JP2009084428A - 多孔質フィルムの製造方法及び製造設備 - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔質フィルムを、所望の形状で安定して製造できる製造方法及び装置をローコストに提供する。
【解決手段】多孔質フィルム3は、ウェブ12上に高分子溶液をキャストしてキャスト膜を形成するキャスト工程、キャスト膜の中に液滴を形成する結露工程、キャスト膜中の液滴を蒸発させることによって空隙を形成する溶媒蒸発工程を行って製造される。ウェブ12は、その両側縁部分に厚肉部12a,12bが、この厚肉部12a,12bに隣接し、厚肉部12a,12bに沿って溶液貯留溝12c,12dが形成されている。溶液貯留溝12c,12d上に形成されるキャスト膜は、他の箇所より膜厚が厚いため、乾燥処理中も湿潤状態を保ち、高分子溶液を流動させるため、過剰に発生した水滴が溶液内を移動することができる。
【選択図】図2
【解決手段】多孔質フィルム3は、ウェブ12上に高分子溶液をキャストしてキャスト膜を形成するキャスト工程、キャスト膜の中に液滴を形成する結露工程、キャスト膜中の液滴を蒸発させることによって空隙を形成する溶媒蒸発工程を行って製造される。ウェブ12は、その両側縁部分に厚肉部12a,12bが、この厚肉部12a,12bに隣接し、厚肉部12a,12bに沿って溶液貯留溝12c,12dが形成されている。溶液貯留溝12c,12d上に形成されるキャスト膜は、他の箇所より膜厚が厚いため、乾燥処理中も湿潤状態を保ち、高分子溶液を流動させるため、過剰に発生した水滴が溶液内を移動することができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、多孔質フィルムの製造方法及び製造設備に関するものである。
近年、光学材料や電子材料の分野では、集積度の向上や情報量の高密度化、画像情報の高精細化といった要求がますます大きくなっている。そのため、それらの分野に用いられるフィルムにも微細な構造の形成(微細パターニング)が強く求められている。なお、このようなフィルムにおける微細な構造を、以下の説明において微細パターン構造と称する。また、再生医療分野の研究においては、表面に微細な構造を有する膜が、細胞培養する足場となる基材として有効である(例えば、特許文献1参照。)
フィルムの微細パターニングとしては、マスクを用いた蒸着法、光化学反応ならびに重合反応を用いた光リソグラフィー技術、レーザーアブレーション技術など種々の方法が実用化されている。
また、特殊な構造を有するポリマーの希薄溶液を高湿度下でキャストすることで、ミクロンスケールのハニカム構造を有するフィルムが得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなハニカム構造を有するフィルムに機能性微粒子を含有させたものは光学及び電子材料として用いられている。例えば、フィルム中に発光材料体を含有させることで、このフィルムは表示デバイスとして用いられる(例えば、特許文献3参照。)。
また、光学材料である偏光板にも微細パターニングが形成されているフィルムが用いられている。このようなフィルムとしては、例えば、モスアイ構造を有する反射防止機能を発現するフィルムがある。このフィルムは、サブミクロン〜数十ミクロンサイズの規則正しい微細パターニングが形成されている。その形成方法の中でも主流であるのは、光リソグラフィーを中心としたマイクロ加工技術を用いた版を作成し、その版の構造をフィルムに転写する方法である(例えば、特許文献4参照。)。
前記特許文献4に記載の方法はトップダウン方式と呼ばれ、この方法では上記のように、微細構造を決定する版を作製する。版の作製は、複雑でいくつもの工程を必要とし、コスト上昇を招くこととなる。また、大きな面積の版を製造することが困難であるという問題もある。そこで、微細な構造を自己会合的に形成することで、規則正しい微細構造を有する自己組織化を応用して、微細構造が形成される自己組織化構造体(ハニカム状多孔質フィルム)を作成するボトムアップ方式が提案されている。
上記のようなボトムアップ方式の製造方法では、気化可能な溶媒に、この溶媒に可溶な固体が溶解された溶液を支持体上にキャストしてキャスト膜を形成し、このキャスト膜の中に液滴を形成した状態で溶液を蒸発させることによって空隙を形成してハニカム状多孔質フィルムを製造している。このような製造方法では、支持体上に溶液をキャストする際に、溶液の粘性や界面張力等の力である程度の溶液厚さを保つことができるが、キャスト膜の厚さが安定せず、むらが生じてしまうことがあった。そこで、支持体の両側縁部または周縁部付近に厚肉部を形成し、この厚肉部の間に溶液をキャストすることによって、支持体上に形成されるキャスト膜の厚さを一定にすることが検討されている。
特開2001−157574号公報
特開2002−335949号公報
特開2003−128832号公報
特開2003−302532号公報
上記のように支持体の両側縁部に形成された厚肉部の間に溶液をキャストすると、溶液が一定の厚さで広がり、全面的に均等な膜厚のキャスト膜を形成することができる。しかしながら、このような構成でハニカム状多孔質フィルムを製造した場合、均等な膜厚で形成されたキャスト膜の中では、液滴が存在できる容積が常に一定となるため、キャスト膜の中で過剰に発生した液滴の行き場が無くなってしまう。これによって、行き場が無くなった液滴がパターン構造の正常を配列を乱してハニカム状多孔質フィルムの微細パターン構造に欠陥が生じることがある。なお、このような欠陥を防ぐために液滴の発生・成長を抑制すると、キャスト膜中の液滴が不足することとなり、構造パターンの配列不良や、孔が不足するという欠陥が生じてしまう。
また、キャスト膜中の液滴が不足、又は過剰に発生しないように、液滴の発生・成長過程で露点・風速・支持体温度などの雰囲気条件を精密に制御して最適化を図ることも考えられるが、欠陥の生じない雰囲気条件の範囲は非常に狭く、また条件を求める検証に手間が掛かったり、狭い範囲の雰囲気条件を実行しようとしても、その条件通りに装置を制御することが難しく製造が不安定になってしまうという問題がある。また、これらの雰囲気温度は、上記の欠陥が発生するだけではなく、液滴の大きさや液滴配列の規則性などに影響するため、多孔質フィルムの構造パターン自体にも変化が発生してしまうから、一定のパターン、孔の大きさ、及び孔の位置などからなる所望の形状の多孔質フィルムを安定して製造できる条件を探すのは非常に困難である。
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、所望の形状のパターン構造が形成された多孔質フィルムを安定して製造することが可能な多孔質フィルムの製造方法及び製造設備を低コストに提供することを目的とする。
本発明の多孔質フィルムの製造方法は、気化可能な溶媒に、前記溶媒に可溶な固体が溶解された溶液を支持体上にキャストしてキャスト膜を形成し、このキャスト膜の中に液滴を形成した状態とし、前記溶媒及び前記液滴を蒸発させることによって空隙を形成した多孔質フィルムの製造方法において、前記キャスト膜の中の前記溶媒及び前記液滴を蒸発させる際、前記溶媒を速く蒸発させる蒸発促進範囲と、この蒸発促進範囲よりも前記溶媒を遅く蒸発させて湿潤状態を保つ湿潤保持範囲とを形成することを特徴とする。なお、前記湿潤保持範囲は、前記キャスト膜の側縁又は周縁付近に位置していることが好ましい。
また、前記支持体は、前記キャスト膜が形成される表面のうち、前記湿潤保持範囲に応じた部分が、前記蒸発促進範囲よりも一段低く形成されており、前記キャスト膜は、前記湿潤保持範囲の膜厚が前記蒸発促進範囲よりも厚く形成されることが好ましい。さらにまた、前記蒸発促進範囲の膜厚をD1、前記湿潤保持範囲の膜厚をD2としたときに、1.2≦D2/D1≦20の条件を満たすことがさらに好ましい。
あるいは、前記キャスト膜に液滴を形成する際、前記湿潤保持範囲の表面における風速が前記蒸発促進範囲の表面における風速よりも遅くなる風速分布で前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることが好ましく、前記蒸発促進範囲に吹き付ける加湿風の風速をS1、前記湿潤保持範囲に吹き付ける乾燥風の風速をS2としたときに、1.2≦S1/S2≦20の条件を満たすことがさらに好ましい。あるいは、前記支持体を移動させながら前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることによって前記キャスト膜に液滴を形成し、且つ前記湿潤保持範囲の移動速度を前記蒸発促進範囲の移動速度よりも速く前記支持体を移動させることが好ましい。
さらにまた、前記キャスト膜に液滴を形成する際、湿潤保持範囲に応じた範囲の温度を、蒸発促進範囲よりも低くすることが好ましい。
請求項9記載の多孔質フィルムの製造設備は、気化可能な溶媒に、前記溶媒に可溶な固体が溶解された溶液を支持体上にキャストしてキャスト膜を形成し、このキャスト膜の中に液滴を形成した状態とし、前記溶媒及び前記液滴を蒸発させることによって空隙を形成する多孔質フィルムの製造設備において、前記キャスト膜の中の前記溶媒及び前記液滴を蒸発させる際、前記溶媒を速く蒸発させる蒸発促進範囲と、この蒸発促進範囲よりも前記溶媒を遅く蒸発させて湿潤状態を保つ湿潤保持範囲とを形成する蒸発調整手段を備えており、この蒸発調整手段によって前記湿潤保持範囲から前記蒸発促進範囲へ前記溶媒を流動させることを特徴とする。前記湿潤保持範囲は、前記キャスト膜の側縁又は周縁付近に位置することが好ましい。さらに、前記支持体は、前記キャスト膜が形成される表面のうち、前記湿潤保持範囲に応じた部分が、前記蒸発促進範囲よりも一段低く形成された溶液貯留溝を有しており、この支持体上にキャストするとき、前記溶液貯留溝の上面には膜厚を厚く、それ以外の範囲には膜厚を薄くキャスト膜を形成することが好ましい。
また、前記蒸発調整手段は、前記キャスト膜に加湿風を吹き付ける送風手段からなり、前記湿潤保持範囲の表面における風速を、前記蒸発促進範囲の表面における風速よりも遅くする風速分布で前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることが好ましい。あるいは、前記蒸発調整手段は、前記支持体を移動させる移動手段及び前記キャスト膜に加湿風を吹きつける送風手段からなり、前記湿潤保持範囲の移動速度を前記蒸発促進範囲の移動速度よりも速くして移動させながら、前記送風手段による加湿風の吹き付けを行うことが好ましい。
あるいは、前記蒸発調整手段は、前記キャスト膜に液滴を形成する際、湿潤保持範囲に応じた範囲の前記支持体の温度を、蒸発促進範囲に応じた前記支持体の温度よりも低くする温度調整手段であることが好ましい。
本発明によれば、キャスト膜の中の溶媒及び液滴を蒸発させる際、溶媒を速く蒸発させる蒸発促進範囲と、この蒸発促進範囲よりも溶媒を遅く蒸発させて湿潤状態を保つ湿潤保持範囲とを形成することによって湿潤保持範囲から蒸発促進範囲へ溶媒を流動させているので、所望の形状のパターン構造が形成された多孔質フィルムを安定して製造することができる。
本発明に係るフィルムの製造工程図を図1に示す。後述する高分子溶液をキャスト工程10により補強用シート状部材上にキャスト(流延)し、キャスト膜を形成するキャスト工程1。そのキャスト工程1後に、結露乾燥工程(液滴形成工程)(溶媒蒸発工程)2により、結露させて水の液滴つまり水滴を形成させ、この水滴をキャスト膜中に含有させる。なお、結露乾燥工程11については、後で詳細に説明する。高分子溶液の溶媒及び水滴を蒸発させてハニカム構造フィルム(多孔質フィルム)3を得る。機能性付与工程4では、ハニカム構造フィルム3に機能性物質を含有させるなどの機能性付与を行い、機能性フィルム5を得る。なお、キャスト膜から機能性フィルム5を得る間に、キャスト膜やハニカム構造フィルム3に光を照射する照射工程6があってもよい。その場合には、照射光として紫外線や電子線を用いることができる。
ハニカム構造フィルム3は高分子化合物を主たる成分として含む。高分子化合物としては、特に限定されず、用途等に応じて決定することができるが、非水溶性溶媒つまり疎水性溶媒に溶解するものが好ましく、例えば、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、アガロース、ポリ−2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリスルホンなどが好ましい。特に、生分解性を必要とする場合や、あるいは、コストや入手の容易さなどの理由からポリ−ε−カプロラクトンが好ましい。なお、疎水性とは親油性を意味することが一般的であるため、疎水性溶媒に溶解する高分子化合物を、以下の説明では親油性高分子化合物と称する。
前記親油性高分子化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態としてもよい。なお、これらの高分子化合物のうち、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
親油性高分子化合物だけでもハニカム構造フィルム3を形成することができるが、親油性高分子化合物に両親媒性の物質を添加することが好ましい。両親媒性物質とは、親水性をもつとともに親油性をももつ物質を意味する。このような両親媒性物質の中でも高分子化合物が好ましく、例としては、例えば両親媒性ポリアクリルアミド等がある。なお、親油性高分子化合物と両親媒性高分子化合物との混合比率は、特に限定されないが、好ましくは重量比で5:1〜20:1である。
両親媒性高分子化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、親油性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つもの、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。親油性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。親油性側鎖は、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
前記親油性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり、一概には規定できないが、ユニット比(親油性側鎖/親水性側鎖)は3/1〜1/3が好ましい。また、コポリマーの場合には、親油性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で親油性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
前記親油性高分子化合物及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
親油性高分子化合物及び両親媒性高分子化合物は、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)高分子化合物であってもよい。また、親油性高分子化合物、両親媒性高分子化合物とともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施してもよい。
親油性高分子化合物、両親媒性高分子化合物と併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。親油性高分子化合物、両親媒性高分子化合物が分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)化合物である場合には、その重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
上記の中でもエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。したがって、例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、その塗布液を透明な支持体上に塗布した後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化すると、反射防止フィルムを製造することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
なお、前記光ラジカル重合開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
高分子化合物を溶解させて高分子溶液を調製するための溶媒としては、クロロホルム, ジクロロメタン,四塩化炭素、シクロヘキサン、酢酸メチルなどが挙げられる。しかしながら、高分子化合物を溶解させることができる溶媒であれば特に限定されるものではない。また、キャストするときの溶液のポリマー濃度は、キャスト膜を形成できる濃度であれば良く、具体的には、0.1重量%以上30重量%以下の範囲であることが好ましい。0.1重量%未満であると、フィルムの生産性に劣り工業的大量生産に適さないおそれがある。また、30重量%を超える濃度であると、結露乾燥工程11において水滴の成長が十分に行われないうちに乾燥してしまうため、好ましい孔サイズをもつようなハニカム構造フィルムをつくることが困難になることがある。
図2はハニカム構造フィルム(多孔質フィルム)3を製造するフィルム製造設備10の概略図、図3は、キャスト膜からハニカム構造フィルム2ができるまでの過程をモデル的に図示した説明図、図4は、ハニカム構造フィルム2の概略図である。図2に示すように、本発明の第1実施形態のフイルム製造設備10では、送出機11から補強用シート状部材としてのウェブ12を送り出すとともに、高分子溶液供給装置13からスライドコータ14へ高分子溶液15を連続的に送液し、スライドコータ14から押し出した高分子溶液15をウェブ12上に塗布し、キャスト膜20を形成する。
本実施形態で使用するウェブ12の一例を、図5に示す。ウェブ12は、その両側縁部分に厚肉部12a,12bが形成され、この厚肉部12a,12bに隣接し、厚肉部12a,12bに沿って形成された2列の溶液貯留溝12c,12dを有する。厚肉部12a,12b及び溶液貯留溝12c,12dは、後述するキャスト膜20が形成される面に配されている。
キャスト膜20が形成されているウェブ12の搬送方向は、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。ハニカム構造フィルム3の孔間のピッチや孔サイズをより小さくするために、ウェブ12は、高分子溶液15の有機溶媒を吸収しやすい性質の素材から形成されていることがより好ましい。それら素材は、有機溶媒を吸収するものであれば特に限定されるものではない。例えば、高分子溶液15の主溶媒に酢酸メチルを用いている際には、フィルムの素材にセルロースアシレートを用いることが好ましい。
なお、本実施形態においては、ウェブ12としては、導電性を有する材料、例えば、銀、炭素、銅、ニッケル等からなるフィラーを含有する樹脂からウェブ12を形成することが好ましい。
高分子溶液供給装置13では、高分子溶液15がタンク21に入れられている。タンク21には攪拌翼を有する攪拌機22が備えられ、攪拌翼が回転することにより高分子溶液15は均一に混合される。高分子溶液15は、ポンプ24によりスライドコータ14に送られる。
ここで、高分子溶液15は、スライドコータ14に送られる前に予めろ過される。これにより、製造されるフィルムへの異物混入を防ぐことができる。ろ過は第1ろ過装置26と第2ろ過装置27とで実施される。このように複数のろ過装置を設けることができるときには、上流側の一方である第1ろ過装置26には、ハニカム構造フィルムの孔の径よりも大きな絶対ろ過精度(絶対ろ過孔径)をもつフィルタが備えられ、下流側の他方である第2ろ過装置27には、ハニカム構造フィルムの空隙よりも小さな絶対ろ過精度をもつフィルタが備えられることが好ましい。
第1ろ過装置26を用いることにより、ゲル状の異物を長期間除去することができる。そして、第2ろ過装置27を用いることにより、ゲル状異物の中でも小さなものや、凝集粉体、不純物等を除去することができる。ろ過孔径が小さいものほどより小さな異物を除去することができるが、そのようなフィルタのみの使用であるとフィルタの寿命は短い。そこで、ろ過孔径が大きな方で一度ろ過してから、ろ過孔径が小さな方でろ過することにより、ろ過孔径の小さなフィルタの寿命を長くすることができる。そして、以上のように、フィルタの絶対孔径を、ハニカム構造フィルムの孔の大きさを基準として選定することにより、ハニカム構造フィルムにおける規則的構造の形成を阻害する異物が除去され、均一な孔が規則的に配列したハニカム構造フィルムを得ることができるという効果がある。なお、高分子化合物と混合する前の溶媒について、第1,第2ろ過装置26,27と同様なろ過装置でろ過してもよい。
ウェブ12は、バックアップローラ31に巻き掛けられながらスライドコータ14へ搬送される。スライドコータ14には、減圧チャンバ33が設けられており、この減圧チャンバ33の減圧度を調整することによってスライドコータ14によるウェブ12への塗布が均一となるように高精度に制御することができ、且つ高速でキャスト膜20を形成することができ、生産性の高い塗布工程を行うことができる。また、支持体であるウェブ12の表面に凹凸がある場合でも、ウェブ12がバックアップローラ31に巻き掛けられている際に平滑化されるので、均一な塗布性に優れている。更に、ウェブ12に非接触で塗布を行うので、ウェブ12の表面を傷つけることなく、均一塗布が可能である。
本実施形態では、上述したようにウェブ12の両端部に厚肉部12a,12bが形成されているため、これらの厚肉部12a,12bの間に挟まれた空間にキャスト膜20が形成される。
ウェブ12上にキャスト膜20が形成されると、このキャスト膜20に対して結露乾燥工程(液滴形成工程)(溶媒蒸発工程)が行われる。このキャスト工程の後の結露乾燥工程については、図2と図3とを合わせて説明する。図3(a)に示すようにウェブ12上に形成されたキャスト膜20は、その表面温度(以下、膜面温度と称する)TL(℃)が0℃以上とされることが好ましい。膜面温度TLが0℃未満であると、キャスト膜20の中の水滴が凝固してしまい、そのため所望のサイズの孔が所望の様態でフィルム中に形成されないことがある。
結露乾燥工程が行われる流延室40の内部は、水滴をキャスト膜20の上に生じさせてこの水滴を成長させるための結露ゾーン41と、キャスト膜20に空隙を複数形成するために溶媒と水滴とを蒸発させるための乾燥ゾーン42とに区画されている。これらの各ゾーン41,42を経ることにより、キャスト膜20は自己組織化して所定の様態の空隙を有するハニカム構造層(多孔質層)8となる。結露ゾーン41には送風吸引機44が備えられ、この送風吸引機44は、風45をウェブ12上のキャスト膜20に送るとともに、風45を吸引する。送風吸引機44には、風の温度、湿度、風量と吸引力とを独立制御するための送風コントローラ(図示せず)が備えられており、送風条件を制御することにより水滴の生成及び成長が制御される。なお、水滴の成長とは、水滴が大きくなること、水滴の大きさの均一化が進むこと、水滴の大きさの変化に関わらず数が増えて細密に形成されることを意味する。送風吸引機44は、風を送る給気系で、風の温度と露点とを制御するとともに、塵埃度、つまり風の清浄度を保つためのフィルタを備える送風口とこれを排気する吸引口とを備える。送風口と吸引口とは、具体的には、図2に示すように送風口201a,202a,203aと吸引口201b,202b,203bとを有する。送風口201aからの風は吸引口201bから、送風口202aからの風は吸引口202bから、送風口203aからの風は吸引口203bからそれぞれ吸排気される。これにより、結露条件をキャスト膜の走行方向に沿って調整することができるので、水滴の成長の制御が容易となる。
送風吸引機44は、送風口と吸引口とをそれぞれ複数有する一体型の送風機であってもよいし、図2に示すように,送風口と吸引口とを備える複数の送風吸引ユニット201〜203が、キャスト膜20の走行方向に沿って配されたものであってもよい。なお、送風コントローラは、各送風吸引ユニット201〜203を独立して制御する。これにより、水滴の発生及び成長状態に応じて送風吸引条件を制御することができる。また、送風口と吸引口とがそれぞれキャスト膜の幅方向に複数分割されて、送風条件と吸引条件とを幅方向に並んだ各区画毎に独立制御できるような送風吸引ユニットを用いてもよい。これにより、キャスト膜の幅方向でも結露条件を制御することができる。なお、図2には3つの送風吸引ユニット201〜203が一体とされた送風吸引機44を示しているが、送風吸引ユニット数を含めた送風機の様態はこれに限定されるものではない。
乾燥ゾーン42には、乾燥機46が設けられている。乾燥機46はキャスト膜20に乾燥風47を送るとともに乾燥風47を吸引する。乾燥機46も、送風吸引機44と同様に、送風吸引機44は、風を送る給気系で、風の温度と露点とを制御するとともに、塵埃度、つまり風の清浄度を保つためのフィルタを備える送風口とこれを排気する吸引口とを備える。つまり、送風口と吸引口とは具体的には、送風口206a,207a,208a,209aと吸引口206b,207b,208b,209bとを有する。これにより、キャスト膜20の乾燥条件を調整することが容易となる。
キャスト膜20が乾燥ゾーン42に入ると、水滴の成長は止まる。そして、有機溶媒を蒸発させてから水滴を蒸発させる。したがって、有機溶媒としては、同温同圧下において水滴よりも蒸発速度が速いものが好ましい。有機溶媒と水滴との蒸発速度が同じであっても、高分子化合物との親和性に関して有機溶媒よりも水滴52の方が強い場合や、水滴52よりも弱い分子間力の有機溶媒を用いると、両者の蒸発を上記の順にすることと同様の効果が得られる。これにより、有機溶媒の蒸発に伴い水滴がキャスト膜20の内部に入り込むことがより容易になる。なお、水滴の蒸発は、有機溶媒が完全に蒸発してから開始されることが好ましいが、必ずしもこの様態でなくてもよく、キャスト膜20に含まれている有機溶媒のうち概ね0.1〜30%が蒸発したところで水滴が蒸発し始めてもよい。
なお、図2では、4つの送風吸引ユニット206〜209から構成されている乾燥機46を示しているが、送風吸引ユニット数はこれに限定されない。乾燥機46には、送風コントローラ(図示せず)が備えられ、この送風コントローラにより、乾燥風の温度、湿度、風量と吸引力とが独立して制御されるとともに、これらの各条件が送風吸引ユニット106〜109毎に独立制御される。乾燥機46についても、送風吸引機44と同様に、複数の送風吸引ユニットが組み合わされたものに代えて、送風口と吸引口とをそれぞれ複数有する一体型のものとされてもよい。また、送風口と吸引口とがそれぞれキャスト膜の幅方向に複数分割されて、送風条件と吸引条件とを幅方向に並んだ区画毎に独立制御できるような送風吸引ユニットを用いてもよい。これにより、キャスト膜の幅方向でも溶媒の蒸発条件と水滴の蒸発条件とを制御することができる。
送風吸引機44からの風45の露点TD1(℃)と、結露ゾーン41を通過するキャスト膜20の表面温度TL(℃)とは、0℃≦(TD1−TL)の条件を満たすように、少なくともいずれか一方が制御される。これにより、キャスト膜20の近傍を流れる風45の中の水蒸気を良好に水滴として発生させるとともに成長させることができる。より好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦80℃であり、さらに好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦30℃であり、最も好ましくは0℃≦(TD1−TL)≦10℃である。0℃未満であると結露がおきにくくなることがある。また、(TD1−TL)が80℃を超えるような条件とされると、結露する速度、つまり水滴発生速度が大きくなりすぎて、水滴の上にさらに水滴ができてしまい、ハニカム構造フィルム3の孔のサイズが不均一、つまり構造が不均一となってしまうことがある。また、風45の温度は特に限定されるものではないが、5℃以上100℃以下の範囲であることが好ましい。100℃を超えると、水滴がキャスト膜20内に入り込む前に、水蒸気として蒸発してしまうおそれがある。
結露ゾーン41に入る直前の膜面温度TLと、結露ゾーン41の直前の搬送路近傍の露点と、結露ゾーン41の直後の搬送路近傍の露点との各ばらつきは、いずれも±3℃以内であることが好ましい。
以下では、結露乾燥工程において、キャスト膜20に水滴が発生・成長し、ハニカム構造層が形成されるまでのプロセスを図3及び図4を用いて説明する。図3(a)に示すように結露ゾーン41で風45中の水分(モデル的に図示している)51は、キャスト膜20上で結露して水滴52となる。そして、図3(b)に示すように水分51は結露を進め、生じた水滴52を成長させる。有機溶媒は実際にはキャスト直後から蒸発し始めており、ウェブ12の温度と雰囲気温度によりその蒸発速度を制御する。この制御をするとともに、キャスト膜20の表面温度TLを所定の温度にして結露ゾーン41に送り込む。そして、乾燥ゾーン42では、キャスト膜20に乾燥風47が送風され、有機溶媒53がキャスト膜20より揮発する。この際、水滴52の蒸発もおこるが、有機溶媒は上述のように水滴52よりも速く蒸発する。
結露・乾燥ゾーン41・42の水滴発生過程(図3(a)に示す状態)及び水滴成長過程(図3(b)に示す状態)では、雰囲気条件(ウェブ12の温度や、雰囲気温度など)を制御することによって、水滴52の発生及び成長を進行させているが、これら雰囲気条件の最適範囲は非常に狭く、水滴52が過剰に発生することがある。そして、キャスト膜20に水滴52が過剰に発生した状態のまま乾燥ゾーン42に送り込まれると、水滴52が不規則な配列になって欠陥が発生するおそれがあるが、本実施形態では上述したようにウェブ12の両端部付近に溶液貯留溝12c,12dを形成しているため、キャスト膜20は、その両端部付近が湿潤保持範囲20a,20bとなり、それらを除く中央部分が蒸発促進範囲20cとなる。すなわち、溶液貯留溝12c,12dの上面に位置する湿潤保持範囲20a,20bはキャスト膜20の膜厚が厚く、それらを除く蒸発促進範囲20cは薄く形成される。これにより、蒸発促進範囲20c(膜厚が薄い部分)は乾燥が速く、湿潤保持範囲20a,20b(膜厚が厚い部分)は蒸発促進範囲20cよりも乾燥が遅くなる。よって、キャスト膜20が結露ゾーン41から乾燥ゾーン42へ送り込まれたとき、図3(c)に示すように、キャスト膜20の中に水滴52が過剰に発生・成長している場合でも、しばらくの間は湿潤保持範囲20a,20bが湿潤状態にあるため、両端部付近へ徐々に水滴52が移動し、規則的な配列のハニカム構造層8を形成することができる。なお、蒸発促進範囲20cの膜厚をD1、湿潤保持範囲20a,20bの膜厚をD2としたとき、1.2≦D2/D1≦20の条件を満たすことが好ましい。これによって、湿潤保持範囲20a,20bが確実に湿潤状態となり、暫くの間水滴52が移動することができるから、ハニカム構造層8の規則的な配列の形成を妨げることがない。
さらに、キャスト膜20の乾燥が進行すると図3(d)に示すようにキャスト膜20の水滴52から水分が水蒸気54として蒸発する。キャスト膜20から水滴52が蒸発すると、水滴52が占めていたエリアが孔55となり、ハニカム構造層(多孔質層)8(図4参照)が得られる。本実施形態では、上述したように、乾燥ゾーンにあるキャスト膜20の下層部が暫くの間、湿潤状態を保つことができるため、水滴52の移動が自由となり、キャスト膜20の蒸発促進範囲20cでは、水滴52が規則的に配列された状態で乾燥処理が施されることになる。よってキャスト膜20は、規則的に配列された空隙が形成され、ハニカム構造フィルム3が完成する。
ここで、ハニカム構造とは、小さな空隙が多数フィルム内部に形成されている構造を意味する。図4の(A)は本発明により得られるハニカム構造フィルム3の平面図の一部分、(B)は(A)のb−b線に沿う断面図で、(C)は(A)のc−c線に沿う断面図である。また、(D)は、別のハニカム構造フィルム9の断面図であるが、これの平面図は(A)と同様であるので略す。孔55は、図4(A)に示すようにハチの巣状にハニカム構造フィルム3を構成するハニカム構造層8の内部に形成される。そして、孔55は、図4(B)及び(C)に示すように、ハニカム構造層8の両面を突き抜けるように形成される場合もあるし、(D)に示すように片面側に窪みとして形成される場合もある。そして、この孔55の配列は、水滴の疎密の度合いや大きさ、形成する液滴の種類、乾燥速度等によって異なるものとなる。
本発明により製造されるハニカム構造フィルム3の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、隣接する孔55の中心間距離L2が0.05μm以上100μm以下であるようなハニカム構造フィルムを製造する場合に特に効果がある。
前記自己組織化によるハニカム構造フィルム3におけるハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの孔の周囲を複数(例えば、6つ)の孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。
ハニカム構造フィルム3の厚みは、孔径D1〜200μmが好ましく、高分子溶液のポリマー濃度を高めることにより、支持体側には孔が形成されない厚肉部分を形成することもできる。この場合には、前記厚肉部分の厚みは1〜500μmの範囲が好ましい。
本発明において、風45は、キャスト膜20に対して、ばらつきが±20°以内となるような角度で一方向から供給されることが好ましく、キャスト膜20に平行である追い風(並流)とされることが最も好ましい。風45を向流として送風すると、風45とキャスト膜20との相対速度を低い条件とする場合に風45の速度制御が難しく、キャスト膜20の露出面が乱れて平滑性を失うために、水滴52の成長が阻害されることがある。また、風45の送風速度は、キャスト膜20の移動速度、つまりウェブ12の走行速度との相対速度が0.01m/s以上10m/s以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05m/s以上5m/s以下の範囲であり、最も好ましくは0.1m/s以上1m/s以下の範囲である。前記相対速度が0.01m/s未満であると、水滴52が細密に配列して形成されないうちに、キャスト膜20が乾燥ゾーン42に搬送されるおそれがある。一方、前記相対速度が10m/sを超えると、キャスト膜20の露出面が乱れたり、結露が充分に進行しなかったりするおそれがある。
前記相対速度のばらつきは、前記相対速度の平均値に対して±20%以内であることが好ましい。この条件と風の条件とにより水滴52の様態を均一にする効果がより高まる。この相対速度の調整は、風45の速度とキャスト膜20の搬送速度との少なくともいずれか一方を調整することで実施することができる。
本発明において、キャスト膜20が結露ゾーン41を通過する時間は0.1秒以上1000秒以下とすることが好ましい。これにより、空隙が細密充填されるに十分な水滴52を十分に多数、均一に生じさせることができる。0.1秒未満であると水滴52が充分成長しないまま形成されるため所望の孔を形成することが困難となる、あるいは、細密な孔をフィルム中に細密に形成されないことがある。また、1000秒を超えると、水滴52のサイズが大きくなり過ぎハニカム構造のフィルムを得られないおそれがある。このようにキャスト膜20が結露ゾーン41を通過する時間を制御することにより、孔の大きさ等の様態を制御することができる。ハニカム構造フィルム3を連続ではなくバッチ式で製造する場合、あるいは長尺状ではなくシート状や小さな短冊状等に製造する場合には、上記の結露ゾーン41を通過する時間に代えて、結露させる環境下にキャスト膜を置く時間を制御すると同様な効果が得られる。
乾燥ゾーン42でキャスト膜20を乾燥する乾燥風47の送風速度も0.02m/s以上20m/s以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1m/s以上10m/s以下の範囲であり、最も好ましくは0.5m/s以上5m/s以下の範囲とすることである。0.02m/s未満であると、水滴52の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性がおちる場合がある。一方、20m/sを超えると水滴52の蒸発が急激に生じて、形成される孔55の形態が乱れるおそれがある。
乾燥風47の露点TD2(℃)と膜面温度TL(℃)とは、(TL−TD2)℃≧1℃の条件を満たすように、少なくとも何れか一方を制御することが好ましい。これにより、水滴52の成長を止めて、水滴52を水蒸気54として蒸発させることが可能となる。(TL−TD2)が1℃未満であるときには、水滴52の成長を止めることが確実にはできず、孔55のサイズの精度が低下することがある。また、乾燥ゾーン42では、80℃≧(TL−TD2)であることがより好ましい。(TL−TD2)が80℃を越えると、有機溶媒や水滴52の蒸発が急激になってしまい、規則的に並んでいた水滴52の配列や形状、サイズが乱れて均一なハニカム構造は発現されなくなる。
乾燥ゾーン42に入る直前の膜面温度TLと、乾燥ゾーン42の直前の搬送路近傍の露点と、乾燥ゾーン42の直後の搬送路近傍の露点との各ばらつきは、いずれも±3℃以内であることが好ましい。
キャスト膜20の乾燥は、2Dノズル(2次元ノズル)を備える乾燥機46で行う方法や、これに代えてまたは加えて、減圧乾燥法により行うことが可能である。減圧乾燥を行うことで、有機溶媒53と水滴52との蒸発速度をそれぞれ調整することが可能となる。これにより、有機溶媒53の蒸発と水滴52の蒸発とをより良好にし、水滴52をより良好にキャスト膜20の内部に形成することができるので、前記水滴が存在する位置に、大きさ、形状が制御された孔55を形成することができる。なお、前記2Dノズルとは、風を出す給気ノズル部材と、キャスト膜20近傍の空気を吸い込む排気用ノズル部材とをもつものである。この2Dノズルとしては、キャスト面全幅に渡り、均一に給気と排気とを行えるものが好ましい。風の露点とキャスト膜の表面温度TLとの差を80℃以内とすることにより、有機溶媒及び/または水分の急激な揮発を抑制でき、所望の形態のハニカム構造フィルム3を得ることができる。
また、膜面から3mm〜20mm程度離れた位置に、表面が冷却されその表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気や揮発有機溶媒を凝縮させ、膜面近傍の水分及び溶媒ガスの濃度が高くならないように制御することによりキャスト膜の乾燥を図る方法を適用することができる。以上のような乾燥方法のうち少なくともいずれかひとつの乾燥方法を適用することで、キャスト膜20の膜面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
また、送風吸引機44、乾燥機46の送風吸引ユニットの数を変更したり、送風吸引機44、乾燥機46の内部を複数のエリアに区画したりすることにより、ユニット毎あるいはエリア毎に異なる露点条件を設定したり、異なる乾燥条件を設定したりすることができる。これら条件を選択することで、孔55の寸法制御性の向上や孔均一性の向上を図ることができる。なお、送風吸引ユニットや前記エリアの数は特に限定されるものではないが、フィルムの品質と設備のコストの点から最適な組み合わせを決定する。
また、キャスト膜20に不純物が混入すると、ハニカム構造の形成が阻害される。そのため、送風口201a,202a,203a,206a,207a,208a,209aの塵埃度をクラス1000以下とすることが好ましい。そこで、送風吸引機44,乾燥機46の各ユニットには、給気系における埃等を除去するためのフィルタ(図示せず)が備えられ、ハウジング38内の空調を行うことが好ましい。これにより、ハニカム構造層(多孔質層)8中に不純物が混入するおそれが減少し、良好なハニカム構造フィルム3を得ることができる。
ここで、キャスト膜20の粘度をN1、水滴52の粘度をN2とする。結露ゾーン41にて液滴が形成され始めた後、乾燥ゾーン42で孔の様態が好適に形成される見込みがつくまでは、N1<N2とすることが好ましい。これにより、水滴52がキャスト膜20の中に入り込んで、空隙がより均一に形成されたハニカム構造フィルム3を得ることができる。上記の粘度条件を満たすためにもっとも簡易的な方法は、高分子溶液15を予め小さめの粘度に処方しておくことである。なお、キャスト膜20の粘度を低くなるように高分子溶液15を処方しても、はじめはN1<N2を満たすことができるが、その後、孔が好適に形成されないうちに、結露ゾーン41での冷却や乾燥ゾーン42での乾燥によりN1がN2より大きくなってしまうことがある。その場合には、一旦温度を上げる等によりN1を小さくして、一時的にでもN2より小さくするとよい。なお、このような粘度調整は、一度のみならず複数回実施してもよい。
乾燥が進行したハニカム構造フィルム3は、巻取機32により巻き取られる。なお、ハニカム構造フィルム3の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/min以上60m/min以下の範囲であることが好ましい。0.1m/min未満であると生産性に劣りコストの点から好ましくない。また、60m/minを超えると、ハニカム構造フィルムを搬送する際に、過大な張力が付与されて裂ける、あるいはハニカム構造が乱れる等の問題が発生することがある。以上の方法により、ハニカム構造フィルム3を連続して製造することができる。
なお、上記実施形態においては、ウェブ12の両端部付近に溶液貯留溝を2列形成しているが、溶液貯留溝の形状はこれに限るものではなく、図6に示すウェブ102のように、両側縁に形成された厚肉部102a,102bに沿って形成された溶液貯留溝102c,102dと、これらの溶液貯留溝102cの間を繋ぎ一定の間隔を置いて複数形成された溶液貯留溝102eとからなる梯子形状に形成するようにしてもよい。このようなウェブ102を用いて上記実施形態と同様の製造設備10でハニカム構造フィルムを製造すると、図7に示すように、矩形状に形成された複数の蒸発促進範囲105a(ハッチングで示す部分)と、その周辺を囲む梯子形状の湿潤保持範囲105bとからなるキャスト膜105が形成される。これによって、乾燥処理中に周囲の湿潤保持範囲105bから蒸発促進範囲105aへと溶液が流動するため、上記実施形態よりもさらに水滴がキャスト膜の下層部を移動しやすくなる。なお、上述したように蒸発促進範囲105aは、矩形状に形成されるため、この蒸発促進範囲105aを製品サイズ、あるいは次の工程で使用するサイズに合わせて形成するようにすればよい。
なお、上記実施形態では、連続的に高分子溶液12を流延することにより、長尺のハニカム構造フィルム3を製造することを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、高分子溶液を間欠的・断続的に流延して、シート状のハニカム構造フィルムを次々に製造する場合も含まれる。図8は、他の実施形態である。フィルム製造設備の要部概略図である。なお、図2と同じ作用の装置、部材については図2と同じ符号を付す。フィルム製造設備310は、シート状のハニカム構造フィルムを製造する設備であり、高分子溶液をシート状ウェブ112に流延する流延ゾーン304と、結露ゾーン41と、乾燥ゾーン42とを有する。流延ゾーン304内では、シート状ウェブ112が搬送されながら流延ダイ25から高分子溶液が流延され、キャスト膜115が形成される。そして、キャスト膜115が形成されたシート状ウェブ112は、結露ゾーン41に送られる。その後、水滴が形成されたキャスト膜115は、シート状ウェブ112により乾燥ゾーンに搬送される。このように、各ゾーンでの各処理をシート状ウェブ112単位で実施し、間欠的にシート状ウェブ112を搬送することにより、シート状のハニカム構造フィルムを製造することができる。
なお、幅方向の長さが上述した流延ダイ25よりも短い流延ダイを、シート状ウェブ112の幅方向に複数ならべて、幅が小さなキャスト膜を形成することもできる。さらに、流延ゾーン304におけるシート状ウェブ112の搬送を、より短い時間間隔で間欠的にすることにより、より小さなキャスト膜を支持体上に複数形成することもできる。また、流延ダイの高分子溶液12の流出口を幅方向で複数に仕切り、高分子溶液12を断続的に流延することにより、短冊状のハニカム構造フィルムを次々と製造することもできる。
本実施形態で使用するシート状ウェブを図9に示す。シート状ウェブ112は、矩形状に形成され、周縁部に矩形枠状の厚肉部112aが形成されており、この厚肉部112aの内側に隣接して溶液貯留溝112bが形成されている。このウェブ112を使用して上記の製造設備でキャスト膜を形成すると、図10に示すように、矩形状の蒸発促進範囲115a(ハッチングで示す部分)と、その周辺を囲む矩形枠状の湿潤保持範囲115bとからなるキャスト膜115が形成される。これによって、乾燥処理中に周囲の湿潤保持範囲115bから蒸発促進範囲115aへと溶液が流動するため、上記実施形態と同様に水滴がキャスト膜115の中で移動することができる。なお、蒸発促進範囲115aは製品サイズ、あるいは次の工程で使用されるサイズに合わせて形成すればよい。
上記実施形態においては、ウェブ12に溶液貯留溝を形成することによって、キャスト膜の側縁又は周縁付近に溶液の乾燥が遅くなる湿潤保持範囲が形成され、乾燥処理中も暫くの間は湿潤状態を保つため、キャスト膜の中で水滴が移動可能としているが、本発明の構成はこれに限るものではなく、上記実施形態とは別の手段で、溶液の乾燥を遅くする湿潤保持範囲を形成し、乾燥処理中の暫くの間湿潤状態を保持することができる構成であればよく、例えば、図11に示すフィルム製造設備120では、キャスト膜125の形成後、結露・乾燥ゾーン41,42に送られてきたときに、キャスト膜125に溶液を供給する溶液供給手部121を設けている。なお、図11においては、図2と同様の装置、部材については同じ符号を付して説明を省略する。溶液供給部121は、詳しくは図12に示すように、乾燥機46の上流側に位置し、キャスト膜125の両端付近(湿潤保持範囲、ドットパターンで示す部分)に高分子溶液を供給する。なお、溶液供給部121としては、少量の高分子溶液(キャスト膜125と同じ溶液)を供給する構成であればよく、例えば、上述した高分子溶液のタンク15に接続した供給管の先端に先細のノズルを設け、このノズルの先端から高分子溶液をキャスト膜125へ送り込むような構成でもよい。これによって、キャスト膜125の両端付近(湿潤保持範囲)125bの乾燥を、中央部分(蒸発促進範囲)125aよりも遅らせることが可能となり、湿潤保持範囲125bから蒸発促進範囲125aへ溶液が流れ込み、湿潤状態が暫くの間保たれた下層部を水滴が移動することができる。なお、この図12に示す例では、ウェブ(支持体)122として従来と同様のもの、すなわち、溶液貯留溝が無く、両側縁部の厚肉部122a,122bのみを形成したものを使用しているが、図11及び図12に示す製造設備に、上記実施形態と同様の溶液貯留溝を形成したウェブを組み合わせて使用してもよい。
また、図13に示す例では、ウェブ120にキャスト膜135が形成された後、結露・乾燥ゾーン41,42に送られてきたときに、キャスト膜135に吹き付ける乾燥風131の風速が幅方向で変化するように乾燥機130の制御を行う。なお、この図13に示す例では、図12に示す例と同様、両側縁部に厚肉部122a,122bが形成されたウェブ122を使用する。また、乾燥機130を除くその他の装置は上記実施形態のフィルム製造設備10と同様であり、説明を省略する。そして、乾燥機130は、図14の風速分布図に示すように、蒸発促進範囲135aでは、キャスト膜135に吹き付ける乾燥風135の風速を速くし、湿潤保持範囲135bに吹き付ける乾燥風の風速を蒸発促進範囲135aよりも遅くするように制御される。なお、図14に示す風速分布図は、ウェブ122及びキャスト膜135の進行方向Aと直交する幅方向B(図13参照)における風速分布を示している。これによって、湿潤保持範囲135bの乾燥を、蒸発促進範囲135bよりも遅らせることが可能となり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、蒸発促進範囲135bに吹き付ける乾燥風の風速(最大値)をS1、湿潤保持範囲に吹き付ける乾燥風の風速(最小値)をS2としたときに、1.2≦S1/S2≦20の条件を満たすことが好ましい。また、図13及び図14に示す例では、4列の蒸発促進範囲の間に、3列の湿潤保持範囲を形成しているが、蒸発促進範囲及び湿潤保持範囲の数はこれに限らず、キャスト膜の容積、製品サイズの大きさなどに応じて適宜変更してもよい。
さらにまた図15に示す例では、ウェブの移動速度、すなわち巻取機によるウェブの巻き取り速度を変更しながら、送風機によって加湿風を吹き付けて水滴の形成を行う。なお、この図15に示す例では、図13に示す例と同様、両側縁部に厚肉部122a,122bが形成されたウェブ122を使用する。また、巻取機140を除くその他の装置は上記実施形態のフィルム製造設備10と同様であり、説明を省略する。なお、巻取機140は、例えば巻取り軸140aを駆動するモータ(図示せず)の回転速度が制御されることによってウェブ122の巻き取り速度が変更される。そして、巻取機140では、キャスト膜145が形成された後、送風機44へ搬送されてきたウェブ122に対して、蒸発促進範囲145aが送風機44を通過するときには移動速度を遅く、湿潤保持範囲145bが送風機44を通過するときには蒸発促進範囲145aよりも移動速度を速くするように巻き取り速度が制御される。なお、この図15に示す例では、蒸発促進範囲145aと湿潤保持範囲145bとが、ウェブ122の搬送方向に沿って交互に形成されるように巻取機140の制御を行う。このように移動速度の制御を行うことによって、湿潤保持範囲145bの乾燥を蒸発促進範囲145aよりも遅らせることが可能となり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
あるいは、図16に示す例では、キャスト膜155が形成されるウェブ(支持体)122の表面温度を調整する温度調整部150を乾燥・結露ゾーン41・42に備えており、この温度調整部150によって、ウェブ122の表面温度を幅方向Bで変化を持たせることができる。温度調整部150としては、キャスト膜155の蒸発促進範囲155aに合わせて配置された電気抵抗線151と、この電気抵抗線151の温度を制御する制御回路152とを備える。電気抵抗線151からの熱が伝達されたキャスト膜155の蒸発促進範囲155aの温度が上昇し、電気抵抗線151が配置されていない湿潤保持範囲155bの温度よりも高くなる。これによって、キャスト膜155の湿潤保持範囲155bの乾燥を、蒸発促進範囲155aよりも遅らせることが可能となり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、キャスト膜155の幅方向で表面温度に変化を持たせる表面温度調整部150(温度調整手段)の構成としては上記のものに限らず、蒸発促進範囲に熱を伝達させて温度を上昇させる構成であればよく、例えばハロゲン照射器やレーザー照射器などを使用してもよい。
また、図17に示す例では、キャスト膜が形成されるウェブ(支持体)162の一部を疎水性支持体163で構成している。この疎水性支持体163は、例えば、PETフィルムから形成され、ウェブ162の搬送方向に沿って延びる帯状で且つ幅方向の略中央に配されており、その他の部分と一体に設けられている。さらに、ウェブ162は、両側縁に厚肉部162a,162bが形成されており、疎水性支持体163の両側方部、且つ厚肉部162a,162bの内側に沿って疎水性支持体163より一段低く形成された溶液貯留溝162c,162dを有する。このような構成のウェブ162を使用し、上記実施形態と同様の工程を経て、厚肉部162a,162bの間の位置にキャスト膜が形成されると、溶液貯留溝162c,162dに応じた位置が湿潤保持範囲となって湿潤状態を保ち、疎水性支持体163に応じた位置が蒸発促進範囲となるから、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となり、さらに、キャスト膜中に発生した水滴が沈みこみ、疎水性支持体163に接触する場合でも、疎水性支持体163の濡れ性によって、水滴52の形状を崩すことなくハニカム構造層8を形成することができる。
なお、ウェブ(補強用シート状部材)上に高分子溶液をキャスト(塗布)してキャスト膜を形成するキャスト工程の形態としては、上記で例示したスライドコータによるものに限らず、多層式のスライドコータを用いてもよい。これによって、複数の高分子溶液の流れを重ねてウェブ上にキャスト(塗布)することにより、ハニカム構造層の厚み方向における形態,物性などを変更することが可能となる。また、スライドコータに限らず、周知のエクストリュージョンコータによってキャスト工程を行ってもよい。
また、前記説明のように本発明においてキャスト法は、特に限定されるものではない。例えば、スライド法,エクストリュージョン法,バー法及びグラビア法などが挙げられる。
前記各方法で得られるハニカム構造フィルム(多孔質フィルム)は、機能性付与工程13(図1参照)によりさらに他の機能性が付与されて機能性フィルム14(図1参照)となる。例えば、サイズが小さく、ハニカム構造フィルムとの屈折率差が大きな微粒子を、上記各ハニカム構造フィルムに付与して機能性フィルムを得ることができる。このような機能性フィルムは、フォトニック結晶の作製用に、あるいはレーザ,光導波路などに用いることができる。また、微粒子として光励起、導電などにより発光するものを用いることもできる。この場合の微粒子としては、有機顔料,有機染料及び発光性希土類化合物が挙げられる。このような微粒子を付与した機能性フィルム14は、薄型ディスプレイなどの発光材料として用いることができる。なお、機能性付与工程は、ハニカム構造フィルムが得られた後に実施されることに代えて、または加えて、ハニカム構造フィルムを製造する過程で実施されてもよい。例えば、微粒子をハニカム構造フィルム中に含有させる場合には、高分子溶液中に予め微粒子を添加しておくことができる。
微粒子としては、光照射、磁場などにより磁性を有して保持できるものを用いることもできる。このような微粒子の付与により、記録・メモリ材料に適用できる機能性フィルムを得ることができる。また、微粒子として着色ボールやマイクロカプセルを用いることもできる。このような微粒子を付与した機能性フィルムは、ペーパライクディスプレイなどに用いることができる。
微粒子として、タンパク質、糖、DNAなどの生体材料と選択的に結合したり、化学反応するものを用いることもできる。このような微粒子を付与した機能性フィルムは、バイオチップに用いることができる。さらに、細胞培養用の基材としてハニカム構造フィルムを用いることができる。
1 キャスト工程
2 結露乾燥工程
3 ハニカム構造フィルム
10,120 製造設備
12,102,112,122,162 ウェブ(支持体)
20 キャスト膜
20a,105a,115a,125a,135a,145a,155a 蒸発促進範囲
20b,105b,115b,125b,135b,145b,155b 湿潤保持範囲
2 結露乾燥工程
3 ハニカム構造フィルム
10,120 製造設備
12,102,112,122,162 ウェブ(支持体)
20 キャスト膜
20a,105a,115a,125a,135a,145a,155a 蒸発促進範囲
20b,105b,115b,125b,135b,145b,155b 湿潤保持範囲
Claims (14)
- 気化可能な溶媒に、前記溶媒に可溶なポリマーが溶解された溶液を支持体上にキャストしてキャスト膜を形成し、このキャスト膜の中に液滴を形成した状態とし、前記溶媒及び前記液滴を蒸発させることによって空隙を形成する多孔質フィルムの製造方法において、
前記キャスト膜の中の前記溶媒及び前記液滴を蒸発させる際、前記溶媒を速く蒸発させる蒸発促進範囲と、この蒸発促進範囲よりも前記溶媒を遅く蒸発させて湿潤状態を保つ湿潤保持範囲とを形成することを特徴とする多孔質フィルムの製造方法。 - 前記湿潤保持範囲は、前記キャスト膜の側縁又は周縁付近に位置することを特徴とする請求項1記載の多孔質フィルムの製造方法。
- 前記支持体は、前記キャスト膜が形成される表面のうち、前記湿潤保持範囲に応じた部分が、前記蒸発促進範囲よりも一段低く形成されており、前記キャスト膜は、前記湿潤保持範囲の膜厚が前記蒸発促進範囲よりも厚く形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の多孔質フィルムの製造方法。
- 前記蒸発促進範囲の膜厚をD1、前記湿潤保持範囲の膜厚をD2としたときに、
1.2≦D2/D1≦20
を満たすことを特徴とする請求項3記載の多孔質フィルムの製造方法。 - 前記キャスト膜に液滴を形成する際、前記湿潤保持範囲の表面における風速が前記蒸発促進範囲の表面における風速よりも遅くなる風速分布で前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることを特徴する請求項1ないし4いずれか記載の多孔質フィルムの製造方法。
- 前記蒸発促進範囲の表面に吹き付ける加湿風の風速をS1、前記湿潤保持範囲の表面に吹き付ける加湿風の風速をS2としたときに
1.2≦S1/S2≦20
を満たすことを特徴とする請求項5記載の多孔質フィルムの製造方法。 - 前記支持体を移動させながら前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることによって前記キャスト膜に液滴を形成し、且つ前記湿潤保持範囲の移動速度を前記蒸発促進範囲の移動速度よりも速く前記支持体を移動させることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の多孔質フィルムの製造方法。
- 前記キャスト膜に液滴を形成する際、湿潤保持範囲の温度を、蒸発促進範囲よりも低くすることを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の多孔質フィルムの製造方法。
- 気化可能な溶媒に、前記溶媒に可溶なポリマーが溶解された溶液を支持体上にキャストしてキャスト膜を形成し、このキャスト膜の中に液滴を形成した状態とし、前記溶媒及び前記液滴を蒸発させることによって空隙を形成する多孔質フィルムの製造設備において、
前記キャスト膜の中の前記溶媒及び前記液滴を蒸発させる際、前記溶媒を速く蒸発させる蒸発促進範囲と、この蒸発促進範囲よりも前記溶媒を遅く蒸発させて湿潤状態を保つ湿潤保持範囲とを形成する蒸発調整手段を備えており、この蒸発調整手段によって前記湿潤保持範囲から前記蒸発促進範囲へ前記溶媒を流動させることを特徴とする多孔質フィルムの製造設備。 - 前記湿潤保持範囲は、前記キャスト膜の側縁又は周縁付近に位置することを特徴とする請求項1記載の多孔質フィルムの製造設備。
- 前記支持体は、前記キャスト膜が形成される表面のうち、前記湿潤保持範囲に応じた部分が、前記蒸発促進範囲よりも一段低く形成された溶液貯留溝を有しており、この支持体上にキャストするとき、前記溶液貯留溝の上面には膜厚を厚く、それ以外の範囲には膜厚を薄くキャスト膜を形成することを特徴とする請求項9又は10記載の多孔質フィルムの製造設備。
- 前記蒸発調整手段は、前記キャスト膜に加湿風を吹き付ける送風手段からなり、前記湿潤保持範囲の表面における風速を、前記蒸発促進範囲の表面における風速よりも遅くする風速分布で前記キャスト膜に加湿風を吹き付けることを特徴とする請求項9ないし11ずれか記載の多孔質フィルムの製造設備。
- 前記蒸発調整手段は、前記支持体を移動させる移動手段及び前記キャスト膜に加湿風を吹きつける送風手段からなり、前記湿潤保持範囲の移動速度を前記蒸発促進範囲の移動速度よりも速くして移動させながら、前記送風手段による加湿風の吹き付けを行うことを特徴とする請求項9ないし11いずれか記載の多孔質フィルムの製造設備。
- 前記蒸発調整手段は、前記キャスト膜に液滴を形成する際、湿潤保持範囲に応じた範囲の前記支持体の温度を、蒸発促進範囲に応じた前記支持体の温度よりも低くする温度調整手段であることを特徴とする請求項9ないし13いずれか記載の多孔質フィルムの製造設備。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007255826A JP2009084428A (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 多孔質フィルムの製造方法及び製造設備 |
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JP2007255826A JP2009084428A (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 多孔質フィルムの製造方法及び製造設備 |
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JP2007255826A Pending JP2009084428A (ja) | 2007-09-28 | 2007-09-28 | 多孔質フィルムの製造方法及び製造設備 |
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-
2007
- 2007-09-28 JP JP2007255826A patent/JP2009084428A/ja active Pending
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