JP7027192B2 - クリームコロッケ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
各種コロッケ類、カツ類等のフライ食品では、中具を十分に加熱し且つ衣の程よい色付き(良好な狐色の揚げ色)を得るため、170℃~180℃で5~6分間フライする。これらのフライ食品は、油に入れた直後はフライ鍋などの底に沈むが、3~4分のフライ時間で浮上し、5~6分間のフライ時間で良好な狐色の揚げ色となる。この浮上は衣に含まれる水分と中具に含まれる水分とが気化して比重が軽くなることで起こり、中具が十分に加熱された目安となる。
しかしながら一般的なクリームコロッケでは、浮上するまでフライすると、同時にパンクの可能性も高まるため、パンクする前にフライを終了することが多く、例えば業務用クリームコロッケなどでは、170℃~180℃で2~3分間程度の比較的短いフライ時間を推奨しており、揚げ色も淡い狐色にとどまるものであった。
クリームコロッケのパンクを予防するために、具材の水分含量を下げる、衣を厚くする等の方法を取り得るが、いずれも食感が損なわれるという問題点があった。またフライ温度でゲル化するゲル化剤をソース具材に添加することによってパンクを防止する方法として、特許文献1には、ホワイトソース具材中に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを1.0~5.0質量%含有するクリームコロッケ、特許文献2には、アルギン酸ナトリウム、塩類及び増粘多糖類を含有する中種組成物等が開示されているが、ホワイトソースに粘性物質を添加するために食感が損なわれるという問題があった。
また一方で、近年、肥満や糖尿病などの生活習慣病の増加が大きな社会問題となっているが、その大きな原因の一つとして食習慣の変化に伴った脂質や糖質の過剰摂取が上げられる。この対策の一つとして、食品の低糖質化及び低脂質化が検討され、数多くのそのような食品が市場に流通するようになってきた。ホワイトソースには小麦粉や澱粉等の糖質源、乳やショートニング等の油脂類が含まれているため、クリームコロッケにおいても低糖質化及び低脂質化が要望されている。
このような近年のヘルシー嗜好から、大豆加工品を使用した揚物類が提供されている。例えば、特許文献3には豆腐成分を50~95重量%、澱粉質成分を1~5重量%を含有することを特徴とする豆腐コロッケ、特許文献4には豆腐製造工程で排出された生おからに対して、水を20~150重量%加えた状態で粉砕処理されたおからを使用したコロッケ等が開示されている。しかしながら、このような豆腐やおからを揚げ種の原料に使用すると、その食感のためにボソつきやザラつきがあり、クリームコロッケのように滑らかな食感とは大きく異なるものであった。
また特許文献5には所定量の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を所定量の酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させることでザラつきがなく滑らかな食感をしており、静置保存、ソース等への加熱加工処理及び加熱加工処理後の凍結解凍をしても離水しがたく食感が損なわれない豆腐様流動性食品が開示されているが、揚げ種の原料として使用した例は開示されていない。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上含むクリームコロッケ。
[2]豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程を含む、クリームコロッケの製造方法。
[3]豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する工程を含む、クリームコロッケのパンク防止方法。
本発明において、豆乳を含む溶液を凝固剤で凝固する工程は、例えば豆乳に、後述する塩基性物質を添加して分散機等を使用して撹拌均一化し、さらに後述する酸凝固剤及び/又は塩凝固剤を添加して分散機等を使用して撹拌均一化した後、混合物を容器等に流しいれ、90~95℃で10~20分静置することにより行うことができる。塩基性物質及び凝固剤の添加中に豆乳の凝固反応が進行しないように、塩基性物質及び凝固剤の添加工程は、豆乳の温度を室温近く(10~25℃)に保ちながら行うことが好ましい。
本発明において、豆腐様食品を流動化する工程は、流動状にできればどのような手段で行っても構わないが、例えば豆腐様食品をミキサーなどで物理的に撹拌することにより行うことができる。具体的には、市販のジュースミキサーで5~20秒攪拌することにより行うことができる。
本発明において塩基性物質は、豆乳100質量部に対して0.01~0.07質量部添加することができる。好ましくは0.03~0.06質量部、さらに好ましくは0.03~0.05質量部添加することができる。0.01~0.07質量部では、凝固剤による豆乳の大豆蛋白の凝固力の緩和の程度が適度であって、適度な粘度となり、なめらかな食感となる。また、加熱中にガスが発生して豆乳に泡立ちが生じるといったことがなく、豆腐様食品を製造する上で好ましい作業性を有する。
凝固剤の添加量は、使用する凝固剤の種別によって適宜変更することができるが、豆乳100質量部に対して好ましくは0.08質量部以上添加することができる。より好ましくは0.08~0.5質量部である。凝固剤の添加量が0.08質量部未満では、大豆タンパク質の凝固が起こりにくくなり、粘度が低くなる傾向にある。凝固剤の添加量が0.5質量部を超えると、添加量に依存して凝固剤の異味(エグミ、苦味、酸味)が感じられる傾向にある。
本発明のクリームコロッケの製造方法は、上記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する以外は標準的なクリームコロッケと同様の方法に従って製造することが出来る。
例えばソース具材を含む揚げ種を冷蔵庫又は冷凍庫で冷却又は凍結して固体化し、定法のフライ食品の製造と同様に揚げ種に打ち粉、バッター、パン粉等を付着させた後、170~185℃程度で数分間フライすることによりクリームコロッケを製造することができる。
なお本発明において「クリームコロッケのパンク防止」とは、一般的なクリームコロッケの製造において、衣の程よい色付きが得られるフライ時間(目安として170℃~180℃で5~6分間)以上フライしてもパンクしないようにすることを言う。
本発明のクリームコロッケのパンク防止方法は、上記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する以外は標準的なクリームコロッケの製造方法に従ってクリームコロッケを製造することによりクリームコロッケのパンクを防止することが出来る。
(1)洗浄した100質量部の大豆を水に浸漬し、吸水して膨潤した浸漬大豆230質量部を得た。
(2)浸漬大豆100質量部に水200質量部を加え、湿式粉砕、次いで均質化して生呉を得た。
(3)生呉を98℃で10分間加熱した後、圧搾ろ過によりオカラを除去して豆乳を得た。
なお得られた豆乳は、使用するまで冷蔵保管した。
(1)Brix11に調製した豆乳100質量部に重曹0.01質量部を混合し、分散機(スリーワンモータ TYPE HEIDOn 3000H)を用いて回転速度300rpmで攪拌均質化した。
(2)凝固剤である塩化マグネシウム0.15質量部を重曹含有豆乳に添加し、更に20秒攪拌均質化した。なお、工程(1)と(2)は、豆乳の凝固が進行しないように品温(中心温度)15℃で行った。
(3)200ml容量の充填容器に投入し、92℃で15分間静置して凝固させた。
(4)得られた豆乳凝固物を家庭用ジューサーミキサーに投入し、15秒間攪拌混合して豆腐様流動性食品を得た。
下記表1の配合に従い、以下手順でクリームコロッケの具材を製造した。
(1)油1.5質量部をひいて熱したフライパンにみじん切りにした玉ねぎ15質量部を投入し、玉ねぎが半透明になるまでいためた。
(2)豆腐様流動性食品と粉末原料をミキサー(Stephan社製UMC5)に投入し、均一になるまで撹拌混合した。
(3)工程(2)で得られた撹拌混合物をホールコーンと共にフライパンに投入し、ひと煮立ちするまで加熱混合した。
(4)粗熱を取った後、縦6cm横4cmの樹脂製容器に40gずつ充填し、急速冷凍してクリームコロッケ様食品の揚げ種とした。
(5)工程(4)で得られた冷凍揚げ種に打ち粉(日本製粉社製F910)をまぶし、バッターミックス(日本製粉社製B2467)を水溶きしたバッター液にくぐらせ、パン粉(日本製粉社製NF白生パン粉・中目)を付着させてクリームコロッケ様食品を得た。
(6)得られたクリームコロッケ様食品5個を175℃に加温したサラダ油に投入し、6分間フライしてフライ済みクリームコロッケ様食品を得た。
豆腐様流動性食品の粘度は、品温を15℃に保ち、ローターNo.3を装着したC型粘度計(TOKI SANGYO社製のVISCOMETER、MODEL TVC-7)を用いて回転速度20rpmで測定した。なお、製造例2で使用した豆乳の粘度は、ローターNo.2を装着したC型粘度計で同様に測定したところ、44cpであった。豆乳のBrixにもよるが、豆乳の粘度は概ね20~50cp程度である。
製造例3で得られたクリームコロッケ様食品5個を175℃に加温したサラダ油に投入し、衣の一部が破裂して具材が噴出するまでの平均時間を測定した。なお、標準的なクリームコロッケをパンクさせることなくフライしようとする場合、フライ時間は2~3分間(120~180秒間)程度であり、この場合浮上せず、揚げ色は淡い狐色に仕上がる。
製造例3で得られたフライ済みクリームコロッケ様食品のフライ直後(6分間フライした後あら熱を取ったもの)及び3時間後(6分間フライした後3時間室温で放置したもの)の食感を、10名の熟練パネラーにより、下記表2に示す評価表に従って評価した。なお、市販のクリームコロッケ(万星食品社製)を指定のフライ目安時間である2分30秒間フライしたフライ済みクリームコロッケを評点3点とした。なお、2分30秒間フライした市販のクリームコロッケは、淡い狐色であり、浮上することはなかった。
豆乳100質量部に対する重曹の添加量、凝固剤の種別、凝固剤の添加量を表3に記載の通りにした以外は製造例2及び3に従ってフライ済みクリームコロッケ様食品を得た。 対照例1では豆腐様流動性食品に代えて市販のホワイトソース(ハインツ日本社製ホワイトソース)を使用した以外は製造例3に従ってフライ済み食品を得た(対照例は標準的なクリームコロッケである)。評価例1及び2に従って評価し、結果を表3に記載した。
本願所定の量の重曹と凝固剤を含む実施例1~5では、3~4分程度で浮上し、パンクするまでのフライ時間が360秒以上であり、揚げ色は良好な狐色をしており、フライ直後(6分間フライした後あら熱を取ったもの)の食感は滑らかでとろみのある良好な食感であった。またこの結果は凝固剤の種別によって変化しなかった。比較例1及び2、対照例1及び2では、360秒以内且つ浮上前にパンクしたため、食感評価を行わなかった(対照例2の括弧書き食感評価点は、2分30秒間フライした際の基準例である)。比較例3では、豆腐感が強く、ザラつきがあり不適であった。また、フライ後、3時間経過した実施例1~5のクリームコロッケ様食品の食感評価を行ったところ、滑らかさととろみは維持されていた。フライ後、3時間経過した対照例2の基準例では、中具のとろみがあまり感じられなくなり、ザラつきが生じた。
Claims (3)
- 多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を含む豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させ、凝固物を流動化してなる豆腐様流動性食品であって、豆乳100質量部に対し前記塩基性物質の量が0.01~0.07質量部である前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上含むクリームコロッケであって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケ。
- 豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、
豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、
前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び
前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上使用する工程
を含む、クリームコロッケの製造方法であって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケの製造方法。 - 豆乳100質量部に対し0.01~0.07質量部の多価酸のアルカリ金属塩および多価酸のアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種類の塩基性物質を添加する工程、
豆乳を酸凝固剤及び/又は塩凝固剤で凝固させて豆腐様食品を得る工程、
前記豆腐様食品を流動化して豆腐様流動性食品を得る工程、及び前記豆腐様流動性食品を、ソース具材中に25質量%以上添加する工程
を含む、クリームコロッケのパンク防止方法であって、前記豆腐様流動性食品の粘度が、300cp以上4000cp以下(品温15℃、C型粘度計、ローターNo.3、回転速度20rpm)である、前記クリームコロッケのパンク防止方法。
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