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JP2008110905A - 中空シリカ粒子 - Google Patents

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JP2008110905A JP2006295958A JP2006295958A JP2008110905A JP 2008110905 A JP2008110905 A JP 2008110905A JP 2006295958 A JP2006295958 A JP 2006295958A JP 2006295958 A JP2006295958 A JP 2006295958A JP 2008110905 A JP2008110905 A JP 2008110905A
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Abstract

【課題】外殻部がメソ細孔構造を有し、かつ有機基を有するケイ素化合物により構成され、親油性が付与された中空シリカ粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であって、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜10nmである中空シリカ粒子、及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、メソ細孔構造を有する中空シリカ粒子、及びその製造方法に関する。
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径の分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体の利用や物質分離剤への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められている。
均一で微細な細孔を有する多孔体として、メソ領域の細孔を有するメソポーラスシリカが開発され、前記用途の他に、ナノワイヤー、半導体材料、光エレクトロニクスへの応用等の分野での利用が注目されている。
特許文献1には、メソ細孔壁を有する中空シリカマイクロカプセルの製造方法が開示されており、有機溶媒の乳化滴を用いてメソ細孔のない中空シリカ粒子を形成した後、界面活性剤の存在下で高熱処理することにより、メソ細孔を形成させると記載されている。しかしながら、実際に追試を行うと、中空構造を有するメソポーラスシリカは形成せず、メソ細孔が存在しない中空シリカ粒子及び中実シリカ粒子と、中空構造を有しないメソポーラスシリカ不定形粒子の混合体しか得られなかった。
特許文献2には、有機基を含有するメソポーラスシリカ粒子であって、最大ピークを示す細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれる細孔を有する複合多孔材料が開示されている。その製造方法として、例えば、テトラメトキシシランとビストリメトキシシリルメタンを併用することが記載されているが、それらのシラン原料はいずれも加水分解速度が速く、両者の加水分解速度はそれほど変わらないため、中空粒子は生成しない。
非特許文献1及び2にはトリメチルベンゼンの乳化滴を利用した中空メソポーラスシリカ粒子が開示されている。しかしながら、メソ細孔構造規定剤として中性のポリマーを用いているため、細孔構造の規則性が低く、BET比表面積も430m2/gと低い。
非特許文献3及び4の中空メソポーラスシリカ粒子は、反応初期に酸で中和することで粒子形成反応を止めて合成されている。このため、BET比表面積は850〜950m2/gと比較的高いが、粒子径の分布がブロードである。
非特許文献5の中空メソポーラスシリカ粒子は、反応溶液に超音波を照射することで形成されている。このため、BET比表面積は940m2/gと比較的高いが、粒子径の分布が非常にブロードであり、粒子形状も不定形である。
また、ケイ素原料として、非特許文献1及び2では水ガラスを使用し、非特許文献3〜5ではテトラエトキシシランを使用しているため、粒子外殻に有機基は存在しない。
特開2006−102592号公報 特開2000−219770号公報 Qianyano Sun他、Adv.Mater.、第15巻、第1097頁(2003年) Nicole E.Botterhuis他,Chem.Eur.J.,第12巻、第1448頁(2006年) Puyam S.Singh他,Chem.Lett.,第101頁(1998年) Christabel E.Fowler他,Chem.Commun.,第2028頁(2001年) Rohit K.Rana他,Adv.Mater.,第14巻、第1414頁(2002年)
外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子は、内部が中空であるため、例えば物質の保持量を高めることができ、またメソ細孔壁を有することで、内部に取り込んだ物質の外部への放出をコントロールすることができるため、触媒、吸着剤等として有用である。しかしながら、シリカは元来親水性であるため、親油性化合物を含浸させたり保持することが難しい。
本発明は、外殻部がメソ細孔構造を有し、かつ有機基を有するケイ素化合物により構成され、親油性が付与された中空シリカ粒子、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、有機基で置換されたシラン化合物をシリカ源の一部として用いることにより、外殻部に有機基を有する中空シリカ粒子が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)を提供する。
(1)外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であって、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜10nmである中空シリカ粒子。
(2)下記工程(I)、(II)及び(III)を含む、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子の製造方法。
工程(I):下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(a)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有し、加水分解によりシラノール化合物を生成し、かつ加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源であって、少なくとも1種以上が有機基を有するシリカ源(b)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有する水溶液を調製する工程、
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
工程(II):工程(I)の水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を析出させる工程
工程(III):得られた第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を、焼成又は抽出処理し、該複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
本発明によれば、外殻部がメソ細孔構造を有し、かつ有機基を有するケイ素化合物により構成され、親油性が付与された中空シリカ粒子、及びその効率的な製造方法を提供することができる。
本発明の中空シリカ粒子は、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であって、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜10nmであることを特徴とする。
ここで、ケイ素化合物とは、シラノール(HnSi(OH)4-n)が重合して構成される化合物であって、ケイ素酸化物及びケイ素水酸化物を意味する。有機基を有するケイ素化合物とは、シラノールのケイ素に直接結合する有機基を持つ化合物が重合して構成される化合物を意味する。また、本発明におけるケイ素化合物は、有機基の他に、後述する他元素を担持したものも包含する。
<中空シリカ粒子の外殻部>
本発明の中空シリカ粒子は、粒子外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成されている。この構造は、有機基を有するシリカ源(後述)を用いて合成することにより形成することができる。
ケイ素化合物のケイ素に直接結合する有機基は、炭化水素の水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1〜22の炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜12、更に好ましくは炭素数1〜6のアルカンジイル基及びフェニレン基から選ばれる1種以上が好ましい。
炭素数1〜22のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
炭素数1〜22、特に炭素数1〜6のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
本発明の中空シリカ粒子の外殻部は、主成分はシリカで構成されており、その構造中にケイ素に直接結合する有機基を有するものであるが、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これら元素を導入する場合はそれらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加すればよい。
ケイ素化合物中の有機基は核磁気共鳴測定を用いた炭素原子の測定(13C−NMR)や元素分析により確認することができる。
外殻の一部を構成する有機基の炭素元素数はケイ素元素数あたり10〜70%であることが好ましい。中空シリカ粒子に含まれる有機基の炭素元素数は、製造時のシリカ源の種類や配合率等から求めることができるし、また、元素分析や熱重量分析によっても確認することができる。
<中空シリカ粒子の外殻部のメソ細孔>
本発明の中空シリカ粒子のメソ細孔の平均細孔径は1〜10nmである。メソ細孔構造を有する外殻部と粒子内部の中空部分の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。また、平均細孔径は窒素吸着等温線からBJH法を用いて求めることができる。
中空シリカ粒子の平均粒子径は好ましくは0.05〜10μmであるが、平均粒子径が0.05〜0.1μmのときの平均細孔径は好ましくは1〜5nmであり、平均粒子径が0.1〜1μmのときの平均細孔径は好ましくは1〜8nmであり、平均粒子径が1〜10μmのときの平均細孔径は好ましくは1〜10nmである。
本発明の中空シリカ粒子は、平均粒子径の±30%以内の粒子径を持つ粒子が、好ましくは粒子全体の80質量%以上、より好ましく粒子全体の85質量%以上、特に好ましく粒子全体の90質量%以上であり、粒子サイズが均一であることが特徴の1つである。従来の製造方法では、本発明のような粒子サイズのそろったものは得られていない。
本発明の中空シリカ粒子のBET比表面積は、吸着特性の観点から、好ましくは700m2/g以上、より好ましくは800〜1400m2/g、特に好ましくは800〜1300m2/gである。
本発明の中空シリカ粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において粒子全体の好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上が中空粒子であることを確認することができる。透過型電子顕微鏡(TEM)による観察は、倍率5万倍で、視野内に見出される粒子の個数を数えることで決定する。これを画面を変えて5回行った平均とする。
本発明の中空シリカ粒子においては、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察されたメソ細孔の平均細孔間隔距離がX線回折により得られた構造周期と±30%の範囲で一致する。具体的には、観察された細孔の中心間距離に√3/2を乗じた値とX線回折により得られた最も低角のピークに対応する面間隔が±30%の範囲で一致する。
本発明の中空シリカ粒子における〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比は、0.2/100〜50/100であることが好ましく、0.5/100〜40/100であることがより好ましく、1/100〜30/100であることがより好ましい。この比は透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。透過型電子顕微鏡による測定は、倍率5万倍で、視野内に見出される粒子の外殻部位を測定することで決定する。これを画面を変えて5回行った平均とする。
本発明の中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有する。
<中空シリカ粒子の製造方法>
本発明の外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子の製造方法は、下記工程(I)、(II)及び(III)を含むことを特徴とする。
工程(I):下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(a)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有し、加水分解によりシラノール化合物を生成し、かつ加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源であって、少なくとも1種以上が有機基を有するシリカ源(b)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有する水溶液を調製する工程、
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
工程(II):工程(I)の水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を析出させる工程
工程(III):得られた第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を、焼成又は抽出処理し、該複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
工程(I)において、(a)成分と(b)成分を混合し、水溶液を調製する。(a)成分は、メソ細孔形成のために配合され、(b)成分は中空シリカ粒子のシリカ源となる。
<一般式(1)又は(2)で表される第四級アンモニウム塩>
前記一般式(1)におけるR1、一般式(2)におけるR1及びR2で表される炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜18の、直鎖状又は分岐状アルキル基としては、前記と同様なものが挙げられる。
前記一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等のアニオンから選ばれる1種以上である。Xは、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩化物イオン又は臭化物イオンである。
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えばブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、例えばジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩の中では、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、特に一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドがより好ましく、アルキル基の炭素数が12〜18のアルキルトリメチルアンモニウムブロミドが特に好ましい。
<シリカ源(b)>
シリカ源(b)は、加水分解によりシラノール化合物を生成し、それが重合することでシリカ構造体を構成する。
シリカ源(b)は、加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源であって、少なくとも1種以上の有機基を有するシリカ源(b)を用いる。
<加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源(b)>
加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源(b)は、下記一般式(3)〜(7)から選ばれる。但し、一般式(3)又は(6)のみの組み合わせを除く。
SiY4 (3)
3SiY3 (4)
3 2SiY2 (5)
3 3SiY (6)
3Si−R4−SiY3 (7)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
より好ましくは、一般式(3)〜(7)において、R3がそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であり、具体的には炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R4が炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基であり、Yが炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、またはフッ素を除くハロゲン基である。
加水分解速度は、R3、R4、加水分解性基Yの種類やR3の数より変動する。R3やR4として、電子供与性基を用いると加水分解速度が遅くなり、電子吸引性基を用いると加水分解速度は速くなる。例えば、R3が炭素数1〜22のアルキル基の場合、ケイ素原子に電子を与えるため、加水分解性基Yの加水分解速度は遅くなる。また、R3がフェニル基や、水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基の場合、電子吸引性が高まり、加水分解速度が速くなる。R4も似た傾向を示す。
また、加水分解性基Yがメトキシ基の場合よりも、エトキシ基の場合の方が、加水分解速度が遅くなり、アルコキシ基の炭素数が多くなるほど加水分解速度が遅くなる。
なお、シリカ源が一般式(3)のみの場合、加水分解性基Yは加水分解してしまうため、外殻部が有機基を含まない。また、シリカ源が一般式(6)のみの場合、重合してシリカ構造体を形成することが難しいため、加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源から除かれる。
本発明に用いる加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源は、加水分解速度の違いから、「加水分解速度の速いシリカ源」と「加水分解速度の遅いシリカ源」に大別することができる。
「加水分解速度の速いシリカ源」とは、下記方法により得られる中空シリカ粒子生成までの時間が150秒以下、好ましくは120秒以下、特に好ましくは100秒以下であるシリカ源(b1)を意味し、「加水分解速度の遅いシリカ源」とは、下記方法により得られる中空シリカ粒子生成までの時間が200秒以上、好ましくは250秒以上、特に好ましくは300秒以上であるシリカ源(b2)を意味する。
すなわち、本発明において、加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源は、下記の方法により得られる加水分解速度の時間が50秒以上異なる2種以上のシリカ源であることが好ましい。
加水分解速度の測定は、シリカ源を単独で用いてシリカ粒子を製造する場合に、シリカ源を加えてからシリカ粒子が生成し、反応溶液が白濁するまでの時間を計測することにより行う。より具体的には、100mlのビーカーに水60g、メタノール20g、1M水酸化ナトリウム水溶液0.46g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業製)0.35gを入れ、20℃でマグネティックスターラー(回転子:22mmのオクタゴン型)を用い500rpmの速さでドデシルトリメチルアンモニウムブロミドが完全に溶解するまで撹拌し、この撹拌状態下で、シリカ源0.5gを一度に加え、溶液が白濁するまでの時間を測定する。
加水分解速度の速いシリカ源(b1)としては、次の化合物等が挙げられる。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、またはフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)又は(5)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
加水分解速度の遅いシリカ源(b2)としては、次の化合物等が挙げられる。
・一般式(4)〜(6)において、R3が炭素数1〜22、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である化合物。
・一般式(7)において、Yがエトキシ基であって、R4がメチレン基又はエチレン基である化合物。
好ましい加水分解速度の速いシリカ源(b1)としては、アルコキシ基の炭素数が1〜3であるテトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、フェニルトリエトキシシラン、1,1,1−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、好ましい加水分解速度の遅いシリカ源(b2)としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビストリエトキシシリルメタン、ビストリエトキシシリルエタン等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中でも、均一な粒子径を有する中空シリカ粒子を得る観点から、特に好適な組合せは、加水分解速度の速いシリカ源(b1)であるテトラメトキシシランと、加水分解速度の遅いシリカ源(b2)であるビストリエトキシシリルメタン、ビストリエトキシシリルエタン、又はジメチルジメトキシシランとの組合せである。
加水分解速度の速いシリカ源(b1)と加水分解速度の遅いシリカ源(b2)との混合比率は、〔(b1)/(b2)〕のシリカ元素比で、好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは70/30〜30/90である。
加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源を用いることにより、本発明の効果が有効に発現するが、そのメカニズムは次のように考えられる。
加水分解速度が異なるシリカ源を併用すると、加水分解速度が遅いシリカ源は、疎水性の性質を示すため、水溶液中で油滴を形成する。一方、加水分解速度の速いシリカ源は、加水分解により迅速にシラノール化合物になって水溶液中に分散し、(a)成分と共に、加水分解速度の遅いシリカ源の油滴と水との界面に膜を生じると考えられる。
加水分解速度の遅いシリカ源は油滴になるためその内部まで水が入っていかず、加水分解反応が妨げられるためシラノール化合物が生成しにくい。一方、加水分解速度の遅いシリカ源の油滴表面のシラノール化合物は、(a)成分を取り込んだ状態で重合反応が進行する。その後、加水分解の遅いシリカ源も徐々に加水分解し、脱水縮合を起こし、メソ細孔壁を構築する。最終的には粒子内部に、加水分解で生じたアルコールや脱水縮合反応より排出された水が充填される。充填されたアルコールや水は乾燥や焼成工程において揮散するため、シリカ粒子は中空構造となる。
(a)成分は、工程(I)における水溶液中に好ましくは0.1〜100ミリモル/L、より好ましくは1〜100ミリモル/L、特に好ましくは5〜80ミリモル/Lで含有され、(b)成分は、(b1)成分及び(b2)成分の合計で、工程(I)における水溶液中に好ましくは0.1〜500ミリモル/L、より好ましくは1〜300ミリモル/L、特に好ましくは10〜300ミリモル/Lで含有される。
(a)成分と(b)成分を含有させる順序は特に制限はない。例えば、(i)水溶液を撹拌しながら(a)成分、(b)成分の順に投入する、(ii)水溶液を撹拌しながら(a)、(b)成分を同時に投入する、(iii)(a)、(b)成分の投入後に撹拌する、等の方法を採用することができるが、これらの中では(i)の方法が好ましい。
(a)成分及び(b)成分を含有する水溶液には、本発明の中空シリカ粒子の中空構造とメソ細孔構造の形成を阻害しない限り、その他の成分として、溶剤等の有機化合物や、無機化合物等の他の成分を添加してもよく、前記のように、シリカや有機基以外の他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他の元素を担持したい場合は、それらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加することもできる。
工程(II)では、工程(I)で得られる水溶液を10〜100℃、好ましくは10〜800℃の温度で所定時間撹拌した後、静置することで、第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を析出させる。加熱撹拌処理の時間は温度によって異なるが、通常10〜100℃で0.1〜24時間で第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体が形成される。
工程(III)では、まず工程(II)で得られた複合体を、ろ過又は遠心分離等の操作で取り出した後、水洗し、乾燥する。次いで、得られた第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を、焼成又は抽出処理し、該複合体から第四級アンモニウム塩を除去する。焼成温度が低すぎるとメソ細孔形成剤である(a)成分が残存する可能性があり、また焼成温度が高すぎるとケイ素化合物中の有機基が消失するおそれがあるため、焼成は電気炉等で好ましくは350〜650℃、より好ましくは450〜550℃、特に好ましくは480〜520℃で、1〜10時間行うことが望ましい。また、抽出処理を行う場合は、pH1〜4、温度が室温〜80℃の水溶液に、第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を長時間撹拌することによって、第四級アンモニウム塩を抽出する。なお抽出処理後のシリカを焼成してもよい。
以下、好ましい製造例とそれによって得られる中空シリカ粒子について説明する。
まず工程(I)において、(a)成分として、一般式(1)又は(2)で示される化合物のうち、R1及びR2が炭素数4〜22のアルキル基であって、Xが臭素イオン又は塩素イオンである第四級アンモニウム化合物を、塩基性水溶液に溶解した後、加水分解速度の速いシリカ源(b1)としてアルコキシ基の炭素数が1〜3のテトラアルコキシシラン、好ましくはテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、加水分解速度の遅いシリカ源(b2)として、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルメタン、ジメチルジメトキシシランから選ばれる化合物のうち1種、好ましくはビストリメトキシシリルエタンとを均一に混合する。
工程(II)に移り、温度10〜100℃、好ましくは10〜80℃で0.1〜24時間、マグネティックスターラーを用いて撹拌した後、1〜24時間熟成させると、中空シリカ粒子が析出し溶液が白濁した状態になる。
その後工程(III)に移り、メンブランフィルターを用いて粒子をろ別し、水洗した後、60〜100℃で5〜20時間乾燥する。得られた粒子を450〜550℃、好ましくは480〜520℃で、1〜20時間焼成し、中空シリカ粒子を得ることができる。
かくして得られた中空シリカ粒子は、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であり、次の性状を有している。
平均粒子径:好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜2μm
平均粒子径の±30%以内の粒子:好ましくは粒子全体の80質量%以上、より好ましく粒子全体の85質量%以上、特に好ましく粒子全体の90質量%以上
BET比表面積:好ましくは700m2/g以上、より好ましくは800〜1400m2/g、特に好ましくは800〜1300m2/g
外殻部の厚み:好ましくは5〜3000nm、より好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは50〜800nm
〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比:好ましくは0.2/100〜50/100、より好ましくは0.5/100〜40/100、特に好ましくは1/100〜30/100
外殻部の平均細孔径:好ましくは1〜10nm、より好ましくは1〜8nm、特に好ましくは1〜5nm
透過型電子顕微鏡(TEM)観察による中空粒子含有率:好ましくは粒子全体の80質量%以上、より好ましくは粒子全体の85質量%以上、特に好ましくは粒子全体の90質量%以上
実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)平均粒子径の測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、視野中の全粒子の直径を写真上で実測して、平均粒子径を求めた。観察に用いた試料は高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作成した。
(2)BET比表面積、平均細孔径の測定
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。前記のBJH法を採用し、ピークトップを平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。
(3)中空シリカ粒子の有機基の確認
中空メソポーラスシリカ粒子が有機基を有していることを確認するために、固体13C−NMR測定を行った。VARIAN社製UNITY INOVA300を用い、固体サンプルの測定を行った。外部標準試料としてヘキサメチルベンゼンを用い、そのメチル基の炭素を17.4ppmとして補正を行った。
(4)粉末X線回折(XRD)パターンの測定
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPC」を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
実施例1
100mlフラスコに水60g、メタノール20g、1規定水酸化ナトリウム水溶液0.46g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.35gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.17gとビストリエトキシシリルエタン0.15gを混合してからゆっくりと加え、5時間攪拌後、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥の後、1℃/分の速度で500℃まで焼成した。
得られた外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子の性状を表1に示す。なお、この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本のピークを有していた。
比較例1
100mlフラスコに水60g、メタノール20g、1M水酸化ナトリウム水溶液0.46g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.35gを入れ攪拌した。その水溶液にテトラメトキシシラン0.35gをゆっくりと加え、5時間攪拌後、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物を実施例1と同様にして焼成した。結果を表1に示す。
比較例2
100mlフラスコに水60g、メタノール20g、1M水酸化ナトリウム水溶液0.46g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド0.35gを入れ攪拌した。その水溶液にビストリエトキシシリルエタン0.4gをゆっくりと加え、5時間攪拌後、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物を実施例1と同様にして焼成した。結果を表1に示す。
Figure 2008110905
実施例2
実施例1のビストリエトキシシリルエタンの代わりに、ビストリエトキシシリルメタンを0.15gを用いた以外は、実施例1と同様にして中空シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、含有する有機基がメチレンであった以外は実施例1と同様の中空メソポーラスシリカ粒子であった。測定結果を表2に示す。
実施例3
実施例1のビストリエトキシシリルエタンの代わりに、ジメチルジメトキシシランを0.13gを用いた以外は、実施例1と同様にして中空シリカ粒子を得た。得られたシリカ粒子は、中空粒子含有率は10質量%以下であったが、外殻がメソポーラスである中空メソポーラスシリカ粒子が得られた。測定結果を表2に示す。
Figure 2008110905
実施例1〜3で得られた中空シリカ粒子は、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であって、外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、かつメソ細孔の平均細孔径が1〜10nmである中空シリカ粒子である。
本発明の中空シリカ粒子は、外殻部がメソ細孔構造を有し、かつ有機基を有するケイ素化合物により構成され、親油性が付与されている。このため、例えば構造選択性を有する触媒担体、吸着剤、物質分離剤、酵素や機能性有機化合物の固定化担体等としての利用が可能である。

Claims (5)

  1. 外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子であって、該外殻部が有機基を有するケイ素化合物により構成され、かつ該メソ細孔の平均細孔径が1〜10nmである中空シリカ粒子。
  2. 有機基が、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1〜22のアルカンジイル基及びフェニレン基から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の中空シリカ粒子。
  3. 粉末X線回折パターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有する、請求項1又は2に記載の中空シリカ粒子。
  4. 下記工程(I)、(II)及び(III)を含む、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子の製造方法。
    工程(I):下記一般式(1)及び(2)で表される第四級アンモニウム塩から選ばれる1種以上(a)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有し、加水分解によりシラノール化合物を生成し、かつ加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源であって、少なくとも1種以上が有機基を有するシリカ源(b)を0.1〜100ミリモル/Lの濃度で含有する水溶液を調製する工程、
    [R1(CH33N]+- (1)
    [R12(CH32N]+- (2)
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価の陰イオンを示す。)
    工程(II):工程(I)の水溶液を10〜100℃の温度で撹拌して、第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を析出させる工程
    工程(III):得られた第四級アンモニウム塩とシリカとの複合体を、焼成又は抽出処理し、該複合体から第四級アンモニウム塩を除去する工程
  5. 加水分解速度の異なる2種以上のシリカ源が、下記一般式(3)〜(7)から選ばれるものである(但し、一般式(3)又は(6)のみの組み合わせを除く)、請求項4に記載の中空シリカ粒子の製造方法。
    SiY4 (3)
    3SiY3 (4)
    3 2SiY2 (5)
    3 3SiY (6)
    3Si−R4−SiY3 (7)
    (式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
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