JP6892255B2 - 豆腐様流動性食品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
豆乳を原料とした加工品として最も親しまれているのは、日本の伝統食品でもある豆腐である。豆腐はそのまま喫食してもよいが、具材として茹で、炒め、焼き等の加熱工程等を経て様々な料理へと調理して喫食してもよい。
豆乳は、そのまま飲んでもよいが、調味料や各種食品添加物を配合された調整豆乳や豆乳飲料又は乳酸菌発酵されたヨーグルト様酸性豆乳食品等に加工して飲食されることが多い。
近年では、前記の様な飲食の形態だけではなく、牛乳及びその調製品、クリーム類、ムース類、スプレッド類、マヨネーズ類等の流動性食品又は半固形食品の代用として、豆乳や豆腐をその用途に応じて調味及び加工したペースト状食品が各種料理に使用されるようになり、そのレシピも多様になってきている。しかしながら、加工過程の加熱冷却により大豆特有の豆臭がしたり、タンパク質の変性に伴う凝固や離水によりザラつきやボソつきのある食感になったり、前記流動性食品又は半固形食品の代用品として満足される品質を有しているものではなかった。これらの課題にたいして解決方法が色々提案されているが、その解決には至っていない。
特許文献1には、豆乳に水溶性ヘミセルロース加えて撹拌溶解した後、70〜80℃に加熱し、にがりを加え、必要に応じて均質化を行うことを特徴とした、流動性のある豆腐様食品の製造方法が開示されている。この発明の目的は、豆乳ににがりを添加しても凝固することなく、豆腐に近い風味を有し口当たりが軽く、豆乳独特の青臭さが低減された、飲用にも供することができる流動性のある豆腐様食品を製造することである。水溶性ヘミセルロースは、その構成糖としてウロン酸を含有しており、そのウロン酸が多価の陰イオンとなって陽イオン交換能を持つようになり、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンを吸着することが知られている。この発明は、豆乳に添加されたにがりや塩化マグネシウムの一部ないし全部が水溶性ヘミセルロースに吸着(キレート)されることにより、豆乳中の大豆蛋白質の塩凝固が抑制されるために流動性のある豆腐様食品が得られるものである。しかしながら、この発明は、グルコノデルタラクトンや有機酸による豆乳の酸凝固を抑制して流動性のある豆腐様食品を製造できるものではない。また、豆乳に凝固剤を加えて豆腐を製造する際に重曹を添加することを示唆する記載はない。
特許文献2には濃縮豆乳に凝固剤を添加して豆腐を調製し、得られた豆腐に増粘ゲル化剤とオリゴ糖類とを混合し、高速カッター等で滑らかなムース状の水準になるまで擂潰した後冷却することを特徴とした、豆腐ペーストの製造方法が開示されている。豆腐の擂潰物は、そのままの状態では離水して品質が劣化し易く、擂潰物を含む食品にベタつきを生じさせる。この発明は、このような問題を解決することを目的として、擂潰(ペースト)組織をゲル化剤で固定して保水性を高め、製造時及び保存時の離水を防止して品質を維持しようとするものである。豆腐が離水した際のボソ付いた食感を抑制できるものの、ムース状になるまで擂潰するとはいえザラついた食感を抑制できるものではない。
特許文献3には定法により製造された豆腐をペースト化し、難消化性デキストリン及び増粘安定剤を添加して混合した後冷凍することを特徴とする冷凍豆腐ペーストの製造方法が開示されている。この発明は油脂やカロリーの高い糖を添加することなく、カロリーの少ない添加物を添加することで、健康食品としての機能を維持しつつ、冷凍解凍しても冷凍前の食感を維持した冷凍豆腐ペーストを製造することを目的とする。しかしながら、豆腐を製造する工程及びその豆腐をペースト化する工程が必須であり、手間と時間を要するばかりでなく、豆腐をペースト化した際のザラつきを十分に解消できるものではない。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01〜0.07質量部であり、酸凝固剤及び/又は塩凝固剤の量が0.08質量部以上である前記豆腐様流動性食品。
[2]前記前記塩基性物質を含む豆乳が塩化ナトリウムを含む、[2]に記載の豆腐様流動性食品。
[3]前記塩基性物質が、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムからなる群から選択される、[1]又は[2]に記載の豆腐様流動性食品。
[4]多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を調製する工程、前記塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させる工程、及び凝固物を流動化する工程を含む豆腐様流動性食品の製造方法であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01〜0.07質量部であり、酸凝固剤及び/又は塩凝固剤の量が0.08質量部以上である前記方法。
[5]前記塩基性物質を含む豆乳を調製する工程において、さらに塩化ナトリウムを添加する請求項4に記載の方法。
[6]前記塩基性物質が、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムからなる群から選択される、[4]又は[5]に記載の方法。
本発明において塩基性物質は、豆乳100質量部に対して0.01〜0.07質量部添加することができる。好ましくは0.03〜0.06質量部、さらに好ましくは0.03〜0.05質量部添加することができる。0.01質量部未満では、凝固剤による豆乳の大豆蛋白の凝固力が強く、ザラついた食感になる。0.07質量部を超えると、凝固剤による豆乳の大豆蛋白の凝固力が弱くなり、粘度が得られない。また、加熱中にガスが発生して豆乳に泡立ちが生じるため、作業性が悪くなる。
凝固剤の添加量は、使用する凝固剤の種別によって適宜変更することができるが、豆乳100質量部に対して0.08質量部以上添加することができる。好ましくは0.08〜0.5質量部である。凝固剤の添加量が0.08質量部未満では、大豆タンパク質の凝固が起こり難く、粘度不足となり不適である。凝固剤の添加量が0.5質量部を超えると、添加量に依存して凝固剤の異味(エグミ、苦味、酸味)が感じられる傾向にある。
(1)洗浄した100質量部の大豆を水に浸漬し、吸水して膨潤した浸漬大豆230質量部を得た。
(2)浸漬大豆100質量部に水200重量を加え、湿式粉砕、次いで均質化して生呉を得た。
(3)生呉を98℃で10分間加熱した後、圧搾ろ過によりオカラを除去して豆乳を得た。
なお得られた豆乳は、使用するまで冷蔵保管した。
表1の配合に従って、豆腐及びクリーム状豆腐を製造した。
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に重曹0.05質量部を混合し、分散機(スリーワンモータ TYPE HEIDOn 3000H)を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)塩凝固剤である塩化マグネシウム0.1質量部及び酸凝固剤である乳酸0.1質量部を重曹含有豆乳に添加し、更に20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に投入し、92℃で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒間攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
(5)評価例1及び2に従ってクリーム状豆腐を評価した。
豆腐様流動性食品の粘度は、品温を15℃に保ち、ローターNo.3を装着したC型粘度計(TOKI SANGYO社製のVISCOMETER、MODEL TVC−7)を用いて回転速度20rpmで測定した。
なお、製造例2で使用した豆乳の粘度は、ローターNo.2を装着したC型粘度計で同様に測定したところ、44cpであった。豆乳のBrixにもよるが、豆乳の粘度は概ね20〜50cp程度である。
豆腐の食感につき、官能評価を実施10名の熟練パネラーにより下記表2の評価基準に基づいて評価を行った。なお、市販の充填豆腐(ジョイアス・フーズ社製の「やわらかきぬ」)を製造例2の工程(4)に従ってペースト状にしたものを3点とした。
<評価基準>
豆乳に、塩基性物質として表3記載の重曹を混合して均質化した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を製造した。凝固剤としては、豆乳100質量部に対し塩凝固剤として塩化マグネシウム0.1質量部、酸凝固剤として乳酸0.1質量部を使用した。
実施例1〜5では、重曹含有豆乳に凝固剤を添加して加熱凝固させると、凝固が緩和された豆腐様食品が得られ、比較例2の豆腐よりも柔らかく滑らかなものであった。ミキサーで撹拌混合して得られた豆腐様流動性食品は、重曹の添加量の増加に依存して粘度が低下し、それらの食感はザラつきがなく滑らかな良好なものであった。重曹の添加量によって粘度を調節できる本発明の豆腐様流動性食品は、各種の料理に使用される牛乳等の流動性食品あるいはクリーム等の半固形食品の代用食品に利用することができる。
製造例2の工程(1)において、豆乳に重曹と共に表4記載の塩化ナトリウムを混合して均質化した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を製造した。凝固剤としては、豆乳100質量部に対し塩凝固剤として塩化マグネシウム0.1質量部、酸凝固剤として乳酸0.1質量部、塩基性物質としては重曹0.05質量部を使用した。
本発明では、塩化ナトリウムは食感をやや向上させるのみならず、実施例3の様に粘度がもともと低い場合には粘度を増加させる粘度調節機能を有していることがわかった。
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に、重曹0.01質量部及び食塩0.5質量部を混合し、分散機を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)表5記載の凝固剤を液中に分散し20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に流し込み、92℃の温度下で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
(5)評価例1及び2に従って豆腐様流動性食品を評価した。
凝固剤を表4記載の凝固剤を使用して製造例3に従って豆腐様流動性食品を製造した。本試験では、豆腐様流動性食品の粘度を高めるために重曹の添加量を0.01質量部、食塩の添加量を0.5質量部にした。
なお、実施例16は、実施例5に食塩を0.5質量添加したものである。実施例5の様に粘度が高い場合には、食塩はザラつきをなくしつつ、粘度を下げる方向への調節に使用できると考えられる。
各比較例では、凝固剤の添加量が低いために豆乳の凝固がほとんど起こらず、豆乳と大差ない状態であったので、官能評価を実施しなかった。
重曹(炭酸水素ナトリウム)に代えて、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムを0.05質量部添加した以外は製造例2に従って豆腐様流動性食品を得た。結果を表6に示す。
比較例1(120cp)、比較例2(豆腐)、実施例1(320cp)、実施例5(3000cp)、実施例8(2320cp)、実施例18(3360cp)、実施例28(300cp)について、離水試験を行った。
(1)静置保存試験
各100mlを100ml容メスシリンダーに充填し、冷蔵庫で5時間静置した。比較例1、3では、メスシリンダー上部に液体の層ができると共にガラス壁の各所で液体が浮き出ていた。それに対して実施例5、8、13、18、31では、水が浮き出すことはなく、均質な豆腐様流動性食品を維持していた。
小麦粉8質量部とバター8質量部とを加熱混合してルーを調製し、ルーを加熱しながら各豆腐様流動性食品100質量部を徐々に添加混合してベシャメル様ソースを製造した。
得られた各ベシャメル様ソース100gを樹脂製容器に充填して密封し、−50℃で急速冷凍した後、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室で2週間保存した。冷凍保存後、室温で解凍して冷凍解凍ベシャメル様ソースを得た。
豆腐様流動性食品の代わりに牛乳を添加混合した一般的なベシャメルソースの点数を5点として、ベシャメル様ソース(加熱加工)及び冷凍解凍ベシャメル様ソース(冷凍解凍)を下記表6の評価基準に基づいて熟練のパネラー10名により評価し、結果を表7に示した。
小麦粉8質量部、サラダ油8質量部、食塩0.5質量部を加熱混合してルーを調製し、ルーを加熱しながら各豆腐様流動性食品100質量部を徐々に添加混合し、更に1分30秒間加熱混合してベシャメル様ソースを得た。茹でマカロニ100gが入ったココット型にベシャメル様ソース50gを満遍なく広げ、その上に粉チーズ3gを均等に振りかけ、1000wのトースターで15分加熱しマカロニグラタン様食品を得た。−50℃で急速冷凍して家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室で2週間保存した。これを電子レンジ500w1分半の条件で再加熱した。
豆腐様流動性食品の代わりに牛乳を使用して得た一般的なマカロニグラタンの点数を5点として、マカロニグラタン様食品(加熱加工)及び冷凍解凍マカロニグラタン様食品(冷凍解凍)を上記評価基準に基づいて熟練のパネラー10名により評価し、結果を表5に示した。
なお、市販充填豆腐(ジョイアス・フーズ社製の「やわらかきぬ」)のペースト(官能評価基準の3点に設定した対象例)を使用して(1)〜(3)の試験を実施したところ、比較例2と同様の結果であった。
Claims (2)
- 原料豆乳に多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質と塩化ナトリウムとを添加し、前記塩基性物質と塩化ナトリウムとを含む豆乳を調製する工程、
前記塩基性物質と塩化ナトリウムとを含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させる工程、及び
凝固物を流動化する工程
を含む豆腐様流動性食品の製造方法であって、
原料豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01〜0.07質量部であり、塩化ナトリウムの量が0.05〜1.5質量部であり、酸凝固剤及び/又は塩凝固剤の量が0.08質量部以上である前記方法。 - 前記塩基性物質が、重曹、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
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