本発明は、熱変性乳清タンパク質及び下記性質(a)を有するデキストリンを併用することを特徴とする。本発明で用いる熱変性乳清タンパク質は乳清タンパク質濃縮素材を高せん断力条件下で熱して、変性した極微粒子を形成させることによって、製造された多機能性乳成分をいう。変性した極微粒子とは、乳化脂肪球とごく近い0.1〜2ミクロン程度の球形である。熱変性した微粒子の乳清タンパク質の製造法としては、チーズ製造時に副産物として得られる甘性乳清を低温殺菌し、脂肪を除去して、限外濾過にて、タンパク質を濃縮しつつ、乳糖やミネラル分を低減させ、その後、更に濃縮し、せん断力を与えながら加熱して変性した微粒子状のタンパク質になるまで加工することにより製造することが出来る。具体的には、特許第2740457号に記載の方法によっても製造することが出来る。本発明で使用できる熱変性乳清タンパク質は、商業上入手可能であり、例えばシンプレス100(CPケルコ社製)等を挙げることができる。
本発明では、上記熱変性乳清タンパク質に下記性質(a)を有するデキストリン(以下、「本発明のデキストリン」ともいう)を併用することを特徴とする。
(a)青価(Blue Value)(680nmの吸光度)が0.4〜1.2の範囲である。青価は、一般に、澱粉のヨウ素反応、具体的には澱粉に含まれるアミロースとヨウ素とが反応して青色を呈することを利用して、澱粉ヨウ素反応液の680nmにおける吸光度として求められる値である。通常、青価は澱粉中のアミロース含量を評価するために用いられるが、本発明では、デキストリン中のアミロース含量を示す指標として用いられる。本発明においてデキストリンの青価は次の方法に従って算出することができる。
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計にて測定する。
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、青価が0.4〜1.2の範囲であることを特徴とする。好ましくは0.5〜0.9の範囲、より好ましくは0.6〜0.8の範囲である。
従来公知のデキストリンの青価は、0.4未満〔例えば、「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)では0.32、「デキストリンNSD−C」((株)ニッシ製)では0.11、「パインデックス♯3」(松谷化学工業(株)製)では0.04〕、または1.2より大きく〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)では1.42、「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)では1.74、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)では1.54、(実験例1参照)〕、この点において本発明で用いるデキストリンと相違する。デキストリンが0.4未満の青価を有するものである場合、十分な保形性および脂肪感や濃厚感が得られず、また一方、デキストリンが1.2よりも大きい青価を有するものである場合、デキストリンの溶解時に必要以上に粘性が生じて調製が困難となったり、油脂特有のコクや滑らかさが得られず食感がざらつく、かかるデキストリンを用いて調製した加工食品(例えばソーセージなど)を加熱して喫食する際に溶解したデキストリンが糊感となって自然なジューシー感を得ることができないという問題がある。
本発明で用いるデキストリンは、さらに下記の性質(b)および(c)を有することが好ましい:
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置
した時の粘度が100mPa・s以下である。
ゼリー強度(b)は、80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を5℃で24時間静置して得られたゼリー状物(測定対象物)を、5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、ゼリー状物がプランジャーの力で破断した時の荷重(N/cm2)を測定することによって求めることができる。当該ゼリー強度の測定は、通常レオメーターを用いて行なわれる。なお、測定対象物であるゼリー状物の厚みは、得られるゼリー強度に影響しないため、特に制限されない。
当該ゼリー強度の上限は、制限されないが通常20N/cm2を挙げることができる。ゼリー強度(b)として、好ましくは5〜20N/cm2、より好ましくは6〜10N/cm2である。
粘度(c)は、25℃の蒸留水で調製したデキストリンの30質量%水溶液を25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.2)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって求めることができる。
当該粘度の下限は、制限されないが、通常20mPa・sを挙げることができる。粘度(c)として、好ましくは20〜70mPa・s、より好ましくは30〜65mPa・sである。
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上で、粘度(c)が100mPa・s以下であることが好ましい。従来公知のデキストリンは、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上であっても、粘度(c)が100mPa・sより大きいか〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)では(b)4.8N/cm2、(c)235mPa・s、「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)では(b)4.8N/cm2、(c)48000mPa・s、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)では(b)6.9N/cm2、(c)220mPa・s、(実験例1参照)〕、または上記(b)の条件で調製しても液状を呈してゼリー状とならないもの〔例えば、「パインデックス#100」、「パインデックス♯3」松谷化学工業(株)製)、「デキストリンNSD−C」((株)ニッシ製)、(実験例1参照)〕である点で、本発明で用いるデキストリンと相違する。
デキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度(b)を有するものである場合は、十分な保形性および脂肪感や濃厚感が得られない場合がある。また粘度(c)が100mPa・sを超えるデキストリンを用いる場合は、デキストリンの溶解時に必要以上に粘性が生じて調製が困難となったり、かかるデキストリンを用いて調製された加工食品を加熱して喫食する際に溶解したデキストリンが糊感となって自然なジューシー感を得ることができない場合がある。
本発明で用いられるデキストリンは、上記性質を有するものであれば、由来する澱粉の種類、DE値(dextrose equivalent:デキストロース当量)、および分子量などは特に限定されない。デキストリンの原料となる澱粉としては、例えば、馬鈴薯、とうもろこし、甘藷、小麦、米、サゴ、およびタピオカなどの各種澱粉を挙げることができる。好ましくは馬鈴薯澱粉である。
DE値とは、一般に澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリン及びブドウ糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する質量%で表わしたものである。このDE値が大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。制限はないが、本発明ではDE値が通常2〜5、好ましくは3〜5、より好ましくは3.5〜4.5のデキストリンが使用される。
このような性質を備えるデキストリンは、原料となる澱粉を加水分解することによって調製することができる。澱粉の分解方法は、特に制限なく、例えば酵素処理による分解、および酸処理による分解などを挙げることができるが、好ましくは酵素処理による分解(酵素分解)である。デキストリンの調製方法として、具体的には、澱粉、好ましくは馬鈴薯澱粉をアミラーゼで常法に従って処理し、その分解の進行度を、前述する青価(680nmの吸光度)を指標として追跡し、青価が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに酵素処理を終了する方法を挙げることができる。また、かかる範囲の青価を有するデキストリンについて、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上、粘度(c)が100mPa・s以下であるかどうかは、いずれも前述する方法に従って30質量%水溶液を調製して、測定することができる。
かかる本発明のデキストリンを熱変性乳清タンパク質と併用することにより、食品の風味に影響を与えることなく、滑らかな食感や脂肪感、濃厚感が付与された高級感あふれる加工食品を提供でき、更には食品中の脂肪や油脂含量を低減させた場合においても、本来の食品と遜色ない外観や脂肪、油脂特有の濃厚感を付与された加工食品を提供することが可能となる。
本発明の対象である加工食品は熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有する食品であれば特に限定されず各種食品を広く指し、具体的には、ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ミートローフ、ハンバーグ、ミンチカツ、コロッケ、ミートボール、つくね、ギョウザ、シュウマイおよび肉まん(包子)といった食肉加工食品;プリン、アイスクリーム類、チーズ、チーズ様食品;チーズ入りデザート、(ケーキ、プリン、ムース)、パン、ピザ、グラタン、ラザニア、ドリア、リゾット、スープ、チーズフォンデュ、ハンバーグ、サラダ及びスプレッド等のチーズ入り食品;ホイップクリーム、ヨーグルト、フラワーペースト、カスタードクリーム、ミルクチョコレート等の乳製品;マヨネーズ様調味料、ドレッシング、スプレッド(マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)等の乳化様食品又は乳化食品;ミルクココア、ミルクコーヒー、ミルクティー、フルーツ牛乳、抹茶ミルク等の乳成分含有飲料などの各種食品が挙げられる。以下、これら各食品に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有して調製される加工食品について具体的に説明する。
(I)食肉加工食品
食肉加工食品として、具体的にはソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ミートローフ、ハンバーグミンチカツ、コロッケ、ミートボール、つくね、ギョウザ、シュウマイおよび肉まん(包子)といった食肉加工食品、好ましくはソーセージが挙げられる。かかる食肉加工食品に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより食品本来の風味に影響を与えることなく、脂肪や油脂特有の濃厚感が付与された食肉加工食品を提供できるが、好ましくは、以下の製造方法に従って調製された脂肪組織代替物を用いて上記食肉加工食品を調製することができる。
(I)−1 脂肪組織代替物の調製
本発明でいう脂肪組織とは、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉および鯨肉などの食肉の脂身(豚脂、牛脂、鶏脂、馬脂、羊脂、鯨脂)である。かかる脂身は、通常、常温(25℃)でも、その塊状が溶解せずに保形性を備えている点で、当該温度で液状(流動状)または半流動状を呈する油脂とは相違する。従来、熱変性乳清タンパク質自体はゲル化性を有さないため、熱変性乳清タンパク質単独では、例えば荒挽きソーセージ中の脂肪など、これら脂肪組織を脂肪以外のものだけで代替することは困難であり、従来は固形脂と混合して使用する必要があるなど、大幅な脂肪の低減は困難であった。一方、本発明のデキストリンと熱変性乳清タンパク質を併用することにより、かかる脂肪組織全ての代替が可能となり、大幅に脂肪含有量を低減させた加工食品を提供することが可能となった。
本発明の脂肪組織代替物は、熱変性タンパク質及び本発明のデキストリンを含有する水溶液を調製し、次いでこれを冷却固化することによって調製することができる。本発明で用いる熱変性乳清タンパク質自体は水に不溶であるため、本発明のデキストリンが溶解する温度、少なくとも1〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによってデキストリンを溶解し、かかる熱変性タンパク質及び本発明のデキストリンを含有する溶液を冷却固化することにより脂肪組織代替物を調製することができる。冷却温度としては、約40℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは10℃以下の条件で上記水溶液を静置しておくことが好ましい。脂肪組織代替物中の熱変性乳清タンパク質の添加量としては、最終脂肪組織代替物100質量%あたり、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、本発明のデキストリンとしては、最終脂肪組織代替物100質量%あたり、20〜40質量%、好ましくは25〜35質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を0.1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜20質量%含有することが好ましい。
上記脂肪組織代替物には、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンに加え、更にカラギナンを用いることが好ましい。カラギナンとしては、カッパタイプ、ラムダタイプ、およびイオタタイプのカラギナンが知られている。本発明では、これらのいずれのカラギナンを使用してもよいが、中でもイオタタイプのカラギナンを使用することが好ましい。また本発明で使用するカラギナンは、水と混合し、必要により攪拌することにより、水に完全に溶解する性質を有する水溶性のものが好ましい。水溶性のカラギナンとしては、好適には下記(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものを挙げることができる。より好ましくは下記(1)〜(3)の少なくとも二つの性質を有するもの、特に好ましくは(1)〜(3)の全ての性質を有する水溶性のカラギナンである。
(1)50℃以下の水に溶解する。
本発明で使用する好適なカラギナンは、50℃以下の水に完全に溶解する水溶性のカラギナンである。より好ましくは5〜40℃、さらに好ましくは5〜30℃の水に溶解するカラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、通常60℃以上に加温しなければ水に溶解しないものである点で、上記のカラギナンと相違する。水への溶解方法は特に制限されないが、必要により泡立て器などの任意の攪拌手段を用いて攪拌することによって、水に溶解させてもよい。
(2)その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない。
本発明で使用する好適なカラギナンは、その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性のカラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、その1.5質量%水溶液が25℃条件下でゲル化する特性を有している点で、上記のカラギナンと相違する。
ここでゲル化の有無は、25℃における粘度を測定することによって評価することができる。具体的には、測定対象物(カラギナンの1.5質量%水溶液)の粘度を、25℃条件下でBL型回転粘度計(ローターNo.2)((株)トキメック製)を用いて回転数12rpmで1分間測定した場合、粘度が4000mPa・s以下であるか否かで判断することができる。この場合、粘度が4000mPa・s以下である場合はゲル化していないと判断することができ、粘度がこれより大きい場合にはゲル化していると判断される。好ましい水溶性カラギナンは、上記条件で測定したときの粘度が1500mPa・s以下のものである。
(3)カルシウムイオンを含み、その割合が0.1質量%以下である。
本発明で使用する好適なカラギナンは、カルシウムイオンを含んでおり、その割合が0.1質量%以下の水溶性カラギナンである。より好ましくは0.05質量%以下の割合でカルシウムイオンを含む水溶性カラギナンである。
なお、上記(1)〜(3)の性質を有する水溶性のイオタカラギナンは、商業的に入手できるものであり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のゲルリッチ[商標]No.3を挙げることができる。
カラギナンの配合量としては、脂肪組織代替物100質量%あたり、カラギナン0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%を例示することができる。なお、カラギナンを併用する場合は、上記製法中、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加する際にカラギナンを添加し、熱変性乳清タンパク質、本発明のデキストリン及びカラギナンを含有した溶液を冷却固化することにより脂肪組織代替物を調製できる。
上記の脂肪組織代替物は、使用に際して各種任意の形状に加工することができる。具体的には、手動または機械(例えば、フードカッター、サイレントカッターおよびミンサーなど)を用いて脂肪組織代替物を任意の形状にカット、せん断、ミンチまたはらい潰(すり潰し)してもよい。特に制限されないが、脂肪組織代替物をミンチにする場合は、直径が0.5〜10mm、より好ましくは、3〜5mm程度の大きさに調製することが好ましい。かかる大きさにミンチした脂肪組織代替物を、特に粗挽きソーセージやハンバーグなどの食肉加工食品の調製に用いることによって、脂身特有の食感、ジューシー感、および油脂感を付与することができる。斯くして調製される脂肪組織代替物は、前述するように、食肉の脂身と同様に、常温(25℃)で固形状態であるものの、加熱、特に50℃以上で加熱すると半流動状または液状(流動状)になる性質を有する。しかも、これを再び常温(25℃)程度まで冷却すると固化して固形状態に戻る。このため、本発明の脂肪組織代替物は、食肉加工食品に豚脂や牛脂などの脂身の代替物として配合した場合、脂身と同様のジューシー感(肉汁感)や脂身特有の濃厚感や歯触り(食感)を付与することができる。
また、本発明の脂肪組織代替物は、室温以下の温度で調製でき、当該温度で容易に取り扱うことができる。これは、低温で製造され低温で管理される食肉加工食品の原料として使用するうえで大きな利点となる。すなわち、ハムやソーセージなどといった、加熱調理前は、品温が10℃以下の低温で製造され管理される食肉加工品の加工現場には加熱装置がない場合が少なくないが、本発明の脂肪組織代替物は、当該加工現場に加熱装置を新たに設けることなく、従前の設備を用いて製造することができ、そのまま食肉加工食品の製造原料として使用することができる。
(I)−2 食肉加工食品の調製
本発明の加工食品の一種である食肉加工食品は、脂身の代わりに前述する脂肪組織代替物を用いる以外は、通常の材料と通常の手法を用いて調製することができる。例えば、ハンバーグやミートボールなどは、挽肉と各種材料を混合する際に予め調製しておいた本発明の脂肪組織代替物を挽肉と同様にミンチ状にして添加する方法によって調製することができる。またソーセージは、豚脂などの脂身を入れる段階で、当該脂身の一部またはすべてに代えて本発明の脂肪組織代替物を添加する方法によって調製することができる。さらにハムは、ピックル液の中に本発明の脂肪組織代替物を溶解し、これを原料肉に注入するなどといった方法によって調製することができる。
かくして熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有した食肉加工食品は、乳特有の風味が食肉加工食品に影響を与えることもなく、特許文献6よりも大幅に脂肪を低減しつつも脂肪特有の濃厚感やボディ感に優れた食肉加工食品となる。例えば、食肉加工品中の脂肪含量を30〜60質量%、もしくは全代替など、従来では困難であった脂肪含量まで大幅に低減させることも可能である。更に、調製された食肉加工食品中の脂肪組織代替物は、加熱によって液状へと変化するため、加熱時のジューシー感までもが再現された食肉加工食品を提供できる。一方、熱変性乳清タンパク質と併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は、脂肪組織代替物に十分な保形性および脂肪感や濃厚感が得られず、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はデキストリンの溶解時に必要以上に粘性が生じて調製が困難となったり、脂肪特有のコクや滑らかさが得られず食感がざらつく、かかる脂肪組織代替物を含有する加工食品を加熱して喫食する際に溶解したデキストリンが糊感となって自然なジューシー感を得ることができないという問題がある。
(II)乳製品
乳製品として、具体的にはプリン、アイスクリーム類、チーズ、チーズ様食品、チーズ入りデザート、ホイップクリーム、ヨーグルト、フラワーペースト、カスタードクリーム及びミルクチョコレート等の乳製品、好ましくはプリン、アイスクリーム類、チーズ、チーズ様食品、ホイップクリーム及びヨーグルトからなる群から選ばれる1種以上を挙げることができる。
かかる乳製品に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより、食品本来の風味に影響を与えることなく、滑らかな食感や濃厚感を付与された高級感あふれる食品を提供できる。更には、乳製品中の脂肪及び油脂含量を低減させた場合においても、食品本来の風味に影響を与えることなく、乳脂肪や油脂特有の濃厚感が付与され、更には離水も防止された乳製品を提供できる。例えば、乳製品中の油脂含量を2分の1、更には4分の1まで低減させた場合においても、本発明にかかる構成をとることにより、乳脂肪及び油脂特有の濃厚感が付与された乳製品を提供することができる。また、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンをアイスクリーム類やホイップクリーム、ヨーグルト、フラワーペースト、又はカスタードクリーム等に用いた場合は、濃厚感付与に加え、保形性までもが付与された乳製品の提供が可能となる。特にアイスクリーム類やホイップクリームは時間経過と共に形状が溶解もしくは崩れ、商品価値が下がる傾向があるが、本発明の形態をとることにより保形性が格別に向上する。また、フラワーペーストやカスタードクリームでは、澱粉を低減し熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有することにより、高い保形性はそのままに、澱粉に由来する糊っぽさを低減して口どけを大幅に改善することができる。
乳製品に対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、乳製品100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜10質量%、更に好ましくは0.1〜8%、乳製品100質量%に対し、本発明のデキストリンを0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性タンパク質を30〜200質量%、好ましくは50〜180質量%添加することが好ましい。
熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有する乳製品は、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加する以外は常法に従って調製することが可能である。例えば、プリンであれば、水に全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、卵等の乳成分、及び必要に応じてゲル化剤を添加し、加熱溶解後、冷却(プリン)若しくはオーブンで焼成(焼きプリン)することにより調製されるが、水に乳成分等を添加する段階で熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより滑らかな食感や濃厚感が付与されたプリンを調製することが可能である。従来は、大幅に脂肪分含量を低減させると固くサクい食感のプリンとなって、滑らかさの劣る口溶けの悪いプリンになることが問題となっていたが、熱変性した乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを用いることにより、脂肪分を0.001〜2質量%と大幅に低減させた場合においてもプリン特有の濃厚感や保形性を有したプリンを提供することが可能となった。
アイスクリームであれば、水に果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳等の乳成分、砂糖、安定剤、乳化剤等を加え加熱して攪拌後、精製ヤシ油等の油脂を添加し、適宜均質化、エージング、フリージング工程をとり、容器に充填後冷却することにより調製できるが、本発明では水に果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳等の乳成分、砂糖、安定剤、乳化剤等を添加する際に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより濃厚感及び保形性が付与されたアイスクリーム類を調製できる。なお、アイスクリーム類は乳脂肪分及び乳固形分によってアイスクリーム(乳固形分15%以上、乳脂肪分8%以上)、アイスミルク(乳固形分10%以上、乳脂肪分3%以上)、ラクトアイス(乳固形分3%以上)、その他氷菓と分類されるが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、例えばアイスミルクであってもアイスクリームと同等の脂肪感やコクを付与することができる。
同様にしてやラクトアイスまで乳脂肪分及び乳固形分量を低減させた場合においても、アイスミルクと遜色ない脂肪感やコクを付与することができ、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、アイスクリーム本来の風味に影響を与えることなく、濃厚感が十分に付与された低脂肪、低カロリーアイスクリーム類を提供可能となった。更に、従来アイスクリーム類の低脂肪、低カロリー化を図り脂肪分含量を低減させると、アイスクリーム類自体の組織が荒くなり、一方でデキストリン等を用いてかかる低脂肪分を補足しようとすると口溶けや風味が悪化することが問題となっていたが、本発明に係る構成をとることにより、アイスクリーム類が有する口溶けや風味はそのままに、脂肪分含量を低減させたアイスクリーム類の組織自体まで滑らかに改良することができる。また、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンはアイスクリームに添加することにより、滑らかな食感で濃厚感やコクが十分に付与された高級感あふれるアイスクリームを提供することが可能となった。
一方、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は脂肪感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下を招き、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合は組織が荒くざらついたり、粉っぽさが目立ち口どけが悪い食感となったり、澱粉特有の風味が目立ってしまうなどの不具合が生じる。
チーズ、チーズ様食品及びチーズ入りデザートであれば、以下にかかる製法を用いて調製可能である。例えばプロセスチーズ等のチーズであれば、複数のナチュラルチーズに溶融塩や乳化剤等の添加物を必要に応じて添加し、加熱溶解、混練することにより調製されるが、本発明では溶融塩や乳化剤等の添加時に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより濃厚感が付与されたチーズを提供できる。本発明でチーズ様食品とは、乳脂肪を含有しないか、または20質量%以下の乳脂肪しか含有しないにも関わらず、通常、乳脂肪が20質量%より多いチーズに類似した外観、風味および食感(ボディ感および口あたり)を有する食品、または、乳脂肪の代わりに植物性油脂および脱脂粉乳や乳タンパク質を混合するという、チーズよりも容易な工程で安価に調製されるにも関わらずチーズに類似した外観、風味および食感(ボディ感および口あたり)を有する食品を意味する。
一方、通常のチーズの乳脂肪含量は以下のとおりである(カッコ内に示す)。ナチュラルチーズの一例として、クリーム(通常33重量%)、モザレラ(通常44重量%)。熟成チーズの一例として、チェダー(通常33.8重量%)、ゴーダ(通常29重量%)、エダム(通常25重量%)、エメンタール(通常33.6重量%)、カマンベール(通常24.7重量%)。
前述の乳脂肪を含有しないか、乳脂肪含量が20質量%以下であるチーズ様食品や、チーズよりも容易な工程で安価に調製されるにも関わらずチーズに類似した外観、風味および食感を有するチーズ様食品は例えば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加、溶解し、冷却することにより調製することができる。なお、乳製品に用いる熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量を前述したが、チーズ様食品を調製する際は、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンは下記添加量で用いられることが好ましい。チーズ様食品100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.5〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、チーズ様食品100質量%に対し、本発明のデキストリンを1〜30質量%、好ましくは5〜20質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を1〜200量%、好ましくは3〜150質量%添加することが好ましい。
かくして調製されたチーズまたはチーズ様食品は、十分に濃厚感が付与されつつも、滑らかで口溶けの良い食感を有する高級感あふれたチーズまたはチーズ様食品となる。特に、乳脂肪の代わりに植物性油脂及び脱脂粉乳や乳タンパク質を混合して調製されるチーズ様食品は、例え本来のチーズと同様の脂肪含有量を有していた場合であっても、チーズ本来の風味や濃厚感、口溶けが低下し、ざらついたり粉っぽさが目立つ場合や、加熱すると油が分離する傾向があり、本来のチーズに比して劣っていたが、かかるチーズ様食品に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用して添加することにより、本来のチーズと遜色ない滑らかな口溶けや十分な濃厚感を有したチーズ様食品となる。更に、脂肪含有量を低減させたチーズ様食品に熱変性乳清タンパク質と本発明のデキストリンを併用した際も、脂肪低減前のチーズ等と遜色ないチーズ特有のボディ感や口あたり、保形性を有し、かかるチーズ又はチーズ様食品を用いることにより、常法にて脂肪分が低減されたチーズ入りデザート(ケーキ、プリン、ムース)やパン、ピザ、グラタン、ラザニア、ドリア、リゾット、ソース、スープ、チーズフォンデュ、ハンバーグ、サラダ及びスプレッド等を提供することが可能である。
更に本発明のチーズ及びチーズ様食品は、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンに加え、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、脱アシル型ジェランガム及びエーテル化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種以上を併用することができる。乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、脱アシル型ジェランガム、及びエーテル化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種以上を併用することにより、室温などの非加熱状態では良好な保形性を有すると共に、オーブンなどで熱を加えた際に、チーズ特有の加熱溶融性(糸引き性)を示し、チーズ様食品のような脂肪含量が低減された食品においてもチーズに類似した性質を付与することが可能である。
チーズ様食品に配合される乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、脱アシル型ジェランガム又はエーテル化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種以上の配合量は、用いる素材によって適宜調節することが可能であるが、通常、最終チーズ様食品100質量%あたりのこれらの総量として0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%を挙げることができる。具体的には、最終チーズ様食品100質量%あたり、乳清タンパク質の場合は0.5〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは2〜3質量%;カードランの場合は0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%、より好ましくは1〜2質量%;メチルセルロースの場合は0.01〜3質量%、好ましくは0.02〜2質量%、より好ましくは0.1〜1質量%;脱アシル型ジェランガムの場合は0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%、より好ましくは0.03〜0.5質量%;エーテル化澱粉の場合は0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは2〜5質量%を挙げることができる。
乳清タンパク質は、各種乳清タンパク質を用いることができるが、牛乳由来の乳清を原料としたものが好ましい。より好ましくは、乾物換算で蛋白質含有量が80質量%以上の乳清タンパク質である。かかる乳清タンパク質として、例えば、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、および乳清タンパク質単離物(WPI)を挙げることができる。なかでもゲル化力の高い乳清タンパク質を用いることが好ましい。かかる乳清タンパク質としては、具体的には、乳清タンパク質15質量%水溶液を80℃に加熱した後、4℃に冷却した後のゲル強度が、カード値で10N/cm2以上、より好ましくは12N/cm2以上のものを挙げることができる。かかるゲル強度の上限は、制限されないが、通常カード値で50N/cm2、より好ましくは20N/cm2である。なお、当該性質を有する乳清タンパク質は、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のミルプロ142を挙げることができる。
メチルセルロースは、セルロースの骨格中の水酸基をメトキシル基で置換したものである。かかるメチルセルロースは、セルロースを水酸化ナトリウムでアルカリセルロースにし、次いで塩化メチルと反応させることにより調製することができる。市販されているメチルセルロースのメトキシル基による置換度(DS)は通常1.4−2であり、かかるメチルセルロースは10℃程度の冷水に溶解する特性を有している。本発明では、なかでも2%水溶液の粘度が40〜10000mPa・s、好ましくは80〜4000mPa・s、より好ましくは300〜2000mPa・sのメチルセルロースを用いることが好ましい(20℃、B型回転粘度計、60rpmで測定)。当該性質を有するメチルセルロースは、商業的に入手することができ、例えば、信越化学株式会社製のSM−400およびSM−1500を挙げることができる。カードランは、土壌菌によって産生される微生物多糖類で、加熱すると固まるという性質を有するものである。本多糖類はグルコースがβ―1,3−グルコシド結合した直鎖状のグルカンである。
脱アシル型ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類であり、1−3結合したグルコース、1−4結合したグルクロン酸、1−4結合したグルコース及び1−4結合したラムノースの4分子を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類である。1構成単位辺りカルボキシル基1残基を有する。
本発明で使用するエーテル化澱粉とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。原料となる澱粉としては、通常市販されている澱粉であれば特に限定されず、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉などの地下澱粉、ワキシコーンスターチ、コーンスターチ、小麦、米澱粉などの地上澱粉が挙げられる。エーテル化澱粉の例としては、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、及びカルボキシエチル澱粉が挙げられ、特にヒドロキシプロピル化澱粉、更には馬鈴薯澱粉またはタピオカ澱粉を原料としたヒドロキシプロピル化澱粉を使用することが好ましい。かかるヒドロキシルプロピル化澱粉は商業上入手可能であり、例えば、松谷化学工業株式会社製の「ゆり」や王子コーンスターチ株式会社の「いかるが[商標]100」を挙げることができる。
乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、脱アシル型ジェランガム及びエーテル化澱粉からなる群から選択される少なくとも1種以上は、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加する際に添加することが可能である。
一方、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は脂肪感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下を招き、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり粉っぽさが目立つ食感となる場合や、澱粉特有の風味が目立つ場合、さらには食感、特に加熱時の食感が糊っぽいものになる。
ホイップクリームは、生乳・牛乳等の乳由来のクリーム(例えば生クリーム)や合成クリーム(非乳クリーム)に、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを水に溶解したものを添加する方法や、乳由来のクリームや脱脂粉乳等の乳原料、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、必要に応じて乳化剤をあらかじめ水に添加、溶解して油脂を加えて乳化する一般的な製法により調製することができる。また、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、必要に応じて乳化剤を油脂に溶解した油相部を混合し、乳原料を含有した水相部と混合、乳化して調製することによっても調製できる。本発明のデキストリンは、少なくとも1〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによって溶解するため、上記水溶液はかかる温度で調製することができる。ホイップ方法については従来から用いられている方法で行うことができる。例えば、市販の泡立てることができる機械や工業用機械(例えば、工業用攪拌機、ホイッパー、家庭用ハンドミキサー等)を用いて、ホイッピングを行うことができる。
かかるホイップクリームに熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加することにより、風味に影響を与えることなく滑らかな食感を有する上に、十分な濃厚感が付与された高級感あふれるホイップクリームとなる。更に、ホイップクリームは流通過程上、いったんホイップした後に冷凍されて流通する形態をとる場合があり、使用時(解凍時)に組織が荒れ滑らかな食感が低下する、水っぽくなる、離水が顕著に発生することなどが問題となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、凍結解凍した場合であっても滑らかで濃厚感のある食感を付与し、離水も顕著に抑制されたホイップクリームを提供できる。
更に、低脂肪、低カロリー化を目的としてホイップクリーム中の乳脂肪や油脂含量を低減させることにより保形性や脂肪感、濃厚感が低下することなどが問題となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有することにより、ホイップクリーム中の油脂含量を35質量%以下、更には25質量%以下と低減させた場合においても、保形性に優れる上、十分な脂肪感、濃厚感が付与された低脂肪、低カロリーホイップクリームを提供できる。更にホイップクリームの離水を防止することもできる。
一方、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は脂肪感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下や離水、特に凍結解凍時の離水の増加を招き、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり、粉っぽさが目立つ食感となる場合や、澱粉特有の風味が目立つ場合、さらにはキメの荒いクリームになる等の不具合が生じる。
更に本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンに加え、ヨウ素価が0〜42であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ヨウ素価が44〜120であるモノグリセリン脂肪酸エステル及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンに加え、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を併用することにより、ホイッピングタイムの短縮や、オーバーランの向上効果が得られる。また、上記併用によりホイップクリーム自体のきめが細かくなり、更にはつやがよくなる。ヨウ素価は、油脂中の不飽和脂肪酸量を示す値であり、不飽和脂肪酸が多いとヨウ素価は高くなる。詳細には、油脂100gに付加することのできるヨウ素(I2=254)のグラム数で表される。本発明ではヨウ素価が0〜42、好ましくは16〜42であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ヨウ素価が44〜120、好ましくは44〜55であるモノグリセリン脂肪酸エステルを用いることを特徴とする。
ヨーグルトは、原料をタンクなどに入れて発酵した後、製造された発酵乳を容器充填する方法(前発酵方式)によって調製されるソフトヨーグルト(撹拌ヨーグルト)や、原料乳と乳酸菌などを混合した混合原料を容器充填し、その容器内で発酵させる方法(後発酵方法)によって調製されるハードヨーグルト(固形ヨーグルト)等が挙げられるが、本発明では原料乳をタンクに入れる際、若しくは乳酸菌などと混合する際に熱変性乳清タンパク質を添加し、得られた発酵乳に予め本発明のデキストリンを溶解した水溶液を混合したのち容器に充填する、または原料乳をタンクなどに入れて発酵した後、製造された発酵乳に予め本発明のデキストリンと熱変性乳清タンパク質を溶解した水溶液を混合したのち容器に充填することにより調製することが可能である。原料乳としては、牛乳、山羊乳、羊乳等の獣乳や、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどが好適に用いられる。
かくして得られた熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有したヨーグルトは、ヨーグルト本来の風味が損なわれることなく、滑らかな食感や脂肪特有の濃厚感が付与され高級感あふれるヨーグルトとなる。更に、ヨーグルトは乳脂肪含有量が低下するにつれ、離水が顕著に発生することが問題となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、乳脂肪分が0.001〜1質量%といった低脂肪ヨーグルトや、更には無脂肪ヨーグルトであっても顕著に離水が防止され、更に乳脂肪分を低減させなかったヨーグルトと遜色ない濃厚感を有するヨーグルトを提供できる。
一方、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は脂肪感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下や離水の増加が生じ、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり粉っぽさが目立つ食感となる場合や、澱粉特有の風味が目立ってしまう等の不具合を生じる。
同様にして、フラワーペーストやカスタードクリーム等は、水、脱脂粉乳や全脂粉乳、生クリーム等の乳原料、澱粉等の混合物を攪拌する段階で熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加し、必要に応じて均質化処理を行った後に加熱溶解し、冷却することにより食品本来の味に影響を与えることなく、滑らかで口溶けがよく、十分に濃厚感が付与された高級感あふれる乳製品を提供することが可能である。更に、フラワーペーストやカスタードクリーム等は脂肪分を低減させた場合、保形性が低下する、食感が硬くなるなどの問題点を抱えており、一方でパーム油等の油脂などを追加して脂肪分の増加を図ろうと試みるとフラワーペーストやカスタードクリーム等の組織が荒くなる、油脂の分離が生じるといった問題点を抱えていた。しかし、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、脂肪分が0.001〜2質量%、若しくは脂肪分を含有しない場合においても食品本来の味に影響を与えることなく滑らかで口溶けが良く、脂肪特有の濃厚感が十分に付与された乳製品を提供できる上、調製された乳製品はフラワーペーストやカスタードクリームとして求められる十分な保形性、離水防止特性を兼ね備えている。
また、フラワーペースト、カスタードクリームでは、保形性付与を目的として澱粉が添加されることが多く、澱粉の添加量が多くなると糊っぽい食感となり口溶けが悪くなることが問題となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有することにより、高い保形性はそのままに、澱粉の添加量を低減させ、澱粉に由来する糊っぽさを低減できる上に、口どけを大幅に改善することができる。例えば、澱粉を通常5質量%程度使用されるところを3%質量以下、更には2%質量以下と低減させた場合において、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを含有することにより、上記の効果が得られる。
(III)乳化様食品又は乳化食品
乳化様食品又は乳化食品として具体的には、マヨネーズ様調味料、ドレッシング、スプレッド(マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)が挙げられ、好ましくはマヨネーズ様調味料、ドレッシングが挙げられる。本発明でいう乳化様食品とは、油脂を含有しないにも関わらず油脂を乳化して調製される乳化食品に類似した外観、食感および使用感を有する、非乳化の加工食品である。
(III)−1 乳化様食品
乳化様食品の対象となる乳化食品として、ドレッシング、マヨネーズ、フラワーペースト、およびスプレッド(バター、マーガリン、ファットスプレッド、およびバタークリーム)が含まれる。また上記でいう使用感には、スプレッドなどをナイフにとる感触やそれをパン等に塗布する際の感触(塗布感)が含まれる。かかるドレッシング、マヨネーズ、フラワーペースト、バター、マーガリン、およびファットスプレッドには、表1に記載する日本農林規格(JAS)規定のものが含まれる。
本発明の乳化様食品は、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン及び水を含有するものであればよく、その製法は特に制限されない。例えば、マヨネーズに類似した外観、食感及び使用感を有する「マヨネーズ様調味料」であれば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、砂糖を添加し、70〜90℃で5〜30分間程度加熱しながら溶解する。得られた混合物に、酢、果汁、塩類などの調味料を適宜添加し、温度を保った状態で容器に充填して密封し(ホットパック充填)、これを冷蔵庫において冷却することにより調製できる。
乳化型ドレッシングに類似した外観、食感及び使用感を有する「乳化型ドレッシング様調味料(ノンオイルドレッシング)」であれば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、砂糖を添加し、室温で10分間加熱攪拌溶解し、醸造酢、食塩、香料等を添加し、90℃まで加熱後ホットパック充填し、冷却することにより調製できる。
マーガリンやファットスプレッドなどのマーガリン類に類似した外観、食感および使用感を有する「マーガリン様食品」であれば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、および食塩を適宜加え、70〜90℃で5〜30分間程度加熱しながら溶解し、全量が100質量%になるように水を添加して調整する。そして調製した水溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却後、冷蔵庫(5℃)にて3日間冷却することにより調製できる。
フラワーペーストに類似した外観、食感および使用感を有する「フラワーペースト様食品」であれば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン、並びに乳化剤などを加え、これに澱粉、小麦粉、糖質、蛋白性原料などの成分を加えて加熱攪拌し、小麦粉や澱粉を糊化膨潤させることにより調製することができる。
乳化様食品に対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、乳化様食品100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、乳化様食品100質量%に対し、本発明のデキストリンを1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜16質量%を挙げることができる。また、乳化様食品100質量%に含まれる水の割合として、例えば40〜90質量%、より好ましくは60〜80質量%を例示することができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を5〜150質量%、好ましくは10〜100質量%添加することが好ましい。
上記乳化様食品には、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンに加え、好ましくはキサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、ネイティブ型ジェランガム、ガティガム及びアラビアガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類を併用することが好ましい。かかる多糖類を併用することにより、十分な滑らかさやクリーミーさを兼ね備えた乳化様食品を調製することができる。乳化様食品に対する上記多糖類の添加量としては、乳化様食品100質量%に対し、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、ネイティブ型ジェランガム、ガティガム及びアラビアガムから選ばれる少なくとも1種以上を0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%添加することが好ましい。
本発明の乳化様食品は、更に界面活性剤を用いることにより、長期保存によって生じ得るデキスリンの結晶化を有意に抑制することができ、その結果、長期間に渡って滑らかな食感と使用感を維持することができる。ここで界面活性剤としては、通常食用の乳化剤として使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、クエン酸、コハク酸または乳酸等の有機酸のモノグリセリド類、有機酸ポリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを挙げることができる。好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはクエン酸モノグリセリド及びコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種である。また、界面活性剤の添加量としては、乳化様食品100質量%あたり、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.05〜0.2質量%を例示することができる。
なお、上述の多糖類及び乳化剤は、乳化様食品を調製する際、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを添加する段階で添加することができる。
一方、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は油脂感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下が生じ、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり粉っぽさが目立つ食感となる場合や、澱粉特有の風味が目立つ、組織が荒れてなめらかさを損なう等の不具合が生じる。
(III)−2 乳化食品
上記油脂を含有しない乳化様食品に対し、油脂を含有する乳化食品として、具体的には、マヨネーズ様調味料、ドレッシング、スプレッド(バター、マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)が挙げられ、好ましくはマヨネーズ様調味料、ドレッシングが挙げられる。
乳化食品のマヨネーズ様調味料であれば、水に熱変性乳清タンパク質、本発明のデキストリン、多糖類等を添加、溶解し卵黄、醸造酢、レモン果汁、食塩等を添加混合後、撹拌しながらゆっくりと油脂を添加したのちコロイドミルにて均質化することによって調製することができる。従来、マヨネーズ(日本農林規格)は油脂を65〜80質量%の割合で含有しており、かかる油脂含量を低減させるとマヨネーズ特有の白濁感やツヤ、保形性が保持することが困難となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、かかる油脂含量を50質量%以下、好ましくは40質量%以下、更には油脂含量が0.01〜15質量%まで低減させた場合においても、マヨネーズ特有の濃厚感、白濁感、さらにはツヤを有するマヨネーズ様調味料を調製することが可能である。
更に、通常のマヨネーズは80000〜180000mPa・sの粘度を有していることを特徴とする(ブルックフィールド粘度計、25℃、回転数5rpm、1分間測定した場合の粘度)が熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、かかる粘度をマヨネーズ様調味料に付与することも可能である。従来、かかる粘度を付与させようとキサンタンガム等の増粘多糖類を多量添加すると口溶けが悪化することが問題となっていたが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより口溶けは良好なままで上記粘度をマヨネーズ様調味料に付与することが可能である。
マヨネーズ様調味料に対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、脂肪を低減した例えばハーフマヨネーズ(油脂含量30〜40質量%)では、マヨネーズ様調味料100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%、マヨネーズ様調味料100質量%に対し、本発明のデキストリンを0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜4質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を20〜200質量%、好ましくは50〜150質量%添加することが好ましい。
乳化食品のドレッシングであれば、水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリン等を添加して5〜20分程度攪拌溶解した後、食酢、調味料などを添加し、更に攪拌混合した後、ホモミキサーなどの攪拌機を使用して油脂と前記溶液とを混合して乳化を行い、脱気後、容器充填する方法を用いて調製することが可能である。そして熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、かかるドレッシングの油脂含量を30質量%以下、更に10質量%以下、更には5質量%以下まで低減させつつも、ドレッシング特有の白濁感やツヤ及び濃厚感が付与されたドレッシングを提供することができる。
ドレッシングに対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、ドレッシング100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%、ドレッシング100質量%に対し、本発明のデキストリンを1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは2〜5質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を10〜200質量%、好ましくは50〜150質量%添加することが好ましい。
スプレッド(バター、マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)であれば、植物油脂に乳化剤、レシチンを溶解したものに、熱変性乳清タンパク質、本発明のデキストリン、食塩等を添加し攪拌溶解した水溶液を加え、攪拌混合し、これをホモミキサーにて乳化後、冷却しながら混合することにより、脂肪感が付与されたスプレッドを調製することができる。通常、バターは乳脂肪を80質量%以上の割合で、またマーガリン(日本農林規格)は油脂を80質量%以上の割合で含有しているが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、かかるスプレッドの乳脂肪や油脂含量を60質量%以下、更には40質量%以下まで低減させつつも、上記スプレッドと遜色ないスプレッド特有の白濁感及び濃厚感、更にはスプレッド特有の塗布感までもが付与された低脂肪スプレッドを提供することができる。
スプレッドに対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、スプレッド100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、スプレッド100質量%に対し、本発明のデキストリンを1〜20質量%、好ましくは2〜10質量%を挙げることができる。更に、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を1〜100質量%、好ましくは3〜50質量%添加することが好ましい。
なお、本発明の乳化食品には、前述の乳化様食品と同様にして、好ましくはキサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、ネイティブ型ジェランガム、ガティガム及びアラビアガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類や、更に界面活性剤を併用することができる。
一方、上記乳化食品に熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は油脂感や濃厚感が十分に感じられず、また保形性の低下が生じ、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり粉っぽさが目立つ食感となる場合や、澱粉特有の風味が目立つ等の不具合が生じる。
(IV)乳成分含有飲料
乳成分含有飲料として、具体的にはミルクココア、ミルクコーヒー、ミルクティー、フルーツ牛乳、抹茶ミルク等が挙げられる。例えばミルクココア、抹茶ミルクなどであれば水に砂糖、デキストリン、乳化安定剤を添加、80℃10分加熱溶解したものに、牛乳等の乳原料と熱変性乳清タンパク質、ココア、抹茶等の粉末を加えて70℃まで再加熱し、必要に応じて香料等を添加し全量調製後、均質化処理を行い、121〜125℃で20〜30分間レトルト殺菌することにより調製できる。同様にミルクコーヒー、ミルクティー、フルーツ牛乳であれば、湯又は水に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを加えて攪拌・溶解し、糖液、乳成分等を加え、これに別途抽出したコーヒーエキス、紅茶エキス、果汁成分等を添加し、pH調整した後均質化処理を行い、容器に充填後、殺菌処理を行う方法により調製することができる。そして熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用して添加することにより、乳脂肪含量を半分以下、更には4分の1以下まで低減させた場合においても、油脂特有の濃厚感やコクを有する低脂肪乳成分含有飲料を調製することができる。
乳成分含有飲料に対する熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの添加量は、対象とする食品や油脂含量によっても適宜調節することが可能であるが、乳成分含有飲料100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質0.2〜2質量%、好ましくは0.4〜1.5質量%、乳成分含有飲料100質量%に対し、本発明のデキストリンを0.2〜2質量%、好ましくは0.4〜1.8質量%、より好ましくは0.5〜1.6質量%を挙げることができる。
一方、本発明では熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することを特徴とするが、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンの配合割合として、本発明のデキストリン100質量%に対し、熱変性乳清タンパク質を20〜200質量%、好ましくは50〜100質量%添加することが好ましい。
一方、上記乳成分含有飲料に熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合であっても、青価が0.4未満であるデキストリンを併用した場合は乳脂肪特有のコク味や濃厚感が十分に感じられず、一方で青価が1.2より大きいデキストリンを併用した場合はざらついたり粉っぽさが目立つ飲み口となる場合や、澱粉特有の風味が目立つ等の不具合が生じる。
なお、上記に熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを用いた各種食品の調製方法を例示したが、各種食品はこれら上記調製方法に制限されることなく、求められる加工食品の形態や処方に応じて添加時期や調製方法、殺菌方法等を適宜調節することが可能である。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量%」、「%」は「質量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
調製例1〜3 本発明のデキストリンの調製
馬鈴薯澱粉を70℃の水に投入し撹拌して懸濁液とした。これにアミラーゼを添加して、混合後、70℃で反応させ、青価(680nmの吸光度)を指標として分解程度を評価した。 なお青価は次の方法に従って求めた。
(1)濃度が1w/v%となるようにデキストリン含有水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計にて測定する。
このとき、かかる青価(680nmの吸光度)が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに塩酸を添加し、これを90℃まで加熱することにより酵素(アミラーゼ)を失活させて上記反応を停止する。斯くして、青価が0.66、0.60、0.83であるデキストリンを調製した(調製例1、2、3)。該デキストリンは、上記酵素反応後、スプレードライを行って粉末化して、以下の実験に使用した。
実験例1 各種デキストリンの性質
調製例1〜3で調製したデキストリンについて、下記の性質(a)〜(c)を測定した。また比較のため市販されているデキストリン〔市販品1:「PASELLI SA2」(AVEBE社製)、市販品2:「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)、市販品3:パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)、市販品4:「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)、市販品5:「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)〕についても同様にして性質(a)〜(c)を測定した。
(a)青価(Blue Value):
下記の方法で、反応液の吸光度(680nm)を測定する。
(1)80℃の蒸留水を用いてデキストリン1w/v%水溶液を調製し、これを25℃まで冷却する。
(2)上記水溶液10mlに、20mgのヨウ素と200mgのヨウ化カリウムを含む水溶液10ml(0.2w/v%のヨウ素、2w/v%のヨウ化カリウム)を添加して、蒸留水を加えて100mlに調整する。
(3)上記水溶液を遮光条件下で25℃30分間振盪した後、25℃で、波長680nmにおける吸光度を測定する。
(b)ゼリー強度(N/cm2):
80℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)を、下記の方法に従って測定する。
5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、測定対象物が破断した時の荷重(N/cm2)を測定する。
(c)粘度(mPa・s):
25℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを25℃で5分間静置した時の粘度(mPa・s)を、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.1〜4)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって測定する。なお、この条件で測定できる粘度範囲は、ローターNo.1:0〜500mPa・s、ローターNo.2:0〜2500mPa・s、ローターNo.3:0〜10000mPa・s、ローターNo.4:0〜50000mPa・sである。
結果を表2に示す。
実験例2 脂肪組織代替物の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、市販品1〜5)を用いて、表3に示す処方に従って脂肪組織代替物を調製した。詳細には、水(25℃)を攪拌しながら熱変性乳清タンパク質、デキストリン及びカラギナンの混合物を加え、10分間撹拌溶解後、水で全量が100%になるように調製後、容器に充填して冷却(10℃で24時間)することにより脂肪組織代替物を調製した。一方、比較例として、本発明のデキストリンを用いることなく、熱変性乳清タンパク質単独をカラギナンと併用して、同様に脂肪組織代替物を調製した(デキストリン未使用)。
注1)CPケルコ社製「シンプレス100」使用
注2)ゲルリッチ※No.3*使用
得られた各脂肪組織代替物について、(1)脂肪感・濃厚感、(2)ミンチの作業性、(3)風味および(4)総合評価を評価した。なお、(1)脂肪感・濃厚感、および(2)ミンチの作業性は下記の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
(1) 脂肪感・濃厚感
食した際、脂身を使用した場合の食感に近い場合を10、それとの違いが最も大きい場合を1として、10段階で評価。
(2)ミンチの作業性
ミンチを行った際、均一にきれいな粒状に加工できた場合を10、ボロボロと崩れたり装置への付着が多く不均一になった場合を1として10段階で評価。
(4)総合評価は、値が大きいほど濃厚感や食感、風味が総合的に優れていることを示す。
表4より、熱変性乳清タンパク質をデキストリンと併用せずに用いた場合は、高い添加量であっても、豚脂や牛脂といった脂肪組織状に溶液が固まらず、目的とする脂肪組織を調製することができなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質と併用してデキストリンを用いた場合であっても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、脂肪組織代替物調製時に極めて高粘度となり調製が不可能である、十分な脂肪特有の濃厚感を付与できない、デキストリン特有の澱粉臭が脂肪組織代替物に影響を与えるなど、目的とする脂肪組織代替物を調製できなかった。一方で、本発明の熱変性タンパク質及びデキストリンを用いることにより、白色で脂肪組織(脂身)様の外観を有すると共に、室温(25℃)で液状または半液状とならずに適度な固さを有する脂肪組織代替物を調製することが可能となった(実施例1)。更に、熱変性タンパク質及び本発明のデキストリンを用いて調製された脂肪組織代替物は脂肪組織特有の濃厚感が付与され、ミンチなど、機械を用いて加工した際の作業性にも極めて優れた脂肪組織代替物であった。このように、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することによって、固形脂と混合せずとも脂肪組織の代替が可能となり、大幅に脂肪やカロリーの低減を図ることが可能であり、かかる脂肪組織代替物を用いることによって、ソーセージやハンバーグといった各種食肉加工食品の脂肪を代替し、低カロリーでありながらも脂肪を低減させない場合と遜色ない脂肪感・濃厚感に優れた各種食肉加工食品を提供することが可能となった。
実験例3 脂肪が代替された荒挽きソーセージ
豚脂に代えて実験例2で調製された脂肪組織代替物(実施例1)を用いて、下記表5の処方に従って粗挽きソーセージを調製した。詳細には、豚モモ肉、豚脂及び脂肪組織代替物を2〜3cm角にカットし混合後、ミンサーにて5mmφプレートを通した。次いで氷水、食塩、重合リン酸塩、L−アスコルビン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、カゼインナトリウム、砂糖、調味料、スパイス類を加え混合し、冷蔵庫にて一昼夜塩漬した。これを羊腸に充填し、加熱(乾燥50℃ 30分、スモーク60℃ 15分、スチーム80℃ 中心70℃)して荒挽きソーセージを調製した(実施例2)。
比較のため、上記脂肪組織代替物(実施例1)15kgに代えて、豚脂15kgを用いて同様にして粗挽きソーセージを調製した(比較品)。調製した粗挽きソーセージ(実施例2、比較品)を、80℃のお湯で5分間ゆでた後に食した。実施例2の粗挽きソーセージを食べたところ口の中で脂肪組織代替物が溶け出し、当該粗挽きソーセージが、常法に従って豚脂を用いて調製した比較の粗挽きソーセージと遜色なく、粗挽きソーセージ特有の脂身の濃厚感およびジューシー感を有していることが確認された。
実験例4 中性デザート(チョコレートプリン)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、市販品1〜5)を用いて、表6に示す処方に従ってチョコレートプリンを調製した。詳細には、水、生クリーム、チョコレートを攪拌しながら砂糖、脱脂粉乳、ココアパウダー、ゲル化剤、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)、デキストリン、メタリン酸ナトリウムの混合物を加え、80℃で10分間加熱攪拌溶解後、香料を添加した。水で全量が100%になるように調製後、均質機にかけてホモジナイズし(150kfg/cm2)、容器に充填後、冷却してチョコレートプリンを調製した。
注3)ゲルアップ※PI-2069*使用(ローカストビーンガム、ペクチン及び寒天含有製剤)
注4)ホモゲン※DM*使用
得られたチョコレートプリンについて(1)濃厚感、(2)食感、(3)風味及び(4)総合評価を評価した。なお、(1)濃厚感及び(4)総合評価は、それぞれ10段階で評価し、(1)濃厚感は値が大きいほど十分な濃厚感が付与されていることを、(4)総合評価は値が大きいほど濃厚感や食感、風味が総合的に優れていることを示す。結果を表7に示す。
表7より、デキストリンと併用することなく熱変性乳清タンパク質単独でチョコレートプリンを調製した際は、水っぽい食感となり、チョコレートプリン特有の濃厚感は全くみられなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、濃厚感を付与することができないばかりか、食感自体にざらつきを生じる、水っぽくなるなど目的とするチョコレートプリンを調製することはできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、デキストリン特有の澱粉臭がプリンに影響を与えることもなく、滑らかな食感及び濃厚感を付与された高級感あふれるチョコレートプリンを調製することができた。
実験例5 中性デザート(焼きプリン)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例2、3及び市販品1〜5)を用いて、表8に示す処方に従って焼きプリンを調製した。詳細には、水、牛乳、生クリームを攪拌しながら砂糖、全脂粉乳、熱変性乳清タンパク質、各種デキストリンの混合物を加え、80℃で攪拌溶解した。均質機にかけてホモジナイズし(150kfg/cm2)、50℃まで冷却して加糖凍結全卵、加糖凍結卵黄を加え十分混合後、容器に充填、155℃のオーブンにて50分間焼成することにより焼きプリンを調製した。
得られた焼きプリンについて(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味及び(4)総合評価(悪1→10良)を評価した。結果を表9に示す。
表9より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質単独を用いて焼きプリンを調製した際は、風味は良好であるものの、水っぽい食感となり、焼きプリン特有の濃厚感を付与することはできなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、糊っぽく口溶けが悪い食感になる、食感自体にざらつきを生じる、水っぽくなるなど濃厚感を付与することができないばかりか、滑らかな食感が失われてしまった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、デキストリン特有の澱粉臭がプリンに影響を与えることもなく、滑らかな食感及び濃厚感が付与された高級感あふれる焼きプリンを調製することができた。
実験例6 アイスクリーム類(アイスミルク)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、2及び市販品1〜5)を用いて、表10に示す処方に従って冷菓(アイスミルク)を調製した。詳細には、全脂加糖練乳、生クリーム、水飴、加糖凍結卵黄、水を攪拌しながら脱脂粉乳、砂糖、乳化安定剤及びデキストリンの混合物を加え、80℃まで加温して精製ヤシ油を加え、そのまま80℃で10分間加熱攪拌溶解後、水で全量を100%に調整した。次いで、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、5℃で一晩エージングの後、香料を添加しオーバーラン30%でフリージングした後、容器に充填、−45℃で急速凍結することによりアイスミルクを調製した。
注5)サンナイス※S−412*(グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム及びカラギナン含有製剤)使用
一方、比較対象として下記表11に従ってアイスクリームを調製した。詳細には、水飴、脱脂濃縮乳、生クリーム、加糖凍結卵黄、水を攪拌しながら砂糖、乳化安定剤の混合物を加え、80℃まで加温し、そのまま80℃で10分間加熱攪拌溶解後、水で全量を100%に調整した。次いでこれを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、5℃で一晩エージングの後、香料を添加しオーバーラン30%でフリージングして容器に充填、−45℃で急速解凍することによりアイスクリームを調製した。
注6)ワニラフレーバー No.93−I*使用
得られたアイスミルク及び比較対象のアイスクリームについて、(1)組織(荒い1→10滑らか)、(2)濃厚感(弱い1→10強い)、(3)口溶け(悪1→10良)、(4)風味(悪1→10良)、および(5)総合評価(悪1→10良)を、10段階で評価した。結果を表12に示す。
表12より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質単独を用いてアイスミルクを調製した際は、口どけや風味は良好であるものの、アイスクリームのような濃厚感を付与することはできず、またその組織も荒いものであった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭がアイスミルクの風味に大きく影響を与えてしまう、口溶けが悪化する、組織が荒くなる上、その濃厚感も不十分であった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、デキストリン特有の澱粉臭が風味に影響を与えることもなく、アイスクリームと遜色ない濃厚感の強いアイスミルクを調製することができた。更に、調製されたアイスは濃厚感に優れながらも、組織も滑らかで口どけも良く、非常に優れたアイスミルクであった。かかるように、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、乳脂肪を低減させつつも、濃厚感のある低脂肪、低カロリーアイスクリーム類を調製することが可能である。同様にして、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより、アイスミルクと同等の濃厚感や脂肪感が付与された食感が滑らかなラクトアイスを調製することが可能である。
実験例7 プロセスチーズの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、市販品1〜5)を用いて、表13に示す処方に従ってプロセスチーズを調製した。詳細には、万能混合機にて80℃でゴーダチーズを溶解し、熱変性乳清タンパク質、デキストリン、クエン酸三ナトリウム、ローカストビーンガムを添加し、十分に混合後、脱気・成型することによりプロセスチーズを調製した。
得られたプロセスチーズについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味、および(4)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表14に示す。
表14より、デキストリンと併用することなく熱変性乳清タンパク質単独を用いて調製されたプロセスチーズはチーズ特有の濃厚感を付与できないばかりか、食感が硬く口溶けの悪いプロセスチーズとなってしまった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭がプロセスチーズの風味に大きく影響を与えてしまう、食感が硬くなる、ざらつく、糊っぽくなるなど食感に著しく影響を与える上、その濃厚感すら十分に付与することができなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、風味及び食感に影響を与えることなく、滑らかで口溶けがよい高級感あふれる濃厚なプロセスチーズを調製できた。
実験例8 イミテーションチーズ(チーズ含量30%)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例2、市販品1〜5)を用いて、表15に示す処方に従ってチーズ含量30%のイミテーションチーズを調製した。詳細には、水にパーム油、チーズパウダーを加え85℃に加熱し、攪拌しながら脱脂粉乳、熱変性乳清タンパク質、クエン酸三ナトリウムを加え溶解した。次いでデキストリン、キサンタンガム、ガディガム、エーテル化澱粉、食塩を加えて溶解した後、色素及び香料を添加した。水で全量を100%に調整し、容器に充填後85℃で30分間ボイル殺菌し、冷却してイミテーションチーズ(チーズ様食品、チーズ含量30%)を調製した。一方、比較のためにデキストリンの代わりにブドウ糖を同量用いて同様にしてチーズ様食品を調製した。
注7)松谷化学株式会社製 ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉「ゆり」使用
注8)チーズオイルE−10*使用
得られたイミテーションチーズ(チーズ含量30%)について、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)外観、(3)食感、(4)風味および(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表16に示す。
比較として、デキストリンの代わりにブドウ糖と熱変性乳清タンパク質を併用して調製されたイミテーションチーズ(チーズ様食品)は、チーズ含量が30%と低いため、チーズ特有の外観である白濁感が低下し、更に調製されたイミテーションチーズは液状となり目的とする固形状のイミテーションチーズを調製することができなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、チーズ特有の白濁感が低下する、調製されたイミテーションチーズが液状、ペースト状となり目的とする固形状のイミテーションチーズ自体を調製することができなかった。更に、固形状に調製されたイミテーションチーズであっても、イミテーションチーズ自体の食感がざらつく、糊っぽくなるなど、従来のデキストリンを熱変性乳清タンパク質と併用した場合では、チーズ特有の白濁感や保形性を再現しようとすると食感や風味が悪化するといった問題点を抱えていた。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、チーズ含量が30%と低いにも関わらず、風味及び食感にも優れ、滑らかで歯切れのよいチーズと外観が極めて類似したイミテーションチーズを調製することができた。更に、調製されたイミテーションチーズはチーズ含量が30%と低含量にも関わらずチーズ特有の濃厚感、脂肪感が付与され、通常のチーズと遜色ない濃厚感を有していた。
実験例9 イミテーションクリームチーズ(チーズ不使用)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、3及び市販品1〜5)を用いて、表17に示す処方に従ってチーズ不使用のイミテーションチーズを調製した。詳細には、40℃の水に脱脂粉乳、熱変性乳清タンパク質、乳清タンパク質を加え溶解したものに、デキストリン、キサンタンガム、ガディガムを加え混合した。次いで食塩を加え混合後、40℃にて攪拌しながらパーム油と香料を添加した。更に、予め水に溶解した乳酸を混合後、90℃まで加熱し充填、脱気、成型することによりイミテーションクリームチーズ(チーズ様食品、チーズ不使用)を調製した。一方、比較のためにデキストリンの代わりにブドウ糖を同量用いて同様にしてチーズ様食品を調製した。
得られたイミテーションチーズ(チーズ不使用)について、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)外観、(3)食感、(4)風味および(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表18に示す。
比較として、デキストリンの代わりにブドウ糖と熱変性乳清タンパク質を併用して調製されたイミテーションクリームチーズ(チーズ様食品)は、チーズ不使用であるため、チーズ特有の外観である白濁感が低く、更に調製されたイミテーションチーズは液状となり目的とするスプレッド状のイミテーションクリームチーズを調製することができなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、チーズ特有の白濁感が低下する、調製されたイミテーションクリームチーズが液状となり目的とするスプレッド状のイミテーションクリームチーズ自体を調製することができなかった。更に、スプレッド状に調製されたイミテーションクリームチーズであっても、イミテーションクリームチーズ自体の食感がざらつく、糊っぽくなるなど、従来のデキストリンを熱変性乳清タンパク質と併用した場合では、チーズ特有の白濁感やスプレッド性を再現しようとすると食感や風味が悪化するといった問題点を抱えていた。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、チーズ不使用にも関わらず、風味及び食感にも優れ、滑らかでスプレッド性のあるクリームチーズと食感及び外観が極めて類似した濃厚感あふれるイミテーションクリームチーズを調製することができた。
実験例10 チーズデザートの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例2及び市販品1〜5)を用いて、表19に示す処方に従ってチーズデザートを調製した。詳細には、水を攪拌しながらデキストリン、砂糖、ゲル化剤、グリセリン脂肪酸エステルの混合物を加え、クリームチーズ、熱変性乳清タンパク質、植物油脂を加え40℃で10分間加熱攪拌溶解した。次いでクエン酸を添加し、90℃10分間加熱後、香料を添加し、水で全量を100%に調整し、均質機にてホモジナイズし(150kgf/cm2)、容器に充填、冷却することによりチーズデザートを調製した。
注9)ゲルアップ※PI-2068*使用(ローカストビーンガム、ペクチン、寒天、メタリン酸ナトリウム含有製剤)
得られたチーズデザートについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味および(4)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表20に示す。
表20より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、水っぽい食感のチーズデザートとなり、濃厚感を付与することができなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭が強く食味に影響を与える、ざらつく、糊っぽくなる上に、十分な濃厚感を付与することもできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、滑らかな食感及び良好な風味を有しつつも、十分な濃厚感やボディ感を有するチーズデザートを調製することができた。
実験例11 ホイップクリームの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1及び市販品1〜5)を用いて、表21に示す処方に従ってホイップクリームを調製した。詳細には、水を攪拌しながら脱脂粉乳、熱変性乳清タンパク質、砂糖、グリシン、乳化安定剤及びデキストリンの混合物を加え、80℃まで加熱して10分間撹拌溶解した。次いでヤシ油をゆっくり添加し、80℃まで再加熱し、5分間攪拌後、水で全量を100%に調整した後に均質機にてホモジナイズし(150kgf/cm2)、93℃まで達温殺菌した。一晩エージングして冷蔵状態でコシが出るまでホイップし、絞り袋に充填して冷凍し、自然解凍(室温1時間)させた後に絞り袋から花形にホイップクリームを絞り出して状態を評価した。
注10)ホモゲン※No.2699*使用(ポリグリセリン脂肪酸エステル(ヨウ素価30)、ショ糖脂肪酸エステル、微結晶セルロース及びレシチン含有製剤)
調製されたホイップクリームについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味、(4)凍結解凍時の離水抑制(多い1→10少ない)及び(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表22に示す。
表22より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、風味は良好であるものの、ホイップクリームに濃厚感を付与することはできず、水っぽい食感のホイップクリームとなった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭が強く食味に影響を与える、ざらつく、糊っぽくなる上に、十分な濃厚感を付与することもできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、滑らかな食感及び良好な風味を有しつつも、十分な濃厚感やボディ感を有する高級感あふれるホイップクリームを調製することができた。更に、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用して調製されたホイップクリームはいったん凍結後、解凍された場合においてもホイップクリームの離水を顕著に防止でき、かかることから冷凍状態の流通工程を有する場合においても、高級感あふれるホイップクリームの提供が可能となった。
実験例12 ヨーグルトの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1及び市販品1〜5)を用いて、表23に示す処方に従ってヨーグルトを調製した。詳細には、水に牛乳、脱脂粉乳、砂糖、LMペクチン及び熱変性乳清タンパク質を添加して70℃にて10分間加熱溶解した後に、香料を添加し、水で全量を100%に調整した。次いで均質化を行い(14700kPa=150kgf/cm2)、95℃達温にて加熱殺菌した。殺菌後の溶液を40℃まで冷却し、スターターを全量の3%になるよう添加し、容器に充填して40℃の恒温室でpHが4.5となるまで発酵させた。発酵後のヨーグルトに、予めデキストリンを溶解、冷却したものを混合、充填することによってヨーグルトを調製した。
調製されたヨーグルトについて、(1)濃厚感、脂肪感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味、及び(4)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表24に示す。
表24より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、風味は良好であるものの、水っぽく、濃厚感、脂肪感がほとんど感じられないボリュームのないヨーグルトとなった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭が強く食味に影響を与える、ざらつく、糊っぽく口溶けが悪くなる上に、十分な濃厚感を付与することすらできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、滑らかな食感及び良好な風味を有しつつも、十分な濃厚感や脂肪感を有する高級感あふれるヨーグルトが調製できた。更には、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用して調製されたヨーグルトは離水も顕著に防止され、非常に優れたヨーグルトであった。かかるように、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することによりヨーグルト自体の風味に影響を与えることなく、滑らかな食感や十分な濃厚感、脂肪感をヨーグルト付与することができるため、脂肪分を低減させた場合においても十分な濃厚感が付与された低脂肪ヨーグルトを調製することが可能となった。
実験例13 フラワーペーストの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例2、3及び市販品1〜5)を用いて、表25に示す処方に従ってフラワーペーストを調製した。詳細には、水、パーム油、加糖凍結卵黄の混合物を攪拌しながら、砂糖、熱変性乳清タンパク質、デキストリン、脱脂粉乳、加工澱粉、薄力粉、ゲル化剤、乳清タンパク質及びグリシンの混合物を加え、高速撹拌機にてホモジナイズ処理を行った(8000rpm、5分間)。次いで90℃10分間加熱攪拌溶解後、色素、香料を添加し、水で全量を100%に調整して容器に充填、冷却することによりフラワーペーストを調製した。一方、比較例としてデキストリンを併用せずに熱変性乳清タンパク質を単独使用したものに加え、熱変性乳清タンパク質を単独で用い、水に加糖凍結卵黄を添加する際にパーム油を3部添加した比較例を調製した。
注11)松谷化学株式会社製「ファリネックスVA−70C」使用
注12)ゲルアップ※PI*使用(ローカストビーンガム及びカラギナン含有製剤)
注13)ゲルアップ※K−S*使用(ジェランガム含有製剤)
注14)ミルプロ※L−1*使用
得られたフラワーペーストについて、(1)脂肪感・濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)外観、(4)風味及び(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表26に示す。
表26より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、離水がないフラワーペーストを調製できたものの、調製されたものはフラワーペースト特有の固形感が低く、またその食感もサクいものであった。かかる食感はパーム油を増量した場合であっても依然かわらず、むしろパーム油を増量することによってフラワーペーストの組織が荒くなり、離水も見られた。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、デキストリン特有の澱粉臭が強く食味に影響を与える、糊感を生じる、離水が見られる上に、十分な濃厚感、脂肪感を付与することもできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、滑らかな口溶け及び良好な風味を有しつつも、十分な濃厚感、脂肪感を有する高級感あふれるフラワーペーストを調製することができた。かかるフラワーペーストはパーム油を増量したフラワーペースト以上の濃厚感、脂肪感を有しつつも、その食感は滑らかであり、更に調製されたフラワーペーストは離水もなかった。特に、フラワーペーストはパンや菓子用フィリングとして利用され、パンや菓子等への水分移行は著しく商品価値を下げてしまうが、上述のとおり、濃厚感や脂肪感の付与を目的としてパーム油等の油脂を増量すると離水が発生しやすくなる。しかし、熱変性乳清タンパク質及び本発明のデキストリンを併用することにより離水なく高級感や濃厚感あふれるフラワーペーストを提供でき、パンや菓子用フィリングとしての有用性も極めて高い。
実験例14 マヨネーズ様調味料(ノンオイルマヨネーズ)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、市販品1〜5)を用いて、表27に示す処方に従ってノンオイルマヨネーズを調製した。詳細には、水を攪拌しながら、デキストリン、熱変性乳清タンパク質、砂糖、スクラロース、キサンタンガム及びガティガムの混合物を加え、80℃に加熱し、10分間攪拌溶解した。次いでリンゴ酢、醸造酒、レモン果汁、食塩、L−グルタミン酸ナトリウム、カロチン色素を添加した。水で全量を100%に調整し、容器に充填後、冷却してノンオイルマヨネーズを調製した。
得られたノンオイルマヨネーズについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)外観、(3)食感、(4)風味および(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表28に示す。
表28より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質単独を用いてノンオイルマヨネーズを調製した際は、粘度が付与されないため液体状であり、尚且つ外観は透明となり、マヨネーズ様の外観を再現することすらできなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は成分の凝集や分離が生じ、食感もざらつく、糊のような粘りを有し口溶けが悪いなど目的とする食感を付与することができなかった。更に、デキストリンを併用せず熱変性乳清タンパク質を単独使用した際と同様にして、マヨネーズ特有の粘度を付与することはできず、尚且つ外観は透明となりマヨネーズ様の外観を再現することができなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、成分が凝集、分離することなくマヨネーズ特有の白濁感を付与でき、更にデキストリン特有の澱粉臭が風味に影響を与えることもなく、滑らかな食感でマヨネーズ特有の濃厚感、脂肪感が十分に付与されたノンオイルマヨネーズとなった。かかるノンオイルマヨネーズは調味の対象となる食品に絞り出して塗布した際の塗布感や保形性も通常のマヨネーズと遜色なく、非常に優れたノンオイルマヨネーズであった。
実験例15 ノンオイルドレッシングの調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例2、市販品1〜5)を用いて、表29に示す処方に従ってノンオイルドレッシングを調製した。詳細には、水を攪拌しながら、デキストリン、熱変性乳清タンパク質、砂糖、スクラロース、発酵セルロース及びキサンタンガムの混合物を加え、10分間加熱攪拌溶解した。次いで醸造酢、食塩、L−グルタミン酸ナトリウム、香料を添加し、90℃まで加熱後、ホットパック充填し、冷却することによりノンオイルドレッシングを調製した。
注15)サンアーティスト※PX*使用
得られたノンオイルドレッシングについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)外観、(3)食感、(4)風味および(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表30に示す。
表30より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質単独を用いてノンオイルドレッシングを調製した際は、外観が半透明となり、乳化ドレッシング特有の白濁感を付与することができず、更に付着性も低く、ドレッシングとしての適性を備えることはできなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、外観が半透明である、もしくはやや褐色みを帯びた白濁となり、例えばフレンチドレッシングのような乳化ドレッシング特有の白濁感を有するノンオイルドレッシングを調製することはできず、また、その食感も糊のような粘りを有し口溶けが悪い、ゲル状となるなど目的とするノンオイルドレッシングを調製することはできなかった。更には、デキストリンを添加しない場合と同様に、粘度が付与されないため付着性が低くドレッシングには不向きであった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、乳化ドレッシング特有の白濁感及びつやを有したノンオイルドレッシングを調製でき、更にはその食感も滑らかで適度な付着性を有した食感であった。
実験例16 低脂肪マヨネーズ(ハーフマヨネーズ)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、市販品1〜5)を用いて、表31に示す処方に従って低脂肪マヨネーズ(マヨネーズ様調味料)を調製した。詳細には、水を攪拌しながらデキストリン、熱変性乳清タンパク質、砂糖及びキサンタンガムの混合物を加え、80℃で10分間加熱攪拌溶解した。次いで醸造酢、食塩、L−グルタミン酸ナトリウムを添加した。水で全量を100%に調整し、容器に充填後、冷却して低脂肪マヨネーズを調製した。
得られた低脂肪マヨネーズについて、(1)濃厚感(弱い1→10強い)、(2)食感、(3)風味および(4)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表32に示す。
表32より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質単独を用いて低脂肪マヨネーズを調製した際は、粘度が付与されないため液状となり、マヨネーズ状の食感や外観にならなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、濃厚感、脂肪感を十分に付与することができない上にざらつきが生じる、糊っぽく口溶けが悪い食感になる、粘度が低くマヨネーズ様にならないなど目的とするハーフマヨネーズを調製することはできなかった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、デキストリン特有の澱粉臭が風味に影響を与えることもなく、低脂肪マヨネーズと遜色ない濃厚感が十分に付与された低脂肪マヨネーズを調製することができた。また、調製された低脂肪マヨネーズはマヨネーズ特有の白濁感やつやを有しており、更にかかる低脂肪マヨネーズを調味対象の食品に絞り出した際は、マヨネーズ特有の適度な付着性も有しており非常に優れた低脂肪マヨネーズであった。
実験例17 乳成分含有飲料(ココア飲料)の調製
熱変性乳清タンパク質及び表2に示す各種デキストリン(調製例1、3及び市販品1〜5)を用いて、表33に示す処方に従ってココア飲料を調製した。詳細には、水に砂糖、デキストリン、乳化安定剤を添加、80℃で10分間加熱溶解後、牛乳と熱変性乳清タンパク質、ココア末を加えて70℃まで再加熱した。次いで香料を添加し、水で全量を100%に調整した後に均質機にてホモジナイズし(150kgf/cm2)、レトルト殺菌(125℃、30分)を行いココア飲料を調製した。
注15)ホモゲン※No.1158*使用(微結晶セルロース、ジェランガム、キサンタンガム、ショ糖脂肪酸エステル含有製剤)
得られた乳成分含有飲料(ココア飲料)について、(1)濃厚感、コク(弱い1→10強い)、(2)風味、及び(3)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表34に示す。
表34より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、風味は良好であるものの、ココア飲料にコクや濃厚感を付与することはできず、熱変性乳清タンパク質とデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、濃厚感やコクを十分に付与できないばかりか、デキストリン特有の澱粉臭が強く風味に影響を与えてしまっていた。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、飲料の風味に影響を与えることなく十分なコクや濃厚感が付与された高級感あふれるココア飲料を調製することができた。更に得られたココア飲料は飲み心地にも優れ、濃厚感を有しながらも滑らかな飲み心地を有するココア飲料であった。
実験例18 乳成分含有飲料(ミルクコーヒー)の調製
下記表35の処方に従ってミルクコーヒーを調製した。詳細には粗挽きしたL値23の豆に予めカルキを抜いた豆量の5倍量の沸騰水を加えて攪拌し40分間浸漬後、メッシュとろ紙にてろ過し、得られた抽出液を室温まで冷却した(コーヒー抽出液)。一方で、イオン交換水を攪拌しながら砂糖を添加し、70℃で10分間撹拌溶解して50%(w/w)砂糖水溶液を調製した。更に別途イオン交換水を75℃まで加熱し、該イオン交換水に攪拌しながら、乳化安定剤、微結晶セルロース、デキストリン及び熱変性乳清タンパク質を少量ずつ添加し、75℃10分間撹拌溶解した後、室温まで冷却した(デキストリン含有溶液)。予め調製した砂糖水溶液に前記デキストリン含有溶液、重曹溶液、牛乳、コーヒー抽出液の順で添加混合し、イオン交換水で全量を100%に調整した。該溶液を70℃まで加熱し、9.8×106Pa/4.9×106Pa(100/50kgf/cm2)の圧力でホモゲナイズした。次いで75℃にて容器に充填し、123℃20分レトルト殺菌を行いミルクコーヒーを調製した。
注16)ホモゲン※No.1379*(カゼインナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、カラギナン含有製剤)
得られた乳成分含有飲料(ココア飲料)について、(1)濃厚感、コク(弱い1→10強い)、(2)風味・飲み口、及び(3)総合評価(悪1→10良)について評価した。結果を表36に示す。
表36より、デキストリンと併用することなく、熱変性乳清タンパク質を単独で使用した場合は、風味は良好であるものの、ミルクコーヒーに濃厚感をほとんど付与することはできなかった。同様にして、熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用した場合においても、青価が0.4未満若しくは1.2より大きいデキストリンを用いた場合は、濃厚感やコクを十分に付与できないばかりか、デキストリン特有の澱粉臭が強く風味に影響を与える、ざらついた飲み口となるなど商品価値を著しく低下させるものであった。一方で、本発明の熱変性乳清タンパク質及びデキストリンを併用することにより、ミルクコーヒー自体に風味の影響を与えることなく十分な濃厚感がやコクが付与された高級感あふれるミルクコーヒーを調製することができた。