JP4054318B2 - 品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents
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この対策として、石灰40〜90重量%及び炭素10〜60重量%に、炭化硼素、窒化硼素、及び硼素のいずれか1を添加して焼成する連続鋳造用ノズルが提案され、連続鋳造用ノズルの消化反応や熱膨張による脆化を抑制すると共に、連続鋳造用ノズルに付着生成するアルミナ系介在物の低融点化を図って、連続鋳造用ノズルの閉塞を防止することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
また、石灰クリンカー及び/又はドロマイトクリンカーからなる骨材35〜85重量%と黒鉛系の炭素5〜50重量%に対して、アルカリあるいはアルカリ土類金属の塩類と消石灰との反応生成物の粉末3〜25重量%を添加して得られる炭素含有の石灰質連続鋳造用ノズルが提案され、耐食性、耐スポーリング性、及び連続鋳造用ノズルに付着生成するアルミナ系介在物の低融点化が図られていた(例えば、特許文献2参照)。
あるいは、CaO換算で2〜40重量%の粉末と、SiO2 含有量が1重量%未満のアルミナクリンカー、スピネルクリンカー、及びマグネシアクリンカーの中から選ばれる1種以上との混合粉末からなり、この混合粉末中の炭素、SiO2 のそれぞれの含有量が1重量%以下で、かつ0.21mm以下の粒径のものを20〜70重量%含む連続鋳造用ノズルの内孔体が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
なお、浸漬ノズルの筒状部の内部に旋回羽根を配置し、上方から落下する溶鋼を旋回羽根に接触させ、浸漬ノズル内での溶鋼の落下エネルギーを減衰する方法も提案されている(例えば、特許文献9参照)。
まず、特許文献1及び2に記載された発明のように、石灰と炭素を主体とする組成では、連続鋳造用ノズルを構成している石灰や炭素と溶鋼中の成分とが反応して低融点化合物を生成するため、アルミナ系介在物の付着や堆積を防止できる反面、連続鋳造用ノズルの溶損が大きくなって耐火骨材が脱落し、ノズル寿命が低下して、生成した低融点化合物や連続鋳造用ノズルから脱落した耐火骨材が溶鋼中に混入し、連続鋳造用ノズルを構成している炭素による溶鋼中の炭素のピックアップ等も生じて、溶鋼の品質が低下するという問題が生じていた。
更に、溶損に伴って連続鋳造用ノズル内面の凹凸が激しくなり、介在物の付着や堆積が発生する。
そして、溶鋼の通路の詰まりや閉塞による安定した鋳造が不可能になっていた。
特に、浸漬ノズルの吐出口近傍の詰まりや閉塞現象は、付着したアルミナ系介在物の剥落による介在物欠陥を招いたり、吐出口からの溶鋼の吐出流が左右で偏流し、この吐出流の偏流による鋳片の表面欠陥、内部欠陥を解消することができないという問題がある。
また、特許文献4に記載された発明は、連続鋳造用ノズルの内孔体の溶鋼接触面(以下、稼動面とも言う)近傍でのアルミナ生成を抑制すると共に、稼動面における溶損を抑制して稼動面の平滑性を確保し、その相乗効果からアルミナ系介在物の付着を防止する技術思想に基づくものであるが、実際にはアルミナ系介在物の付着、堆積が生じて、連続鋳造用ノズルの内孔体で閉塞が発生し、前記した特許文献1及び2と同様の問題が起こる。
なお、前記した稼働面が低炭素質及び低シリカ質の耐火物である場合においても、アルミナ系介在物の付着現象に若干の差異があるものの、同様に、溶鋼中のAl2 O3 が稼働面に付着して連続鋳造用ノズルの閉塞が発生する。
このように、溶鋼の温度低下や溶鋼中の脱酸生成物、溶鋼中Alの酸化、Al2 O3 成分の耐火物への接触等を防止することが、注湯系の構造上不可能であるため、実質的に浸漬ノズルなどの詰まりや閉塞を防止することができない。
そして、鋳型内の溶鋼を注湯する際に、吐出口からの溶鋼流が偏流することを防止することができず、偏流に起因する湯面変動やパウダーの巻き込み、更には気泡や介在物の鋳片深部への侵入に起因する品質欠陥を防止することができないという、共通した問題を解消することができていない実情にある。
特に、ノズル詰まりや閉塞現象が生じた場合、鋳造速度を低速にすることで溶鋼の吐出流の偏流を抑制していたが、前記したノズルを使用することで、ノズル詰まりや閉塞現象が解消される。このため、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
このようなMgO粒子のAl2 O3 −CaO系液相中での移動と凝集が繰り返されることにより、MgO粒子の粗大化を伴いつつ、稼動面側にMgOリッチな層が形成される。
そして、このMgOリッチな層に存在するCaO成分が、Al2 O3 −CaO系液相中に温度で決まる飽和濃度に達するまで連続して溶解し、Al2 O3 −CaO系液相の融点は徐々に低下し、流動し易い状態になり、アルミナ系介在物や地金が稼働面の液相と共に流出し、アルミナ系介在物や地金に起因するノズル詰まりや閉塞が抑制でき、同時に吐出口を正常にできるので、溶鋼の吐出流の偏流を大幅に抑制することができ、吐出口の傾斜角度の自由度も大きくできる。
一方、MgO成分の含有率が30質量%未満の場合、稼働面に付着したAl2 O3 と反応して溶損が大きくなり、耐火骨材であるドロマイトクリンカーが脱落して耐火物の寿命が低下したり、脱落した骨材が溶鋼中に混入して鋳片の品質を阻害する。
以上のことから、稼動面に液相を形成すると共に、鋳片の品質を更に向上させるためには、耐火物のMgO成分の含有率を35〜65質量%にすることが好ましく、更には40〜60質量%にすることが好ましい。これにより、前記した作用をより顕著に発現できる。
一方、溶鋼と接する内側面で最もアルミナ系介在物が付着や堆積し易い部位に耐火物を配置し、アルミナ系介在物の付着や堆積を防止して溶鋼を常時通過させることが可能であれば、その面積を好ましくは5%以上、更には10%以上とすることが好ましい。
このように、浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に、ドロマイトクリンカーが配合された耐火物を内装体として設けるので、浸漬ノズルの詰まり防止や、溶鋼中の介在物の捕捉及び浮上促進を図ることができ、溶鋼の吐出流の偏流を抑制してその流れを均一化できる。
また、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度、及び鋳型内の溶鋼への浸漬ノズルの浸漬深さを規定することで、吐出口から吐出する溶鋼の上向き流及び下向き流の速度を抑制することができ、上向き流に起因する湯面変動やパウダー巻き込みによる欠陥、下向き流に起因する気泡や介在物の鋳片深部への侵入を抑制することができる。しかも、溶鋼の吐出流の偏流が無いので、広い範囲の吐出口角度での鋳造が可能になり、同時に浸漬深さをメニスカス位置から150〜350mmの範囲にして、安定した高速鋳造が可能になる。
一方、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度が水平位置に対して下向き35度を超える場合、下向き流が強くなり、この下向き流に随伴する介在物や気泡が鋳片の深部に侵入し、鋳片の内部欠陥の要因になり、高品質の鋳片を製造できない。
以上のことから、高品質の鋳片を製造するためには、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度を、水平位置に対して上向き5度から下向き20度の範囲とすることが好ましく、更には水平位置に対して上向き5度から下向き15度の範囲とすることが好ましい。
一方、浸漬深さが350mmを超える場合、溶鋼の下向き流が強くなり、気泡や生成したAl2 O3 −CaO系の低融点化合物やその他の介在物を鋳片の深部に随伴し、その浮上を阻害して鋳片の内部の品質が低下する。
以上のことから、高品質の鋳片を製造するためには、浸漬ノズルの吐出口の上端部の浸漬深さをメニスカス位置から200〜300mmとすることが好ましい。
このように、内装体の内側面と浸漬ノズルの内側面とで段差部を形成するので、稼働面におけるAl2 O3 の付着や堆積を防止し、同時に溶鋼の落下エネルギーを減衰し、かつ吐出する溶鋼の偏流を抑制できるので、溶鋼の吐出流を緩慢な流れにし、その流れを均一化できる。また、鋳型の冷却により成長しつつある凝固殻の内面に衝突して反転する溶鋼の上向き流及び下向き流を緩和でき、上向き流に起因した湯面(メニスカス)変動やパウダー巻き込み、また下向き流に起因する気泡や介在物の鋳片深部への侵入に起因する内部欠陥を防止できる。
ここで、アルゴンガス(以下、Arガスとも言う)については、浸漬ノズルにアルゴンガスを吹き込まなくても、Al2 O3 を低融点化合物にして浸漬ノズルの内面に付着、堆積することを防止できるため、Arガスを全く使用しない鋳造が可能になり、鋳片の表層及び内部において、気泡に起因した欠陥を確実に防止でき、気泡性欠陥の厳格な鋼種の品質を格段に向上することができる。
ここで、Arガスの吹き込み量が0.2NL/minより少なくなれば、Arガス気泡による介在物の浮上促進効果が減少する。
一方、吹き込み量が10NL/minより多くなると、浸漬ノズルの閉鎖防止効果を良好にできるが、Arガス気泡の増加による湯面の変動やパウダーの巻き込み、凝固殻への気泡の捕捉、鋳片内部への気泡の侵入などの問題が発生し、鋳片の品質低下を招く恐れがある。
以上のことから、Arガスの吹き込みを行うことにより、よりよい結果が得られ、Arガスの吹き込みを行う場合には、その吹き込み量を、従来の吹き込み量(例えば20NL/min)より少ない0.2〜10NL/min、より好ましくは0.2〜5NL/minにすることで、Arガスの気泡の浮上力を活用し、浸漬ノズルの含有成分であるCaO成分と反応して生成した低融点のAl2 O3 −CaO系の生成物の浮上促進を図り、清浄度の高い鋳片を製造する。
特に、タンディッシュの上ノズルにドロマイトクリンカーを使用したドロマイト耐火物を使用し、且つこの上ノズルからも溶鋼中にアルゴンガスを吹き込むようにすることで、耐火物の稼働面をアルゴンガスで保護することができ、Al2 O3 介在物の付着の抑制と、ドロマイト質耐火物の稼働面にMgOのリッチ層の形成が容易になり、耐火物の稼働面の溶損を抑制する効果が得られる。
また、上ノズル及びスライディングノズルのいずれか一方又は双方からのアルゴンガスの吹き込みを行うことにより、スライディングノズルへのAl2 O3 介在物の付着の抑制作用が顕著になり、注湯量の変動を抑制して安定した鋳造が可能になる。
なお、アルゴンガスの吹き込みは、上ノズル、スライディングノズル、及び浸漬ノズルのいずれか1箇所から行うことが可能であるが、2箇所以上から行うことが好ましい。
この残部成分とは、例えば、ZrO2 、Al2 O3 、SiC、SiO2 、Fe2 O3 等の一般に使用される耐火物組成物を指す。
このように、耐火物中に残部成分が所定量存在すると、稼動面側に付着したAl2 O3 と耐火物に含まれるCaOとの反応から形成されるAl2 O3 −CaO系液相の生成、及び生成したAl2 O3 −CaO系液相の低融点化を促進すると共に、耐火物としての耐食性も維持でき、鋳造過程を通じて稼働面を略平滑な状態に維持できる。
一方、質量比W1/W3が30を超える場合、耐火物中のCaOの活性化が低下し、MgOリッチな層を介してのCaOの供給が少なくなり、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。
以上のことから、稼働面側のアルミナ系介在物の付着を更に抑制するためには、質量比W1/W3を4〜27とすることが好ましく、更には5〜25とすることが好ましい。
前記目的に沿う第8の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第6及び第7の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はFe2 O3 を含み、その含有率が3質量%以下である。
特に、耐火物の残部成分中のSiO2 、Fe2 O3 は、稼動面側に付着したAl2 O3 と耐火物に含まれるCaOとの反応から形成されるAl2 O3 −CaO系液相の生成を促進し、しかも耐火物自体の極端な低融点化も抑制する。
以上のことから、耐火物中のCaOを活性化させAl2 O3 −CaO系液相の低融点化と液相量を確保して、アルミナ系介在物の付着、堆積、及び地金付着を抑制するためには、SiO2 の含有率を0.2〜3質量%、更には0.8〜3質量%とすることが好ましく、またFe2 O3 の含有率を0.1〜3質量%、更には0.2〜3質量%とすることが好ましい。
ここで、炭素成分は、黒鉛を含有せず、例えば、添加される各種の炭素粉末の他に、結合剤として使用するタール、ピッチ、フェノール樹脂、タール含浸、及びその他の樹脂等の残留炭素から得ることができる。特に、消化を考慮した場合には、タール含浸することが、炭素分の付与及び気孔の閉塞に、より効果がある。
このように、耐火物は不焼成であって、この耐火物中に炭素成分が含有されているので、この炭素成分の存在により、耐火物の熱膨張歪みを吸収、緩和することができ、構造体としての安定性を高めることができる。
一方、炭素成分の含有量が10質量%を超える場合、炭素成分の溶鋼中の酸素による酸化や、溶損による直接溶解が増大して溶損が著しくなる。また、稼動面側で耐火骨材が露出、脱落を生じる等、耐火物としての寿命を極端に低下させる。
以上のことから、炭素成分の含有量を1〜10質量%としたが、好ましくは1〜7質量%、更には1質量%を超え5質量%以下とすることが好ましい。
従って、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した良品質の鋳片を安定に鋳造することができる。
特に、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
これにより、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現でき、生産性を更に高めることができる。
これにより、高品質の鋳片を経済的に製造できる。
更に、吹き込まれたアルゴンガスの浮上作用により、鋳型内の溶鋼に混入した低融点化合物である介在物の浮上を促進して溶鋼を清浄にすることができる。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を適用する連続鋳造設備の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造設備の浸漬ノズルの説明図、及び変形例に係る浸漬ノズルの説明図、図3、図4は同連続鋳造設備の浸漬ノズルの内装体にMgOリッチな層が形成されるメカニズムの説明図、図5はCaO/MgOの質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図、図6はCaO/(残部成分)の質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図、図7は実施例1に係る浸漬ノズルにおける溶損速度指数及びアルミナ系介在物の付着速度指数を示すグラフ、図8(A)、(B)はそれぞれ実施例1及び従来例に係る鋳片の鋳造中における湯面レベル、及び浸漬ノズル開度指数の変動を示すグラフ、図9は実施例1及び実施例2に係る浸漬ノズルを使用して鋳造した鋳片中に存在する鋳片介在物指数を示すグラフ、図10は製造した鋳片品質の歩留り指数及び鋳片温度による加熱炉熱量指数(生産性指数)と鋳造速度の関係を示すグラフ、図11はパウダー巻き込み、内部気泡、及び介在物の欠陥指数と浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度との関係を示すグラフ、図12(A)、(B)はそれぞれ実施例1に係る浸漬ノズルの交換頻度指数、及び偏流指数を示す説明図である。
また、この耐火物には、CaO成分及びMgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対するCaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30で、特に、残部成分中のSiO2 及びFe2 O3 の各含有率が、それぞれ3質量%以下になるように調整されている。
そして、内装体21は、上記した耐火物を円筒状に成形し、フェノール樹脂を硬化処理することにより、形成することができる。
また、筒状部20は、従来から使用されている浸漬ノズル用の耐火物、例えばアルミナ黒鉛質耐火物を用いて形成することができる。
そして、筒状部20の下端部には、筒状部20を中心としてその両側部にそれぞれ開口した溶鋼11の吐出口26が設けられ、この各吐出口26の傾斜角度θが、水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲に設定されている。
更に、吐出口26の断面形状は、例えば、円形、楕円形、矩形等にでき、断面円形の貫通孔を備えた部材を装着することも可能である。
これにより、タンディッシュ12から落下する溶鋼11を段差部33に衝突させ、溶鋼11の落下エネルギーを減衰できる。
溶鋼11をタンディッシュ12に入れ、更にタンディッシュ12の下方に設けた浸漬ノズル14から鋳型15に注湯した。なお、鋳型15は、例えば250mm×1000〜1800mmの断面矩形状のものである。そして、鋳型15による冷却と支持セグメント16に設けた冷却水ノズルからの散水による冷却によって、凝固殻(凝固シェル)35を生成させ、凝固殻35の成長を促進しながら、ピンチロール19により0.6m/min以上の鋳造速度で鋳型15から引き抜き、鋳片18を鋳造した。
図3に示すように、内装体21の内側に溶鋼11を通過させた場合、溶鋼11中のAlから生成したAl2 O3 は内装体21の稼動面24に付着する。
ここで、ドロマイトクリンカーの組成を、例えば、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2を0.46以上としているので、付着したAl2 O3 をドロマイトクリンカー内のCaOと反応させて低融点のAl2 O3 −CaO系液相を形成させることができる。
更に、質量比W1/W2を3以下としているので、過剰なAl2 O3 −CaO系液相の形成を抑えて、しかも耐火物の消化も抑えることができる。
図5に示すように、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46未満の場合、稼動面側に供給されるCaO量が不足して十分なAl2 O3 −CaO系液相が形成されないため、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。また、耐火物の組成中のMgO含有量が多くなり過ぎて、スポーリングや割れ等が発生し易くなる。
以上のことから、炭素成分を前記した量に調整し、かつ質量比W1/W2を0.46〜3にすることで、溶鋼中の酸素による酸化や、溶損による直接溶解を低減して、耐火物の溶損を抑制できる。また、ドロマイトクリンカーの配合量を50質量%以上、好ましくは60質量%以上とすることで、稼働面のMgOのリッチ層の形成が安定に行われる。これにより、稼動面側において、耐火骨材の露出、脱落を抑制でき、耐火物としての寿命を従来よりも延ばすことができる。
なお、ドロマイトクリンカーを60質量%以上配合し、質量比W1/W2を1.0〜2.0の範囲に調整することで、更に良好な品質の耐火物を得ることができる。
ここで、図6に、CaO/(残部成分)の質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定結果を示す。
CaO成分及びMgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対するCaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2未満の場合、耐スポーリング性が低下したり、溶鋼中のAlの酸化によるAl2 O3 の生成が促進されて、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。
一方、質量比W1/W3が30を超える場合、耐火物中のCaOの活性化が低下し、MgOリッチな層を介してのCaOの供給が少なくなり、溶損が激しくなって稼動面側に凹凸を生じ、アルミナ系介在物が付着し易くなる。
その結果、ドロマイトクリンカー表面に付着したAl2 O3 とドロマイトクリンカー内のCaOとの反応が促進されて、低融点のAl2 O3 −CaO系液相の形成が促進される。
更に、ドロマイトクリンカーの結晶粒子の粒界にSiO2 及びFe2 O3 が存在することにより、ドロマイトクリンカーの消化を抑制して内装体21の品質劣化を防止することができる。
その結果、内装体21のドロマイトクリンカーの稼動面24側には、低融点化し流動性が向上したAl2 O3 −CaO系液相が形成されることになるので、溶鋼11の流れにより、Al2 O3 −CaO系液相が稼動面24から流出する。
なお、形成されるAl2 O3 −CaO系液相の厚みは、ドロマイトクリンカー中へのAl2 O3 の侵入距離により支配されると考えられる。
そして、MgO粒子の周囲にAl2 O3 −CaO系液相が存在し、このAl2 O3 −CaO系液相中にCaO粒子が溶解している状態では、MgO粒子は溶解したCaO粒子とその位置を交換するように徐々に稼動面24側から遠ざかる方向に移動(拡散)し、徐々に凝集していく。
そして、MgO粒子のAl2 O3 −CaO系液相中での移動と凝集が繰り返されることにより、図4に示すように、MgO粒子が粗大化し、稼動面24側にMgOリッチな層が連続して形成される。
このため、MgOリッチな層の背部に存在するドロマイトクリンカー中のCaOがMgOリッチな層を介してAl2 O3 −CaO系液相の形で稼動面側に供給されるので、溶鋼11中のAl2 O3 が稼動面24側に付着するのを防止する。また、稼動面24側に形成されるMgOリッチな層により、稼動面24側の耐食性が向上する。
これにより、浸漬ノズル14の吐出口26からの溶鋼の偏流を抑制できるため、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制して高品質の鋳片18を鋳造することができる。
浸漬ノズル14の内装体21としては、前記した組成で構成され、厚みが25mm、長さが400mmのものを使用し、この内装体21を筒状部20の内部に形成される二次メニスカス以降の溶鋼接触面をカバーするように、筒状部20の内側に空目地となるように配置した。この内装体21の稼働面24の面積は、タンディッシュ12の下部ノズル13から浸漬ノズル14にかけての溶鋼11と接する内側面の20%に相当する。なお、筒状部20はアルミナ黒鉛質耐火物を用いて形成されている。
また、2つの各吐出口26の内径をそれぞれ60mmとし、筒状部20の内径D1を70mmとして、内装体21の内径D2が筒状部20の内径D1の70mmを略確保できるように装着した(図2(A)参照)。
また、溶鋼11の吐出流の偏流がなくなることにより、凝固殻35の内面に衝突して反転する上向き流及び下向き流が緩和され、均一な流れとなり、上向き流に起因する湯面の変動やパウダーの巻き込みなどの品質上の問題を解消することができる。
そして、強い下向き流を抑制できるので、下降する溶鋼流に随伴する気泡や介在物が鋳片18の深部に侵入するのを防止でき、鋳片18内部の気泡や介在物に起因する欠陥を防止することができる。
以上のように、吐出口26の詰まりを防止できるので、溶鋼11の吐出流の偏流が防止され、注湯量の多くなる高速鋳造が可能になり、この高速鋳造時の上向き流、下向き流に起因する前記品質上の諸問題も解消でき、高品質の鋳片の生産性を高めることができる。
このように、従来の浸漬ノズルと比較して、浸漬ノズル14の品質を高めることができた。
図7に、実施例1及び従来例の各浸漬ノズルにおける溶損速度、及びアルミナ系介在物の付着速度の比較を、それぞれ指数化して示す。なお、実施例1では、上ノズル、スライディングノズル、及び浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上からアルゴンガスが吹き込まれており、浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガス量が0.2〜10NL/minに調整されている。
アルミナ系介在物の付着速度は、従来例を1とすると、実施例1が0であった。また、溶損速度は、従来例を1とすると、実施例1が0.2であった。
その結果、実施例1では、耐溶損性と浸漬ノズルの開口性を両立させることが可能であることが確認できた。
図8(A)に示すように、タンディッシュの上ノズルに通常の耐火物を使用した実施例1では、アルミナ系介在物の付着速度及び溶損速度が小さいため、浸漬ノズル開度指数の変動幅が非常に小さく、それに伴って湯面レベルの変動幅も非常に小さいことが確認できた。
更に、タンディッシュの上ノズルをドロマイトクリンカーを含有するドロマイト耐火物にし、且つこの上ノズル及び浸漬ノズルからアルゴンガスの吹き込みを行い、浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスの総量を0.2〜10NL/minにした場合(実施例2)では、通常の耐火物を使用した上ノズルに比べて、浸漬ノズルの開度指数の変動幅を極めて小さくでき、それに伴って湯面レベルの変動幅を、太線で示した湯面レベルの変動幅よりも非常に小さくできることを確認できた。
一方、図8(B)に示すように、従来例ではアルミナ系介在物の付着速度が大きいために浸漬ノズルが閉塞傾向となり、一定量の溶鋼を供給するため浸漬ノズルの開度を徐々に大きくする必要が生じるため、浸漬ノズルの開度指数が徐々に大きくなっている。
従って、図7及び図8から、実施例1の浸漬ノズルを使用すると、安定した鋳造操業が可能になることがわかる。
実施例1では、従来例と比較して鋳片介在物指数が1/9になっている。これは、実施例1の浸漬ノズルの耐溶損性が非常に優れているため、溶鋼中に混入する浸漬ノズルに由来する混入物の量が少なくなった結果と考えられる。
特に、実施例2では、耐火物の溶損の抑制に起因する介在物の減少、僅かに混入した介在物のアルゴンガスによる鋳型内での浮上除去作用の向上、介在物の付着に起因する吐出流の偏流の抑制などの相乗効果によって、鋳片の介在物指数を更に0.2(実施例1の1/10)まで大幅に改善できた。
鋳片品質の歩留り指数は、吐出口の傾斜角度が上向き10度(□)から下向き35度(△)の範囲で、従来例(吐出口の傾斜角度が上記した範囲外:×)より良好な数値を得ることができ、特に吐出口の傾斜角度が上向き5度(○)から下向き15度(◎)の範囲で、略100%に近い数値を達成できることが分かった。なお、鋳片品質の歩留り指数は、鋳造速度の高速化に伴い悪くなる傾向が示されているが、それでも吐出口の傾斜角度が上向き5度から下向き15度の範囲では、歩留り指数の顕著な低下は確認できなかった。
吐出口の傾斜角度が、上向き10度から下向き35度の範囲で、従来よりも良好な品質を備えた鋳片を製造できることが分かるが、特に吐出口の傾斜角度を上向き5度から下向き15度の範囲に設定することで、更に高品質の鋳片を製造できることが確認できた。
以上のことから、吐出口の傾斜角度及び浸漬ノズルの浸漬深さを上記した範囲に設定することで、溶鋼の吐出流の偏流がなくなるので、凝固殻の内面に衝突して反転する上向き流及び下向き流が緩和され、その流れが均一になる。これにより、上向き流に起因する湯面の変動やパウダーの巻き込みなどの品質上の問題を解消でき、下降する溶鋼流に随伴する気泡や介在物が鋳片の深部に侵入するのを防止でき、鋳片内部の気泡や介在物に起因する欠陥を防止することができる。
従来、アルゴンガスの吹き込みは、浸漬ノズルの内面へのAl2 O3 の付着を防止するために行われていたが、前記した組成の耐火物で構成された内装体を使用することによってAl2 O3 を低融点化合物にし、浸漬ノズルの内面への付着、堆積を防止できるため、アルゴンガスの吹き込み量を低減できる。これにより、従来のように、吹き込まれるアルゴンガスによって、鋳片の表層及び内部に気泡が送り込まれることを防止できると共に、CaOと反応して生成した低融点のAl2 O3 −CaO系の生成物をアルゴンガスの気泡の浮上力を活用して浮上促進させ、清浄度の高い鋳片を製造できる。
以上のことから、Al2 O3 の低融点化効果によりノズル閉塞が全く無く、溶鋼の吐出流の偏流に起因する鋳片の介在物、気泡欠陥が大幅に減少でき、1.8m/minの高速鋳造を行うことができた。
図12(A)に示すように、実施例1に係るノズル交換の頻度は、従来例を1とすると0.5であった。また、図12(B)に示すように、吐出口から吐出する溶鋼の偏流の程度は、従来例を1とすると実施例1が0.7であった。
このように、本実施例1の浸漬ノズルを使用して鋳造を行うことで、従来よりも経済的で、しかも偏流の程度を低減できる。
以上のことから、浸漬ノズルの吐出口からの溶鋼の偏流を抑制できるため、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制して良品質の鋳片を鋳造することができる。特に、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
また、前記実施の形態においては、浸漬ノズルの内側面に耐火物を配置した場合について説明したが、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に配置するならば、前記した耐火物を、例えばタンディッシュの下部ノズルの内側面、又は下部ノズルから浸漬ノズルにかけての内側面に設けることも可能である。
Claims (9)
- 少なくとも骨材の一部にドロマイトクリンカーが配合され、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46〜3であって、しかも前記MgO成分が30〜70質量%含まれた耐火物を、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に配置し、これを用いて鋳型に溶鋼を注湯し、この溶鋼を凝固させながら0.6m/min以上の鋳造速度で前記鋳型から引き抜くことを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は前記浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に内装体として設けられ、前記浸漬ノズルの溶鋼の吐出口の傾斜角度が水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲であり、前記浸漬ノズルの前記吐出口をメニスカス位置から150〜350mmの深さに浸漬させて、前記鋳型に溶鋼を注湯することを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項2記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記内装体の内径は、前記浸漬ノズルの前記筒状部の内径よりも小さく、前記内装体の内側面と前記筒状部の内側面とで段差部が形成されることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガス量を0又は0.2〜10NL/minにすることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスは、前記タンディッシュに取付けたドロマイト質からなる上ノズル、前記下部ノズルのスライディングノズル、及び前記浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上から吹き込まれることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記CaO成分及び前記MgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対する前記CaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項6記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はSiO2 を含み、その含有率が3質量%以下であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項6及び7のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はFe2 O3 を含み、その含有率が3質量%以下であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は不焼成であって、この耐火物中に炭素成分が1〜10質量%含有されていることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
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