、フッ素化エーテル、フッ素化スルホン及びフッ素化リン酸エステルが挙げられる、中でも、フッ素化カーボネートが好ましい。
フッ素化カーボネートとしては、フッ素化飽和環状カーボネート又はフッ素化飽和鎖状カーボネートが好ましく、上記の例示及び好ましいものを使用することができる。フッ素化カルボン酸エステル、フッ素化エーテル、フッ素化スルホン及びフッ素化リン酸エステルとしては、上記の例示及び好ましいものを使用することができる。
3−3.助剤
本発明の第二の態様は、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する非水系電解液を有する、非水系電解液電池に関する。第一の態様の非水系電解液電池の非水系電解液にも、これらの化合物を含有させることが、非水電池内での副反応を抑制する観点から、好ましい。
炭素−窒素不飽和結合としては、例えばイソシアナト基、シアナト基、ニトリル基等が挙げられ、炭素−炭素不飽和結合としては、例えば炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等が挙げられる。なお、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基には、環構造中に含まれる炭素−炭素不飽和結合は含まれない。
下記一般式(1)〜(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を、非水系電解液中に配合することが寿命特性の点から好ましい。中でも、下記一般式(2)で表される化合物を使用することが好ましい。

(一般式(1)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたp価の有機基であり、
pは、1以上の整数である。)

(一般式(2)中、
は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたq価の有機基であり、
qは、1以上の整数である。)


(一般式(3)及び(4)中、
XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであり、互いに同一であっても異っていてもよく、
Yは、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
n及びmは0以上の整数であり、
ここで、隣接する環内の炭素原子に結合したR、R、R及びRは、互いに結合していてもよく、
Wは、前記Rと同義である。)


(一般式(5)及び(6)中、
〜R24は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異っていてもよく、
12とR13、R18とR19、R20とR21は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なっていてもよい。)



(一般式(7)及び(8)中、
26〜R32は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
26とR27、R29とR30、R31とR32は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
Vは、前記一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なってもよく、
Wは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である。)

(一般式(9)中、
33及びR34は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
33とR34は、一緒になって炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していてもよい。)
<一般式(1)で表される化合物>
一般式(1)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、55以上であり、より好ましくは70以上、さらに好ましくは100以上であり、また、300以下であり、より好ましくは200以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(1)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。一般式(1)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
一般式(1)で表される化合物は、特にその種類は限定されないが、pが1〜4であることが好ましく、より好ましくは2〜4である。Rとしては、炭素原子数1〜10のアルカン残基、炭素原子数2〜10のアルケン残基、炭素原子数4〜8のシクロアルカン残基、炭素原子数6〜10の芳香族残基、及びこれらの基の組み合わせであることが好ましい。また、これらの基において、水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子に置換されていることも好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物;
等が挙げられる。
中でも、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、アリルイソシアネート、プロピニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが保存特性向上の点から好ましい。
<一般式(2)で表される化合物>
一般式(2)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、40以上とすることができ、より好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上であり、また、200以下とすることができる。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(2)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。一般式(2)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
一般式(2)で表される化合物は、特にその種類は限定されないが、qが1〜4であることが好ましく、より好ましくは2〜4である。Rとしては、炭素原子数2〜10のアルカン残基、炭素原子数2〜10のアルケン残基、炭素原子数4〜8のシクロアルカン残基、炭素原子数6〜10の芳香族残基、及びこれらの基の組み合わせであることが好ましい。また、これらの基の水素原子がフッ素原子等のハロゲン原子に置換されていることも好ましい。これらの基は、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で中断されていてもよい。
さらに、Rとしてスルホニル(S(=O))部分を有する含硫黄有機基、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフィン酸、亜ホスフィン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸、リン酸、亜リン酸部分を有する含リン有機基も使用することができる。
一般式(2)で表される化合物としては、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3,3−ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;
1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)アミン等のシアノ基を3つ有する化合物;
メタンスルホニルシアニド、エタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニド、ブタンスルホニルシアニド、ペンタンスルホニルシアニド、ヘキサンスルホニルシアニド、ヘプタンスルホニルシアニド、シアノメチルスルホン酸メチル、シアノメチルスルホン酸エチル、シアノメチルスルホン酸プロピル、シアノメチルスルホン酸ブチル、シアノメチルスルホン酸イソプロピル、シアノメチルスルホン酸ペンチル、シアノメチルスルホン酸ヘキシル等の含硫黄化合物;
シアノジメチルホスフィン、シアノジメチルホスフィンオキシド、シアノメチルホスフィン酸メチル、シアノメチル亜ホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸シアニド、ジメチル亜ホスフィン酸シアニド、シアノホスホン酸ジメチル、シアノ亜ホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸シアノメチル、メチル亜ホスホン酸シアノメチル、リン酸シアノジメチル、亜リン酸シアノジメチル等の含リン化合物;
等が挙げられる。
中でも、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリルが保存特性向上の点から好ましく、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物がより好ましい。
<一般式(3)で表される化合物>
一般式(3)中、XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであれば、特に限定されないが、好ましくは、CR、O、S、N−Rである。
Yも、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であれば、特に限定されないが、好ましくは、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''である。
Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、置換基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、Li原子、置換基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、置換基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、置換基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、水素原子であるか、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基における、官能基は、特に限定されないが、好ましくは、ハロゲン原子、カルボン酸、炭酸、スルホン酸、リン酸、亜リン酸等に由来する基が挙げられ、より好ましくはハロゲン原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素残基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1、2−トリフルオロエチル基、1,2、2−トリフルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基等の、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素原子数1〜12のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基等が挙げられる。
官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素残基としては、好ましくは、エテニル基、1−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1−メチルエテニル基、2−プロペニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基、エチニル基、2−フルオロエチニル基、2−プロピニル基、3−フルオロ−2プロピニル基等の、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素原子数1〜12のアルケニル基が挙げられる。
官能基を有してもよい芳香族炭化水素残基としては、好ましくは、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2、4−ジフルオロフェニル基、2、6−ジフルオロフェニル基、3、5−ジフルオロフェニル基、2、4、6−トリフルオロフェニル基等の、フッ素原子で置換されていてもよい、フェニル基等の炭素原子数6〜12のアリール基が挙げられる。
官能基を有してもよい芳香族ヘテロ環の残基としては、好ましくは、2−フラニル基、3−フラニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、1−メチル−2−ピロリル基、1−メチル−3−ピロリル基等が挙げられる。
官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、中でも、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基、エテニル基、エチニル基、フェニル基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、エチニル基である。
n及びmは、0以上の整数であれば、特に限定されないが、好ましくは0又は1であり、より好ましくはn=m=1であるか、又はn=1、m=0である。
Wは、前記Rと同義であれば、特に限定されないが、好ましくは、水素原子である。
一般式(3)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上であり、また、好ましくは500以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
一般式(3)で表される化合物としては、好ましくは、
等が、挙げられる。
一般式(3')で表される化合物が、工業的な製造の容易さの観点から、さらに好ましい。
(一般式(3’)中、
Yは、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異っていてもよい。)
具体的には、
が挙げられる。
一般式(3)で表される化合物は、一種を単独で用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、一般式(3)で表される化合物の配合量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
<一般式(4)で表される化合物>
一般式(4)中、XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであれば、特に限定されないが、好ましくは、CR、O、S、N−Rである。
Yも、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であれば、特に限定されないが、好ましくは、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''である。
Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、水素原子、フッ素原子、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素基、官能基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、Li原子、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは、水素原子であるか、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であれば、特に限定されないが、好ましくは水素、官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素基、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基である。
官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素、官能基を有してもよい芳香族炭化水素・芳香族ヘテロ環の残基における、官能基は、特に限定されないが、好ましくは、ハロゲン、カルボン酸、炭酸、スルホン酸、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、より好ましくはハロゲンであり、さらに好ましくはフッ素である。
官能基を有してもよい飽和脂肪族炭化水素残基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、2−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1、2−トリフルオロエチル基、1,2、2−トリフルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基等のフッ素原子で置換されていてもよい、炭素原子数1〜12のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜10のシクロアルキル基等が挙げられる。
官能基を有してもよい不飽和脂肪族炭化水素残基としては、好ましくは、エテニル基、1−フルオロエテニル基、2−フルオロエテニル基、1−メチルエテニル基、2−プロペニル基、2−フルオロ−2−プロペニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基、エチニル基、2−フルオロエチニル基、2−プロピニル基、3−フルオロ−2プロピニル基等のフッ素原子で置換されていてもよい、炭素原子数1〜12のアルケニル基が挙げられる。
官能基を有してもよい芳香族炭化水素残基としては、好ましくは、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2、4−ジフルオロフェニル基、2、6−ジフルオロフェニル基、3、5−ジフルオロフェニル基、2、4、6−トリフルオロフェニル基等のフッ素原子で置換されていてもよい、フェニル基等の炭素原子数6〜12のアリール基が挙げられる。
官能基を有してもよい芳香族ヘテロ環の残基としては、好ましくは、2−フラニル基、3−フラニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、1−メチル−2−ピロリル基、1−メチル−3−ピロリル基等が挙げられる。
官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、中でも、メチル基、エチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2、2、2−トリフルオロエチル基、エテニル基、エチニル基、フェニル基が好ましく、より好ましくは、メチル基、エチル基、エチニル基である。
n及びmは、0以上の整数であれば、特に限定されないが、好ましくは0又は1であり、より好ましくはn=m=1であるか、又はn=1、m=0である。
一般式(4)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上であり、また、好ましくは500以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
一般式(4)で表される化合物としては、好ましくは、
等が、挙げられる。
一般式(4')で表される化合物が、工業的な製造の容易さの観点から、さらに好ましい。
(一般式(4’)中、
Yは、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R、P(=O)−OR'であり、
Rは、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、R'は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異っていてもよい。)
具体的には、
が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物は、一種を単独で用いても、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
<一般式(5)及び(6)で表される化合物>
一般式(5)及び(6)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、100以上であり、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上であり、また、300以下であり、より好ましくは250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(5)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。一般式(5)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
一般式(5)及び(6)で表される化合物は、特にその種類は限定されないが、r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4であり、好ましくは1〜2であり、R〜R24としては、水素原子、炭素原子数1〜8のアルカン残基、炭素原子数2〜8のアルケン残基、炭素原子数3〜8のシクロアルカン残基、炭素原子数6〜10の芳香族残基及びこれらの基の組み合わせが好ましい。
一般式(5)及び(6)で表される化合物としては、例えば、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルメチルオキサレート、アリルエチルオキサレート、ジアリルオキサレート、アリルメチルサルファイト、アリルエチルサルファイト、ジアリルサルファイト、メタンスルホン酸アリル、エタンスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、硫酸アリルメチル、硫酸アリルエチル、硫酸ジアリル等が挙げられる。
中でも、アリルメチルカーボネート、ジアリルカーボネート、アリルメチルオキサレート、ジアリルオキサレート、メタンスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸アリル、硫酸アリルメチル、硫酸ジアリルが保存特性向上の点から好ましい。
<一般式(7)及び(8)で表される化合物>
一般式(7)及び(8)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、100以上であり、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上であり、また、300以下であり、より好ましくは250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(7)及び(8)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。一般式(7)及び(8)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
一般式(7)及び(8)で表される化合物は、特にその種類は限定されないが、r、s及びtが、それぞれ独立して、0〜4であり、好ましくは1〜2であり、R26〜R32としては、水素原子、炭素原子数1〜12のアルカン残基、炭素原子数2〜12のアルケン残基、炭素原子数3〜10のシクロアルカン残基、炭素原子数6〜12の芳香族残基及びこれらの基の組み合わせが挙げられる。
一般式(7)及び(8)で表される化合物としては、例えば、2−プロピニルメチルカーボネート、1−メチル−2−プロピニルメチルカーボネート、1,1−ジメチル−2−プロピニルメチルカーボネート、2−プロピニルエチルカーボネート、1−メチル−2−プロピニルエチルカーボネート、1,1−ジメチル−2−プロピニルエチルカーボネート、アリル−2−プロピニルカーボネート、2−ブチニルメチルカーボネート、ギ酸−2−プロピニル、2−プロピニルメチルオキサレート、2−プロピニルエチルオキサレート、アリル−2−プロピニルオキサレート、2−プロピニルメチルサルファイト、2−プロピニルエチルサルファイト、アリル−2−プロピニルサルファイト、メタンスルホン酸−2−プロピニル、ビニルスルホン酸−2−プロピニル、アリルスルホン酸−2−プロピニル、プロピニルスルホン酸−2−プロピニル、硫酸メチル−2−プロピニル、硫酸エチル−2−プロピニル、硫酸アリル−2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)カーボネート、ジ(2−ブチニル)カーボネート、ジ(2−プロピニル)オキサレート、ジ(2−ブチニル)オキサレート、ジ(2−プロピニル)サルファイト、ジ(2−ブチニル)サルファイト、硫酸−ジ(2−プロピニル)、硫酸−ジ(2−ブチニル)等が挙げられる。
中でも、2−プロピニルメチルカーボネート、2−プロピニルエチルカーボネート、アリル−2−プロピニルカーボネート、ギ酸−2−プロピニル、2−プロピニルメチルオキサレート、2−プロピニルエチルオキサレート、アリル−2−プロピニルオキサレート、メタンスルホン酸−2−プロピニル、ビニルスルホン酸−2−プロピニル、アリルスルホン酸−2−プロピニル、プロピニルスルホン酸−2−プロピニル、硫酸メチル−2−プロピニル、硫酸エチル−2−プロピニル、硫酸アリル−2−プロピニル、ジ(2−プロピニル)カーボネート、ジ(2−プロピニル)オキサレート、硫酸−ジ(2−プロピニル)が保存特性向上の点から好ましい。
一般式(7)及び(8)で表される化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
<一般式(9)で表される化合物>
一般式(9)で表される化合物の分子量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、100以上であり、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上であり、また、300以下であり、より好ましくは250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する一般式(9)で表される化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。一般式(9)で表される化合物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
一般式(9)で表される化合物は、特にその種類は限定されないが、R33〜R34としては、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であるが、R33とR34のうち、少なくともどちらか一方は炭素−炭素不飽和結合を含んでいることも好ましい。また、R33とR34が、一緒になって、炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していることも好ましい。
一般式(9)で表される化合物としては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ビニレン等が挙げられる。
中でも、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート、硫酸エチレン、硫酸プロピレン、硫酸ビニレンが保存特性向上の点から好ましい。
一般式(9)で表される化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
上記の炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物は、寿命と抵抗を両立させる観点から、非水系電解液中、0.001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜8質量%であり、さらに好ましくは0.1〜5質量%である。
炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される化合物は、それぞれの化合物から任意に1種類以上組み合わせてもよく、また炭素−窒素不飽和結合を有する化合物と炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物とスルホン酸エステル構造を有する化合物、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物とスルホン酸エステル構造を有する化合物、あるいは炭素−窒素不飽和結合を有する化合物と炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物とスルホン酸エステル構造を有する化合物全てから、任意に1種類以上ずつを選択して組み合わせて使用しても良い。
3−4.その他の助剤
本発明で使用される非水系電解液には、目的に応じて助剤を用いてもよい。助剤としては、以下に示される過充電防止剤、その他の助剤等が挙げられる。
<過充電防止剤>
本発明で使用される非水系電解液において、非水系電解液電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。二種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも一種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも一種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
過充電防止剤の配合量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤は、非水系溶媒100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲でれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。過充電防止剤は、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
<その他の化合物>
本発明で使用される非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。これらは一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
その他の化合物の配合量は、特に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系溶媒100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、5質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。その他の助剤の配合量は、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
以上に記載してきた非水系電解液は、本発明に記載の非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調整し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本発明で使用される非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明で使用される非水系電解液と同じ組成を得る場合、さらには、本発明で使用される非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本発明で使用される非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
4.負極
本発明の非水系電解液電池を構成する負極は、特に限定されない。
負極は、集電体基板上に、負極活物質と、結着及び増粘効果を有する有機物(結着剤)を含有する活物質層を形成してなり、通常、負極活物質と結着剤を、水又は有機溶媒中に分散させたスラリー状のものを、集電体基板上に薄く塗布・乾燥する工程、続いて所定の厚み・密度まで圧密するプレス工程により形成される。
<負極活物質>
負極活物質には、特に限定されず、リチウムを吸蔵・放出できる機能を有する材料を使用することができる。例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料;二酸化マンガン等の遷移金属酸化物材料;フッ化黒鉛等の炭素質材料等を使用することができる。具体的には、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMn及びこれらの非定比化合物、MnO、TiS、FeS、Nb、Mo、CoS、V、P、CrO、V、TeO、GeO、LiFePO、LiMnPO、LiNi0.5Mn1.5等を用いることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<導電材>
負極活物質層には、負極用導電材を用いることができる。負極用導電材は、用いる負極活物質の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば、特に限定されない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛等)、人造黒鉛等のグラファイト類;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;フッ化カーボン類;アルミニウム等の金属粉末類;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の有機導電性材料;等を単独又はこれらの混合物として含ませることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラック等が特に好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電材の添加量は、特に限定されないが、負極活物質に対して、1〜50質量%が好ましく、特に1〜30質量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15質量%が特に好ましい。
<結着材>
負極活物質層の形成に用いられる結着材としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであってもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体又は前記材料の(Na)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。これらの材料の中でより好ましい材料はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
<その他の添加剤>
負極活物質層には、上記の導電材の他、さらにフィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤及びその他の各種添加剤を配合することができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素等の繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、活物質層中の含有量として0〜30質量%が好ましい。
<溶媒>
負極活物質スラリーの調製には、水系溶媒又は有機溶媒が分散媒として用いられる。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の添加剤を水に対して、30質量%以下程度まで添加することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。
負極活物質、結着材である結着及び増粘効果を有する有機物及び必要に応じて配合される負極用導電材、その他フィラー等をこれらの溶媒に混合して負極活物質スラリーを調製し、これを負極用集電体基板に所定の厚みとなるように塗布することにより負極活物質層が形成される。
なお、この負極活物質スラリー中の負極活物質の濃度の上限は通常70質量%以下、好ましくは55質量%以下であり、下限は通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上である。負極活物質の濃度がこの上限を超えると負極活物質スラリー中の負極活物質が凝集し易くなり、下限を下回ると負極活物質スラリーの保存中に負極活物質が沈降し易くなる。
また、負極活物質スラリー中の結着剤の濃度の上限は通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下であり、下限は通常0.1質量%以上、好ましくは0.5重量以上である。結着剤の濃度がこの上限を超えると得られる負極の内部抵抗が大きくなり、下限を下回ると負極活物質層の結着性に劣るものとなる場合もある。
<集電体>
負極用集電体としては、例えば、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成する弁金属又はその合金を用いるのが好ましい。弁金属としては、周期表4族、5族、13族に属する金属及びこれらの合金を例示することができる。具体的には、Al、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta及びこれらの金属を含む合金等を例示することができ、Al、Ti、Ta及びこれらの金属を含む合金を好ましく使用することができる。特にAl及びその合金は軽量であるためエネルギー密度が高くて望ましい。正極用集電体の厚みは特に限定されないが通常1〜50μm程度である。
5.その他の構成部材
非水系電解液電池には、電解質、負極、及び正極の他に、さらに必要に応じて、外缶、セパレータ、ガスケット、封口板、セルケース等を用いることもできる。
セパレータの材質や形状は特に限定されない。セパレータは正極と負極が物理的に接触しないように分離するものであり、イオン透過性が高く、電気抵抗が低いものであるのが好ましい。セパレータは電解液に対して安定で保液性が優れた材料の中から選択するのが好ましい。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布が挙げられる。
6.非水系電解液電池の形状
本発明の非水系電解液電池の形状は、特に限定されず、例えば、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等にすることができる。
7.非水系電解液電池の製造方法
正極、負極及び非水系電解液を有する非水系電解液電池を製造する方法は、特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。本発明の非水系電解液電池の製造方法の一例を挙げると、外缶上に負極を乗せ、その上に電解液とセパレータを設け、さらに負極と対向するように正極を乗せて、ガスケット、封口板と共にかしめて電池を組み立てる方法が挙げられる。
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[物性の測定方法]
実施例及び比較例において製造されたリチウム遷移金属系化合物粉体の物性等は、各々次のようにして測定した。
<結晶相の確認>
(粉末X線回折測定装置仕様)
装置名:オランダ PANalytical社製 X’Pert Pro MPD
光学系:集中法光学系
(光学系仕様)
入射側:封入式X線管球(CuKα)
Soller Slit(0.04rad)
Divergence Slit (Variable Slit)
試料台:回転試料台(Spinner)
受光側:半導体アレイ検出器(X’Celerator)
Ni−filter
Soller Slit(0.04rad)
ゴニオ半径:243mm
(測定条件)
X線出力(CuKα):40kV、30mA
走査軸:θ/2θ
走査範囲(2θ):10.0−155.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.016°
計数時間:99.7sec
<BET比表面積測定条件>
BET比表面積(SSA)は、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)社製、NOVA1200)を用い、正極材(リチウム遷移金属系化合物)粉末に対して減圧下(真空度5×10−4 Torr以下)150℃で1時間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.01、0.02、0.04、0.07、0.10となるように調整した高純度窒素ガス(5N8)を用い、窒素吸着BET5点法によって測定した値を用いた。
<負極の蛍光X線分析>
解体したセルから取り出した負極(Cu集電体上に塗布)をエチルメチルカーボネートで洗浄した後、乾燥し、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(島津製作所製、EDX−700)を用い、Mnの半定量分析を行った。分析にはCuKα(8.04keV)、MnKα(5.90keV)を用い、真空中で分析を行った。Cuに由来する特性X線強度に対する、Mnに由来する特性X線強度の値を比較した。使用した装置では、使用前の負極では負極上のMnは検出限界以下であった。
<負極の容量確認>
開回路電位試験後のイオンセルは2.5V まで0.1CでCC放電した後、Ar雰囲気中で解体を行い、負極を取り出した。各々の電極よりコインセル用電極を打ち抜き、Liを対極とする単極評価を行った。モノフルオロエチレンカーボネート(FEC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/Lで溶解した電解液を用い、厚さ25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをセパレータとして用いた。充放電は、室温にて、0.2C−CC(1C=350mAh/g)、1.5V−0.005Vで行った。
<集電体の表面粗さ>
金属板上に固定した集電体表面を室温・大気中でAFM(ブルカー社製、DigitalInstrument NanoscopeIII)により、タッピングモードで観察を行った。Si 製のカンチレバー(ナノワールド社製、NCH)を用いて観察した。データサンプリング数は512×512ポイントとした。表面粗さは装置付属のアプリケーションプログラムにて求めた。
表面粗さはRa(算術平均粗さ)として、AFM像中の最高点から最下点までの高さはRmaxとして評価した。表面粗さを計算した領域はそれぞれのAFM像全体である。AFM像は、視野20、50μm角にて、各1を計測し、得られたRa、Rmaxの範囲を集電体の表面粗さとした。
<導電材及び結着材の粉体物性>
・導電材
電気化学工業社製 アセチレンブラック デンカブラック HS100
平均粒子径48nm
SSA39m/g
三菱化学社製 カーボンブラック #3400B
粒子径 21nm、
SSA 165m/g、
DBP吸着量 175cm/100g
・結着材
クレハ社製 フッ化ビニリデン樹脂(PVDF) KFポリマー #7208
重量平均分子量63万、
インヘレント粘度2.1dl・g、
融点173℃、
結晶化温度136℃、
8質量%NMP溶液、溶液粘度2100mPa・s、水分0.1%以下
実施例1
<リチウム遷移金属系化合物粉体の調製>
LiCO、Ni(OH)、Mn、CoOOHを、Li:Ni:Mn:Co=1.1917:0.2200:0.4883:0.1250のモル比となるように秤量して混合した後、これに純水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分をメジアン径0.5μm以下に粉砕した。スラリーを二流体ノズル型スプレードライヤー(大川原化工機(株)製:LT−8型)を用いて噴霧乾燥した。この際、乾燥ガスとして空気を用い、乾燥ガス導入量は60L/min、スラリー供給量は11g/minとした。また、乾燥入り口温度は150℃とした。
得られた粒子状粉末をアルミナ製るつぼに仕込み、空気流通下、1000℃で8時間焼成(昇降温速度5℃/min)した後、解砕して、リチウム遷移金属系化合物粉体を得た。
得られたリチウム遷移金属系化合物粉体について、CuKα線を使用したXRD(粉末X線回折)パターンより結晶構造が層状R(−3)m構造を含んで構成されていることを確認した。また、20°〜30°の間に超格子構造起因するピークを観測した。
SEM測定の結果、この粉体の一次粒子は概ね0.5〜1.5μmの範囲に存在し、平均一次粒子径は約1.0μmであった。二次粒子のメジアン径は8.18μm、嵩密度は約1.5g/cc、BET比表面積は0.67m/gであった。
<イオンセルの調製>
得られたリチウム遷移金属系化合物粉体を活物質として、以下の方法でスラリーを調液した。調製目標とする正極合材の固形分に対し、10質量%の導電材(デンカブラック HS100、平均粒子径48nm、SSA39m/g)と5質量%の結着材(KFポリマー#7208(PVDF、8.1質量%NMP溶液))を混合し、混錬機にて混錬し、NMPにて粘度調製を行いながら混錬を行った。次いで、85質量%の活物質を添加し、混錬を行った。スラリーの固形分濃度が40〜50質量%になるようNMPを添加した。所定量のNMP添加後、塗工用のスラリーとした。
得られたスラリーを、ドクターブレード法にて、Al集電体(日本製箔社製、基材厚さ15μm Ra 21.682〜52.652nm、Rmax 0.79μm)に塗布し、窒素気流中で乾燥した。なお、活物質の塗布密度は6.35mg/cmとした。乾燥後に、ロールプレスを用いて合材密度約2.2g/cmとなるよう、1200〜1400kg/cmの圧力でプレスした。
得られた電極を、120℃で一晩真空乾燥し、容量が正極に対し約6%過剰の炭素負極を対極として、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC)=3:7(容量比)の溶媒に、LiPFを1mol/Lで溶解した電解液を用い、厚さ25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをセパレータとして、湿度が露点−40℃以下である環境下にて、イオンセル(電極3cmx4cm)を組み立てた(図1参照)。作製したセルを用いて、以下の条件で初回充放電を実施した。
充電条件:0.1C−CC、カット電位 4.8V
放電条件:0.1C、カット電位 2.0V
(室温。1C=200mAh/gとした。)
初回充放電結果を図1−1に示す。
初回充放電を行ったイオンセルを、室温で4.8VまでCC−CV充電(0.1C カット電流1/50C)したのち、60℃に保たれた恒温槽内にて開回路電位を測定した。結果を図1−2に示す。
また、初回充放電を行ったイオンセルを、60℃に保たれた恒温槽内にて、下記の条件で充放電サイクル試験を行った。
充電条件:0.2C−CC、カット電位 4.8V
放電条件:0.2C、カット電位 2.0V
(1C=200mAh/g)
結果を図1−3に示す。
実施例2
実施例1において、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC):2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)=3:7(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/Lで溶解した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして、イオンセルを作成した。実施例1と同様に初回充放電を室温で行った。結果を図1−1に示す。実施例1と同様に、60℃での開回路電位測定計測、充放電サイクル試験を実施した。結果をそれぞれ図1−2、1−3に示す。
実施例3
<リチウム遷移金属系化合物粉体の調製>
LiNO :Ni〈NO・6HO:Mn〈NO・6HO:Co〈NO・6HOを0.1667:0.2200:0.4883:0.1250のモル比となるように秤量し、水に溶解させ1Mの水溶液とした。これにLiWOを、焼成後に生成するリチウム遷移金属系化合物に対し、2質量%となるよう添加した。これを原料溶液として、間接加熱式の噴霧熱分解装置を用い、以下の条件で噴霧熱分解処理を行った。二流体ノズルを用い、ノズルガス圧力0.2MPa、キャリアガス圧力0.01MPa、炉内温度500℃、滞留時間1秒とした。噴霧熱分解により得られた複合酸化物粉体をアルミナ製るつぼに仕込み、空気流通下、昇降温速度5℃/minで980℃まで昇温し、980℃で8時間焼成した後、解砕して、リチウム遷移金属系化合物粉体を得た。このリチウム遷移金属系化合物粉体のCuKα線を使用したXRD(粉末X線回折)パターンより結晶構造が層状R(−3)m構造を含んで構成されていることを確認した。また、20°〜30°の間に超格子構造起因するピークを観測した。SEM測定の結果、この粉体の一次粒子は概ね0.1〜0.2μmの範囲に存在し平均一次粒子径は0.1μmであった。二次粒子のメジアン径は6.52μm、嵩密度は0.79g/cc、BET比表面積は4.95m/gであった。
<イオンセルの調製>
得られたリチウム遷移金属系化合物粉体を活物質として、以下の方法でスラリーを調液した。調製目標とする正極合材の固形分に対し5質量%の導電材(カーボンブラック #3400B)と7質量%の結着材(KFポリマー#7208(PVDF、8.1質量%NMP溶液)を混合し、混錬機にて2000rpm、3min、NMPにて粘度調製を行いながら混錬を行った。次いで、88質量%の活物質を添加し、混錬機にて2000rpmにて混錬を行った。スラリーの固形分濃度が40〜50質量%になるようNMPを添加した。所定量のNMP添加後、混錬機にて2000rpm、3min、混錬を行い、塗工用のスラリーとした。
得られたスラリーを、ドクターブレード法にて、Al集電体(日本製箔社製、基材厚さ15μm)に塗布し、窒素気流中で乾燥した。なお、活物質の塗布密度は約13mg/cmとし、乾燥後に、ロールプレスを用いて合材密度約2.6g/cmとなるよう、1200〜1400kg/cmの圧力でプレスした。
得られた電極を120℃で一晩真空乾燥し、容量が60℃での正極の初回充電容量に対し約6%過剰の炭素負極を対極として、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC):2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)=3:7(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/L、添加剤として、エチニルエチレンカーボネート(EEC)、スクシノニトリル(SN)を、電解液中、それぞれ、0.5質量%、1質量%溶解した電解液を用い、厚さ25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをセパレータとして、湿度が露点−40℃以下である環境下にて実施例1と同様にイオンセルを組み立てた。
作製したセルを用いて、25℃にて、以下の条件でコンディショニングを実施した。
0.01Cにて3.5Vまで充電した後、4.1Vまで、0.1CでCC充電し、次いで2.5Vまで0.1CでCC放電を実施した。その後、4.1Vまで0.1CでCC充電を行い、2.5Vまで放電した。次に、4.5Vまで0.1CでCC充電を行い、2.5Vまで0.1CでCC放電した。その後、4.6Vまで0.1CでCC充電を行い、2,5Vまで0.1CでCC放電し、次いで、4.6VまでCC−CV充電(0.1C,カット電流1/50C)を行い、2.5Vまで0.1CでCC放電を実施した。
コンディショニング後、60℃にて4.6VまでCC−CV充電(0.1C,カット電流1/50C)を行い、60℃で開回路電位を測定した。結果を図1−10に示す。評価後のセルを解体し、取り出した負極の蛍光X線分析を行ったところ、Mnが検出された。その強度(MnKα)は、0.26cps/μA、CuKαの強度は、126.8cps/μAであり、その比は0.02であった。また、負極の容量を、Liを対極として確認したところ、使用前の99%以上であった。
実施例4
実施例3において、添加剤として、エチニルエチレンカーボネート(EEC)に代えて、ビニルスルホン酸−2−プロピニル(PVS)を用いた以外は実施例3と同様にイオンセルを作成した。実施例3と同様にコンディショニングを行った。その後、実施例3と同様に開回路電位を測定した。結果を図1−10に示す。評価後のセルを解体し、取り出した負極の蛍光X線分析を行ったところ、Mnが検出された。その強度(MnKα)は、0.17cps/μA、CuKαの強度は、75.6cps/μAであり、その比は0.02であった。また、負極の容量を、Liを対極として確認したところ、使用前の約99%以上であった。
実施例5
実施例3において、溶媒として、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/L、添加剤として、エチニルエチレンカーボネート(EEC)、スクシノニトリル(SN)をそれぞれ、0.5質量%、1質量%溶解した電解液を用いた以外は、実施例3と同様して、セルを作成し、25℃にて、実施例3と同様にコンディショニングを実施した。
0.01Cにて3.5Vまで充電した後、4.1Vまで、0.1CでCC充電し、次いで2.5Vまで0.1CでCC放電を実施した。その後、4.1Vまで0.1CでCC充電を行い、2.5Vまで放電した。充電、放電曲線をそれぞれ図1−4、1−5に示す。次に、4.5Vまで0.1CでCC充電を行い、2.5Vまで0.1CでCC放電した。充電、放電曲線をそれぞれ図1−6、1−7に示す。その後、4.6Vまで0.1CでCC充電を行い、2,5Vまで0.1CでCC放電し、次いで、4.6VまでCC−CV充電(0.1C, カット電流1/50C)を行い、2.5Vまで0.1CでCC放電を実施した。放電曲線を図1−8に示す。このセルの電圧、及び、コンディショニング後、同一仕様のセルを解体して得た負極の容量/電位(Li/Li)の関係から、正極の電位(Li/Li)を計算した。結果を図1−9に示す。
その後、実施例3同様、開回路電位を測定した。結果を図1−10に示す。評価後のセルを解体し、取り出した負極の蛍光X線分析を行ったところ、Mnが検出された。その強度(MnKα)は、1.413cps/μA、CuKαの強度は、164.6cps/μAであり、その比は0.07であった。また、負極の容量を、Liを対極として確認したところ、使用前の約80%であった。
実施例6
実施例5において、添加剤としてエチニルエチレンカーボネート(EEC)に代えてビニルスルホン酸−2−プロピニル(PVS)を用いた以外は、実施例5と同様にして、セルを作成、コンディショニングを行い、開回路電位を測定した。コンディショニングの経過を図1−4〜8に、開回路電位測定結果を図1−10に示す。
実施例7
実施例3と同様にして、リチウム遷移金属系化合物粉体を得て、以下の方法でLiBOの被覆を実施した。リチウムメトキシド0.5質量部をメタノール4質量部に溶解し、イオン交換水0.5質量部を滴下した。ついで、n−ブチルボレート7質量部を滴下して無色透明のゾル溶液を得た。ゾル溶液0.9質量部をメタノール2質量部で希釈し、実施例3のリチウム遷移金属系化合物粉体の調製における焼成後に得られた正極活物質10質量部に含浸した。溶媒乾燥後、飽和水蒸気雰囲気で一晩エージングし、100℃で1時間乾燥した。その後、400℃まで2時間かけて昇温し、400℃で1時間保持して、LiBOの微細粒子が約4質量%被覆した正極活物質を得た。得られた正極活物質を用い、以下の方法で塗布電極を作成した。
集電体として、炭素コートされたAl集電体(日本製箔社製、電極集電体用カーボンコート箔(A1085)、基材厚さ20μm、表面粗さRa 249.99〜256.67nm、Rmax 2.15〜2.43μm)を用いた。それ以外は実施例3と同様の方法で得られた電極を120℃で一晩真空乾燥し、容量が正極に対し約6%過剰の炭素負極を対極として、溶媒として、4,5− ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC):ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート(BTFEC)=8:2(容量比)の溶媒に、LiPFを1mol/Lで溶解させ、添加剤としてスクシノニトリル(SN)を0.3質量%含む電解液を用い、厚さ25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムをセパレータとして、湿度が露点−40℃以下である環境下にてコイン型セルを組み立てた。作製したセルを用いて、特性評価を以下の条件で実施した。結果を図1−11に示す。
初回充電 1/15C−CCCV、カット電位 4.6V、1/50C−CV
初回放電 1/15C−CC、カット電位 2V
サイクル条件
充電条件:1/2C−CC、カット電位 4.6V、1/50C−CV
放電条件:1/2C、カット電位 2.0V
(室温にて、1C=200mAh/gとした。)
実施例8
実施例7において、添加剤としてSNに代えてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を1質量%用いた以外は、実施例7と同様にして、コインセルを作成し、評価した。結果を図1−11に示す。
実施例9
実施例7において、添加剤としてSNに代えてEECを1質量%用いた以外は、実施例10と同様にして、コインセルを作成し、評価した。結果を図1−11に示す。
実施例10
実施例7において、溶媒としてBTFECに代えて、トリス(トリフルオロエチル)リン酸(TTFEP)を用いた以外は、実施例7と同様にして、コインセルを作成し、評価した。結果を図1−12に示す。
実施例11
実施例7において、溶媒としてモノフルオロエチレンカーボネート(FEC):エチルメチルカーボネート(EMC)=8:2(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/Lを溶解した電解液を用い、添加剤を加えなかったこと以外は、実施例7と同様にして、コインセルを作成し、評価した。結果を図1−11、12に示す。
比較例1
実施例1において、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/Lで溶解した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にして、イオンセルを作成した。実施例1と同様に初回充放電を室温で行った。結果を図1−1に示す。実施例1と同様に、60℃での開回路電位測定、充放電サイクル試験を実施した。結果をそれぞれ図1−2、1−3に示す。
実施例13
実施例3において、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:3:4(容量比)の溶媒にLiPFを1mol/Lで溶解した電解液を用い、添加剤として、エチニルエチレンカーボネート(EEC)を0.5質量%用いた以外は、実施例3と同様にして、セルを作成、コンディショニングを行い、開回路電位を測定した。コンディショニングの経過を図1−4〜8に、開回路電位測定結果を図1−10に示す。
図1−1より、実施例1、2、比較例1の正極は炭素負極に対し、4.5Vを超える電位まで充電されており、緩和後の電圧も4.4V程度である。図1−9から、このセルの充電状態では負極の電位はLi基準で0.1V程度であるから、正極の電位はLi基準で4.4Vを超えていることがわかる。図1−1から、これらのセルの電圧4.3V程度以上から、それ以下の電圧までとは充電曲線の傾きが異なることがわかる。従って、Li基準で4.4V程度以上では、それ以下の電位とは、正極で起こっている電気化学反応が異なっている。このような挙動は、通常の層状酸化物では観測されない。
図1−5から、充電時のセル電圧4.1V(正極電位約4.2V)では、放電容量が100mAh/g程度と、一般的な層状酸化物に対する優位性が無いことがわかる。それに対し、図1−6及び7に示されるように、充電時のセル電圧4.5V(正極電位約4.6V)では放電容量が190mAh/g程度と、セル電圧4.1V充電に対し約二倍に容量が増加し、一般的な層状酸化物に対する優位性が生じている。このように、本発明を構成する正極材は、Li基準で4.4V以上の電位で充電されることによって、従来の層状酸化物とは異なる機構により活性化され、高い放電容量を発現するものである。

Claims (8)

  1. 正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
    正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    非水溶媒が、フッ素化溶媒を含有し、かつフッ素化溶媒の合計量が、非水溶媒中、20〜100体積%の範囲にあることを特徴とする、非水系電解液電池。
    xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
    (一般式中、
    xは、0<x<1を満たす数であり、
    Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
    M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種の金属元素である。)
  2. フッ素化溶媒が、フッ素化カーボネート、フッ素化カルボン酸エステル、フッ素化エーテル、フッ素化スルホン及びフッ素化リン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒である、請求項1に記載の非水系電解液電池。
  3. 非水系電解液が、さらに、炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有する、請求項1又は2に記載の非水系電解液電池。
  4. 炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物又はスルホン酸エステル構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(9)のいずれかで表される、請求項3に記載の非水系電解液電池。

    (一般式(1)中、
    は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたp価の有機基であり、
    pは、1以上の整数である。)

    (一般式(2)中、
    は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたq価の有機基であり、
    qは1以上の整数である。)


    (一般式(3)及び(4)中、
    XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであり、互いに同一であっても異っていてもよく、
    Yは、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
    Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    n及びmは0以上の整数であり、
    ここで、隣接する環内の炭素原子に結合したR、R、R及びRは、互いに結合していてもよく、
    Wは、前記Rと同義である。)


    (一般式(5)及び(6)中、
    〜R24は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異っていてもよく、
    12とR13、R18とR19、R20とR21は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
    r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
    Vは、一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なっていてもよい。)



    (一般式(7)及び(8)中、
    26〜R32は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    26とR27、R29とR30、R31とR32は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
    r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
    Vは、前記一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なってもよく、
    Wは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である。)

    (一般式(9)中、
    33及びR34は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    33とR34は、一緒になって炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していてもよい。)
  5. 炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物の合計量が、非水系電解液中、0.001〜10質量%である、請求項3又は4に記載の非水系電解液電池。
  6. 正極、負極及び電解質塩と非水溶媒を含む非水系電解液を有する非水系電解液電池であって、
    正極が、下記一般式(A)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    非水系電解液が、さらに炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする、非水系電解液電池。
    xLiMO・(1−x)LiM’O・・・(A)
    (一般式中、
    xは、0<x<1を満たす数であり、
    Mは、平均酸化数が4である少なくとも一種の金属元素であり、
    M’は、平均酸化数が3である少なくとも一種金属元素である。)
  7. 炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物又はスルホン酸エステル構造を有する化合物が、下記一般式(1)〜(9)のいずれかで表される、請求項6に記載の非水系電解液電池。

    (一般式(1)中、
    は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたp価の有機基であり、
    pは、1以上の整数である。)

    (一般式(2)中、
    は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成されたq価の有機基であり、
    qは1以上の整数である。)


    (一般式(3)及び(4)中、
    XとZは、CR、C=O、C=N−R、C=P−R、O、S、N−R、P−Rであり、互いに同一であっても異っていてもよく、
    Yは、CR、C=O、S=O、S(=O)、P(=O)−R'、P(=O)−OR''であり、
    Rは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    R'は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    R''は、Li原子若しくはNR'''(ここで、R'''は、官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である)であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、
    〜Rは、水素原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    n及びmは0以上の整数であり、
    ここで、隣接する環内の炭素原子に結合したR、R、R及びRは、互いに結合していてもよく、
    Wは、前記Rと同義である。)


    (一般式(5)及び(6)中、
    〜R24は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異っていてもよく、
    12とR13、R18とR19、R20とR21は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
    r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
    Vは、一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なっていてもよい。)



    (一般式(7)及び(8)中、
    26〜R32は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基又は炭素原子数7〜12のアラルキル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    26とR27、R29とR30、R31とR32は、互いに結合して、炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を形成していてもよく、
    r、s及びtは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり、
    Vは、前記一般式(V’)で表され、互いに同一であっても異なってもよく、
    Wは、水素原子若しくはハロゲン原子であるか、又は官能基を有してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基である。)

    (一般式(9)中、
    33及びR34は、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子からなる群より選択される原子で構成された有機基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、
    33とR34は、一緒になって炭素−炭素不飽和結合を含む基を形成していてもよい。)
  8. 炭素−窒素不飽和結合を有する化合物、炭素−炭素不飽和結合を持つ置換基を有する化合物及びスルホン酸エステル構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物の合計量が、非水系電解液中、0.001〜10質量%である、請求項6又は7に記載の非水系電解液電池。
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