図1のように、多孔質フィルム製造工程10は、キャスト工程11と、判別工程12と、水滴形成成長工程13と、水滴蒸発工程14とを有する。そして、多孔質フィルム製造工程10により、高分子溶液(以下、溶液と称する)15から、多孔質フィルム16を製造することができる。
図2(A)のように、キャスト工程11では、溶液15(図1参照)を支持体21上にキャストし、フィルム状のキャスト膜22を形成する。この溶液15は、多孔質フィルム16の原料となるポリマーを溶媒に溶解することにより得られる。溶液15のキャストの方法は、静置した支持体の上に溶液を載せて塗り広げる方法(以下、バッチ式と称する)と、走行する支持体上に溶液を流延ダイから流出する方法とがあり、本発明ではいずれの方法も用いることができる。一般的に、前者は少ない生産量で多品種をつくる場合に適し、後者は大量生産に適する。なお、後者の方法において、流延ダイからの溶液の流出を連続或いは断続的に行うことにより、長尺の多孔質フィルム、或いは、所定長さの多孔質フィルムを連続して製造することができる。
判別工程12では、キャスト膜22が水滴形成成長工程13に適しているか否かを判別する。判別工程12の詳細は後述する。
図2(B)及び図2(C)のように、水滴形成成長工程13では、キャスト膜22の露出面22aに、溶媒の蒸発及び結露を主たる目的として、所望の条件に調節された空気(以下、湿潤空気と称する)400をあてる。これにより、キャスト膜22に含まれる溶媒23が蒸発しながら、結露により露出面22aに水滴25が形成し、或いは成長する。溶媒23の蒸発により、キャスト膜22中の溶液15の流動性が失われつつ、水滴25は、キャスト膜22に潜り込む。なお、水滴形成成長工程13において、溶媒の蒸発と露出面22aでの水滴25の形成とを同時に開始させる、または一方を先に開始する、いずれのケースでも良い。
そして、図2(D)のように、水滴25が所望の寸法になったところで、水滴蒸発工程14を行う。水滴蒸発工程14では、水滴の蒸発を主たる目的として、所望の条件に調節された空気(以下、乾燥空気と称する)410をあて、溶媒23が十分に除去されたキャスト膜22に入り込んでいた水滴25を蒸発させる。水滴25の蒸発により、キャスト膜22から多孔質フィルム16を生成することができる。なお、キャスト膜22の中に溶媒23が残留している場合には、できるだけ多くの溶媒23を蒸発させた後に水滴25を蒸発させるような条件とする。この条件として、例えば、水よりも沸点の低い化合物を溶媒として用いる、或いは、キャスト膜22の雰囲気に含まれる水や溶媒の蒸気圧を所望の範囲に調節する、などが挙げられる。なお、支持体21が不要なものであれば、多孔質フィルム16の形成後または形成中に支持体21を剥がしてもよい。
図3に示すように、多孔質フィルム製造工程10(図1参照)により得られる多孔質フィルム16には、非常に多くの孔31が密に形成される。孔31は、図3(A)に示すように、ハチの巣状、いわゆるハニカム構造となるように多孔質フィルム16上に配列する。そして、図3(B)及び(C)に示すように、孔31は、多孔質フィルム16の両面を突き抜けるように形成される。なお、図3(D)のように、孔31の代わりに、窪み33aが片面側に形成される多孔質フィルム33も本発明の多孔質フィルムに含まれる。
そして、この孔31の配列は、単位面積当たりに形成される水滴の数や水滴の大きさ、形成する水滴の種類、乾燥速度、溶液の残留溶媒量、水滴形成成長工程13における水滴成長度合いに対する溶媒23の蒸発のタイミング等によって異なるものとなる。本発明により製造される多孔質フィルム16の形態は特に限定されるものではないが、本発明は、例えば、多孔質フィルム16の厚みL1が0.05μm以上、孔31の径D1が0.05μm以上、孔31の形成ピッチL2が0.1μm以上120μm以下であるような多孔質フィルムを製造する場合に特に効果がある。
ハニカム構造とは、上記のように、一定形状、一定サイズの孔が連続かつ規則的に配列している構造を意味する。この規則配列は単層の場合には二次元的であり、複層の場合は三次元的にも規則性を有する。この規則性は二次元的には1つの孔の周囲を複数(例えば、6つ)の孔が取り囲むように配置され、三次元的には結晶構造の面心立方や6方晶のような構造を取って、最密充填されることが多いが、製造条件によってはこれら以外の規則性を示すこともある。なお、同一平面上において、1つの孔の周囲に形成される孔の数は、6個に限らず、3〜5個或いは7個以上でも良い。
次に、図4に、原料となるポリマーと溶媒とを含む溶液15から多孔質フィルム38を製造するフィルム製造設備40の概略図を示す。フィルム製造設備40は、溶液15を貯留するタンク41と、タンク41に設けられる攪拌翼41aと、流延室42と、タンク41に貯留する溶液15を流延室42に送液するポンプ43と、流延室42から送り出された多孔質フィルム38を巻き取る巻取機44とを備える。また、タンク41には、ジャケット41bが設けられる。ジャケット41bに、所定の温度に調節された伝熱媒体を送ることにより、タンク41内の溶液15の温度を所定の範囲内で略一定に保持することができる。
流延室42は、第1ゾーン51〜第3ゾーン53を有する。第1ゾーン51では、キャスト工程11、判別工程12、水滴形成成長工程13が行われ、第2ゾーン52では、水滴蒸発工程14が行われ(図1参照)、第3ゾーン53では、各工程11〜14を経たキャスト膜が、支持体から剥ぎ取られ多孔質フィルム38となって流延室42送り出される。
流延室42には、回転ローラ55,56が設けられる。流延バンド57は、回転ローラ55、56に掛け渡される。回転ローラ56が、図示しない駆動部と接続する。この駆動部により、回転ローラ56は回転駆動し、回転ローラ56の回転により、流延バンド57は、無端で第1ゾーン51〜第3ゾーン53を順次走行する。なお、図示しない駆動部は、回転ローラ55でなく、回転ローラ56に接続し、回転ローラ56を回転駆動させてもよい。
流延バンド57の搬送方向が水平方向に対して±10°以内となるように調整されていることが好ましい。同様に、搬送方向に略直交する幅方向における流延バンド57の搬送方向も、水平方向に対して±10°以内とすることが好ましい。搬送方向、幅方向における流延バンド57の傾きを調整することにより、水滴形成成長工程13にて形成される水滴25(図1、及び図2参照)の形態を調整することができる。
更に、第1ゾーン51には、流延ダイ60と、湿潤空気供給機61とが設けられ、第2ゾーン52には、乾燥空気供給機64が設けられ、第3ゾーン53には、剥取ローラ66が設けられる。流延ダイ60は、流延バンド57の上部近傍に設けられ、ポンプ43を介してタンク41と接続する。タンク41から送られた溶液15は、流延ダイ60により、流延バンド57上に流出し、流延バンド57の表面57a上にキャスト膜68を形成する。剥取ローラ66は、流延バンド57からキャスト膜68を多孔質フィルム38として剥ぎ取り、巻取機44へ送る。
流延ダイ60に設けられるスリットの内壁面の仕上げ精度は表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下のものを用いることが好ましい。また、スリットを通過する溶液15の温度を、所定の範囲内で略一定に保持するために、流延ダイ60に温調機(例えば、ヒータ,ジャケットなど)を取り付けることが好ましい。更に、スリットのクリアランスの平均値が、自動調整により0.05mm〜3.5mmの範囲で調整可能なものを用いることが好ましい。そして、厚み調整ボルト(ヒートボルト)を所定の間隔で、流延ダイ60に設けることが好ましい。キャスト膜68の膜厚xの調節方法としては、ポンプ43の送液量、または図示しない厚み計(例えば、赤外線厚み計)のプロファイルに基づいて、フィードバック制御を行い、クリアランスを所定の値に調節しても良い。
図5のように、湿潤空気供給機61は、キャスト膜68の露出面68aと対向するように設けられた送風口71と吸引口72と赤外放射温度計73とを有する。赤外放射温度計73は、キャスト膜68の露出面68aの温度T1を計測する。赤外放射温度計73は、1つに限らず、複数設けてもよい。複数の赤外放射温度計73を設ける場合には、例えば、キャスト膜68の搬送方向または、搬送方向に垂直な方向に並べてもよい。
制御部80は、湿潤空気供給機61、温調機75と接続する。制御部80は、送風口71から所定の条件に調節された湿潤空気400を送り出す送風処理の開始、停止、及び、吸引口72近傍の湿潤空気400等を吸引する吸引処理の開始、停止をそれぞれ行う。また、制御部80は、赤外放射温度計73が計測した露出面68aの温度T1を読み取りつつ、湿潤空気400の温度TA1、露点TW1、溶媒の凝縮点TY1を、独立して、所望の範囲で略一定に調節する。更に、制御部80は、回転ローラ55,56に取り付けられている温調機75を介して、回転ローラ55,56の温度を調整し、流延バンド57の表面57aの温度T3を所定の範囲に略一定に調節する。温度調整の方法としては、回転ローラ55,56の内部に液流路を設け、その液流路に伝熱媒体を送液することで調整する方法などが挙げられる。
図4のように、乾燥空気供給機64は、露出面68aと対向するように設けられた送風口及び吸引口と赤外放射温度計とを有する。乾燥空気供給機64の構造は、湿潤空気供給機61と同様なので詳細の説明を省略する。図示しない制御部により、所定の条件に調節された乾燥空気410を露出面68aにあてて、水滴蒸発工程14を行う。
次に、多孔質フィルム製造設備40における、多孔質フィルム製造工程10(図1参照)の詳細について説明する。
溶液15がタンク41に入れられている。攪拌翼41aが回転することで、溶液15を均一に混合している。タンク41内の溶液15の温度は、0℃以上50℃以下の範囲で略一定となるように保持される。ポンプ43は、タンク41から流延ダイ60へ溶液15を送る。流延バンド57は、回転ローラ55、56の駆動により、所定の速度で、走行する。温調機75より、流延バンド57の表面57aの温度T3は、略一定になるように保持される。
表面57aの温度T3についての好ましい範囲の下限値は、水の凝固点以上、すなわち、1気圧下では0℃以上とすることが好ましい。一方、表面57aの温度T3の上限値は、溶液15に含まれる溶媒の沸点YBP(℃)以下とすることが好ましく、[YBP−3](℃)以下とすることがより好ましい。これにより、露出面68a上で結露した水が凝固することも無く、また溶液15の溶媒が急激に蒸発することが抑制されるため、形状、特に表面の平滑性が優れる多孔質フィルム38を得ることができる。
更に、表面57aの温度T3の分布を、キャスト膜68の幅方向における略均一にすることが好ましい。これにより、キャスト膜68の幅方向における露出面68aの温度T1の分布を略均一にすることができる。キャスト膜68の幅方向の温度分布を減少させることにより、多孔質フィルム38の孔の配列の異方性を抑制することができるので、均質な多孔質フィルム38を製造することができる。具体的には、表面57aの温度T3の分布を±3℃以内とすることが好ましい。これにより、キャスト膜68の幅方向における露出面68aの温度T1の分布を±3℃以内とすることができる。
第1ゾーン51では、キャスト工程11、判別工程12、水滴形成成長工程13が行われ、第2ゾーン52では、水滴蒸発工程14が行われる。
キャスト工程11では、溶液15が、流延ダイ60に設けられたスリットを通過し、流出口から流延バンド57上に流出する。流延ダイ60に設けられた温調機により、スリット、流出口を通過する溶液15の温度T4は、0℃以上50℃以下の範囲で略一定となるように保持される。そして、流延バンド57上に流出した溶液15は、キャスト膜68を形成する。そして、流延バンド57の走行により、キャスト膜68は、各ゾーン51〜53へ順次搬送される。なお、|T1−T2|を所定の範囲に保持するために、|T3−T4|の値を30℃以下にすることが好ましく、20℃以下にすることがより好ましく、10℃以下にすることが特に好ましい。
判別工程12では、制御部80による判別処理が行われる。判別処理の詳細については後述する。
水滴形成成長工程13では、制御部80は、湿潤空気400の温度TA1、露点TW1、溶媒の凝縮点TY1をそれぞれ、所定の範囲内で略一定になるように調節する。湿潤空気供給機61が、制御部80の制御の下、所定の条件に調節された湿潤空気400を、送風口71を介して、キャスト膜68の露出面68aにあてつつ、吸引口72を介して当該湿潤空気400を回収する。
湿潤空気400の温度TA1は、5℃以上100℃未満であることが好ましい。湿潤空気400の温度TA1が5℃未満であると、液、特に水の蒸発が生じ難く、形状が良好な多孔質フィルム38を得ることができないおそれがある。また、湿潤空気400の温度TA1が100℃を超えると、キャスト膜68内に水滴が生じる前に、水蒸気として蒸発してしまうおそれがある。なお、キャスト膜68における溶液15の対流を抑えるために、|T1−TA1|の値を40℃以下にすることが好ましく、30℃以下にすることがより好ましく、20℃以下にすることが特に好ましい。
(結露条件)
湿潤空気400の露点TW1とキャスト膜68の露出面68aの温度T1との差、すなわち(TW1−T1)の値が、0℃以上であることが好ましく、0℃以上80℃以下であることがより好ましく、5℃以上60℃以下が更に好ましく、10℃以上40℃以下が特に好ましい。(TW1−T1)の値が0℃未満であると、結露が生じ難くなることがあり、80℃を超えると、結露と乾燥とが急峻となり、孔寸法制御やその均一化することが困難となることがある。
湿潤空気400における溶媒の凝縮点TY1は、少なくとも、露出面68aの温度T1よりも低くする。(T1−TY1)(℃)の値が、大きくなるほど、溶媒がキャスト膜68から蒸発しやすくなるためである。
湿潤空気400の送風向きは、キャスト膜68の搬送方向と平行な流れ(並流)の追風とする。湿潤空気400を向流として送風すると、キャスト膜68の露出面68aに乱れが生じて、水滴の成長が阻害されるおそれがある。また、湿潤空気400の送風速度は、キャスト膜68の移動速度との相対速度が0.02m/s以上2m/s以下が好ましく、0.05m/s以上1.5m/s以下がより好ましく、0.1m/s以上1m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.02m/s未満であると、露出面68a上の水滴がキャスト膜68中で充分に成長しないままキャスト膜68が第2ゾーン52に搬送されるおそれがある。また、2m/sを超えると、キャスト膜68の露出面68aに乱れが生じる、或いは、結露や水滴の成長が充分に進行しないおそれがある。
キャスト膜68が第1ゾーン51を通過する時間は0.1秒以上1000秒以下とすることが好ましい。前記通過時間が0.1秒未満であると、キャスト膜68に形成した水滴が充分成長しないまま蒸発してしまうため、所望の寸法の孔を形成することが困難となることがあり、1000秒を超えると、水滴の寸法が大きくなり過ぎ、微細孔を有する多孔質フィルム38を得られないおそれがある。
水滴蒸発工程14では、図示しない制御部は、乾燥空気410の温度TA2、露点TW2、溶媒の凝縮点TY2をそれぞれ、所定の範囲内で略一定になるように調節する。そして、乾燥空気供給機64が、制御部の制御の下、調節された乾燥空気410をキャスト膜68の露出面68aにあてつつ、当該乾燥空気410を回収する。
(乾燥条件)
キャスト膜68の露出面68aの温度T1と乾燥空気410の露点TW2との差、すなわち(T1−TW2)の値が、1℃以上であることが好ましい。これにより、第2ゾーン52でキャスト膜68における水滴の成長を停止しつつ、水滴を水蒸気として蒸発させることが可能となる。
第2ゾーン52でキャスト膜68を乾燥する乾燥空気410の送風速度は、0.02m/s以上20m/s以上が好ましく、0.1m/s以上10m/s以下がより好ましく、0.5m/s以上5m/s以下が更に好ましい。前記送風速度が0.02m/s未満であると、水滴からの水分の蒸発が充分に進行しないおそれがあり、生産性にも劣ることがあり、20m/sを超えると、水滴から水分の蒸発が急激に生じて、形成される孔の形状が乱れるおそれがある。
乾燥が進行したキャスト膜68は、剥取ローラ66で支持しながら流延バンド57から剥ぎ取られ、多孔質フィルム38となって巻取機44により巻き取られる。なお、多孔質フィルム38の搬送速度は、特に限定されるものではないが、0.1m/分以上60m/分以下であることが好ましい。前記搬送速度が0.1m/分未満であると、生産性に劣りコストの点から好ましくない。一方、60m/分を超えると、多孔質フィルム38を搬送する際に、過大な張力が付与され裂け、形成されたハニカム構造が乱れる、などの不良の発生原因となる。以上の方法により多孔質フィルム38を連続して製造することができる。なお、溶液15を間欠的に、すなわち断続的に、流延ベルト57上にキャストすることにより、得られる多孔質フィルム38の長さをより短くするように製造することもできる。
(判定処理)
次に判別処理の詳細について説明する。制御部80は、キャスト膜68が、(式1)を満足するか否かの判別処理を行う。判別処理にて、当該キャスト膜68が式1を満足すると判別した場合には、当該キャスト膜68に水滴形成成長工程13を行う。一方、当該キャスト膜68が(式1)を満足しないと判別した場合には、当該キャスト膜68が(式1)を満足すると判別されるまで、水滴形成成長工程13を行わずに、繰り返し判別処理を行う。
(式1) Ra=(g・β・x3 ・|T1−T2|)/(ν・α)<5000
(ただし、重力加速度をg、露出面68aの温度をT1、流延バンド57の表面57aと接するキャスト膜68の支持面68bの温度をT2、キャスト膜68の厚さをx、キャスト膜68における溶液15の熱膨張率、動粘性率及び温度伝導度を、β、ν、αとする。)
(式1)において、重力加速度g、キャスト膜68における溶液15の熱膨張率β及び温度伝導度αは、各工程において略一定であるため、少なくとも、変数T1、T2、x、νの値が検出できれば、制御部80は式1に基づく判定処理を行うことができる。
ここで、制御部80は、赤外放射温度計73を介して、第1ゾーン51におけるキャスト膜68の露出面68aの温度T1を検出することができる。また、温調機75を介して調節される流延バンド57の表面57aの温度T3を、表面57aと接するキャスト膜68の支持面68bの温度T2としてもよい。
キャスト膜68の厚さxは、流延ダイ60のスリットのクリアランス等の調整により、所定の範囲に調節することができる。また、溶液15の動粘性率νは、溶液15に含まれるポリマーや、溶媒などの組成や残留溶媒量ZY等から調節することができる。そして、各工程12〜13における、キャスト膜68の厚さxや残留溶媒量ZYの推移は、各工程12〜13の製造実験から予め求めることができる。なお、残留溶媒量ZYとは、キャスト膜68に残留する溶媒量を乾量基準で示したものであり、対象のフィルム等からサンプルを採取し、このサンプルの質量をx、サンプルを乾燥した後の質量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で表される。
本発明では、判別工程12を行い、式1を満足する条件、すわなち、キャスト膜68における溶液15の対流が一定量まで抑えられたときに、水滴形成成長工程13を行うため、溶液15の対流によって生ずる水滴の形成ピッチのばらつきを抑えることが可能となる。したがって、本発明によれば、形成ピッチが均一の孔を有する多孔質フィルム38を容易に製造することができる。なお、(式1)では、レイリー数Raが5000未満であることが、水滴形成成長工程13を行う条件となっているが、当該条件はレイリー数Raが2000未満であることが好ましく、レイリー数Raが1500未満であることがより好ましい。
多孔質フィルムの製造工程10(図1参照)では、水滴蒸発工程14の前に、水滴が露出面68a上を一定の形成ピッチで形成すること、または、露出面68a上に形成された水滴が、形成ピッチがより均一になるように再配列することが望まれる。前者については、湿潤空気400の条件や流延バンド57の温度などの条件により調節することが可能であるが、後者については、キャスト膜68中の溶液15の流動性を確保する必要がある。
溶液15の流動性を確保するため、溶液15のポリマー濃度は、溶液製膜方法等に用いられる高分子溶液と比較して、低い。ポリマー濃度が低い溶液15は、粘度が低くなるため、対流が起こりやすくなる。更に、溶液15のポリマー濃度の低くなると、水滴形成成長工程13におけるキャスト膜68の膜厚xが厚くなるため、やはり対流が起こりやすくなる。したがって、本発明のような多孔質フィルムの製造方法における、キャスト膜68内の溶液15のレイリー数Raは、溶液製膜方法等におけるフィルムに比べ、大きくなり、キャスト膜68における溶液15の対流がより顕著になる傾向にある。
水滴形成成長工程13におけるキャスト膜68の膜厚xは、300μm以上であることが好ましく、350μm以上2000μm以下であることが好ましい。更に、水滴形成成長工程13における溶液15の残留溶媒量が乾量基準で、400質量%以上であることが好ましく、500質量%以上5000質量%以下であることが好ましい。
したがって、微細孔の形成のための水滴を、キャスト膜68の露出面68aに形成する多孔質フィルム製造工程10(図1参照)では、水滴形成成長工程13の前に判別工程12を行う本発明の意義は大きく、均一に配列した孔を有する多孔質フィルム38を製造することができる。
上記実施形態では、無端走行する流延バンド57を用いて、オンライン方式で多孔質フィルム38を製造したが、本発明はこれに限られず、各工程11〜14をバッチ式で行う、製造方法に適用することも可能である。バッチ式の場合には、支持体として、ペルチエ素子を用いる、或いは、ペルチエ素子を備える支持体を用いてもよい。
上記実施形態では、判別処理にて、当該キャスト膜68が(式1)を満足しないと判別した場合には、当該キャスト膜68が(式1)を満足すると判別されるまで、水滴形成成長工程13を行わずに、繰り返し判別処理を行ったが、本発明はこれに限られず、判別処理にて、当該キャスト膜68が(式1)を満足しないと判別した場合には、当該キャスト膜68が(式1)を満足することを主たる目的として、所望の条件に調節された空気(以下、調節空気と称する)を、露出面68aにあてつつ、繰り返し判別処理を行ってもよい。このときに、露出面68aの温度T1を計測し、温度T1に基づいて、調節空気を調節してもよい。図4に示す、いわゆるオンライン方式の多孔質フィルム製造設備40では、第1ゾーン51に複数の湿潤空気供給機61を並べ、各湿潤空気供給機61において、それぞれ判別処理を行えばよい。そして、制御部80が、キャスト膜68は式1を満足しないと判別した場合には、当該湿潤空気供給機61を用いて、調節空気を露出面68aにあてつつ、繰り返し判別処理を行ってもよい。一方、制御部80が、キャスト膜68は式1を満足すると判別した場合には、当該湿潤空気供給機61を用いて、露出面68aの温度T1を計測し、湿潤空気400を露出面68aにあて、水滴形成成長工程13を行えばよい。一方、バッチ式の場合には、走行する支持体又静止した支持体に溶液をキャストした後、式1を満足するキャスト膜のみについて水滴形成成長工程13を行い、式1を満足しないキャスト膜は、式1を満足するまで、別のゾーンで待機する、又は調節空気をキャスト膜の露出面にあてた後、水滴形成成長工程13を行ってもよい。
本発明では、露出面68aの温度T1と、支持面68bの温度T2との差、すなわち|T1−T2|の値が、0℃以上5℃以下となるように、湿潤空気400の各条件や、流延バンド57の表面57aの温度等を調節することが好ましい。|T1−T2|の値が、5℃を超えると、キャスト膜68における溶液15の対流が顕著になるため、露出面68aに形成した水滴の形成ピッチにばらつきが生じる。
上記実施形態では、水滴形成成長工程13の前に|T1−T2|の値を所定の範囲に保持する判別工程12を行ったが、本発明はこれに限られず、判別工程12に代えて、一定時間の間、送風処理及び吸引処理を停止した後に水滴形成成長工程13を行ってもよいし、これら条件の組み合わせでもよい。一定時間の間、送風処理及び吸引処理を停止することにより、キャスト膜68の露出面68aと支持面68bとの温度差|T1−T2|を小さくすることが可能になるためである。当該一定時間の具体的条件は、他の製造条件にもよるが、例えば、10秒以上とすることが好ましい。
上記実施形態では、判別処理において、式1を満足しないと判別した場合には、判別工程12を繰り返し行ったが、判別工程12を繰り返し行なう際、判別処理で算出したレイリー数と、目標とするレイリー数との差に基づいて、制御部80により、湿潤空気400の各条件や、流延バンド57の表面57aの温度等を適宜調節してもよい。
上記実施形態において、制御部80が、タンク41や流延ダイ60における溶液15の温度や、流延ダイ60のスリットのクリアランスを調節してもよい。
上記実施形態では、フィルム状のキャスト膜68に水滴形成成長工程13を行ったが、本発明はこれに限られず、板状やバルク状の溶液15に水滴形成成長工程13を行ってもよい。板状やバルク状の溶液を形成する場合には、キャストに代えて、一定の深さを有する容器に貯留する溶液について水滴形成成長工程13を行っても良い。これにより、板状やバルク状の多孔質構造体を製造することもできる。
上記実施形態において、第1ゾーン51に3つの湿潤空気供給機61を設け、第2ゾーン52に4つの乾燥空気供給機64を設けたが、本発明はこれに限られず、第1ゾーン51に1つ、2つ、または4つ以上の湿潤空気供給機61を設け、第2ゾーン52に1〜3つ、または5つ以上の乾燥空気供給機64を設けてもよい。
上記実施形態では、赤外放射温度計73は、送風口71と吸引口72との間に設けたが、本発明では、これに限られず、送風口71の上流側に赤外放射温度計73を設けてもよい。また、赤外放射温度計73の他、公知の非接触型の温度計(例えば、キーエンス社製FT−H30)を用いてもよい。
赤外放射温度計73のうちの1つを用いて、キャスト膜68の側縁部における露出面68aの温度を計測し、これをT1とし、赤外放射温度計73のうちのもう1つを用いて、当該側縁部近傍における流延バンド57の表面57aの温度を計測し、これをT2とし、判別処理を行ってもよい。
湿潤空気供給機61に代えて、赤外放射温度計とともに、二次元ノズルである送風口と吸引口とを備える湿潤空気供給機を用いてもよい。また、キャスト膜68の雰囲気の気圧を減圧する減圧乾燥法によりキャスト膜68を乾燥することも可能である。減圧乾燥法を行うことで、溶媒と水滴の蒸発速度を調整することがより容易になり、キャスト膜68に形成する水滴の大きさ、形状を適宜変更することができる。
また、減圧乾燥法により乾燥する方法や、膜面から3〜20mm程度離れた位置に、膜面より冷却され表面に溝を有する凝縮器を設けて、凝縮器の表面で水蒸気(揮発有機溶媒も含む)を凝縮させて乾燥させる方法も適用することができる。前記いずれかの乾燥方法を適用することで、キャスト膜68の露出面への動的な影響を少なくして乾燥させることができるため、より平滑な膜面を得ることができる。
多孔質フィルムの原料としては、非水溶性溶媒に溶解する高分子化合物(以下、「疎水性ポリマー」と称する)を用いることが好ましい。また、前記疎水性ポリマーだけでも多孔質フィルムを形成することができるが、両親媒性ポリマーを共に用いることが好ましい。
前記各高分子化合物を溶解させて溶液15を調製する溶媒としては、上述したものを適宜選択して用いることができる。
(溶媒)
前記溶媒としては、有機溶媒など、ポリマーを溶解させることができる溶媒であれば特に制限はない。例えば、クロロホルム、ジクロロメタン,四塩化炭素、シクロヘキサン、酢酸メチルなどが挙げられる。
また、キャストするときの溶液15における高分子化合物の濃度は、キャスト膜を形成できる濃度であれば良く、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。前記高分子化合物の濃度が0.01質量%未満であると、フィルムの生産性に劣り工業的大量生産に適さないおそれがある。また、前記高分子化合物の濃度が30質量%を超える濃度であると、後述する結露乾燥工程において水滴の成長が十分に行われないうちに乾燥してしまうため、好ましい孔サイズをもつような微細空孔構造をつくることが困難になることがある。
本発明におけるキャスト膜としては、複数の溶液が膜厚方向に層をなす積層キャスト膜としてもよい。積層キャスト膜が、露出面側に位置する露出層と、露出層と支持体との間に位置する基層とから構成される場合には、露出層をなす溶液における高分子化合物の濃度を、例えば、0.01質量%以上30質量%以下の範囲であることが好ましい。このような積層キャスト膜は、2種類以上の溶液を同時に共流延させて積層させる同時積層共流延、または、複数の溶液を逐次に共流延して積層させる逐次積層共流延により形成することができる。なお、両共流延を組み合わせてもよい。同時積層共流延を行う場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いてもよいし、マルチマニホールド型の流延ダイを用いてもよい。ただし、共流延により多層からなる積層フィルムでは、露出層の厚さが、積層フィルム全体の厚みの0.5〜30%であることが好ましい。また、同時積層共流延を行う場合には、ダイスリットから支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれることが好ましく、ダイスリットから支持体にかけて形成される流延ビードのうち、外界と接するドープが内部のドープよりもアルコールの組成比が大きいことが好ましい。
(疎水性ポリマー)
前記疎水性ポリマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニル重合ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリビニルエーテル、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸など)、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトンなど)、ポリアミド又はポリイミド(例えば、ナイロンやポリアミド酸など)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアロマティックス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリシロキサン誘導体、セルロースアシレート(トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート)などが挙げられる。これらは、溶解性、光学的物性、電気的物性、膜強度、弾性等の観点から、必要に応じてホモポリマーとしてもよいし、コポリマーやポリマーブレンドの形態をとってもよい。なお、これらのポリマーは必要に応じて2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。光学用途に使う場合には、例えば、セルロースアシレート、環状ポリオレフィンなどが好ましい。
前記両親媒性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリルアミドを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基、親水性側鎖としてカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマー、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、などが挙げられる。
前記疎水性側鎖は、アルキレン基、フェニレン基等の非極性直鎖状基であり、エステル基、アミド基等の連結基を除いて、末端まで極性基やイオン性解離基などの親水性基を分岐しない構造であることが好ましい。該疎水性側鎖としては、例えば、アルキレン基を用いる場合には5つ以上のメチレンユニットからなることが好ましい。前記親水性側鎖は、アルキレン基等の連結部分を介して末端に極性基やイオン性解離基、又はオキシエチレン基などの親水性部分を有する構造であることが好ましい。
前記疎水性側鎖と前記親水性側鎖との比率は、その大きさや非極性、極性の強さ、疎水性有機溶媒の疎水性の強さなどに応じて異なり一概には規定できないが、ユニット比(疎水性側鎖/親水性側鎖)は3/1〜1/3が好ましい。また、コポリマーの場合、疎水性側鎖の親水性側鎖の交互重合体よりも、疎水性溶媒への溶解性に影響しない範囲で疎水性側鎖と親水性側鎖がブロックを形成するブロックコポリマーであることが好ましい。
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1,000〜10,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000がより好ましい。
前記疎水性ポリマーだけでも、多孔質フィルムを製造することができるが、両親媒性ポリマーと共に用いることが好ましい。
前記疎水性ポリマーと前記両親媒性ポリマーとの組成比率(質量比率)は、99:1〜50:50が好ましく、98:2〜70:30がより好ましい。前記両親媒性ポリマーの比率が1質量%未満であると、均一な多孔質フィルムが得られなくなることがある。一方、前記両親媒性ポリマーの比率が50質量%を超えると、キャスト膜の安定性、特に力学的な安定性が十分に得られなくなることがある。
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーであることも好ましい。また、前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーとともに、重合性の多官能モノマーを配合し、この配合物によりハニカム膜を形成した後、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことも好ましい。
前記疎水性ポリマー及び/又は前記両親媒性ポリマーと併用される多官能モノマーとしては、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。前記多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレート又はこれらの変性物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、又はこれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーは、分子内に重合性基を有する重合性(架橋性)ポリマーである場合には、前記疎水性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーの重合性基と反応しうる重合性の多官能モノマーを併用することも好ましい。
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
前記光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンなどが挙げられる。
前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。
前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが挙げられる。
前記光ラジカル開始剤としては、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されている。また、市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
前記光ラジカル開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
なお、前記光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。外光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン、チオキサントン、などが挙げられる。
前記熱ラジカル開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物、有機ジアゾ化合物、などを用いることができる。
具体的には、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。前記ジアゾ化合物としては、例えば、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。