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JP2009106141A - モータ制御装置及びモータ装置 - Google Patents

モータ制御装置及びモータ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
誘起電圧から回転子位置を推定し、負荷トルクが増大した条件においても、脱調することのない同期モータの駆動装置を提供する。
【解決手段】
本発明の同期モータの駆動装置は、パルス発生器が出力する全オフ制御パルス信号Poffの値に応じて、インバータの全てのスイッチ素子をオフに固定する。各相のモータ電流が減少してゼロになってから、パルス発生器15は、誘起電圧検出信号PdetがHレベルに変化するパルスを、少なくとも2回以上生成する。誘起電圧検出信号Pdetの値に従って、モータの端子電圧は取り込まれる。取り込まれたデータから、誘起電圧信号の振幅が大きく、かつ飽和していない回のデータを選び、回転子位置を推定する。
【選択図】図1

Description

本発明は同期電動機の制御方式であって、特に永久磁石同期電動機を、回転子位置を検出するセンサを用いずに駆動可能なモータ制御装置に関する。
回転子位置を検出するセンサを用いずに永久磁石同期モータを制御する位置センサレス制御の中で、モータの端子電圧を測定し、その電圧に基づいてモータを制御する方法は、比較的電圧の低いモータの駆動装置を中心に使われてきた。ここでは、この方法を「端子電圧検出方式」と呼ぶ。
端子電圧検出方式として、特許文献1には、3相インバータの全てのスイッチ素子を任意のタイミングでオフし、全相が無通電の状態で、モータの端子電圧を測定し、回転子位置を推定する技術が開示されている。
本技術によれば、モータの端子電圧から回転子位置を推定する際に、端子電圧の観測周期を短くすることができるので、低速回転時の負荷追従の性能を向上させることができる。
特開2007−151351号公報
特許文献1のように、3相インバータの全てのスイッチ素子を任意のタイミングでオフし、定期的にモータ電流をゼロにする駆動法では、当然ながら電流ゼロの期間にモータトルクは出力されない。このため、もし、モータの出力機械軸に負荷トルクがかけられていれば、電流ゼロの期間に回転子は減速する。減速の早さは、負荷トルクの大きさと、回転子の慣性モーメントによって決まる。例えば、負荷トルクが大きい場合、または慣性モーメントが小さい場合であるほど、急激に減速する。
特許文献1では、全素子をオフしてから、所定の時間を待ってモータの端子電圧を測定している。このため、測定するタイミングまで待つ間に、回転子速度がゼロ近くまで下がる場合がある。また、負荷トルクと慣性モーメントの条件が揃えば、速度がちょうどゼロになる場合も起こりうる。このように、端子電圧の測定タイミングでの回転子速度がゼロ近傍になると、端子電圧に表れる誘起電圧の振幅は小さくなるため、ノイズの影響を受けやすくなり、正しい回転子位置を推定できなくなる。その結果、トルクが出力できなくなり脱調に至る問題がある。
一方、定期的にモータ電流をゼロにして、モータの端子電圧を測定する方式は、1回の測定に所定の時間を要するので、測定頻度を上げることが難しい問題がある。このため、モータを高速回転させると、モータ1回転当たりの端子電圧検出回数は減る。例えば、1回転あたり4回検出する場合には、回転子位置情報は90度毎にしか得られなくなる。そこで、高速回転域では、別方式の位置センサレス制御に切り替えるのが妥当となる。しかし、この場合は制御方式の切り替えに問題が生じる。
具体的には、特許文献1の技術では、モータ電流を定期的にゼロにする駆動を基本としている。一方、別方式の位置センサレス制御技術では、モータ電流を連続して流す。このために、制御方式を切り替えると、モータの出力トルクが不連続になり、ショックが生じる問題がある。
本発明の目的は、モータの負荷トルクと慣性モーメントの値の変化によらず、回転子速度がゼロ近傍にならないタイミングで、確実にモータの端子電圧を測定し、回転子位置を推定可能な方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、回転速度に応じて、モータ電流を定期的にゼロにする駆動と、モータ電流を連続して流す駆動とを切り替える際に、モータ出力トルクのショックを減らす切り替え法を提供することにある。
総括すると、本発明の目的は、位置センサを用いないモータ制御装置において、モータの安定した運転を実現することが可能とすることである。
本発明のモータ制御装置は、モータ電流をゼロにしている期間に、端子電圧を、タイミングを変えて少なくとも2回以上検出し、その検出結果を用いて、モータの回転子位置を算出することである。
位置センサを用いないモータ制御装置において、モータの安定した運転を実現することが可能である。
以下に、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
図1に本実施例の構成図を示す。図1において、直流電源1の正側端子と負側端子の間には、直流電圧平滑用のコンデンサ2が接続される。コンデンサ2の正側端子は、インバータ3の直流正側端子Pが接続される。コンデンサ2の負側端子は、インバータ3の直流負側端子Nがシャント抵抗4を介して接続される。インバータ3の交流出力端子には、制御対象である永久磁石同期モータなどの同期モータ5の交流端子U,V,Wが接続される。同期モータ5は、インバータ3が供給する3相交流電力によって駆動される。
同期モータ5の交流端子(U,V,W)、および固定子巻線の中性点端子Cには、端子電圧増幅器6が接続される。端子電圧増幅器6は、交流端子(U,V,W)、および中性点端子Cの端子間電圧に所定のゲインを乗じて、端子電圧信号として出力する。誘起電圧検出器7は、後述する誘起電圧検出信号Pdetの値に応じて、特定のタイミングで前記端子電圧信号の電圧値を取り込み、その値を誘起電圧信号として出力する。位相演算器8は、前記誘起電圧信号の値から誘起電圧位相θeを演算する。回転方向推定器9は、前記誘起電圧位相θeの変化に基づいて回転子の回転方向を推定し、回転方向推定信号dを出力する。回転子位置演算器10は、回転方向推定信号dと、誘起電圧位相θeとの値を入力し、回転子位置推定値θr_hatを演算し、出力する。
モータ制御器11は、回転子位置推定値θr_hatに基づいて、インバータ駆動信号G1、および駆動方式信号Mを出力する。パルス発生器12は、駆動方式信号Mの値に応じて全オフ制御パルス信号Poffを出力する。信号処理器13は、全オフ制御パルス信号Poffの値に応じてインバータ駆動信号G1を処理し、インバータ駆動信号G2として出力する。インバータ駆動信号G2は、駆動回路14に接続される。駆動回路14の出力は、インバータ3を構成するIGBTあるいはパワーMOSFETのような電力半導体スイッチ素子UP,UN,VP,VN,WP,WNの制御端子に接続される。全オフ制御パルス信号Poffは、パルス発生器15に接続される。パルス発生器15は、誘起電圧検出信号Pdetを出力する。
次に、本実施例の動作について説明する。まず、図2を用いて、信号処理器13とパルス発生器15の動作を説明する。図2は、各信号とモータ電流の関係を示したタイムチャート図である。図2(1)の全オフ制御パルス信号Poffに応じて、信号処理器13は、インバータ駆動信号G2を変化させる。全オフ制御パルス信号PoffがLレベルの場合、信号処理器13は、インバータ駆動信号G1と同一の信号を、インバータ駆動信号G2として出力する。一方、全オフ制御パルス信号PoffがHレベルの場合は、信号処理器13は、インバータ駆動信号G2をオフレベルに固定することで、インバータ3の全電力半導体スイッチ素子をオフにする。なお、図2では、紙面の都合上、インバータ駆動信号G1,G2に含まれるパルス信号の1つを図示した。実際には、前述のように、インバータ駆動信号G1,G2は、インバータ3を構成する電力半導体スイッチ素子UP,UN,VP,VN,WP,WNを駆動する信号であり、6個のパルス信号から成る。また、インバータ駆動信号G1は、180度通電駆動のための3相正弦波パルス幅変調信号である。
インバータ駆動信号G2により、インバータ3の電力半導体スイッチ素子を駆動すると、モータ電流は図2(4)のように変化する。まず、全オフ制御パルス信号PoffがLレベルの時は、インバータ3の出力は3相正弦波パルス幅変調された電圧であり、モータ電流が流れている。ここで、全オフ制御パルス信号PoffがHレベルに変化すると、インバータ3の全電力半導体スイッチ素子はオフになるため、モータ電流は減少し、所定の時間が経過するとゼロになる。
図3に、本実施例で動作しているときのモータ電流波形の例を示す。ここでは、全オフ制御パルス信号Poffを一定周期でHレベルにしている。全オフ制御パルス信号PoffがHレベルになるとインバータ3の全電力半導体スイッチ素子はオフになり、モータ電流が一時的にゼロになる。本来、3相正弦波パルス幅変調された電圧で駆動すれば、モータ電流は正弦波状に流れるが、本実施例で動作させると図3のような櫛状にスリットの入った交流電流波形になる。
図2(5)に、誘起電圧検出信号Pdetの変化を示す。誘起電圧検出信号Pdetは、全オフ制御パルス信号PoffがHレベルに変化してから、待ち時間Twだけ遅れてHレベルに変化するパルス信号である。本発明では、このPdetのパルス信号を、少なくとも2回以上発生させる。1回のパルス信号の幅(PdetがHレベルを維持している時間)は、取り込み時間Tsである。
取り込み時間Tsは、誘起電圧の取り込みに必要な時間であり、誘起電圧検出器7と位相演算器8の具体的な構成により変化する。取り込み時間Tsの具体例としては、誘起電圧取り込みにA/D変換器を使う場合には、A/D変換器のサンプル時間が挙げられる。
待ち時間Twは、モータ電流がゼロになるまでの時間Tfより長い時間に設定する。一方、全電力半導体スイッチ素子をオフに固定する時間Toffは、待ち時間Tw、Pdetのパルス信号の回数n、および取り込み時間Tsとすると、次の不等式が成り立つように設定すればよい。
Toff≧Tw+Ts×n
図4は、端子電圧増幅器6と誘起電圧検出器7の構成例である。図4では2つの例をあげた。図4(a)が相電圧検出方式、図4(b)が線間電圧検出方式である。端子電圧増幅器6は3個の差動入力型の増幅器で構成されている。なお、図4では増幅器の増幅率をg倍とした。なお、図4(b)に示す線間電圧検出方式の場合は、固定子巻線の中性点端子Cは必要ない。
誘起電圧検出器7は、誘起電圧検出信号PdetがHレベルのとき、端子電圧増幅器6が出力する端子電圧信号を検出する。その例として、図4ではサンプル・アンド・ホールド回路を用いた例を示した。通常、誘起電圧検出信号PdetがLレベル時は、サンプル・アンド・ホールド回路のスイッチ素子をオンしておき、誘起電圧検出信号PdetがHレベルになったら、スイッチ素子をオフに切り替え、その時点の端子電圧信号の電位をコンデンサに保持する。誘起電圧検出信号PdetがHレベルの時点は、モータ電流が零なので、保持された端子電圧信号は、速度起電力による誘起電圧をg倍した電圧になる。
なお、本発明では、誘起電圧検出信号Pdetのパルス信号を、少なくとも2回以上発生させる。そこで、選択器71では、PdetがHレベルになり、サンプル・アンド・ホールド回路のコンデンサに端子電圧信号の電位が保持されたら、その電位を観測し3相分まとめて保持する。
ここで、図4(b)の線間電圧検出方式において、Pdetのパルス信号を3回発生させた場合を例にとり、説明する。この場合、選択器71には、3回分の線間の端子電圧情報が保持される。何回目かを表す数字を添え字につけて示すと、(Euv1,Evw1,Ewu1),(Euv2,Evw2,Ewu2)、および(Euv3,Evw3,Ewu3)の値が選択器71に保持される。そして、後述する手順により、どの回の端子電圧情報が適しているか判定し、そのデータをEuv,Evw,Ewu信号として出力する。
ところで、図3のようなモータ電流波形では、モータ出力トルクは一定値でなくなる。
これは、モータ電流がゼロになると、モータ出力トルクもゼロになるためである。このため、全オフ制御パルス信号PoffをHレベルにする周波数と同じ周波数で、モータ出力トルクも変化する。
そこで、図5と図6を用いて、モータ出力トルクの変化とモータ速度変動を説明する。
ここでは、モータ回転子は次の運動方程式に従って運動するとして説明を進める。
Tm−TL=J・dωm/dt
ここで、Tm:モータ出力トルク
TL:負荷トルク
J:慣性モーメント(イナーシャ)
dωm/dt:モータ速度ωmの時間微分
である。
なお、説明を簡単にするために、全オフ制御パルス信号Poffは、図5(a),図6(a)に示すようにHとLの比が1:1になるようにした。全相オフ制御パルス信号PoffがHレベルの時、モータトルクTmはゼロとなり、PoffがLレベルの時、モータトルクTmは所定量発生すると考える。
図5(b)のように大きさ1のモータトルクTmを断続させた場合、モータ速度ωmは図5(c)に示すように増加と減少を繰り返す。ここで、モータ速度ωmの平均値ωmaveが一定となっているなら、モータ出力トルクTmの平均値と、負荷トルクTLは、0.5で釣り合いが取れていることになる。モータトルクTmと負荷トルクTLとの関係を図示すると、図5(b)のように表すことができる。
図6では、PoffがLレベルの時、モータトルクTmが2(図5の2倍のレベル)発生すると考える。この場合モータ速度ωmの変動は、図6(c)に示すようになり、図5(c)と比べると変動が大きくなる。もし、モータ速度ωmの平均値ωmaveが、図5と図6で等しいとすると、モータ速度減少の時間変化率は、図6は図5の2倍だから、速度はゼロ以下に達することになる。
以上の説明より、ある一定速度でモータを駆動して、負荷トルクを増していくと、電流をゼロにしている期間中に、モータ速度が減少してゼロ近くまで落ちこむ可能性があることがわかる。もし、誘起電圧検出のタイミングで、モータ速度がゼロ近くまでに下がっている場合、誘起電圧の振幅は低くなるため、ノイズの影響を受けやすくなり、正しい回転子位置を推定できなくなる。その結果、トルクが出力できなくなり脱調に至る。
上記問題を回避するための方法を、図7を用いて説明する。ここでは、全オフ制御パルス信号PoffをHレベルにして、モータ電流をゼロにし、回転子速度ωmが変化している状態を図示している。なお、回転子速度ωmは、減速して一旦ゼロになってから後は、逆側に速度を増すように回転するものと仮定している。誘起電圧信号は、回転子速度ωmの変化に合わせて、振幅が変化していることがわかる。なお、ここでは、端子電圧増幅器6の中に、端子電圧のゼロレベルを、2.5[V]に加算する回路が含まれているものとした。従って、誘起電圧信号は、2.5[V]レベルを中心にして、最大で0〜5[V]の間を変化する。
図7では、誘起電圧検出信号Pdetのパルス信号を3回発生させ、そのときの誘起電圧信号の取り込み値を、丸印で示している。1回目のPdetパルス信号で取り込まれた誘起電圧信号をEuv1,Evw1,Ewu1とする。以下同様に、2回目のPdetパルス信号で取り込まれた信号をEuv2,Evw2,Ewu2とし、3回目のPdetパルス信号で取り込まれた信号をEuv3,Evw3,Ewu3とする。本発明では、このようにして取り込んだ3回の誘起電圧信号データから、最も良い回の誘起電圧信号データを選択して、回転子位置を算出するものである。
次に、3回の誘起電圧信号データから、どの回のデータを選択すればよいかについて、以下説明する。
図7の場合、1回目の取り込みタイミングでは、回転子速度が高いために、誘起電圧信号Ewuは0〜5[V]の範囲を超えて5[V]に制限されている。従って、得られたEwu1は制限された5.0[V]の値になる。一方、3回目の取り込みタイミングでは、モータ速度がゼロ近傍となり、Euv3,Evw3,Ewu3は、どれも誘起電圧信号のゼロレベル(電圧値では2.5[V])に近い値になる。3回目や1回目に比べると、2回目の取り込みタイミングでは、Euv2,Evw2,Ewu2は、どれも0〜5[V]の範囲にあることがわかる。図7の例では、2回目のデータEuv2,Evw2,Ewu2を選択して、回転子位置を算出するのが好ましい。
n回取り込んだ誘起電圧信号データから、どの回のデータを選択するかを決めるには、次の(1),(2)の手順に従えばよい。
(1)n回取り込んだ誘起電圧信号データの中から、誘起電圧信号の振幅が高く(少なくともノイズの影響を受けづらい所定値以上の電圧以上)、かつ信号が飽和していない回のものを選ぶ。
(2)上記(1)で該当するデータが無ければ、誘起電圧信号の飽和数が少ない回のものを選ぶ。
なお、上記(2)の飽和数とは、飽和レベルに達した信号の数である。図7の1回目取り込みタイミングは、Ewu1のみが飽和していたので飽和数は1である。飽和数の最大は3になる。
上述の手順に従えば、誘起電圧信号がゼロレベル(電圧値では2.5[V])に近い値を取る回のものは除去されるため、前述したように正しい回転子位置を推定できなくなる問題を回避することができる。
なお、図7の場合は、Pdetとして3回のパルスを出力し、誘起電圧信号を3回検出する例を示している。しかし、本発明で提案する方法は、少なくとも2回の検出をすれば、良い方を選ぶことができるので、同様の効果を出すことができる。
次に、回転速度に応じて、モータ電流を定期的にゼロにする駆動と、モータ電流を連続して流す駆動とを切り替える際に、モータ出力トルクのショックを減らす切り替え法を図8,図9,図10を用いて説明する。
図8に、モータ制御器11の内部の例を詳しく示す。図8において、電圧指令演算器110は、後述する制御系の内部角周波数ω1の値をもとに、交流電圧指令の振幅V1*(モータ電圧指令),交流電圧指令の位相角θv、および駆動方式信号Mを出力する。駆動方式信号Mの値によって、前述のパルス発生器12の動作が変化する。Mが1の場合、パルス発生器12は、全オフ制御パルス信号Poffを出力して、モータ電流を定期的にゼロにする駆動が有効になる。一方、Mが0の場合は、パルス発生器12は、全オフ制御パルス信号Poffを出力しないので、モータ電流を連続して流す駆動方式となる。
振幅V1*は、増幅器111aにより1.0倍に増幅される。同様に、振幅V1*は、増幅器111bによりk倍に増幅される。ただし、kは、k>1とする。増幅器111a,111bの出力信号は、選択器112によって処理され、補正後の交流電圧指令の振幅V1**が出力される。選択器112は、Mが1の場合に増幅器111bの信号を選択する。一方、選択器112は、Mが0の場合に増幅器111aの信号を選択する。
3相電圧指令演算器113は、補正後の振幅V1**と、電圧指令位相角θv、および推定d軸位相θdcにより、3相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を算出する。PWM変換器114は、入力として与えられた3相電圧指令をもとに、パルス幅変調されたインバータ駆動信号G1を出力する。
誘起電圧信号をもとに算出した回転子位置推定値θr_hatと、推定d軸位相θdcは、加算器115によって、差分値(θr_hat−θdc)が計算される。一方、公知の位置センサレスアルゴリズムを用いた演算器116によって、軸ずれ角の推定値Δθhatが計算される。なお、軸ずれ角とは、推定d軸位相θdcと、実d軸位相θdの差分で定義される量である。選択器117は、Mが1の場合に加算器115の出力信号を選択する。一方、Mが0の場合には演算器116の出力信号を選択する。選択器117の出力信号を誤差入力として、PI補償器118は制御系の内部角周波数ω1を算出する。内部角周波数ω1は、積分器119によって積分され、推定d軸位相θdcが出力される。
なお、図8では図示するのを省略したが、公知の位置センサレスアルゴリズムを用いた演算器116は、電圧指令値の情報,モータ電流の観測値,内部の周波数情報等を用いて軸ずれ角の推定値Δθhatを推定している。なお、モータ電流を観測する手段について、図1では図示するのを省略しているが、同期モータ5の交流端子(U,V,W)の電流を測定する電流センサを用いる方法や、シャント抵抗4の両端に生じる電圧を測定して同期モータ5の電流を測定する方法がある。
次に、図8の動作を説明する。
駆動方式信号Mは、モータ駆動周波数(すなわち、制御系の内部角周波数)ω1の値に基づいて決定される。低速域ではM=1、高速域ではM=0が出力される。駆動方式信号Mが1の場合、前述のようにモータ電流を定期的にゼロにする駆動が有効になる。このとき、補正後の交流電圧振幅V1**は、V1*のk倍となる。一方、Mが0の場合、モータ電流を連続して流す駆動方式となる。このとき、補正後の交流電圧振幅V1**は、V1*と等しい。以上の動作により、モータ電流を定期的にゼロにする駆動では、3相電圧指令の電圧振幅が大きく設定される。
図9は、左側がM=1でモータ電流を定期的にゼロにする駆動、右側がモータ電流を連続して流す駆動を示している。もともとの交流電圧振幅V1*は一定だが、本発明では、電流断続駆動において電圧指令の振幅をk倍にし、補正後の電圧振幅V1**を生成する。この結果、電流断続駆動時にはモータ電流が増加し、モータトルクの最大値も増加する。
電流断続駆動状態でのモータトルクTmの平均値と、電流連続駆動状態のモータトルクTmの差が小さければ、切り替え時のショックは少なくなる。このために、増幅器111bのゲインkを適切に設定する必要がある。
ゲインkの設定値の理論式を導出する。今、モータ電流は時間T毎にゼロにすると仮定する。また、毎回電流をゼロに保持している時間をtとおく。(ただし、0<t<T)モータ電流をゼロにしている期間の割合rは、r=t/Tで定義される。
電流断続駆動状態における電圧振幅V1**は、k・V1*となる。しかし、インバータの全スイッチ素子は、定期的に全オフとなるので、実際に出力される電圧振幅の平均は、k・V1*・(1−r)となると考えることができる。一方、電流連続駆動状態の電圧振幅はV1*である。よって、両者が等しいとおいて、方程式を解くと、
k=1/(1−r)=T/(T−t)
の関係式が得られる。
図10は、駆動方式信号Mを1から0に変えたときの、モータ電流の変化の例を示す。
電流断続駆動から、電流連続駆動に切り替えると、前述のように電圧指令の電圧振幅V**の大きさが変化するため、電流の波高値が変化し、図10のような波形となる。
なお、図10では、電流断続駆動から電流連続駆動へ切り替える例を示したが、反対方向に駆動方式を切り替える場合でも、同様の波形になる。
なお、電圧指令演算器110としては、モータ電流の観測値を用いて電圧指令を出力する方法も知られている。モータ電流の観測値をフィードバックすれば、電流制御が可能となり、本発明の性能をあげることができる。
以上のように、本発明の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置は、モータ電流をゼロにしている期間に、端子電圧を、タイミングを変えて少なくとも2回以上検出するので、回転子速度がゼロ近傍でないタイミングでモータの端子電圧を測定することができる。このため、モータの誘起電圧情報を得て回転子位置を推定することができるので、脱調することなくモータトルクを出力できる。
これにより、位置センサを用いないモータ制御装置において、脱調することなくモータの安定した運転を実現することが可能である。
実施例の永久磁石同期モータの位置センサレス駆動システムの全体制御ブロック図。 実施例の制御信号の関係を示したタイムチャート図。 実施例のモータ電流波形の説明図。 実施例の端子電圧増幅器と誘起電圧検出器の説明図。 実施例のモータトルクとモータ速度変動の関係を示した説明図。 実施例のモータトルクとモータ速度変動の関係を示した説明図。 実施例の誘起電圧信号の検出についての説明図。 実施例のモータ制御器11の制御構成を説明する図。 実施例において、駆動方式を切り替えた場合のモータトルク変動を説明する図。 実施例において、駆動方式を切り替えた場合のモータ電流波形の説明図。
符号の説明
1 直流電源
2 コンデンサ
3 インバータ
4 シャント抵抗
5 同期モータ
6 端子電圧増幅器
7 誘起電圧検出器
8 位相演算器
9 回転方向推定器
10 回転子位置演算器
11 モータ制御器
12,15 パルス発生器
13 信号処理器
14 駆動回路

Claims (9)

  1. 回転子位置センサを用いずにインバータを用いて永久磁石同期モータを制御するモータ制御装置において、
    前記インバータの全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフし、かつ、
    前記スイッチング素子の全相をオフにした場合に、少なくとも2回以上のモータ電圧をサンプリングすることにより前記モータの誘起電圧情報を求め、
    該誘起電圧情報に基づいてモータの回転子位置を推定することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 請求項1において、
    前記少なくとも2回以上のモータ電圧をサンプリングは、
    モータ電流がゼロになった以後に行うことを特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項1において、
    前記少なくとも2回以上サンプリングした結果から、
    ある1回の結果を選択する変換結果選択手段を備えることを特徴とするモータ制御装置。
  4. 請求項3において、
    前記変換結果選択手段は、前記誘起電圧情報の振幅が最も大きく、かつ、飽和していないサンプリング結果を選択することを特徴とするモータ制御装置。
  5. 請求項3において、
    前記変換結果選択手段は、誘起電圧振幅が、ノイズの影響を受けづらい所定値以上の電圧以上あり、かつ、飽和していないサンプリング結果を選択することを特徴とするモータ制御装置。
  6. 請求項1において、
    前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフする期間と、全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフする期間オフしない期間とをモータ回転速度によって切り替えることを特徴とするモータ制御装置。
  7. 請求項6において、
    前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフする期間では、
    モータ電圧指令値を所定ゲイン分高めにし、
    前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフする期間と、
    前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフしない期間との切り替えは、切り替え前後における、モータ電流の実効値がほぼ等しくなるようにしたことを特徴とするモータ制御装置。
  8. 請求項7において、
    所定のゲインkは、前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフした期間の一回のオフ期間のモータ電流がゼロの時間t、前記全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフする周期Tとするとき(ただし、t<T)k=T/(T−t)であることを特徴とするモータ制御装置。
  9. 永久磁石同期モータと、前記永久磁石同期モータを駆動するインバータと、回転子位置センサを用いずにインバータを制御するモータ制御装置とを有するモータ装置において、 前記インバータの全相のスイッチング素子を任意のタイミングでオフし、かつ、前記スイッチング素子の全相をオフにした場合に、少なくとも2回以上のモータ電圧をサンプリングすることにより前記モータの誘起電圧情報を求め、
    該誘起電圧情報に基づいてモータの回転子位置を推定することを特徴とするモータ装置。
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