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JP2011097754A - 永久磁石埋込型電動機及び送風機 - Google Patents

永久磁石埋込型電動機及び送風機 Download PDF

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JP2011097754A JP2009249686A JP2009249686A JP2011097754A JP 2011097754 A JP2011097754 A JP 2011097754A JP 2009249686 A JP2009249686 A JP 2009249686A JP 2009249686 A JP2009249686 A JP 2009249686A JP 2011097754 A JP2011097754 A JP 2011097754A
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Abstract

【課題】高速回転時の遠心力に対する強度を確保すると共に、位置センサレス120度通電方式で制御可能な、高効率、安価で高速回転が可能な永久磁石埋込型電動機及びその永久磁石埋込型電動機を用いた送風機を提供する。
【解決手段】 この発明に係る永久磁石埋込型電動機100は、回転子90が、薄板の電磁鋼板を複数枚積層して構成される回転子鉄心4と、回転子鉄心4の外周縁に沿って設けられ、全体が略コの字状で、周方向両端が内側に屈曲した円弧状の非磁性体部9を有する複数の磁石挿入孔5と、磁石挿入孔5に埋め込まれる複数の永久磁石6と、永久磁石6の外周側に配置される回転子鉄心4の一部に設けられ、空気層からなるスリット7と、を備え、非磁性体部9は、永久磁石6の外周側表面よりも内側に配置するように構成され、かつ永久磁石6の内周側表面よりも内径側に延びるように形成されるものである。
【選択図】図1

Description

この発明は、主に送風機等に使用され、高速回転を行う永久磁石埋込型電動機に関する。また、その永久磁石埋込型電動機を搭載した送風機に関する。
永久磁石埋込型電動機では、磁極間の漏れ磁束を低減するために、回転子の磁極間外周部の磁路を狭くする設計方法が従来より用いられている。この際、高速に回転する電動機では、遠心力による機械的強度が課題となる。
従来、永久磁石式リラクタンス型回転電機の組立時の永久磁石の挿入を容易にするとともに、製造の機械化を可能とし、また永久磁石を固定する接着剤が劣化した場合においても、永久磁石の飛散及び回転子の破損の恐れをなくし、高出力化、高効率化、高速化、及び高信頼性を図るため、永久磁石埋め込み穴に永久磁石位置決め用突起を設けることにより、永久磁石を支持するようにした。また回転子鉄心内の薄肉部の形状を最適化することにより、永久磁石より発生する磁束の漏れを低減し、かつ応力の集中する薄肉部の強度を確保した永久磁石リラクタンス型回転電機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
またロータ(回転子)の機械的強度の確保と、漏れ磁束の抑制との両立を図るため、ロータは複数の磁極を有し、各磁極に対応する位置にスロットが形成されたヨークと、各スロットに挿入された永久磁石とを備えてなり、ヨークは、スロットの両端部にブリッジを有し、ブリッジの厚さが、ロータの回転中心側から外周へ向けて連続的または段階的に減少しているモータ(電動機)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−339919号公報 特開平9−224338号公報
しかしながら、上記特許文献1の永久磁石式リラクタンス型回転電機は、高速回転時には永久磁石の外周側の空気穴と回転子鉄心外周間の薄肉部に大きな応力集中が生じるため、薄肉部の径方向厚さを遠心力に耐えるように大きく設計する必要があり、その場合、極間の磁束漏れが大きくなり回転電機の特性が低下する課題があった。
また、上記特許文献2のモータは、回転子の回転速度が毎分1万rpm(回転数/分)を超えるような高速回転では十分な機械的強度が得られない場合がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、高速回転時の遠心力に対する強度を確保すると共に、位置センサレス120度通電方式で制御可能な、高効率、安価で高速回転が可能な永久磁石埋込型電動機及びその永久磁石埋込型電動機を用いた送風機を提供する。
この発明に係る永久磁石埋込型電動機は、固定子鉄心に巻線を施した固定子の内側に空隙を介して回転子が配置され、回転子の回転位置を位置センサで検出しない位置センサレス120度通電方式で制御される永久磁石埋込型電動機において、
回転子は、
薄板の電磁鋼板を複数枚積層して構成される回転子鉄心と、
回転子鉄心の外周縁に沿って設けられ、全体が略コの字状で、周方向両端が内側に屈曲した円弧状の非磁性体部を有する複数の磁石挿入孔と、
磁石挿入孔に埋め込まれる複数の永久磁石と、
永久磁石の外周側に配置される回転子鉄心の一部に設けられ、非磁性体層からなるスリットと、を備え、
非磁性体部は、永久磁石の外周側表面よりも内側に配置するように構成され、かつ永久磁石の内周側表面よりも内径側に延びるように形成されるものである。
この発明に係る永久磁石埋込型電動機は、磁石挿入孔を全体が略コの字状で、周方向両端が内側に屈曲した円弧状の非磁性体部を有する構成とし、かつ永久磁石の外周側に非磁性体層からなるスリットを配置することで、高速回転時の遠心力に対する応力を緩和させると共に、位置センサレス120度通電方式で高速運転を実現できるという効果がある。
実施の形態1を示す図で、永久磁石埋込型電動機100の横断面図。 図1の部分拡大図。 実施の形態1を示す図で、固定子80の横断面図。 実施の形態1を示す図で、固定子鉄心1の平面図。 図4の部分拡大図。 実施の形態1を示す図で、回転子90の横断面図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心4の平面図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心4の極間部付近の拡大図。 図6の部分拡大図。 実施の形態1を示す図で、変形例1の永久磁石埋込型電動機200の横断面図。 実施の形態1を示す図で、変形例1の回転子190の横断面図。 実施の形態1を示す図で、変形例1の回転子鉄心104の平面図。 図12の部分拡大図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心104の極間部付近の拡大図。 実施の形態1を示す図で、変形例2の永久磁石埋込型電動機300の横断面図。 図15の部分拡大図。 実施の形態1を示す図で、変形例2の回転子290の横断面図。 実施の形態1を示す図で、変形例2の回転子鉄心204の平面図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心204の極間部付近の拡大図。 実施の形態1を示す図で、変形例3の永久磁石埋込型電動機400の横断面図。 実施の形態1を示す図で、変形例3の回転子390の横断面図。 実施の形態1を示す図で、変形例3の回転子鉄心304の平面図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心304のスリット307付近の拡大図。 図23の拡大図。 実施の形態1を示す図で、スリット307の拡大図。 実施の形態1を示す図で、回転子鉄心304の極間部付近の拡大図。 比較のために示す図で、第四円弧部454の半径を大きくした回転子鉄心404の極間部付近の拡大図。
実施の形態1.
図1乃至図26は実施の形態1を示す図で、図1は永久磁石埋込型電動機100の横断面図、図2は図1の部分拡大図、図3は固定子80の横断面図、図4は固定子鉄心1の平面図、図5は図4の部分拡大図、図6は回転子90の横断面図、図7は回転子鉄心4の平面図、図8は回転子鉄心4の極間部付近の拡大図、図9は図6の部分拡大図、図10は変形例1の永久磁石埋込型電動機200の横断面図、図11は変形例1の回転子190の横断面図、図12は変形例1の回転子鉄心104の平面図、図13は図12の部分拡大図、図14は回転子鉄心104の極間部付近の拡大図、図15は変形例2の永久磁石埋込型電動機300の横断面図、図16は図15の部分拡大図、図17は変形例2の回転子290の横断面図、図18は変形例2の回転子鉄心204の平面図、図19は回転子鉄心204の極間部付近の拡大図、図20は変形例3の永久磁石埋込型電動機400の横断面図、図21は変形例3の回転子390の横断面図、図22は変形例3の回転子鉄心304の平面図、図23は回転子鉄心304のスリット307付近の拡大図、図24は図23の拡大図、図25はスリット307の拡大図、図26は回転子鉄心304の極間部付近の拡大図。
図27は比較のために示す図で、第四円弧部454の半径を大きくした回転子鉄心404の極間部付近の拡大図である。
図1乃至図9により、永久磁石埋込型電動機100の構成を説明する。
図1に示すように、永久磁石埋込型電動機100は、少なくとも固定子80と回転子90とを備える。
永久磁石埋込型電動機100を、以下、単にモータまたは電動機と呼ぶ場合もある。
図3に示すように、固定子80は、少なくとも、固定子鉄心1と、巻線3と、図示しない絶縁材(スロットセル等)とを備える。
固定子鉄心1は、全体の断面形状がドーナッツ状で、外周側に断面形状がリング状のコアバック23が形成されている。このコアバック23から、内側に放射状に12個の歯部21が周方向に略等間隔に設けられている(図4参照)。
歯部21の周方向の幅は、径方向に略均一である。即ち、歯部21は、固定子鉄心1の内周側に向かって略平行の形状を有している。歯部21の内径側の先端部21aは、両サイドが周方向に広がるような円弧状をなしている(図4、図5参照)。ただし円弧状でなくてもよく、例えば直線状でも良い。
隣接する二つの歯部21と、コアバック23の一部とで囲まれる空間をスロット22と呼ぶ。歯部21の数が12個であるから、スロット22の数も12個である。
歯部21の周方向の幅は径方向に略均一であるから、スロット22の周方向の幅は内側から外側に向かって徐々に大きくなる(図4、図5参照)。
スロット22の内周側(回転子90側)は、開口している。このスロット22の内周側(回転子90側)の開口している部分を、スロット開口部22aと呼ぶ(図5参照)。
巻線3は、このスロット開口部22aからスロット22内に挿入される。
各々のスロット22の内部には、スロットセルなどの絶縁材(図示せず)を介して、三相4極の分布巻方式で巻かれた巻線3が施されている。巻線3には、銅線の外側に絶縁被膜が施されたマグネットワイヤなどが用いられる。
固定子鉄心1は、薄板の電磁鋼板(例えば0.1〜1.0mm程度の板厚の無方向性電磁鋼板(鋼板の特定方向に偏って磁気特性を示さないよう、各結晶の結晶軸方向をできる限りランダムに配置させたもの))を所定の形状に金型で打ち抜き、所定の枚数(複数枚)積層して構成される。
固定子80の内径側に空隙25(図2参照)を介して配置される回転子90は、少なくとも回転子鉄心4、永久磁石6、出力軸60とを備える。4個の永久磁石6を、周方向の極性が交互に異なるように配置して、4極の回転子90を構成する(図6参照)。
回転子鉄心4も、固定子鉄心1と同様に薄板の電磁鋼板(例えば0.1〜1.0mm程度の板厚の無方向性電磁鋼板)を所定の形状に金型で打ち抜き、所定の枚数(複数枚)積層して構成される。
回転子鉄心4は、固定子鉄心1と同じ材料の電磁鋼板を使用しても良いし、別の材料の電磁鋼板を使用しても良い。例えば、固定子鉄心1の電磁鋼板の厚さを、回転子鉄心4の電磁鋼板の厚さより薄い材料に設定しても良い。これにより、固定子鉄心1の鉄損が低減して、高効率な永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
回転子鉄心4には、外周縁に沿って4個の磁石挿入孔5が周方向に略等間隔に設けられる(図7参照)。4個の磁石挿入孔5には平板状の4枚の永久磁石6が、極性が交互に逆になるように挿入され、4極の回転子90を構成している(図6参照)。
固定子80と回転子90との間の空隙25は、例えば、径方向寸法が0.2〜2.0mm程度である(図2参照)。
図6乃至図8により、永久磁石埋込型電動機100の回転子90および回転子鉄心4について、さらに詳細に説明する。
回転子鉄心4には、平板状の永久磁石6を埋め込むための磁石挿入孔5が、外周縁に沿って周方向に略等間隔に設けられている(図7参照)。
また、回転子鉄心4の略中心部に、出力軸60が嵌合する軸孔10が形成されている(図7参照)。
本実施の形態では、4ヶ所の磁石挿入孔5に、4枚の平板状の永久磁石6が挿入されている(図6参照)。永久磁石6は、ネオジウム系の希土類永久磁石を使用することが望ましいが、他の材質(例えばフェライト)の永久磁石6を用いても良い。
永久磁石6は、磁石挿入孔5の両端部付近に形成された永久磁石止め部51で周方向の位置が決められる(図8参照)。
回転子鉄心4を構成する薄板の電磁鋼板の積層方法については、抜きカシメやリベットで固定しても良いし、接着剤を用いて固定しても良い。
磁石挿入孔5は全体が略コの字状であり、磁石挿入孔5の両端は、出力軸60側に屈曲している。両端の屈曲した部分には、永久磁石6は存在せず、空気層などの非磁性体部9を構成している(図6参照)。
永久磁石6の周方向端部に隣接して形成される非磁性体部9は、回転子鉄心4を構成する電磁鋼板に比べて透磁率が低いため、磁束が通りにくく、磁束の通る磁路(漏れ磁束)を制御する役割を有している。
隣接する永久磁石6の間の漏れ磁束が増加すると、回転子90の磁束が固定子80に流れにくくなり、永久磁石埋込型電動機100の特性が低下することがあった。つまり漏れ磁束の増加に伴い、電動機に流す電流を多くする必要があるため、その結果、電動機の損失が増加し、効率が低下するという課題がある。
本実施の形態では、回転子90は永久磁石埋込型であり、磁石挿入孔5の周方向端部に形成される非磁性体部9の端部形状は第三円弧部53(図8参照)となるように構成する。第三円弧部53は、磁石挿入孔5の外周側端面の直線部5aに接する接円11の一部である(図8参照)。
非磁性体部9は、永久磁石6の外周側表面よりも出力軸60側に屈曲するように配置されると共に、永久磁石6の内周側表面よりも出力軸60側に屈曲するように配置させる(図6参照)。
なお磁石挿入孔5の外周側端面の直線部5aの長さを一定として、第三円弧部53の半径を変化させると、第三円弧部53の半径が大きくなるにつれて、隣接する磁石挿入孔5の間の極間薄肉部12(図8参照)の周方向幅が狭くなることになる。
後述するが、第三円弧部53の半径を大きくすることで遠心力に対する強度が向上するが、最小限の磁石挿入孔5の間の極間薄肉部12の周方向幅が確保させる範囲に設定する必要がある。
磁石挿入孔5の間の極間薄肉部12の最小限の周方向幅は、一般的に回転子鉄心4を構成する電磁鋼板の一枚の厚さ(0.1〜1.0mm程度)である。回転子90が高速回転すると上記の極間薄肉部12にも、永久磁石6および磁石挿入孔5の外側の鉄心(回転子鉄心4の一部)に作用する遠心力が加わるため、遠心力に耐える強度を確保する必要がある。
ここでは非磁性体部9は空気層の場合について説明したが、非磁性体部9に接着剤を入れて永久磁石6を固定する方法や、樹脂を注入(充填)する方法を採用することで、遠心力に対する強度を向上させることが可能であり、信頼性の高い永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
また本実施の形態では、図8に示すように、回転子鉄心4の外周形状において、q軸近傍の一部に、円弧形状の切欠部8を設けている。すなわち、回転子鉄心4の最外周部を構成する第一円弧部41に対して、第一円弧部41の中心(出力軸60の中心と一致)と同じ中心を有する第二円弧部42により、切欠部8が構成される。
円弧形状の切欠部8の中心線(径方向)は、略極間の中心線もしくはq軸と一致している。
第二円弧部42の半径は、第一円弧部41の半径よりも小さい。
切欠部8を設けることで、隣接する永久磁石6の間の漏れ磁束を抑制することができるため、電動機の損失を低減させた高効率な永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
また本実施の形態では、永久磁石6の外周側表面の外側に配置される回転子鉄心4にスリット7を設けている。スリット7の内部は、空間(空気層)等の非磁性体層である(図7,8参照)。
スリット7は、永久磁石6の周方向端面6aのそれぞれの近傍に設けられる。スリット7と磁石挿入孔5との間に、スリット内周薄肉部13(回転子鉄心4の一部)が形成される。またスリット7と第一円弧部41との間に、スリット外周薄肉部73(図9参照)が形成される。
永久磁石6の外周側で、永久磁石6の周方向端面6aのそれぞれの近傍にスリット7を設けることにより、隣接する永久磁石6の間の漏れ磁束が更に低減する。そのため、スリット7がない場合に比べて、永久磁石6で生成された磁束のうちの固定子80に鎖交する磁束が増加することで、より高効率な永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
図8により切欠部8の位置について説明する。点A1、A2、B1を以下のように定義する。
(1)第一円弧部41の線上に存在し、第一円弧部41と磁石挿入孔5(第三円弧部53)の距離が最も近い点(最近接点)をA1;
(2)第三円弧部53の線上に存在し、第一円弧部41と第三円弧部53の最近接点をA2;
(3)切欠部8と第一円弧部41との交点をB1。
このようにした場合、A1よりもB1の方がq軸側に近い位置になるように、切欠部8を設けている。
前述の通り、磁石挿入孔5の端部に第三円弧部53(図8参照)を設けることで、高速回転する回転子90の遠心力に対する強度を確保している。高速回転により回転子鉄心4に働く応力は、A1およびA2近傍で最も大きくなる傾向がある。
本実施の形態では、B1をA1よりもq軸側に配置することで、遠心力に対する強度を確保した、信頼性の高い永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
ここで、図8では切欠部8の端部はエッジ(角部)となっているが、金型で打ち抜く場合には、適切な円弧形状(丸取り)を設けることで、金型の劣化を抑制することができると共に、信頼性の高い永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
また切欠部8とスリット7との別の効果について説明する。図1および図6に示すように、一般的に永久磁石6の直交する方向(磁束の流れる方向)をd軸と定義される。d軸から電気角で90度ずれた位置(すなわち本実施の形態では4極であるため、機械角で45度ずれた位置)をq軸と定義される。
スリット7を設けることで、q軸方向の磁気抵抗を大きくすることができ、q軸インダクタンスを小さくすることができる。またq軸近傍に切欠部8を設けることで、切欠部8では回転子90と固定子80との空隙25が大きくなるため、q軸インダクタンスを小さくすることができる。
本実施の形態の永久磁石埋込型電動機100は、回転子90の回転位置を位置センサで検出しない位置センサレス120度通電方式で制御されている。位置センサレス120度通電方式で制御する場合、回転子90の回転に伴い、固定子80の巻線3に誘起される電圧(誘起電圧)を検出して、回転子90の位置を検出している。すなわち、120度の通電区間に対して、30度の非通電区間では、巻線3の端子間に誘起電圧が現れ、その誘起電圧のゼロクロスポイントから回転子90の回転位置を検出することができる。
120度の通電区間では、駆動回路(インバータ、図示せず)から固定子80の巻線3に電流が流れており、30度の非通電区間で電流を転流させる必要がある。
q軸インダクタンスが大きい場合、巻線3に流れる電流を速やかに減少させることができず、30度の非通電区間で転流できなくなることがあり、誘起電圧のゼロクロスポイントを検出できず、回転位置を検出できなくなる場合があった。
q軸インダクタンスを小さくする方法としては、巻線3の巻数を減らすことで実現することは可能であるが、巻線3の巻数を減らすと、同一トルクを出力する場合、巻線3に流す電流を大きくする必要がある。
巻線3に発生する銅損は、巻線3の抵抗と流れる電流の二乗との積に比例するため、電流が大きくなると、銅損が増加し、電動機効率が低下すると共に駆動回路の損失が増加する課題がある。
本実施の形態では、切欠部8とスリット7とを設けることにより、巻線3に流れる電流を増加させることなく、q軸インダクタンスを小さくすることができるため、巻線3に流れる電流を速やかに転流させることができ、位置センサレス120度通電方式でも安定して制御可能であり、かつ高効率な永久磁石埋込型電動機100を得ることができる。
一般的に、位置センサレス120度通電方式の駆動回路は比較的安価で構成することが可能であるため、安価な制御装置を得ることができる。
次に、変形例1の永久磁石埋込型電動機200について、図10乃至図14を参照しながら説明する。
図10に示す変形例1の永久磁石埋込型電動機200は、図1に示す永久磁石埋込型電動機100と比べると、回転子190が異なる。固定子80は、共通であるので、説明は省略する。
図11に示す変形例1の回転子190は、図6の回転子90と比べると、スリット107の構成が異なる。図11に示すように、変形例1の回転子190は、永久磁石106の外周側にスリット107を一極当たり5本設けている。
即ち、略磁極中心線上に位置する一つのスリット107a、スリット107aの両側に配設される二つのスリット107b、二つのスリット107bのそれぞれのq軸側に配設される二つのスリット107cが一磁極に設けられる。
一つのスリット107a、二つのスリット107b、二つのスリット107cは、それらの中心線の回転子190の外側への延長線が、回転子190の外側の点Xで交わるように、二つのスリット107b、二つのスリット107cは、磁極中心線側に傾斜している。回転子190の外側の点Xは、例えば、略磁極中心線上に位置する(図12参照)。
スリット107a、スリット107b、及びスリット107cと回転子鉄心104の外周(第一円弧部141)との間のスリット外周薄肉部173は、略均一である(図13参照)。
また、スリット107a、スリット107b、及びスリット107cと磁石挿入孔105の外周側端面の直線部105aとの間のスリット内周薄肉部113は、略均一である。
但し、スリット外周薄肉部173、スリット内周薄肉部113は、均一でなくてもよい。
従って、各スリット107a、スリット107b、及びスリット107cの長さ(略径方向)は、スリット107a>スリット107b>スリット107cである。
但し、各スリット107a、スリット107b、及びスリット107cの長さ(略径方向)は、必ずしもスリット107a>スリット107b>スリット107cの関係を満たす必要はない。
図6の回転子90と比べると、スリット107の本数が増加しており、またスリット107の内部は空洞(空気層)となっている。そのため、永久磁石106の外周側に配置される回転子鉄心104の重量が軽くなる。永久磁石106の外周側に配置される回転子鉄心104が軽量になることで、回転子190が同じ回転数で運転される場合、遠心力が低くなり、遠心力に対する応力も低くなる(図11参照)。
遠心力に対する応力が低いため、第三円弧部153(図14参照)の半径を大きくして、極間薄肉部112(図14参照)の径方向の寸法を小さくしても遠心力に対する応力を確保することができる。極間薄肉部112(図14参照)の径方向の寸法が小さくなることで、漏れ磁束を低減することができ、より高効率な永久磁石埋込型電動機200を得ることができる。
一方、極間薄肉部112(図14参照)の厚さ寸法を図6の回転子90と同じに設定した場合、スリット本数を増やした回転子190は、スリット本数が少ない回転子90と比較して、永久磁石106の外周側に配置される回転子鉄心104が軽量になることで、更に高い回転数で運転しても遠心力に対する応力は同等となる。
回転数が高いということは、電動機出力が高くなることを意味し、高出力な永久磁石埋込型電動機200を得ることができる。また本電動機を送風機に使用した場合は、高回転な送風機を得ることができるため、風量の高い送風機を得ることができる。
尚、変形例1の回転子190の回転子鉄心104の、切欠部108、非磁性体部109、軸孔110は、回転子90の回転子鉄心4の、切欠部8、非磁性体部9、軸孔10と同じものである。
次に、変形例2の永久磁石埋込型電動機300について、図15乃至図19を参照しながら説明する。
図15に示す変形例2の永久磁石埋込型電動機300は、図1に示す永久磁石埋込型電動機100と比べると、回転子290が異なる。固定子80は、共通であるので、説明は省略する。
図17に示す変形例2の回転子290は、図6に示す回転子90と比べると、回転子鉄心204が異なる。
図18に示す変形例2の回転子鉄心204は、図7に示す回転子鉄心4と比べると、切欠部208の構成が異なる。
図18に示す変形例2の回転子鉄心204は、図18、図19に示すように、切欠部208は回転子鉄心204の外周である第一円弧部241に対して内径側(軸孔210側)に数段(図18、図19では三段)凸形状となるように構成されている。図18、図19の三段の切欠部208は、一例であり、何段でもよい。
極間の外周薄肉部の遠心力に対する応力は、第三円弧部253と第一円弧部241が最も近づく点(最近接点、図19では点A1と点A2)の近傍で最も大きくなり、q軸に近づくにつれて応力は低下する傾向にある。つまりq軸に近いところは、切欠部208を内径側に拡大しても遠心力に対する応力は変わらない。
一方、q軸インダクタンスの観点からは、q軸上における固定子80と回転子290との空隙225(図16参照)が広がることになるため、q軸インダクタンスをより小さくすることが可能である。q軸インダクタンスを小さくすることで、位置センサレス120度通電方式で制御を行った場合でも、安定して制御することができる。
尚、変形例2の回転子290の回転子鉄心204の、磁石挿入孔205、永久磁石206、スリット207、非磁性体部209、極間薄肉部212、出力軸260は、回転子90の回転子鉄心4の、磁石挿入孔5、永久磁石6、スリット7、非磁性体部9、極間薄肉部12、出力軸60と同じものである。
次に、図20乃至図26により、変形例3の永久磁石埋込型電動機400について説明する。
図20に示す変形例3の永久磁石埋込型電動機400は、図1に示す永久磁石埋込型電動機100と比べると、回転子390が異なる。固定子80は、共通であるので、説明は省略する。
図21に示す変形例3の回転子390は、図6に示す回転子90と比べると、回転子鉄心304が異なる。
図22に示す変形例3の回転子鉄心304は、図7に示す回転子鉄心4と比べると、スリット307の構成が異なる。
変形例3の回転子鉄心304のスリット307は、スリット307の半径方向外周部に構成される回転子鉄心304の薄肉部であるスリット外周薄肉部373の半径方向幅寸法において、d軸に近い側に対して、q軸に近い側の幅を大きくしたものである。
図23、図24に示すように、スリット307の半径方向外周部に形成されるスリット外周薄肉部373の半径方向幅寸法は、q軸側がd軸側よりも大きい。
即ち、回転子鉄心304の外周(第一円弧部341)とスリット307とのd軸側に近い側の径方向幅寸法をWd、回転子鉄心304の外周(第一円弧部341)とスリット307とのq軸側に近い側の径方向幅寸法をWqとすると、
Wq>Wd
の関係がある。
回転子鉄心304の高速回転による遠心力は、スリット外周薄肉部373において、q軸に近い側で大きな応力を発生することになる。
スリット外周薄肉部373の半径方向幅寸法を均一に大きくすることで遠心力に対する応力を抑制することが可能であるが、q軸インダクタンスが増加してしまうため、位置センサレス120度通電方式で安定して制御することが困難になる。
ここでは、d軸に近い側の半径方向幅寸法Wdを、q軸側に近い側の径方向幅寸法Wqより小さくすることで、q軸インダクタンスの増加を抑制することができる。それにより、位置センサレス120度通電方式でも安定して制御可能な永久磁石埋込型電動機400を得ることができる。
スリット307を金型で打ち抜く場合、金型の劣化を抑制するために、スリット307の各頂点には適当な丸取り(R形状)を設ける必要がある。本実施の形態では、スリット307の外周側頂点において、d軸に近い側の丸取371の半径R1に対して、q軸に近い側の丸取372の半径R2を大きく設定している(図25参照)。
前述の通り、遠心力によりスリット外周薄肉部373に働く応力はq軸に近い側(丸取372側)の方が大きくなるが、本実施の形態では、丸取372の半径R2を丸取371の半径R1より大きくすることで、遠心力に対する応力を抑制した、信頼性の高い永久磁石埋込型電動機400を得ることができる。
また図26の回転子鉄心304の極間部(q軸)近傍の拡大図において、磁石挿入孔305の半径方向外周側は直線部305aと第三円弧部353からなり、第三円弧部353は直線部305aに接する接円311の一部であり、各々は点Eを交点としている。
第三円弧部353を直線部305aの接円とすることで、各々が滑らかに接続(連結)されているため、遠心力に対する応力を抑制することができる。
また第三円弧部353は、第四円弧部354と点Dで接しており、点Dが交点である。隣接する磁石挿入孔305の距離が最も近づく点(最近接点)を点Cとした場合、点Cに対して、点Dを軸孔310に近づけるように構成している(図11参照)。
回転子390が高速で回転する場合、隣接する磁石挿入孔305の間に形成される極間薄肉部312に遠心力に対する応力が発生し、極間薄肉部312の周方向幅寸法を小さくしすぎると、最悪の場合、高速回転時に回転子390が破壊する可能性がある。
また第三円弧部353と第四円弧部354の交点Dを、回転子鉄心304の外周側に近づけると、点Dにより大きな応力が発生するが(図27の比較例を参照)、本実施の形態では、点C(極間薄肉部412)に対して、点Dを内径側(軸孔310に近い側)に設けることで、遠心力に対する応力を緩和させた、信頼性の高い永久磁石埋込型電動機400を得ることができる。
尚、変形例3の回転子390の回転子鉄心304の、永久磁石306、切欠部308、非磁性体部309は、回転子90の回転子鉄心4の、永久磁石6、切欠部8、非磁性体部9と同じものである。
また、比較例の回転子鉄心404の、磁石挿入孔405、直線部405a、スリット407、極間薄肉部412、第三円弧部453は、回転子90の回転子鉄心4の、磁石挿入孔5、直線部5a、スリット7、極間薄肉部12、第三円弧部53と同じものである。
上述の実施の形態では、例えば永久磁石埋込型電動機100は、永久磁石6の外周側表面の外側に配置される回転子鉄心4にスリット7を設けたものを示したが、スリット7はなくてもよい。他の変形例についても同様である。
本実施の形態の永久磁石埋込型電動機100〜400を、送風機に搭載することにより、高性能な送風機が得られる。その場合、送風機の羽根が永久磁石埋込型電動機100〜400の回転子に固定される。
本発明の活用例として、送風機に用いられる永久磁石埋込型電動機がある。
1 固定子鉄心、3 巻線、4 回転子鉄心、5 磁石挿入孔、5a 直線部、6 永久磁石、6a 周方向端面、7 スリット、8 切欠部、9 非磁性体部、10 軸孔、11 接円、12 極間薄肉部、13 スリット内周薄肉部、21 歯部、21a 先端部、22 スロット、22a スロット開口部、23 コアバック、25 空隙、41 第一円弧部、42 第二円弧部、51 永久磁石止め部、53 第三円弧部、60 出力軸、73 スリット外周薄肉部、80 固定子、90 回転子、100 永久磁石埋込型電動機、104 回転子鉄心、105 磁石挿入孔、105a 直線部、106 永久磁石、107 スリット、107a スリット、107b スリット、107c スリット、108 切欠部、109 非磁性体部、110 軸孔、112 極間薄肉部、113 スリット内周薄肉部、141 第一円弧部、153 第三円弧部、160 出力軸、173 スリット外周薄肉部、190 回転子、200 永久磁石埋込型電動機、204 回転子鉄心、205 磁石挿入孔、206 永久磁石、207 スリット、208 切欠部、209 非磁性体部、210 軸孔、212 極間薄肉部、225 空隙、241 第一円弧部、253 第三円弧部、260 出力軸、290 回転子、300 永久磁石埋込型電動機、304 回転子鉄心、305 磁石挿入孔、305a 直線部、306 永久磁石、307 スリット、308 切欠部、309 非磁性体部、310 軸孔、311 接円、312 極間薄肉部、353 第三円弧部、354 第四円弧部、360 出力軸、371 丸取、372 丸取、373 スリット外周薄肉部、390 回転子、400 永久磁石埋込型電動機、404 回転子鉄心、405 磁石挿入孔、405a 直線部、407 スリット、412 極間薄肉部、453 第三円弧部、454 第四円弧部。

Claims (7)

  1. 固定子鉄心に巻線を施した固定子の内側に空隙を介して回転子が配置され、前記回転子の回転位置を位置センサで検出しない位置センサレス120度通電方式で制御される永久磁石埋込型電動機において、
    前記回転子は、
    薄板の電磁鋼板を複数枚積層して構成される回転子鉄心と、
    前記回転子鉄心の外周縁に沿って設けられ、全体が略コの字状で、周方向両端が内側に屈曲した円弧状の非磁性体部を有する複数の磁石挿入孔と、
    前記磁石挿入孔に埋め込まれる複数の永久磁石と、
    前記永久磁石の外周側に配置される前記回転子鉄心の一部に設けられ、非磁性体層からなるスリットと、を備え、
    前記非磁性体部は、前記永久磁石の外周側表面よりも内側に配置するように構成され、かつ前記永久磁石の内周側表面よりも内径側に延びるように形成されることを特徴とする永久磁石埋込型電動機。
  2. 前記スリットを、少なくとも前記永久磁石の両端部近傍に設けたことを特徴とする請求項1記載の永久磁石埋込型電動機。
  3. 前記スリットの外周側に形成される前記回転子鉄心のスリット外周薄肉部の径方向幅寸法を、d軸側の径方向幅寸法よりq軸側の径方向幅寸法を大きくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の永久磁石埋込型電動機。
  4. 固定子鉄心に巻線を施した固定子の内側に空隙を介して回転子が配置され、前記回転子の回転位置を位置センサで検出しない位置センサレス120度通電方式で制御される永久磁石埋込型電動機において、
    前記回転子は、
    薄板の電磁鋼板を複数枚積層して構成される回転子鉄心と、
    前記回転子鉄心の外周縁に沿って設けられ、全体が略コの字状で、周方向両端が内側に屈曲した円弧状の非磁性体部を有する複数の磁石挿入孔と、
    前記磁石挿入孔に埋め込まれる複数の永久磁石と、を備え、
    前記非磁性体部は、前記永久磁石の外周側表面よりも内側に配置するように構成され、かつ前記永久磁石の内周側表面よりも内径側に延びるように形成されることを特徴とする永久磁石埋込型電動機。
  5. 前記回転子鉄心のq軸近傍の外周縁に、内側に凸形状の切欠部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の永久磁石埋込型電動機。
  6. 前記切欠部を、q軸上で内側に最も凸形状となるように設けたことを特徴とする請求項5記載の永久磁石埋込型電動機。
  7. 少なくとも請求項1乃至6のいずれかに記載の永久磁石埋込型電動機と、前記永久磁石埋込型電動機の前記回転子に固定される羽根と、を備えたことを特徴とする送風機。
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