JP2012228347A - 伸縮性粘着包帯 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】帯状布製基材1の片面上に粘着剤層2と剥離ライナー3とがこの順に積層された構成を有する伸縮性粘着包帯である。当該粘着包帯は、剥離ライナー3を剥がした状態では、長手方向と帯幅方向とに伸縮性を有する。剥離ライナー3には、長手方向と帯幅方向にミシン目K(K1、K2)が設けられており、任意に選んだミシン目が、そのミシン目の進行方向に直交する方向に当該粘着包帯を引っ張り伸ばすことによって、破れて分断線へと変化するようになっている。
【選択図】図1
Description
粘着包帯を貼り付けたり巻き付けたりすることによって貼付部位の動きを拘束する用途では、非伸縮性の帯状布製基材を用いた粘着包帯が用いられる。また、貼付部位が、屈曲部や湾曲部など、皮膚面が伸縮するような部位である場合には、該貼付部位の動きを拘束しながらも、皮膚の動きに適度に追従する必要もあるので、伸縮性を持った帯状布製基材を用いた粘着包帯(「伸縮性粘着包帯」などと呼ばれている)が用いられる。
このような長手方向のみに伸縮性を有する伸縮性粘着包帯は、皮膚面に貼付する際に、長手方向に適度に伸長させながら貼付することによって、貼付部位の動きを好ましく拘束することができる。
しかし、本発明者らが、前記のような長手方向のみに伸縮性を有する粘着包帯の使用状態を詳細に観察したところ、帯幅方向への伸縮性が実質的に無いと、皮膚面や口などの動きに追従しない結果、該粘着包帯が剥離し脱落したり、伸縮性の無い方向についての過剰な応力が皮膚に加わり、長時間の貼付では皮膚にカブレや水泡が発生する場合があることがわかった。
この改良によって、伸縮性粘着包帯は、皮膚や口から突き出した医療器具の曲面に良好に巻き付いて該器具と周囲の皮膚とを互いに良好に固定しながらも、周囲の皮膚の動きにも十分に追従できるようになった。
ところが、前記の両方向に伸縮性を持った粘着包帯の医療現場での使用状況を詳細に調べたところ、取扱い性の低下を感じている使用者(該粘着包帯を用いて固定や貼付等の作業を行う者)が多いことがわかった。
取扱い性の低下を感じる共通の根本原因は、帯状布製基材を両方向に伸縮可能とし、より薄く柔軟にしたことによって、粘着包帯自体にコシ(剛性)が無くなり、そのために、剥離ライナーを剥がしていく時や、剥離ライナーを剥がした後に、該粘着包帯が手(ゴム手袋を装着している場合が多い)にまとわり付きやすくなったという点にある。
しかし、単に剛性が無いというだけではなく、使用者の貼り方、とりわけ剥離ライナーを剥がして貼付するまでの手順が使用者毎に異なるために、取扱い性が悪いと感じる事項が、使用者によって異なっていることもわかった。
また、剥離ライナーには、図6(b)のように、該剥離ライナー200の帯状の中央に長手方向に沿った1本の分断線(該剥離ライナーを剥がすときのきっかけとなる切れ目)K10が全長にわたって設けられている場合がある。図6(b)では、剥離ライナー200の左端の一部を分断線K10を利用して剥がし、その下の粘着包帯100の粘着面を見せている。
(A)使用者は、剥離ライナーに設けられた分断線を利用して、どのように剥離ライナーを剥がし、どのように粘着包帯を目的部位に貼付しているのか。
(B)使用者は、前記(A)の作業のうちのどのような瞬間において取扱い性が悪いと感じているのか。
(a1)図7(a)に示すように、粘着包帯100から、粘着剤層の表面を覆っている剥離ライナー200をいったん全て剥がしてしまい、次いで、図7(b)に示すように、粘着包帯の両端縁を両手の指先で保持しながら、該粘着包帯で目的部位(点滴針の穿刺部位)全体を同時に覆うようにまたは端から順次に覆うように貼付する手順。同図に符号Tで示しているのは、点滴針に連結されたチューブである。
(a2)図8(a)に示すように、分断線を利用して粘着包帯100から片方の剥離ライナー210だけを剥がし、図8(b)に示すように、剥離ライナーが残っている半分の領域110の両端部を保持しながら、粘着面が露出した部分で目的部位の半分を覆うように貼付し、次いで、残った剥離ライナーを分断線の側から矢印の方向へ剥がして取り出しながら、残り半分の領域110を順次貼付していく手順。ここで、図8(b)において粘着包帯に描かれた破線は、かくれ線であって、同図の粘着包帯100の半分の領域110の裏側(皮膚側)に、図8(a)に示した剥離ライナー210が残っていることを意味している。
ここで、上記(a1)のような剥離ライナーを全面的に剥がすことを好む使用者は、作業効率の点から、剥離ライナーを一気に全面的に剥がすことを望む場合が多く、その点から、剥離ライナーの分断線の存在が作業の邪魔であり、剥離ライナーを2回に分けて剥がす作業に取扱い性の悪さを感じることが多いということがわかった。
一方、上記(a2)のような手順を好む使用者は、粘着包帯の半分の領域に剥離ライナーが残っているので(図8(b))、上記(a1)の手順ほどは、剛性が無いことに起因する取扱い性の悪さは感じてはいない。しかし、剥離ライナーを剥がした領域に全く触れないように貼付することは困難であるため、やはり、剥離ライナーを剥がした領域のコシの無さについての取扱い性の悪さを感じている。
また、上記(a2)のように剥離ライナーを2回に分けて剥がす手順(分断線が必須である)を好む使用者がいる一方で、上記(a1)のように剥離ライナーを一気に全面的に剥がすこと(分断線が邪魔である)を望む使用者がおり、それらの相反する要求を同時に満たすことは困難であることがわかった。
(a3)図9(a)に示すように、剥離ライナーを2本の分断線によって3分割し、中央の剥離ライナー230だけを剥がし、図9(b)に示すように、粘着面が露出した中央部分で目的部位を覆うように貼付し、次いで、同図のように、残った両側の剥離ライナー220、240を中央部分側から両外側へと剥がしながら、粘着包帯を順次貼付していく手順。
前記(a3)のような手順は、粘着面にほとんど触れることなく貼付を行うことが可能であり、しかも、剥離ライナーを順次剥がして行くにつれて、粘着包帯が皮膚に貼付されていくので、剛性の無い部分の面積が大きくなることもなく、よって、剛性が無いことによる取扱い性の悪さを感じることもない。
前記(a3)のような手順を可能にするためには、剥離ライナーに対して帯幅方向の分断線を2本平行に設ける必要があり、粘着包帯のロール全体では、この2本1組にした分断線を適当な間隔をおいて設ける必要がある。
しかし、そのような分断線の組を設けると、上記(a3)の手順を行う使用者にとっても、その2本1組の分断線がちょうど中央に位置するように粘着包帯を切り取るには、手間がかかり、無駄に捨てる部分が生じる場合もある。
一方、そのような2本1組の分断線の組を設けると、分断線が増加するので、上記(a1)において剥離ライナーを一気に全面的に剥がすことを望む使用者にとっては取扱い性がさらに悪くなる。また、上記(a2)の手順を行う使用者にとっても、貼付の手順(特に剥離の方向)が異なるので好ましいことではない。しかし、両者の分断線を加え合わせて、分断線を長手方向と帯幅方向の両方に設けたのでは、上記(a1)において剥離ライナーを一気に全面的に剥がす手順を望む使用者にとってはさらに取扱い性が悪くなり、また、剥離ライナーが直交する分断線で細かく切れるので、結局、上記(a2)、(a3)の操作もスムーズにはできなくなる。
当該伸縮性粘着包帯は、剥離ライナーを剥がした状態では、長手方向と帯幅方向とに伸縮性を有するものであり、かつ、
剥離ライナーには、長手方向と帯幅方向にミシン目が設けられており、
任意に選んだミシン目が、そのミシン目の進行方向に直交する方向に当該伸縮性粘着包帯を引っ張り伸ばすことによって、破れて分断線へと変化するようになっている、
前記伸縮性粘着包帯。
(2)前記ミシン目が、
前記剥離ライナーの長手方向については、該剥離ライナーの帯幅の中央を通過する位置に1本設けられており、
前記剥離ライナーの帯幅方向については、等しい間隔をおいて複数設けられている、
上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(3)帯幅方向の複数のミシン目同士の間隔が、5mm〜30mmである、上記(2)記載の伸縮性粘着包帯。
(4)当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、長手方向、帯幅方向のそれぞれについての前記定荷重伸び率が、いずれも4〜120%である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(5)当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、
長手方向の前記定荷重伸び率が、帯幅方向の定荷重伸び率よりも大きく、
長手方向の前記定荷重伸び率が10〜120%であり、
帯幅方向の前記定荷重伸び率が4〜30%である、
上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(6)当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、
長手方向の前記定荷重伸び率が、帯幅方向の定荷重伸び率よりも小さく、
長手方向の前記定荷重伸び率が、4〜42%であり、
帯幅方向の定荷重伸び率が、22〜120%である、
上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(7)帯状布製基材が、編布からなる基材である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
(8)帯状布製基材を構成する繊維が、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿から選ばれる少なくとも一種の低吸水性繊維である、上記(1)記載の伸縮性粘着包帯。
さらに、カテーテルや経口挿管チューブなどの医療器具を固定する場合でも、確実に固定するだけでなく皮膚面や口の動きに対して適度に伸縮追従することができるので、粘着包帯の剥離や脱落も生じにくいという優れた効果を発揮するものである。
また、布製の基材を用いているので通気性に優れ、皮膚障害を起こし難く、特に、低吸水性繊維から得られる帯状布製基材を用いた場合には、当該伸縮性粘着包帯に撥水性を付与することもできるので、水漏れしやすい患部を保護することも可能である。
(イ)分断線を使用せず、ミシン目を採用したことによって、剥離ライナーが全面的に切れ目なくつながっているので、上記(a1)の手順を行う使用者にとっては、剥離ライナーを端から最後まで途切れることなく一気に全て剥がすことが可能になる。
(ロ)しかも、上記(a2)の手順を行う使用者にとっては、図2(a)に示すように、分断を意図するミシン目(図の例では長手方向のミシン目K1)の進行方向に対して直交する矢印方向(帯幅方向)に粘着包帯を引張って伸ばすことによって、該ミシン目が破れて1本の分断線につながるので、上記(a2)の手順にて、図8(a)〜図8(b)に示したような貼付作業を行うことが可能になる。
尚、上記(イ)のように剥離ライナーを端から全て剥がす際にも、適当なミシン目の終端部を局所的に引っ張って分断線にすれば、その部分を基点として、剥離ライナーを容易に剥がすことが可能になる。
(ハ)また、図2(b)に示すように、帯幅方向に付与したミシン目のなかから適当な2本のミシン目K2a、K2bを選び、これらのミシン目を、前記(ロ)のように粘着包帯を引張ることで破れば、同図の中央部分mの剥離ライナーだけを簡単に剥がすことができるようになる。この操作によって、上記(a3)の手順にて、図9(a)〜図9(b)に示したような貼付作業を行うことが可能になる。
このような手順は、ドレイン等、比較的大型のチューブ類やガーゼ類を皮膚上に貼付する際の作業性が向上するのみならず、粘着包帯の伸縮性が大きくとも、該粘着包帯が伸ばされることなく貼付されるので、貼付後の粘着包帯に応力が残らず、皮膚への物理刺激が低減されるという利点がある。
当該粘着包帯は、図1(b)に積層構造を示すように、帯状布製基材1の片面上に粘着剤層2と剥離ライナー3とがこの順に積層された構成を有する。当該粘着包帯は、剥離ライナー3を剥がした状態では、帯状布製基材1に付与した伸縮性に起因して、長手方向と帯幅方向とに伸縮性を有するものであり、かつ、剥離ライナー3には、図1(a)に示すように、長手方向と帯幅方向にミシン目K(長手方向のミシン目K1、帯幅方向のミシン目K2)が設けられている。
前記のように、粘着包帯に長手方向と帯幅方向の伸縮性を与え、かつ、長手方向と帯幅方向にミシン目を設けたことによって、任意に選んだミシン目(図2(a)の例では、長手方向のミシン目K1)が、そのミシン目の進行方向に直交する方向(図2(a)の例では、帯幅方向)に当該粘着包帯を引っ張り伸ばしたときに、破れて分断線へと変化するようになっている。
当該粘着包帯の帯幅や全長は、特に限定はなく、使用者の要求に応じたものを製造すればよい。例えば、帯幅(図1(a)の寸法W1)は、12mm〜100mm程度がよく用いられ、その中から、例えば(12.5mm、25mm、50mm、75mm、100mm)などの段階的に異なる帯幅のものを提供し、使用者が選択できるようにすれば便利である。また、全長は、より長ければ、ロール状に巻いたときの直径がより大きくなるので、例えば、3m〜10m程度が適当である。
帯状布製基材として利用可能な布素材は、特に限定されるものではないが、織布、編布、不織布などが利用可能であり、長手方向と帯幅方向への、回復性の高い伸縮性を付与するためには編布を用いることが好ましい。
編布としては、トリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編を含むタテメリヤス、および平型編、円形編を含むヨコメリヤスが挙げられる。
後述する当該粘着包帯の長手方向、帯幅方向のそれぞれの伸縮性(後述の「定荷重伸び率」)を満たすためには、帯状布製基材の長手方向、帯幅方向のそれぞれの伸縮性を調整すればよく、具体的には、タテ繊維およびヨコ繊維の織り方や、編み方、打ち込み繊維の本数、伸縮性繊維の打ち込みなどによって、それぞれの方向への伸縮性を調整すればよい。
前記材料のうち、当該粘着包帯に撥水性を付与するためには、低吸水性繊維であるポリエステルや、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いることが好ましく、特にポリエステル繊維を用いることが、吸水性が低くて機械的強度も大きいので好ましい。
帯状布製基材の厚さは、特に限定されるものではないが、貼付操作性や違和感の防止の点からは、10〜150μmが好ましく、20〜75μmがより好ましい。
該定荷重伸び率は、以下の測定方法によって得ることができる。
(i)剥離ライナーを剥がした当該粘着包帯を、縦100mm、横5mmの長方形の試験片へと切り出す。ここで、当該粘着包帯の長手方向を縦の方向と一致させた試験片(長手方向用試験片)と、当該粘着包帯の帯幅方向を縦の方向と一致させた試験片(帯幅方向用試験片)とを、それぞれ準備する。
(ii)引張り試験機を用い、前記試験片をチャック間距離30mmで固定する。
(iii)速度300mm/minで、破断するまで引張り、荷重とそのときの伸び量とを計測し、S−S曲線(応力−歪み曲線)を得る。長手方向用試験片、帯幅方向用試験片に対して、それぞれの試行は3回とする。
(iv)長手方向用試験片、帯幅方向用試験片について得られたそれぞれのS−S曲線から、長手方向、帯幅方向のそれぞれについて、0.5〔N/5mm幅〕の時の伸び率を算出する。
剥離ライナーのミシン目を破るために最低限必要な伸縮性は、ミシン目がどの程度の伸びで破れるかに関係するが、後述する剥離ライナーの材料(主として紙)であれば、微量な伸びを与えれば破断する。よって、当該粘着包帯の長手方向、帯幅方向について、定荷重伸び率4%以上の伸縮性を確保すれば、該ミシン目を破ることが可能になる。
(a)長手方向と帯幅方向の伸縮性が共に所定の範囲にあるという態様。
(b)長手方向の伸縮性が帯幅方向の伸縮性よりも大きいという態様。
(c)長手方向の伸縮性が帯幅方向の伸縮性よりも小さいという態様。
この場合、帯幅方向の定荷重伸び率の下限は、該ミシン目を破ることが可能な定荷重伸び率の下限であればよい。
長手方向の定荷重伸び率と、帯幅方向の定荷重伸び率との好ましい組み合わせは、〔長手方向(10%〜120%)、帯幅方向(4%〜30%)〕であり、より好ましい組み合わせは、〔長手方向(40%〜120%)、帯幅方向(4%〜10%)〕である。
この場合、長手方向の定荷重伸び率の下限は、該ミシン目を破ることが可能な定荷重伸び率の下限であればよい。
長手方向の定荷重伸び率と、帯幅方向の定荷重伸び率との好ましい組み合わせは、〔長手方向(4%〜42%)、帯幅方向(22%〜120%)〕であり、より好ましい組み合わせは、〔長手方向(10%〜30%)、帯幅方向(22%〜80%)〕である。
この場合、さらに、定荷重条件下ではなく破断時での伸び率も幅方向の方が長さ方向よりも大きいことが好ましく、定荷重伸び率の測定時に得られる破断伸び率(最大伸び率)としては、幅方向で200〜600%、長さ方向で100〜200%程度の値に調整することが好ましい。
なお、破断強度としては、使用時に粘着包帯にかかる荷重に対する耐久性や操作性の点から、帯幅方向で5〜50〔N/5mm幅〕、長手方向で5〜50〔N/5mm幅〕の強度を有するように調整することが好ましい。
具体的には、JIS Z0237に規定された方法に準じて、室温下でのベークライト板に対する180°ピーリング接着力試験において、2〜10〔N/20mm幅〕、好ましくは3〜6〔N/20mm幅〕の接着力を発揮するものが望ましい。
このような接着力を発揮する粘着剤としては、特に限定はされないが、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤などを用いることができる。これらのうち粘着特性の調整が容易であることや、低皮膚刺激性であることなどから、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、これに共重合可能な単量体を共重合させ、必要に応じて各種架橋剤による化学的架橋や、電子線や紫外線などの放射線照射による物理的架橋を施したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
粘着剤層は、帯状布製基材全面に均一厚さに設けてもよいし、ドット状、条状(直線的または曲線的なストライプ状)、格子状、種々の模様を描くパターンなどとして設けてもよい。
粘着剤層を条状に設ける場合の各条の進行パターンは、条状の粘着層同士の間に条状の空間が通気路として機能するように確保されていればよく、例えば、直線状ストライプ、波状ストライプ、三角波状ストライプ、のこぎり波状ストライプ、台形波状ストライプ、これらを組み合わせたストライプなどが好ましいパターンとして挙げられる。これらのうち、皮膚接着力の確保や端縁部の捲れ防止などの点から波状ストライプ(正弦波状ストライプを代表とする、所謂、ウェーブ塗工)が好ましい。
剥離ライナーの厚さは、特に限定はされないが、本発明では、単に剥がすだけでなく、ミシン目に沿って破れることが重要である点から、80〜120μm程度が好ましい厚さである。
図5(a)に示す例では、該ミシン目は、短い分断線を有してなる破線である。このような短い分断線は、例えば、切断用の刃物を入れることによって剥離ライナーを部分的に切って形成される。一方、図5(b)に示すような丸穴の貫通孔や、図5(c)に示すような開口形状が長円の穴(所謂、長穴)の貫通孔を有してなる点線や破線は、剥離ライナーを打ち抜いて形成し得る。
図5(a)に示すような短い分断線からなるミシン目の態様は、剥離ライナーを粘着剤層上に積層した後からでも、刃物を入れることで形成可能であるから、製造が容易であり、また、貫通孔に比べて、隣の分断線へと向かう破れを誘発し易いので、好ましい態様である。図5(a)に示す例では、短い分断線が破線を描くように並んでいるが、短い分断線が、一点鎖線、二点鎖線、または、特定の曲線の繰り返しなど、種々のパターンを描くものであってよい。
図5(a)に示す例の場合、短い分断線の個々の長さは、0.3mm〜10mm程度が好ましく、短い分断線同士の間隔(切れていない部分の長さ)は、0.5mm〜3mm程度が好ましい。
図5(b)に示す例の場合、貫通孔の口径は、0.3mm〜2mm程度が好ましく、貫通孔同士の間隔(穴が開いていない部分の長さ)は、0.5mm〜3mm程度が好ましい。
図5(c)に示す例の長円の長さ、間隔、幅は、図5(a)の分断線の長さ、分断線同士の間隔、図5(b)の貫通孔の口径(長円の幅に対応)を参照し決定すればよい。
図1(a)はミシン目の配置パターンの好ましい一例を示している。同図の例では、長手方向については、剥離ライナーの帯幅の中央を通過する位置に1本のミシン目K1が設けられており、帯幅方向については、等しい間隔をおいた複数の平行なミシン目K2が設けられている。
帯幅方向のミシン目K2同士の間隔W2は、図3(a)の剥がし方や、図9(a)、(b)の貼付手順を可能にする点からは、5mm〜30mmが好ましく、10mm〜25mmがより好ましい。
また、長手方向のミシン目については、中央に1本設ける態様以外に、例えば、図4に示す2本の平行なミシン目K1a、K1bのように、5mm〜30mm程度の間隔をおいた複数のミシン目を設ける態様であってもよい。
また、ミシン目に重ねてラインを印刷しておくことで、ミシン目の位置が一目瞭然となり、ミシン目の分断作業を素早く行うことができるようになる。
製作した粘着包帯のサンプルは、伸縮性が異なる次の3種類である。
(a)長手方向と帯幅方向にそれぞれ引張ったときに、両方向の間に違いを感じることが難しい程度に、長手方向の定荷重伸び率と帯幅方向の定荷重伸び率との差が小さいサンプル。本実施例では、長手方向の定荷重伸び率が20%であり、帯幅方向の定荷重伸び率が30%であるサンプルを製作した。
(b)帯幅方向には最低限度しか伸びないサンプル。本実施例では、長手方向の定荷重伸び率が15%であり、帯幅方向の定荷重伸び率が4%であるサンプルを製作した。
(c)帯幅方向には十分に大きく伸びるサンプル。本実施例では、長手方向の定荷重伸び率が24%であり、帯幅方向の定荷重伸び率が120%であるサンプルを製作した。
各サンプルの全体形状は、いずれも長さ100mm、帯幅50mmの帯状である。
〔布製基材〕
サンプルへの加工前(裁断前)の段階では、布製基材は帯状ではなく、長さ方向の寸法400mm×幅方向の寸法100mmの長方形を呈する原反である。
上記(a)のサンプルのための布製基材:布の種類は不織布、繊維(糸)の材料はポリウレタン、厚さは180μmである。
上記(b)のサンプルのための布製基材:布の種類はタテ伸び織布であり、繊維(糸)の材料は綿(タテ糸の芯はポリウレタン糸)、厚さは490μmである。
上記(c)のサンプルのための布製基材:布の種類は編布(丸編み)、繊維(糸)の材料はポリエステル、厚さは520μmである。
〔粘着剤層〕
粘着剤層の材料:アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシルエステル/アクリル酸共重合体)
〔剥離ライナー〕
材料と構造:ポリエチレンバインダーを用いてシリコーン樹脂被膜を張り合わせた紙
厚さ:98μm
〔ミシン目〕
剥離ライナーに付与したミシン目は、図5(a)に示す破線状の切れ目からなるものを、図1(a)に示す配置パターンにて形成したものである。
該破線の短い分断線の個々の長さは2.0mmであり、切れていない部分の長さは1.2mmである。
帯幅方向に形成されたミシン目同士の間隔W2は、15mmとした。
上記(a)〜(c)の各サンプルのための布製基材を用意し、次の加工手順にて、評価用のサンプルを得た。
(イ)剥離ライナー上に、乾燥後の粘着剤層厚が50〜60μm程度となるように粘着剤溶液を塗布し、乾燥機にて加熱乾燥させ、粘着シートを必要数だけ形成した。
(ロ)上記(イ)で得られた各粘着シートの粘着剤面に、上記(a)〜(c)の各サンプルのための布製基材をそれぞれに貼り合わせて、ローラーで圧着し、粘着包帯(原反サイズ)を得た。
(ハ)上記(ロ)で得られた粘着包帯を、粘着剤溶液を塗布する際の流れ方向が長手方向となるように、幅50mmの帯状に切り出した。
(ニ)切断跡がミシン目になるように、歯車状に刃が加工された丸刃カッターによって、剥離ライナーの外面から該剥離ライナーのみを切り、ミシン目を付与した。
(ホ)上記(ニ)で得られた粘着包帯を、所定の長手方向の長さとなるように切り出して、評価用のサンプルを得た。
上記のようにして得られた3種類のサンプルについて、それぞれの剥離ライナーのミシン目が破れるかどうかを試したところ、帯幅方向の伸縮性を小さくした上記(b)のサンプルを含むいずれのサンプルでも、各ミシン目の進行方向に直交する方向に当該粘着包帯を両手で引っ張り伸ばすことで、所望のミシン目を容易に破ることができ、分断線へと変化させ得ることがわかった。
また、ミシン目の端部を少し破ることで、その部分から、剥離ライナーを一度に全面的に容易に剥離できることも確認した。
(あ)図2(a)のように当該粘着包帯を引っ張って長手方向のミシン目K1を破り、図8(a)のように剥離ライナーを半分剥がし、末梢静脈留置針の装置モデルとして針を外した点滴用カテーテルを仮止めした下腕内側に対して、図8(b)のように貼付し、残る剥離ライナーを剥がす作業を行った。
いずれのサンプルも、ミシン目を破り剥離ライナーを剥がす操作に関しては、スムーズに行うことが可能であった。
(い)図2(b)のように当該粘着包帯を引っ張って帯幅方向の2箇所のミシン目K2a、K2bを破り、図9(a)のように中央の剥離ライナーを剥がし、末梢静脈留置針の装置モデルとして針を外した点滴用カテーテルを仮止めした下腕内側に対して、図9(b)のように貼付し、残る剥離ライナーを両側へと剥がす作業を行ったところ、いずれのサンプルも、ミシン目を破り剥離ライナーを剥がす操作および貼付の作業をスムーズに行うことが可能であった。
(う)図3(a)のように当該粘着包帯を引っ張って、ミシン目をU字状に破り、剥離ライナーがU字状に残るように長方形部分を剥がし、末梢静脈留置針の装置モデルとして針を外した点滴用カテーテルを仮止めした下腕内側に対して、図8(b)のように貼付し、残る剥離ライナーを剥がす作業を行った。
いずれのサンプルも、ミシン目をU字状に破り、剥離ライナーを剥がす操作はスムーズであった。また、貼付作業については、剛性を持った剥離ライナーが枠のように粘着包帯の3方を取り囲んでいるので、取り扱い性や貼付の作業性は非常に良好であった。
(え)図3(b)のように当該粘着包帯を引っ張って、ミシン目を十字状に破り、図3(c)のように剥離ライナーを半分剥がし、末梢静脈留置針の装置モデルとして針を外した点滴用カテーテルを仮止めした下腕内側に対して、図8(b)のように貼付し、残る剥離ライナーを図3(c)のように中央のミシン目K2eから開きながら剥がす作業を行った。
いずれのサンプルも、ミシン目を破り剥離ライナーを剥がす操作に関しては、スムーズに行うことが可能であった。
2 粘着剤層
3 剥離ライナー
K ミシン目
Claims (8)
- 帯状布製基材の片面上に粘着剤層と剥離ライナーとがこの順に積層された構成を有する伸縮性粘着包帯であって、
当該伸縮性粘着包帯は、剥離ライナーを剥がした状態では、長手方向と帯幅方向とに伸縮性を有するものであり、かつ、
剥離ライナーには、長手方向と帯幅方向にミシン目が設けられており、
任意に選んだミシン目が、そのミシン目の進行方向に直交する方向に当該伸縮性粘着包帯を引っ張り伸ばすことによって、破れて分断線へと変化するようになっている、
前記伸縮性粘着包帯。 - 前記ミシン目が、
前記剥離ライナーの長手方向については、該剥離ライナーの帯幅の中央を通過する位置に1本設けられており、
前記剥離ライナーの帯幅方向については、等しい間隔をおいて複数設けられている、
請求項1記載の伸縮性粘着包帯。 - 帯幅方向の複数のミシン目同士の間隔が、5mm〜30mmである、請求項2記載の伸縮性粘着包帯。
- 当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、長手方向、帯幅方向のそれぞれについての前記定荷重伸び率が、いずれも4〜120%である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
- 当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、
長手方向の前記定荷重伸び率が、帯幅方向の定荷重伸び率よりも大きく、
長手方向の前記定荷重伸び率が10〜120%であり、
帯幅方向の前記定荷重伸び率が4〜30%である、
請求項1記載の伸縮性粘着包帯。 - 当該伸縮性粘着包帯の剥離ライナーを剥がした状態での伸縮性を、該伸縮性粘着包帯の長手方向または帯幅方向に0.5〔N/5mm幅〕の荷重が加わったときの定荷重伸び率として表した場合に、
長手方向の前記定荷重伸び率が、帯幅方向の定荷重伸び率よりも小さく、
長手方向の前記定荷重伸び率が、4〜42%であり、
帯幅方向の定荷重伸び率が、22〜120%である、
請求項1記載の伸縮性粘着包帯。 - 帯状布製基材が、編布からなる基材である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
- 帯状布製基材を構成する繊維が、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿から選ばれる少なくとも一種の低吸水性繊維である、請求項1記載の伸縮性粘着包帯。
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