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JP2012217996A - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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JP2012217996A JP2011082757A JP2011082757A JP2012217996A JP 2012217996 A JP2012217996 A JP 2012217996A JP 2011082757 A JP2011082757 A JP 2011082757A JP 2011082757 A JP2011082757 A JP 2011082757A JP 2012217996 A JP2012217996 A JP 2012217996A
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Abstract

【課題】介在物によるノズルの閉塞を生じることなくREMを含有する鋼の連続鋳造が可能な連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】タンディッシュからノズルを通じて鋳型へ流出させる溶鋼の、流量調整機構として2層または3層構成のスライディングノズルを使用する、希土類元素を0.001〜0.10mass%で含有する鋼の連続鋳造方法であって、スライディングノズルの全開時の開口面積をA0としたとき、鋳造時にスライディングノズルの開口面積Aが下記(1)式を満足する条件で前記スライディングノズルの開度を調整することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
0.9×Q+30≦A/A0≦75 …(1)
ここで、Q[kg/s]は前記溶鋼のスループットである。
前記スライディングノズルにおける溶鋼との接触面の一部または全部を、MgOを45mass%以上含有する耐火物で構成することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類元素を含有する鋼の連続鋳造方法に関し、特に、タンディッシュの出鋼口に設けられるスライディングノズルおよび浸漬ノズルが、希土類元素を含む酸化物、硫化物および酸硫化物に起因して閉塞することを抑制する連続鋳造方法に関する。
鋼の高温耐食性を向上させ、鋼中の酸化物や硫化物の形態を制御するために、鋼中への希土類元素(以下「REM」ともいう。)の添加が行われており、このような鋼は一般に連続鋳造によって製造されている。
鋼の連続鋳造において、タンディッシュ内の溶鋼は、タンディッシュ底面に配置された耐火物からなるノズルを介して鋳型内に供給される。ノズルは、上ノズル、スライディングノズルおよび浸漬ノズルの順に配置される。このうちスライディングノズルは2層(上プレートおよびスライディングプレート)または3層(上プレート、スライディングプレートおよび下プレート)で構成され、スライディングプレートを固定のプレートに対してスライドさせることにより溶鋼供給量を調整するものである。REMを含有する鋼は、炭素鋼等の一般鋼に比べて、下記(A)および(B)の2点の理由から、鋳造中に著しくノズルの閉塞を招きやすい。
(A)REMを含む酸化物、硫化物および酸硫化物の特徴は、高融点かつ高比重であるため溶鋼中での浮上性が悪いことにある。このため、その介在物の大半は、取鍋やタンディッシュ内での浮上分離が望めない。また、REMを含む介在物の他の特徴として、凝集して最大長さが数十μm以上の大型の介在物にはなりにくいうえ、溶鋼で覆われた網目構造を形成しやすい。これにより介在物の見かけの比重が、介在物がREM系単身である場合よりも大きくなり、この点も溶鋼中での浮上性が悪化する要因となっている。これらのことから、溶鋼中のREM系介在物は、通常のアルミナと比べて、ノズル内に流入する量が極端に多く、そのためノズルの内壁に衝突する介在物も多い。その結果、衝突時にノズルの内壁にそのまま固着する介在物数も増加し、ノズル閉塞が助長される。
(B)溶鋼中のREMは活性な金属の一種であり、酸素との親和力が非常に大きい。そのため、特に溶鋼中に溶解したREMの含有率が高いほど、ノズルの耐火物に含まれるSiO2成分やAl23成分と反応するのが早くなり、耐火物上およびその近傍にREMを含む酸化物が生成してしまう。その結果、その生成物を起点としてノズル閉塞が進行するのみならず、その生成物自身がノズル内の溶鋼流れの妨げとなる。
以上のような理由でノズルの閉塞が進行すると、鋳型内の湯面に大きな変動が生じるため、溶鋼中へのモールドフラックスの巻き込みや、初期凝固シェルの不均一な成長が生じ、これにより鋳片に表面割れが発生し、鋳片品質の悪化を招く。そして、ノズルの流路に付着した閉塞物(酸化物等からなる介在物、地金)は、時折剥離し、この剥離物が鋳片内に巻き込まれると、内質欠陥の発生にも繋がり得る。さらに、最悪の事態として、浸漬ノズルが完全に閉塞した場合には、連続鋳造装置の操業を停止せざるを得なくなり、大幅な生産効率の低下を招く。
このようなノズルの閉塞を抑制する技術が下記特許文献1〜4に開示されている。
特許文献1では、浸漬ノズルの内壁にREM酸化物のコーティング層を設け、溶鋼中のREMの酸化を抑制し、REMを含有する溶鋼の連続鋳造時のノズル閉塞を抑制する技術が開示されている。しかしながら、REM酸化物のコーティング層は厚さが高々5mm程度であるため、鋳造が長時間にわたる場合には、効果が持続しない可能性がある。さらに、浸漬ノズル本体の閉塞を防止できたとしても、その上流側のスライディングノズル部での閉塞を防止することは困難である。
特許文献2では、0.001〜0.10mass%のREMを含有する溶鋼の連続鋳造方法において、取鍋および/またはタンディッシュから溶鋼を排出するノズルにおける溶鋼流量調整機構として、溶鋼との接触面を、MgOを85mass%以上含有する耐火物により構成されたスライディングノズルを使用することにより、浸漬ノズルの閉塞を防止する技術が開示されている。しかしながら、耐火物中のMgO含有率が高くなるにつれて、予熱温度等の操業管理によってはAl23に比べて高いMgOの熱膨張率に起因したヒートショックによって、耐火物割れの操業トラブルも懸念される。
特許文献3では、3層構成のスライディングノズルにおいて、スライディングプレートの内孔面の少なくとも閉止方向に向かう面は、上部から下部にかけてテーパー型下広がり形状にし、澱み部を軽減することによって、下プレート部への付着物量の低減を図る方法が記載されている。しかしながら、スライディングプレートの内孔面の形状がテーパー形状であるがゆえに、通常のプレート形状に比べると、強度低下が懸念される。特に、プレート部のノズル内の溶鋼流速が大きい場合やプレートの摺動頻度が増大するにつれ、最悪の事態では、耐火物の欠損が生じ、操業を停止せざるを得なくなってしまう。
特許文献4では、REMを含有する溶鋼中にCaを添加することによって、溶鋼中の介在物をノズルの内壁に付着しにくい化学組成に制御し、ノズルの閉塞を防止する技術が開示されている。しかしながら、鋼の材料性能として、Caを添加できない場合には、本技術を用いてノズルの閉塞を回避することは困難である。
これらの技術以外に、浸漬ノズルへの介在物付着を防止する技術として、上ノズル、スライディングノズルおよび浸漬ノズルのいずれかからアルゴン等の不活性ガスを溶鋼流路内に吹き込む方法がある。この方法は、ノズルへの介在物の付着抑制には有効であると一般にいわれている。しかしながら、吹き込まれた不活性ガスが溶鋼中に捕獲され、ピンホール欠陥を含んだ状態で凝固する場合もあるため、この方法は必ずしも有効ではない。
特許3891086号公報 特開2009−248113号公報 特開2002−336957号公報 特願2009−231089号公報
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、ノズルを構成する耐火物中のMgOの含有率が低くても、ノズルの形状によらず、また鋼の組成によらず、REMを含有する溶鋼を連続鋳造する際、ノズルの内壁へのREMを含む介在物の付着およびこれによるノズルの閉塞を長期にわたって安定して抑制することにある。また、本発明は、この課題を解決することが可能な連続鋳造方法を提供することを目的とする。
REMを含有する溶鋼の連続鋳造におけるノズルの閉塞は、2層または3層構成のスライディングノズルの構造の影響を強く受ける。また、REMを含む介在物の耐火物表面への付着性は、介在物のノズルの内壁への衝突速度の影響、すなわち溶鋼の流速の影響も強く受ける。
本発明者らは、これらの点に着目し、検討した結果、スライディングノズルの開度を制御することによって、元々溶鋼中に浮遊するREMを含む介在物がノズルの内壁に付着しにくくなり、溶鋼中に溶解しているREMとノズルの内壁との反応の抑制を期待できる耐火物中のMgOの含有率が低くても、ノズルの閉塞を抑制しつつ溶鋼の連続鋳造が可能な鋼の連続鋳造条件を見出し、下記(イ)〜(ニ)の知見を得た。この検討内容およびこの検討にともなって行った実験の内容については後述する。
(イ)2層または3層構成のスライディングノズルを使用して、鋳型内に溶鋼を供給する連続鋳造方法において、スライディングノズルの開度を適正にすることによって、ノズル内での溶鋼流れに起因したREMを含む介在物のノズル内壁への付着量を大幅に低減できる。
(ロ)スライディングノズルの制御開度を下記(1)式の関係を満たす範囲で制御することによって、REMを含有する溶鋼の連続鋳造時に、ノズル閉塞防止効果が得られる。
0.9×Q+30≦α≦75 …(1)
ここで、Q[kg/s]は溶鋼のスループット、α[%]はスライディングノズルにおいて全開時の開口面積(溶鋼通過断面積)A0に対する制御開度時の開口面積Aの比率を百分率で表した値(A/A0×100)であり、以下「開口面積率」ともいう。
(ハ)さらに、スライディングノズルの材質として、MgOを45%以上含有する耐火物で構成することによって、耐火物と溶鋼中のREMとの反応を抑制し、より一層のノズル閉塞防止効果が得られる。
(ニ)鋼にREMを添加する目的は、上述のように、鋼の高温耐食性を向上させ、鋼中の硫化物や酸化物の形態を制御するためである。このようなREMの効果は、鋼中のREMの含有率が0.001mass%以上で現れる。しかし、REMは高価であること、および0.10mass%を超えて過剰に添加しても効果が飽和することから、費用対効果の点からREMの含有率は0.10mass%以下とする。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す鋼の連続鋳造方法にある。
(1)タンディッシュから鋳型へノズルを通じて溶鋼を流出させ、溶鋼の流量調整機構として2層または3層構成のスライディングノズルを使用して、希土類元素を0.001〜0.10mass%で含有する鋼を連続鋳造する方法であって、スライディングノズルの開口面積率αが上記(1)式を満足する条件で前記スライディングノズルの開度を調整することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
(2)前記スライディングノズルにおける溶鋼との接触面の一部または全部を、MgOを45mass%以上含有する耐火物で構成することを特徴とする前記(1)に記載の鋼の連続鋳造方法。
本発明において、「溶鋼のスループット」とは、単位時間当たりの鋳造溶鋼量をいう。
本明細書の記載において、希土類元素(REM)とは、周期表の3族に属するSc、Yおよびランタノイド(La、Ce等、原子番号57〜71の15元素)から選ばれた1種以上の元素に相当し、特にLa、Ce、PrおよびNdのうちの1種以上の元素が該当する。
以下の説明では、鋼およびノズルの成分組成についての「mass%」を、単に「%」と表記する。
本発明の鋼の連続鋳造方法によれば、介在物によるノズルの閉塞を生じることなくREMを含有する鋼の連続鋳造が可能であるため、高品質の鋳片を高い生産効率で製造することができる。
Al23棒周辺に付着したREM系介在物の厚さと、Al23棒の回転速度との関係を示す図である。 溶鋼のスループットQと、平均的な制御開度時の開口面積率αとの関係を示す図である。
以下、本発明を完成させるに至るまでの検討内容およびこの検討にともなって行った実験の内容について説明し、併せて本発明の実施形態について説明する。
1.検討および実験の内容
(a)予備調査(鋳造後のノズルの閉塞状況の調査)
REMを含有する溶鋼の連続鋳造後に、ノズル内壁の閉塞状況について調査した。
その結果、鋳造方向に平行な方向の位置によって、付着した介在物の厚さに差があるものの、スライディングノズルおよび浸漬ノズルの内壁のほぼ全長にわたって、REMを含有する介在物が懸濁した鋼が付着していた。この介在物は、面積相当の円換算直径で最大長さが数μm以下であり、閉塞物のうち介在物が占める割合は、面積換算率で約30〜40%であった。
ノズルの内径から付着物の厚さを差し引いた、実際に溶鋼が通過できるノズルの有効流路は、浸漬ノズルの吐出口と比べても、スライディングノズル部において最も狭くなっており、その直径はノズルの内径の約1/5であった。
以上の調査の結果、ノズルにおいて最も閉塞が生じやすい箇所が、スライディングノズルであることが明らかとなった。
通常、スライディングノズルは全開にして操業することはなく、溶鋼のスループットに応じて開度を調整し、溶鋼流路の開口面積を制御する。スライディングノズルは、その構造上、全開にしない場合には溶鋼流路内に段差が生じるため、スライディングノズル内には、浸漬ノズル内に比べて溶鋼の流れの乱れや澱みが発生しやすい。
溶鋼の流れの乱れや澱みの影響が大きい箇所には、鋼および介在物の付着が顕著に現れやすいため、スライディングノズル内はノズルのうちで最も閉塞しやすい箇所であり、スライディングノズルの構造に起因した介在物の付着の進行は避けられないといえる。
さらに浸漬ノズルの本体部におけるREM系介在物の付着は、ノズル内を溶鋼とともに流れるREM系介在物が直接衝突して生じるほかに、溶鋼流の上流側のスライディングノズルにおける付着物が剥離し、それが下流側の浸漬ノズルおいて再付着する等、スライディングノズル部に生じた溶鋼流の乱れの影響を間接的に受けて生じると推測できる。
これらのことから本発明者らは、スライディングノズル内における介在物の付着の進行を最小限に抑制することが、ノズルの閉塞の抑制に最も重要であると考えた。
(b)基礎実験1(REMを含む介在物の付着性と溶鋼流速の関係の調査)
REMを含む介在物の付着性と溶鋼流速の関係について調査するため、以下の実験を行った。
装置として、溶鋼を収容するMgOるつぼと、溶鋼中に浸漬するAl23棒を使用した。Al23棒はAl23の含有率が99%であった。
溶鋼中にNdを添加し、表1に示す組成の鋼3.5kgを、MgOるつぼ内で溶製した。溶製後の溶鋼中に、Al23棒を浸漬し、るつぼの中心を回転軸として、50〜250rpmの範囲の回転速度で30min回転させた。Al23棒は、浸漬位置をるつぼの中心から30mm偏芯した位置とし、浸漬深さを全溶鋼深さの1/2の位置までとした。
Figure 2012217996
Al23棒の回転を停止した後、溶鋼中にAl23棒を浸漬した状態で溶鋼を凝固させた。凝固した鋼およびAl23棒を、Al23棒の軸方向の中心を通る位置で、浸漬方向に平行に切断し、Al23棒周辺に付着したREM系介在物の厚さを測定した。
図1は、Al23棒周辺に付着したREM系介在物の厚さと、Al23棒の回転速度との関係を示す図である。同図から、回転速度が大きいほど付着するREM系介在物の厚みが大きく、付着するREM系介在物の厚さは一定の回転速度以上で急激に増大することがわかる。このことから、Al23棒に対する相対的な溶鋼流速が大きいほど、Al23棒への介在物の衝突速度が大きく、介在物の付着性も高いことが明らかとなった。
連続鋳造時にスライディングノズルの開度を絞ると、ノズル内の溶鋼の流速が増大する。そのため、この結果は、連続鋳造時にスライディングノズルの開度を絞った場合には、ノズル内へのREM系介在物の付着量が増大する可能性があることを示唆する。
(c)基礎実験2(スライディングノズルの開度と溶鋼通過量の関係の調査)
以上の(a)および(b)から得られた知見を踏まえて、以下の実験を行った。
装置として、取鍋と、底部に耐火物からなるノズルが設けられたタンディッシュを使用した。ノズルは、タンディッシュ側から上ノズル、スライディングノズルおよび下ノズルの順に配置されるものを使用し、スライディングノズルは、99.6%のAl23および0.1%のSiO2を含有する材質からなる3層構成(上プレート、スライディングプレートおよび下プレート)のものを使用した。また、ノズルの下部には溶鋼受け容器を配置した。
溶鋼中にNdを添加して表2に示す組成の鋼1tを溶製し、この溶鋼を、取鍋を介してタンディッシュに供給した。タンディッシュ内の溶鋼を250kgに維持しながら、一定の開度に維持したスライディングノズルを介し、溶鋼受け容器内へ溶鋼を排出させた。そして、ノズルの溶鋼通過量、すなわち溶鋼総排出量を秤量した。溶鋼の排出時間は1minとした。このとき、タンディッシュ内の溶鋼の過熱度は80〜90℃の範囲内であった。
Figure 2012217996
表3に、実験条件としてスライディングノズルの内径、開度、開口面積および開口面積率を示した。開度は、全閉から開方向にスライディングプレートを動かした距離で示した。基礎実験2−1〜2−3では、それぞれスライディングノズルの内径15mm、20mmおよび30mmにおいて、内径15mmのノズルの全開条件を基準とし、それと開口面積が一致するように開度を調整して実験を実施した。
Figure 2012217996
表3に実験結果を示す。3種類の内径のスライディングノズルにおいて、同一の開口面積を与え、溶鋼排出時間を同一としても、溶鋼総排出量が異なることがわかる。特に、使用するスライディングノズルの内径が大きいほど、溶鋼総排出量の低下が明らかである。
一般には、ノズル閉塞を防止する観点からは、ノズル内径を大きくする方が有利である。なぜならノズルの内壁に介在物が付着し、閉塞が進行したとしても、完全に閉塞に至るまでの時間を確保することができるからである。しかしながら、REM系介在物の比重が大きいため、REMを含有する溶鋼においてはノズル内に流入する単位時間当たりの介在物数は、通常のアルミナの少なくとも数倍である。
そのため、ノズルの内壁への介在物の付着はノズルの構造の影響を過敏に受け、一度ノズル内壁への介在物の付着が進行すると、その進行は阻止することが難しい。また、本実験の結果は、上述の予備調査および基礎実験1から得られた知見とも矛盾していない。
これらのことから、少なくともREMを含有する溶鋼において、鋳造条件に対応した最適なノズル開度またはノズル内径が存在することが明らかとなった。
2.本発明の実施形態
2−1.適正なノズル開度
以上の1.(a)〜(c)の結果から、REMを含有する鋼の連続鋳造において、溶鋼流量を調整するスライディングノズルの開度を適正化することによって、ノズルの閉塞を抑制できる目処が得られた。
さらに、本発明者らが後述の実施例に示す実験を行った結果、適正なノズル開度の範囲は、下記(1)式で表されることがわかった。
0.9×Q+30≦α≦75 …(1)
ここで、Q[kg/s]は溶鋼のスループット、α[%]は開口面積率であり、スライディングノズルにおいて全開時の開口面積A0に対する制御開度時の開口面積Aの比率を百分率で表した値(A/A0×100)である。
仮にノズルの閉塞が進行した場合に、ノズルの開度を大きくし、αが75%よりも大きい値でノズルの開度を制御したとすると、ほぼ全開に近い開度での制御をせざるを得なくなる。そのため、ノズルの閉塞がさらに進行し、最悪の事態では操業を停止せざるを得なくなる。そのため、本発明ではαの上限は75%とする。
溶鋼のスループットQが大きく、かつノズルの制御開度が小さいほど、スライディングノズル内における溶鋼流速が増大する。そのため、この場合には、ノズル内壁への介在物の衝突速度も大きくなり、REM系介在物の付着頻度が高くなる。さらに、制御開度が小さいほど、ノズル内に生じる段差が相対的に大きくなり、ノズル内の溶鋼流に乱れが生じやすくなる。そのため、本発明では制御開度の下限値は、溶鋼のスループットQに比例する値として、αを用いてα=0.9×Q+30と規定する。
また、ノズル開度を上記(1)式の範囲に制御するとともに、ノズルからのアルゴン等の不活性ガスの吹き込みを組み合わせることにより、より一層のノズルの閉塞防止効果が得られる。従来、ノズルからのアルゴン等の不活性ガスを溶鋼流路内に吹き込んでノズルの閉塞を回避する技術では、ピンホール欠陥等の問題も発生した。しかしながら、ノズル開度を適正に制御することによって、REM系介在物の付着数が緩和されたため、鋳片の品質に悪影響を及ぼさないレベルまでノズルからの吹込ガス流量も抑制することが可能となる。
以上説明したように、スライディングノズルの開度を適正化することによって、元々溶鋼中に存在するREMを含む介在物がタンディッシュからノズル内に流入した際に、それらの介在物がスライディングノズル内にトラップされて、そのままノズル内壁に付着してしまうことを抑制できる。
2−2.スライディングプレートを構成する耐火物の好ましい組成
ここで、鋼にREMを添加する目的は、上述のように、鋼の高温耐食性を向上させ、鋼中の硫化物や酸化物の形態を制御するためである。このようなREMの効果は、鋼中のREMの含有率が0.001%以上で現れ、0.10%を超えて過剰に添加してもこの効果は飽和する。
溶鋼中に溶解して存在するREMは非常に活性な元素である。そのため、一般に高温で安定な酸化物として知られているSiO2やAl23等も、REMを含有する溶鋼中ではREMによって容易に還元され、REM酸化物が生成する。溶鋼の成分系によって多少異なるが、特に、溶鋼中のREM含有率が0.01%よりも大きいと、その影響が完全には無視できなくなる。
そのため、ノズル耐火物、特にスライディングプレートを構成する耐火物が成分としてSiO2やAl23を含む場合、これらの耐火物成分が溶鋼中の溶解REMと反応し、溶鋼と接触する側の耐火物界面にREM酸化物が生成する。この生成したREM酸化物を起点として、溶鋼中に元々存在するREM酸化物とのクラスタリング化(網目構造の形成)が生じやすくなり、ノズル内壁における介在物の付着の進行が助長される。
このことから、溶鋼中のREM含有率が高い場合や連続鋳造の連々数が増大するにつれ、溶鋼中のREMとノズルを構成する耐火物との直接の反応を抑制することが望ましい。この観点から、1000℃以上の高温域において、Al23よりも熱力学的に安定で、かつ溶鋼中のREMとの反応性が低い耐火物成分の候補として、MgOが挙げられる。しかしながら、MgOは熱膨張率が高いため、耐火物のMgO含有率が大きくなるにつれ、その影響で耐火物本体に亀裂や割れが生じやすくなるという新たな問題が生じる。
この問題に対して、本発明者らは、スライディングノズルの開度を、溶鋼の流れに起因して生じる介在物の付着を抑制できる適正な範囲に制御することによって、ノズル内でのREM系介在物のクラスタリング化を抑制し、それによって、スライディングプレートを構成する耐火物中のMgO含有率がスポーリング性の影響が現れにくい45%、またはそれ以上であっても、十分にノズルの閉塞抑制効果が発揮されることを明らかにした。
スライディングプレートは、全体が同一材質からなる一体材質としてもよい。また、溶鋼流路側の一部またはすべてをMgO含有率が45%以上である材質とした複層構造、またはMgO含有率が溶鋼流路側で45%以上であり、内部方向に向かって低下する傾斜構造にしてもよい。
また、耐火物を構成する化合物として、MgO以外に、Al23、SiO2、CaO、ZrO2およびSiC等が挙げられる。ただし、溶鋼中の溶解REMと反応しやすいSiO2は含有率を5%以下とすることが望ましい。耐火物中に含有されるMgOは、スピネル形態であってもよい。
本発明者らは、以上の実験結果および検討結果に基づいて上述の(イ)〜(ニ)の知見を得て、本発明を完成させた。
本発明の鋼の連続鋳造方法を完成し、その効果を確認するため、以下に示す実験を実施して、その結果を評価した。
1.実験1
1−1.実験条件
C:0.03〜0.06%、Si:0.20〜0.40%、Mn:0.70〜0.80%、P:0.035%以下、S:0.0010%以下、Cr:20〜25%、Ni:10〜12%、sol.Al(酸可溶Al):0.005〜0.020%およびREM:0.010〜0.055%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼を、溶鋼スループット5.6〜18kg/sの範囲で連続鋳造した。鋳造時のタンディッシュ内の溶鋼過熱度は50〜80℃とし、低熱による浸漬ノズルの閉塞が生じない条件とした。また、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物の組成は、いずれも99.6%Al23−0.1%SiO2とした。
表4には本発明例1〜5および比較例1〜3の実験条件として、溶鋼のスループットQ[kg/s]、スループットQでの定常鋳造中の制御開度時の開口面積率α[%]、下記(1)式を満足するか否か、および溶鋼中のREM含有率を示す。定常鋳造とは、鋳造速度が一定であることを意味する。スループットQでの定常鋳造中の制御開度時の開口面積率α[%]は、スライディングノズルにおいて全開時の開口面積A0に対するスループットQでの定常鋳造中の制御開度時の開口面積Aの比率を百分率で表した値(A/A0×100)である。
0.9×Q+30≦α≦75 …(1)
Figure 2012217996
1−2.実験結果
本実験では、各例において単鋳(1チャージ)を達成することを目標に鋳造した。表4に、実験条件と併せて、閉塞性の指標として取鍋中の溶鋼量に対する実際に鋳造された溶鋼量の比の値を記載した。この比の値が1のとき、ノズルが閉塞することなく単鋳を達成できたことを示し、1未満のとき、ノズルの閉塞が生じたことを示す。
図2は、溶鋼のスループットQと、スループットQでの定常鋳造中の制御開度時の開口面積率αとの関係を示す図である。同図では、○印で単鋳を達成できた条件(本発明例1〜5)、×印で単鋳を達成できなかった条件(比較例1〜3)を示す。同図からわかるように、単鋳を達成できた条件は、上記(1)式で表すことができる。本発明例1〜5は上記(1)式を満足し、比較例1〜3は満足しなかった。
比較例1は、スライディングノズルにおける定常鋳造中の制御開度時の開口面積率が全開に近かった。そのため、溶鋼の再酸化等の外乱の影響を受けて、急激にノズル閉塞(ノズル内壁における介在物の付着)が進行し、全開に近い開度でのスライディングプレートの制御が必要になって、最終的に溶鋼のスループットを満たす量の溶鋼を鋳型に供給できなくなったと考えられる。
比較例2および3は、スライディングノズルにおける定常鋳造中の制御開度時の開口面積率が小さかった。そのため、溶鋼中に元々存在するREMを含む介在物がノズル内を通過する際に、ノズル内壁に非常に付着しやすく、閉塞に至ったと考えられる。
2.実験2
2−1.実験条件
実験2は、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物の組成が異なる以外は実験1と同様の条件で実施した。表5には本発明例6、7および8の実験条件として、前記表4と同様の項目に加えて、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物(表5では「プレート耐火物」と記載した。)の組成を示した。
Figure 2012217996
2−2.実験結果
本実験では、各例において連続して2チャージ以上鋳造することを目標に鋳造した。表5に、実験条件と併せて、閉塞性の指標として取鍋中の溶鋼量に対する実際に鋳造された溶鋼量の比の値を記載した。この比の値が2を超えるときは、同一のノズルを使用して、連続2チャージ以上の鋳造を達成できたことを示す。
本発明例6および7は、前記(1)式を満足するとともに、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物のMgOの含有率が45%よりも大きかった。一方、本発明例8は、前記(1)式を満足するものの、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物のMgOの含有率が測定限界以下、すなわち45%以下であった。
本発明例8では、スライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物のMgO含有率が低位であるため、耐火物と溶鋼中のREMとの反応を抑制できず、連続して2チャージ以上の鋳造を達成できなかった。しかし、本発明例6および7ではスライディングプレートの溶鋼流路を構成する耐火物のMgOの含有率が45%よりも大きかったため、本発明例8と比較して、高いノズルの閉塞防止効果が得られた。
本発明の鋼の連続鋳造方法によれば、介在物によるノズルの閉塞を生じることなくREMを含有する鋼の連続鋳造が可能であるため、高品質の鋳片を高い生産効率で製造することができる。したがって、本発明の方法は、連続鋳造分野において広範に適用できる技術である。

Claims (2)

  1. タンディッシュから鋳型へノズルを通じて溶鋼を流出させ、溶鋼の流量調整機構として2層または3層構成のスライディングノズルを使用して、希土類元素を0.001〜0.10mass%で含有する鋼を連続鋳造する方法であって、
    スライディングノズルの全開時の開口面積をA0としたとき、鋳造時にスライディングノズルの開口面積Aが下記(1)式を満足する条件で前記スライディングノズルの開度を調整することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
    0.9×Q+30≦A/A0×100≦75 …(1)
    ここで、Q[kg/s]は前記溶鋼のスループットである。
  2. 前記スライディングノズルにおける溶鋼との接触面の一部または全部を、MgOを45mass%以上含有する耐火物で構成することを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
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