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JP2008538383A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

複層塗膜形成方法 Download PDF

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JP2008538383A
JP2008538383A JP2007546959A JP2007546959A JP2008538383A JP 2008538383 A JP2008538383 A JP 2008538383A JP 2007546959 A JP2007546959 A JP 2007546959A JP 2007546959 A JP2007546959 A JP 2007546959A JP 2008538383 A JP2008538383 A JP 2008538383A
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岡本  聡
正伸 蓬原
誠 道井
栄作 岡田
丈裕 仁藤
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
Nippon Paint Holdings Co Ltd
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Nippon Paint Co Ltd
Toyota Motor Corp
Nippon Paint Holdings Co Ltd
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    • C25D13/00Electrophoretic coating characterised by the process
    • C25D13/22Servicing or operating apparatus or multistep processes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
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    • C09D5/00Coating compositions, e.g. paints, varnishes or lacquers, characterised by their physical nature or the effects produced; Filling pastes
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Abstract

金属素材、とりわけ未処理冷延鋼板に施される電着塗装前の前処理(下地処理)工程と、電着塗装工程とを統合することができる複層塗膜形成方法を提供すること。
(A)希土類金属化合物、(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C)硬化剤を含む水性塗料組成物であって、この水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して0.05〜10重量%である水性塗料組成物に、被塗物を浸漬する、浸漬工程;この水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50V未満の電圧を印加する、前処理工程;およびこの水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着塗装工程;を包含する複層塗膜形成方法。

Description

本発明は、同一水性塗料組成物の使用によって、金属素材、とりわけ未処理冷延鋼板に施される電着塗装前の前処理(下地処理)工程と、電着塗装工程とを統合することができる複層塗膜形成方法に関する。
自動車車体は、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板等の金属素材を成形し、この金属成形物を被塗物として塗装し、次いで組み立て等を行うことにより製造される。このような金属成形物は一般に、電着塗膜に対する密着性等を付与するために、電着塗装前にリン酸亜鉛化成処理等の防錆処理が行われている。
カチオン電着塗料組成物を用いる電着塗装は、耐食性、つきまわり性に優れており、均一な塗膜を形成させることができるため、自動車車体、部品用プライマーを中心に広く使用されている。しかしながら、従来のカチオン電着塗料組成物においては、被塗物にリン酸亜鉛などの前処理がなされている素材に対しては、電着塗装により十分な耐食性を発現させることができるものの、被塗物の前処理(化成処理など)が不十分である場合は、耐食性確保が困難であるという問題があった。
特許3168381号公報(特許文献1)には、カチオン基を有する親水性フィルム形成性樹脂および硬化剤を、中和剤を含む水性媒体中に分散してなる陰極電着塗料組成物において、塗料固形分を基準にして、アルミニウム塩、カルシウム塩および亜鉛塩より選ばれた少なくとも1種のリンモリブデン酸塩を0.1〜20重量%、およびセリウム化合物を金属として0.01〜2.0重量%含むことを特徴とする陰極電着塗料組成物が記載されている。これにより、表面未処理冷延鋼板に対する耐食性を改良可能することができると記載されている。
特許3368399号公報(特許文献2)には、カチオン基を有する親水性フィルム形成性樹脂および硬化剤を、中和剤を含む水性媒体中に分散してなる陰極電着塗料組成物において、塗料固形分を基準にして、銅化合物およびセリウム化合物を金属として合計0.01〜2.0重量%含み、金属として銅/セリウム重量比が1/20〜20/1であることを特徴とする陰極電着塗料組成物が記載されている。これも同様に、表面未処理冷延鋼板に対する耐食性を改良可能することができると記載されている。
しかしながら、上記電着塗料組成物を用いる塗装はいずれも、印加電圧100〜450V条件の一段階電着塗装による一段階電着塗装が行われている。このような電解、電着条件においては、セリウムあるいはセリウム―銅による皮膜形成が不充分となる。そのため、これらの発明による耐食性の改良レベルは、何れも、従来のリン酸塩による従来化成処理に匹敵する下地密着性を発現し、かつ電着塗装後における耐食性を発現する程には至っていない。
現状としては、前処理工程および電着塗装工程において、それぞれ別個の溶液である化成処理液およびカチオン電着塗料組成物は、それぞれの液中に含まれる成分を安定に溶解あるいは分散するpHの領域が異なる。そのため、これらの工程を組み合わせることは容易ではなかった。さらに、電着塗装においては、化成処理財が少量でも混入するとによって、塗装効率、防食性能および仕上がり外観等に悪影響が生じる。そのため、被塗物を前処理した後、電着塗装を行う前に、被塗物を念入りに水洗する必要がある。このため、前処理および電着塗装は、より長大な塗装工程設備を必要としていた。
特許第3168381号公報 特許第3368399号公報

本発明は、上記の現状に鑑み、従来は別々の化成処理液およびカチオン電着塗料組成物を用いて、前処理およびカチオン電着塗装を行っていたのに対して、両工程を画期的に短縮統合することができる方法を提供することを目的とする。
本発明は、
(A)希土類金属化合物、(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C) 硬化剤を含む水性塗料組成物であって、この水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して0.05〜10重量%である水性塗料組成物に、被塗物を陰極として50V未満の電圧を印加する、前処理工程および
この水性塗料組成物中において、50〜450Vの電圧を印加する、電着塗装工程、
を包含する複層塗膜形成方法を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記水性塗料組成物がさらに(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を含むのが、好ましい。
上記前処理工程において、(A)希土類金属化合物の電解反応の物の量が5mg/m以上であるのが好ましい。
さらに、上記前処理工程において析出する、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の電解反応生成物、または(A)希土類金属化合物の電解反応生成物の量が、5mg/m上であるのが好ましい。
また、上記前処理工程における通電時間が10〜300秒であるのが好ましい。
さらに、上記電着塗装工程における通電時間が30〜300秒であるのが好ましい。
さらに、上記水性塗料組成物が、pH5〜7、および塗料電導度1500〜4000μS/cmであるのが好ましい。
上記(A)希土類金属化合物が、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物であるのが好ましい。
本発明はまた、上記複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜も提供する。
本発明の複層塗膜形成方法は、同一の水性塗料組成物を用いて、少なくとも2段階の印加電圧にて通電することによって、陰極電解処理(前処理工程)及び電着塗装工程を実用的に区分かつ連続的に実施することができる。本発明の方法により、前処理工程および電着塗装工程を効率的に統合することができる。これにより、従来の化成処理などの前処理、そして電着塗装からなる塗装工程を、大幅に短縮することができる。本発明の方法により、従来の工程である化成処理および電着工程により得られる塗膜に匹敵する、優れた塗膜密着性および耐食性(塩水噴霧、塩水浸漬、および乾湿サイクル腐食試験などに対する性能が優れる)である複層塗膜を得ることができる。
本発明の方法によれば、従来、電着塗装の前に実施されていた前処理工程(特に、化成処理工程)を削減することができるか、あるいは化成処理を行っても工程を大きく短縮(即ち、処理時間の短縮や水洗時間の短縮など)することができ、技術的効果が大きい。また、電着塗装工程では、前処理のための低電圧印加工程が追加されるが、印加電圧を変化させるだけで、前処理と塗装処理とを連続することができるので、低電圧印加工程の追加は殆ど電着塗装工程に実質的な影響を与えない。
水性塗料組成物
本発明の複層塗膜形成方法は、(A)希土類金属化合物、あるいは(A)希土類金属化合物に加えて(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を水性媒体中に含み、さらに(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C)硬化剤が、この水性媒体中に分散された水性塗料組成物を用いて実施される。以下、本発明に用いる水性塗料組成物について詳述する。
本発明で用いられる水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物は、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物であるのが好ましい。
これらの希土類金属を含む希土類金属化合物が水性塗料組成物に含まれることによって、下地密着性に優れた前処理皮膜を得ることができる。
上記(A)希土類金属化合物としては、水溶性であるか又は水に難溶性である化合物を使用することができる。なかでも、水に対する溶解度が1g/dm3 以上である水可溶性化合物を用いる場合は、少量の使用で高い耐食効果が得られるため、好ましい。(A)希土類金属化合物として、希土類金属の硝酸塩を用いるのがより好ましい。これを用いることにより、鉛化合物と同等、又はそれ以上の優れた防食性を有する塗膜が得ることができる。
好ましい(A)希土類金属化合物としては、例えば、蟻酸セリウム、蟻酸イットリウム、蟻酸プラセオジム、蟻酸イッテルビウム、酢酸セリウム、酢酸イットリウム、酢酸プラセオジム、酢酸ネオジム、酢酸イッテルビウム、乳酸セリウム、乳酸イットリウム、乳酸イッテルビウム、乳酸ネオジム、乳酸プラセオジム、シュウ酸イッテルビウム等の有機酸塩;硝酸セリウム、硝酸イットリウム、硝酸ネオジム、硝酸イッテルビウム、硝酸プラセオジム、タングステン酸イットリウム、モリブデン酸プラセオジム、アミド硫酸ネオジム、アミド硫酸イッテルビウム、酸化ネオジム、水酸化プラセオジム等の無機酸塩又は無機化合物等を挙げることができる。これらの中で、より好ましい希土類金属化合物は、電解析出性の高いネオジム(Nd)、プラセオジウム(Pr)およびイッテルビウム(Yb)の各化合物である。
本発明の複層塗膜形成方法に用いられる水性塗料組成物は、(A)希土類金属化合物に加えてさらに(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を含有していてもよい。さらに(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物が含まれることによって、前処理工程における電解反応生成物として、アルカリ難溶性の希土類金属―銅の複合化合物、またはアルカリ難溶性の希土類金属―亜鉛の複合化合物を形成することができる。このため、複層塗膜のより高い密着性および電着塗装後の防錆性を発現することができる。上記目的に対して、より目的適合の高い金属種の組み合わせは、(A)希土類金属化合物と(E)亜鉛化合物との組み合わせである。
(A)希土類金属化合物と併用する目的の(D)銅化合物としては、銅の水溶性塩。例えば蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩のような有機モノカルボン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩のような無機酸塩、塩化物、臭化物のようなハロゲン化物が使用できる。また塗料浴中で銅イオンあるいは亜鉛イオンを生ずる酸化物、水酸化物、ケイ酸塩も使用することもできる。
好ましい銅化合物としては、例えばモノカルボン酸塩および組成式〔Cu(OH)〔CuSiO〔CuSO4〕〔HO〕を有し、重量分率x,y,zおよびnが、それぞれ18〜80%,0〜12%,20〜60%および100−(x+y+z)である複塩が挙げられる。
(A)希土類金属化合物と併用する目的の(E)亜鉛化合物としては、例えばカルボン酸塩、硝酸亜鉛あるいは硫酸亜鉛などの水溶性塩が挙げられる。さらに、塗料組成物中で亜鉛イオンを生じる酸化亜鉛と縮合リン酸亜鉛との複合化合物、および(ポリ)リン酸亜鉛、リンモリブデン酸亜鉛などを用いることもできる。これらの亜鉛化合物は、一般に顔料として用いることができるものである。
(A)希土類金属化合物、(D)銅化合物および(E)亜鉛化合物は、いずれも水溶性もしくは水分散性化合物であるのが好ましい。
(A)希土類化合物に加えて(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を使用する場合は、希土類金属の重量:銅または亜鉛の重量比が1:20〜20:1で配合されていることが好ましい。希土類金属の重量:銅または亜鉛の重量の比が上記範囲を超える場合は、複合化合物の形成による密着性および耐食性の向上効果が低下する恐れがある。なお、上記重量比は、(A)希土類化合物、(D)銅化合物及び(E)亜鉛化合物それぞれに含まれる金属量を算出し、各成分の金属量の重量比を示したものである。
本発明に用いられる水性塗料組成物は、水性塗料組成物中に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して合計0.05〜10重量%である。水性塗料組成物がさらに(D)銅化合物あるいは(E)亜鉛化合物を含む場合は、これらの金属は、塗料固形分に対して、金属量に換算して合計0.05〜10重量%含むことが好ましい。金属換算量が0.05重量%未満では、十分な下地密着性に基づく耐食性が得られない場合がある。また、金属換算量が10重量%を超えると、水性塗料組成物成分の分散安定性や電着塗膜の平滑性および耐水性が低下する場合がある。(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の金属換算量、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の金属換算量は、より好ましくは合計0.08〜8重量%であり、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。
上記(A)希土類金属化合物、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物、あるいは(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の、水性塗料組成物への導入は、特に制限されるものではなく、通常の顔料分散法と同様にして行うことができる。例えば、分散用樹脂中に予め(A)希土類金属化合物、そして必要に応じた(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を分散させて分散ペーストを作製し、この分散ペーストを水性塗料組成物へ配合することができる。また、(A)希土類金属化合物、(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物として、水溶性希土類金属化合物、水溶性銅化合物または水溶性亜鉛化合物を用いる場合には、塗料用樹脂エマルジョン作製後にそのまま加えてもよい。なお、顔料分散用樹脂としては、カチオン電着塗料用の一般的なもの(エポキシ系スルホニウム塩型樹脂、エポキシ系4級アンモニウム塩型樹脂、エポキシ系3級アミン型樹脂、アクリル系4級アンモニウム塩型樹脂など)が用いることができる。
本発明の水性塗料組成物に用いられる(B)カチオン基を有する基体樹脂は、樹脂骨格中のオキシラン環に対して有機アミン化合物で変性して得られるカチオン変性エポキシ樹脂である。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミン酸塩等のアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。
また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2008538383
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有するエポキシ樹脂をカチオン変性エポキシ樹脂として用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。
また同じくアミン類によるエポキシ環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、一部のエポキシ環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルのようなモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酸塩などの1級、2級または3級アミン酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミン・メチルイソブチルケチミン、ジエチレントリアミン・メチルイソブチルジケチミンの様なケチミンブロック第1級アミノ基含有第2級アミンも使用することができる。これらは樹脂に変性することによって、樹脂を用いて水性塗料組成物を調製する際に容易に加水分解し、第1級アミノ基を生成する。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
上記カチオン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は1,000〜5,000、好ましくは1,500〜3,000の範囲である。数平均分子量が1,000未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が劣ることがある。反対に5,000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばかりか、得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱・硬化時のフロー性が悪く塗膜外観を著しく損ねる場合がある。
上記カチオン変性エポキシ樹脂は、ヒドロキシル価(KOH換算mg/g樹脂固形分)が50〜250の範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50未満では塗膜の硬化不良を招き、反対に250を超えると硬化後塗膜中に過剰の水酸基が残存する結果、耐水性が低下することがある。
また上記カチオン変性エポキシ樹脂は、アミン価(KOH換算mg/g樹脂固形分)が40〜150の範囲となるように分子設計することが好ましい。アミン価が40未満では前記酸中和による水媒体中での乳化分散不良を招き、反対に150を超えると硬化後塗膜中に過剰のアミノ基が残存する結果、耐水性が低下することがある。より好ましいアミン価は、50〜120である。
また樹脂中の第1級アミノ基に基づくアミン価は15〜50であることが、陰極電解(前処理)工程における希土類金属化合物の選択的析出性を向上させる上でより好ましい。
また上記の式〔化1〕の分子鎖中に複数のオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂に、(b)1価の活性水素化合物と(c)2価の活性水素化合物を出発樹脂(a)のエポキシ基に対して1未満の当量比で反応させた後、(d)没食子酸および(e)第2級モノアミン化合物を(a)、(b)および(c)の反応生成物中に残っているエポキシ基を開環するように該反応生成物に反応させることを特徴とする水性塗料用樹脂を用いてもよい。
エポキシ基体樹脂へのオキサゾリドン環の含有に加えて、没食子酸変性によるキレート化作用、及びアルカリ雰囲気下における被塗物の金属素材への還元作用による非常に高い耐食性、耐熱性が複合できるからである。
さらに上記エポキシ樹脂のオキシラン環をアミンにて変性する段階で、環の一部あるいは、その全てをチオール基変性したものを上記アミン変性エポキシ樹脂と共に併用すれば、前処理皮膜中の金属成分に対する樹脂のチオール基によるキレート化作用により、電着樹脂塗膜の下地に対する密着力を強化し、耐食性向上を計ることも期待できるので、さらに好ましい。
本発明における(C)硬化剤としては、加熱時に各樹脂成分を硬化させることが可能であれば、どのような種類のものでも良いが、その中でも電着樹脂の硬化剤として好適なブロックポリイソシアネートが推奨される。
上記ブロックポリイソシアネートの原料であるポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらを適当な封止剤でブロック化することにより、上記ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
上記封止剤の例としては、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類とシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール;パラーt−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、およびε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。とくにオキシム類およびラクタム類の封止剤は低温で解離するため、後工程にて中塗り塗膜と同時焼付けを行う際に、樹脂硬化性の観点からみて好適である。
上記ブロックポリイソシアネートは封止剤の単独あるいは複数種の使用によってあらかじめブロック化しておくことが望まれる。ブロック化率については、前記の各樹脂成分と変性反応する目的がなければ、塗料の貯蔵安定性確保のためにも100%にしておくことが好ましい。
上記ブロックポリイソシアネートの前記(B)カチオン基を有する基体樹脂に対する配合比は、硬化塗膜の利用目的などで必要とされる架橋度に応じて異なるが、塗膜物性や中塗り塗装適合性を考慮すると固形分量として、15〜40重量%の範囲が好ましい。この配合比が15重量%未満では塗膜硬化不良を招く結果、機械的強度などの塗膜物性が低くなることがあり、また、中塗り塗装時に塗料シンナーによって塗膜が侵されるなど外観不良を招く場合がある。一方、40重量%を超えると、逆に硬化過剰となって、耐衝撃性等の塗膜物性不良などを招くことがある。なお、ブロックポリイソシアネートは、塗膜物性、硬化度および硬化温度の調節等の都合により、複数種を組み合わせて使用してもよい。
(B)カチオン基を有する基体樹脂は、該樹脂中のアミノ基を適当量の塩酸、硝酸、次亜リン酸等の無機酸、または蟻酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシン酸等の有機酸で中和処理し、カチオン化エマルションとして水中に乳化分散させることによって調製される。また乳化分散する際には、通常、(C)硬化剤をコアとし、(B)基体樹脂をシェル(殻)として含むエマルション粒子を形成させる。
該エマルション粒子の平均粒子径は、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μm、より好ましくは0.05〜0.2μmである。平均粒子径が0.01μm未満であると、樹脂成分を水分散するのに必要な中和剤が過量となり、一定電気量あたりの電着塗着効率が低下する。また平均粒子径0.5μmを超えると、粒子の分散性が低下するために、電着塗料の貯蔵安定性が低くなるので好ましくない。
本発明の塗装方法において用いられる水性塗料組成物においては、必ずしも必要成分ではないが、目的に応じて、さらに顔料を配合してもよい。但しここでいう顔料には、(A)希土類金属化合物、(D)銅化合物および(E)亜鉛化合物は含まれない。顔料としては、通常塗料に使用されるものならばとくに制限なく使用することができる。その例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト等の着色顔料、カオリン、珪酸アルミ(クレー)、タルク、炭酸カルシウム、また無機コロイド(シリカゾル、アルミナゾル、チタンゾル、ジルコニアゾルなど)等の体質顔料、リン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、(ポリ)リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなど)やモリブデン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛など)、等の重金属フリー型防錆顔料が挙げられる。
さらにビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤も合わせて使用できる。これら無機コロイドおよびシランカップリング剤を併用すると、下地塗膜密着性の向上などに作用し、結果として耐食性が向上する効果がもたらされる利点がある。
これらの中でも、本発明の水性塗料組成物に使用する顔料としてとくに重要なものは、二酸化チタン、カーボンブラック、珪酸アルミ(クレー)、シリカ、リンモリブデン酸アルミ、ポリリン酸亜鉛である。とくに二酸化チタン、カーボンブラックは着色顔料として隠蔽性が高く、しかも安価であることから、電着塗膜用に最適である。
なお、上記顔料は単独で使用することもできるが、目的に合わせて複数種を使用するのが一般的である。
前記水性塗料組成物中に含有される前記顔料(P)および樹脂固形分(V)の合計重量(P+V)に対する前記顔料の重量比{P/(P+V)}(以後、PWCと称する)が、5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。但し、ここでいう顔料には、(A)希土類金属化合物、(D)銅化合物および(E)亜鉛化合物は含まないものと定義する。
上記重量比が5重量%未満では、顔料不足により塗膜に対する水、酸素などの腐食要因の遮断性が過度に低下し、実用レベルでの耐候性や耐食性を発現できないことがある。
ただし、そのような不都合を生じない場合は、顔料濃度を極力ゼロとし、クリア、もしくはクリアに近い水性塗料組成物を調製して、本発明に用いてもよい。
また、上記重量比が30重量%を超えると、顔料過多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が著しく悪くなることがあるので注意を要する。
上記樹脂固形分(V)は、水性塗料の主樹脂である前記(B)カチオン基を有する基体樹脂、および(C)硬化剤の他、顔料分散樹脂をも含めた電着塗膜を構成する全樹脂バインダーの合計固形分量を示す。
上記水性塗料組成物は、全固形分濃度が5〜40重量%、好ましくは、10〜25重量%の範囲となるように調整する。全固形分濃度の調節には水性媒体(水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物)を用いる。
また水性塗料組成物のpHは、5〜7であるのが好ましく、5.5〜6.5であるのがさらに好ましい。pHが5未満であると、電着塗装効率や膜外観が低下することがある。また7を超えると、塗料組成物中の希土類金属イオンや銅イオン、基体樹脂エマルションの安定性が低下する傾向がある。pHが高い場合は、硝酸、硫酸などの無機酸、あるいは蟻酸、酢酸などの有機酸を用いてpHを下げることができる。pHが低い場合は、アミンなどの有機塩基、あるいはアンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いてpHを上げることができる。これらの無機酸、有機酸、無機塩基および有機塩基を必要に応じた量で用いることによりpHを調整することができる。使用する酸および塩基の種類は、特に制限されるものではない。
本発明に用いる水性塗料組成物は、塗料伝導度は1,500〜4,000μS/cmであるのが好ましい。塗料伝導度が1,500μS/cm未満では、前処理工程により得られる効果が不充分になり、また前処理皮膜や電着塗膜のつきまわり性が不足する恐れがある。また4,000μS/cmを超えると、前処理皮膜や電着塗膜の外観不良を招く恐れがあるので好ましくない。なお、本明細書において「前処理皮膜」とは、(A)希土類金属化合物の電解生成物、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の電解生成物、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の電解生成物が、被塗物上に析出することにより得られる被膜をいう。
水性塗料組成物の塗料電導度は、市販の導電率計を使用して測定することができる。導電率計として、例えば東亜電波工業(株)社製 CM−305などが挙げられる。
さらに塗料組成物中には少量の添加剤を導入しても良い。添加剤の例としては紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、塗膜表面平滑剤、硬化触媒(ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジベンゾエートあるいはジオクチル錫ジベンゾエートなどの有機スズ化合物)、硬化促進剤(酢酸亜鉛)などを挙げることができる。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、上記水性塗料組成物に、被塗物を浸漬させて塗装が行われる。そして、本発明の複層塗膜形成方法は、
上記水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として、50V未満の電圧を印加する前処理工程、および
上記水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着工程、を包含する。
被塗物として、未処理の金属素材、例えば冷延鋼板、高強度鋼、高張力鋼、鋳鉄、亜鉛及び亜鉛めっき鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられる。これらの中でも、本発明の方法によって特に優れた耐食効果を得ることができる素材は、冷延鋼板である。
上記方法により調製された水性塗料組成物に、被塗物を陰極として浸漬する。そして前処理工程において、50V未満の電圧を印加して、被塗物に対して陰極電解を行うことによって、主に(A)希土類金属化合物の電解反応生成物、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の電解反応生成物、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の電解反応生成物を、極めて優先的に析出させることが可能であることが、本発明によって見いだされた。
印加電圧が50V以上であると、上記複合金属水酸化物の析出よりも、むしろ塗料ビヒクルである(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C)硬化剤の析出が顕著化するので、前処理皮膜形成の目的に反するために好ましくない。
(A)希土類金属化合物の電解反応生成物、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の電解反応生成物、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の電解反応生成物の選択的析出を可能とする前処理工程の印加電圧として、好ましい範囲は1〜40V、より好ましい範囲は1〜20Vである。
前処理工程では、水性塗料組成物を含む浴槽の浴温を15〜35℃に調整した上で行うのが好ましい。前処理工程に続いて行われる電着塗装において通常用いられる浴温と同程度の温度で前処理工程を行うのが、前処理工程後に連続して行われる電着塗装工程との関係上好ましいからである。
前処理における通電時間は、通常10〜300秒、好ましくは30〜180秒である
処理時間が短すぎる場合は皮膜生成しないか、生成しても厚みが不足することとなり、耐食性が劣る恐れがある。また通電時間が長すぎる場合は、時として無光沢のヤケあるいはコゲと呼ばれる外観不良が発生する。また、過剰の処理時間は生産性を極端に低下させる恐れがあり好ましくない。
前処理における、(A)希土類金属化合物、あるいは(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の電解反応生成物の析出量を、5mg/m以上にすることによって、特異的に高い防錆皮膜を形成することができる。好ましい析出量は、10〜1000mg/m、より好ましくは20〜500mg/mである。
5mg/m未満においては、形成皮膜による下地密着性が低下するために、必要な防錆性が発現しない。逆に、1000mg/mを超えると、皮膜の表面平滑性が損なわれるので、電着塗膜形成後の外観が低下する場合があるので好ましくない。
本発明の前処理工程によって、電解生成物が析出する機構は以下のように考えられる。前処理工程における上記電解条件によって、陰極の金属表面では溶存酸素や水素イオン、水等の浴中化学種が還元を受け、水酸化物イオン(OH)が生成する。この被処理金属表面で生成した水酸化物イオンが、まず該金属表面近傍の希土類金属イオンと反応することで、希土類金属の水酸化物の沈殿が生成し、皮膜として金属表面に析出する。こうして析出した電解生成物である、希土類金属の水酸化物からなる皮膜は、下地の基材および電着塗膜との密着性に特に優れており、電着塗装後の焼付け乾燥過程において、少なくとも一部が、希土類の水酸化物より脱水生成した酸化物からなる被膜に変化し、高い耐食性を示すようになると考えられる。
また、水性塗料組成物中にさらに(D)銅化合物または(E)亜鉛化合物を含めることによって、電解反応生成物として、アルカリ難溶性の希土類金属―銅、またはアルカリ難溶性の希土類金属―亜鉛の複合化合物を析出させることができる。こうして得られる複合化合物は、得られる複層塗膜のより高い密着性および電着塗装後の耐食性を発現することができる。
しかも本発明の前処理工程の上記電解条件においては、主に上記前処理錆皮膜が優先的に形成し、(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C)硬化剤の析出による電着塗膜の形成は抑制される傾向にあるので、極めて好都合である。
本発明の電着塗装工程では、印加電圧を50〜450V、好ましくは100〜400Vまで昇圧することで、塗料ビヒクルである(B)カチオン基を有する基体樹脂および(C)硬化剤、そして必要に応じた顔料を、優先的に析出させることができる。印加電圧が50V未満では、上記電着塗料のビヒクル成分の析出性が不足する恐れがある。また印加電圧が450Vを超えると、上記ビヒクル成分が適正量を超えて析出する結果、実用に耐えない膜外観を呈する恐れがあるので好ましくない。
通電時間は30〜300秒、好ましくは30〜180秒である。処理時間が30秒より短い場合は、電着塗膜が生成しないか、生成しても厚みが不足しているために耐食性が劣る恐れがある。また過剰の処理時間は生産性を極端に低下させる恐れがあり好ましくない。
こうして得られる未硬化複層塗膜を、120〜200℃、好ましくは140〜180℃にて硬化反応を行うことによって、高い架橋度の電着硬化塗膜を得ることができる。ただし、200℃を超えると、塗膜が過度に堅く、かつ脆くなり、一方120℃未満では硬化が充分でなく、耐溶剤性や膜強度等の膜物性が低くなる恐れがあり好ましくない。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
製造例1((B)アミノ基を有する基体樹脂の製造)
攪拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部、ジラウリン酸ジブチル錫0.5部を仕込み、40℃で攪拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が232になるまで120℃で3時間反応を続けた。さらに、メチルイソブチルケトン644部、ビスフェノールA341部、2−エチルヘキサン酸413部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が840になるまで反応させた後、系内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)288部とN−メチルエタノールアミン300部及びジ(2−エチルヘキシル)アミン314部の混合物を添加し120℃で1時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトン194部で不揮発分80重量%になるまで希釈し、固形分80重量%のカチオン変性エポキシ樹脂ワニスを得た。この樹脂の数平均分子量は1800、アミン価は100、その中で第1級アミノ基の基づくアミン価は20、水酸基価は160であった。また赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm−1)を有していることが確認された。
製造例2((C)硬化剤の製造)
攪拌機、窒素導入管、冷却管および温度計を備え付けた反応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、メチルイソブチルケトン56部で希釈した後ブチル錫ラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチルエチルケトオキシム17部を内容物温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノール43部で希釈することによって目的のブロックドイソシアネート硬化剤溶液(固形分70%)を得た。
製造例3(顔料分散樹脂の製造)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にエポキシ当量198のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名エポン829、シェル化学社製)710部、ビスフェノールA289.6部を仕込んで、窒素雰囲気下150〜160℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)406.4部を加えた。反応混合物を110〜120℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル1584.1部を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。
上記反応物の製造と平行して、別の反応容器に2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)384部にジメチルエタノールアミン104.6部を加えたものを80℃で1時間攪拌し、ついで75%乳酸水141.1部を仕込み、さらにエチレングリコールモノn−ブチルエーテル47.0部を混合、30分攪拌し、4級化剤(固形分85%)を製造しておいた。そしてこの4級化剤620.46部を先の反応物に加え酸価1になるまで混合物を85〜95℃に保持し、顔料分散樹脂(平均分子量2200)の樹脂溶液(樹脂固形分56%)を得た。
製造例4(顔料分散ペーストの製造)
サンドミルを用いて、製造例3で得られた顔料分散樹脂を含む下記配合の顔料ペースト(固形分59%)を40℃において、粒度5μm以下となるまで分散し調製した。
配合 部
製造例3の顔料分散樹脂ワニス 53.6
二酸化チタン 54.0
カーボンブラック 1.0
リンモリブデン酸アルミ 4.0
クレー 11.0
イオン交換水 46.4
製造例5(チオール基変性エポキシ樹脂の製造)
攪拌機、冷却器、窒素導入環、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量474のエポキシ樹脂947部、メチルイソブチルケトン(MIBK)520部及びテトラブチルアンモニウムブロミド6部を加え、80℃まで昇温した。そして内容物が均一に溶解した後、チオ安息香酸281部を30分間かけて滴下した。この際発熱により温度が上昇するが、水冷により90℃を上回らないようにした。滴下終了後、反応温度80℃を保持したまま1時間熟成することで、赤外線スペクトル測定においてチオールエステル基に基づく吸収(1690cm−1)が飽和し、エポキシ当量14万以上で平均分子量1200の架橋性能を有するチオール変性エポキシ樹脂を得た。
製造例6(水性塗料組成物の製造)
製造例1で得た基体樹脂350g(固形分)と、製造例2で得た硬化剤150g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。
また製造例5で得たチオール基変性エポキシ樹脂を配合する場合は、製造例1で得た基体樹脂の一部を置き換えて、表1及び2に示す樹脂配合量比にブレンドした後、上記と同様にエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルの等量を添加した。
次に氷酢酸を中和率40.5%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。
このようにして得られたエマルジョン2000gへ、製造例4で得られた種々の顔料ペースト460.0g、イオン交換水2252g、樹脂固形分に対して1wt%のジブチルスズオキサイドを加えて混合し、固形分が20.0wt%の水性塗料を調製した。
希土類金属化合物、あるいは希土類金属化合物と銅化合物または亜鉛化合物は、水溶性塩の場合は、直接塗料へ加え、それ以外の場合は顔料ペースト中の二酸化チタンの一部を置き換えて、表1及び2に示す金属としての添加量(重量%)に調節することによって、各水性塗料組成物を調製した。
実施例及び比較例
製造例6記載の各水性塗料組成物の調製において、表1〜4に示すように、各希土類金属化合物を金属量に換算して0.5重量%含めた。こうして得られた水性塗料組成物を浴槽に注ぎ、陰極として表面未処理冷延鋼板を浸漬した。次いで、表1及び2に示すように、印加電圧を少なくとも2段階にて昇圧することによって、前処理工程(印加電圧5V、通電時間60秒)及び陰極電着塗装工程(印加電圧180V、通電時間150秒)を連続的に実施した。また比較例(ただし比較例8を除く)は、上記前処理工程を省略して、陰極電着塗装工程のみで実施した。電着塗装工程における電着塗膜の乾燥膜厚が20μになるように塗装した後、170℃×20分で硬化し、塗膜評価を行った。表1〜4に、塗膜試験項目における実施例および比較例の結果を示した。
評価試験の手順について以下に示す。
塩水噴霧試験
・塩水噴霧試験:ナイフにて素地に達するクロスカットを入れた塗板を、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験を行った。試験時間960時間において、下記項目について評価した。
・ブリスター評価:試験後の評価板片面全体における塗面のブリスター状態(個数)にて評価した。
○;少ない、△;やや多い、×;多い
・剥離評価;試験後の評価板を水洗、乾燥した後テープを剥離し、カット部からの片側最大剥離幅にて評価した(mm)。
○:3mm未満、△:3〜6mm未満、×:6mm以上
塩水浸漬試験
・塩水浸漬試験:ナイフにて素地に達するカットを入れた塗板を、5%食塩水、55℃x240時間にて塩水浸漬試験を行った。下記評価項目について評価を行った。
・ブリスター評価:試験後の評価板を水洗、乾燥した後、テープをはく離し、カット部からの片側最大はく離幅にて評価した。
○;少ない、△;やや多い、×;多い
・剥離評価;試験後の評価板を水洗、乾燥した後テープを剥離し、カット部からの片側最大剥離幅にて評価した(mm)。
○:4mm未満、△:3〜8mm未満、×:8mm以上
塗料電導度の測定
実施例及び比較例によって得られた水性塗料組成物200mlを含む電着浴において、25℃で、導電率計(東亜電波工業(株)社製 CM-305)を用いて電導度を測定した。
Figure 2008538383
1)銅複塩:[Cu(OH)][CuSiO][CuSO][HO]
重量比率x/y/z=50/3/35
2)各成分の配合量は、金属量に換算した重量%である。
Figure 2008538383
1)銅複塩:[Cu(OH)][CuSiO][CuSO][HO]
重量比率x/y/z=50/3/35
2)各成分の配合量は、金属量に換算した重量%である。
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
Figure 2008538383
1)銅複塩:[Cu(OH)][CuSiO][CuSO][HO]
重量比率x/y/z=50/3/35
2)各成分の配合量は、金属量に換算した重量%である。
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
Figure 2008538383
1)銅複塩:[Cu(OH)][CuSiO][CuSO][HO]
重量比率x/y/z=50/3/35
2)各成分の配合量は、金属量に換算した重量%である。
(注)各成分配合:表中の数値は金属量に換算した重量である。
本発明の複層塗膜形成方法は、同一の水性塗料組成物を用いて、少なくとも2段階の印加電圧にて通電することによって、陰極電解処理(前処理工程)及び電着塗装工程を実用的に区分かつ連続的に実施することができる。本発明の方法により、前処理工程および電着塗装工程を効率的に統合しつつ、かつ優れた塗膜密着性および耐食性を有する複層塗膜を得ることができる。本発明の方法は、前処理および電着塗装を、同一の水性塗料組成物を用いて行うことができる。そのため、本発明の方法は、少なくとも前処理工程後の洗浄工程を完全に省略することができる。本発明の方法は、廃液処理などに由来する環境問題に対しても有用な方法である。

Claims (9)

  1. (A)希土類金属化合物、(B)カチオン基を有する基体樹脂、および(C)硬化剤を含む水性塗料組成物であって、該水性塗料組成物に含まれる(A)希土類金属化合物の量が、塗料固形分に対して、希土類金属に換算して、0.05〜10重量%である水性塗料組成物に、被塗物を浸漬する、浸漬工程、該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50V未満の電圧を印加する、前処理工程、および該水性塗料組成物中において、被塗物を陰極として50〜450Vの電圧を印加する、電着塗装工程、を包含する、複層塗膜形成方法。
  2. 請求項1記載の水性塗料組成物が、さらに(D)銅化合物あるいは(E)亜鉛化合物を含む、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  3. 前記前処理工程において、(A)希土類金属化合物の電解反応物の量が5mg/m以上である請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  4. 前期前処理工程において析出する、(A)希土類金属化合物および(D)銅化合物の電解反応生成物、または(A)希土類金属化合物および(E)亜鉛化合物の電解反応生成物の量が、5mg/m以上である、請求項2記載の複層塗膜形成方法。
  5. 前記前処理工程における通電時間が10〜300秒である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  6. 前記電着塗装工程における通電時間が30〜300秒である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  7. 前記水性塗料組成物が、pH5〜7、および塗料伝導度1500〜4000μS/cmである、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  8. 前記(A)希土類金属化合物が、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属を含む化合物である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  9. 請求項1〜8いずれかに記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜。
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