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JP4054318B2 - 品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法 Download PDF

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JP4054318B2 JP2004062691A JP2004062691A JP4054318B2 JP 4054318 B2 JP4054318 B2 JP 4054318B2 JP 2004062691 A JP2004062691 A JP 2004062691A JP 2004062691 A JP2004062691 A JP 2004062691A JP 4054318 B2 JP4054318 B2 JP 4054318B2
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Description

本発明は、溶鋼を鋳型に注湯する際に、ブルームやスラブ、ビレットなどの鋳片を製造する連続鋳造のタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルに、介在物が付着して生じるノズル詰まりや、浸漬ノズルの吐出口に生じる詰まりにより、鋳造操業が不安定化したり、また吐出口からの溶鋼の吐出流の偏流によって鋳片の品質が阻害されることを防止することができる品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法に関する。
従来、連続鋳造における溶鋼の鋳型への注湯は、タンディッシュの下部に設けた下ノズルと、この下ノズルに嵌装されて開閉動作を行うスライディングノズル(SNノズルとも言う)と、スライディングノズルに接合された浸漬ノズル(以下、連続鋳造用浸漬ノズルとも言う)とを使用して行われる。しかし、下ノズルやSNノズル、浸漬ノズルなどの注湯系(連続鋳造用ノズル)では、溶鋼中に混入する脱酸生成物であるAl23 や、溶鋼中のAlが耐火物や溶鋼中の酸素などと反応して、Al23 が生成し存在(以下、アルミナ系介在物とも言う)するため、このアルミナ系介在物が前記した注湯系に付着して、溶鋼の通路に付着や堆積することにより、注湯系に詰まりや閉塞が生じ、鋳造操業の中断や、詰まり及び閉塞に起因する鋳片の品質低下を招いている。
この対策として、石灰40〜90重量%及び炭素10〜60重量%に、炭化硼素、窒化硼素、及び硼素のいずれか1を添加して焼成する連続鋳造用ノズルが提案され、連続鋳造用ノズルの消化反応や熱膨張による脆化を抑制すると共に、連続鋳造用ノズルに付着生成するアルミナ系介在物の低融点化を図って、連続鋳造用ノズルの閉塞を防止することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
また、石灰クリンカー及び/又はドロマイトクリンカーからなる骨材35〜85重量%と黒鉛系の炭素5〜50重量%に対して、アルカリあるいはアルカリ土類金属の塩類と消石灰との反応生成物の粉末3〜25重量%を添加して得られる炭素含有の石灰質連続鋳造用ノズルが提案され、耐食性、耐スポーリング性、及び連続鋳造用ノズルに付着生成するアルミナ系介在物の低融点化が図られていた(例えば、特許文献2参照)。
特に、アルミナ系介在物の付着や堆積を抑制して連続鋳造用ノズルの閉塞を防止する発明として、溶鋼が通過する内面に黒鉛を含有しないシリカ、アルミナ、ドロマイト、マグネシア、及びジルコンの中から選ばれる1種以上の耐火骨材を使用した形成体を複数に分割し、目地を介して浸漬ノズルの内面に装着することが提案されていた(例えば、特許文献3参照)。
あるいは、CaO換算で2〜40重量%の粉末と、SiO2 含有量が1重量%未満のアルミナクリンカー、スピネルクリンカー、及びマグネシアクリンカーの中から選ばれる1種以上との混合粉末からなり、この混合粉末中の炭素、SiO2 のそれぞれの含有量が1重量%以下で、かつ0.21mm以下の粒径のものを20〜70重量%含む連続鋳造用ノズルの内孔体が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
更に、浸漬ノズルの吐出口から吐出する溶鋼量を均等にし、かつ各吐出口から吐出する溶鋼の流れを緩慢にする方法として、浸漬ノズルの筒状部の内部を縮径させて段差部を設け、上方から落下する溶鋼を段差部に衝突させ、浸漬ノズル内での溶鋼の落下エネルギーを減衰したり、また各吐出口から吐出する溶鋼の流れの偏りを無くしたりする方法が提案されている(例えば、特許文献5〜8参照)。
なお、浸漬ノズルの筒状部の内部に旋回羽根を配置し、上方から落下する溶鋼を旋回羽根に接触させ、浸漬ノズル内での溶鋼の落下エネルギーを減衰する方法も提案されている(例えば、特許文献9参照)。
特開昭57−56377号公報 特開昭57−38366号公報 実開平3−68962号公報 特開平5−285612号公報 特開平6−99256号公報 特開平11−320046号公報 特開平11−123509号公報 特開2001−239351号公報 特開2002−248551号公報
しかしながら、上記した連続鋳造用ノズルには、以下の問題がある。
まず、特許文献1及び2に記載された発明のように、石灰と炭素を主体とする組成では、連続鋳造用ノズルを構成している石灰や炭素と溶鋼中の成分とが反応して低融点化合物を生成するため、アルミナ系介在物の付着や堆積を防止できる反面、連続鋳造用ノズルの溶損が大きくなって耐火骨材が脱落し、ノズル寿命が低下して、生成した低融点化合物や連続鋳造用ノズルから脱落した耐火骨材が溶鋼中に混入し、連続鋳造用ノズルを構成している炭素による溶鋼中の炭素のピックアップ等も生じて、溶鋼の品質が低下するという問題が生じていた。
更に、溶損に伴って連続鋳造用ノズル内面の凹凸が激しくなり、介在物の付着や堆積が発生する。
そして、溶鋼の通路の詰まりや閉塞による安定した鋳造が不可能になっていた。
特に、浸漬ノズルの吐出口近傍の詰まりや閉塞現象は、付着したアルミナ系介在物の剥落による介在物欠陥を招いたり、吐出口からの溶鋼の吐出流が左右で偏流し、この吐出流の偏流による鋳片の表面欠陥、内部欠陥を解消することができないという問題がある。
特許文献3に記載された発明は、炭素を含有しない耐火骨材を使用して、炭素の酸化による浸漬ノズルの内面の平滑度の劣化を抑制して、アルミナ系介在物の付着を防止する技術思想に基づくものであるが、実際には浸漬ノズルの内面にアルミナ系介在物が付着し堆積して連続鋳造用ノズルの閉塞が生じ、鋳造過程での操業の不安定化を招いていた。
また、特許文献4に記載された発明は、連続鋳造用ノズルの内孔体の溶鋼接触面(以下、稼動面とも言う)近傍でのアルミナ生成を抑制すると共に、稼動面における溶損を抑制して稼動面の平滑性を確保し、その相乗効果からアルミナ系介在物の付着を防止する技術思想に基づくものであるが、実際にはアルミナ系介在物の付着、堆積が生じて、連続鋳造用ノズルの内孔体で閉塞が発生し、前記した特許文献1及び2と同様の問題が起こる。
また、特許文献5〜8に記載された段差を設けて溶鋼の落下エネルギーを減衰したり、吐出口からの溶鋼の吐出流の偏流を抑制する場合、及び特許文献9に記載された垂直に落下する溶鋼を旋回羽根に接触させて旋回させることにより落下エネルギーを減衰する場合においては、段差や旋回羽根に地金や介在物が付着、堆積すること、及び吐出口に地金や介在物が付着、堆積することを回避することが困難であり、その結果として介在物などが付着、堆積して吐出口を閉塞するため、実用化が不可能であった。
以上のことから、下ノズル及びSNノズルを有する下部ノズルから浸漬ノズルの注湯系においては、稼働面側から熱伝導による熱の流出が生じているので、溶鋼が浸漬ノズルの内部を通過する過程で溶鋼の温度が低下し、稼働面に地金が付着し易くなることを回避できない。更に、稼働面に接触したアルミナ系介在物は、そのまま付着したり、また前記地金の付着に随伴して付着し、この相乗作用によりアルミナ系介在物が堆積し連続鋳造用ノズルに閉塞が発生する。
なお、前記した稼働面が低炭素質及び低シリカ質の耐火物である場合においても、アルミナ系介在物の付着現象に若干の差異があるものの、同様に、溶鋼中のAl23 が稼働面に付着して連続鋳造用ノズルの閉塞が発生する。
このように、溶鋼の温度低下や溶鋼中の脱酸生成物、溶鋼中Alの酸化、Al23 成分の耐火物への接触等を防止することが、注湯系の構造上不可能であるため、実質的に浸漬ノズルなどの詰まりや閉塞を防止することができない。
そして、鋳型内の溶鋼を注湯する際に、吐出口からの溶鋼流が偏流することを防止することができず、偏流に起因する湯面変動やパウダーの巻き込み、更には気泡や介在物の鋳片深部への侵入に起因する品質欠陥を防止することができないという、共通した問題を解消することができていない実情にある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、溶鋼を鋳型内に注湯する注湯系のノズルの詰まりや閉塞を防止して、注湯作業の安定化を図ると共に、浸漬ノズルの溶鋼の吐出流の偏流を抑制することにより、良好な品質を備えた鋳片を高速鋳造で製造可能な品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う第1の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、少なくとも骨材の一部にドロマイトクリンカーが配合され、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46〜3であって、しかも前記MgO成分が30〜70質量%含まれた耐火物を、この溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に配置し、これを用いて鋳型に溶鋼を注湯し、溶鋼を凝固させながら0.6m/min以上の鋳造速度で前記鋳型から引き抜く。
このように、前記した組成からなる耐火物を、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に相当する部分に配置(例えば、その部位に使用、あるいは内張り等)したものを使用することで、溶鋼の脱酸生成物であるAl23 や、溶鋼中のAlの酸化により生成するAl23 などからなるアルミナ系介在物が、下部ノズルや浸漬ノズルなどの注湯系へ付着や堆積して生じる通路の詰まりや閉塞を防止することができる。これにより、浸漬ノズルの吐出口からの溶鋼の偏流を抑制できるため、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制して良品質の鋳片を鋳造することができる。
特に、ノズル詰まりや閉塞現象が生じた場合、鋳造速度を低速にすることで溶鋼の吐出流の偏流を抑制していたが、前記したノズルを使用することで、ノズル詰まりや閉塞現象が解消される。このため、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
ここで、注湯系における詰まりや閉塞を抑制できるのは、溶鋼中のAlの酸化や脱酸生成物からなるAl23 が、耐火物の溶鋼接触面、即ち稼働面に付着しても、耐火物中のCaO成分とこのAl23 が反応して、稼働面にAl23 −CaO系液相が形成され、このAl23 −CaO系液相中にCaO成分が溶解すると共に、MgO粒子が徐々に稼動面側から遠ざかる方向に移動しながら、徐々に凝集していくものと考えられる。
このようなMgO粒子のAl23 −CaO系液相中での移動と凝集が繰り返されることにより、MgO粒子の粗大化を伴いつつ、稼動面側にMgOリッチな層が形成される。
そして、このMgOリッチな層に存在するCaO成分が、Al23 −CaO系液相中に温度で決まる飽和濃度に達するまで連続して溶解し、Al23 −CaO系液相の融点は徐々に低下し、流動し易い状態になり、アルミナ系介在物や地金が稼働面の液相と共に流出し、アルミナ系介在物や地金に起因するノズル詰まりや閉塞が抑制でき、同時に吐出口を正常にできるので、溶鋼の吐出流の偏流を大幅に抑制することができ、吐出口の傾斜角度の自由度も大きくできる。
鋳造速度は、0.6m/min以上にすることにより、鋳片の表層や内部欠陥の無い鋳片を製造できるが、生産性をより高め、鋳片を高温度で加熱炉などの後工程に供給して熱エネルギーを有効に活用するには、鋳造速度を0.8m/min以上にすることが好ましく、更には1.0m/min以上にすることが好ましい。一方、上限値については規定していないが、溶鋼の凝固を行う例えば連続鋳造設備の冷却能力を考慮すれば、例えば2.3m/min以下の鋳造速度で鋳造するのが良い。
ここで、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46未満の場合、稼動面側に供給されるCaO量が不足して十分なAl23 −CaO系液相が形成されない。このため、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。また、耐火物の組成中のMgO含有量が多くなり過ぎて、スポーリングや割れ等が発生し易くなる。
一方、質量比W1/W2が3を超える場合、稼動面側に供給されるCaO量が過多になって過剰なAl23 −CaO系液相が形成され、保護層となり得るMgOリッチな層の形成が阻害されるため、溶損が激しくなる。また、液相成分や、溶損により脱落した耐火物中の骨材が溶鋼中に混入して鋳片の品質を低下させることになる。そして、CaO含有量が多くなると、耐火物の消化(風化)が格段に進行し易くなって耐火物の品質を著しく阻害する。
また、MgO成分の含有率が70質量%を超える場合、耐火物のMgO成分が増加して耐火物の耐スポーリング性が悪くなり、耐火物に亀裂や剥離が生じ、稼働面に付着したAl23 と反応して低融点化合物を形成するCaO量が不足し、稼動面にAl23 −CaO系液相を形成することができない。
一方、MgO成分の含有率が30質量%未満の場合、稼働面に付着したAl23 と反応して溶損が大きくなり、耐火骨材であるドロマイトクリンカーが脱落して耐火物の寿命が低下したり、脱落した骨材が溶鋼中に混入して鋳片の品質を阻害する。
以上のことから、稼動面に液相を形成すると共に、鋳片の品質を更に向上させるためには、耐火物のMgO成分の含有率を35〜65質量%にすることが好ましく、更には40〜60質量%にすることが好ましい。これにより、前記した作用をより顕著に発現できる。
また、この連続鋳造方法では、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%以下の面積に、前記した耐火物を配置しているので、アルミナ系介在物の付着や堆積が防止されて安定した鋳造を行うことができる。なお、安定した鋳造を行うことができるならば、耐火物の配置面積を、溶鋼と接する内側面の45%以下、更には40%以下とすることが好ましい。
一方、溶鋼と接する内側面で最もアルミナ系介在物が付着や堆積し易い部位に耐火物を配置し、アルミナ系介在物の付着や堆積を防止して溶鋼を常時通過させることが可能であれば、その面積を好ましくは5%以上、更には10%以上とすることが好ましい。
前記目的に沿う第2の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第1の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は前記浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に内装体として設けられ、前記浸漬ノズルの溶鋼の吐出口の傾斜角度が水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲であり、前記浸漬ノズルの前記吐出口をメニスカス位置から150〜350mmの深さに浸漬させて、前記鋳型に溶鋼を注湯する。
このように、浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に、ドロマイトクリンカーが配合された耐火物を内装体として設けるので、浸漬ノズルの詰まり防止や、溶鋼中の介在物の捕捉及び浮上促進を図ることができ、溶鋼の吐出流の偏流を抑制してその流れを均一化できる。
また、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度、及び鋳型内の溶鋼への浸漬ノズルの浸漬深さを規定することで、吐出口から吐出する溶鋼の上向き流及び下向き流の速度を抑制することができ、上向き流に起因する湯面変動やパウダー巻き込みによる欠陥、下向き流に起因する気泡や介在物の鋳片深部への侵入を抑制することができる。しかも、溶鋼の吐出流の偏流が無いので、広い範囲の吐出口角度での鋳造が可能になり、同時に浸漬深さをメニスカス位置から150〜350mmの範囲にして、安定した高速鋳造が可能になる。
ここで、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度が水平位置に対して上向き10度を超える場合、上向き流による湯面の変動やパウダーの巻き込みを生じる。
一方、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度が水平位置に対して下向き35度を超える場合、下向き流が強くなり、この下向き流に随伴する介在物や気泡が鋳片の深部に侵入し、鋳片の内部欠陥の要因になり、高品質の鋳片を製造できない。
以上のことから、高品質の鋳片を製造するためには、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度を、水平位置に対して上向き5度から下向き20度の範囲とすることが好ましく、更には水平位置に対して上向き5度から下向き15度の範囲とすることが好ましい。
また、例えば、浸漬ノズルの吐出口の上端部の浸漬深さが150mmより浅くなる場合、吐出口から吐出する溶鋼の上向き流が湯面に作用し、湯面変動やパウダーの巻き込みの原因になる。
一方、浸漬深さが350mmを超える場合、溶鋼の下向き流が強くなり、気泡や生成したAl23 −CaO系の低融点化合物やその他の介在物を鋳片の深部に随伴し、その浮上を阻害して鋳片の内部の品質が低下する。
以上のことから、高品質の鋳片を製造するためには、浸漬ノズルの吐出口の上端部の浸漬深さをメニスカス位置から200〜300mmとすることが好ましい。
前記目的に沿う第3の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第2の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記内装体の内径は、前記浸漬ノズルの前記筒状部の内径よりも小さく、前記内装体の内側面と前記筒状部の内側面とで段差部が形成される。
このように、内装体の内側面と浸漬ノズルの内側面とで段差部を形成するので、稼働面におけるAl23 の付着や堆積を防止し、同時に溶鋼の落下エネルギーを減衰し、かつ吐出する溶鋼の偏流を抑制できるので、溶鋼の吐出流を緩慢な流れにし、その流れを均一化できる。また、鋳型の冷却により成長しつつある凝固殻の内面に衝突して反転する溶鋼の上向き流及び下向き流を緩和でき、上向き流に起因した湯面(メニスカス)変動やパウダー巻き込み、また下向き流に起因する気泡や介在物の鋳片深部への侵入に起因する内部欠陥を防止できる。
前記目的に沿う第4の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第1〜第3の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガス量を0又は0.2〜10NL/minにする。
ここで、アルゴンガス(以下、Arガスとも言う)については、浸漬ノズルにアルゴンガスを吹き込まなくても、Al23 を低融点化合物にして浸漬ノズルの内面に付着、堆積することを防止できるため、Arガスを全く使用しない鋳造が可能になり、鋳片の表層及び内部において、気泡に起因した欠陥を確実に防止でき、気泡性欠陥の厳格な鋼種の品質を格段に向上することができる。
また、特に、アルミキルド鋼のように、Al23 介在物の付着傾向が大きい場合は、Arガスを吹き込むことにより、低融点化して鋳型内の溶鋼中に混濁したアルミナ系介在物を、アルゴン気泡の浮上作用によって溶鋼中から分離浮上させて、鋳片の清浄度を高めることができ、鋳片の介在物起因の欠陥を防止することができる。
ここで、Arガスの吹き込み量が0.2NL/minより少なくなれば、Arガス気泡による介在物の浮上促進効果が減少する。
一方、吹き込み量が10NL/minより多くなると、浸漬ノズルの閉鎖防止効果を良好にできるが、Arガス気泡の増加による湯面の変動やパウダーの巻き込み、凝固殻への気泡の捕捉、鋳片内部への気泡の侵入などの問題が発生し、鋳片の品質低下を招く恐れがある。
以上のことから、Arガスの吹き込みを行うことにより、よりよい結果が得られ、Arガスの吹き込みを行う場合には、その吹き込み量を、従来の吹き込み量(例えば20NL/min)より少ない0.2〜10NL/min、より好ましくは0.2〜5NL/minにすることで、Arガスの気泡の浮上力を活用し、浸漬ノズルの含有成分であるCaO成分と反応して生成した低融点のAl23 −CaO系の生成物の浮上促進を図り、清浄度の高い鋳片を製造する。
前記目的に沿う第5の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第1〜第3の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスは、前記タンディッシュに取付けたドロマイト質からなる上ノズル、前記下部ノズルのスライディングノズル、及び前記浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上から吹き込まれる。
特に、タンディッシュの上ノズルにドロマイトクリンカーを使用したドロマイト耐火物を使用し、且つこの上ノズルからも溶鋼中にアルゴンガスを吹き込むようにすることで、耐火物の稼働面をアルゴンガスで保護することができ、Al23 介在物の付着の抑制と、ドロマイト質耐火物の稼働面にMgOのリッチ層の形成が容易になり、耐火物の稼働面の溶損を抑制する効果が得られる。
また、上ノズル及びスライディングノズルのいずれか一方又は双方からのアルゴンガスの吹き込みを行うことにより、スライディングノズルへのAl23 介在物の付着の抑制作用が顕著になり、注湯量の変動を抑制して安定した鋳造が可能になる。
なお、アルゴンガスの吹き込みは、上ノズル、スライディングノズル、及び浸漬ノズルのいずれか1箇所から行うことが可能であるが、2箇所以上から行うことが好ましい。
前記目的に沿う第6の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第1〜第5の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記CaO成分及び前記MgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対する前記CaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30である。
この残部成分とは、例えば、ZrO2 、Al23 、SiC、SiO2 、Fe23 等の一般に使用される耐火物組成物を指す。
このように、耐火物中に残部成分が所定量存在すると、稼動面側に付着したAl23 と耐火物に含まれるCaOとの反応から形成されるAl23 −CaO系液相の生成、及び生成したAl23 −CaO系液相の低融点化を促進すると共に、耐火物としての耐食性も維持でき、鋳造過程を通じて稼働面を略平滑な状態に維持できる。
ここで、質量比W1/W3が2未満の場合、耐火物自体が低融点化したり、溶鋼中のAlの酸化によるAl23 の生成が促進されて、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。
一方、質量比W1/W3が30を超える場合、耐火物中のCaOの活性化が低下し、MgOリッチな層を介してのCaOの供給が少なくなり、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。
以上のことから、稼働面側のアルミナ系介在物の付着を更に抑制するためには、質量比W1/W3を4〜27とすることが好ましく、更には5〜25とすることが好ましい。
前記目的に沿う第7の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第6の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はSiO2 を含み、その含有率が3質量%以下である。
前記目的に沿う第8の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第6及び第7の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はFe23 を含み、その含有率が3質量%以下である。
特に、耐火物の残部成分中のSiO2 、Fe23 は、稼動面側に付着したAl23 と耐火物に含まれるCaOとの反応から形成されるAl23 −CaO系液相の生成を促進し、しかも耐火物自体の極端な低融点化も抑制する。
ここで、SiO2 、Fe23 がいずれも3質量%を超える場合、溶鋼中のAlと反応して稼働面でAl23 が生成し、稼働面においてアルミナ系介在物として付着、堆積が生じ易くなる。このため、Al23 と耐火物中のSiO2 、Fe23 が反応して低融点化合物を形成し、溶損を促進させるので、耐火骨材が露出して稼働面から脱落し、耐火物寿命が低下したり、介在物に起因した溶鋼汚染を招く恐れがある。
一方、下限値については規定していないが、SiO2 が0.2質量%未満、Fe23 が0.1質量%未満である場合、耐火物中のCaOの活性化が不十分となり、MgOリッチな層を介してのCaOの供給が十分に確保できなくなる。その結果、溶鋼接触面において、アルミナ系介在物の付着、堆積、更には地金付着が進行する恐れがある。
以上のことから、耐火物中のCaOを活性化させAl23 −CaO系液相の低融点化と液相量を確保して、アルミナ系介在物の付着、堆積、及び地金付着を抑制するためには、SiO2 の含有率を0.2〜3質量%、更には0.8〜3質量%とすることが好ましく、またFe23 の含有率を0.1〜3質量%、更には0.2〜3質量%とすることが好ましい。
前記目的に沿う第9の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法は、第1〜第8の発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は不焼成であって、この耐火物中に炭素成分が1〜10質量%含有されている。
ここで、炭素成分は、黒鉛を含有せず、例えば、添加される各種の炭素粉末の他に、結合剤として使用するタール、ピッチ、フェノール樹脂、タール含浸、及びその他の樹脂等の残留炭素から得ることができる。特に、消化を考慮した場合には、タール含浸することが、炭素分の付与及び気孔の閉塞に、より効果がある。
このように、耐火物は不焼成であって、この耐火物中に炭素成分が含有されているので、この炭素成分の存在により、耐火物の熱膨張歪みを吸収、緩和することができ、構造体としての安定性を高めることができる。
ここで、炭素成分の含有量が1質量%未満の場合、耐火物の熱膨張歪みを吸収、緩和する能力が小さく、構造体としての安定性を高めることができない。
一方、炭素成分の含有量が10質量%を超える場合、炭素成分の溶鋼中の酸素による酸化や、溶損による直接溶解が増大して溶損が著しくなる。また、稼動面側で耐火骨材が露出、脱落を生じる等、耐火物としての寿命を極端に低下させる。
以上のことから、炭素成分の含有量を1〜10質量%としたが、好ましくは1〜7質量%、更には1質量%を超え5質量%以下とすることが好ましい。
請求項1〜9記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、溶鋼の脱酸生成物であるAl23 や溶鋼中のAlの酸化により生成するAl23 などからなるアルミナ系介在物が、下部ノズルや浸漬ノズルなどの注湯系へ付着や堆積して生じる通路の詰まりや閉塞を防止することができる。これにより、浸漬ノズルの吐出口からの溶鋼の偏流を抑制できるため、湯面の変動を回避してパウダーの巻き込みなどの欠陥や湯面近傍への熱供給を適正にしてデケルの生成を防止し、安定した鋳造が可能になる。また、鋳片の凝固殻の内面のウォッシング(洗浄)効果を積極的に発現して、凝固殻に捕捉される気泡や介在物を速やかに浮上させて、表層部の欠陥を減少することができる。そして、各吐出口の形状が安定し、かつ耐溶損性を発現できるので、気泡や介在物に起因した表層及び内部欠陥の少ない良品質の鋳片を製造できる。
従って、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した良品質の鋳片を安定に鋳造することができる。
特に、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
特に、請求項2記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に、ドロマイトクリンカーが配合された耐火物を内装体として設けるので、浸漬ノズルの詰まり防止や、溶鋼中の介在物の捕捉及び浮上促進を図ることができ、溶鋼の吐出流の偏流を抑制してその流れを均一化できる。また、浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度、及び鋳型内の溶鋼への浸漬ノズルの浸漬深さを規定することで、吐出口から吐出する溶鋼の上向き流及び下向き流の速度を抑制することができる。
これにより、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現でき、生産性を更に高めることができる。
請求項3記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、稼働面におけるAl23 の付着や堆積を防止し、同時に溶鋼の落下エネルギーを減衰し、かつ吐出する溶鋼の偏流を抑制できるので、溶鋼の吐出流を緩慢な流れにし、その流れを均一化できる。また、上向き流に起因した湯面変動やパウダー巻き込み、また下向き流に起因する気泡や介在物の鋳片深部への侵入に起因する内部欠陥を防止できる。これにより、更に清浄度を高めた鋳片を製造できる。
請求項4記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、アルゴンガスを全く使用しない鋳造が可能になり、鋳片の表層及び内部において、気泡に起因した欠陥を確実に防止でき、気泡性欠陥の厳格な鋼種の品質を格段に向上することができる。また、アルゴンガスを吹き込む場合においては、低融点化して鋳型内の溶鋼中に混濁したアルミナ系介在物を、アルゴン気泡の浮上作用によって溶鋼中から分離浮上させて、鋳片の清浄度を高めることができ、鋳片の介在物起因の欠陥を防止することができる。
これにより、高品質の鋳片を経済的に製造できる。
請求項5記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスは、タンディッシュに取付けたドロマイト質からなる上ノズル、スライディングノズル、及び浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上から吹き込まれるので、耐火物の稼働面をアルゴンガスで保護することができる。これにより、Al23 介在物の付着の抑制と、耐火物の稼働面の溶損を抑制する効果が得られ、ドロマイト質耐火物の稼働面にMgOのリッチ層の形成が容易になり、付着の抑制と耐溶損性をより向上できる。
更に、吹き込まれたアルゴンガスの浮上作用により、鋳型内の溶鋼に混入した低融点化合物である介在物の浮上を促進して溶鋼を清浄にすることができる。
請求項6記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、耐火物中に残部成分が所定量存在するため、稼動面側に付着したAl23 と耐火物に含まれるCaOとの反応から形成されるAl23 −CaO系液相の生成、及び生成したAl23 −CaO系液相の低融点化を促進すると共に、耐火物としての耐食性も維持でき、鋳造過程を通じて稼働面を略平滑な状態に維持できるので、安定した鋳造を実施できる。
請求項7記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、残部成分にSiO2 が含まれ、また請求項8記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、残部成分にFe23 が含まれているので、稼動面側でAl23 −CaO系液相の生成を促進し、しかも耐火物自体の極端な低融点化も抑制するので、溶損やアルミナ系介在物の付着を抑制した鋳造を行うことが可能になる。
請求項9記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法においては、炭素成分の含有量を1〜10質量%としているので、耐火物の熱膨張歪みを吸収し緩和して構造体としての安定性を高めることができ、アルミナ系介在物の付着、堆積、及び地金付着を防止しながら溶鋼の炭素ピックアップを最小限度に抑制することが可能になる。その結果、極低炭素鋼の鋳片を製造することが可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を適用する連続鋳造設備の説明図、図2(A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造設備の浸漬ノズルの説明図、及び変形例に係る浸漬ノズルの説明図、図3、図4は同連続鋳造設備の浸漬ノズルの内装体にMgOリッチな層が形成されるメカニズムの説明図、図5はCaO/MgOの質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図、図6はCaO/(残部成分)の質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図、図7は実施例1に係る浸漬ノズルにおける溶損速度指数及びアルミナ系介在物の付着速度指数を示すグラフ、図8(A)、(B)はそれぞれ実施例1及び従来例に係る鋳片の鋳造中における湯面レベル、及び浸漬ノズル開度指数の変動を示すグラフ、図9は実施例1及び実施例2に係る浸漬ノズルを使用して鋳造した鋳片中に存在する鋳片介在物指数を示すグラフ、図10は製造した鋳片品質の歩留り指数及び鋳片温度による加熱炉熱量指数(生産性指数)と鋳造速度の関係を示すグラフ、図11はパウダー巻き込み、内部気泡、及び介在物の欠陥指数と浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度との関係を示すグラフ、図12(A)、(B)はそれぞれ実施例1に係る浸漬ノズルの交換頻度指数、及び偏流指数を示す説明図である。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を適用する連続鋳造設備10は、溶鋼11を貯留するタンディッシュ12と、タンディッシュ12の下部ノズル13に連通する浸漬ノズル14を介して、タンディッシュ12から溶鋼11が注湯される鋳型15とを有している。更に、この鋳型15の下流側には、多数の冷却水ノズル(図示しない)を備えた支持セグメント16と、この支持セグメント16の下流側に配置され、複数の押圧ロール(図示しない)を備えた軽圧下セグメント17と、溶鋼11を凝固させて製造する鋳片18を所定の速度で引き抜くピンチロール19とが、それぞれ設けられている。
図1、図2(A)に示すように、この浸漬ノズル14は、タンディッシュ12に取付けられたドロマイトクリンカーを主成分とする上ノズル(図示しない)の下方に設けられた下部ノズル13に連通する有底の筒状部20と、下部ノズル13から浸漬ノズル14にかけての溶鋼11(ここでは、筒状部20内の溶鋼11であって、その湯面を二次メニスカスという)と接する内側面25の1〜48%の領域、即ち筒状部20の内側面25の一部に配置される円筒形状の内装体21とを有している。この筒状部20の内側には、内装体21を装着するための空間部22が設けられ、筒状部20の軸心と内装体21の軸心とが一致するように、空間部22に内装体21を配置し、筒状部20と内装体21との間に形成される目地23にマグネシア質のモルタルを充填して、筒状部20と内装体21とを一体化させている。なお、内装体21の内側面が稼働面24(以下、溶鋼接触面とも言う)となり、しかも筒状部20の内径D1と内装体21の内径D2とが実質的に同一であるため、稼働面24が筒状部20の内側面25と同一曲面上に配置されている。
内装体21は、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46〜3.0であって、しかもMgO成分が30〜70質量%含まれた耐火物を主体としたものである。なお、この耐火物は不焼成であって、この耐火物中には、炭素成分が1〜10質量%含有されている。
また、この耐火物には、CaO成分及びMgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対するCaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30で、特に、残部成分中のSiO2 及びFe23 の各含有率が、それぞれ3質量%以下になるように調整されている。
この耐火物は、上記した組成を満足するように、ドロマイトクリンカーを骨材の一部に使用し、これに例えば粒径が0.5mm以下のMgO粒子(MgO粒)を3〜30質量%添加し、更に結合材として、例えばフェノール樹脂を添加して調整することができる。
そして、内装体21は、上記した耐火物を円筒状に成形し、フェノール樹脂を硬化処理することにより、形成することができる。
また、筒状部20は、従来から使用されている浸漬ノズル用の耐火物、例えばアルミナ黒鉛質耐火物を用いて形成することができる。
また、内装体21は、目地23を介して筒状部20に装着されているので、内装体21が溶鋼11によって加熱された際に生じる熱膨張を目地23で吸収させることができ、内装体21の熱膨張が拘束されず、内装体21の破損や、内装体21の筒状部20からの脱落を防止できる。
そして、筒状部20の下端部には、筒状部20を中心としてその両側部にそれぞれ開口した溶鋼11の吐出口26が設けられ、この各吐出口26の傾斜角度θが、水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲に設定されている。
更に、吐出口26の断面形状は、例えば、円形、楕円形、矩形等にでき、断面円形の貫通孔を備えた部材を装着することも可能である。
なお、図2(B)に示すように、内装体30の内径D3を筒状部20の内径D1よりも小さく(例えば、1/2×D1≦D3<D1)し、内装体30の内側面(稼働面)31と筒状部30の内側面32とで段差部33を形成した浸漬ノズル34を使用することもできる。
これにより、タンディッシュ12から落下する溶鋼11を段差部33に衝突させ、溶鋼11の落下エネルギーを減衰できる。
続いて、本発明の一実施の形態に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法について、図1、図2(A)を参照しながら説明する。
溶鋼11をタンディッシュ12に入れ、更にタンディッシュ12の下方に設けた浸漬ノズル14から鋳型15に注湯した。なお、鋳型15は、例えば250mm×1000〜1800mmの断面矩形状のものである。そして、鋳型15による冷却と支持セグメント16に設けた冷却水ノズルからの散水による冷却によって、凝固殻(凝固シェル)35を生成させ、凝固殻35の成長を促進しながら、ピンチロール19により0.6m/min以上の鋳造速度で鋳型15から引き抜き、鋳片18を鋳造した。
なお、浸漬ノズル14は、浸漬ノズル14の各吐出口26の上端部が、メニスカス(湯面)位置から150〜350mmの範囲の深さDで、鋳型15中の溶鋼11に浸漬するように配置し固定されている。このとき、浸漬ノズル14中に、アルゴンガスを吹き込まない場合と、Al23 介在物の付着が顕著となるためアルゴンガスを吹き込む場合との両方がある。浸漬ノズル14中へのアルゴンガスの吹き込みは、タンディッシュ12のドロマイトクリンカーからなる上ノズル、下部ノズル13のスライディングノズル(SN)プレート(スライディングノズルの一例)、及び浸漬ノズル14のいずれか1箇所又は2箇所以上を介して行うことができる。この浸漬ノズル14中へのアルゴンガスの吹き込みは、例えば、各ノズルに設けられた多孔質の耐火物、スリットなどを介して行われ、その吹き込み量の総量は、0.2〜10NL/minの範囲に調整されている。
ここで、内装体21の稼動面24が地金及びアルミナ系介在物に対して難付着性の特性を有すること、及び、内装体21の稼動面24側にMgOリッチな層が生成する現象について、図3、図4を参照しながら説明する。
図3に示すように、内装体21の内側に溶鋼11を通過させた場合、溶鋼11中のAlから生成したAl23 は内装体21の稼動面24に付着する。
ここで、ドロマイトクリンカーの組成を、例えば、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2を0.46以上としているので、付着したAl23 をドロマイトクリンカー内のCaOと反応させて低融点のAl23 −CaO系液相を形成させることができる。
更に、質量比W1/W2を3以下としているので、過剰なAl23 −CaO系液相の形成を抑えて、しかも耐火物の消化も抑えることができる。
ここで、図5に、CaO/MgOの質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定結果を示す。図5中の○は品質が良好な耐火物、×は品質が悪い耐火物、そして実線は耐火物中の炭素成分を前記した量に調整したときの影響について示している。なお、炭素成分の影響を示す実線は、その線が上昇するほど耐火物の品質が低下することを示す。
図5に示すように、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46未満の場合、稼動面側に供給されるCaO量が不足して十分なAl23 −CaO系液相が形成されないため、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。また、耐火物の組成中のMgO含有量が多くなり過ぎて、スポーリングや割れ等が発生し易くなる。
一方、質量比W1/W2が3を超える場合、稼動面側に供給されるCaO量が過多になって過剰なAl23 −CaO系液相が形成され、保護層となり得るMgOリッチな層の形成が阻害されるため、溶損が激しくなる。また、耐火物の消化(風化)が格段に進行し易くなって耐火物の品質を著しく阻害する。そして、液相成分や、溶損により脱落した耐火物中の骨材が溶鋼中に混入し、製造した鋳片に介在物欠陥が発生し、鋳片の品質を低下させる。
以上のことから、炭素成分を前記した量に調整し、かつ質量比W1/W2を0.46〜3にすることで、溶鋼中の酸素による酸化や、溶損による直接溶解を低減して、耐火物の溶損を抑制できる。また、ドロマイトクリンカーの配合量を50質量%以上、好ましくは60質量%以上とすることで、稼働面のMgOのリッチ層の形成が安定に行われる。これにより、稼動面側において、耐火骨材の露出、脱落を抑制でき、耐火物としての寿命を従来よりも延ばすことができる。
なお、ドロマイトクリンカーを60質量%以上配合し、質量比W1/W2を1.0〜2.0の範囲に調整することで、更に良好な品質の耐火物を得ることができる。
また、ドロマイトクリンカーは、CaO成分及びMgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対するCaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30で、残部成分中のSiO2 及びFe23 がいずれも3質量%以下となるように調整されている。
ここで、図6に、CaO/(残部成分)の質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定結果を示す。
CaO成分及びMgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対するCaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2未満の場合、耐スポーリング性が低下したり、溶鋼中のAlの酸化によるAl23 の生成が促進されて、稼動面側にアルミナ系介在物が付着し易くなる。
一方、質量比W1/W3が30を超える場合、耐火物中のCaOの活性化が低下し、MgOリッチな層を介してのCaOの供給が少なくなり、溶損が激しくなって稼動面側に凹凸を生じ、アルミナ系介在物が付着し易くなる。
このように、ドロマイトクリンカーの結晶粒子の粒界にSiO2 及びFe23 を有する残部成分が存在すると、ドロマイトクリンカー内のCaOと反応して低融点の化合物を形成し、CaOの移動を活発化させると共に、CaOの反応性を向上させることができる。
その結果、ドロマイトクリンカー表面に付着したAl23 とドロマイトクリンカー内のCaOとの反応が促進されて、低融点のAl23 −CaO系液相の形成が促進される。
更に、ドロマイトクリンカーの結晶粒子の粒界にSiO2 及びFe23 が存在することにより、ドロマイトクリンカーの消化を抑制して内装体21の品質劣化を防止することができる。
Al23 −CaO系液相が形成されると、この液相はCaOの飽和濃度組成になるまでドロマイトクリンカー中のCaO成分を継続して溶解させていく。
その結果、内装体21のドロマイトクリンカーの稼動面24側には、低融点化し流動性が向上したAl23 −CaO系液相が形成されることになるので、溶鋼11の流れにより、Al23 −CaO系液相が稼動面24から流出する。
なお、形成されるAl23 −CaO系液相の厚みは、ドロマイトクリンカー中へのAl23 の侵入距離により支配されると考えられる。
ドロマイトクリンカーの稼動面24では、生成したAl23 −CaO系液相は溶鋼11中に流出すると共に、溶鋼11中のAlから生成したAl23 が頻繁に付着する。このため、ドロマイトクリンカーの稼動面24側にはAl23 −CaO系液相がほぼ連続して形成されるようになる。このため、このAl23 −CaO系液相には、ドロマイトクリンカー中の未溶解のCaO粒子が徐々に溶解していき、MgO粒子の周囲にAl23 −CaO系液相が存在するようになる。
そして、MgO粒子の周囲にAl23 −CaO系液相が存在し、このAl23 −CaO系液相中にCaO粒子が溶解している状態では、MgO粒子は溶解したCaO粒子とその位置を交換するように徐々に稼動面24側から遠ざかる方向に移動(拡散)し、徐々に凝集していく。
また、0.5mm以下の粒径のMgO粒子の周囲にAl23 −CaO系液相が存在している状態では、0.5mm以下の粒径のMgO粒子も、このAl23 −CaO系液相中に溶解するCaO粒子とその位置を交換するように徐々に稼動面24側から遠ざかる方向に移動し、徐々に凝集していく。
そして、MgO粒子のAl23 −CaO系液相中での移動と凝集が繰り返されることにより、図4に示すように、MgO粒子が粗大化し、稼動面24側にMgOリッチな層が連続して形成される。
更に、このMgOリッチな層にはAl23 −CaO系液相が存在するため、CaOはAl23 −CaO系液相中に、温度で決まる飽和濃度に達するまで連続して溶解する。その結果、Al23 −CaO系液相の融点は徐々に低下し、流動し易い状態になる。
このため、MgOリッチな層の背部に存在するドロマイトクリンカー中のCaOがMgOリッチな層を介してAl23 −CaO系液相の形で稼動面側に供給されるので、溶鋼11中のAl23 が稼動面24側に付着するのを防止する。また、稼動面24側に形成されるMgOリッチな層により、稼動面24側の耐食性が向上する。
これにより、浸漬ノズル14の吐出口26からの溶鋼の偏流を抑制できるため、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制して高品質の鋳片18を鋳造することができる。
本発明に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を適用し、試験を行った結果について説明する。
浸漬ノズル14の内装体21としては、前記した組成で構成され、厚みが25mm、長さが400mmのものを使用し、この内装体21を筒状部20の内部に形成される二次メニスカス以降の溶鋼接触面をカバーするように、筒状部20の内側に空目地となるように配置した。この内装体21の稼働面24の面積は、タンディッシュ12の下部ノズル13から浸漬ノズル14にかけての溶鋼11と接する内側面の20%に相当する。なお、筒状部20はアルミナ黒鉛質耐火物を用いて形成されている。
また、2つの各吐出口26の内径をそれぞれ60mmとし、筒状部20の内径D1を70mmとして、内装体21の内径D2が筒状部20の内径D1の70mmを略確保できるように装着した(図2(A)参照)。
これにより、浸漬ノズル14の内部や吐出口26に付着、析出するAl23 を低融点化して、アルミナ系介在物の堆積を防止することができ、ノズル詰まりが解消され、吐出口26からの溶鋼11の吐出流の偏流が防止されて安定した鋳造が可能になる。
また、溶鋼11の吐出流の偏流がなくなることにより、凝固殻35の内面に衝突して反転する上向き流及び下向き流が緩和され、均一な流れとなり、上向き流に起因する湯面の変動やパウダーの巻き込みなどの品質上の問題を解消することができる。
そして、強い下向き流を抑制できるので、下降する溶鋼流に随伴する気泡や介在物が鋳片18の深部に侵入するのを防止でき、鋳片18内部の気泡や介在物に起因する欠陥を防止することができる。
更に、溶鋼11中のAlが耐火物の成分と反応してAl23 が生成するのを抑制できるので、溶鋼11中に含まれるAl23 の絶対量を少なくし、同時にAl23 と内装体21のCaOとの低融点化合物を生成させ、鋳型15内で浮上し易くすることができる。
以上のように、吐出口26の詰まりを防止できるので、溶鋼11の吐出流の偏流が防止され、注湯量の多くなる高速鋳造が可能になり、この高速鋳造時の上向き流、下向き流に起因する前記品質上の諸問題も解消でき、高品質の鋳片の生産性を高めることができる。
次に、前記した浸漬ノズル14を構成する耐火物中の炭素成分及びSiO2 の含有率を1質量%以下にし、この浸漬ノズル14を使用して鋳型15に溶鋼11を注湯した。ここで、ノズルの閉塞状況及び炭素のピックアップを調査した結果、ノズル閉塞が軽微であり、ノズル閉塞に起因する気泡や介在物の欠陥も少なかった。なお、炭素のピックアップ等は皆無であった。
このように、従来の浸漬ノズルと比較して、浸漬ノズル14の品質を高めることができた。
また、実施例1としてアルミナ黒鉛質耐火物からなり、内径D1が70mmの筒状部20に、内径D3が50mmの内装体30を装着し、筒状部20の内部に段差部33を形成した浸漬ノズル34を使用して、鋳型15に溶鋼11を注湯した(図2(B)参照)。なお、調査した事項は、ノズル閉塞状況、鋳片の介在物、気泡欠陥の有無、鋳造速度を高めた高速鋳造化、ノズル交換頻度、及び偏流指数の各要因である。また、従来例の浸漬ノズルは、空間部が設けられていないこと以外、筒状部20と略同様のものである。
図7に、実施例1及び従来例の各浸漬ノズルにおける溶損速度、及びアルミナ系介在物の付着速度の比較を、それぞれ指数化して示す。なお、実施例1では、上ノズル、スライディングノズル、及び浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上からアルゴンガスが吹き込まれており、浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガス量が0.2〜10NL/minに調整されている。
アルミナ系介在物の付着速度は、従来例を1とすると、実施例1が0であった。また、溶損速度は、従来例を1とすると、実施例1が0.2であった。
その結果、実施例1では、耐溶損性と浸漬ノズルの開口性を両立させることが可能であることが確認できた。
また、図8(A)、(B)に、鋳片の鋳造中における湯面レベル、及び浸漬ノズル開度指数の変動状況をそれぞれ示す。
図8(A)に示すように、タンディッシュの上ノズルに通常の耐火物を使用した実施例1では、アルミナ系介在物の付着速度及び溶損速度が小さいため、浸漬ノズル開度指数の変動幅が非常に小さく、それに伴って湯面レベルの変動幅も非常に小さいことが確認できた。
更に、タンディッシュの上ノズルをドロマイトクリンカーを含有するドロマイト耐火物にし、且つこの上ノズル及び浸漬ノズルからアルゴンガスの吹き込みを行い、浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスの総量を0.2〜10NL/minにした場合(実施例2)では、通常の耐火物を使用した上ノズルに比べて、浸漬ノズルの開度指数の変動幅を極めて小さくでき、それに伴って湯面レベルの変動幅を、太線で示した湯面レベルの変動幅よりも非常に小さくできることを確認できた。
一方、図8(B)に示すように、従来例ではアルミナ系介在物の付着速度が大きいために浸漬ノズルが閉塞傾向となり、一定量の溶鋼を供給するため浸漬ノズルの開度を徐々に大きくする必要が生じるため、浸漬ノズルの開度指数が徐々に大きくなっている。
そして、浸漬ノズル開度が大きくなって通過する溶鋼量が多くなると、付着していたアルミナ系介在物の剥離が生じることがあり、そのとき溶鋼の供給量が急激に増加する。このため、溶鋼供給量を低下させるように浸漬ノズル開度を小さくする必要が生じる。その結果、湯面レベル及び浸漬ノズル開度指数の変動幅が大きくなっている。
従って、図7及び図8から、実施例1の浸漬ノズルを使用すると、安定した鋳造操業が可能になることがわかる。
図9に、実施例1、実施例2、及び従来例の各浸漬ノズルを使用して鋳造した各鋳片中に存在する鋳片介在物の量を指数化して示す。
実施例1では、従来例と比較して鋳片介在物指数が1/9になっている。これは、実施例1の浸漬ノズルの耐溶損性が非常に優れているため、溶鋼中に混入する浸漬ノズルに由来する混入物の量が少なくなった結果と考えられる。
特に、実施例2では、耐火物の溶損の抑制に起因する介在物の減少、僅かに混入した介在物のアルゴンガスによる鋳型内での浮上除去作用の向上、介在物の付着に起因する吐出流の偏流の抑制などの相乗効果によって、鋳片の介在物指数を更に0.2(実施例1の1/10)まで大幅に改善できた。
図10に、製造した鋳片品質の歩留り指数及び鋳片温度による加熱炉熱量指数(生産性指数)と鋳造速度の関係を示す。なお、鋳片品質の歩留り指数は、その指数が高いほど良好な品質を備えた鋳片を製造できることを示し、また鋳片温度による加熱炉熱量指数(生産性指数)は、その指数が高いほど製造した鋳片の再加熱に要する熱量を低減できる(生産性が良好になる)ことを示している。
鋳片品質の歩留り指数は、吐出口の傾斜角度が上向き10度(□)から下向き35度(△)の範囲で、従来例(吐出口の傾斜角度が上記した範囲外:×)より良好な数値を得ることができ、特に吐出口の傾斜角度が上向き5度(○)から下向き15度(◎)の範囲で、略100%に近い数値を達成できることが分かった。なお、鋳片品質の歩留り指数は、鋳造速度の高速化に伴い悪くなる傾向が示されているが、それでも吐出口の傾斜角度が上向き5度から下向き15度の範囲では、歩留り指数の顕著な低下は確認できなかった。
また、一点鎖線で示される鋳片温度による加熱炉熱量指数は、鋳造速度の高速化に伴って上昇することから、従来のような低速の鋳造速度で生じていた鋳造過程における鋳片の温度低下を防ぎ、再加熱に要する熱量を低減できることが分かる。これにより、鋳片の生産性も高めることができる。
図11に、パウダー巻き込み、内部気泡、及び介在物の欠陥指数と浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度との関係について示す。なお、欠陥指数は、従来の浸漬ノズルで製造した鋳片の内部欠陥を1としたもので、その指数が低いほど良好な品質を備えた鋳片を製造できることを示している。
吐出口の傾斜角度が、上向き10度から下向き35度の範囲で、従来よりも良好な品質を備えた鋳片を製造できることが分かるが、特に吐出口の傾斜角度を上向き5度から下向き15度の範囲に設定することで、更に高品質の鋳片を製造できることが確認できた。
なお、浸漬ノズルの浸漬深さは、吐出口の上端部がメニスカス位置から150(□)〜350(△)mmの範囲になるように設定することで、従来よりも良好な品質を備えた鋳片を製造できることが分かるが、特に吐出口の上端部がメニスカス位置から200(○)〜250(◎)mmの範囲になるように設定することで、更に高品質の鋳片を製造できることが確認できた。
以上のことから、吐出口の傾斜角度及び浸漬ノズルの浸漬深さを上記した範囲に設定することで、溶鋼の吐出流の偏流がなくなるので、凝固殻の内面に衝突して反転する上向き流及び下向き流が緩和され、その流れが均一になる。これにより、上向き流に起因する湯面の変動やパウダーの巻き込みなどの品質上の問題を解消でき、下降する溶鋼流に随伴する気泡や介在物が鋳片の深部に侵入するのを防止でき、鋳片内部の気泡や介在物に起因する欠陥を防止することができる。
また、アルゴンガスの吹き込み量を、従来よりも少ない10NL/min(点線)にしても、従来よりも良好な品質を備えた鋳片を製造できることが分かるが、吹き込み量を更に少ない0.2〜5NL/min(実線)の範囲になるように設定することで、更に高品質の鋳片を製造できることが確認できた。
従来、アルゴンガスの吹き込みは、浸漬ノズルの内面へのAl23 の付着を防止するために行われていたが、前記した組成の耐火物で構成された内装体を使用することによってAl23 を低融点化合物にし、浸漬ノズルの内面への付着、堆積を防止できるため、アルゴンガスの吹き込み量を低減できる。これにより、従来のように、吹き込まれるアルゴンガスによって、鋳片の表層及び内部に気泡が送り込まれることを防止できると共に、CaOと反応して生成した低融点のAl23 −CaO系の生成物をアルゴンガスの気泡の浮上力を活用して浮上促進させ、清浄度の高い鋳片を製造できる。
以上のことから、Al23 の低融点化効果によりノズル閉塞が全く無く、溶鋼の吐出流の偏流に起因する鋳片の介在物、気泡欠陥が大幅に減少でき、1.8m/minの高速鋳造を行うことができた。
続いて、図12(A)、(B)に、浸漬ノズルのノズル交換頻度及び偏流指数を示す。
図12(A)に示すように、実施例1に係るノズル交換の頻度は、従来例を1とすると0.5であった。また、図12(B)に示すように、吐出口から吐出する溶鋼の偏流の程度は、従来例を1とすると実施例1が0.7であった。
このように、本実施例1の浸漬ノズルを使用して鋳造を行うことで、従来よりも経済的で、しかも偏流の程度を低減できる。
以上のことから、浸漬ノズルの吐出口からの溶鋼の偏流を抑制できるため、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制して良品質の鋳片を鋳造することができる。特に、高速鋳造を行った場合でも、浸漬ノズルからの吐出流を例えば左右均等にできるので、鋳型内の凝固殻に衝突して反転する上向き流及び下向き流を緩慢にでき、パウダー巻き込みや鋳片深部への介在物、気泡の侵入を抑制した高速鋳造を実現できる。
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、浸漬ノズルの内側面に耐火物を配置した場合について説明したが、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に配置するならば、前記した耐火物を、例えばタンディッシュの下部ノズルの内側面、又は下部ノズルから浸漬ノズルにかけての内側面に設けることも可能である。
本発明の一実施の形態に係る品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法を適用する連続鋳造設備の説明図である。 (A)、(B)はそれぞれ同連続鋳造設備の浸漬ノズルの説明図、及び変形例に係る浸漬ノズルの説明図である。 同連続鋳造設備の浸漬ノズルの内装体にMgOリッチな層が形成されるメカニズムの説明図である。 同連続鋳造設備の浸漬ノズルの内装体にMgOリッチな層が形成されるメカニズムの説明図である。 CaO/MgOの質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図である。 CaO/(残部成分)の質量比を変化させたときの耐火物の品質の良否判定の説明図である。 実施例1に係る浸漬ノズルにおける溶損速度指数及びアルミナ系介在物の付着速度指数を示すグラフである。 (A)、(B)はそれぞれ実施例1及び従来例に係る鋳片の鋳造中における湯面レベル、及び浸漬ノズル開度指数の変動を示すグラフである。 実施例1及び実施例2に係る浸漬ノズルを使用して鋳造した鋳片中に存在する鋳片介在物指数を示すグラフである。 製造した鋳片品質の歩留り指数及び鋳片温度による加熱炉熱量指数(生産性指数)と鋳造速度の関係を示すグラフである。 パウダー巻き込み、内部気泡、及び介在物の欠陥指数と浸漬ノズルの吐出口の傾斜角度との関係を示すグラフである。 (A)、(B)はそれぞれ実施例1に係る浸漬ノズルの交換頻度指数、及び偏流指数を示す説明図である。
符号の説明
10:連続鋳造設備、11:溶鋼、12:タンディッシュ、13:下部ノズル、14:浸漬ノズル、15:鋳型、16:支持セグメント、17:軽圧下セグメント、18:鋳片、19:ピンチロール、20:筒状部、21:内装体、22:空間部、23:目地、24:稼働面、25:内側面、26:吐出口、30:内装体、31:内側面、32:内側面、33:段差部、34:浸漬ノズル、35:凝固殻

Claims (9)

  1. 少なくとも骨材の一部にドロマイトクリンカーが配合され、CaO成分の含有量W1とMgO成分の含有量W2との質量比W1/W2が0.46〜3であって、しかも前記MgO成分が30〜70質量%含まれた耐火物を、溶鋼を貯留するタンディッシュの下部ノズルから浸漬ノズルにかけての溶鋼と接する内側面の1〜48%の面積に配置し、これを用いて鋳型に溶鋼を注湯し、この溶鋼を凝固させながら0.6m/min以上の鋳造速度で前記鋳型から引き抜くことを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  2. 請求項1記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は前記浸漬ノズルの筒状部の内側面の少なくとも一部に内装体として設けられ、前記浸漬ノズルの溶鋼の吐出口の傾斜角度が水平位置に対して上向き10度から下向き35度の範囲であり、前記浸漬ノズルの前記吐出口をメニスカス位置から150〜350mmの深さに浸漬させて、前記鋳型に溶鋼を注湯することを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  3. 請求項2記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記内装体の内径は、前記浸漬ノズルの前記筒状部の内径よりも小さく、前記内装体の内側面と前記筒状部の内側面とで段差部が形成されることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガス量を0又は0.2〜10NL/minにすることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記浸漬ノズル中に吹き込むアルゴンガスは、前記タンディッシュに取付けたドロマイト質からなる上ノズル、前記下部ノズルのスライディングノズル、及び前記浸漬ノズルのいずれか1箇所又は2箇所以上から吹き込まれることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記CaO成分及び前記MgO成分を除いた残部成分の含有量W3に対する前記CaO成分の含有量W1の質量比W1/W3が2〜30であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  7. 請求項6記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はSiO2 を含み、その含有率が3質量%以下であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  8. 請求項6及び7のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記残部成分はFe23 を含み、その含有率が3質量%以下であることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法において、前記耐火物は不焼成であって、この耐火物中に炭素成分が1〜10質量%含有されていることを特徴とする品質特性に優れた鋳片の連続鋳造方法。
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