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JP2008127673A - 微細構造体の製造方法および微細構造体 - Google Patents

微細構造体の製造方法および微細構造体 Download PDF

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JP2008127673A JP2006317166A JP2006317166A JP2008127673A JP 2008127673 A JP2008127673 A JP 2008127673A JP 2006317166 A JP2006317166 A JP 2006317166A JP 2006317166 A JP2006317166 A JP 2006317166A JP 2008127673 A JP2008127673 A JP 2008127673A
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Abstract

【課題】陽極酸化皮膜自体の表面積を増加させることにより、吸着剤や触媒などの担体、物質分離材、遠赤外線放射体等の機能材料としてより高機能となる微細構造体を効率的に製造する製造方法およびその方法によって得られる微細構造体の提供。
【解決手段】3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で、アルミニウム基板に陽極酸化処理(A)を施し、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を得る、微細構造体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、微細構造体の製造方法、より詳しくは陽極酸化皮膜を有する比表面積の大きな微細構造体の製造方法に関する。
規則的な微細構造を有する微細構造体(ナノ構造体)を作製する方法についての研究が注目され、多く行われている。
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化皮膜が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
非特許文献1には、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜が記載されている。また、非特許文献2には、陽極酸化皮膜には、酸化の進行に伴って、細孔が自然形成されることが記載されている。また、非特許文献3では、多孔質酸化皮膜をマスクとしてSi基板上にAuドットアレイを形成することも提案されている。
陽極酸化皮膜の材料としての最大の特徴は、複数のマイクロポアが、基板表面に対してほぼ垂直方向に、ほぼ等間隔に平行に形成されたハニカム構造を採る点にあるとされている。これに加え、ポア径、ポア間隔およびポア深さを比較的自由に制御することができる点もほかの材料にない特徴であるとされている(非特許文献3参照。)。
陽極酸化皮膜の応用例としては、吸着剤や触媒などの担体、物質分離材、遠赤外線放射体等の機能材料として使用されている。
例えば、車両用の触媒コンバータとしては、γ−Al23を被覆し、このγ−Al23に金属触媒を担持させた構造体が知られている。
また、脱臭材としては、脱臭作用を有する物質を担持させた構造体が知られている。
更に、エチレン除去剤等の物質を構造体に担持させ、動植物から発生したエチレンを除去することにより動植物の呼吸作用を維持すると共に、アルミナから発生した遠赤外線によって動植物の生理活性を高めた構造体も知られている。
このような種々の用途に使用される構造体の多くは、その構造を微細にすること、即ち、比表面積を大きくすることにより更に高機能なものとなることが知られている。
例えば、特許文献1には、「Al若しくはAl合金若しくはAlとAl合金の混合粉末を無加圧下焼成して成る連通孔を有する多孔質焼結体を沸騰水中もしくは水蒸気中に曝露し、その表面にベーマイト層を生成させた後、これを前記多孔質焼結体の融点未満の基体が溶融しない温度に加熱し、前記ベーマイト層を微棚孔の有するγ−Al23又はγ′−Al23の層に変質させることを特徴とするAl系多孔質焼結体を基体とする担体の製造方法。」が記載されている。
また、特許文献2には、「陽極酸化された金属表面を、比抵抗が2×105Ωcm以上であって脱気処理された5℃〜45℃の水を用い、数分〜数時間水和封孔処理した後、300℃〜500℃で焼成することを特徴とする、25Å〜250Åの間に細孔半径分布のピークを少なくとも一つ有する陽極酸化皮膜を形成させる方法。」が記載されている。
更に、特許文献3には、本出願人により、高濃度硫酸電解浴で生成した陽極酸化皮膜を平版印刷版に利用した技術、具体的には、「粗面化したアルミニウム板を陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成する際、該処理液として濃度200〜500g/lの硫酸水溶液を使用することを特徴とする、光重合組成物を用いる直接製版可能なネガ型平版印刷版用支持体の製造方法。」が提案されている。
特開平2−129302号公報 特許3154638号公報 特開2000−263959号公報 H.Masuda et.Al.,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.37(1998),pp.L1340−1342,Part2,No.11A,1 November 1998(Fig.2.) 「表面技術便覧」、(社)表面技術協会編(1998)、日刊工業新聞社、p.490−553 益田秀樹,「陽極酸化アルミナにもとづく高規則性メタルナノホールアレー」,固体物理,1996年,第31巻,第5号,p.493−499
しかしながら、本発明者が検討した結果、特許文献1および3に記載されている方法では、BET比表面積[m2/g-Al23]が不十分であり、特許文献2に記載されている方法では、処理時間に数時間〜数10時間を要するので生産性が十分ではないことが分かった。
そこで、本発明は、陽極酸化皮膜自体の表面積を増加させることにより、吸着剤や触媒などの担体、物質分離材、遠赤外線放射体等の機能材料としてより高機能となる微細構造体を効率的に製造する製造方法およびその方法によって得られる微細構造体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中でアルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を効率的に得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
(1)3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で、アルミニウム基板に陽極酸化処理(A)を施し、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を得る、微細構造体の製造方法。
上記陽極酸化処理(A)は、形成する陽極酸化皮膜の膜厚が0.1〜10μmとなるように施すのが好ましい。
(2)上記陽極酸化処理(A)の後に、上記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の一部を、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液により溶解する溶解処理(B)を施す、上記(1)に記載の微細構造体の製造方法。
(3)上記陽極酸化処理(A)の後に、上記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる水和処理(C)を施す、上記(1)に記載の微細構造体の製造方法。
(4)上記溶解処理(B)の後に、上記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる水和処理(C)を施す、上記(2)に記載の微細構造体の製造方法。
上記アルミニウム基板は、BET法で測定した拡面率が1.2以上となる基板であるのが好ましく、BET法で測定した拡面率が1.5〜55となる基板であるのがより好ましい。
(5)上記溶解処理(B)に用いる上記酸性水溶液が、硫酸、シュウ酸またはリン酸の水溶液である上記(2)または(4)に記載の微細構造体の製造方法。
(6)pH8〜12、温度40℃未満の水溶液を用いて上記水和処理(C)を施す上記(3)または(4)に記載の微細構造耐の製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の微細構造体の製造方法により得られる微細構造体。
本発明の微細構造体の製造方法によれば、陽極酸化皮膜自体の表面積を増加させることができ、吸着剤や触媒などの担体、物質分離材、遠赤外線放射体等の機能材料としてより高機能となる微細構造体を効率的に提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の微細構造体の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で、アルミニウム基板に陽極酸化処理(A)を施し、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を得る、微細構造体の製造方法である。
本発明においては、陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させ、陽極酸化処理(A)の後に所望により施す水和処理(C)や機能性材料の充填処理における経時の表面積低下を抑制する観点等から、上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の一部を、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液により溶解する溶解処理(B)を施すのが好ましい。
また、本発明においては、陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させ、機能材料として更に高機能とする観点から、上記陽極酸化処理(A)または上記溶解処理(B)の後に、上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる水和処理(C)を施すのが好ましい。
次に、本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板および該アルミニウム基板に施す陽極酸化処理(A)ならびに所望により施される溶解処理(B)および水和処理(C)について詳述する。
[アルミニウム基板]
本発明の製造方法に用いられるアルミニウム基板は、特に限定されず、その具体例としては、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;等が挙げられる。
本発明においては、アルミニウム基板は、そのアルミニウム純度が90質量%以上であるのが好ましく、99.0質量%以上であるのがより好ましく、99.5質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度がこの範囲であると、後述する陽極酸化処理(A)を均質に施すことができる。
また、アルミニウム基板として、一般に陽極酸化皮膜を微細構造体用途として使用する場合に用いられる、アルミニウム純度が99.99質量%以上の高純度のものも好適に使用することできる。
更に、アルミニウム基板として、Cu、Fe、Ni、Cr等の異種金属やこれらの合金に、アルミニウム純度が90質量%以上のアルミニウムを真空蒸着法により設けた多層基板も好適に使用することができる。
また、本発明においては、アルミニウム基板の厚みは、0.05mm〜1mmであるのが好ましく、0.1mm〜0.8mmであるのがより好ましく、0.2〜0.5mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム基板の厚みが上記範囲であると、本発明の製造方法により得られる微細構造体の強度および取り扱い性が良好となり、種々の用途に展開することができる。
本発明においては、アルミニウム基板として、露光前の未使用の平版印刷版や印刷済みの平版印刷版を再利用することもできる。この場合においては、平版印刷版の陽極酸化皮膜は、水分によって封孔して再度陽極酸化処理を施す際に処理ムラの原因となる場合があるため、除去することが好ましい。
ここで、露光前の未使用の平版印刷版は、適当な有機溶剤に浸せきして画像記録層(感光層)を除去したものを用いることができる。
一方、印刷済みの平版印刷版は、例えば、アルカリ性を主成分とするはく離剤に浸せきして、陽極酸化皮膜と同時にインキや画像記録層を除去したもの;プラズマを照射してインキや画像記録層を炭化して除去したもの;電気炉などで400〜500℃の温度で焼成処理を施した後、炭化したインキや画像記録層を水性洗剤(中性洗剤等)と金属製ワイヤーブラシを使って除去したもの;等を用いることができる。
陽極酸化皮膜のはく離剤は、pH10以上のアルカリ性水溶液であるのが、陽極酸化皮膜の一部または全部を溶解させ、アルミニウム基板と画像記録層またはインキと容易にはく離できる理由から好ましい。下記第1表に、好適例としての水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の好ましい濃度、温度、pH、はく離時間を示す。
陽極酸化皮膜のはく離剤は、pH2以下の酸性水溶液であるのが、陽極酸化皮膜の一部または全部を溶解させ、アルミニウム基板と画像記録層またはインキと容易にはく離できる理由から好ましい。
このような酸性水溶液としては、陽極酸化処理に使用される電解液が好適に用いられる。下記第2表に、好適例としてのリン酸水溶液、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液等の好ましい濃度、温度、pH、はく離時間を示す。中でも、5%のリン酸水溶液(pH:1.1、温度:30℃)が好適に用いられる。
このようなアルカリ性水溶液や酸性水溶液には、ノニオン性、アニオン性または両極性の界面活性剤や、水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール類等)を適宜添加してもよい。
これらの添加量は、1〜10%の範囲であるのが好ましく、3〜7%の範囲であるのがより好ましい。
<熱処理>
本発明においては、後述する粗面化処理として、電気化学的粗面化処理を施す場合は、予めアルミニウム基板に熱処理を施すことが好ましい。
熱処理は、150〜550℃で30分〜10時間程度施すのが好ましく、200〜530℃で30分〜8時間程度施すのがより好ましく、250〜500℃で30分〜6時間程度施すのが更に好ましい。なお、自然酸化皮膜の形成を阻害するため、不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス等)中で施すのが好ましい。具体的には、例えば、アルミニウム基板を不活性ガスを導入可能な加熱オーブンに入れる方法等が挙げられる。
詳細のメカニズムは不明であるが、このような熱処理を施すことにより、アルミニウム基板の結晶粒の大きさが大きくなるとともに、結晶方位[100]面の割合が増加することが一般に知られている(例えば、「軽金属(1985)Vol.35,No6,p365〜371」参照。)。
<脱脂処理>
本発明においては、アルミニウム基板のうち後述する陽極酸化処理(A)を施す表面は、処理面の均一性の観点からあらかじめ脱脂処理を施すことが好ましい。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム基板表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理としては、具体的には、例えば、各種アルコール(例えば、メタノール等)、各種ケトン(例えば、メチルエチルケトン等)、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム基板表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム基板表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム基板表面に接触させつつ、アルミニウム基板表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム基板表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム基板表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法);等が挙げられる。
これらのうち、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない観点から、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。中でも、原料の入手性や排水処理の簡便性の観点から、界面活性剤法がより好ましい。
また、脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
<拡面率の拡大処理>
(粗面化処理)
本発明においては、陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させ、機能材料として更に高機能とする観点から、アルミニウム基板に粗面化処理(砂目立て処理)を施すのが好ましい。
粗面化処理としては、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化処理、化学的エッチング、電解グレイン等がある。
具体的には、例えば、塩化物イオンを含有する電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的粗面化処理(電解粗面化処理);アルミニウム基板の表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法;研磨球と研磨剤でアルミニウム基板の表面を砂目立てするボールグレイン法;ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法などの機械的粗面化処理;等が挙げられる。
これらの粗面化処理は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩化物イオンを含有する電解液中または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせ等が挙げられる。特に、電解粗面化処理を施すと、得られるアルミニウム基板のBET法で測定した拡面率がより向上するため好ましい。
ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択することによって、アルミニウム基板表面の長い波長成分(大波)の凹部の平均深さを制御することができる。
ブラシグレイン法により得られる凹部は、平均波長が2〜10μmであるのが好ましく、平均深さが0.2〜1μmであるのが好ましい。
電解粗面化処理としては、上述した塩化物イオンを含有する電解液中または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法が好適に例示される。
電解粗面化処理における電流密度は、陽極時電気量が50〜20000C/dm2であるのが好ましい。具体的には、例えば、0.1〜50質量%の塩酸またはNaCl、KCl、CuCl2もしくはこれらの混合物からなる水溶液あるいは硝酸を含む電解液中で、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100〜20000C/dm2の条件で直流または交流を用いて行われる。
塩化物イオンを含有する電解液としては、具体的には、例えば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化窒素、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化チタン等を溶解させた水溶液が用いられる。中でも、入手性と排水処理の簡便性の点で、塩酸、塩化ナトリウムが好ましい。
また、水溶液中の塩化物イオンの濃度範囲は、1〜10質量%であるのが好ましく、2〜9質量%であるのがより好ましく、3〜8質量%であるのが更に好ましい。
更に、塩化物イオンを含む電解液の温度範囲は、25℃〜90℃であるのが好ましく、40℃〜85℃であるのがより好ましく、60℃〜80℃であるのが更に好ましい。
更にまた、塩化物イオンを含む電解液による電解条件は、直流が好ましく、片面処理の場合には、電流密度が1〜12A/dm2の範囲であるのが好ましく、2〜11A/dm2の範囲であるのがより好ましく、3〜10A/dm2の範囲が更に好ましい。
また、塩化物イオンを含む電解液による処理時間は、1〜15分が好ましく、2〜12分が好ましく、3〜10分が更に好ましい。
この範囲で塩化物イオンを含有する電解液を用いて電解処理を施すと、全面に渡って均一に拡面率の高いアルミニウム基板を得ることが可能となる。これは、塩素イオンは、アルミの方位[100]面に特異的に吸着するため、塩素イオンを含む電解液中で電解するとアルミの方位[100]面に沿って電解エッチングが進行し深いピットが形成され、アルミニウム基板のBET法で測定した拡面率を大幅に向上させることが可能となる。
このような電解粗面化処理を施すことにより、アルミニウム基板の表面にピットを付与することが容易となり、BET法で測定した拡面率をより向上でき、種々の用途に応用可能となる。
また、このような電解粗面化処理により、平均直径0.1〜5μm、平均深さ0.05〜50μmのクレーター状またはハニカム状またはトンネル状のピットをアルミニウム板の表面に90〜100%の面積率で生成することができる。
粗面化処理としては、上述した機械的粗面化処理を施さずに、電解粗面化処理のみを施すこともできる。
粗面化処理後の表面粗さは、JIS B0601−1994に準拠してカットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mmで測定した算術平均粗さ(Ra)が、0.2μm以上であるのが好ましい。
(アルカリエッチング処理)
本発明においては、上述した粗面化処理により砂目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化学的にエッチングすることもできる。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
アルカリエッチング処理の条件は特に限定されないが、Alの溶解量が0.05〜30g/m2となるような条件で行うのが好ましい。また、他の条件も、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。更に、アルカリの温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。また、処理時間は2〜60秒であるのが好ましい。
このようなアルカリエッチング処理は、1種の方法に限らず、複数の工程を組み合わせることができる。
また、アルカリエッチング処理は、1段階の処理に限られない。例えば、機械的粗面化処理を施した後に、アルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理(後述するスマット除去のための酸洗い)を行い、更に電解粗面化処理を施した後に、再びアルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理を行うなど、アルカリエッチング処理およびデスマット処理は、いずれも複数回組み合わせて行うことができる。
(デスマット処理)
本発明においては、アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)を施してもよい。
用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。特に、電解粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、具体的には、例えば、特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸に30秒〜2分間接触させる方法;30〜70℃の温度の5〜65質量%の硝酸に30秒〜2分間接触させる方法;等が好適に挙げられる。
本発明においては、上記アルミニウム基板は、必要に応じて上述した拡大処理を施すことにより、BET法で測定した拡面率が1.2以上となる基板であるのが好ましく、1.2〜120となる基板であるのがより好ましく、1.5〜55となる基板であるのが更に好ましい。
拡面率が上記範囲であると、後述する陽極酸化処理(A)により形成する陽極酸化皮膜の単位厚みあたりの表面積をより増加させることができ、機能材料として更に高機能となる微細構造体を提供することができる。
ここで、拡面率は、単位が無次元であり、鏡面板に対する粗面化の程度を表す指標である。同じ幾何学的面積のサンプルサイズで計測する場合、拡面率は、拡大処理を施した後のアルミニウム基板と拡大処理を施していない平滑なアルミニウム基板のBET法による表面積(BET表面積[m2])の比(処理後基板/平滑基板)である。また、サンプルサイズが異なる場合には、サンプルサイズに対応した幾何学的面積の補正を行う。つまり、拡面率は、拡大処理を施した後のアルミニウム基板と拡大処理を施していない平滑なアルミニウム基板のBET表面積を幾何学的面積で除した値の比(処理後基板/平滑基板)となる。ここで、幾何学的面積は、2次元的な平面であると仮定した面積をノギス等で計測した大きさより算出される面積である。
なお、本発明においては、BET表面積[m2]の測定において検出感度以下の値(BET表面積[m2]の計測値が0.01m2以下(概ね、拡面率が10以下)の場合。)であるものについては、拡大処理を施したアルミニウム基板と拡大処理を施していない平滑なアルミニウム基板のそれぞれに同一の条件で定電圧電解処理を施すことによって、厚み0.05〜0.2μmの陽極酸化皮膜が形成されるように陽極酸化処理を施した後のBET表面積[m2]の比から算出した。陰極はカーボンまたは白金をコーティングしたチタンを用いることが好ましい。
また、拡大処理を施していない平滑なアルミニウム基板とは、JIS B0601−1994に規定された表面粗さRaが0.2μm以下のアルミニウム基板を示す。
BET法は、試料表面に吸着占有面積の知られている物質を液体窒素の温度で吸着させ,その量から試料の表面積を求める方法である。
本発明においては、BET法は、常法により行うことができる。例えば、触媒学会編,「触媒実験ハンドブック」,講談社,1989年,p.167−168の記載を参照して行うことができる。
BET法に用いられる測定器は、特に限定されず、例えば、市販の測定器が挙げられる。具体的には、例えば、島津製作所社製のフローソーブ、カンタクローム社製のオートソーブが挙げられる。
吸着質としては、窒素、クリプトン、ベンゼン、トルエン等の有機化合物が用いられる。中でも、窒素、窒素とヘリウムとの混合ガスが一般的に用いられる。また、表面積が比較的低い場合にはクリプトンガスが使用される。
BET法により表面積[m2]を測定するアルミニウム板には、前処理が施されることが好ましい。前処理の条件は、200〜500℃、1〜4時間の真空中で加熱することが好ましい。真空保管後、不活性流通ガス中で加熱する方法も好ましく用いられる。
BET法での吸着時間は、BET表面積やサンプル量によって異なるが、例えば、25mm×20mmの大きさでは、概ね30分〜15時間の範囲である。また、脱着時間は概ね5〜10分程度で行なわれる。
[陽極酸化処理(A)]
陽極酸化処理(A)は、上記アルミニウム基板の表面に陽極酸化皮膜を形成する処理であって、本発明においては、3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で陽極酸化を施す処理である。
陽極酸化処理は、3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で行う以外は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
本発明においては、陽極酸化処理に用いる電解液の硫酸濃度は、3〜12mol/Lであり、3〜11mol/Lであるのが好ましく、4〜6mol/Lであるのがより好ましい。
また、本発明においては、陽極酸化処理の処理電圧は、2〜18Vであるのが好ましく、3〜15Vであるのがより好ましく、5〜13Vであるのが更に好ましい。
処理電圧が上記範囲であると、本陽極酸化皮膜により形成される陽極酸化皮膜に存するマイクロポアの密度が適当となる。
更に、本発明においては、陽極酸化処理の処理時間は、0.5分〜600分であるのが好ましく、0.8分〜60分であるのがより好ましく、1〜30分であるのが更に好ましい。
処理時間が上記範囲であると、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の厚みが適当となる。
本発明においては、陽極酸化処理の処理温度は、5〜80℃であるのが好ましく、10〜60℃であるのがより好ましく、20〜55℃であるのが更に好ましい。
処理温度が上記範囲であると、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の形成速度が適当となる。
また、本発明においては、陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、0.5〜40μmであるのが好ましく、0.8〜20μmであるのがより好ましく、1〜10μmであるのが更に好ましい。
膜厚が上記範囲であると、陽極酸化皮膜により形成される陽極酸化皮膜は十分な比表面積を確保することが可能であり、種々の用途に展開することができる。陽極酸化皮膜の膜厚は、概ね電気量に比例するので、処理時間と電流密度とを適宜選択することにより、調節することができる。
本発明においては、陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の量は、2〜140g/m2であるのが好ましく、2.5〜70g/m2であるのがより好ましく、3〜30g/m2であるのが更に好ましい。
陽極酸化皮膜の量が上記範囲であると、陽極酸化皮膜自体の表面積が顕著に増大し、機能材料として更に高機能となる微細構造体を提供することができる。なお、陽極酸化皮膜の量は、陽極酸化処理を施したアルミニウム基板を、例えば、50℃のクロムリン酸処理液に1〜12時間浸せきさせ、浸せき前後の重量変化から算出することができる。
また、臭素-エタノール混合水溶液や塩酸、塩化第2銅混合水溶液など公知の技術で金属アルミのみを溶解除去して直接、酸化皮膜の重量を計測する事もできる。
このような本陽極酸化処理を施すことにより、形成される陽極酸化皮膜自体の表面積を増加させることができ、機能材料としてより高機能となる微細構造体を提供することができる。
これは、電解液の硫酸濃度が上述した範囲であることにより、陽極酸化皮膜に取り込まれるSO4イオン濃度が高くなり、陽極酸化皮膜が3次元的多孔質構造を示し、比表面積が向上するためであると考えられる。
[溶解処理(B)]
溶解処理(B)は、上記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の一部を、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液により溶解する処理であって、陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させ、陽極酸化処理(A)の後に所望により施す水和処理(C)や機能性材料の充填処理における経時の表面積低下を抑制する観点;このように抑制できる結果、一時保管する等の随時処理も可能となる観点から、必要に応じて施す処理である。
溶解処理(B)に酸水溶液を用いる場合は、上記陽極酸化処理(自己規則化法における陽極酸化処理も含む。)で用いた電解液を用いることができ、具体的には、例えば、硫酸、シュウ酸、リン酸、酒石酸、マロン酸、クエン酸、クロム酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いるのが好ましい。中でも、硫酸、シュウ酸、リン酸の水溶液を用いるのが、入手性、廃液処理の容易性の観点からより好ましい。
本発明においては、酸水溶液の濃度は、1〜30質量%であるのが好ましく、2〜20質量%であるのがより好ましく、3〜15質量%であるのが更に好ましい。また、酸性水溶液のpHは、1〜5であるのが好ましく、1.5〜4.5であるのがより好ましく、2〜4であるのが更に好ましい。更に、酸水溶液の温度は、5〜50℃であるのが好ましく、10〜45℃であるのがより好ましく、15〜40℃であるのが更に好ましい。また、酸水溶液による処理時間は、0.1〜30分であるのが好ましく、0.5〜20分であるのがより好ましく、1〜10分であるのが更に好ましい。
酸水溶液の濃度、pH、温度および処理時間が上記範囲であると、溶解処理(B)後の陽極酸化皮膜が3次元的多孔質構造を示し、比表面積が更に向上する。
一方、溶解処理(B)にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのナトリウム塩水溶液;水酸化カリウムなどのカリウム塩水溶液;水酸化リチウムなどのリチウム塩水溶液;等を用いるのが好ましい。中でも、ナトリウム塩水溶液の水溶液を用いるのが、入手性、廃液処理の容易性の観点からより好ましい。
本発明においては、アルカリ水溶液の濃度は、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.08〜10質量%であるのがより好ましく、0.1〜5質量%であるのが更に好ましい。また、アルカリ水溶液のpHは、8〜13であるのが好ましく、8.5〜12であるのがより好ましく、9〜11.5であるのが更に好ましい。更に、アルカリ水溶液の温度は、5〜50℃であるのが好ましく、10〜45℃であるのがより好ましく、15〜40℃であるのが更に好ましい。また、アルカリ水溶液による処理時間は、0.1〜30分であるのが好ましく、0.5〜20分であるのがより好ましく、1〜10分であるのが更に好ましい。
アルカリ水溶液の濃度、pH、温度および処理時間が上記範囲であると、溶解処理(B)後の陽極酸化皮膜が3次元的多孔質構造を示し、比表面積が更に向上する。
陽極酸化皮膜の一部の溶解は、陽極酸化皮膜を上述した酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。
接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法等が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、上記陽極酸化処理(A)を施した後のアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。
接触させる際の処理時間は0.1〜30分であるのが好ましく、0.5〜20分であるのが好ましく、1〜10分であるのが更に好ましい。
このような溶解処理(B)を上記陽極酸化処理(A)を施したアルミニウム基板に対して施すことにより、形成される陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させることができ、機能材料として更に高機能となる微細構造体を提供することができる。
これは、後述する実施例から分かるように、上記陽極酸化処理(A)により形成された陽極酸化皮膜の方が、平版印刷版用支持体を製造する際の一般的な酸濃度である0.5〜1.7mol/Lの硫酸水溶液を用いて形成した陽極酸化皮膜に比較して、細孔密度が高く、また、マイクロポア間の壁の厚みが薄く、更に、陽極酸化皮膜中の硫酸根濃度が高いため、溶解処理(B)を施した際にマイクロポアの壁面に貫通孔が多数生成し、3次元的な多孔質状の構造体となるためであると考えられる。
[水和処理(C)]
水和処理(C)は、上記陽極酸化処理(A)または上記溶解処理(B)の後に、上記陽極酸化処理により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる処理であって、陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させ、機能材料として更に高機能とする観点から、必要に応じて施す処理である。
本発明においては、水和処理(C)は、40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行うのが好ましい。温度およびpHが上記範囲であると、処理効率に優れ、かつ、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの開口部が閉塞されることが防止される。
また、水溶液の温度は、温度5℃以上であるのが好ましく、10〜35℃であるのがより好ましく、20〜30℃であるのが更に好ましい。
更に、水溶液は、pH9.5〜11.5であるのが好ましく、pH10.5〜11であるのが好ましい。
反応促進剤としては、具体的には、例えば、アンモニア、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、水和処理の効率の点で、アンモニア、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびケイ酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、アンモニアおよび/またはケイ酸ナトリウムであるのがより好ましく、アンモニアであるのが更に好ましい。
水溶液中の反応促進剤の量は、通常、1〜50質量%であり、3〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
水和処理の処理時間は、0.5〜30分であるのが好ましく、1〜20分でであるのがより好ましく、2〜10分でであるのが更に好ましい。
水和処理の条件が、上記範囲であると、マイクロポアの内部に微細凹凸構造が形成することによって表面積を増大させることができるとともに、マイクロポアの開口部が塞がれることを防止することができる点で好ましい。
このような水和処理(C)を上記陽極酸化処理(A)または上記溶解処理(B)を施したアルミニウム基板に対して施すことにより、形成される陽極酸化皮膜自体の表面積をより増加させることができ、機能材料として更に高機能となる微細構造体を提供することができる。
これは、後述する実施例から分かるように、上記陽極酸化処理(A)により形成された陽極酸化皮膜の方が、平版印刷版用支持体を製造する際の一般的な酸濃度である0.5〜1.7mol/Lの硫酸水溶液を用いて形成した陽極酸化皮膜に比較して、水和処理(C)によってベーマイトと思われる微細な水和生成物がマイクロポア内部に生成するため表面積が著しく高いためであると考えられる。
本発明の製造方法により、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を得ることができる。
ここで、BET比表面積とは、上述したBET法により測定した比表面積である。本発明においては、BET比表面積[m2/g-Al23]は、上記陽極酸化処理(A)により上記アルミニウム基板上に形成した陽極酸化皮膜を構成するアルミナ(Al23)の比表面積であり、BET表面積[m2]を陽極酸化皮膜の重量[g]で除した値(単位:m2/g-Al23)である。
ここで、BET表面積[m2]は、BET法により測定し、脱着時に計測される面積値を採用した。また、陽極酸化皮膜の重量[g]は、BET表面積[m2]を測定したサンプルと幾何学的に同じ大きさ(例えば、25×20mm)の陽極酸化皮膜つきのアルミニウム板の重量から、そのアルミニウム板を、陽極酸化皮膜のみを溶解するような溶媒、例えば、クロム酸とリン酸の混合水溶液に50℃で1〜12時間浸せき処理を施し、陽極酸化皮膜を完全に除去したアルミニウム板の重量を減ずることによって得られる。
なお、後述する実施例に示すように、平版印刷版用支持体を製造する際の一般的な酸濃度である0.5〜1.7mol/Lの硫酸水溶液を用いて形成した陽極酸化皮膜では、BET比表面積は、10〜20m2/g-Al23程度にとどまっており、BET比表面積30m2/g-Al23以上という数値は非常に高い数値であることが分かる。
これは、上述したように、上記陽極酸化処理(A)を施すことにより、陽極酸化皮膜に取り込まれるSO4イオン濃度が高くなり、陽極酸化皮膜が3次元的多孔質構造を示し、比表面積が向上するためであると考えられる(図1および図2参照。)。
図1は、アルミニウム基板に上記陽極酸化処理(A)を施した後の陽極酸化皮膜の断面写真であり、図2は、アルミニウム基板に上記陽極酸化処理(A)を施した後の陽極酸化皮膜の断面の模式図である。
具体的には、図1およびその模式図である図2に示すように、上記陽極酸化処理(A)を施すことにより、アルミニウム基板1上の陽極酸化皮膜に存するマイクロポア2の側壁に、貫通する孔3や窪み4が生成しているためと考えられる。
[充填処理]
充填処理は、上記陽極酸化処理(A)または上記溶解処理(B)もしくは上記水和処理(C)の後に、陽極酸化皮膜を種々の機能材料として利用するために必要に応じて施す処理である。
このような充填処理としては、具体的には、例えば、アルミニム技術便覧(p940,表5.4.2(下記表参照),カロス出版社)に記載されているように、陽極酸化皮膜を機能材料として利用する例は多数知られている。中でも、磁性材料(Fe、Pt、Co、Ni等)をめっき法で細孔内部に充填したり、発光材料(WO3)を充填したり、着色染料(例えば、上記アルミニム技術便覧のp940の表46.1(下記表参照)に記載する浸漬液等)を充填したり、触媒(Ag、Au、Pt、Pd、Rh、TiO2等)を充填することが行われている。また、導電性材料(Cu等)を充填し、多層配線基板に応用する試みも行なわれている。
ここで、充填する方法としては、充填する方法としては、具体的には、例えば、浸漬法(例えば、「新・アルマイト理論(1997,p91〜103,カロス出版)」に記載する方法等)、無電解めっき法(例えば、「無電解めっきの応用(1991,p206〜226,槙書店)」に記載する方法等)、電解めっき法(例えば、「新・アルマイト理論(1997,p107〜159,カロス出版)」に記載する方法等)が知られている。
[微細構造体]
本発明の微細構造体は、上述した本発明の微細構造体の製造方法により得られる。
また、本発明の微細構造体は、平均ポア密度が50〜2000個/μm2であるのが好ましい。
更に、本発明の微細構造体は、マイクロポアの占める面積率が20〜50%であるのが好ましい。
本発明の微細構造体は、規則的な配列を有するマイクロポアを有するため、種々の用途に応用することができる。
具体的には、本発明の微細構造体は、金属アルミの表面にアルミナやその水和物が生成しているため、遠赤外線放射率が大きくなり、加熱帯、放熱体、鮮度保持部材、冷蔵庫内壁材等として好適に用いることができる。
また、本発明の微細構造体は、BET比表面積が大きく、導電性および熱伝導性に優れたアルミ基体であることを活用し、軽量の遮音・防音材、振動吸収材、電磁波シールド、熱伝播材料、触媒担体等としても用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.微細構造体の作製
(実施例1〜24、比較例1〜7)
第1表に示されるように、以下に示す各基板に、以下に示す条件の粗面化処理、陽極酸化処理、溶解処理および水和処理を順次施して、各微細構造体を得た。なお、第3表中、「−」は該当する処理を施していないことを示す。
以下、基板および各処理について説明する。
(1)基板
微細構造体の作製に用いた基板は、以下のとおりである。これらを5cm×10cmの処理面積で陽極酸化処理できるようカットして使用した。
・基板A:アルミニウム基板(JIS A1050材、純度99.5質量%、厚さ0.3mm)を、濃度25質量%の硫酸水溶液(60℃)に、2分間接触させた基板を用いた。
・基板B:アルミニウム基板(JIS 1N99材、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、濃度25質量%の硫酸水溶液(60℃)に、2分間接触させた基板を用いた。
・基板C:脱脂基板(上記基板B)をアルゴン雰囲気下で350℃1時間の熱処理を施した後、下記第4表に示す条件の拡大処理(電解粗面化処理)を施した基板を用いた。なお、OPP粘着テープ(商品名:ダンプロンプロ No375A、日東電工製)で裏面マスキングした熱処理後のサンプルを陽極とし、陰極には白金コーティングしたチタンを用いた。
・基板D:電解粗面化処理の処理時間を4分とした以外は、基板Cと同様の方法で処理した基板を用いた。
・基板E:電解粗面化処理の処理時間を8分とした以外は、基板Cと同様の方法で処理した基板を用いた。
・基板F:脱脂基板(上記基板A)をアルゴン雰囲気下で350℃1時間の熱処理を施した後、下記第4表に示す条件の拡大処理(電解粗面化処理)を施した基板を用いた。なお、OPP粘着テープ(商品名:ダンプロンプロ No375A、日東電工製)で裏面マスキングした熱処理後のサンプルを陽極とし、陰極には白金コーティングしたチタンを用いた。
・基板G:電解粗面化処理の処理時間を4分とした以外は、基板Fと同様の方法で処理した基板を用いた。
・基板H:電解粗面化処理の表面積の拡大処理の処理時間を8分とした以外は、基板Fと同様の方法で処理した基板を用いた。
拡大処理を施した基板C〜Hについて、BET法により拡面率を求めた。その結果を下記第4表に示す。
具体的には、基板Cについては、更に、4.5M硫酸、10Vの定電圧電解処理で陽極酸化処理を10秒間施した後の状態(陽極酸化皮膜厚み:0.1μm)と、電解粗面化処理を施していない平滑な基板(鏡面仕上げアルミ材、Ra:0.01μm、商品名:XL、住友軽金属社製)に同様の条件で陽極酸化処理を施した基板(陽極酸化皮膜厚み;0.1μm)との、BET表面積[m2]を幾何学的面積で除した値の比(基板C/平滑基板)から算出した。その結果、BET表面積[m2]を幾何学的面積で除した値はそれぞれ56(処理後基板)および7(平滑基板)であったため、拡面率は8と求められた。同様にして基板FおよびGの拡面率を算出した。
一方、基板Dについては、陽極酸化処理を施さない状態の基板Dと、電解粗面化処理を施していない平滑な基板(鏡面仕上げアルミ材、商品名XL、住友軽金属社製)との、BET表面積[m2]を幾何学的面積で除した値の比(基板D/平滑基板)から算出した。ここで、平滑基板の拡面率は1と仮定した。同様にして基板EおよびHの拡面率を算出した。
・基板I:未使用の平版印刷版を再生利用したものを用いた。
具体的には、まず、市販の平版印刷版原版(商品名:HP-F、富士フィルム社製)を有機溶剤(γ-ブチロラクトン)に30分間浸せきさせた後、メチルエチルケトンで洗浄し、画像記録層をほぼ溶解させた。
次いで、30℃の5%リン酸水溶液に20分間浸せきさせ、陽極酸化皮膜(X線源:Rh-Lαコンプトン散乱腺による)の大部分および有機物(元素C)が蛍光X線分析装置にて検出されない基板Iを得た。
基板Iの拡面率は、基板Cと同様の方法により測定した結果、1.6であった。
・基板J:使用済みの平版印刷版を再生利用したものを用いた。
具体的には、まず、印刷機で印刷し終わった使用済みの平版印刷版原版(商品名:HP-F、富士フィルム社製)を低温灰化装置(プラズマアッシャーPB−600、ヤマト科学社製)にて灰化処理(出力電流:300W、反射電波:80W、O2流量:100cc/min、処理時間:4時間)した後、メチルエチルケトンで脱脂洗浄し、画像やインキを除去した。
次いで、30℃の5%リン酸水溶液に20分間浸せきさせ、陽極酸化皮膜(X線源:Rh-Lαコンプトン散乱腺による)の大部分および有機物(元素C)が蛍光X線分析装置にて検出されない基板Jを得た。
基板Iと同様に拡面率を計測した結果、基板Jの拡面率は1.6であった。
(2)陽極酸化処理
基板A〜Jの表面に、第3表に示される条件で、陽極酸化処理を行った。
具体的には、第3表に示される硫酸濃度の電解液、温度、電圧および処理時間で、陽極酸化処理を行い、第3表に示される皮膜厚の陽極酸化皮膜を形成させた。なお、陽極酸化処理においては、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。また、電解液の平均流速は、渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて測定した。
陽極酸化皮膜の皮膜厚は、渦電流式膜厚計(EDY−1000、(株)サンコウ電子研究所製)を用いて測定した。
(3)溶解処理
・条件A:pH3、液温30℃の5質量%リン酸水溶液に、陽極酸化処理後のアルミニウム基板を第3表に示される時間浸せきさせ、陽極酸化皮膜の一部を溶解させた。
・条件B:pH11.3、液温25℃の0.04質量%水酸化ナトリウム水溶液に、陽極酸化処理後のアルミニウム基板を第3表に示される時間浸せきさせ、陽極酸化皮膜の一部を溶解させた。
(4)水和処理
陽極酸化処理後(溶解処理を施した例においては溶解処理の後)のアルミニウム基板を、温度25℃、pH11のアンモニア水に、第3表に示される時間浸せきさせた。
2.微細構造体の性状
(1)BET比表面積
上記で得られた各微細構造体を小型裁断機により40mm×2mmの大きさに裁断した。裁断後の微細構造体を、市販の真空保管容器の中に入れ、真空度1×10-1Paで12時間保管した。
ついで、微細構造体を流動式比表面積自動測定装置(フローソーブIII2305、島津製作所社製)に40mm×2mmの大きさの小片を10本入れ、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、200℃で1時間保持し、脱気した。
その後、感度設定1/1として、short Passを使用し、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、液体窒素温度で1時間吸着させたところ、シグナルが消え、吸着が完了した。ついで、室温に戻したところ、5分後にシグナルが消え、脱着が完了した。
脱着データより得られた実表面積をAl23相当量で除した値をBET比表面積(m2/g‐Al23)として第5表に示す。陽極酸化皮膜と水和処理による水和物の質量の合計を、クロム酸とリン酸の混合水溶液で陽極酸化皮膜と水和物を溶解させる重量法で測定し、Al23相当量として見なした。
第5表から明らかなように、所定の硫酸濃度の電解液で陽極酸化処理を施した実施例1〜24で製造した微細構造体は、比較例1〜7で製造した微細構造体に比べて、BET比表面積が格段に大きくなることが分かった。
経時による自然封孔の効果を確認するため、実施例2および3ならびに比較例1で製造した微細構造体について、25℃、50%相対湿度の空気中で24時間経時後、再度BET比表面積を測定した。その結果を下記第6表に示す。
上記第6表に示す結果から、実施例2および3で製造した微細構造体は、比較例1で製造した微細構造体に比べて、経時によってもBET比表面積が低下しにくいことが分かった。
図1は、アルミニウム基板に上記陽極酸化処理(A)を施した後の陽極酸化皮膜の断面写真である。 図2は、アルミニウム基板に上記陽極酸化処理(A)を施した後の陽極酸化皮膜の断面の模式図である。
符号の説明
1 アルミニウム基板
2 マイクロポア
3 孔
4 窪み

Claims (7)

  1. 3〜12mol/Lの硫酸を含有する電解浴中で、アルミニウム基板に陽極酸化処理(A)を施し、BET比表面積が30m2/g-Al23以上の微細構造体を得る、微細構造体の製造方法。
  2. 前記陽極酸化処理(A)の後に、前記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の一部を、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液により溶解する溶解処理(B)を施す、請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
  3. 前記陽極酸化処理(A)の後に、前記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる水和処理(C)を施す、請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
  4. 前記溶解処理(B)の後に、前記陽極酸化処理(A)により形成される陽極酸化皮膜の有するマイクロポアの内部に水和物を生成させる水和処理(C)を施す、請求項2に記載の微細構造体の製造方法。
  5. 前記溶解処理(B)に用いる前記酸性水溶液が、硫酸、シュウ酸またはリン酸の水溶液である請求項2または4に記載の微細構造体の製造方法。
  6. pH8〜12、温度40℃未満の水溶液を用いて前記水和処理(C)を施す請求項3または4に記載の微細構造耐の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の微細構造体の製造方法により得られる微細構造体。
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