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JP2008521865A - ワクチンに有用な新規医薬組成物 - Google Patents

ワクチンに有用な新規医薬組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は医薬組成物の分野、特にワクチンの分野に関する。より正確には、本発明は、ワクチン(またはワクチン組成物)として有用な医薬組成物に関する。本発明はまた、前記本発明のワクチン組成物を調製する方法に関する。

Description

本発明は、医薬組成物の分野、特にワクチンの分野に関する。より正確には、本発明はワクチン(あるいはワクチン組成物)として有用な医薬組成物に関する。
本発明は、前記発明のワクチン組成物を調製する方法にも関する。
ワクチンの分野では、ワクチン組成物の効能が基本的にアジュバントと共に使用される抗原混合物によることはよく知られている。ワクチン用アジュバントは長年使用されており、抗原と組み合せた時、抗原単独の場合よりも大きな免疫反応を引き起こす組成物として定義される。
アジュバントを用いないワクチンの免疫原性は概して弱く、特に不活化ウイルスが用いられる場合、あるいは抗原が単にペプチドまたはタンパク質であってそれ自体では保護反応を引き起こすことができない場合に弱い。
理想的には次のような特性を有するべき満足なアジュバントを得るために、広範な研究が行なわれてきた。該特性とは、
*該アジュバントが、特に最小限の用量の抗原を用いて、主要な免疫反応を引き起こすこと;
*該アジュバントが、免疫記憶の形成を促進および確立するために混合免疫反応(液性免疫および細胞性免疫)を引き起こすこと;
*該アジュバントが完全に寛容され、毒性を持たないこと;
*該アジュバントが、できれば製薬の分野で一般に使用される添加剤、より具体的には注射可能な医薬品の添加剤で構成されること;
*該アジュバントが、例えばシリンジを用いて、また可能であれば使用準備済みのシリンジに直接入れて、容易に投与できること;
*該アジュバントが、様々な異なる抗原と容易に組み合わせることができ、異なるワクチンの生産の標準化が可能であること;
*該アジュバントが、習得の容易な製造工程を使用して工業規模で容易に生産できること、である。
様々な異なるタイプおよび起源の多くのアジュバントが当分野においてこれまで知られている。
アラム(Alum)(リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウム)は、ヒト用および獣医学用のワクチンにおいて広範囲に使用されているアジュバントである。
鉱油およびマイコバクテリア死菌の混合物から構成されたフロイントアジュバントなどの他のアジュバントも知られ、研究に使用されている。このアジュバントは非常に有効であり、著明な免疫反応を引き起こす。しかしながら、寛容されにくいため、その使用は実験動物での研究に制限されている。
様々な特許文献に、ワクチン用のアジュバント組成物が記述されている。
特許文献1には、家畜の予防接種を意図したヘルペスおよび大腸菌に対する混合ワクチンが記述されている。この特許文献は、Miglyol(R)(中鎖トリグリセリド)などのある種の油またはポリソルベートのような界面活性剤を用いた油/水エマルジョンまたは水/油エマルジョンを含む、様々な異なる可能なアジュバント候補に言及しているが、該アジュバントの正確な処方は何ら示していない。しかしながら、分散相が小滴の形態
で存在する従来型のエマルジョンが必要とされている。更に、ワクチンの免疫原性に対するアジュバントの影響に関しては何も示されていない。
特許文献2は、水性の液体の添加によって水中油型へと変換し、その結果水相に含まれたタンパク質を放出する、油中水型マイクロエマルジョン製剤について記述している。マイクロエマルジョンの利点は、自然に形成され、物理的に安定であることである。同文献の著者らによって使用された油は、中鎖のモノグリセリドおよびトリグリセリドのような、注射可能な経路で良好に寛容される油である。それらの油は、ソルビタンエステルまたはポリソルベートのような当業者に周知の従来の界面活性剤を使用することによって水相とともに乳化される。これらの油が注射の際に生体液で希釈されると、相が反転し、その結果水相に組み込まれた生物学的作用剤が放出される。ある製剤例は、記載の製剤に組み込まれた生物学的作用剤の活性の増大を示す。しかしながら、提供されている例は、ワクチンの分野とは関係がない。
特許文献3は、エトキシル化ヒマシ油、ラウリン酸プロピレングリコール、カプリル酸プロピレングリコールおよびコハク酸イソステアリルジグルセリルの中から選択された少なくとも2つの界面活性剤の混合物を含んでいる油中水型エマルジョンの形態のワクチンに加えて、ワクチンにおける鉱油以外の油の使用について記述している。選択される油は、寛容されにくい鉱油の投与に伴う組織反応を可能な限り制限するために、動物由来または植物由来である。
特許文献4は、乳化剤(リン脂質が含まれている)、非イオン性界面活性剤および油を含んでなる水中油型のサブマイクロエマルジョンの形態で示されたワクチンアジュバントについて記述している。しかしながら、リン脂質のコストが高いので、この発明の適用は制限されている。
特許文献5は、抗原によって誘導される免疫反応の向上を可能にする二相性脂質小胞で構成された組成物について記述している。
特許文献6は、レシチン、油、および両親媒性の界面活性剤を含有するアジュバントであって、注入された動物における局所反応を最小限にすることが可能な、安定した水中油型エマルジョンの形態のワクチンを形成することが可能なアジュバントについて記述している。
特許文献7は、固体状の等方性の構造で緊密に圧縮された固体形態の薬物を含んでなる作用物質を送達するためのシステムについて記述している。このシステムは吸入によって作用物質を送達するのに適している。該作用物質はリポソームの形態で生じ、該リポソームは続いて記載の固体送達システムを形成するために圧縮される。
特許文献8は、1つあるいはいくつかの作用物質と、20℃〜80℃(特に周囲温度)で凝固する水溶性の媒体とで構成される等方性の溶液の形態の医薬組成物について記述している。
米国特許第4,788,056号明細書 米国特許第5,688,761号明細書 米国特許第5,744,137号明細書 米国特許第5,961,960号明細書 米国特許出願第2003011977号明細書 米国特許出願第20030175309号明細書 国際出願公開公報第99/61003号パンフレット 欧州特許出願第0 398 287号明細書
ワクチン産業において、上記に列挙された特性を示す新しいアジュバントが絶えず継続的に必要とされているという事実が依然として存在する。特に、抗原の免疫原性を主として増大させうるアジュバントを提供する必要が依然として存在する。そのようなアジュバントの長所は、十分な免疫反応を保持しつつ抗原の投与を低用量としうることにある。
抗原が高価であるか、十分な量を生産するのが難しい場合、あるいは合成または組換えによって得られた単純なペプチドまたは抗原が用いられる場合、そのような組成物を利用可能であることが特に望ましい。
驚くべきかつ予想外の方法で、本発明者らはここに、油/界面活性剤/水相の三成分混合物で少なくとも構成された油状の等方性体の形態の医薬組成物であって、前記水相が抗原物質を含んでなる医薬組成物が、異方性のエマルジョンの形態である従来技術の三成分組成物より著しく高い免疫原性を有しうることを発見した。更に、等方性の形態の組成物は注射による投与に適した粘性を有しうる。
用語「等方性体(isotrope)」は、以降、本発明による油状の等方性体、すなわち、本発明による油/界面活性剤/水相の等方性三成分混合物を表すために使用される。同様に、「抗原物質を含んでなる等方性体」とは、本発明による油状の等方性体の水相に抗原物質が含まれている本発明の組成物を表す。
油状の等方性体とは、油、水および界面活性剤の混合物であって、それらの比率が、得られる調製物が透明・清澄で、かつ低い粘性を示すように調節されているものを意味する。このように、そのような組成物は注射によって投与することが可能である。この種の組成物は、油の中に水を溶解したもの、あるいはより具体的には油の中で水がミセル中にあるもの(油状の等方性体)に相当する。
確かに、等方性体が構成される際には、界面活性剤がミセルとして知られる分子凝集体を形成し、活性物質は該ミセル中に程度の差こそあれ挿入される。
等方性体はよく知られており、特に「ガレニカ(Galenica)」、1983年、第5巻第5章の195−219ページに必要な情報がすべて記載されている。特に、この研究は、水/油/界面活性剤の三成分図、例えば203ページのパラフィン/Brij96の水/油の図を示しており、等方性の系を得るためのこれらの化合物それぞれの濃度の決定を可能にしている。
より具体的には、等方性の形態の組成物は、単相の構造としても知られている連続的な三次元構造を示す。
一方エマルジョンは、2つの混和できない液体のうち一方が他方の中で微細に分割されて小滴または小胞となっている系で形成されている。分散相は内相または不連続相として知られ、分散媒は外相または連続相として知られている。したがって、エマルジョンは二相構造を有する液‐液分散である。
等方性の形態の組成物は、小胞タイプの構造がないこと、およびミセルが存在することによって、エマルジョンとは異なる。
「小胞タイプの構造」とは、本発明の意味においては、界面活性剤タイプの成分を含んでなるか該成分で構成された壁を呈する構造を意味し、前記壁は、外相が疎水性の時は親水性の内相を含んでなるか同相によって構成される(逆の場合も可)容積を備えている。
本発明の抗原物質を含んでなる等方性体を用いた試験で実験動物において得られた、以下に示す結果は、そのような等方性体を用いて、従来のアジュバントと組み合わせた抗原で得られる免疫原性と比較して極めて著しく増大した抗原の免疫原性を得ることが可能なことを示した。
更に、これらの試験は、該等方性体が従来の油中水型エマルジョンで構成された調製物に勝ることを示した。
したがって本発明は、この発見に起因する。
したがって、本発明の主な対象は、少なくとも1つの油と、少なくとも1つの界面活性剤と、水相であって少なくとも1つの活性物質を含んでなる水相との混合物を少なくとも含んでなる医薬組成物であって、油状の等方性体の形態である医薬組成物である。この組成物は等方性の形態であり、したがってエマルジョンの形態ではない。
特に、該組成物は注射による投与に適した粘性を示す。
本発明によれば、活性物質は、活発な抗原、減弱化された抗原、または不活性化された抗原などの任意のタイプの生物活性物質でよい。活発な抗原とは、実験的または遺伝学的に減弱化した細菌またはウイルス、ベクター(組換え細菌またはウイルス)によって生体内で発現されたタンパク質抗原(または糖−リポタンパク質抗原)を表す。不活性化された抗原とは、物理的方法または化学的方法によって不活性化された細菌またはウイルス、あるいは細菌またはウイルス抽出物、あるいは遺伝子組換えまたは化学合成によって得られたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、あるいは、少なくとも1つの、アミノ酸の配列を含む化合物のin vivo生成系を意味する。
非常に具体的には、生物活性物質は不活性であってよい。
本発明の特定の実施形態によれば、医薬組成物はワクチンである。この形態では、活性物質はこの場合抗原である。前記抗原は、任意の起源であってよいし、予防接種の分野で一般に使用される任意の形態であってよい。抗原は、例えば、ウイルス由来でも、細菌由来でも、寄生生物由来でも、腫瘍由来でもよい。
抗原は、天然の抗原でも組換え抗原でもよい。
抗原は、微生物(ウイルス、細菌あるいは寄生生物)から構成されてもよいし、適切な場合には減弱化または不活性化されてもよいし、あるいは前述の微生物の一部、特に細胞を含まない一部分(特に、合成されたか遺伝子工学により生産されたかにかかわらず、精製された抗原、天然のタンパク質または糖タンパク質またはペプチド、ポリヌクレオチド)でもよいし、実際に水溶性抗原に基づくものでも水に分散可能な抗原に基づくものでもよい。
好ましくは、前記微生物により分泌された分子からできている状態の抗原が、細菌壁の成分であれ細胞質の成分であれ、本発明によって使用される。
本発明による組成物中の活性物質および/または抗原の量は、所望の効力と、使用される活性物質または抗原の本来の性質との関数である。当業者は、後者について、使用される活性物質または抗原の機能として分析することができる。
等方性体の各構成要素の比率は、全体として油状の等方性体を形成するように調節される。
より具体的には、界面活性剤の濃度は臨界ミセル濃度(CMC)より高くてよい。CMCより低い濃度については、界面活性剤のほとんどの部分がモノマーの形態であり、他方、CMCを上回る濃度については、多くがミセルとして存在する。
CMC値は、特にドミンゲス(Dominguez )ら、「Journal of Chemical Education 」、1997年、p.1227−1231の文献に記述されるように、例えば伝導度測定、吸光度測定などの多種多様な方法によって測定可能である。一般に、CMCは、測定されるパラメータ(例えば伝導度または吸光度)の変動法則における急激な変化に相当する。
したがって、本発明の組成物は、臨界ミセル濃度以上の界面活性剤含量を含みうる。この臨界ミセル濃度は、組成物中に存在する成分の性質およびその含量などのいくつかのパラメータに依存する。
したがって、本発明の組成物は少なくとも高濃度の界面活性剤および少量の水を含むことになる。
本発明によれば、組成物は、組成物全体の重量に対して、10〜90重量%、好ましくは40〜75重量%の油を含みうる。
さらに本発明によれば、組成物中の水の量は、組成物全体の重量に対して0.5〜20重量%、好ましくは3〜9重量%である。
最後に、本発明によれば、組成物中の界面活性剤の量は、組成物全体の重量に対して1〜60重量%、好ましくは16〜45重量%でよい。
本発明によれば、水の量に対する油の量の比率は、1(油の量が水の量と等しい)未満であってはならず、好ましくは5未満にはならない(油の量が水の量の少なくとも5倍である)べきである。
本発明の組成物には多くの油を使用することができる。しかしながら、前述の油は、医薬としての使用、特に非経口の経路で注射可能な投与に適していなければならない。
油は次のものの中から選択可能である:
− 鉱油、例えばパラフィン油、ワセリン油などであるがこれらに限定はされない;
− 非鉱油、例えばタラ肝油、合成脂質、植物油(例えば、ダイズ油、オリーブオイル、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、ヒマシ油および扁桃油であるがこれらに限定はされない)、中鎖および長鎖トリグリセリド(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社によって販売されているもの、あるいはDynamit Nobel社によりMiglyol 810(R)、812(R)および818(R)との名称で販売されているものなど)、スクアランおよびスクワレンのようなテルペン油;ならびに
− それらの混合物。
本発明によれば、スクワレンのような油、好ましくはトリグリセリド・ファミリーの油、非常に好ましくはMygliol 810タイプの中鎖トリグリセリドを使用することが好ましい。
本発明によれば、油の混合物を使用することも可能である。
本発明によって使用可能な界面活性剤は、アニオン性でも、カチオン性でも、非イオン性でも、両性でもよい。
特に注射における良好な安全性に因り好ましいものは、非イオン性の種類の界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の中でも、注射可能な経路で使用可能なものは全て単独でも混合物でも使用可能であることが好ましい。例を挙げると、ここに列挙するものが限定的と見なすべきものではないものの、ポリソルベート、ソルビタンエステル、特にソルビタンと脂肪酸とのエステル、ヒマシ油のポリオキシエチレン化誘導体、ステアリン酸のポリオキシエチレン化誘導体、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはポロキサマー
との共重合体、サッカロースおよび脂肪酸のエステル、グリコールおよび脂肪酸のエステル、脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル、トリエステル、ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、ならびにサッカロースおよび脂肪酸のエステルが挙げられる。 本発明によれば、ポリソルベートおよびソルビタンエステル、特にソルビタンと脂肪酸とのエステルが使用されることが好ましい。
本発明によれば、2つまたはいくつかの界面活性剤の混合物を使用することが可能である。これらの界面活性剤のHLB(親水親油バランス:界面活性剤の特性であり、該界面活性剤の分子構造と関係する)は、同一でも異なっていてもよい。
使用される油相の臨界HLBに近づけるために、これらの界面活性剤が異なるHLBを有することが好ましい。臨界HLBは、乳化剤の濃度および界面活性剤の化学的性質の関数である。
例えば、当業者は、例えば「Handbook of excipients」(レイモンド シー.ロウ(Raymond C. Rowe )、ポール ジェイ.シェスキー(Paul J. Sheskey )、ポール ジェイ.ウェラー(Paul J. Weller)第4版、2003年)を参照すれば、界面活性剤のHLBを簡単に見出すことができるし、従って生産したい混合物の組成に従って適切な界面活性剤を選ぶことも可能である。
本発明によれば、水相は、水溶性または水に分散可能な抗原および水に加えて、抗原の放出を遅らせることによって抗原の作用を延長させるために抗原と複合体を形成するように設計された塩類などの他の物質を含んでもよい。この種の塩類の例として、アルミナケイ酸塩あるいはリン酸カルシウムを挙げることができる。
水相は、さらに任意選択で、リポ多糖のような当業者に周知の非特異的な免疫原性物質、またはキトサンを含んでもよい。同様に、水相は、免疫賦活力が認められている、ポリマー、非イオン性ポリマー(例えばポロキサマーなど)、合成クレー(例えばLaponite(R)およびChimilab Essorなど)、サイトカイン、あるいはビタミンEなどの酸化防止剤を含んでもよい。
本発明によれば、組成物は、5〜150mPa・s、好ましくは5〜100mPa・sの粘性を有する。
組成物の粘性は、HAAK−VT500という名称のレオ(Rheo)商標の粘度計のような回転子固定子タイプ粘度計を使用して、メーカーの指示書に従って、周囲温度、好ましくは25℃で測定される。
本発明の組成物は、当業者に周知の任意の操作方法によって調製可能である。例えば、本発明による組成物は、次の操作方法によって調製可能である:
− 第1工程では、抗原を、上記の追加物質が任意選択で組み込まれた水相に溶解または分散させ、該混合物を例えば水槽で、30〜60℃、好ましくは35〜45℃で加熱し;
− 第2工程(同時であってもよい)では、界面活性剤を油と混合し、該混合物を例えば水槽で、30〜60℃、好ましくは35〜45℃で加熱し;
− 第3工程では、ホモジナイザー(Rayneri(R)33300ホモジナイザーなど)を使用して水相を油相に組み入れる。これらの装置は、特にエマルジョンの調製において広範囲に使用されるものであり、したがって当業者には、本発明によって該混合物を調製するにあたり何ら困難はない;そして
− 最終工程において、得られた油状の等方性体を周囲温度に冷却して滅菌する。文献に記述されている様々な異なる方法、例えば、熱、イオン化放射線、あるいは濾過による
滅菌などをこの操作に使用可能である。好ましい方法は滅菌濾過である。
実施可能な別の方法によれば、最後の滅菌操作を必ずしも行わなくてもよいようにするために、出発物質として無菌のものを使用し、全製造をクリーンルーム内で実施することも可能である。
次の例は本発明の例示として示すものであり、本発明をどのようにも限定するものではない。同一の実施方法を使用する他の実施形態も可能である。
抗原相の組成
下記の3例においては、同一の抗原含有水相を使用する。該水相は、ブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)の菌株の培養中に分泌された抗原で構成されている無細胞の抗原相を含んでいる。この細菌は子豚における重篤かつ非常に広範囲の障害の原因である。
感染は、神経障害(運動協調性の欠如、振戦および痙攣)および関節障害を特徴とする。肺障害に加えて敗血症の事例も報告されている。ヒトに感染することもある(屠殺場労働者、獣医学の職員)。
培養物の無細胞上清だけを使用する。タンパク質の混合物を利用し、該タンパク質のうちの1つ、MRP(ムラミダーゼ放出タンパク質)を活性マーカーとして使用する。MRPの力価は、ELISAテスト(酵素結合免疫吸着定量法)によって測定可能である。抗MRPモノクローナル抗体をマイクロタイタープレートのウェルに固着させる。非特異的吸着を回避しうるように飽和させてから、ワクチン(分析しようとする抗原を含有)を希釈して各ウェルに移す。洗浄後、酵素に連結された抗MRPタンパク質モノクローナル抗体を添加する。酵素の基質/クロモゲンとの反応により、プレートリーダを使用して発色反応を測定することが可能になる。発色強度はワクチン中の抗原の量に正比例する。
この原液の力価が得られれば、当業者は、ワクチン剤を調製する際に使用する溶液の力価を希釈によって(例外的には濃縮によって)容易に調節することができる。
本発明によれば、所望量の抗原を含んでいる原液の分割量を、例えばリン酸塩緩衝液などワクチンの分野で一般に使用される緩衝液を必要かつ十分な量用いて希釈する。
組成物1
次の表は、実施する本発明の組成物を示す。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
Miglyol 810(R)、Tween80(R)およびSpan80(R)をビ
ーカーの中で混合する。得られた油相を40℃の水槽で加熱する。
並行して別々に、水相も40℃の水槽で加熱する。
500rpmで回転するタービンミキサー(Rayneri 33300)で均質化しながら、水相を油相に滴加する。
混合中、2つのビーカーは40℃に維持する。
混合し終えたら水槽から取り出し、周囲温度に冷却させる。
目的とする最終製品のMRPタンパク質力価は1.6である。目的とする力価は、理論上の任意の力価1を有する参照抗原に対する相対力価である。(1.6とは、そのワクチンが使用された参照抗原の1.6倍の力価を有することを意味する)。
組成物2
次の表の組成物を調製する。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
混合物を調製する過程は、実施例2に記載したのと同一である。
目的とする最終製品のMRPタンパク質力価は1.6である。
組成物3
次の組成物を調製する。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
Miglyol 810(R)、Tween80(R)およびSpan80(R)をビーカーの中で混合する。この混合物を120℃で30分間加熱することにより滅菌し、続いて周囲温度に冷却させる。
抗原を含んでいる水相は、孔径0.22μmの合成膜で濾過して滅菌する。上記の得られた油相を並行して別々に加熱し、水相は40℃の水槽で実施例1に従って調製する。
2つの相が同じ温度になったら、500rpmで回転するタービンミキサー(Rayneri 33300)で均質化しながら水相を油相に滴加する。
混合中、2つのビーカーは同じ温度に維持する。
混合物を調製し終えたら水槽から取り出し、周囲温度に冷却させる。
目的とする最終製品のMRPタンパク質力価蛋白は1.6である。
本発明による組成物の免疫原性と、従来技術による処方物の免疫原性との比較
実施例2の組成物1の活性を、文献に記載の当業者に周知のアジュバントを含む従来技術の他の組成物の活性と比較する。
したがって、さらに4つの処方物(対照)を、次の組成および操作方法によって調製する。
対照処方物1:従来の水中油型エマルジョン
このエマルジョンについては、実施例2の油状の等方性体について記述したのと同じ添加剤を様々な比率で使用し、臨界HLB11の、非常に微細なエマルジョンを得た。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
使用する方法は下記のとおりである:
実施例1において得られた抗原相を、孔径0.22μmの合成膜で濾過して滅菌する。
Miglyol(R)、Tween80(R)およびSpan80(R)をビーカーの中で混合し、該混合物を120℃で30分間加熱することにより滅菌し、周囲温度に冷却させる。
水相(抗原相)および油相を、水槽で別々に加熱する。2つの相が同じ温度になったら、3000rpmで撹拌しながら水相を油相に添加する。
水相の添加後も撹拌を30分間続ける。
対照処方物2:市販の水中油型アジュバント(Montanide IMS、SEPPIC)
セピック社(SEPPIC、フランス国パリ所在)から販売されているそのまま使用可能なアジュバントである、Montanide IMSを、この第2の参照用処方物に使用した。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
実施例1において得られた水相と上記アジュバントを、150rpmで回転するRayneri T33300ホモジナイザーを使用して、20秒間撹拌しながら混合する。
この全体を、孔径0.22μmの合成膜で濾過して滅菌する。
対照処方物3:市販の油/水アジュバント(Montanide ISA 763 VG、SEPPIC)
セピック社(SEPPIC、フランス国パリ所在)から販売されているそのまま使用可能な別のアジュバントである、Montanide ISA 763 VGを、この第3の参照用処方物に使用した。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
実施例1において得られた水相を0.22μmのナイロンフィルタで、アジュバントを孔径0.22μmのPTFEフィルタで濾過し、全体を無菌的に合わせる。
アジュバントを、Rayneri T33300ホモジナイザーを使用して800rpmで撹拌しながらビーカーに移す。
抗原水相を、1200rpmで撹拌しながら単回操作で組み入れ、30分間維持する。
対照処方物4:市販の油中水型アジュバント(Montanide ISA 563 VG、SEPPIC)
セピック社(SEPPIC、フランス国パリ所在)から販売されているそのまま使用可能な別のアジュバントである、Montanide ISA 563 VGを、この第4の参照用処方物に使用した。量はグラムで表示されている。
Figure 2008521865
該処方物の水相部分は0.22μmのナイロンフィルタで、アジュバントは孔径0.22μmのPTFEフィルタで濾過し、全体を無菌的に合わせる。
アジュバントを、Rayneri T33300ホモジナイザーを使用して800rpmで撹拌しながらビーカーに移す。抗原水相を、1200rpmで撹拌しながら単回操作で組み入れ、15分間維持する。
対照処方物5:国際公開公報第01/40240号パンフレットによるLHアジュバント
別のアジュバントLHは、COVACCINE社(オランダ国レリシュタット所在)のそのまま使用可能な実験用アジュバントであるが、これをこの最後の参照用処方物に使用した。量はミリリットルで表示されている。
Figure 2008521865
水性のアジュバントLHは、供給業者によって滅菌されており、そのまま受け入れられる。
無菌的に、水性の抗原相および生理食塩緩衝液を5〜10分間磁気撹拌して混合し、続いてLHアジュバントを該抗原相‐生理食塩緩衝液混合物に非常にゆっくり(「小滴として」)添加する。撹拌を10分間維持する。
MRP力価の比較
上述のように測定した参照用処方物のMRPタンパク質力価は、RPユニットでおよそ4である(RP:相対強度:米国農務省の相対強度計算ソフトウェア、バージョン3.0による測定単位)。
本発明による組成物の力価は1.01である。
確かに、本発明による組成物中に存在する水は少量であり、水相中の抗原濃度を増大させる以外には、参照用処方物と同じだけの抗原を組み込むことは不可能であるが、濃度の増大は免疫反応の測定にバイアスをかけることがある。
しかし、この著しく低い濃度にも関わらず、かつ驚くべきことに、下記に述べる結果は本発明によるアジュバントの著しく高い免疫原性を実証するものである。
対照組成物および本発明組成物の免疫原性および寛容性を比較する試験のプロトコール
寛容性および免疫原性の比較はマウスで実施する。実施例2における本発明の組成物1の免疫原性を、以下のような実験プロトコールにより対照組成物の免疫原性と比較した。
搬入時に18〜22グラムのBALB/Cマウス(供給業者:チャールズリバー)に、2週間の間隔で2回、腹腔内経路で250μlを注射した。血液サンプルは、2回目の注射の1週間後に、マウスの剖検時に得た。血清学的観点から、抗ブタ連鎖球菌抗体レベルをELISA方法によって評価した。
マイクロプレートのウェルを抗原(培養物の無細胞上清)で被覆した後、飽和させる。ワクチンを接種したマウスの血清を希釈し、該プレートに入れる。標識済みの抗マウス抗体(酵素とのコンジュゲート)を添加する。該酵素の基質/クロモゲンを入れ、発色反応を測定する。続いて、各組成物の免疫原性を、グループを構成するマウスの力価の平均に
相当する平均力価(RP単位)によって定義する。
寛容性は、3つの基準、すなわち死亡率、動物の活動性および被毛の外観に従って評価する。注射部位の残留物の存在も確認する。
結果
*免疫原性
表示した値は相対値である:表示の値は、本発明組成物の免疫原性を、参照番号5の免疫原性を基準として表しており、参照番号5は、試験した各参照処方物の免疫原性の評価についても基準として使用した。
Figure 2008521865
これらの結果は、参照処方物1および4に対して4分の1および6分の1の抗原を含有する組成物1(処方物A)が、これらの同じ対照処方物によって誘導される免疫学的応答の2〜80倍高い免疫学的応答を誘導することを示している。
*動物における寛容性
Figure 2008521865
これらの結果は、処方物A(組成物1)が、まさに参照処方物F(組成物5)と同様に、局所レベルおよび全身レベルのいずれにおいても完全に寛容され、かつ対照処方物4よりも極めて良好に寛容されることを示している。

Claims (25)

  1. 少なくとも1つの油と、少なくとも1つの界面活性剤と、水相であって少なくとも1つの活性物質を含んでなる水相との混合物を少なくとも含んでなる医薬組成物であって、エマルジョンの形態ではなく、油状の等方性体の形態である医薬組成物。
  2. 注射による投与に適した粘性を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 活性物質が、生物活性物質、特に、活発な抗原、減弱化された抗原、または不活性化された抗原であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
  4. ワクチンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 活性物質が抗原であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
  6. 抗原が、ウイルス由来、細菌由来、寄生生物由来、または腫瘍由来であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
  7. 抗原が、天然の抗原または組換え抗原であることを特徴とする、請求項5または6に記載の組成物。
  8. 抗原が、適切な場合は任意選択で不活性化された微生物で構成されるか、または前記微生物の一部で構成されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 少なくとも高濃度の界面活性剤および低濃度の水を含んでなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
  10. 組成物全体の重量に対して10〜90重量%、好ましくは40〜75重量%の油を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
  11. 組成物全体の重量に対して0.5〜20重量%、好ましくは3〜9重量%の水を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 組成物全体の重量に対して1〜60重量%、好ましくは16〜45重量%の界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 水の量に対する油の量の比率が、1未満であってはならず、好ましくは5未満にはならないことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
  14. 油が、鉱油、非鉱油、例えばタラ肝油、合成脂質、植物油、中鎖および長鎖トリグリセリド、またはテルペン油ならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 鉱油がパラフィン油およびワセリン油から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
  16. 非鉱油が、ダイズ油、オリーブオイル、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、ヒマシ油および扁桃油から選択される植物油であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
  17. 中鎖および長鎖トリグリセリドが、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから選択されることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
  18. テルペン油が、スクアランおよびスクワレンから選択されることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
  19. 油の混合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
  20. 界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
  21. 界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
  22. 界面活性剤が、ポリソルベート、ソルビタンエステル、特に、ソルビタンと脂肪酸とのエステル、ヒマシ油のポリオキシエチレン化誘導体、ステアリン酸のポリオキシエチレン化誘導体、エチレンオキシドとプロピレンオキシドまたはポロキサマーとの共重合体、サッカロースおよび脂肪酸のエステル、グリコールおよび脂肪酸のエステル、脂肪酸とグリセリンのモノエステル、ジエステル、トリエステル、ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、サッカロースおよび脂肪酸のエステルから選択されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
  23. 界面活性剤の混合物が使用されることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
  24. 周囲温度での粘性が、5〜150mPa・s、好ましくは5〜100mPa・sであることを特徴とする、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の組成物を調製する方法であって、
    第1工程で、抗原を、適切であれば上記の追加物質が組み込まれた水相に溶解または分散させ、該混合物を例えば水槽で、30〜60℃、好ましくは35〜45℃で加熱し;
    第1工程と同時であってもよい第2工程で、界面活性剤を油と混合し、該混合物を例えば水槽で、30〜60℃、好ましくは35〜45℃で加熱し;
    第3工程で、ホモジナイザーを使用して水相を油相に組み入れ;
    最終工程において、得られた油状の等方性体を周囲温度に冷却して滅菌する
    ことを特徴とする方法。
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