JP4580155B2 - 連続鋳造用ノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属に接する耐火物、特に溶融金属の連続鋳造用ノズルに用いる耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の連続鋳造においては、溶融金属を取鍋からタンディッシュに注入し、さらにタンディッシュから鋳型内に注入する。鋳型内おいて、溶融金属と鋳型との接触部において凝固シェルが成長し、凝固シェルは下方に引き抜かれつつさらに凝固が進行し、最終的に凝固が完了して鋳片となり、引き出される。
【0003】
タンディッシュ底面には鋳造ストランド数に等しい数の注入口が設けられ、各注入口から鋳型内に溶融金属が注入される。注入口にはストッパーあるいはスライディングノズルが設けられ、これらを開閉することによって溶融金属の注入制御が行われる。
【0004】
スラブ及び大断面ブルーム連続鋳造においては、タンディッシュ2の注入口下部に浸漬ノズル1と呼ばれる連続鋳造用ノズルを設け、この浸漬ノズル先端の溶融金属吐出口9を鋳型内の溶融金属中に浸漬しつつ溶融金属の注入を行うことにより、注入溶融金属を酸化雰囲気に接触させずに鋳型内に注入することを可能にしている。浸漬ノズル1の材質としては、溶融石英あるいはAl2O3+黒鉛含有耐火物が用いられる。Al2O3+黒鉛含有耐火物製ノズルは、Al2O3の高耐火性と黒鉛の低い溶鋼濡れ性とを組み合わせた特徴があり、溶鋼に対する耐食性が強く、溶融石英質ノズルに比較して耐食性に優れているので、現在では溶鋼の連続鋳造用浸漬ノズルとして最も広く用いられている。
【0005】
Al2O3+黒鉛含有耐火物製浸漬ノズルにおいては、溶融金属が流通するノズル内周部の溶融金属流通路8に析出物が付着しやすいという性質を有している。
析出物の付着は、特に非浸漬部のノズル内壁の温度勾配の大きな部分および吐出口付近の溶融金属流速の低下する部分に多く、付着物によって鋳造作業が困難になることがある。また、鋳造中に付着物を除去する作業を行う必要があり、ここで除去された付着物は鋳片中に取り込まれて大型介在物となり、鋳片品質を悪化させる原因となる。付着する析出物の主成分はαAl2O3であり、脱酸生成物として溶融金属中に含まれているAl2O3がノズル内壁に析出して堆積するものと考えられる。浸漬ノズル内壁への析出物付着は、特にアルミキルド鋼の連続鋳造において顕著に観察される。
【0006】
特許文献1には、連続鋳造用ノズルとして、ノズル内部の少なくとも一部がドロマ/黒鉛から成るノズルが開示されている。ドロマとは耐火物として市販されているものであり、ドロマイトを焙焼して作られるものであり、最低56.5%のCaO、41.5%のMgOを含んでいることが好ましいとされる。また固体配合物中の黒鉛は少なくとも25%以上、できれば30〜35%が好ましいとしている。このような材料によって作られたノズルを使用すると、ドロマがノズルを詰まらせない可溶反応産物を作り出すので、Al2O3+黒鉛含有耐火物ノズルに見られるような詰まりトラブルを避けることができるとしている。
【0007】
適切なドロマは、直径0.15mmから1.4mmまでのサイズの微粒子を有する粉末であり、さらにドロマイトのボール破砕微粉を含有する。ボール破砕微粉の平均粒径は7.2μmであり、ボール破砕微粉は固体配合物中の20〜25%の範囲である。
【0008】
上記のドロマ/黒鉛質耐火物を採用するに際し、注入する溶融金属が接触するノズル内周面をドロマ/黒鉛質耐火物とし、注入溶融金属が接触しない外側材料としてより廉価な材料でできているものを用いることができる。外側材料には、従来から用いられているAl2O3+黒鉛含有耐火物を用いたとしても、ノズル詰まりの問題は発生しない。
【0009】
上記のドロマ/黒鉛を用いた連続鋳造用ノズルは、ステンレス鋼の連続鋳造に用いられ、ノズル詰まりの少ない鋳造を実現しているとしている。
【0010】
【特許文献1】
特表平11−506393号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物(特許文献1に記載のドロマ/黒鉛質耐火物を含む。)を用いた連続鋳造用ノズルによって連続鋳造を行うことにより、ノズル詰まりの少ない鋳造を行うことができる。一方、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物を用いた連続鋳造用ノズルは従来のAl2O3+黒鉛含有耐火物を用いたものに比較して寿命が短いという課題を有している。また、溶融金属を連続鋳造して鋳片を製造するに際しては、鋳片に内在する非金属介在物をより一層低減し、良好な内部品質を有する鋳片を製造することが要請されている。
【0012】
本発明は、特に連続鋳造用ノズルとして使用したときに鋳片品質を向上することのできる耐火物を提供するとともに、併せてCaO−MgO−黒鉛含有耐火物の寿命を延長することのできる耐火物を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、粒径0.1mm以上の構成粒子比率が80質量%以上であり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
(2)ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、構成粒子の最小粒径が0.1mm以上であり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
(3)ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、粒径0.1mm未満の構成粒子はフリーCaOを含まない金属酸化物で構成されてなり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
(4)底部に浸漬ノズル1を有する連続鋳造用タンディッシュ2であって、浸漬ノズル1として上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の連続鋳造用ノズルを用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
(5)上記(4)に記載の連続鋳造用タンディッシュ2を用い、タンディッシュ2から浸漬ノズル1を経由して溶融金属を鋳型内に注入することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、タンディッシュ2の底部に設けられる連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル1)の溶融金属流通路8に面するノズル内周面の一部又は全部にCaO−MgO−黒鉛含有耐火物11を用いることによって、ノズル詰まりの少ない鋳造が可能になる。図1に示す例では、タンディッシュ1底部に上部ノズル4が配置され、その下方にスライディングノズル5、さらにその下方に下部ノズル6が配置され、下部ノズル6の下方に浸漬ノズル1が配置されている。浸漬ノズル1の溶融金属流通路8に面する内周面にCaO−MgO−黒鉛含有耐火物11が配置され、浸漬ノズル1の外周を構成する耐火物12には別種類の耐火物、例えばAl2O3+黒鉛含有耐火物が用いられる。
【0015】
連続鋳造用ノズルの材質としてCaO−MgO−黒鉛含有耐火物を用いることによってノズル詰まりの少ない鋳造が可能になる理由は、溶融金属に含まれるAl2O3が析出してノズル内壁に堆積しようとしたとき、ノズルの耐火物材質と堆積したAl2O3とが反応して低融点物質を形成し、ノズル内壁に堆積せずに順次溶融金属で洗い流されるためであると考えられる。このとき、ノズル内壁の溶融速度が速すぎると、ノズル詰まりを防止できる一方でノズルの寿命を短縮する結果を生むこととなる。また、ノズル内壁からの離脱物が鋳造した鋳片に取り込まれたときに品質に有害な介在物となると、鋳片の品質を悪化させる原因となる。
【0016】
従来、特許文献1に記載のとおり、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物を構成する粒子の粒径は1.4mm以下とすると好ましいと考えられていた。CaO−MgO−黒鉛含有耐火物は上述の如く自己溶損によってノズル内壁への介在物付着を防止しているので、従来のAl2O3−黒鉛含有耐火物に比較してノズルの溶損速度が速く、溶損して溶融金属中に含まれる耐火物の粒径が大きすぎると、この耐火物粒が鋳片に取り込まれて品質有害な非金属介在物となる。従来のように耐火物を構成する粒子の最大粒径が1.4mmであると、溶損して溶融金属中に含まれる介在物の粒径が大きすぎ、鋳片の品質を劣化させる原因となっていた。
【0017】
本発明においては、耐火物を構成する粒子の最大粒径を0.5mm以下とすることにより、耐火物が溶損しても溶融金属中に含まれる介在物の最大粒径が小さくなり、耐火物溶損に起因する介在物を無害化でき、良好な品質の鋳片製造を可能にした。
【0018】
最近の鋼の連続鋳造においては、IF鋼をはじめとして極低炭素鋼の製造が増大している。これら極低炭素鋼の含有炭素量は0.005質量%以下である。CaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなる連続鋳造用ノズルを用いて極低炭素鋼の鋳造を行うと、耐火物中の黒鉛が溶鋼中に化学的、物理的に溶損しやすく、残存したCaO−MgO耐火物粒子が脱落しやすくなる。
【0019】
本発明においては、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中に含まれる黒鉛の含有量が少なくなるほど、極低炭素鋼鋳造時における耐火物の溶損を低減できることを見いだした。即ち、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中に含まれる黒鉛含有量を30質量%以下とすることにより、耐火物の溶損を有効に防止することができる。CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中に含まれる黒鉛含有量を25質量%以下とするとより好ましい。
【0020】
本発明のCaO−MgO−黒鉛含有耐火物においては、CaO含有量を20質量%以上とする。CaOを20質量%以上含有させることにより、ノズルの内周面にAl2O3介在物が付着しようとしたときに低融点物質を形成しやすくなり、ノズル内周面への介在物付着を有効に防止することができるからである。
【0021】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物においては、CaO中にMgOが分散した形態の粒子が見られる。ここでは、このような粒子を「D粒子」と呼ぶ。本発明においては、上記D粒子の含有率が30質量%以上であると好ましい。D粒子はCaOとMgOが適度に分散した組織であるため、Al2O3とCaOが反応して低融点化合物となった後に、残存したMgO粒子同士が合体・粗大化して稼働面近傍で保護皮膜として作用し、溶損速度を抑制できる。D粒子の含有率が30質量%以上であれば、溶損速度を有効に抑制することができる。
【0022】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中のCaO−MgO部分について、上記D粒子以外には、MgO、CaO、ZrO2、SiO2、Fe2O3が含まれている。MgO、CaOについては、必ずしもD粒子として含有させる必要はなく、MgO、CaOの単独相として含有していても良いが、分散性がなく偏在した場合、特に稼働面に対してMgOが壁を作った場合、CaOの供給を阻害する可能性がある。また、ZrO2、SiO2、Fe2O3などはCaOと低融点物を形成するため、含有率は少ない方がよい。
【0023】
従来、特許文献1に記載のとおり、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物を構成する粒子として、ドロマイトのボール破砕微粉を20〜25%含有させるものと考えられていた。ボール破砕微粉は平均粒径7.2μmの微細粒子である。
【0024】
本発明においては、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中に0.1mm未満のCaO粒子が存在すると、ノズル内壁に析出したAl2O3との反応によって耐火物の組織を脆弱化し、粗粒の脱落を助長し、耐火物寿命を短縮するとともに、脱落した粗粒が鋳片に巻き込まれて品質に悪影響を及ぼす介在物となることを明らかにした。
【0025】
本発明はさらに、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中に含まれる0.1mm未満の粒子が合計で20%未満であれば、微小CaO粒子による上記悪影響を問題のないレベルに低減できることを明らかにした。即ち、粒径0.1mm以上の構成粒子比率を80質量%以上とすればよい。もちろん、構成粒子の最小粒径を0.1mm以上とすればより好ましい。あるいは、たとえ粒径0.1mm未満の粒子を含んでいても、粒径0.1mm未満の構成粒子はフリーCaOを含まない金属酸化物で構成されていれば、上記品質問題を解消することができる。
【0026】
本発明のCaO−MgO−黒鉛含有耐火物を連続鋳造用ノズルのノズル内周面の一部又は全部に用いることにより、連続鋳造中にノズル内周面にAl2O3をはじめとする析出物が形成されるのを防止している。このCaO−MgO−黒鉛含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦4、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)、かつCaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であると好ましい。
【0027】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の結晶構造は、CaO相とMgO相が混在したものであり、黒鉛はCaOとMgOとが共存する結晶粒の粒子間に板状に充填される形で存在している。ノズル内周面の材質がCaO−MgO−黒鉛含有耐火物であるとAl2O3析出物の付着が少ない理由は、溶融金属から析出したAl2O3がノズル内周面に付着したとき、耐火物中のCaO相と付着Al2O3とが反応して低融点物質を生成し、そのために付着した析出物が再度溶融金属中に浮遊していくためであると考えられる。従って、ノズル内周面を形成する耐火物中にCaO相が存在すれば、析出物付着を防止する能力を有する。本発明においてはCaO含有量が20質量%以上であるから、必然的にCaO−MgO−黒鉛含有耐火物中のMgO/CaOは4以下となり、耐火物中に確実にCaO相を存在させることができ、析出物付着防止効果を発揮することができる。MgO/CaO比が低いほどCaO相の存在比率が増大するので、析出物付着防止効果を向上させることができる。MgO/CaO≦1であるとより好ましい。MgO/CaO≦0.72であるとさらに好ましい。
【0028】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中のMgO分は、溶融金属中のAl2O3とCaOが反応して低融点化合物となった後に、残存したMgO粒子同士が合体・粗大化して比較的融点の高い反応生成物をつくるため、ノズル内面耐火物の溶損を抑制するという機能を有する。この機能を発揮させるためには、MgO/CaO≧0.03とすることが必要である。MgO/CaO≧0.2であるとより好ましい。MgO/CaO≧0.42であるとさらに好ましい。
【0029】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物を製造するに際し、耐火物中のCaO−MgO源として通常はドロマイトを用いる。ドロマイト中のCaCO3とMgCO3の比率が生産地によって異なる。ドロマイトを用いて製造した耐火物中のMgO/CaO比は、通常は0.49〜1の範囲に存在することになる。この範囲であれば上記好ましいMgO/CaO比を実現することができる。
【0030】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物中の黒鉛は、黒鉛がもつ高熱伝導性により、耐熱スポーリング性に優れるという機能を有する。この機能を発揮させるためには、黒鉛/(CaO+MgO+C)を0.05以上とする必要がある。0.15以上であればより好ましい。
【0031】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物においては、CaO+MgO+黒鉛の合計を90質量%以上とする。不純物の含有量が10%超となると、耐火性が低下するとともに、耐火物の主要物質との低融点物質を形成し易くなるため本発明の内孔体としての特性が得られなくなるためである。
【0032】
本発明において、上記CaO−MgO−黒鉛含有耐火物に代えてCaO−黒鉛含有耐火物を用いても良い。MgOを含有していないので上記ノズル内面耐火物の溶損抑制機能を発揮することはできないが、耐火物のライニング厚みを使用回数にあわせてコントロールできるという理由で十分にノズル内周面としての機能を果たすことができ、さらに優れた析出物付着除去効果を発揮することができる。この場合において、CaO−黒鉛含有耐火物は0.05≦黒鉛/(CaO+黒鉛)、かつCaO+黒鉛の合計が90質量%以上の条件を満足すると好ましい。
その理由は、上記CaO−MgO−黒鉛含有耐火物における理由と同様である。
【0033】
本発明において、上記CaO−MgO−黒鉛含有耐火物に代えてCaO−MgO含有耐火物を用いても良い。
【0034】
連続鋳造用ノズルの内周面は溶鋼と接触する部分である。黒鉛を含有する耐火物においては、耐火物骨材の間に黒鉛が板状に存在する。ノズルの内周面に黒鉛を含有した耐火物を用いると、耐火物中の黒鉛の部分が溶鋼と反応する形で基材の間から溶損されていく。従って、黒鉛を含有しない耐火物の方が耐火物の溶損速度が小さくなり、寿命が長くなり、有利になることがある。一方、黒鉛を含有しない耐火物は耐スポーリング性が悪化するので、予熱時の昇温速度を小さくするなどの予熱の工夫が必要となる。ノズル内周面にCaO−MgO含有耐火物を用い、ノズル外周面にAl2O3+黒鉛含有耐火物を用いることとすれば、内周面のCaO−MgO含有耐火物の内面と外面との温度差が小さくなり、かつ蓄熱効果もあるので、耐スポーリング性をさほど損なわずにノズルを形成することができる。ただし、ノズル内外周の耐火物間で線膨張係数の差が大きく、ノズル外周面を構成するAl2O3+黒鉛含有耐火物に比較して内周面のCaO−MgO含有耐火物の方が予熱時に膨張速度が大きいので、Al2O3+黒鉛含有耐火物との接合部にCaO−MgO含有耐火物の膨張を吸収することができるモルタルもしくは接合剤が必要となる。あるいは、外周を構成する耐火物が内周耐火物の膨張を抑制できるように、外周耐火物の厚さを十分に取ることとしても良い。
【0035】
ノズルの内周面にCaO−MgO含有耐火物を用いる場合において、CaO−MgO含有耐火物の組成は、0.03≦MgO/CaO≦4、かつCaO+MgOの合計が90質量%以上の条件を満足すると好ましい。その理由は、上記CaO−MgO−黒鉛含有耐火物における理由と同様である。また、黒鉛を積極的には含有しないが、5%未満の範囲で黒鉛を含有していても構わない。
【0036】
ノズル内周面の一部又は全部が本発明の耐火物からなる連続鋳造用ノズル1を浸漬ノズルとして採用し、この浸漬ノズルを底部に装着したタンディッシュ2を構成することができる(図1)。このタンディッシュ2を用いて溶融金属の連続鋳造を行えば、連続鋳造中における浸漬ノズル内周面への析出物の付着を防止しつつ、浸漬ノズルの寿命を延長することができ、また有害介在物の少ない良好な品質の鋳片を鋳造することが可能になる。
【0037】
本発明の連続鋳造用ノズルを浸漬ノズルとして使用する際に、外周を構成する耐火物12としてAl2O3+黒鉛含有耐火物を用いた場合には、浸漬ノズルの外周部であってスラグラインに相当する部分には、スラグによる溶損を防止するためのスラグライン耐火物を配置すると好ましい。たとえば、ZrO2+黒鉛系耐火物を用いることができる。
【0038】
もちろん、浸漬ノズル1の全体を本発明の耐火物で形成することとしても良い。その場合にも、浸漬ノズルの外周部であってスラグラインに相当する部分には、スラグによる溶損を防止するためのスラグライン耐火物を配置すると好ましい。
【0039】
本発明を用いた連続鋳造においては、Al脱酸鋼を鋳造した場合でも、ノズル内面にAl2O3の付着が見られずノズル絞りが発生しない。そのため、通常浸漬ノズルの内面にAl2O3が付着することを防止することを目的として、浸漬ノズル内面、もしくは上ノズルよりArガス等の不活性ガスを吹き込む必要性が無くなる。従って、要求される鋳片の品質水準に応じて任意に不活性ガス流量を削減可能となり、ピンホールの少ない鋳片の製造が可能となり、表面品質に優れた板材の製造が可能となる。
【0040】
上記本発明の連続鋳造用ノズルは、タンディッシュに接続する浸漬ノズルとして使用したときに最も優れた効果を発揮するが、この用途に限定されるものではなく、たとえば取鍋に接続して溶融金属をタンディッシュに注入する際の連続鋳造用ノズルとして使用しても同様に効果を発揮することができる。
【0041】
【実施例】
転炉にて溶製した溶鋼300tonを、RHにて所定の成分濃度に調整した極低炭素鋼の溶鋼を、タンディッシュ、浸漬ノズルを介して垂直曲げ型の連続鋳造機で、厚み250mmの鋳片に鋳造した。溶鋼成分範囲は、C:0.01%以下、Si:0.03%以下、Mn:0.08〜0.13%、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.015〜0.1%である。鋳片幅は1200〜1400mm、鋳造速度は1.5〜1.8m/minである。浸漬ノズル内へのAr吹き込み量は8リットル/分である。鋳片は通常の方法で熱間圧延を行い、さらに冷間圧延によって厚さ0.9mmの冷延鋼板を製造した。
【0042】
浸漬ノズル1を中心とする、タンディッシュ2から鋳型内への注入時に通過する溶鋼に接する耐火物として、図1に示す耐火物を用いた。注入用耐火物として、タンディッシュ2に上部ノズル4が配置され、上部ノズル4の下方にスライディングノズル5、その下方に下部ノズル6、さらにその下に浸漬ノズル1が配置される。スライディングノズル5は、2枚の固定プレートと移動プレートとによって構成され、固定プレートと移動プレートに設けられた開口部の位置を調整することによって溶鋼注入量を調整する。
【0043】
図1に示すように、浸漬ノズルのうちで溶鋼に接する内側部分11にCaO−MgO−黒鉛含有耐火物を用い、外側部分12はAl2O3−黒鉛含有耐火物としている。また、上部ノズル4の全体についてCaO−MgO−黒鉛含有耐火物を用いている。スライディングノズル5、下部ノズル6の材質は、いずれの水準においてもAl2O3−黒鉛含有耐火物を用いた。
【0044】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物における基準となる組成において、成分として、CaO:43質量%、MgO:32質量%、黒鉛:25質量%のものを用いた。また、基準組成のものは耐火物最大粒子径を0.5mmとし、耐火物粒径をすべて0.1mm以上とした。
【0045】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の耐火物最大粒子径を、0.3、0.5、0.8、1.4mmと変化させ、それぞれの耐火物を用いて連続鋳造を行い、鋳片の品質欠陥発生状況を評価した。品質評価については、介在物系スリバー疵による不合格率を評価し、耐火物最大粒子径が0.5mmの場合を基準として鋳片品質評価欠陥指数とした。結果を図2に示す。図2から明らかなように、耐火物最大粒子径が0.5mm以下であれば、鋳片品質欠陥指数が低く、良好な結果を得ることができる。
【0046】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の黒鉛含有量を25、30、35%と変化させ、それぞれの耐火物を用いて連続鋳造を行い、浸漬ノズルの溶損状況について評価した。評価はノズルの使用時間と使用後ノズルの内孔溶損量から算出した内孔溶損速度を指数化したものを用いた。結果を図3に示す。図3から明らかなように、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の黒鉛含有量が低いほど浸漬ノズルの溶損指数が改善され、黒鉛含有量30質量%以下、より好ましくは25質量%以下において良好な結果を得ることができる。
【0047】
CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の耐火物構成粒子について、耐火物粒径をすべて0.1mm以上とした場合と、0.1mm未満を30%あるいは20%含有させた場合、0.1mm未満の耐火物としてMgOを20%含有させた場合とで、それぞれの耐火物を用いて連続鋳造を行い、鋳片の品質欠陥発生状況を評価した。評価方法は上記耐火物最大粒子径を変化させたときの評価と同様である。耐火物粒径0.1μm未満を30%あるいは20%含有させたものについては、CaO:MgO比が6:4であるD粒子の微粉を使用した。結果を図4に示す。耐火物粒径0.1mm未満のものを30%含有する場合に比較して、0.1mm未満のものを含有しないことによって、鋳片の品質が改善されることが明らかである。またたとえ0.1mm未満のものを含有するとしても、0.1mm未満のものがMgOであってフリーCaOを含有しなければ、鋳片の品質はやはり改善される。0.1mm未満のものの含有量が20%、即ち粒径0.1mm以上の構成粒子比率が80質量%以上であれば、0.1mm未満含有量30%に比較すると品質が改善されている。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、CaO−MgO−黒鉛含有耐火物において、黒鉛:30質量%以下、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下とすることにより、この耐火物を連続鋳造用ノズル内周面の一部又は全部として用いたときに、耐火物の寿命を延長するとともに鋳造した鋳片の品質を向上することができる。また、上記耐火物の粒径0.1mm以上の構成粒子比率が80質量%以上又は構成粒子の最小粒径が0.1mm以上又は粒径0.1mm未満の構成粒子はフリーCaOを含まない金属酸化物で構成することにより、同じく耐火物の寿命を延長するとともに鋳造した鋳片の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の耐火物を用いた浸漬ノズルをタンディッシュに設置した状況を示す部分断面図である。
【図2】CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の耐火物最大粒子径と鋳片品質欠陥との関係を示す図である。
【図3】CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の黒鉛含有量と耐火物溶損との関係を示す図である。
【図4】CaO−MgO−黒鉛含有耐火物の0.1mm未満耐火物の存在状況と鋳片品質欠陥との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)
2 タンディッシュ
4 上部ノズル
5 スライディングノズル
6 下部ノズル
8 溶融金属流通路
9 吐出口
11 CaO−MgO−C含有耐火物
12 外側を構成する耐火物
Claims (5)
- ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、粒径0.1mm以上の構成粒子比率が80質量%以上であり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
- ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、構成粒子の最小粒径が0.1mm以上であり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
- ノズル内周面の一部又は全部が、CaO:20質量%以上、黒鉛:30質量%以下、CaO+MgO+黒鉛の合計が90質量%以上であり、構成粒子の最大粒径が0.5mm以下であり、粒径0.1mm未満の構成粒子はフリーCaOを含まない金属酸化物で構成されてなり、CaO中にMgOが分散した形態の粒子(以下「D粒子」という。)の含有率が30質量%以上であり、0.42≦MgO/CaO≦1、0.05≦黒鉛/(CaO+MgO+黒鉛)であることを特徴とするCaO−MgO−黒鉛含有耐火物からなることを特徴とする連続鋳造用ノズル。
- 底部に浸漬ノズルを有する連続鋳造用タンディッシュであって、該浸漬ノズルとして請求項1乃至3のいずれかに記載の連続鋳造用ノズルを用いてなることを特徴とする連続鋳造用タンディッシュ。
- 請求項4に記載の連続鋳造用タンディッシュを用い、タンディッシュから浸漬ノズルを経由して溶融金属を鋳型内に注入することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
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