JP2009016134A - ポリマー電池用ゲル電解質及びそれを備えたポリマー電池 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ポリマー電池用ゲル電解質及び該ゲル電解質を備えたポリマー電池に関し、特に非常時の発火・引火の危険性が大幅に低減されたポリマー電池用ゲル電解質に関するものである。
昨今、液漏れの心配の無い電池として、電解質にポリマーを用いたポリマー電池が研究されている。該ポリマー電池は、液漏れの心配がないことに加え、他の電池に比べて軽量であり、また、メモリー効果が非常に小さく、更には、形状が比較的自由に採れるため、今後の普及が期待されている。
上記ポリマー電池に用いられる電解質としては、ポリマーにリチウム塩を保持させた真性ポリマー電解質と、ポリマーに有機溶媒を膨潤させたゲル電解質とが知られているが、真性ポリマー電解質にはイオン伝導度がゲル電解質に比べ各段に低いという問題がある。一方、ゲル電解質を用いたポリマー電池には、負極材料としてリチウム金属やリチウム合金が使用され、該負極が水及びアルコール等の活性プロトンを有する化合物と激しく反応するため、ゲル電解質に使用される有機溶媒は、エステル化合物やエーテル化合物等の非プロトン性有機溶媒に限られている。
しかしながら、上記非プロトン性有機溶媒は、負極活物質のリチウムとの反応性が低いものの、例えば、ポリマー電池の短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した際に、気化・分解してガスを発生したり、発生したガス及び熱により電池の破裂・発火を引き起こしたり、短絡時に生じる火花が引火する等の危険性が高い。
これに対して、ポリマーにホスファゼン化合物を含有する非水電解液を含浸させることで、ポリマー電池用電解質に不燃性、難燃性又は自己消火性を付与して、短絡等の非常時にポリマー電池が発火・引火する危険性を大幅に低減したポリマー電池が開発されている(特許文献1参照)。
しかしながら、上記ホスファゼン化合物を含有する非水電解液を含浸させたゲル電解質は、使用されるポリマー自体の燃焼性が高いため、例えば、短絡等の非常時にポリマー電池の温度が上昇する際に、ホスファゼン化合物を含有する非水電解液が気化した場合、短絡時に生じた火花が残存するポリマーに引火する等の危険性を排除することができない。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ポリマー電池用ゲル電解質に用いるポリマー自体を不燃化することによって、安全性を大幅に向上させたポリマー電池用ゲル電解質を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゲル電解質を備え、安全性が大幅に改善されたポリマー電池を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリマーに特定のジホスホリル化合物を分散させて不燃性ポリマー混合物を得、該不燃性ポリマー混合物に非水電解液を含浸させることで、電解質としての導電性を充分に確保しつつ、ゲル電解質の安全性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のポリマー電池用ゲル電解質は、ポリマーに下記一般式(I):
[式中、Aは、それぞれ独立してアミノ基、ハロゲン元素又は式−OR(ここで、Rは、炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜6の不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)で示される基である]で表わされるジホスホリル化合物を分散させてなる不燃性ポリマー混合物に、非水電解液を含浸させてなることを特徴とする。
本発明のポリマー電池用ゲル電解質の好適例においては、前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート及びポリプロピレンオキシドの少なくともいずれかである。ここで、前記ポリマーは、重量平均分子量が10万以上であることが好ましい。
本発明のポリマー電池用ゲル電解質の他の好適例においては、前記不燃性ポリマー混合物及び前記非水電解液の少なくともいずれかが支持塩を含有する。
また、本発明のポリマー電池は、上記ポリマー電池用ゲル電解質と、正極と、負極とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、ジホスホリル化合物を分散させた不燃性ポリマー混合物に非水電解液を含浸させてなる安全性の非常に高いポリマー電池用ゲル電解質を提供することができる。また、該ゲル電解質を備え、安全性が大幅に改善されたポリマー電池を提供することができる。
<ポリマー電池用ゲル電解質>
以下に、本発明のポリマー電池用ゲル電解質を詳細に説明する。本発明のポリマー電池用ゲル電解質は、ポリマーに上記一般式(I)で表わされるジホスホリル化合物を分散させてなる不燃性ポリマー混合物に、非水電解液を含浸させてなることを特徴とする。本発明のゲル電解質は、ポリマー中にジホスホリル化合物が分散しており、ポリマー自体が不燃化されているため、発火・引火の危険性が大幅に低減されている。ここで、ポリマー中に分散されたジホスホリル化合物は、ゲル電解質が燃焼する際にリン酸エステル類を発生し、該リン酸エステル類の作用によってゲル電解質を不燃性にする。また、上記ジホスホリル化合物に含まれるリンには、ゲル電解質の原料であるポリマーの連鎖分解を抑制する作用があるため、効果的にゲル電解質の燃焼の危険性を低減することができる。
以下に、本発明のポリマー電池用ゲル電解質を詳細に説明する。本発明のポリマー電池用ゲル電解質は、ポリマーに上記一般式(I)で表わされるジホスホリル化合物を分散させてなる不燃性ポリマー混合物に、非水電解液を含浸させてなることを特徴とする。本発明のゲル電解質は、ポリマー中にジホスホリル化合物が分散しており、ポリマー自体が不燃化されているため、発火・引火の危険性が大幅に低減されている。ここで、ポリマー中に分散されたジホスホリル化合物は、ゲル電解質が燃焼する際にリン酸エステル類を発生し、該リン酸エステル類の作用によってゲル電解質を不燃性にする。また、上記ジホスホリル化合物に含まれるリンには、ゲル電解質の原料であるポリマーの連鎖分解を抑制する作用があるため、効果的にゲル電解質の燃焼の危険性を低減することができる。
また、本発明のポリマー電池用ゲル電解質に用いるジホスホリル化合物は、国際公開第03/005478号等で使用されているホスファゼン化合物に比べて支持塩の溶解能が高い。そのため、本発明のポリマー電池用ゲル電解質は、支持塩が均一に存在しており、電解質としての導電性が高く、ホスファゼン化合物を用いた電解質に比べて、ポリマー電池の電池容量を向上させることができる。
本発明のポリマー電池用ゲル電解質は、通常支持塩を含有するが、該支持塩は、不燃性ポリマー混合物及び非水電解液のいずれに含まれていてもよく、両方に含まれていてもよい。ここで、支持塩としては、リチウムイオンのイオン源となる支持塩が好ましく、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩が好適に挙げられる。これら支持塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。支持塩を不燃性ポリマー混合物に含ませる場合、該支持塩の使用量は、ポリマー及び支持塩の総量の5〜20質量%の範囲が好ましく、10質量%程度が特に好ましい。支持塩の量が5質量%未満、即ち、ポリマーの量が95質量%を超えると、電気伝導率の低下を招くことがあり、一方、支持塩の量が20質量%を超える、即ち、ポリマーの量が80質量%未満であると、ゲル電解質の強度が低下することがある。
本発明のポリマー電池用ゲル電解質に用いるポリマーとしては、ポリマー電池用ゲル電解質に通常用いられるポリマーの総てを用いることができ、具体的には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、エチレンオキシドユニットを含むポリアクリレート等が挙げられる。これらポリマーの中でも、電気的に安定な点で、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリアクリレートが好ましく、ポリエチレンオキシドが更に好ましい。これらポリマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10万以上が好ましく、500万以上が更に好ましい。ポリマーの重量平均分子量が10万未満であると、強度が弱く、ゲルというよりはむしろゾルに近い状態となることがある一方、10万以上であれば、電解質がゲル状となり、強度が充分に高い。
上記ポリマーに分散させるジホスホリル化合物は、上記一般式(I)で表わされ、該ジホスホリル化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、式(I)中、Aは、アミノ基、ハロゲン元素又は式−OR(ここで、Rは、炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜6の不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)で示される基であり、各Aは、同一でも、異なってもよい。
式(I)中のAにおいて、ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられ、これらの中でも、フッ素が好ましい。なお、式(I)中のAは、少なくとも一つがハロゲン元素であることが好ましく、少なくとも一つがフッ素であることが更に好ましい。
また、上記式−OR中のRにおいて、炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられ、これらは、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。また、炭素数2〜6の不飽和脂肪族炭化水素基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基(炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基)が挙げられ、これらは、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。更に、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基(アリールアルキル基)が挙げられる。これらの中でも、Rとしては、メチル基、エチル基及びフェニル基が好ましい。なお、上記Rにおいて、上記炭化水素基中の水素は、ハロゲン元素等で置換されていても、置換されていなくてもよいが、上記炭化水素基中の水素の1つ以上がフッ素で置換されていることが好ましい。
上記不燃性ポリマー混合物中の上記ジホスホリル化合物の含有率は、3〜20質量%の範囲が好ましく、5〜15質量%の範囲が更に好ましい。ジホスホリル化合物の含有率が3質量%未満では、セパレータの燃焼の危険性を低減する効果が小さく、20質量%を超えると、機械的強度が低下する。
上記不燃性ポリマー混合物に含浸させる非水電解液は、非水溶媒を主成分とし、必要に応じて上記支持塩を含有してもよい。なお、非水電解液が、支持塩を含む場合、非水電解液中の支持塩の濃度としては、0.2〜1.5 mol/L(M)が好ましく、0.5〜1 mol/L(M)が更に好ましい。支持塩の濃度が0.2 mol/L未満では、電解液の導電性を充分に確保することができず、電池の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがあり、1.5 mol/Lを超えると、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオンの移動度を充分に確保できないため、前述と同様に電解液の導電性を充分に確保できず、電池の放電特性及び充電特性に支障をきたすことがある。
また、上記非水溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が挙げられ、また、上述したジホスホリル化合物の中から、25℃(室温)において液体のものを選択して用いることもでき、非プロトン性有機溶媒とジホスホリル化合物との混合溶液を使用することもできる。ここで、非プロトン性有機溶媒として、具体的には、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジフェニルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)等の炭酸エステル類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(DEE)、フェニルメチルエーテル等のエーテル類、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン、メチルフォルメート(MF)等のカルボン酸エステル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホン類が挙げられる。これら非プロトン性有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記非プロトン性有機溶媒の25℃における粘度としては、特に制限はないが、10 mPa・s以下が好ましく、5 mPa・s以下が更に好ましい。
本発明のポリマー電池用ゲル電解質の作製方法としては、例えば、上記ポリマー、ジホスホリル化合物及び支持塩を混合し、揮発性溶媒を添加して均一に混合し、80℃程度で均一溶解させ、真空で40℃程度に加熱し、揮発性溶媒を揮発させ、乾燥した後、主として非プロトン性有機溶媒からなる非水電解液(任意にジホスホリル化合物を含んでもよい)を含浸・膨潤させてゲル電解質を得る方法等が挙げられる。上記揮発性溶媒としては、アセトニトリル、アルコール類等が挙げられ、溶解性等に優れる点で、アセトニトリル等が好ましい。
<ポリマー電池>
次に、本発明のポリマー電池を詳細に説明する。本発明のポリマー電池は、上述のポリマー電池用ゲル電解質と、正極と、負極とを備え、必要に応じて、ポリマー電池の技術分野で通常使用されている他の部材を備える。
次に、本発明のポリマー電池を詳細に説明する。本発明のポリマー電池は、上述のポリマー電池用ゲル電解質と、正極と、負極とを備え、必要に応じて、ポリマー電池の技術分野で通常使用されている他の部材を備える。
本発明のポリマー電池の正極活物質としては、特に制限はなく、公知の正極活物質から適宜選択して使用できる。該正極活物質として、具体的には、V2O5、V6O13、MnO2、MnO3等の金属酸化物、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4等のリチウム含有複合酸化物、TiS2、MoS2等の金属硫化物、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が好適に挙げられる。上記リチウム含有複合酸化物は、Fe、Mn、Co及びNiからなる群から選択される2種又は3種の遷移金属を含む複合酸化物であってもよく、この場合、該複合酸化物は、LiFexCoyNi(1-x-y)O2(式中、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1)、あるいはLiMnxFeyO2-x-y等で表される。これらの中でも、高容量で安全性が高く、更には電解液の濡れ性に優れる点で、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4が特に好適である。これら正極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリマー電池の負極活物質としては、リチウム金属自体、リチウムとAl、Sn、Si、In、Pb又はZn等との合金、リチウムをドープした黒鉛等の炭素材料等が好適に挙げられ、これらの中でも安全性がより高い点で、黒鉛等の炭素材料が好ましく、黒鉛が特に好ましい。ここで、黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等、広くは易黒鉛化カーボンや難黒鉛化カーボンが挙げられる。これら負極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記正極及び負極には、必要に応じて導電剤、結着剤を混合することができ、導電剤としてはアセチレンブラック等が挙げられ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらの添加剤は、従来と同様の配合割合で用いることができる。
上記正極及び負極の形状としては、特に制限はなく、電極として公知の形状の中から適宜選択することができる。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラル形状等が挙げられる。また、本発明のポリマー電池に使用する他の部材としては、通常ポリマー電池に使用されている公知の各部材を好適に用いることができる。
以上に説明した本発明のポリマー電池の形態としては、特に制限はなく、コインタイプ、ボタンタイプ、ペーパータイプ、角型又はスパイラル構造の円筒型電池等、種々の公知の形態が好適に挙げられる。スパイラル構造の場合、例えば、シート状の正極を作製して集電体を挟み、これに、負極(シート状)を重ね合わせて巻き上げる等によりポリマー電池を作製することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<ポリマー電池用ゲル電解質の作製>
ポリエチレンオキシド[アルドリッチ製、Mw=500万〜600万]45g、ジホスホリル化合物A[式(I)で表わされ、Aが総てフッ素である化合物(ジホスホリルテトラフルオライド)]5 g及びLiPF6(支持塩)3.7 gを混合し、アセトニトリル(揮発性溶媒)10 mLを添加して均一に混合し、80℃で均一溶解させ、ポリエチレンオキシドゾル(ポリエチレンオキシドとジホスホリル化合物AとLiPF6を含む)を得た。該ゾルを真空で40℃に加熱し、アセトニトリルを揮発させ、乾燥させた。その後、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶液(非水電解液, 体積比:EC/EMC=1/1)1 mLを含浸させ、膨潤させてゲル状のポリマー電池用電解質を得た。また、得られたゲル電解質(電解液含有セパレータ)の安全性及び限界酸素指数を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
<ポリマー電池用ゲル電解質の作製>
ポリエチレンオキシド[アルドリッチ製、Mw=500万〜600万]45g、ジホスホリル化合物A[式(I)で表わされ、Aが総てフッ素である化合物(ジホスホリルテトラフルオライド)]5 g及びLiPF6(支持塩)3.7 gを混合し、アセトニトリル(揮発性溶媒)10 mLを添加して均一に混合し、80℃で均一溶解させ、ポリエチレンオキシドゾル(ポリエチレンオキシドとジホスホリル化合物AとLiPF6を含む)を得た。該ゾルを真空で40℃に加熱し、アセトニトリルを揮発させ、乾燥させた。その後、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶液(非水電解液, 体積比:EC/EMC=1/1)1 mLを含浸させ、膨潤させてゲル状のポリマー電池用電解質を得た。また、得られたゲル電解質(電解液含有セパレータ)の安全性及び限界酸素指数を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
(1)安全性
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動からポリマー電池用ゲル電解質の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、上記ゲル電解質からなる127 mm×12.7 mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0 mm)を「不燃性」、着火した炎が25 mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100 mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100 mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動からポリマー電池用ゲル電解質の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、上記ゲル電解質からなる127 mm×12.7 mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0 mm)を「不燃性」、着火した炎が25 mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100 mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100 mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
(2)限界酸素指数
JIS K 7201に準じて、ゲル電解質の限界酸素指数を測定した。限界酸素指数が大きい程、ゲル電解質が燃焼し難いことを示す。具体的には、上記ゲル電解質からなる127 mm×12.7 mmの試験片を作製し、該試験片を試験片支持具に垂直に、燃焼円筒(内径75 mm、高さ450 mm、直径4 mmのガラス粒を底部から100±5 mmの厚さに均等に満たし金属製の網をその上に置いたもの)の上端部から100 mm以上の距離に位置するように取り付け、次に、燃焼円筒に酸素(JIS K 1101又はこれと同等以上のもの)及び窒素(JIS K 1107の2級又はこれと同等以上のもの)を流し、試験片を所定の酸素濃度下で点火し(熱源はJIS K 2240の1種1号)、燃焼状態を調べた。但し、燃焼円筒内の総流量は11.4 L/minである。この試験を3回行い、その平均値を表1に示す。なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な容量パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、本願では、試験片が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50 mm以上燃えるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量から、下記の式:
限界酸素指数=(酸素流量)/[(酸素流量)+(窒素流量)]×100(体積%)
に従って限界酸素指数を算出した。
JIS K 7201に準じて、ゲル電解質の限界酸素指数を測定した。限界酸素指数が大きい程、ゲル電解質が燃焼し難いことを示す。具体的には、上記ゲル電解質からなる127 mm×12.7 mmの試験片を作製し、該試験片を試験片支持具に垂直に、燃焼円筒(内径75 mm、高さ450 mm、直径4 mmのガラス粒を底部から100±5 mmの厚さに均等に満たし金属製の網をその上に置いたもの)の上端部から100 mm以上の距離に位置するように取り付け、次に、燃焼円筒に酸素(JIS K 1101又はこれと同等以上のもの)及び窒素(JIS K 1107の2級又はこれと同等以上のもの)を流し、試験片を所定の酸素濃度下で点火し(熱源はJIS K 2240の1種1号)、燃焼状態を調べた。但し、燃焼円筒内の総流量は11.4 L/minである。この試験を3回行い、その平均値を表1に示す。なお、酸素指数とは、材料が燃焼を持続するのに必要な容量パーセントで表される最低酸素濃度の値をいい、本願では、試験片が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50 mm以上燃えるのに必要な最低の酸素流量とそのときの窒素流量から、下記の式:
限界酸素指数=(酸素流量)/[(酸素流量)+(窒素流量)]×100(体積%)
に従って限界酸素指数を算出した。
<ポリマー電池の作製>
LiMn2O4(正極活物質)94質量部に対して、アセチレンブラック(導電剤)3質量部とポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量部とを添加し、有機溶媒(酢酸エチルとエタノールとの50/50質量%混合溶媒)で混練した後、該混練物を厚さ25μmのアルミニウム箔(集電体)にドクターブレードで塗工し、更に熱風乾燥(100〜120℃)して、厚さ80μmの正極シートを作製した。また、負極には厚さ150μmの黒鉛製のシートを使用した。
LiMn2O4(正極活物質)94質量部に対して、アセチレンブラック(導電剤)3質量部とポリフッ化ビニリデン(結着剤)3質量部とを添加し、有機溶媒(酢酸エチルとエタノールとの50/50質量%混合溶媒)で混練した後、該混練物を厚さ25μmのアルミニウム箔(集電体)にドクターブレードで塗工し、更に熱風乾燥(100〜120℃)して、厚さ80μmの正極シートを作製した。また、負極には厚さ150μmの黒鉛製のシートを使用した。
次に、上記ポリマー電池用ゲル電解質の作製と同様にしてポリエチレンオキシドゾルを調製し、該ゾルをポリエチレン製セパレーターの両面にドクターブレードを用いて厚さが150μmとなるように塗布した後、アセトニトリルを蒸発させ、ドライゲルを作製した。これを上記正極シート及び負極(黒鉛製シート)間に挟み込んで巻き上げ、更に上記混合溶液(非水電解液)を含浸・膨潤させて単三型ポリマー電池を作製した。該電池の正極長さは約260 mmである。得られたポリマー電池に対して、20℃の環境下、上限電圧4.2V、下限電圧3.0V、放電電流0.2C時間率の条件で、50サイクルまで充放電を繰り返し、初期における放電容量及び50サイクル後の放電容量を測定した。また、下記式:
放電容量維持率=50サイクル後の放電容量/初期放電容量×100(%)
から放電容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
放電容量維持率=50サイクル後の放電容量/初期放電容量×100(%)
から放電容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Aの使用量を2.5 gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Aの使用量を2.5 gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(実施例3)
ジホスホリル化合物Aに代えてジホスホリル化合物B[式(I)で表わされ、4つのAのうち1つがエトキシ基で、3つがフッ素である化合物]を用いた以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ジホスホリル化合物Aに代えてジホスホリル化合物B[式(I)で表わされ、4つのAのうち1つがエトキシ基で、3つがフッ素である化合物]を用いた以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(実施例4)
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Bの使用量を2.5 gとする以外は、実施例3と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Bの使用量を2.5 gとする以外は、実施例3と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(実施例5)
ジホスホリル化合物Aに代えてジホスホリル化合物C[式(I)で表わされ、4つのAのうち1つが2,2,2-トリフルオロエトキシ基で、3つがフッ素である化合物]を用いた以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ジホスホリル化合物Aに代えてジホスホリル化合物C[式(I)で表わされ、4つのAのうち1つが2,2,2-トリフルオロエトキシ基で、3つがフッ素である化合物]を用いた以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(実施例6)
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Cの使用量を2.5 gとする以外は、実施例3と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ポリエチレンオキシドの使用量を47.5 gとし、ジホスホリル化合物Cの使用量を2.5 gとする以外は、実施例3と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(比較例1)
ポリエチレンオキシドの使用量を49.0gとし、ジホスホリル化合物Aの使用量を1.0gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ポリエチレンオキシドの使用量を49.0gとし、ジホスホリル化合物Aの使用量を1.0gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
(比較例2)
ジホスホリル化合物Aを配合せず、ポリエチレンオキシドの使用量を50gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
ジホスホリル化合物Aを配合せず、ポリエチレンオキシドの使用量を50gとする以外は、実施例1と同様にしてゲル電解質及びポリマー電池を作製した。得られたゲル電解質の安全性及び限界酸素指数、並びに該ゲル電解質を用いたポリマー電池の初期放電容量、50サイクル後放電容量及び放電容量維持率を表1に示す。
表1から明らかなように、比較例のゲル電解質は、燃焼性乃至自己消火性で且つ限界酸素指数が低いのに対し、実施例のゲル電解質は、不燃性で且つ限界酸素指数が非常に高く、安全性が大幅に向上していた。
Claims (5)
- 前記ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート及びポリプロピレンオキシドの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー電池用ゲル電解質。
- 前記ポリマーの重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー電池用ゲル電解質。
- 前記不燃性ポリマー混合物及び前記非水電解液の少なくともいずれかが支持塩を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリマー電池用ゲル電解質。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー電池用ゲル電解質と、正極と、負極とを備えたポリマー電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007175457A JP2009016134A (ja) | 2007-07-03 | 2007-07-03 | ポリマー電池用ゲル電解質及びそれを備えたポリマー電池 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007175457A JP2009016134A (ja) | 2007-07-03 | 2007-07-03 | ポリマー電池用ゲル電解質及びそれを備えたポリマー電池 |
Publications (1)
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ID=40356802
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JP2007175457A Withdrawn JP2009016134A (ja) | 2007-07-03 | 2007-07-03 | ポリマー電池用ゲル電解質及びそれを備えたポリマー電池 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN116487707A (zh) * | 2023-06-19 | 2023-07-25 | 江苏天鹏电源有限公司 | 锂离子电池及其电解液 |
-
2007
- 2007-07-03 JP JP2007175457A patent/JP2009016134A/ja not_active Withdrawn
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CN116487707A (zh) * | 2023-06-19 | 2023-07-25 | 江苏天鹏电源有限公司 | 锂离子电池及其电解液 |
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