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JP2008189867A - 炭素繊維補強熱可塑性樹脂複合材料 - Google Patents

炭素繊維補強熱可塑性樹脂複合材料 Download PDF

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JP2008189867A
JP2008189867A JP2007027735A JP2007027735A JP2008189867A JP 2008189867 A JP2008189867 A JP 2008189867A JP 2007027735 A JP2007027735 A JP 2007027735A JP 2007027735 A JP2007027735 A JP 2007027735A JP 2008189867 A JP2008189867 A JP 2008189867A
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Tetsuo Ban
哲夫 伴
Hiroshi Sakurai
博志 櫻井
Hiroki Sano
弘樹 佐野
Hiroshi Hara
寛 原
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Teijin Ltd
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Abstract

【課題】適切な熱伝導率を有し、熱可塑性樹脂との成形体中に占める炭素繊維含有率を高めることができる炭素繊維強化材を提供すること。
【解決手段】ピッチ系炭素繊維からなる平均繊維径が5〜15μm、繊維径に対する繊維径分布の比が5〜15%、平均繊維長が10〜100μm、アスペクト比が1乃至20である短繊維Aと、ピッチ系炭素繊維からなる平均繊維径が5〜15μmであり、繊維径に対する繊維径分布の比が5〜15%、平均繊維長が0.1〜1mmである短繊維Bとを重量比1対99乃至99対1の比率で混合してなる炭素繊維集合体であって、該炭素繊維集合体の六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは10nm以上であることを特徴とするピッチ系炭素繊維集合体に熱可塑性樹脂を含浸させて得られる炭素繊維強化複合材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、ピッチ系炭素繊維を原料に用いたピッチ系炭素繊維集合体および炭素繊維強化複合材料及びそれらの製造方法に関わるものである。さらに詳しくは熱伝導性に優れたピッチ系炭素繊維を用いた不織布により、充填率が高く機械特性や熱伝導性に優れた炭素繊維強化複合材料に関する。
高性能の炭素繊維は鎖状高分子であるセルローズ、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリアクリロニトリル(PAN)等を原料とする繊維形状の鎖状高分子に由来する炭素繊維と、環状炭化水素からなる石油・石炭等のピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維に分類できる。前者の鎖状高分子由来の炭素繊維は、炭化処理を施すのみで強靭な繊維として利用できる。
そして、殊にPAN系炭素繊維は強度・弾性率が通常の合成高分子に比較して著しく高い性能を有効的に利用し、航空・宇宙機材用途、建築・土木資材用途、スポーツ・レジャー用具などに広く用いられている。これに対し、後者のピッチ系炭素繊維は、高温度の熱処理である黒鉛化処理を経た際に、その特性が発揮され、黒鉛結晶の性能が発現する。
つまり、前者の炭化繊維と後者の黒鉛化繊維とを比較すると、後者は、いわゆる黒鉛結晶に代表される六角網面層の成長方向、および厚み方向に大きな結晶サイズを有するため、黒鉛化(結晶化)が充分に進むと、この黒鉛化繊維の方が炭化繊維よりも電気伝導率、熱伝導率が高く、機械的特性も優れてくる。
そこで、単に強化材料としての炭素繊維複合材料の役割から、黒鉛化繊維、即ちピッチ系炭素繊維としての熱伝導性をも利用し、複合材料としての蓄熱性や放熱性を利用することによって、この炭素繊維複合材料の総合的利用の途が拓ける期待がある。
昨今、一方で、省エネルギーに代表されるエネルギーの効率的使用方法が注目されているが、畜熱性を応用して暖房、保温等に炭素繊維を適用し得る可能性がある。また、他方で、高速化に伴う電子計算機のCPUの発熱や集積回路のジュール熱による発熱が問題になっているが、これらを解決するためには、熱を効率的な伝達経路により処理することや有効な放熱手段を開発する必要がある。つまり、これらの課題に対し、所謂ヒートマネジメントを達成する要請がある。
かような観点から、炭素繊維を見直すと、一般に炭素繊維は、通常の有機合成高分子に比較しての熱伝導率が高いが、さらなる熱伝導の向上が検討されている。ところが、市販されているPAN系炭素繊維の熱伝導率は通常200W/(m・K)よりも小さくヒートマネジメントの観点からは必ずしも好適な材料であるとは言えない。これに対して、ピッチ系炭素繊維はPAN系炭素繊維に較べて高熱伝導率を達成しやすい長所を潜在的に備える。
ところで、炭素繊維の高い熱伝導率を効果的に利用するためには、炭素繊維集合体の間隙を充填できる何らかのマトリクスとなる材料を介在させ、しかる状態において、炭素繊維が高充填率でかつ熱伝導を維持するためのネットワーク構造を形成していることが好ましい。ネットワーク構造が三次元的に形成されている場合には、成形体の面内方向のみならず厚さ方向に対しても炭素繊維固有の高い熱伝導が達成されるため、例えば放熱板の用途には非常に効果的であると考えられる。ところが、従来から用いられている炭素繊維を織物状にしてマトリクスと複合材化した複合材は、面内の熱伝導率は向上しているものの、厚さ方向の熱伝導は、炭素繊維のネットワーク形成が充分にできないことから、熱伝達が不充分であり、放熱性が良好であるとは言い難い。
このような背景のため、抜本的に炭素繊維の熱伝導率を改善しようとする試みが多数なされている。例えば、特許文献1には、一方向に引揃えた炭素繊維に黒鉛粉末と熱硬化性樹脂を含浸した機械的強度の高い熱伝導性成形品が開示されている。また、特許文献2においては、炭素繊維の物性を向上せしめるべく、熱伝導度等の物性を改良させることが開示されているものの、成形体の熱物性の明確な性能向上が果たされているか否かの点に関しては検討が充分に成されておらず、詳細は不明としか言えない。
特開平5−17593号公報 特開平2−242919号公報
上記のように、炭素繊維の高熱伝導率化という観点では開発が進みつつある。しかし、ヒートマネジメントの観点からは成形体としての熱伝導性が高くなっていることが必要とされてきた。そこで、適切な熱伝導率を有し、さらに成形体中の炭素繊維含有率を高めることができる炭素繊維強化材、および熱伝導性が向上し機械特性に優れる炭素繊維強化複合材料が強く望まれていた。
そこで、ピッチ由来の炭素繊維を選択し、比較的高温度で焼成処理及び黒鉛化処理を施して結晶化状態を改善することにより、10nmを超える大きさの結晶成長を促し、結果的に黒鉛化炭素繊維の高熱伝導率化をもたらすという、黒鉛結晶成分の多い炭素繊維の開発が可能となる。もっとも、ヒートマネジメントの観点からは成形体としての熱伝導性が高く、しかもその熱伝導性が維持されることが必要である。
そして、適切な熱伝導率を有し、さらに成形体中の炭素繊維含有率を高めることができるように、炭素繊維強化材を改良すること、並びに、三次元的な環境条件下で熱伝導性を高め、しかも機械的特性に優れる炭素繊維強化複合材料を開発することが課題となる。
本発明者らは、炭素繊維強化複合材料の面方向および厚さ方向の熱伝導度を向上させることに鑑み、鋭意研究した結果、特定の繊維径と繊維長を備えた炭素繊維集合体は、繊維相互の充填性が増大し、これに伴って熱伝導率が改善されることを知見した。この現象を利用すると、熱可塑性樹脂と当該ピッチ系炭素繊維集合体とを組み合わせて用いた場合、複合材料中において炭素繊維の充填率が向上した状態をそのまま持続することが可能となり、しかも厚さ方向の熱伝導率が著しく改善されることを見出し本発明に到達した。
即ち、請求項1の発明は、
ピッチ系炭素繊維からなる平均直径(D1)が5〜15μmであり、繊維直径D1に対する繊維直径分布(S1)の比(CV1)が5〜15%の範囲にあり、平均繊維長(L1)が10〜100μm、平均繊維直径(D1)に対するアスペクト比が1〜20である短繊維Aと、ピッチ系炭素繊維からなる平均繊維直径(D2)が5〜15μmであり、繊維直径D2に対する繊維直径分布(S2)の比(CV2)が5〜15%の範囲にあり、かつ平均繊維長(L2)が0.1〜1mmである短繊維Bとを、
重量比1対99乃至99対1の比率で混合してなる炭素繊維集合体であって、該炭素繊維集合体の六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが10nm以上であることを特徴とするピッチ系炭素繊維集合体に熱可塑性樹脂を含浸させて得られる炭素繊維強化複合材料である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のピッチ系炭素繊維集合体において、該ピッチ系炭素繊維の真密度が1.8〜2.5g/ccの範囲であり、繊維軸方向の熱伝導率が400W/(m・K)以上である性質を備える。
また、請求項3の発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維に含まれる灰分が0.1重量%以下である性質を備える。
この複合材料の発明では、ピッチ系炭素繊維集合体に母材樹脂(マトリックス樹脂)を含浸させて得られた炭素繊維強化複合材料であって、このマトリックス樹脂は熱可塑性樹脂である。そして、ピッチ系炭素繊維集合体がマトリックス樹脂に対して体積分率で10〜80体積%を含有する特徴を持つ。その炭素繊維強化複合材料は平板状に整形した状態における厚さ方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である。
本発明に供する熱可塑性樹脂としてポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート類、ポリエチレン2,6ナフタレート類、ナイロン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類及びポリ乳酸類を挙げることができる。
また請求項7に記載するようなピッチ系炭素繊維集合体に母材樹脂を含浸させる工程を含む炭素繊維強化材の製造方法を特定している。
またさらに、本発明の炭素繊維強化複合材料を主たる材料は、電子部品用放熱板、熱交換器、湿式太陽電池用対向電極材、電磁波遮蔽用基材及び固体研磨材を用途に適用できる。
本発明の炭素繊維強化複合材料は、ピッチ系炭素短繊維Aとこれと繊維長を異にするピッチ系炭素短繊維Bとを効果的に併用・混用することによって、炭素繊維集合体又は含浸された熱可性樹脂存在下の成形体において、熱伝導率の分布が集合体又は成形体面内のみならず、集合体(成形体)厚さ方向にもほぼ同等になることから、電子部品用放熱板や熱交換器等の熱伝導効率を高めるとともに、筐体などに必要となる機械的強度を高め、成形体としての軽量化を達成できる。
きわめて微細な短繊維Aの存在は、繊維同士の接触機会を増大させ、このため熱伝導率が増加し、しかも熱伝導率は方向性(異方性)がなく均質である利点を備えている。
このような熱伝導・熱伝達に異方性のない成形材料は、成形が容易で、格別な条件設定や注意が不要となる利点を有する。成形体としても部材としても、均質で互換性に富む利点がある。
次に、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
即ち、請求項1に特定した本発明は、ピッチ系炭素繊維からなる繊維平均直径(D1)が5〜15μmの範囲であり、平均繊維長(L1)が10〜100μm、平均繊維直径(D1)に対するアスペクト比が1乃至100である短繊維Aと、ピッチ系炭素繊維からなる繊維平均直径(D2)が5〜15μmの範囲であり、平均繊維長(L2)が0.1〜1mmである短繊維Bとを、重量比1対99乃至99対1の比率で混合してなるピッチ系炭素繊維集合体であって、該炭素繊維集合体に占める六角網面の成長方向に由来する結晶サイズが10nm以上である。
このように本発明の課題は、短繊維Bと短繊維Aとを混合したピッチ系炭素繊維集合体及び該ピッチ系炭素繊維集合体にマトリックス樹脂を含浸させて得られた炭素繊維強化複合材料によって達成される。
また、請求項2および3の発明は、本発明を更に特定したものであって、炭素繊維集合体は、ピッチ系炭素繊維の真密度が1.8〜2.5g/ccの範囲であり、繊維軸方向の熱伝導率が400W/(m・K)以上であり、かつピッチ系炭素繊維の灰分が0.1重量%以下である。
本発明の繊維長を異にする長短2種類の炭素繊維を得る原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンの如き縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチの如き縮合複素環化合物等を挙げることができる。なかんずく、ナフタレンやフェナントレンのような縮合多環炭化水素化合物が好ましく、光学的異方性を呈するピッチ、すなわちメソフェーズピッチが特に好ましい。これらは、その1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよいが、メソフェーズピッチを単独で用いることが熱伝導性の高い炭素繊維を得るうえで望ましい。
原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることができる。原料ピッチとしては軟化点が250℃以上350℃以下の範囲のピッチが好ましい。軟化点が250℃より低いと、不融化の際に繊維同士の融着や大きな熱収縮が発生するので好ましくない。また、軟化点が350℃より高いものはピッチの熱分解が生じやすく、繊維状に成形し難く、したがって紡糸・製糸に適さない。
原料ピッチはメルトブロー法により紡糸され、その後不融化処理、さらに焼成加工よって、三次元ランダムシート(マット)状の炭素繊維集合体とすることができる。要すれば、さらに高温度において黒鉛化(結晶化)できる。
以下夫々の工程について説明する。
本発明においては、前述の適切な軟化点を備えたメソフェーズピッチの如き好ましいピッチ原料から紡糸ノズルを用いてピッチ繊維を得る。
この工程において使用される紡糸ノズルの形状については格別な制約はないものの、ノズル孔のラウンド長と孔径の比(いわゆるL/D)が20以下のものが好ましく用いられ、更に好ましくは15よりもさらに小さいものが用いられる。
本発明のように、炭素繊維の繊維長を変えるためには、或いは同様に、繊維径を変えるにも、このノズル孔のラウンド長と孔径の比を変えればよい。また、紡糸時のノズルの温度を適宜変化させても長短の繊維長の異なる繊維を容易に得ることができる。さらに後述する加熱ガスの吹き付け速度を変えることによっても、ピッチ繊維の繊維長と繊維径とを変えることが可能である。ノズルの形状、ピッチの溶融粘度、細化条件等を含め、これら紡糸条件は試行錯誤により好適条件を決定でき、原料ピッチの選択と共に経験的に条件設定が可能である。
一般には、紡糸温度についても特段の制約はなく、安定した紡糸状態が長時間にわたって維持できる温度、即ち、紡糸ピッチの粘度が2〜80Pa・s、好ましくは5〜30Pa・sになる温度を選択すればよい。
ノズル孔から出糸されたピッチ繊維(即ち、炭素繊維の前駆体に該る)は、100〜450℃に加温された毎分100〜10000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって細化・繊維化される。吹き付けるガスは空気又は窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスを用いることができるが、コストパフォーマンスの点から空気で充分である。
繊維化(細化)のガスは加熱空気以外に燃焼ガス(二酸化炭素)が利用できることは言うもでもない。この加温ガスはその温度、吹き付け速度等を適宜選んで長短の繊維長を持つピッチ繊維とすることもできる。この場合の細化条件も試行錯誤法により条件が設定できる。
かくして得られたピッチ繊維は、金網ベルト上に捕集され、連続的な三次元ランダム形状を有するシート状物になり、さらにクロスラッピングなどを施してシート状物をランダムに積層することも可能である。
このようにして得られた三次元ランダムなピッチ繊維シート状物は、公知の方法で不融化を実施できる。即ち、不融化工程は、空気のみで処理するか、又は空気に少量の第三成分であるオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素若しくは臭素等を添加したガスを用いて処理するものであり、不融化温度を150〜400℃に設定することにより達成される。ピッチ系繊維の不融化では、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。
この不融化工程に継いで、ピッチ繊維シート状物は500〜3500℃で焼成・黒鉛化処理されて、黒鉛化(炭素)繊維として安定する。つまり、三次元ランダム形状を有するピッチ系炭素繊維集合体となる。この不融化ピッチ繊維の焼成工程は、真空中又は窒素、アルゴン若しくはクリプトン等の不活性ガス中で実施される。通常は常圧の窒素中で実施することが望ましく、コストの安い窒素が常用される。
ピッチ系繊維の焼成(黒鉛化)温度は、炭素繊維として高い熱伝導率を得るためには、2300〜3500℃の高温度を選択して黒鉛化率を高めることが好ましい。さらに好ましくは2500〜3500℃の温度にする。また、焼成処理の際に黒鉛製容器に入れ黒鉛化すると、外部からの物理的、化学的作用の影響を遮断できることから好適な態様となる。黒鉛製容器は不融化処理を終えたピッチ繊維集合体を所定量収納することができる容量であれば、その大きさ、形状に特に制約はない。もっとも、焼成処理中、又はその後の冷却中に、炉内の酸化性のガス又は炭素蒸気との反応によるピッチ系炭素繊維集合体の損傷を防ぐために、蓋付きの気密性の高いものを使用することが好ましい。
本発明で用いるピッチ系炭素繊維集合体を構成するピッチ系炭素短繊維Aは、繊維の平均直径(D1)が5〜15μmの範囲であり、D1に対する糸直径分散(S1)の比(CV1)が5〜15%で、平均繊維長(L1)が100μm以下であり、かつ六角網面の成長方向に由来する結晶粒サイズが10nm以上である。
繊維直径が5μm以下の場合には、生産性やハンドリング性が低下しやすい傾向にあるため商業生産に適さない。また繊維径が15μmを超えると、不融化工程でのムラが大きくなり部分的に融着が起こりやすい傾向にあるので好ましくない。
短繊維Aの繊維長(L1)は100μm以下であり、この範囲を逸脱すると三次元的に均質な繊維密度を備えた集合体が作成できず、所望の熱伝導性が得難くなるため好ましくない。
繊維長はピッチ系炭素繊維集合体における熱伝導性及び複合材料の補強に影響を及ぼす。短繊維Aは集合体自体の均質化、つまり熱伝導性の均等化に関わり、短繊維Bは繊維集合体の形態維持と均等に分散した短繊維Aの分散状態保持の役割を果たしている。
ピッチ系炭素繊維の六角網面の成長方向に由来する結晶サイズは公知の方法によって求めることができ、X線回折法にて得られる炭素結晶の(110)面からの回折線によって求めることができる。結晶子サイズが重要になるのは、熱伝導が主としてフォノンによって担われており、フォノンを発生するのが結晶であることに由来している。結晶子サイズとしては10nm以上であり、より望ましくは20nm以上であり、さらに望ましくは30nm以上である。
ピッチ系炭素繊維の真密度は、処理温度に強く依存するが、1.8〜2.5g/ccの範囲のものが好ましい。より好ましくは、2.0〜2.5g/ccである。また、ピッチ系炭素繊維集合体を構成するピッチ系炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率は400W/(m・K)以上であることが好ましく、より好ましくは、500W/(m・K)以上である。
本発明で使用するピッチ系炭素繊維はその繊維の灰分が0.1重量%以下である。ピッチ系炭素繊維にの灰分が0.1重量%を超えると、本発明の第二の課題であるピッチ系炭素繊維集合体に熱可塑性のマトリックス樹脂を含浸させて炭素繊維強化複合材料を製造する際に、熱可塑性樹脂の変性を引き起こし、機械特性の優れた炭素繊維強化複合材料を作ることが出来ず好ましくない。
ピッチ系炭素繊維である短繊維A、短繊維Bは商業生産では次の製造方法が適切である。繊維長に拘泥せずに、先ず適当量のピッチ繊維を紡糸し、金網ベルト上に捕集され、連続的な三次元ランダム形状を有するシート状とする。そして、不融化及び焼成処理を実施したピッチ繊維シート状物は、短繊維化するためにミリングされ、必要により篩分けすることにより所望の平均繊維長を有するピッチ系炭素繊維前駆体となる。このミリングはピンミル、ビクトリーミル、ジェットミル、高速回転ミル等の粉砕機、切断機等が使用される。ミリングを効率よく行うためには、ブレードを取付けたロータを高速に回転させることにより、繊維軸に対して直角方向に繊維を寸断する方法が適切である。ミリングによって生じるピッチ繊維の平均繊維長は、ロータの回転数、ブレードの角度等を調整することにより制御される。篩分けは篩の目の粗さを組み合わせることによって所望のサイズを得ることができる。
本発明のピッチ系炭素繊維は、上記処理を終えたピッチ系炭素繊維前駆体を非酸化性雰囲気下において黒鉛化することにより最終的なピッチ系炭素繊維となる。
黒鉛化温度は、炭素繊維としての熱伝導率を高くするためには、2300〜3500℃にすることが好ましい。より好ましくは2500〜3500℃にする。
ミリングされたピッチ系炭素繊維前駆体を予め黒鉛化し、ピッチ系炭素繊維とした後に篩い分けし、所望の平均繊維長を有する短繊維A及び短繊維Bを得ることもできる。
ピッチ系炭素繊維集合体は上述で記載した短繊維Aと短繊維Bを公知の混合手段で乾式ブレンドすることで得ることが出来る。もしくは不融化及び焼成処理した連続的な三次元ランダム形状を有するシート状物に短繊維Aの前駆体炭素繊維を混合し、黒鉛化処理することでも得ることが出来る。
本発明の第二の課題は、ピッチ系炭素繊維集合体に熱可塑性のマトリックス樹脂を含浸させて得られた炭素繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明で用いる熱可塑性マトリックス樹脂としては、ポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート類、ポリエチレン2,6ナフタレート類、ナイロン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類の群よりなる少なくとも1つの高分子樹脂組成物が好適に用いられるが、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸類(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル)、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマー等が挙げられる。そして、高分子樹脂組成物は、1種を単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、2種以上の高分子材料からなるポリマーアロイを使用してもよい。
本発明における炭素繊維強化複合材料中のピッチ系炭素繊維集合体の割合としてはマトリックス樹脂に対して体積分率で10〜80体積%であるのが好ましい。体積分率が低くなれば炭素繊維強化複合材料の熱伝導性が低下するため所望の物性を得ることができなくなる。また体積分率が高くなれば熱伝導率は向上するものの、成型が困難となる。
本発明における炭素繊維強化複合材料は、複合材料としての熱伝導率が高いものが望ましいが、表裏への熱拡散より算出される熱伝導率が2W/(m・K)以上である。
本発明においてマトリクス樹脂をピッチ系炭素繊維集合体に含浸させる炭素繊維強化複合材料の製造方法では、炭素繊維強化複合材料を得るための成形方法としては特に限定はなく、射出成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、押出成形法、注型成形法、ブロー成形法などが挙げられる。そして、下記の2つの方法で実施することができる。
具体的な方法としては例えば金型内にあらかじめ仕込まれたピッチ系炭素繊維集合体に対し、加温により液状となったマトリクス樹脂を導入し、マトリックス樹脂を固化させることにより、炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
また別の方法としては金型内にピッチ系炭素繊維集合体及びマトリクス樹脂原料を仕込み、マトリックス樹脂を加熱溶融により含浸させ、炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
後者の場合マトリックス樹脂原料は顆粒状や粉砕状など金型内に仕込み易い形状にしておくことが好ましく、またマトリックス樹脂を真空状態とした後、金型を加圧条件にて含浸を徹底させることが、脱ガス性や含浸性の点から好ましい。
炭素繊維強化複合材料あるいはこの強化複合材料からなる成形品の表面処理の方法としては電解酸化などによる酸化処理やカップリング剤やサイジング剤で処理することで、表面を改質させたものでもよい。
また、無電解メッキ法、電解メッキ法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理的蒸着法、化学的蒸着法、塗装、浸漬、微細粒子を機械的に固着させるメカノケミカル法などの方法によって金属やセラミックスを表面に被覆させることが可能である。
また、ピッチ系炭素繊維集合体は、表面処理した後サイジング剤を添着させてもよい。
サイジング剤はピッチ系炭素繊維集合体に対し0.1〜15重量%、好ましくは0.4〜7.5重量%サイジング剤としては通常用いられる任意のものが使用でき、具体的にはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、水、アルコール、グリコール単独又はこれらの混合物を用いることができる。
本発明において炭素繊維以外の熱伝導性フィラーも必要に応じて使用する事もできる。具体的には酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、銀、金、銅、アルミニウムなどの金属もしくは合金、グラファイト、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などが挙げられる。
本発明で用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填材が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれらを2種類以上併用することも可能である。
本発明の炭素繊維集合体、これを含む炭素繊維強化複合材料及びその成形品は、熱伝導性に優れている故に炭素繊維強化複合材料を主たる材料とする電子部品用放熱板や熱交換器等の用途に好適に使用できる。
具体的には半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放散させるための放熱部材、伝熱部材あるいはそれらの構成材料等として、放熱板、半導体パッケージ用部品、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント配線基板、冷却ファン用部品、ヒートパイプ、筐体等に成形加工して用いることができる。
本発明の炭素繊維の熱伝導率は公知の方法によって測定できるが、特に炭素繊維複合材料の厚さ方向の熱伝導率を向上させることを目的としているので、レーザーフラッシュ法が望ましい。レーザーフラッシュ法では、比熱容量Cp(J/gK)と熱拡散率α(cm/sec)を測定し、別に測定した密度ρ(g/cc)から、熱伝導度λ(W/cmK)をλ=α・Cp・ρで求め、単位換算を実施し得る。
一般に炭素繊維そのものの熱伝導度は数百W/(m・K)であるが、成形体にすると、欠陥の発生・空気の混入・予期せぬ空隙の発生により、熱伝導率は急激に低減する。よって、炭素繊維複合材料としての熱伝導率は実質的に1W/(m・K)を超えることが困難であるとされてきた。しかしながら、本発明では三次元ランダムマット状炭素繊維を用いることでこの問題を解決し、炭素繊維複合材料として2W/(m・K)以上のものを得ることが可能となった。
このようにして得られた炭素繊維強化複合材料は、ヒートマネジメントの用途に好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ピッチ系炭素繊維の直径は、焼成を経た繊維を走査型電子顕微鏡下800倍で任意の10視野を抽出して撮影して求めた。
(2)ピッチ系炭素繊維の繊維長は、焼成を経た繊維を抜き取り、測長器で測定した。
(3)ピッチ系炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率は、焼成後の繊維の抵抗率を測定し、特開平11−117143号公報に開示されている熱伝導率と電気比抵抗との関係を表す下記式(1)より求めた。
[数1]
K=1272.4/ER−49.4 (1)
ここで、Kは炭素繊維の熱伝導率W/(m・K)、ERは炭素繊維の電気比抵抗μΩmを表す。
(4)炭素繊維強化複合材料の厚さ方向の熱伝導率はレーザーフラッシュ法にて測定した。
(5)ピッチ系炭素繊維の結晶サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(6)ピッチ系炭素繊維の真密度はマイクロメリティックス乾式密度計(アキュピック1330−03)を用いて気体置換法にて測定した。
(7)ピッチ系炭素繊維の灰分は750℃の電気炉にて酸素雰囲気中で10時間加熱灰化し、残留した灰分を重量測定した。
[実施例1]
短繊維A及びBの製造:
生産コストを抑えて、合理的に長短2種類の繊維長を有する炭素繊維を得るには、同一のピッチ原料を用い、ほぼ同一の条件でピッチ繊維を紡糸する。スピナレット、紡糸温度、時間当たりの吐出量、スリットからの加熱ガスの温度・噴出速度、噴出位置等の条件をほとんど変更しないで、金網ベルト上にピッチ繊維を捕集し、要すれば、クロスラッピングにより目付けを調整し、不融化処理して、さらに焼成処理を施してから、ミリング装置を用いてこのピッチ繊維を短繊維化して、所望の平均繊維長を有するピッチ系炭素繊維前駆体を得る。更に該ピッチ系炭素繊維前駆体を黒鉛化処理することで短繊維A,Bとなる。
炭素繊維集合体の調製:
ついで短繊維Aと短繊維Bをブレンドすることでマトリックスと混用できる複合材料用炭素繊維集合体を得ることが出来る。もしくは先に金網ベルト上に捕集し、不融化及び焼成処理してあるピッチ繊維からなるシート状物に短繊維Aの前駆体炭素繊維を混合し、不融化、そして炭素化・黒鉛化処理することでもマトリックスと混用できる複合化材料用炭素繊維集合体を得ることができる。
具体的に実施例を示す。
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が284℃であった。直径0.2mmの孔の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径13μmのピッチ系短繊維を作製した。紡出された短繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付250g/mのマット状ピッチ繊維とした。
短繊維Aの製造:
このマット状ピッチ繊維の一部を空気中で170℃から310℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化を行った。不融化したマット状ピッチ繊維を700℃で焼成しその後粉砕装置にて短繊維化し、その後さらに3000℃で焼成することによりピッチ系炭素繊維を得た。ピッチ系炭素繊維の平均直径(D1)は11μm、D1に対する分散の比(CV1)は12%であった。平均繊維長(L1)は90μmであった。六角網面の結晶サイズは46nmであった。繊維軸方向の熱伝導率は590W/(m・K)であった。また、ピッチ系炭素繊維の真密度は2.1g/ccであり、灰分は0.02重量%であった。
短繊維Bの製造:
残余のマット状ピッチ繊維も、同様に空気中で170℃から310℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して、不融化を行った。不融化したマット状ピッチ繊維を700℃で焼成しその後粉砕装置にて短繊維化し、その後さらに3000℃で焼成することによりピッチ系炭素繊維を得た。ピッチ系炭素繊維の平均直径(D2)は11μm、D2に対する分散の比(CV2)は13%であった。平均繊維長(L2)は0.4mmであった。六角網面の結晶サイズは48nmであった。繊維軸方向の熱伝導率は590W/(m・K)であった。また、ピッチ系炭素繊維の真密度は2.1g/ccであり、灰分は0.02重量%であった。
熱可塑性樹脂との配合:
さらに、マトリックス樹脂として東京化成工業株式会社製のラクチドを重合してポリ乳酸を合成した。
上述のピッチ系炭素繊維A60重量部とピッチ系炭素繊維B30重量部をドライブレンドして、ピッチ系炭素繊維集合体を作成した。上述のポリ乳酸100重量部とピッチ系炭素繊維集合体35重量部をドライブレンドした後、栗本鐵工製ニーダーを用いて、ピッチ系炭素繊維集合体を含有したポリ乳酸のストランドチップを作成した。左記ストランドチップを射出成形することで、厚さ3mmの炭素繊維強化複合材料を得た。成形された炭素繊維強化複合材の厚さ方向の熱伝導率を測定したところ、3.0W/(m・K)であった。
[実施例2]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が284℃であった。直径0.2mmの孔の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径13μmのピッチ系短繊維を作製した。紡出された短繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付255g/mのマット状ピッチ繊維とした。得られたピッチ繊維(長繊維B)の平均繊維径(D2)は13μm、また平均繊維長(L2)は80mmであった。
このマット状ピッチ繊維の一部を空気中で170℃から305℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化を実施した。不融化したマット状ピッチ繊維を700℃で焼成し、その後さらに粉砕装置にて短繊維化し、次いで、2900℃で焼成・黒鉛化することによりピッチ系炭素短繊維AとBを得た。ピッチ系炭素短繊維Aの平均繊維径(D1)は11μm、D1に対する直径分散の比(CV1)は11%であり、また平均繊維長(L1)は80μmであった。六角網面の結晶サイズは42nmであった。繊維軸方向の熱伝導率は510W/(m・K)であった。また、ピッチ系炭素短繊維の真密度は2.1g/ccであり、灰分は0.02重量%であった。また、ピッチ系炭素短繊維Bの平均繊維径(D1)は10μm、D1に対する直径分散の比(CV1)は12%であり、また平均繊維長(L1)は0.5mmであった。六角網面の結晶サイズは43nmであった。繊維軸方向の熱伝導率は530W/(m・K)であった。また、ピッチ系炭素短繊維の真密度は2.1g/ccであり、灰分は0.02重量%であった。
上述のピッチ系炭素短繊維A70重量部とピッチ系炭素短繊維B30重量部と、バインダーとしてトワロンパルプ10重量部とを30℃の水浴を用いて抄紙し、その後窒素雰囲気下1500℃で焼成処理することにより平面状のピッチ系炭素繊維集合体を得た。ピッチ系炭素繊維集合体の炭素含有率は99重量%、厚みは1.5mm、空隙率は80体積%であった。
次にマトリックス樹脂としてポリカーボネートフィルムを用い、ピッチ系炭素繊維強化材を成形体の体積比率として35%になるようにセットし、北川精機株式会社製真空プレス機にて、内のり200mmの金型で1mm厚になるようにプレス成形を実施した。成形された炭素繊維強化複合材の厚さ方向の熱伝導率を測定したところ、4.3W/(m・K)であった。
[比較例1]
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が285℃であった。直径0.2mmの円形孔のスピナレットを使用し、スリットから加熱空気を毎分5000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径10μmのピッチ系繊維を作製した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付250g/mの三次元ランダム形状を有するピッチ繊維マットとした。
このピッチ繊維マットを空気中で170℃から295℃まで平均昇温速度7℃/分で昇温して不融化を行った。不融化した三次元ランダムマットを800℃で焼成した。焼成後のピッチ系炭素繊維マットを構成するピッチ系炭素繊維の平均直径(D1)は9μm、D1に対する直径分散の比(CV1)は18%であった。平均繊維長(L1)は40μmであった。六角網面の結晶サイズは3nmであった。繊維軸方向の熱伝導率は、35W/(m・K)であった。
次にピッチ系炭素繊維70重量部と、バインダーとしてトワロンパルプ10重量部とを抄紙することによりピッチ系炭素繊維集合体を得た。
ピッチ系炭素繊維集合体の炭素含有率は99重量%、厚みは1.5mm、空隙率は80体積%であった。
次にマトリックス樹脂として株式会社三洋化成製マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムを用い、ピッチ系炭素繊維集合体を強化材として成形体の体積比率として30%になるようにセットし、北川精機株式会社製真空プレス機にて、内のり200mmの金型で1mm厚になるようにプレス成形を実施した。成形された炭素繊維強化複合材の厚さ方向の熱伝導率を測定したところ、1W/(m・K)未満であり、熱伝導率の小さい値となった。
[比較例2]
実施例1において、ピッチ系炭素繊維集合体を用いることなく、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂単体を成形体として、その厚さ方向の熱伝導率を測定したところ1W/(m・K)未満であった。
本発明の炭素繊維集合体、これを含む炭素繊維強化複合材料及びその成形品は、熱伝導性に優れている故に、炭素繊維強化複合材料を主たる材料とする電子部品用放熱板や熱交換器等の用途に好適に使用できる。
例えば、半導体素子や電源、光源などの電子部品が発生する熱を効果的に外部へ放散させるための放熱部材、伝熱部材あるいはそれらの構成材料等として、放熱板、半導体パッケージ用部品、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント配線基板、冷却ファン用部品、ヒートパイプ、筐体等に成形加工して用い得る。

Claims (8)

  1. ピッチ系炭素繊維からなる平均直径(D1)が5〜15μmであり、かつ繊維直径D1に対する繊維直径分布(S1)の比(CV1)が5〜15%の範囲にあり、平均繊維長(L1)が10〜100μm、平均繊維直径(D1)に対するアスペクト比が1乃至20である短繊維Aと、
    ピッチ系炭素繊維からなる平均繊維直径(D2)が5〜15μmであり、繊維直径D2に対する繊維直径分布(S2)の比(CV2)が5〜15%の範囲にあり、かつ平均繊維長(L2)が0.1〜1mmである短繊維Bとを
    重量比1対99乃至99対1の比率で混合してなる炭素繊維集合体であって、
    該炭素繊維集合体の六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが10nm以上であることを特徴とするピッチ系炭素繊維集合体に熱可塑性樹脂を含浸させて得られる炭素繊維強化複合材料。
  2. ピッチ系炭素繊維の真密度が1.8〜2.5g/ccの範囲であり、繊維軸方向の熱伝導率が400W/(m・K)以上である請求項1に記載のピッチ系炭素繊維集合体からなる炭素繊維強化複合材料。
  3. ピッチ系炭素繊維の灰分が0.1重量%以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維集合体からなる炭素繊維強化複合材料。
  4. ピッチ系炭素繊維集合体が母材樹脂に対して体積分率で10〜80体積%を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  5. 平板状に成形した状態における厚み方向の熱伝導率が2W/(m・K)以上である請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  6. ピッチ系炭素繊維集合体に含浸せしめる母材となる熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート類、ポリエチレン2,6ナフタレート類、ナイロン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリエーテルケトン類及びポリフェニレンスルフィド類の群よりなる少なくとも1種の高分子であるか又は高分組成物である請求項1乃至5のいずれかに記載の炭素繊維強化複合材料。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のピッチ系炭素繊維集合体に母材となる熱可塑性樹脂を含浸させる工程を含む炭素繊維強化複合材料の製造方法。
  8. 炭素繊維強化複合材が、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、注型成形法、ブロー成形法より選ばれる少なくもと1種の成形方法で作製される請求項7記載の炭素繊維強化複合材料の製造方法。
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