JP2010255091A - 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】伸びと伸びフランジ性のバランスを改善した、より成形性に優れた高強度冷延鋼板を提供する。
【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:3.0%以下、Mn:0.1〜5.0%、P:0.1%以下、S:0.010%以下、Al:0.001〜0.10%、Nb:0.02〜0.40%を含み、Ti:0.01〜0.20%、V:0.01〜0.20%の1種以上で、[%Nb]/96+[%Ti]/51+[%V]/48)×48=0.01〜0.20%、残部:主として鉄からなり、組織が、面積率で、α=10〜80%、残留γ+M<5%、残部:硬質第2相からなり、α粒径が5μm以下であり、KAM値の頻度分布曲線において、KAM値≦0.4°の比率XKAM≦0.4°と、α面積率Vαとの関係がXKAM≦0.4°/Vα≧0.8を満たすとともに、KAM値=0.6〜0.8の比率XKAM=0.6~0.8°が10〜20%であり、かつ、αと界面を接する硬質第2相中に存在する、0.1μm以上のθ粒子は3個/μm2以下、20nm以上のNb、Ti、V含有析出物は5個/μm2以下である冷延鋼板。
【選択図】なし
Description
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.30%、
Si:3.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.010%以下(0%を含む)、
Al:0.001〜0.10%
を含むとともに、
Nb:0.02〜0.40%、
Ti:0.01〜0.20%、
V:0.01〜0.20%の1種または2種以上を、
[%Nb]/96+[%Ti]/51+[%V]/48)×48が0.01〜0.20%を満足するように含み、
残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
軟質第1相であるフェライトを面積率で10〜80%含むとともに、
残留オーステナイト、マルテンサイト、および、残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織を、面積率の合計で5%未満(0%を含む)含み、
残部が硬質第2相である、焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトからなる組織を有し、
前記フェライトの平均粒径が円相当直径で5μm以下であり、
Kernel Average Misorientation値(以下、「KAM値」と略称する。)の頻度分布曲線において、
全頻度に対する、該KAM値が0.4°以下の頻度の比率XKAM≦0.4°(単位:%)と、フェライトの面積率Vα(単位:%)との関係が、XKAM≦0.4°/Vα≧0.8を満たすとともに、
全頻度に対する、前記KAM値が0.6〜0.8°の頻度の比率XKAM=0.6〜0.8°が10〜20%であり、かつ、
前記フェライトと前記硬質第2相の界面に存在する析出物の分布状態が、
円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記硬質第2相1μm2当たり3個以下で、
円相当直径20nm以上の析出物であって、Nb、TiおよびVの1種または2種以上を含む析出物は、前記硬質第2相1μm2当たり5個以下である
ことを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%
を含むものである請求項1に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Mo:0.02〜1.0%
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
を含むものである請求項1または2に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板である。
請求項1〜4のいずれか1項に示す成分組成を有する鋼材を、下記(1)〜(4)に示す各条件で、熱間圧延した後、冷間圧延し、その後、焼鈍し、さらに焼戻しすることを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板の製造方法である。
(1) 熱間圧延条件
仕上げ圧延の終了温度:Ar3点以上
巻き取り温度:450〜700℃
(2) 冷間圧延条件
冷間圧延率:20〜80%
(3) 焼鈍条件
600〜Ac1℃の温度域を、下記式1および式2をともに満足する昇温パターンで昇温し、焼鈍加熱温度:[(8×Ac1+2×Ac3)/10]〜1000℃にて、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷するか、または、焼鈍加熱温度から、焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度(「第1冷却終了温度」という。)まで1℃/s以上50℃/s未満の冷却速度(「第1冷却速度」という。)で徐冷した後、Ms点以下の温度(「第2冷却終了温度」という。)まで50℃/s以下の冷却速度(「第2冷却速度」という。)で急冷する。
(4) 焼戻し条件
上記焼鈍冷却後の温度から焼戻し加熱温度:420℃以上670℃未満までの間を5℃/s超の加熱速度で加熱し、[焼戻し加熱温度−10℃]〜焼戻し加熱温度の間の温度領域に存在する時間(「焼戻し保持時間」という。):30s以下とした後、5℃/s超の冷却速度で冷却する。
上述したとおり、本発明鋼板は、上記特許文献2、3と近似の複相組織をベースとするものであるが、特に、フェライト中の歪量を制御するとともに、硬質第2相の変形能を制御し、さらにフェライトと硬質第2相の界面に析出した析出物の分布状態が制御されている点で、上記特許文献2、3の鋼板とは相違している。
フェライト−焼戻しマルテンサイト等の複相組織鋼では、変形は主として変形能の高いフェライトが受け持つ。そのため、フェライト−焼戻しマルテンサイト等の複相組織鋼の伸びは主としてフェライトの面積率で決定される。
残部:第2相である、焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトからなる組織>
強度を確保しつつ脆化を防止するには、フェライトを除く領域を、主としてマルテンサイトおよび/またはベイナイトが焼戻しされた組織(焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトからなる組織)にすることが有効である。その際、残留オーステナイトや焼戻しされていないマルテンサイト(以下、単に「マルテンサイト」の表記は、焼戻しされていないマルテンサイトを意味するものとする。)が存在すると、その周囲に応力が集中し、破壊に至りやすくなるので、残留オーステナイト、マルテンサイトおよびそれらの混合組織をできるだけ少なくすることで伸びフランジ性の劣化を防止できる。
フェライトを微細化させることによりフェライトと硬質第2相の界面など応力が集中しやすいサイトの数を増加させて応力を分散させることで、伸びフランジ性が改善される。
KAM値0.6〜0.8°の比率XKAM=0.6〜0.8°:10〜20%>
複相組織鋼の強度と伸びのバランスは、一般的にフェライト面積率と硬質第2相の変形能に依存する。一方、フェライト中の歪量は伸びに大きな影響を及ぼし、フェライト面積率が一定の場合、該歪量が大きければ伸びが低下する。
上記のようにKAM値に関する要件を満足させることでフェライトと硬質第2相の界面での破壊を抑制できた場合、次に破壊の起点になるのは、フェライトと界面を接する硬質第2相中に析出したセメンタイトになる。このセメンタイト粒子が粗大になると変形時の応力集中が過大となり伸びフランジ性が確保できなくなるので、伸びフランジ性を確保するためには、セメンタイト粒子のサイズと存在密度を制御する必要がある。
NbC、TiC、VCなどのNbやTiやVを含む析出物は、母相に比べて剛性および臨界せん断応力が非常に高いため、析出物の周囲が変形しても析出物自体は変形しにくいため、20nm以上のサイズになると母相と析出物との界面に大きなひずみが生じ、破壊が発生するようになる。このため、20nm以上のNbやTiやVを含む粗大な析出物が多量に存在すると伸びフランジ性が劣化する。したがって、粗大なNbやTiやV含有析出物の存在密度を制限することで、伸びフランジ性を改善することができる。
まず、各相の面積率については、各供試鋼板を鏡面研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、概略40μm×30μm領域5視野について倍率2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察し、点算法で1視野につき100点の測定を行ってフェライトの面積を求めた。また、画像解析によってセメンタイトを含む領域を硬質第2相とし、残りの領域を、残留オーステナイト、マルテンサイト、および、残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織とした。そして、各領域の面積比率より各相の面積率を算出した。
上記面積率の測定の際に測定した各フェライト粒の面積から円相当直径を算出して求めた。
各供試鋼板を鏡面研磨し、さらに電解研磨した後、走査型電子顕微鏡(Philips社製XL30S−FEG)にて、1step 0.2μmで500μm×500μmの領域の電子線後方散乱回折像を測定し、それを解析ソフト(テクセムラボラトリーズ社製OIMシステム)を用いて、各測定点におけるKAM値を求めた。
析出物のサイズおよびその存在密度については、各供試鋼板の抽出レプリカサンプルを作成し、2.4μm×1.6μmの領域3視野について倍率50000倍の透過型電子顕微鏡(TEM)像を観察した。
各供試鋼板を鏡面に研磨し、3%ナイタール液で腐食して金属組織を顕出させた後、80μm×60μm領域10視野中に、それぞれ50μmの線分を20本引き、それらの線分と交わるフェライト粒界の数Nαおよびフェライト−硬質第2相界面の数Nα−TMを測定する。そして、フェライトの存在形態の評価指数として、粒界および界面に占めるフェライト粒界の割合Nα/(Nα+Nα−TM)を求める。Nα/(Nα+Nα−TM)の値が小さいということは、フェライト粒子とフェライト粒子が連続している領域が少ないこと、つまり、フェライト粒子が連続せず、硬質第2相に囲まれていることを示している。
C:0.05〜0.30%
Cは、硬質第2相の面積率および該硬質第2相中に析出するセメンタイト量に影響し、強度、伸びおよび伸びフランジ性に影響する重要な元素である。0.05%未満では強度が確保できなくなる。一方、0.30%超では焼入れ時に歪みが多量に入ることに加え、セメンタイトの量が多くなり転位が回復しにくくなることから、転位が抜けて変形能が高まった硬質第2相であることを示す評価式であるXKAM=0.6〜0.8°≧10%が得られなくなる。この評価式を満たすように、焼戻し条件を高温ないし長時間化するとセメンタイトが粗大化し、強度や伸びフランジ性が確保できなくなる。
Siは、焼戻し時におけるセメンタイト粒子の粗大化を抑制する効果を有し、伸びと伸びフランジ性の両立に寄与する有用な元素である。3.0%超ではフェライトが脆くなり、TS×Elが低下する。Si含有量の範囲は、好ましくは0.50〜2.5%、さらに好ましくは1.0〜2.2%である。
Mnは、上記Siと同様、焼戻し時におけるセメンタイトの粗大化を抑制する効果を有することに加え、硬質第2相の変形能を高めることで、伸びと伸びフランジ性の両立に寄与する。また、焼入れ性を高めることで、硬質第2相が得られる製造条件の範囲を広げる効果もある。0.1%未満では上記効果が十分に発揮されないため、伸びと伸びフランジ性を両立できず、一方、5.0%超とすると逆変態温度が低くなりすぎ、再結晶ができなくなるため、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.50〜2.5%、さらに好ましくは1.2〜2.2%である。
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、 旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。
Nも不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
Alは脱酸元素として添加され、介在物を微細化する効果を有する。また、Nと結合してAlNを形成し、歪時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びや伸びフランジ性の劣化を防止する。0.001%未満では鋼中に固溶Nが残存するため、歪時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、0.1%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、硬質第2相の面積率を確保できず、伸びフランジ性を確保できなくなる。
Ti:0.01〜0.20%、
V:0.01〜0.20%の1種または2種以上で、かつ、
[%Nb]/96+[%Ti]/51+[%V]/48)×48=0.01〜0.20%
Nb、TiおよびVは、微細なMX型化合物(炭化物、窒化物、炭窒化物の総称)を形成し、この微細なMX型化合物が焼鈍の際の加熱時にオーステナイトの成長をピン止めする粒子として作用することで、フェライト粒の微細化に寄与し、熱間圧延後の組織を微細化することにより、伸びフランジ性を高める。Nb、TiおよびVの各含有量、ならびに、V換算合計含有量が上記各上限値を超えると、粗大なMX型化合物が形成され、伸びフランジ性が劣化するとともに、これらの元素は再結晶を強く抑制する作用を有するため、冷間圧延後、焼鈍の際の加熱時に再結晶が抑制されてXKAM≦0.4°/Vαが0.8未満になり、強度と伸びのバランスが確保できなくなる。一方、Nb、TiおよびVの各含有量、ならびに、V換算合計含有量が上記各下限値を下回ると、上記フェライト粒微細化の効果が十分に得られなくなる。
Crは、セメンタイトの成長を抑制することで、伸びフランジ性を改善できる有用な元素である。0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、1.0%を超える添加では粗大なCr7C3が形成されるようになり、伸びフランジ性が劣化してしまう。
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
これらの元素は、固溶強化により成形性を劣化させずに強度を改善するのに有用な元素である。各元素とも0.05%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加ではコストが高くなりすぎる。
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも0.0005%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行う。
熱間圧延条件としては、仕上げ圧延終了温度:900℃以上にて熱間圧延したのち、550℃までの冷却時間:[(仕上げ圧延終了温度−550℃)/20]s以下で冷却を行った後、巻取温度:500℃以下で巻き取る。
熱間圧延中にMX型化合物の析出が起こらないようにしたうえで、その後の焼鈍の際の加熱過程でMX型化合物を微細に析出させることで、破壊の起点となることなく組織を微細化することができ、伸びフランジ性を改善できる。
仕上げ圧延終了温度が900℃未満では、熱間圧延中にMX型化合物が析出し、その後の焼鈍の際の加熱過程で該析出物が成長して粗大化し、伸びフランジ性が劣化する。
また、仕上げ圧延終了後550℃までの冷却時間が[(仕上げ圧延終了温度−550℃)/20]s超になると、冷却中にフェライト変態が起こり、形成されたフェライト中に析出物が形成され、その後の焼鈍の際の加熱過程で該析出物が粗大化し、伸びフランジ性が劣化する。
また、巻取温度が500℃超になると、巻き取り中に析出物が形成ないし粗大化し、伸びフランジ性が劣化する。
焼鈍条件としては、600〜Ac1℃の温度域を(Ac1−600)s以上の滞在時間で昇温し、焼鈍加熱温度:[(8×Ac1+2×Ac3)/10]〜1000℃にて、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷するか、または、焼鈍加熱温度から、焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度(第1冷却終了温度)まで1℃/s以上50℃/s未満の冷却速度(第1冷却速度)で徐冷した後、Ms点以下の温度(第2冷却終了温度)まで50℃/s以下の冷却速度(第2冷却速度)で急冷するのがよい。
逆変態前に高温域に長時間滞在させることでフェライトの回復・再結晶を促進させ、 フェライト中のひずみを開放させるためである。特に再結晶を遅延させるマイクロアロイ(Nb、TiおよびV)を添加しているため、Ac1点以下の温度域における滞在時間を長時間化する必要がある。
600〜Ac1℃の温度域を[2×(Ac1−600)+200]s以上の滞在時間で昇温することが好ましく、[2×(Ac1−600)+1000]s以上の滞在時間で昇温することがさらに好ましい。
焼鈍加熱時に面積率20%以上の領域をオーステナイトに変態させることにより、その後の冷却時に十分な量の硬質第2相を変態生成させるためである。
冷却中にオーステナイトからフェライトが形成されることを抑制し、硬質第2相を得るためである。
面積率で50%未満のフェライト組織を形成させることにより、伸びフランジ性を確保したまま伸びの改善が図れるためである。
焼戻し条件としては、上記焼鈍冷却後の温度から焼戻し加熱温度:420℃以上670℃未満までの間を5℃/s超の加熱速度で加熱し、[焼戻し加熱温度−10℃]〜焼戻し加熱温度の間の温度領域に存在する時間(焼戻し保持時間):20s以下とした後、5℃/s超の冷却速度で冷却すればよい。
上記〔本発明鋼板の好ましい製造方法(その1)〕ではその[焼鈍条件]において、「600〜Ac1℃の温度域を(Ac1−600)s以上の滞在時間で昇温」すると規定したが、600〜Ac1℃の温度域を、下記式1および式2をともに満足する昇温パターンで昇温するのがより好ましい。なお、その他の製造条件は、上記〔本発明鋼板の好ましい製造方法(その1)〕と同様である(ただし、冷間圧延における冷間圧延率は、上記〔本発明鋼板の好ましい製造方法(その1)〕では「30%以上程度とするのがよい」としたが、本例では、後記初期転位密度との関係を表す式4が成立する範囲である、20〜80%の範囲とする。
式1’:X=1−exp[−exp{A1ln(DFe)+A2ln(ρ0)−A3}・tn](ここに、A1、A2、A3、n:定数)
式3:DFe=0.0118exp[−281500/{R(T+273)}](m2/s) (ここに、T:温度(℃)、R:ガス定数[=8.314kJ/(K・kg−atom)])の関係が成り立つことが知られている(例えば、日本鉄鋼協会編、鉄鋼便覧 第3版、I 基礎、丸善、1981年、p.349参照)。
式4:ρ0=B1ln[(−ln{(100−[CR])/100}]+B2(B1、B2:定数)
式2’:r3―r0 3=A・exp[−Q/{R(T+273)}]・t(ここに、A、Q:定数)
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2および表3に示す条件にて熱処理を施した。
Claims (5)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.30%、
Si:3.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.010%以下(0%を含む)、
Al:0.001〜0.10%
を含むとともに、
Nb:0.02〜0.40%、
Ti:0.01〜0.20%、
V:0.01〜0.20%の1種または2種以上を、
[%Nb]/96+[%Ti]/51+[%V]/48)×48が0.01〜0.20%を満足するように含み、
残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
軟質第1相であるフェライトを面積率で10〜80%含むとともに、
残留オーステナイト、マルテンサイト、および、残留オーステナイトとマルテンサイトの混合組織を、面積率の合計で5%未満(0%を含む)含み、
残部が硬質第2相である、焼戻しマルテンサイトおよび/または焼戻しベイナイトからなる組織を有し、
前記フェライトの平均粒径が円相当直径で5μm以下であり、
Kernel Average Misorientation値(以下、「KAM値」と略称する。)の頻度分布曲線において、
全頻度に対する、該KAM値が0.4°以下の頻度の比率XKAM≦0.4°(単位:%)と、フェライトの面積率Vα(単位:%)との関係が、XKAM≦0.4°/Vα≧0.8を満たすとともに、
全頻度に対する、前記KAM値が0.6〜0.8°の頻度の比率XKAM=0.6〜0.8°が10〜20%であり、かつ、
前記フェライトと前記硬質第2相の界面に存在する析出物の分布状態が、
円相当直径0.1μm以上のセメンタイト粒子は、前記硬質第2相1μm2当たり3個以下で、
円相当直径20nm以上の析出物であって、Nb、TiおよびVの1種または2種以上を含む析出物は、前記硬質第2相1μm2当たり5個以下である
ことを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%
を含むものである請求項1に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Mo:0.02〜1.0%
Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%の1種または2種以上
を含むものである請求項1または2に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板。 - 請求項1〜4のいずれか1項に示す成分組成を有する鋼材を、下記(1)〜(4)に示す各条件で、熱間圧延した後、冷間圧延し、その後、焼鈍し、さらに焼戻しすることを特徴とする伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
(1) 熱間圧延条件
仕上げ圧延終了温度:900℃以上
550℃までの冷却時間:[(仕上げ圧延終了温度−550℃)/20]s以下
巻取温度:500℃以下
(2) 冷間圧延条件
冷間圧延率:20〜80%
(3) 焼鈍条件
600〜Ac1℃の温度域を、下記式1および式2をともに満足する昇温パターンで昇温し、焼鈍加熱温度:[(8×Ac1+2×Ac3)/10]〜1000℃にて、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで50℃/s以上の冷却速度で急冷するか、または、焼鈍加熱温度から、焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度(「第1冷却終了温度」という。)まで1℃/s以上50℃/s未満の冷却速度(「第1冷却速度」という。)で徐冷した後、Ms点以下の温度(「第2冷却終了温度」という。)まで50℃/s以下の冷却速度(「第2冷却速度」という。)で急冷する。
(4) 焼戻し条件
上記焼鈍冷却後の温度から焼戻し加熱温度:420℃以上670℃未満までの間を5℃/s超の加熱速度で加熱し、[焼戻し加熱温度−10℃]〜焼戻し加熱温度の間の温度領域に存在する時間(「焼戻し保持時間」という。):20s以下とした後、5℃/s超の冷却速度で冷却する。
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