以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1の半導体装置としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;酸化膜電界効果トランジスタ)の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1における半導体装置であるMOSFETの構成を説明する。
図1を参照して、本実施の形態におけるMOSFET1は、SiC基板11と、n型SiC層12と、一対のpボディ13と、nソース領域14と、nドレイン領域15とを備えている。SiC基板11は、導電型がn型(第1導電型)の4H−SiCからなっている。n型SiC層12は、SiC基板11上に形成されており、導電型がn型のSiCからなるエピタキシャル層である。一対のpボディ13は、導電型がp型(第2導電型)のSiCからなるエピタキシャル層であり、n型SiC層12においてSiC基板11側の主面である第1の主面12Aとは反対側の主面である第2の主面12Bを含む領域を挟んで互いに対向するように形成されている。nソース領域14およびnドレイン領域15は、一対のpボディ13においてSiC基板11側の面である第1面13Aとは反対側の面である第2面13Bを含む領域に形成され、導電型がn型のSiCからなっている。
さらに、図1を参照して、MOSFET1は、ゲート酸化膜16と、ソース電極17Aと、ゲート電極17Bと、ドレイン電極17Cと、ソース配線18Aと、ゲート配線18Bと、ドレイン配線18Cと、パシベーション膜19とを備えている。ゲート酸化膜16は、n型SiC層12の第2の主面12Bおよび一対のpボディ13の第2面13Bに接触し、かつnソース領域14の上部表面からnドレイン領域15の上部表面にまで延在するように形成されている。導電体からなるソース電極17Aは、一対のpボディ13のうち一方のpボディ131においてSiC基板11側の面である第1面131Aとは反対側の面である第2面131Bのうちnソース領域14が形成された領域に接触するように配置されている。
導電体からなるゲート電極17Bは、n型SiC層12の第2の主面12B上にゲート酸化膜16を挟んで配置され、一方のpボディ131の第2面131Bにおいてnソース領域14が形成された領域から他方のpボディ132の第2面132Bにおいてnドレイン領域15が形成された領域にまで延在している。導電体からなるドレイン電極17Cは、一対のpボディ13のうち他方のpボディ132においてSiC基板11側の面である第1面132Aとは反対側の面である第2面132Bのうちnドレイン領域15が形成された領域に接触するように配置されている。
さらに、導電体からなるソース配線18A、ゲート配線18Bおよびドレイン配線18Cは、それぞれソース電極17A、ゲート電極17Bおよびドレイン電極17Cに接触するようにソース電極17A、ゲート電極17Bおよびドレイン電極17C上に配置されている。また、絶縁体からなるパシベーション膜19は、ソース配線18A、ゲート配線18B、ドレイン配線18Cおよびゲート電極17Bを取り囲むように形成されている。
次に、MOSFET1の動作について説明する。図1を参照して、ゲート電極17Bの電圧が0Vの状態すなわちオフ状態では、ゲート酸化膜16の直下に位置するnソース領域14とnドレイン領域15との間に逆バイアスとなるpn接合が形成され、非導通状態となる。一方、ゲート電極17Bに正の電圧を印加していくと、pボディ13のゲート酸化膜16と接触する付近の領域であるチャネル領域13Cにおいて、反転層が形成される。その結果、nソース領域14とnドレイン領域15とが電気的に接続され、nソース領域14とnドレイン領域15との間に電流が流れる。
次に、本発明に従った半導体装置の製造方法の一実施の形態である実施の形態1におけるMOSFETの製造方法について説明する。図2は、実施の形態1におけるMOSFETの製造方法の概略を示す流れ図である。また、図3〜図8は、実施の形態1におけるMOSFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
図2を参照して、実施の形態1におけるMOSFETの製造方法においては、まず、工程(S10)において、基板準備工程が実施される。具体的には、図3を参照して、4H−SiCからなり、n型不純物(導電型がn型である不純物)を含むことにより導電型がn型(第1導電型)となっているSiC基板11が準備される。このSiC基板11は、たとえばn型不純物であるNなどを1×1018/cm3〜1×1020/cm3程度の濃度で含み、300〜500μm程度の厚みを有している。
次に、図2を参照して、工程(S20)として、n型SiC層形成工程が実施される。具体的には、図3を参照して、工程(S10)において準備されたSiC基板11の一方の主面上に、SiCからなり、n型不純物を含むことにより導電型がn型となっているn型SiC層12がエピタキシャル成長により形成される。このn型SiC層12は、n型不純物であるNなどを1×1014〜1×1018/cm3程度の濃度、たとえば1×1016/cm3含み、1〜200μm程度の厚み、たとえば10μmの厚みを有している。上記SiC基板11上に形成されたn型SiC層12はSiC部材を構成し、上記工程(S10)および(S20)はSiC部材を準備するSiC部材準備工程を構成する。
次に、図2を参照して、工程(S30)として、n型SiC層12上にTaC膜を形成するTaC膜形成工程が実施される。具体的には、図4を参照して、n型SiC層12上に、TaCからなるTaC膜81がPVD(Physical Vapor Deposition;物理蒸着法)、たとえばスパッタリングにより形成される。TaC膜81の厚みは、30nm以上1000nm以下、たとえば250nm程度である。
次に、図2を参照して、工程(S40)として、TaC膜81をマスク形状に成形するTaCマスク形成工程が実施される。具体的には、図4および図5を参照して、まず、工程(S30)において形成されたTaC膜81上にレジスト91が塗布される。その後、露光および現像が行なわれることにより、所望のpボディ13の形状に応じた開口を有するマスクパターンが形成される。そして、マスクパターンが形成されたレジスト91がマスクとして用いられて、TaC膜81がエッチングされる。TaC膜81のエッチングは、たとえばICP−RIE(Inductive Coupled Plasma−Reactive Ion Etching;誘導結合プラズマ−反応性イオンエッチング)により実施することができる。ICP−RIEは、たとえばアンテナパワー:400W、バイアス:20W、圧力:0.6Paで、エッチングガスであるSF6ガスを50sccmの流量でエッチング装置内に流入させる条件下にて実施することができる。これにより、TaC膜81が所望のpボディ13の形状に応じた開口を有するマスクパターンに成形される。
この工程(S40)においては、エッチング装置内には、不純物を除いて酸素(O2)を含まないSF6が供給されていてもよいし、体積分率で90%以下のO2を含むSF6とO2との混合ガスが供給されてもよい。また、工程(S40)は、レジスト91にマスクパターンを形成する工程が実施された後、図2に示すように、不純物を除いてO2を含まないSF6がエッチング装置内に供給されて高いエッチングレートでTaC膜81がエッチングされる高レートエッチング工程と、高レートエッチング工程の後に、SF6とO2との混合ガスがエッチング装置内に供給されて高レートエッチング工程よりも低いエッチングレートでTaC膜81がエッチングされる低レートエッチング工程とを含んでいてもよい。
SF6、CF4、CHF3などのガスを用いてTaCのエッチングを行なう場合、O2ガスを添加することによりTaCのエッチングレートを抑制することができる。上述のように、まず、O2ガスが不純物を除いて含まれないSF6を用いることにより高いエッチングレートで効率的にTaC膜のエッチングを行ない、その後、SF6とO2との混合ガスを用いることにより低いエッチングレートで高い形状精度を確保するようにTaC膜のエッチングを行なうことにより、TaC膜81を高い形状精度で、かつ効率的に、マスク形状に成形することができる。
次に、図2を参照して、工程(S50)として、マスク形状に成形されたTaC膜81をマスクとして用いて、SiC基板11上に形成されたn型SiC層(SiC部材)12をエッチングするn型SiC層エッチング工程が実施される。具体的には、図5および図6を参照して、レジスト91が除去された後、工程(S40)においてマスク形状に成形されたTaC膜81がマスクとして用いられて、所望のpボディ13を形成すべきn型SiC層12の領域がエッチングにより除去される。工程(S50)において除去されるn型SiC層12の厚みは、たとえば0.3μm以上2μm以下、より具体的には0.8μm程度である。
n型SiC層12のエッチングは、たとえばICP−RIEにより実施することができる。ICP−RIEは、たとえばアンテナパワー:400W、バイアス:20W、圧力:0.6Paで、エッチングガスであるSF6ガスおよびO2ガスをそれぞれ50sccmの流量でエッチング装置内に流入させる条件下にて実施することができる。すなわち、工程(S50)では、SF6ガスとO2ガスとを含む混合ガスを用いたドライエッチングによりn型SiC層12がエッチングされる。
ここで、エッチング装置内におけるSF6ガスとO2ガスとを含む混合ガスは、O2ガスを体積割合で30%以上80%以下、具体的には50%程度含んでいる。その結果、工程(S50)のエッチングにおけるTaCに対するSiCの選択比は約5となっている。そのため、上述のように、TaC膜81の厚みが0.25μmであり、工程(S50)においてn型SiC層12が0.8μmエッチングされた場合、マスクとして使用されたTaC膜81は、工程(S50)完了後も約0.1μmの厚みで残存している。
次に、図2を参照して、工程(S60)として、工程(S50)においてn型SiC層12をエッチングするためのマスクとして用いられたTaC膜81をマスクとして用いて、TaC膜81から露出するn型SiC層12上にSiCをエピタキシャル成長させる選択成長工程が実施される。具体的には、図6および図7を参照して、TaC膜81から露出するn型SiC層12上に、p型不純物を含有することにより導電型がp型(第2導電型)となっているSiCからなる一対のpボディ13(一方のpボディ131および他方のpボディ132)が、エピタキシャル成長により形成される。その結果、工程(S50)において除去されたn型SiC層12の領域が、一対のpボディ13により充填される。一対のpボディ13は、p型不純物として、Al,Bなどを1×1015/cm3以上1×1019/cm3以下の濃度、たとえば1×1018/cm3含んでいる。
次に、図2を参照して、工程(S70)として、工程(S60)において形成された一対のpボディ13のそれぞれにn型不純物が導入されることにより、nソース領域14およびnドレイン領域15が形成されるn型不純物導入工程が実施される。具体的には、図7、図8および図1を参照して、まず図7のTaC膜81が、たとえばフッ硝酸を用いて図8のように除去された上で、図1に示すnソース領域14およびnドレイン領域15が、一方のpボディ131の第2面131Bおよび他方のpボディ132の第2面132Bを含む領域に、たとえばイオン注入により形成される。
次に、図2を参照して、工程(S80)として、工程(S70)までの工程が完了して形成されたSiCからなる部材が、1400℃以上1900℃以下の温度に加熱される活性化アニール工程が実施される。これにより、当該部材に含まれるn型不純物およびp型不純物が活性化する。さらに、工程(S90)として、ゲート酸化膜が形成されるゲート酸化膜形成工程が実施される。具体的には、図1を参照して、まず、pボディ13、nソース領域14およびnドレイン領域15の上部表面が露出するn型SiC層12の第2の主面12Bが熱酸化されることにより、第2の主面12Bを含む領域に熱酸化膜が形成される。その後、形成された熱酸化膜のうちnソース領域14の上部表面からnドレイン領域15の上部表面にまで延在する領域が残存するように、たとえばフォトリソグラフィーおよびエッチングにより熱酸化膜の一部が除去される。これにより、ゲート酸化膜16が形成される。
次に、図2を参照して、工程(S100)として、nソース領域14およびnドレイン領域15上にnソース領域14およびnドレイン領域15に接触し、nソース領域14およびnドレイン領域15にオーミック接触可能な導電体からなるオーミック電極としてのソース電極17Aおよびドレイン電極17Cが形成されるオーミック電極形成工程が実施される。具体的には、図1を参照して、nソース領域14上に、nソース領域14とオーミック接触可能な導電体、たとえばNi(ニッケル)などからなるソース電極17Aが蒸着等により形成されるとともに、nドレイン領域15上に、nドレイン領域15とオーミック接触可能な導電体、たとえばNiなどからなるドレイン電極17Cが蒸着等により形成される。
次に、図2を参照して、工程(S110)において、ゲート酸化膜16上に、ゲート酸化膜16に接触するようにゲート電極が形成されるゲート電極形成工程が実施される。具体的には、図1を参照して、導電体からなり、ゲート酸化膜16を挟んでnソース領域14の上部表面上からnドレイン領域15の上部表面上にまで延在するゲート電極17Bが蒸着等により形成される。
次に、図2および図1を参照して、工程(S120)において、ソース電極17A、ゲート電極17Bおよびドレイン電極17C上にAl(アルミニウム)などの金属からなるボンディングの容易な配線としてのソース配線18A、ゲート配線18Bおよびドレイン配線18Cが形成される配線形成工程が実施される。そして、図2および図1を参照して、工程(S130)において、ソース配線18A、ゲート配線18B、ドレイン配線18Cおよびゲート電極17Bを取り囲むように、絶縁体からなるパシベーション膜19が形成されるパシベーション工程が実施される。以上の工程により、本実施の形態におけるMOSFET1が完成する。
本実施の形態におけるMOSFET1の製造方法においては、工程(S50)において、SF6ガスとO2ガスとを含む混合ガスを用いたドライエッチングによりn型SiC層がエッチングされる。そのため、MOSFET1の製造工程において作製されるn型SiC層12のエッチングを、TaC膜81からなるマスクを用いて実施することができる。その結果、本実施の形態におけるMOSFET1の製造方法によれば、TaCをSiCのエッチングを行なうためのマスクの素材として採用することにより、MOSFET1の製造工程を簡略化することが可能となっている。
(実施の形態2)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態2における半導体装置について説明する。図9は、実施の形態2におけるJFET(Junction Field Effect Transistor;接合型電界効果トランジスタ)の構成を示す概略断面図である。
図9を参照して、実施の形態2における半導体装置としてのJFET3は、SiC基板31と、SiC基板31上に形成された第1p型SiC層32と、第1p型SiC層32上に形成されたn型SiC層33と、n型SiC層33上に形成された第2p型SiC層34とを備えている。SiC基板31は、導電型がn型(第1導電型)の4H−SiCからなっている。第1p型SiC層32および第2p型SiC層34は、導電型がp型(第2導電型)のSiCからなるエピタキシャル層である。n型SiC層33は、導電型がn型のSiCからなるエピタキシャル層である。
さらにJFET3は、第2p型SiC層34を厚み方向に貫通し、n型SiC層33の内部にまで延在するように形成されたnソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37を備えている。すなわち、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37の底部は、第1p型SiC層32の上部表面(第1p型SiC層32とn型SiC層33との境界部)から間隔を隔てて配置されている。nソース領域35およびnドレイン領域37は、n型SiC層33よりも高濃度のn型不純物を含み、導電型がn型のSiCからなるエピタキシャル層である。pゲート領域36は、第2p型SiC層34よりも高濃度のp型不純物を含み、導電型がp型のSiCからなるエピタキシャル層である。
さらに、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37上には、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37の上部表面に接触するように、ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cが形成されている。ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cは、金属などの導電体からなっている。そして、各電極41A、41B、41Cの間には酸化膜38が形成されている。これにより、隣り合う各電極41A、41B、41Cの間が絶縁されている。
ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41C上には、ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cの上部表面に接触するように、ソース配線42A、ゲート配線42Bおよびドレイン配線42Cが形成されている。ソース配線42A、ゲート配線42Bおよびドレイン配線42Cは、金属などの導電体からなっている。そして、ソース配線42A、ゲート配線42Bおよびドレイン配線42Cを取り囲むように、絶縁体からなるパシベーション膜43が形成されている。
次に、JFET3の動作について説明する。図9を参照して、ゲート電極41Bの電圧が0Vの状態では、n型SiC層33において、pゲート領域36と第1p型SiC層32とで挟まれた領域(チャネル領域)は完全には空乏化されておらず、nソース領域35とnドレイン領域37とはチャネル領域を介して電気的に接続された状態となっている。そのため、nソース領域35からnドレイン領域37に向かって電子が移動することにより電流が流れる。
一方、ゲート電極41Bに負の電圧を印加していくと、上述のチャネル領域の空乏化が進行し、nソース領域35とnドレイン領域37とは電気的に遮断された状態となる。そのため、nソース領域35からnドレイン領域37に向かって電子が移動することができず、電流は流れない。
次に、本発明に従った半導体装置の製造方法の一実施の形態である実施の形態2におけるJFETの製造方法について説明する。図10は、実施の形態2におけるJFETの製造方法の概略を示す流れ図である。また、図11〜図21は、実施の形態2におけるJFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
図10を参照して、実施の形態2におけるJFETの製造方法においては、まず、工程(S210)において、基板準備工程が実施される。具体的には、図11を参照して、実施の形態1の工程(S10)と同様に、4H−SiCからなり、n型不純物を含むことにより導電型がn型となっているSiC基板31が準備される。
次に、図10を参照して、工程(S220)として、第1p型SiC層形成工程が実施される。具体的には、図11を参照して、工程(S210)において準備されたSiC基板31の一方の主面上に、SiCからなり、p型不純物を含むことにより導電型がp型となっている第1p型SiC層32がエピタキシャル成長により形成される。この第1p型SiC層32は、p型不純物であるAl,Bなどを1×1015〜1×1018/cm3程度の濃度、たとえば1×1016/cm3含み、2〜50μm程度の厚み、たとえば10μmの厚みを有している。
次に、図10を参照して、工程(S230)として、n型SiC層形成工程が実施される。具体的には、図11を参照して、工程(S220)において形成された第1p型SiC層32上に、SiCからなり、n型不純物を含むことにより導電型がn型となっているn型SiC層33がエピタキシャル成長により形成される。このn型SiC層33は、n型不純物であるNなどを1×1016〜2×1018/cm3程度の濃度、たとえば2×1017/cm3含み、0.1〜1.5μm程度の厚み、たとえば0.4μmの厚みを有している。
次に、図10を参照して、工程(S240)として、第2p型SiC層形成工程が実施される。具体的には、図11を参照して、工程(S230)において形成されたn型SiC層33上に、SiCからなり、p型不純物を含むことにより導電型がp型となっている第2p型SiC層34がエピタキシャル成長により形成される。この第2p型SiC層34は、p型不純物であるAl,Bなどを1×1016〜2×1018/cm3程度の濃度、たとえば2×1017/cm3含み、0.1〜1μm程度の厚み、たとえば0.2μmの厚みを有している。上記SiC基板31上に形成されたn型SiC層33および第2p型SiC層34はSiC部材を構成し、上記工程(S210)〜(S240)はSiC部材を準備するSiC部材準備工程を構成する。
次に、図10を参照して、工程(S250)として、第2p型SiC層34上にTaC膜を形成するTaC膜形成工程が実施される。具体的には、図12を参照して、第2p型SiC層34上に、TaCからなるTaC膜81がPVD、たとえばスパッタリングにより形成される。TaC膜81の厚みは、30nm以上1000nm以下、たとえば200nm程度である。
次に、図2を参照して、工程(S260)として、TaC膜81をマスク形状に成形するTaCマスク形成工程が実施される。具体的には、図12および図13を参照して、まず、工程(S250)において形成されたTaC膜81上にレジスト91が塗布される。その後、露光および現像が行なわれることにより、所望のnソース領域35およびnドレイン領域37の形状に応じた開口を有するマスクパターンが形成される。そして、マスクパターンが形成されたレジスト91がマスクとして用いられて、TaC膜81がエッチングされる。TaC膜81のエッチングは、実施の形態1の工程(S40)と同様に実施することができる。これにより、TaC膜81が所望のnソース領域35およびnドレイン領域37の形状に応じた開口を有するマスクパターンに成形される。
次に、図10を参照して、工程(S270)として、マスク形状に成形されたTaC膜81をマスクとして用いて、SiC基板31上に形成されたn型SiC層33および第2p型SiC層34(SiC部材)をエッチングするSiC層エッチング工程が実施される。具体的には、図13および図14を参照して、工程(S270)においては、レジスト91が除去された後、工程(S260)においてマスク形状に成形されたTaC膜81がマスクとして用いられて、所望のnソース領域35およびnドレイン領域37を形成すべきn型SiC層33および第2p型SiC層34の領域がエッチングにより除去される。工程(S270)において除去されるn型SiC層33および第2p型SiC層34の厚みは、p型SiC層34の厚み+0.05μm以上、p型SiC層34の厚み+n型SiC層33の厚み−0.05μm程度である。その結果、当該除去される領域は第2p型SiC層34を厚み方向に貫通し、n型SiC層33の内部にまで延在する。n型SiC層33および第2p型SiC層34のエッチングは、実施の形態1の工程(S50)と同様の条件下で実施することができる。
次に、図10を参照して、工程(S280)として、工程(S270)においてn型SiC層33および第2p型SiC層34をエッチングするためのマスクとして用いられたTaC膜81をマスクとして用いて、TaC膜81から露出するn型SiC層33上に高濃度のn型不純物を含むSiCをエピタキシャル成長させるn+領域選択成長工程が実施される。具体的には、図14および図15を参照して、TaC膜81から露出するn型SiC層33上に、高濃度のn型不純物を含有することにより導電型がn型となっているSiCからなるnソース領域35およびnドレイン領域37が、エピタキシャル成長により形成される。その結果、工程(S270)において除去された一対のn型SiC層33および第2p型SiC層34の領域のうち一方の領域がnソース領域35により、他方の領域がnドレイン領域37により充填される。nソース領域35およびnドレイン領域37は、n型不純物として、N,P,Asなどを1×1018/cm3以上1×1021/cm3以下の濃度、たとえば1×1019/cm3含んでいる。
次に、図10を参照して、工程(S290)として、第2p型SiC層34上にTaC膜を再度形成するTaC膜再形成工程が実施される。具体的には、図115〜図17を参照して、工程(S280)においてマスクとして用いられた図15に示すTaC膜81が、たとえばフッ硝酸を用いて図16のように除去された後、図17のように、TaC膜81が、工程(S250)の場合と同様の手順で再度形成される。
次に、図10を参照して、工程(S300)として、再形成されたTaC膜81をマスク形状に成形するTaCマスク再形成工程が実施される。具体的には、図17および図18を参照して、まず、工程(S290)において形成されたTaC膜81上にレジストが塗布される。その後、露光および現像が行なわれることにより、所望のpゲート領域36の形状に応じた開口を有するマスクパターンが形成される。そして、マスクパターンが形成されたレジストがマスクとして用いられて、TaC膜81がエッチングされる。TaC膜81のエッチングは、実施の形態1の工程(S40)と同様に実施することができる。これにより、TaC膜81が所望のpゲート領域36の形状に応じた開口を有するマスクパターンに成形される。
次に、図10を参照して、工程(S310)として、マスク形状に成形されたTaC膜81をマスクとして用いて、nソース領域35およびnドレイン領域37が形成されたn型SiC層33および第2p型SiC層34(SiC部材)をエッチングする第2のSiC層エッチング工程が実施される。具体的には、図18および図19を参照して、工程(S300)においてマスク形状に成形されたTaC膜81がマスクとして用いられて、所望のpゲート領域36を形成すべきn型SiC層33および第2p型SiC層34の領域がエッチングにより除去される。工程(S310)において除去されるn型SiC層33および第2p型SiC層34の厚みは、p型SiC層34の厚み+0.05μm以上、p型SiC層34の厚み+n型SiC層33の厚み−0.05μm程度である。その結果、当該除去される領域は第2p型SiC層34を厚み方向に貫通し、n型SiC層33の内部にまで延在する。n型SiC層33および第2p型SiC層34のエッチングは、実施の形態1の工程(S50)と同様の条件下で実施することができる。
次に、図10を参照して、工程(S320)として、工程(S310)においてn型SiC層33および第2p型SiC層34をエッチングするためのマスクとして用いられたTaC膜81をマスクとして用いて、TaC膜81から露出するn型SiC層33上に高濃度のp型不純物を含むSiCをエピタキシャル成長させるp+領域選択成長工程が実施される。具体的には、図19および図20を参照して、TaC膜81から露出するn型SiC層33上に、高濃度のp型不純物を含有することにより導電型がp型となっているSiCからなるpゲート領域36が、エピタキシャル成長により形成される。その結果、工程(S310)において除去されたn型SiC層33および第2p型SiC層34の領域が、pゲート領域36により充填される。pゲート領域36は、p型不純物として、Al、Bなどを1×1017/cm3以上2×1020/cm3以下の濃度、たとえば1×1018/cm3含んでいる。
次に、図10、図20および図21を参照して、工程(S330)として、工程(S320)までの工程が完了して形成された図20に示すSiCからなる部材から、図21に示すようにTaC膜81が除去された上で、当該部材が1400℃以上1900℃以下の温度に加熱される活性化アニール工程が実施される。これにより、当該部材に含まれるn型不純物およびp型不純物が活性化する。さらに、工程(S340)として、酸化膜が形成される酸化膜形成工程が実施される。具体的には、図9を参照して、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37の上部表面が露出する第2p型SiC層34の上部表面上に酸化膜38が形成される。この酸化膜38は、たとえば熱酸化、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学蒸着法)などにより形成することができる。
次に、図10を参照して、工程(S350)として、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37上に、nソース領域35、pゲート領域36およびnドレイン領域37に接触し、少なくともnソース領域35およびnドレイン領域37にオーミック接触可能な導電体、たとえばNiなどからなるソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cが形成される電極形成工程が実施される。
この電極形成工程は、たとえば以下のように実施することができる。まず、酸化膜38上にフォトリソグラフィーにより所望のソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cの形状に応じた開口を有するレジスト膜が形成される。そして、これをマスクとして用いて、たとえばRIEにより酸化膜38の一部が除去される。その後、ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cを構成するNiなどの金属が、レジスト膜上から酸化膜38に形成された開口の内部にまで蒸着されて金属膜が形成される。その後、レジスト膜が除去されることにより酸化膜38上の金属膜が除去(リフトオフ)されて、上記開口の内部に残存する金属膜によりソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41Cが形成される。
次に、図10および図9を参照して、工程(S360)において、ソース電極41A、ゲート電極41Bおよびドレイン電極41C上にボンディングの容易なAlなどの金属からなる配線としてのソース配線42A、ゲート配線42Bおよびドレイン配線42Cが形成される配線形成工程が実施される。そして、図10および図9を参照して、工程(S370)において、ソース配線42A、ゲート配線42Bおよびドレイン配線42Cを取り囲むように絶縁体からなるパシベーション膜43が形成されるパシベーション工程が実施される。以上の工程により、本実施の形態におけるJFET3が完成する。
本実施の形態におけるJFET3の製造方法においては、工程(S270)および(S310)において、SF6ガスとO2ガスとを含む混合ガスを用いたドライエッチングによりSiC層がエッチングされる。そのため、JFET3の製造工程において作製されるn型SiC層33および第2p型SiC層34のエッチングを、TaC膜81からなるマスクを用いて実施することができる。その結果、本実施の形態におけるJFET3の製造方法によれば、TaCをSiCのエッチングを行なうためのマスクの素材として採用することにより、JFET3の製造工程を簡略化することが可能となっている。
なお、上記実施の形態においては、本発明の半導体装置の製造方法において準備されるSiC部材として、SiC基板上に形成されたエピタキシャル層について説明したが、本発明のSiC部材はこれに限られず、たとえばSiC基板であってもよい。
また、上述のように、本発明の半導体装置の製造方法は、特にSiC部材のエッチングにおいてTaCを素材とするマスクを採用可能とする点に特徴を有するものである。したがって、上記実施の形態においては、製造される半導体装置がMOSFETである場合およびJFETである場合について説明したが、本発明の半導体装置の製造方法により製造可能な半導体装置はこれに限られない。本発明の半導体装置の製造方法は、pnダイオードや、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの本体部分や、ショットキーダイオード、pnダイオード、バイポーラトランジスタ、IGBTなどのガードリングなどの耐圧保持構造を含む種々の半導体装置の製造方法に適用することができる。
1 MOSFET、3 JFET、11,31 SiC基板、12 n型SiC層、12A 第1の主面、12B 第2の主面、13 pボディ、13A 第1面、13B 第2面、13C チャネル領域、131 一方のpボディ、131A,132A 第1面、131B,132B 第2面、132 他方のpボディ、14,35 nソース領域、15,37 nドレイン領域、16 ゲート酸化膜、17A,41A ソース電極、17B,41B ゲート電極、17C,41C ドレイン電極、18A,42A ソース配線、18B,42B ゲート配線、18C,42C ドレイン配線、19,43 パシベーション膜、32 第1p型SiC層、33 n型SiC層、34 第2p型SiC層、36 pゲート領域、38 酸化膜、81 TaC膜、91 レジスト。