JP2008208327A - 樹脂複合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に水膨潤性層状無機化合物(B)が分散して存在するエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体において、前記水膨潤性層状無機化合物における長径が0.2μm未満の短粒子成分が5〜50%であり、かつ長径が0.5μm以上の長粒子成分が20〜50%の割合で分散して存在するエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体を用いる。
【選択図】なし
Description
なお、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
まず、本発明で用いられるEVOHは、通常、酢酸ビニルとエチレンの共重合体をケン化して得られるものであり、エチレン構造単位と酢酸ビニル構造単位、およびケン化により生成したビニルアルコール構造単位とを有する共重合体構造のポリマーである。また、場合により、少量の他の共重合可能なビニルモノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。
本発明で用いられるEVOH(A)は、従来公知の一般的なEVOHであればよく、例えば具体的には、そのエチレン含有量は、通常5〜60モル%、好ましくは20〜45モル%、特に好ましくは20〜35モル%である。かかるエチレン含有量が少なすぎた場合には溶融成形時の熱安定性が低下する傾向があり、多すぎた場合にはガスバリア性が低下し、さらに含水EVOHと水膨潤性層状無機化合物を混合した際のトルクが高くなり、水膨潤性層状無機化合物が小微粒子へと破砕されすぎる傾向がある。
また、EVOH(A)のMFR値は、含水率0.3%の状態で210℃、2160g荷重での測定値において、通常1〜100g/10分、好ましくは、2〜50g/10分、特に好ましくは、5〜40g/10分である。かかるMFR値が低すぎた場合には溶融加工時の負荷が高くなり加工性が低下する傾向があり、高すぎた場合には溶融加工時に粘度が不足し、垂れ等の問題が生じてフィルム等の成形性が低下する傾向がある。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等、公知の後変性処理をしたものでも差し支えない。
を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原
子または有機基を示す。]
ONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO4−、
−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられ(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数である)、その中でも熱溶融安定性の点で好ましくは非芳香族炭化水素鎖、特に好ましくはアルキレンであり、炭素数3以下のアルキレンが好適に用いられる。
また、エチレン含有量が異なるものを用いる場合、その構造単位は同じであっても異なっていても良いが、そのエチレン含有量差は1モル%以上、さらには2モル%以上、特には2〜20モル%であることが好ましい。かかるエチレン含有量差が大きすぎると延伸性が不良となる場合があり好ましくない。また、異なる2種以上のEVOH(ブレンド物)の製造方法は特に限定されず、例えばケン化前のEVAの各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後の各EVOHのアルコールまたは水とアルコールの混合溶媒に溶解させた溶液を混合する方法、各EVOHをペレット状、または粉体で混合した後、溶融混練する方法などが挙げられる。
次に、本発明で用いられる水膨潤性層状無機化合物(B)について説明する。
本発明に用いられる水膨潤性層状無機化合物(B)とは、フィロケイ酸塩などの膨潤性粘土鉱物として公知のものであり、単位結晶層が互いに積み重なった層状構造をしており、単位結晶層同士の結合が比較的弱いため、水によって単位結晶層間が膨潤し、単位結晶層が剥離されることが可能になる化合物を意味する。(B)は天然品であっても合成品であってもよい。天然品としては、ケイ素やアルミニウムのイオンに酸素イオンが配位してできる四面体シートと、アルミニウム、マグネシウムまたは鉄のイオンに酸素または水酸化物のイオンが配位してできる八面体シートに基づく繰り返し単位により層状構造を形成した無機化合物のうち、負に帯電した無機化合物の層の間に陽イオン(例えば、H+、Na+、Ca2+、Mg2+、など)が介在することで層間結合して積層構造を形成した水膨潤性を有する層状無機化合物であれば特に制限されることなく用いることが出来る。また合成品としては、フッ素金雲母の層間陽イオンのKをNaやLiに置き換えて同時に四面体中の陽イオンをSiのみにする方法で得られた水膨潤性を有する層状無機化合物を用いてもよい。
さらに、かかる水膨潤性層状無機化合物(B)はカチオン交換容量が通常100meq/100g以上、好ましくは100〜130meq/100g、特に好ましくは105〜120meq/100gであるとき、本発明の作用効果がより顕著に得られ好ましい。かかる容量が少なすぎる場合には水膨潤性が低下する傾向があり、多すぎる場合には層間結合力が強くなり層状無機化合物の剥離性が低下する傾向がある。
さらに、かかる水膨潤性層状無機化合物(B)は有機化処理を施したものであってもよく、かかる有機化処理の方法としては、4級アンモニウム塩などのオニウムイオン基を有する化合物を水膨潤性層状無機化合物(B)と混合する方法が挙げられる。
本発明のEVOH複合体におけるEVOH(A)中に分散した水膨潤性層状無機化合物(B)の分散状態は、成形および/または乾燥後の成形物を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認することができる。本発明における粒子の長径とは、EVOH複合体フィルムを作製した後、MD方向から観察したTEM画像について画像処理を施して抽出された分散粒子形状を楕円体に近似処理した際の、楕円の長軸の長さを示し、短径とは、同様に処理した際の短軸の長さを示す。
また、本発明のEVOH複合体におけるEVOH(A)中に分散した水膨潤性層状無機化合物(B)の分散形態は、成形および/または乾燥後の成形物を、TEM観察で得られた画像について画像処理を行い、抽出された各々の分散粒子について、分散粒子の個数、長径、短径、アスペクト比(長径/短径)、配向性(粒子の分散角度方向)などの各成分を計測することにより確認することができる。
また、さらなるガスバリア性改善作用を得るためには、長径が1μm以上である高表面積を有する分散粒子が3%以上、好ましくは5%以上の割合で含まれていることがより効果的で好ましい。
また、分散粒子の平均短径は、通常0.001〜0.3μmであることが好ましい。かかる平均短径が小さすぎた場合にはフィルム脆性が増してクラックが発生し易くなる傾向があり、大きすぎた場合には十分なガスバリア性改善作用が得られない傾向がある。
次に、本発明のEVOH複合体の製造法について説明する。
本発明のEVOH複合体の製造法は基本的には、従来法でも可能であるが、本発明で規定する特定の粒子割合とするためには、例えば、(I)比較的含水量の多い状態でEVOH(A1)と水膨潤性層状無機化合物(B)を混合し、得られた混合物(以下、組成物(C)と称す)を次いでEVOH(A2)と混合するという、二段階の混合過程を経て製造する方法により、本発明の物性のものを効果的に得ることが出来る。また、(II)一段階の混合にて、EVOH(A)と水膨潤性層状無機化合物(B)を混合する場合でも、混合条件を工夫することによって得ることが出来る。かかる混合方式としては特に限定されないが、均一な混合が可能であり、かつ生産性に優れる点で、溶融混合が好ましい。
さらには、含水率50%以上の高含水エチレン−ビニルアルコール共重合体(A1)に水膨潤性層状無機化合物(B)を配合して溶融混練し、次いで得られた組成物(C)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(A2)とを混合する方法が最も好ましい。
このような二段階の製造工程を経る方法において、EVOH(A1)およびEVOH(A2)は前記したEVOH(A)と同様のEVOHを使用することができ、また、EVOH(A1)およびEVOH(A2)は、エチレン含有率、ケン化度、変性基の種類、変性基の含有量、およびMFR値がそれぞれ同じものを使用することもできるし、異なるものを使用することもできる。
なお、本発明におけるEVOHの含水率は以下の方法により測定・算出されるものである。〔含水率の測定方法〕
EVOHを電子天秤にて秤量(W1)し、150℃の熱風乾燥機中で5時間乾燥させ、
デシケーター中で30分間放冷後の重量を秤量(W2)し、下記式より算出する。
含水率(重量%)=[(W1−W2)/W1]×100
EVOH(A)に水を含有させ、かかる含水率を調整する方法としては、特に制限されないが、EVOH中に水を均一に含有させるような方法を採用することが好ましく、かかる方法としては、(i)EVOHのアルコール/水混合溶剤溶液を水中に投入し、EVOH粒子を析出させ、濾別後充分に水洗してアルコールを除去し水を含有させる方法、(ii)EVOHを加圧熱水中で1〜3時間程度処理する方法、(iii)EVOHの製造
時においてエチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化後のペーストを水中に導入してストランド等の固形状に析出させて水を含有させる方法等が挙げられ、これらの中でも(iii)
の方法が好ましく用いられる。なお、EVOH粒子やペレットと水とを直接混合してもよいが、EVOH中に水が均一に含まれるように温度や攪拌等の混合条件に留意する必要がある。
通りエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるものであるが、かかるケン化反応は、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を、アルコール又はアルコール含有媒体中に通常20〜60重量%程度の濃度になる如く溶解し、公知のアルカリ触媒、あるいは酸触媒を添加して通常40〜140℃の温度で反応せしめる。該溶液温度において反応後のEVOHが析出しない様に配慮すれば、該EVOHの濃度に特に制限はないが、その濃度は通常10〜55重量%、好ましくは15〜50重量%となるようにすれば良い。
水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機酸エステル等が用いられるが、取り扱いの容易な点で水又は水/アルコール混合溶媒が好ましい。該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜4のアルコールが用いられるが、工業上好ましくはメタノールが用いられる。
更に該凝固液中に、カルボン酸および/またはカルボン酸金属塩および/またはカルボン酸エステルを含有させることも好ましい。
次いで、ストランド状に押し出されたEVOHは凝固が充分進んでから切断され、ペレット化されその後水洗される。かかるペレットの形状は、円柱状の場合は径が1〜10mm、長さ1〜10mmのもの(更にはそれぞれ2〜6mmのもの)が、又球状の場合は径が1〜10mmのもの(更には2〜6mmのもの)が溶融混練の安定性の点で好ましい。
かくして得られた含水EVOH(A1)および水膨潤性層状無機化合物(B)を溶融混合するわけであるが、かかる溶融混合は公知の溶融混練装置を用いて混合すればよい。用いる装置・方法等に特に制限はなく、例えば押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダーなどの公知の混練(混合)装置を使用して行う公知の方法を用いることができる。これらの混練装置は単独で使用してもよいが、2種類以上の装置を組み合わせて使用してもよい。また、用いる装置は、EVOH(A1)及び水膨潤性層状無機化合物(B)の種類、性質、形状等によって適宜選択すればよく、通常は工業的に広く用いられている単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等が好適に用いられる。この中でも、混合の均一性及び安定性に優れる二軸押出機が最も好適に用いられる。
含水状態のEVOH(A1)及び水膨潤性層状無機化合物(B)を二軸押出機に供給するにあたっては、特に制限はなく、(1)含水状態のEVOH(A1)と固体状態[粉状、フレーク状]の水膨潤性層状無機化合物(B)を一括に該押出機のホッパーに投入する方法、(2)含水状態のEVOH(A1)を押出機のホッパーから投入し、固体状態である(B)を該押出機のバレルの一部から供給する(サイドフィード)方法、(3)含水状態のEVOH(A1)と(B)を予め水に分散させた分散液を一括に該押出機のホッパーに投入する方法、(4)含水状態のEVOH(A1)を押出機のホッパーから投入し、(B)を予め水に分散させた分散液を該押出機のバレルの一部から供給する(サイドフィード)方法等を挙げることができる。(B)の配合量の増量が容易にできることから、(1)及び(2)の方法が好適であり、さらに、ホッパー投入部でのブロッキング現象を抑制して製造時のハンドリング性が良好であることから(2)の方法が最も好適である。
上記押出機から吐出直後の組成物(C)の含水率は通常40重量%以上70重量%未満であり、好ましくは45〜65重量%、特に好ましくは50〜60重量%である。かかる含水率が少なすぎた場合には、(A1)成分と(B)成分の混合時にトルクが高くなり水膨潤性層状無機化合物が破砕され、本発明のEVOH複合体が得られにくい傾向があり、多すぎた場合には混合時に固形分成分と水が分離しやすく不均一な混合状態となり、EVOH複合体のフィルム外観の悪化やストランド切れによる加工性低下を生じる傾向がある。
かかる組成物(C)における水膨潤性層状無機化合物(B)の量は、含水率0.3重量%の状態で組成物(C)の総重量に対して通常10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、さらに好ましくは17〜30重量%である。かかる(B)成分の配合量が少なすぎた場合、混合時に樹脂成分と水が分離しやすく不均一な混合状態となり、EVOH複合体のフィルム外観の悪化やストランド切れによる加工性低下を生じる傾向があり、多すぎた場合には得られた組成物(C)をEVOH(A2)と混合して本発明のEVOH複合体を得る際に、水膨潤性層状無機化合物(B)の分散状態が不十分となりフィルム外観が悪化する傾向がある。
次いで、上記のようにして得た組成物(C)をEVOH(A2)とを混合し、本発明のEVOH複合体を得る。
このとき、組成物(C)とEVOH(A2)との割合は、(C)/(A2)として重量比にて通常1/99〜60/40、好ましくは5/95〜50/50、特に好ましくは10/90〜40/60である。
このとき、組成物(C)またはEVOH(A2)をサイドフィーダーで供給する場合には、スクリューフィーダー(単軸或いは二軸)等を押出機に設置すればよい。サイドフィーダーの設置場所としては、特に限定はされないが、混合時の水膨潤性層状無機化合物の破砕を抑制する点からEVOHを溶融状態にする1番目の混練部以後に設置することが好適である。
また、吐出後のEVOH複合体の含水率を低減させる目的で、溶融混練中に水分が少なくとも1箇所以上のベントから除去されるようにすることが好ましく、特には真空ポンプ
等を用いて減圧吸引することが乾燥効率とEVOH樹脂の熱劣化抑制の点で好ましい。
かくして得られた本発明のEVOH複合体は必要に応じて、成形前に乾燥が行われる。
かかる乾燥方法としては種々の方法を採用することが可能である。例えば、実質的にペレット状のEVOHが機械的にもしくは熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状のEVOH複合体が撹拌、分散などの動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられ、流動乾燥を行うための乾燥器としては円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられ、また、静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行うことも可能である。
量部であり、該含水率が少なすぎた場合には成形時のロングラン成形性が低下する傾向にあり、多すぎた場合には押出成形時に発泡が発生する傾向がある。
本発明のEVOH複合体は、通常、溶融成形等によりフィルム、シート、容器、繊維、棒、管、各種成形品等に成形され、各種用途に用いられる。また、これらの粉砕品(回収品を再使用する時など)を用いて再び溶融成形に供することもできる。かかる溶融成形方法としては、押出成形法(T−ダイ押出、インフレーション押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法が主として採用される。溶融成形温度は、通常150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
また、本発明のEVOH複合体は、単体の成形物として用いることができるが、特に該EVOH複合体を含む層を少なくとも1層有する積層体として各種成形物に成形して用いることが有用である。
該積層体の製造方法としては、例えば本発明のEVOH複合体からなるフィルムやシートに熱可塑性樹脂を溶融押出する方法、逆に熱可塑性樹脂等の基材に該EVOH複合体を溶融押出する方法、該EVOH複合体と他の熱可塑性樹脂とを共押出する方法、更には該EVOH複合体からなるフィルムやシートと他の基材のフィルム、シートとを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等が挙げられる。また、本発明の製造法で得られたEVOH複合体は、共押出成形に供することも好ましい。
なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。
(含水EVOH(A1’)の作製)
エチレン含有量29モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を40%含むメタノール溶液1000部に、水酸化ナトリウムを6%含むメタノール溶液40部およびメタノール2500部を連続的に供給すると共に副生する酢酸メチルおよび余分のメタノールを系から留出させながら、110℃で2.5時間ケン化反応を行い、酢酸ビニル成分のケン化度99.0モル%のEVOHを得た。次に該ケン化反応終了液に、30%含水メタノール450部を共沸点下で供給しながら余分のメタノールを留去させ、EVOHの水/メタノール混合溶液[水/メタノール=50/50(重量比)、樹脂濃度40%]を得た。続いて該EVOH溶液(液温50℃)を孔径4mmのノズルより5℃に維持された凝固液(水95%、メタノール5%よりなる)槽にストランド状に押し出して、EVOHをストランド状に凝固させた後、該ストランド状のEVOHを水槽の端部に付設された引き取りローラーに導き、カッターで切断し、直径4mm、長さ4mmの白色の多孔性ペレット(樹脂分30%、含水率25%、メタノール含有量45%)を得た。更に、得られた白色の多孔性ペレットを、30℃の温水1000部に投入して、約240分間撹拌洗浄して、含水率60%のEVOH(A1’)ペレットを得た。
EVOH(A1)として、含水率60%のEVOH(A1’)を用い、水膨潤性層状無機化合物(B)として天然モンモリロナイト〔『クニピアF』膨潤力62ml/2g、カチオン交換容量109meq/100g、アスペクト比320、クニミネ鉱業製〕を二軸押出機(スクリュー径15mm、L/D=60 テクノベル社製KZW15−60MG)に供給して溶融混合を行った。この際、含水率60%のEVOH(A1’)はホッパー部より供給、水膨潤性層状無機化合物(B)はKZW15用2軸サイドフィーダー(C3位置に設置)より供給した。
〔混合条件〕
(A1’)供給量 1.2kg/時間
(EVOH成分として0.48kg/時間)
(B)供給量 0.12kg/時間
スクリュー構成 フルフライト構成
スクリュー回転数 200rpm
ダイス ストランドダイ(径3mmφ:1穴)
ベント すべて閉
温度設定 C1 65℃ C7 90℃
C2 90℃ C8 90℃
C3 90℃ D 90℃
C4 90℃
C5 90℃
C6 90℃
モータートルク 4.8Ampere
次に、組成物(C)と、EVOH(A2)として、含水率0.3%のEVOH(A2’)〔エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%、MFR(210℃)8g/10分〕を重量比として(C)/(A2’)=25/75の割合で混合した後、二軸押出機(スクリュー径15mm、L/D=60 テクノベル社製KZW15−60MG)のホッパー部に供給して溶融混合を行った。
〔(C)/(A2’)混合条件〕
(C)/(A2’)供給量 1.5kg/時間
スクリュー構成 フルフライト構成
スクリュー回転数 200rpm
ダイス ストランドダイ(径3mmφ:1穴)
ベント C7部のみ開放、その他は閉
温度設定 C1 200℃ C7 220℃
C2 220℃ C8 220℃
C3 220℃ D 220℃
C4 220℃
C5 220℃
C6 220℃
モータートルク 9.2Ampere
得られたペレットを白金容器に入れて電子天秤にてフィルム重量を秤量(Wa:単位g)した後、700℃に維持された電気炉内に1.5時間入れてEVOH成分を焼却させた後、さらに炉から取り出してデシケーター内で30分間放冷させた後の重量を同様に秤量(Wb)して、EVOH100重量部に対する水膨潤性層状無機化合物量を以下の(1)式から算出した結果、5.0重量部であった。
水膨潤性層状無機化合物量(重量部)={Wb/(Wa―Wb)}×100 …(1)
上記で得られた本発明のEVOH複合体のペレットを、Tダイを取り付けた二軸押出機(スクリュー径15mm、L/D=60 テクノベル社製KZW15−60MG)に供給して単層フィルム(膜厚30μm)を作製した。
〔EVOH複合体の単層フィルム成形条件〕
EVOH複合体供給量 1.7kg/時間
スクリュー構成 フルフライト構成
スクリュー回転数 200rpm
ダイス Tダイ(コートハンガータイプ、ダイ巾250mm)
ベント C7部のみ開放、その他は閉
温度設定 C1 200℃ D1 220℃
C2 220℃ D2 220℃
C3 220℃ D3 220℃
C4 220℃ D4 220℃
C5 220℃ D5 220℃
C6 220℃
C7 220℃
C8 220℃
冷却ロール温度 90℃
引き取り速度 3m/min
エアギャップ 25mm
[I]水膨潤性層状無機化合物の分散形態解析
(a)透過型電子顕微鏡観察
透過型電子顕微鏡装置[日本電子製『JEM−1010』]を用いて、水膨潤性層状無機化合物の分散形態を観察した。
観察部位:フィルムのMD方向断面(Edge面)
前処理:エポキシ樹脂で包埋後、ウルトラミクロトームで超薄切片を作成
染色方法:四酸化ルテニウムで染色
写真倍率:10000倍
得られたTEM画像について、ImagePrpPlus(日本ローバー社製)を用いてバックグラウンド処理、二値化処理を行って抽出された分散粒子形状を楕円体に近似して長軸、単軸を決定した。その後、TEM写真内に含まれる分散粒子の個数と各分散粒子における粒子長径(長軸上のフィラー長さ)、粒子短径(単軸上のフィラー長さ)アスペクト比(粒子長径/粒子短径)、長軸の角度(TEM画像の横軸を基準軸に設定)をそれぞれ計測した。
上記で得られた計測値を用いて以下の数値成分を算出した。結果を表1に示す。
(b−1)低粒子成分割合:X
以下に示した式(2)より算出した。
X(%)=(長径0.2μm未満の分散粒子数)/(全分散粒子数)×100…(2)
(b−2)長粒子成分割合:Y
以下に示した式(3)より算出した。
Y(%)=(長径0.5μm以上の分散粒子数)/(全分散粒子数)×100…(3)
(b−3)高表面積を有する分散粒子の割合:Z
以下に示した式(4)より算出した。
Z(%)=(長径1μm以上の分散粒子数)/(全分散粒子数)×100 …(4)
(b−4)分散粒子の平均長径:Ll
以下に示した式(5)より算出した。
Ll(μm)=(各分散粒子の長径の和)/(全分散粒子数) …(5)
(b−5)分散粒子の平均短径:Ls
以下に示した式(6)より算出した。
Ls(μm)=(各分散粒子の短径の和)/(全分散粒子数) …(6)
(b−6)分散粒子の平均アスペクト比:α
以下に示した式(7)より算出した。
α=(分散粒子の平均長径)/(分散粒子の平均短径) …(7)
(b−7)分散粒子の配向性:D
各粒子の長軸角度の平均値(TEM画像の横軸を基準軸として計測し、平均値を算出した値)に最も近い角度の粒子を基準粒子とし、かかる基準粒子の長軸を基準軸とした場合に、長軸の傾きが30度未満の角度をなす分散粒子の割合を、以下に示した式(8)より算出して、分散粒子の配向性指標とした。
D(%)=(各粒子の長軸角度平均値に最も近い角度を示す粒子成分に対して長軸の傾きが30度未満の角度をなす分散粒子数)/(全分散粒子数) …(8)
酸素透過度測定装置[MOCON社製『OXTRAN2/20』]を用いて、23℃・80%RHの条件下で酸素透過度を測定した。なお、テストガスとしては100%濃度の酸素ガスを使用した。結果を表2に示す。
(III)引張特性の評価
オートグラフ[島津製作所製『AGS−H 5kN』]を用いて、JIS K7161に準じてフィルムMD方向の引張特性について評価した。結果を表2に示す。
フィルム試料 23℃・50%RH調湿フィルム
試験片形状 JIS K7127−type5
引張速度 50mm/min
実施例1において、含水率60%のEVOH(A1’)と水膨潤性層状無機化合物(B)を混合する際のスクリュー構成を強混練型スクリュー構成(C2部、C4部、C6部にニーディングディスクを配置)に変更した以外は同様に行った。この時、(A1’)(B)混合時のモータートルクは5.9Ampere、押出直後の組成物(C)の含水率は41%であった。なお、得られたEVOH複合体のペレットの含水率は0.3%、EVOH100重量部に対する水膨潤性層状無機化合物量は5.0重量部であった。
含水率60%のEVOH(A1’)と水膨潤性層状無機化合物(B)として天然モンモリロナイト〔『クニピアF』〕を二軸押出機(スクリュー径57mm、L/D=44 大阪精機工作製OTE−57−II)に供給して溶融混合を行った。この際、含水率60%のEVOH(A1’)はホッパー部より供給、水膨潤性層状無機化合物(B)は2軸サイドフィーダー(C5位置に設置)より供給した。
〔混合条件〕
(A1’)供給量 130kg/時間
(EVOH成分として52kg/時間)
(B)供給量 13kg/時間
スクリュー構成 通常混練型スクリュー
(C1〜C5間、C6〜C13間にニーディングディスクを配置)
スクリュー回転数 250rpm
ダイス ストランドダイ(径3.5mmφ:8穴)
ベント C8、C11部のみ開放、その他は閉
温度設定 C1 65℃ C9 95℃
C2 90℃ C10 95℃
C3 95℃ C11 95℃
C4 95℃ C12 95℃
C5 95℃ C13 95℃
C6 95℃ AD 95℃
C7 95℃ D 95℃
C8 95℃
モータートルク 54Ampere
〔(C)/(A2’)混合条件〕
(C)供給量 18.5kg/時間
(A2’)供給量 30kg/時間
スクリュー構成 通常混練型スクリュー
スクリュー回転数 80rpm
ダイス ストランドダイ(径3.5mmφ:8穴)
ベント C8を開放、C11部を真空吸引、その他は閉
温度設定 C1 200℃ C9 230℃
C2 230℃ C10 230℃
C3 230℃ C11 230℃
C4 230℃ C12 230℃
C5 230℃ C13 230℃
C6 230℃ AD 230℃
C7 230℃ D 230℃
C8 230℃
モータートルク 110Ampere
得られたEVOH複合体について、実施例1と同様の条件にて単層フィルム(膜厚30μm)を作製し、同様の評価とを行った。
また、外観特性評価用の単層フィルム(膜厚30μm)を作製して評価を行った。
〔外観評価用単層フィルム成形条件〕
押出機 40mmφ単軸押出機
スクリュー構成 フルフライト(圧縮比3.5)
スクリュー回転数 40rpm
スクリーンパック 90/120/90メッシュ
ダイス Tダイ(コートハンガータイプ、ダイ巾450mm)
温度設定 C1 210℃ H 230℃
C2 230℃ D 230℃
C3 230℃
C4 230℃
冷却ロール温度 90℃
引き取り速度 8.9m/min
エアギャップ 100mm
(IV)フィルム外観特性の評価
デジタル欠陥検査装置[MAMIYA−OP製『GX−70LT』]を用いて、10cm×10cm内におけるフィッシュアイ数を数値評価した。評価は、フィッシュアイ(小)[直径0.1mm以上0.19mm未満]、フィッシュアイ(大)[直径0.2mm以上]、の2種類に分類して計測した。
実施例4
実施例3において、含水率25%に調整した組成物(C)の供給量を13.5kg/時間に変更した以外は同様に行った。なお、含水率25%の組成物(C)は、押出機より得られた含水率46%の組成物(C)を流動乾燥機にて温度80℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて45分間乾燥を行ったものを用いた。得られたEVOH複合体のペレットの含水率は0.15%、EVOH100重量部に対する水膨潤性層状無機化合物量は5.0%であった。
得られたEVOH複合体について、実施例3と同様の条件にて外観特性評価用の単層フィルム(膜厚30μm)を作製して、同様の評価を行った。
実施例5
実施例3において、含水率15%に調整した組成物(C)の供給量を11.7kg/時間に変更した以外は同様に行った。なお、含水率15%の組成物(C)は、押出機より得られた含水率46%の組成物(C)を流動乾燥機にて温度80℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて2時間乾燥を行ったものを用いた。得られたEVOH複合体のペレットの含水率は0.15%、EVOH100重量部に対する水膨潤性層状無機化合物量は5.0%であった。
得られたEVOH複合体について、実施例3と同様の条件にて外観特性評価用の単層フィルム(膜厚30μm)を作製して、同様の評価を行った。
実施例6
実施例3において、含水率5%に調整した組成物(C)の供給量を10.5kg/時間に変更した以外は同様に行った。なお、含水率5%の組成物(C)は、押出機より得られた含水率46%の組成物(C)を流動乾燥機にて温度80℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて16時間乾燥を行ったものを用いた。得られたEVOH複合体のペレットの含水率は0.13%、EVOH100重量部に対する水膨潤性層状無機化合物量は5.0%であった。
得られたEVOH複合体について、実施例3と同様の条件にて外観特性評価用の単層フィルム(膜厚30μm)を作製して、同様の評価を行った。
含水率60%のEVOH(A1’)ペレットを塔式流動層乾燥機により窒素ガスを80℃雰囲気中で40分接触(空塔速度1.6m/sec)させて、含水率30重量%のEVOH(A1’’)ペレットを得た。
含水率30%のEVOH(A1’’)と水膨潤性層状無機化合物(B)として天然モンモリロナイト〔『クニピアF』〕を二軸押出機(スクリュー径15mm、L/D=60 テクノベル社製KZW15−60MG)に供給して溶融混合を行った。この際、含水率30%のEVOH(A1’’)はホッパー部より供給、水膨潤性層状無機化合物(B)はKZW15用2軸サイドフィーダー(C3位置に設置)より供給した。
〔(A1’’)/(B)混合条件〕
(A1’’)供給量 1.2kg/時間
(EVOH成分として0.84kg/時間)
(B)供給量 0.044kg/時間
スクリュー構成 強混練型スクリュー構成
スクリュー回転数 200rpm
ダイス ストランドダイ(径3mmφ:1穴)
ベント すべて閉
温度設定 C1 65℃ C7 90℃
C2 90℃ C8 90℃
C3 90℃ D 90℃
C4 90℃
C5 90℃
C6 90℃
モータートルク 7.6Ampere
得られたEVOH複合体について、実施例1と同様の条件にて単層フィルム(膜厚30μm)を作製し、同様の評価を行った。
含水率30%のEVOH(A1’’)と水膨潤性層状無機化合物(B)として天然モンモリロナイト〔『クニピアF』〕を8インチ2本ロール装置(安田精機製)に供給して溶融混合を行った。
〔(A1’’)/(B)混合条件〕
(A1’’)供給量 0.4kg(EVOH成分として0.28kg)
(B)供給量 0.015kg
クリアランス 0.35mm
ロール回転数 前ロール 12rpm 後ロール 15rpm
ロール表面温度 前ロール、後ロールともに97℃
混練時間 10分
得られたEVOH複合体について、実施例1と同様の条件にて単層フィルム(膜厚30μm)を作製し、同様の評価を行った。
以上の実施例、比較例の条件および結果を表1〜4に表わす。
また、実施例1〜6では、長粒子成分の影響によりフィルム剛性が大きく向上している。さらに、長粒子成分に加えて短粒子成分が多く存在することによって、引張時の破断歪みの低下が少なくフィルムの脆化が抑制されている。それに対して、比較例1では長粒子成分の存在割合が少ないために、十分なフィルム剛性改善が得られていない。
また、EVOH(A2)に混合する際の組成物(C)の含水量を適度に調整することによって、上記ガスバリア性能、フィルム剛性の改善に加えて、組成物(C)に含まれる水分の乾燥効率を改善でき、なおかつフィッシュアイ発生量の少ない外観良好なフィルムが得られた。
Claims (12)
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に水膨潤性層状無機化合物(B)が分散して存在するエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体において、前記水膨潤性層状無機化合物における長径が0.2μm未満の短粒子成分が5〜50%であり、かつ長径が0.5μm以上の長粒子成分が20〜50%の割合で分散して存在するエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- 水膨潤性層状無機化合物(B)の長粒子の分散状態が、各粒子の長軸角度平均値に最も近い角度を示す粒子成分に対して30度未満のものが90%以上である請求項1記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)中に分散した水膨潤性層状無機化合物(B)の平均アスペクト比(長径/短径)が2〜20であることを特徴とする請求項1および2記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- 分散した水膨潤性層状無機化合物(B)の平均短径が0.001μm〜0.3μmの範囲で膨潤剥離されたものである請求項1〜3いずれか記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- 水膨潤性層状無機化合物(B)の配合量が、エチレン−ビニルアルコール共重合体複合体の総重量に対して0.5〜15重量%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- 上記エチレン−ビニルアルコール共重合体(A)と水膨潤性層状無機化合物(B)との割合が、(A)/(B)として85/15〜99.5/0.5(重量比)であることを特徴とする請求項1〜5記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体。
- 請求項1〜6記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体を含むことを特徴とする成形物。
- 請求項1〜7記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体を含む層を少なくとも1層有することを特徴とする積層体。
- 含水率50%以上の高含水エチレン−ビニルアルコール共重合体(A1)と水膨潤性層状無機化合物(B)を混合して得られた組成物(C)。
- 含水率50%以上の高含水エチレン−ビニルアルコール共重合体(A1)と水膨潤性層状無機化合物(B)を混合し、次いで得られた組成物(C)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(A2)とを混合して得られることを特徴とする請求項1〜6記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体の製造法。
- 上記組成物(C)の含水率が、5重量%以上60重量%未満であることを特徴とする請求項10記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体の製造法。
- 上記組成物(C)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(A2)との混合割合が、(C)/(A2)として1/99〜60/40(重量比)であることを特徴とする請求項10および11記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体複合体の製造法。
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