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JP2008155392A - 樹脂被覆アルミニウム材、これを用いた電子機器用又は家電製品用の筐体、ならびに、この筐体を用いた電子機器又は家電製品 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム材、これを用いた電子機器用又は家電製品用の筐体、ならびに、この筐体を用いた電子機器又は家電製品 Download PDF

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JP2008155392A JP2006344110A JP2006344110A JP2008155392A JP 2008155392 A JP2008155392 A JP 2008155392A JP 2006344110 A JP2006344110 A JP 2006344110A JP 2006344110 A JP2006344110 A JP 2006344110A JP 2008155392 A JP2008155392 A JP 2008155392A
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Makoto Tongu
頓宮真柱
Toshiki Maezono
前園利樹
Masaji Saito
斉藤正次
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Furukawa Sky KK
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Abstract

【課題】放熱性、導電性、加工性、耐溶剤性、耐食性に優れた樹脂被覆アルミニウム材、及び、これを用いた電子機器等の筐体、電子機器等を提供する。
【解決手段】化成皮膜と、その上に形成した熱硬化性樹脂被膜とを備えた樹脂被覆アルミニウム材であって、熱硬化性樹脂被膜が、ポリエステル系樹脂成分100質量部に対しメラミン系樹脂成分10〜50質量部を配合した熱硬化性樹脂と、0.1〜30μmの平均粒径を有するグラファイト粉末と、0.5〜100μmの最大長径平均値を有するがニッケル粉末と、カルシウムイオン交換型シリカとを含み、熱硬化性樹脂100重量部に対して、3〜50重量部のグラファイト粉末と、1〜10質量部のカーボンブラックと、10〜100重量部のニッケル粉末と、3〜60重量部のカルシウムイオン交換型シリカが含有され、熱硬化性樹脂被膜の膜厚が5μm以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、内部で熱を発する電子機器、家電製品等の筐体、放熱板、反射板等に用いる樹脂被覆アルミニウム材に関し、より詳細には、放熱性及び導電性、ならびに、加工性、耐溶剤性及び耐食性に優れた高機能の樹脂被覆アルミニウム材に関する。更に本発明は、前記樹脂被覆アルミニウム材を用いた電子機器用又は家電製品用の筐体、ならびに、この筐体を用いた電子機器又は家電製品に関する。
電子機器の小型化、高性能化に伴い、これらの電子部品から放出される熱が、狭い空間に蓄積されることが多くなり、該空間からの排熱が問題となってきている。つまり、電子機器内の発熱による機器内部の高温化は、精密な電子機器本体の性能を損なう恐れがあるため、熱を効率よく外部へ排出することが重要な課題となっている。
このような課題を解決するために、特許文献1には、低コストで加工性及び放熱性の良好な材料として、金属等からなる基材表面に外層被膜と内層被膜とを設けた熱放射性表面処理材であって、熱放射率70%以上の顔料を乾燥重量の0.03〜70重量%含有する内層被膜を用いた熱放射性表面処理材料が記載されている。この顔料は赤外線放射性でありこれを含む樹脂塗装を施した材料は、有機被膜のため無機被膜と比較すると曲げ加工性が向上する。しかしながら、この材料は加工強度の高いプレス成形等によって筐体等に成形されるが、この有機被膜の表面潤滑性が乏しいため、加工性が十分であるとはいえない。そのために、加工部の耐食性が劣るという品質劣化の問題、ならびに、大きな被膜割れや傷が発生すると商品価値や生産性が低下してコスト上昇を招く等の問題があった。
特開2002−228085号公報
さらに、CD−ROMなどのドライブケース、パーソナル・コンピュータ関連機器や計測器などの電子機器部品用材料としては、従来から精密な電子機器本体の性能を損なわない電気特性(アース性、シールド性)を具備することが要求されていた。このような要求を満たす材料として、特許文献2には、表面に0.1〜10μmの厚さの樹脂被覆層を設けた電子機器部品用樹脂被覆金属板が記載されている。ここで、樹脂被覆層は、ポリエステル系、エポキシ系、フェノール系、アルキド系の1種又は2種以上と、樹脂100重量部に対し2〜60重量部のニッケル粉末とを含む。このニッケル粉末は、最大長径の平均値が0.1〜100μmの球状、スパイク球状、又は鱗片状の互いに独立した単体粒子及びニッケル粒子が互いに結合した鎖形ニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種から選択される。
特開2001−205730号公報
特許文献3には、金属板の表面に樹脂被膜が設けられた電気電子機器用の金属板が記載されている。ここで、樹脂被膜は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、及びウレタン系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を樹脂成分とし、水分1〜50重量%と潤滑剤0.1〜20重量%を含有し、且つ厚みが0.05〜5μmである。
特開2002−275656号公報
特許文献4には、帯電防止性(表面導電性)の付与、ならびに、プレス加工における被膜割れや被膜剥離の発生防止を目的とした両面プレコートアルミニウム板が記載されている。この両面プレコートアルミニウム板は、アルミニウム板の一方の面に第一の有機樹脂系塗料を塗布、硬化させて潤滑性被膜を形成し、他方の面に導電性物質を含有する第二の有機樹脂系塗料を塗布、硬化させて導電性被膜を形成したもので、プレス成形性及び導電性に優れる。
特開2003−286585号公報
上記特許文献1〜4に記載される導電性樹脂被覆アルミニウム材等では、導電性についての要求にはある程度対応することができていた。しかしながら、近年の電子機器の小型化、高機能化に伴い前述のように電子部品から放出される熱が多量となっている。その結果、上記電子機器部品用材料では筐体内部の熱が筐体内に篭り、精密な電子機器本体の性能を損なう問題が起こっている。熱放射性樹脂被膜の膜厚を厚くすることで放熱性を向上させることが可能である。しかしながら、膜厚を厚くすると電気絶縁性の樹脂成分に導電性付与成分が十分に被覆されて導電性が低下する傾向があるため、導電性と放熱性の両立は非常に困難であった。
特許文献5には、かかる導電性と放熱性の両立を図るプレコートアルミニウム板として、グラファイト粉末とニッケル粉末を含有する熱硬化性樹脂被膜を設けたものが記載されている。
特開2005−305993号公報
このようなアルミニウム材は、放熱性と導電性の両方を満足するものであるが、グラファイト粉末を被膜中に含有する場合には、グラファイトが被膜中で層状の凝集物となることがある。その結果、グラファイトが被膜から脱落し易くなるとともに耐食性が低下する。近年では電気・電子機器筐体等の製造は日本国内のみならず台湾・東南アジア諸国等で広く行なわれている。それらの国々へ輸出したアルミニウム材が保管される場合等において、日本の環境よりも温度・湿度が厳しい環境に曝されることも多いため、アルミニウム材が十分な耐食性を有することが重要となる。また、プレス成形等において加工性が厳しい場合、表面から黒色顔料が脱落することにより成形不具合が発生し、製品歩留が低下するという問題がある。
本発明は、良好な放熱性と導電性の両方を具備し、且つ、加工性、耐溶剤性及び耐食性に優れた樹脂被覆アルミニウム材、この樹脂被覆アルミニウム材を用いた電子機器用又は家電製品用の筐体、ならびに、この筐体を用いた電子機器又は家電製品に関する。
本発明者らは日々積み重ねた研究の結果、両面に化成皮膜を設けたアルミニウム基材の少なくとも一方の面に、ポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂からなる熱硬化性樹脂、グラファイト粉末、カーボンブラック及びニッケル粉末を含有する樹脂被膜を設けることにより、放熱性ならびに導電性の両性能を向上し得ることを見出した。そして、更なる研究により、このような樹脂被膜中にカルシウムイオン交換型シリカを添加することによって、放熱性及び導電性、ならびに、加工性及び耐溶剤性といった諸性能を低下させることなく、耐食性と共にグラファイトの凝集防止作用を向上し得ることを見出した。そして、更に研究を重ねることにより、各成分の添加量や性状の適正範囲を見出して本発明を完成させるに至った。
本発明は請求項1において、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の両面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の上に形成した熱硬化性樹脂被膜とを備えた樹脂被覆アルミニウム材であって、前記熱硬化性樹脂被膜が、ポリエステル系樹脂成分100質量部に対しメラミン系樹脂成分10〜50質量部を配合した熱硬化性樹脂と、0.1〜30μmの平均粒径を有するグラファイト粉末と、カーボンブラックと、0.5〜100μmの最大長径平均値を有するニッケル粉末と、カルシウムイオン交換型シリカとを含み、グラファイト粉末が熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜50重量部含有され、カーボンブラックが熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜10質量部含有され、ニッケル粉末が熱硬化性樹脂100重量部に対して10〜100重量部含有され、カルシウムイオン交換型シリカが熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜60重量部含有され、当該熱硬化性樹脂被膜の膜厚が5μm以下であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材とした。
本発明は請求項2において、熱硬化性樹脂被膜が、分散剤としてアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物及び高分子型化合物から選択される少なくとも一種を含有するようにした。
本発明は請求項3において、一方の化成皮膜上に熱硬化性樹脂被膜を形成し、他方の化成皮膜上に白色顔料を含有する白色樹脂被膜を形成するようにした。
本発明は請求項4において、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム材を用いた電子機器用又は家電製品用の筐体とした。更に請求項5において、このような筐体を用いた電子機器又は家電製品とした。
本発明の高機能樹脂被覆アルミニウム材は、熱の放射性及び表面導電性に優れ、良好な表面潤滑性により耐プレス加工性にも優れる。本発明の樹脂被覆アルミニウム材は更に、反射性、耐溶剤性及び耐食性に優れる。したがって、この樹脂被覆アルミニウム材は、パーソナル・コンピュータ等の電子機器、冷蔵庫等の家電製品、エアコンの室内機や室外機のラジエターなど、熱の放散が必要とされるものの筐体材料として極めて有用である。
A.樹脂被覆アルミニウム材
A−1.アルミニウム基材
本発明に用いるアルミニウム基材は特に限定されるものではないが、筐体を形成・保持するに足る強度を有し、また絞り加工、曲げ加工時において十分なプレス成形加工性を有することから1000系、3000系及び5000系のアルミニウム合金板が好ましい。アルミニウム基材としては、0.1〜2.0mm厚さのものが通常用いられる。
A−2.化成皮膜
アルミニウム基材面に形成する化成皮膜には、塗布型及び反応型の皮膜を用いることができる。塗布型及び反応型の皮膜のいずれでもよく特に制限されるものではないが、アルミニウム基材と樹脂被膜の両方に対して密着性が良好な反応型化成皮膜を用いるのが好ましい。反応型化成皮膜とは、具体的にはリン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理や、リン酸ジルコニウム、リン酸チタニウム等のノンクロメート処理で形成される皮膜である。特にリン酸クロメート皮膜が、汎用性、コストの点で好ましく、環境への配慮という点ではクロムを含まないノンクロメート処理で行なうことが好ましい。アルミニウム基材面に熱硬化性樹脂被膜を直接形成するのではなく、アルミニウム基材と熱硬化性樹脂被膜との間に化成皮膜を設けることにより、熱硬化性樹脂被膜の密着性が向上する。これによって、熱硬化性樹脂被膜のクラック発生を防止する効果が向上して加工性が良好となる。
A−3.熱硬化性樹脂被膜
アルミニウム基材の両面に形成された化成皮膜の一方の上又は両方の上には、赤外線領域において、特に5〜12μmの波長領域において優れた赤外線吸収(放射)性を示す熱硬化性樹脂被膜が形成される。このような熱硬化性樹脂被膜のベース樹脂にはポリエステル系樹脂成分とメラミン系樹脂成分を含む熱硬化性樹脂が用いられ、メラミン系樹脂成分で架橋したポリエステル系樹脂が好適に用いられる。熱硬化性樹脂被膜には、グラファイト粉末、カーボンブラック、ニッケル粉末及びカルシウムイオン交換型シリカが含有される。
(1)ベース樹脂
電子機器からの放射熱はプランクの法則に従い、波長8〜10μmにピークを有する赤外線領域の熱放射性を向上させることが放熱性向上に有効である。ポリエステル系樹脂成分とメラミン系樹脂成分を含む樹脂を用いることによって、このような放熱性を向上することができる。なお、キルヒホッフの法則より熱放射率と熱吸収率は等しく、赤外線の吸収性の高い材料は、赤外線の放射も高い材料といえる。
用いるポリエステル系樹脂としては、加工性と塗装性の観点から数平均分子量が8000〜25000のものが好ましい。数平均分子量が8000未満では、熱硬化性樹脂被膜の可撓性低下による曲げ加工性の低下を招く。一方、数平均分子量が25000を超えると、被膜用塗料の粘度が急激に上昇することにより塗装性の低下を招く。また、ガラス転移温度については、加工性と被膜硬度の観点から−10〜70℃のものが好ましい。ガラス転移温度が−10より低いと被膜硬度の低下に伴う柔軟化によりプレス成形等の加工時に疵が発生し易い。一方、ガラス転移温度が70℃を超えると、被膜の柔軟性低下により曲げ加工性の低下が生じる。ポリエステル樹脂の種類としては、オイルフリーポリエステル樹脂、変性タイプポリエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールを反応させて得ることができる。多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸等の芳香族多価カルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。多価アルコールとしてはプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
メラミン系樹脂としては、メチル化メラミン系樹脂、イソブチル化メラミン系樹脂、n−ブチル化メラミン系樹脂等が用いられるが、加工性の点からメチル化メラミン系樹脂が好ましい。メラミン系樹脂は広範囲の赤外線波長域において赤外線放射性(吸収性)が良好であり、ポリエステル系樹脂100重量部に対して10〜50重量部、好ましくは20〜40重量部の割合で配合される。メラミン系樹脂の配合割合が10重量部未満では、被膜の架橋度が不十分となり、耐溶剤性、曲げ加工性及びその他塗膜の一般物性が低下する。アルミニウム基材を用いて電子機器や家電製品の筐体を製造する際にはプレス成形等が用いられるが、成形時にはプレス油等を使用するため成形後適当な溶剤を用いて洗浄する必要がある。このため、熱硬化性樹脂被膜の耐溶剤性が劣るとプレス油の使用が困難となる。一方、メラミン系樹脂の配合割合が50重量部を超えると、架橋反応が進行し過ぎて塗膜が硬くなり、曲げ加工性、潤滑性が低下する。
(2)グラファイト粉末及びカーボンブラック
塗膜への潤滑性付与として、また赤外線放射性による放熱性付与として、熱硬化性樹脂被膜にはグラファイト粉末が含有される。用いるグラファイト粉末の平均粒径は、0.1〜30μm、好ましくは0.1〜20μmである。平均粒径が0.1μm未満では、グラファイト粉末の分散性が低下し塗料化が困難となり、また超微細粉末への加工コストも高くなる。一方、平均粒径が30μmを超えると、グラファイト粉末が熱硬化性樹脂被膜から脱落し易くなり、耐食性、耐溶剤性及び曲げ加工性の低下を招く。
グラファイト粉末は、ベース樹脂である熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜50重量部の割合で含有される。含有割合が3重量部未満では、熱硬化性樹脂被膜の単位面積当たりにおけるグラファイト粉末の絶対量が不足し放熱性向上の効果が十分に得られない。一方、含有割合が50重量部を超えると熱硬化性樹脂被膜の成膜が困難となり、グラファイト粉末が樹脂塗膜から脱落しやすくなり、耐食性、耐溶剤性、及び成形加工性が低下する。
前記カーボンブラックは、グラファイトと同様に放熱性付与材として有効である。カーボンブラックとグラファイトを混合添加することにより、グラファイトの添加量を抑えつつ性能を満足できる。グラファイトのみを添加した場合、添加量を抑えると凝集を起こしにくくなり耐食性や加工性、耐溶剤性等の向上が期待できるものの、本発明における主要な物性である放熱性を所望の値とすることが困難となる。またカーボンブラックのみを添加した場合、グラファイトの赤外線放射性と比べてカーボンブラックの赤外線放射性は若干劣るため所望の放熱性を得ることが困難である。これらのことからグラファイトとカーボンブラックを併用することにより放熱性、導電性、加工性、耐食性、耐溶剤性といった諸性能を全て充足することが可能となる。また一般的にはカーボンブラックと比較するとグラファイトは高価であり、グラファイト添加量を抑えることでコストを抑えることも可能となり経済的である。カーボンブラックは、熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜10質量部を添加する。添加量が1質量部未満の場合、放熱性の効果が十分ではなく劣る。また10質量部を超えると、1次粒子径がnmレベルであるため表面積が非常に大きいカーボンブラックの添加量が過剰となり、塗料粘度が急激に上昇し塗料作製が困難となる。
本発明に用いるグラファイト粉末及びカーボンブラックの種類は特に制限されるものではない。グラファイトの場合、具体的には人造タイプと天然タイプがあり、人造タイプには石油等を原料として製造されたものや天然タイプのものを化学処理したものがある。また天然タイプには土状、鱗片状、鱗状等の種類があり、これらの中から1種又は2種以上混合したものでも良い。またカーボンブラックには粉状、粒状、フレーク状等の種類があり、更に導電性や分散性を高めるために表面処理を施したものもある。これらの中から1種又は2種以上混合したもので良い。
なお、赤外線放射性顔料としてはグラファイト及びカーボンブラックの他に、一般に鉄マンガン系や銅クロム系等の金属酸化物が知られているが、波長10μm以下の赤外線放射性が劣る。
(3)ニッケル粉末
塗膜への導電性付与として、熱硬化性樹脂被膜にはニッケル粉末が含有される。ニッケル粉末には球状、鎖型、鱗片状等の種類があり特に制限されるものではないが、鎖型、鱗片状のものが特に加工性、導電性ともに良好であり好ましい。これらの種類中から1種又は2種以上を混合したものが用いられる。
用いるニッケル粉末の最大長径の平均値は、0.5〜100μmである。最大長径の平均値が0.5μm未満では、導電性のバラツキが大きく不安定となり結果として導電性が低下する。一方、最大長径の平均値が100μmを超えると、ニッケル粉末が熱硬化性樹脂被膜から脱落し易くなるため耐食性、耐溶剤性、曲げ加工性が低下する。
ニッケル粉末は、ベース樹脂である熱硬化性樹脂100重量部に対して10〜100重量部の割合で含有される。ニッケル粉末以外の金属粉末でも導電性付与には有効であるが、特に材料コストと導電性能のバランスからニッケル粉末が用いられる。ニッケル粉末の含有割合が10重量部未満では、十分な導電性付与効果が得られない。一方、含有割合が100重量部を超えると熱硬化性樹脂被膜の成膜が困難となり、ニッケル粉末が樹脂被膜から脱落し易くなって耐食性、耐溶剤性、成形加工性が低下する。
(4)カルシウムイオン交換型シリカ
熱硬化性樹脂被膜には、カルシウムイオン交換型シリカも含有される。カルシウムイオン交換型シリカとはシリカ表面のシラノール基にカルシウムイオンが結合したものであり、通常、防錆顔料として非常に有効である。
本発明者らは、このようなカルシウムイオン交換型シリカを塗膜塗料に添加することにより、塗料の分散時や塗装する際の再撹拌時において、塗料内部でシリカ粒子の衝突が起こることによりグラファイトの凝集を防ぐ作用が得られることを見出した。その結果、凝集物生成の防止作用によって、外観向上、耐溶剤性向上、耐食性向上、顔料脱落の低減という格別の効果が得られる。すなわちカルシウムイオン交換型シリカを用いることで、カルシウムイオン交換型シリカ自身の耐食性への作用とともにグラファイトの凝集防止による耐溶剤性や耐食性の向上、顔料脱落の低減といった作用が得られ、これらの作用は相乗的に有効である。
カルシウムイオン交換型シリカは、ベース樹脂である熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜60重量部、好ましくは4〜20重量部の割合で含有される。カルシウムイオン交換型シリカの含有割合が3重量部未満では、十分な耐食性の向上作用を得ることができず、またグラファイトの凝集防止作用も不足して耐溶剤性や耐食性向上の効果も十分に得ることが困難である。一方、含有割合が60重量部を超えると、塗膜中におけるカルシウムイオン交換型シリカの絶対量が過剰となり、塗膜の割れや剥離が発生し易くなり、且つ潤滑性及び耐溶剤性が劣る。
なお、用いるカルシウムイオン交換型シリカの平均粒径としては、1〜10μmのものが好ましい。1μm未満では十分な耐食作用やグラファイトの凝集防止作用を得ることができず、10μmを超えると塗膜の割れや剥離は発生し易くなる。
(5)分散剤
熱硬化性樹脂被膜には、分散剤を含有させてもよい。分散剤としては、アニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子型化合物等が挙げられる。これら同種の化合物に含まれる1種又は2種以上、或いは、これら異なる化合物に含まれる2種以上を含有させることができる。アニオン性化合物としては硫酸塩系、スルホン酸塩系、リン酸塩系等の化合物が挙げられる。カチオン性化合物としては、アミン類、アミン塩系やアンモニウム塩系等の化合物が挙げられる。非イオン性化合物としてはエステル系、エーテル系、フェノール系等の化合物が挙げられる。高分子型化合物としては種々のポリマーを単独で、若しくは混合したもの等で数多くの種類が挙げられる。
このような分散剤を熱硬化性樹脂被膜に含有させることで、グラファイトと熱硬化性樹脂との濡れ性が向上し、グラファイト粉末を熱硬化性樹脂被膜が十分に被覆でき、脱落を防止できる。分散剤の含有割合としては、ベース樹脂である熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部以下とするのが好ましい。分散剤が30重量部を超えると、塗膜塗料の粘度が上昇し易くなり貯蔵安定性が低下し、また樹脂塗膜中のニッケル粉末がかえって凝集し易くなるため導電性が低下することもある。更に、樹脂塗膜の硬化阻害を引き起こし耐溶剤性も低下することもある。
(6)熱硬化性樹脂被膜の形成
熱硬化性樹脂被膜を形成するには、アルミニウム基材表面に形成した化成処理皮膜表面に、熱硬化性樹脂被膜用の液状の被膜塗料を塗装(塗布)しこれを焼付ける。
このような被膜塗料は、ベース樹脂である熱硬化性樹脂、グラファイト粉末、カーボンブラック、ニッケル粉末、カルシウムイオン交換型シリカ、ならびに、必要に応じて分散剤、後述する潤滑性付与成分や添加剤を、溶媒に溶解、分散して調製される。このような溶媒には、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な有機溶剤を用いることができる。
塗膜塗料の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられ、被膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。また、被膜の乾燥には一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
被膜形成する際の焼付けは、焼付け温度(到達表面温度)が200〜250℃で、焼付け時間が30〜90秒の条件で行うのが好ましい。被膜形成における焼付け温度が200℃未満である場合や、焼付け時間が30秒未満である場合には、被膜が十分に形成されず被膜密着性が低下する。焼付け温度が250℃を超える場合や、焼付け温度が90秒を超える場合には、被膜成分が変性することになる。
(7)熱硬化性樹脂被膜の膜厚
熱硬化性樹脂被膜の膜厚は5μm以下とする。膜厚が5μmを超えると、樹脂被膜中におけるグラファイト粉末の絶対量が過剰となり被膜の割れや剥離が発生し易くなる。また、膜厚が5μmを超えると、電気絶縁性である熱硬化性樹脂成分によって導電性付与成分であるニッケル粉末が被覆され易くなり導電性が低下する恐れがある。したがって、被膜の割れや剥離、ならびに、導電性の低下を更に防止するには、熱硬化性樹脂被膜の膜厚を1.5μm以下とするのが好ましい。
A−4.白色樹脂被膜
アルミニウム基材の両面に形成された化成皮膜の一方の上に上記熱硬化性樹脂被膜が形成される場合には、他方の化成皮膜の上に白色樹脂被膜を形成することができる。白色樹脂被膜とは白色顔料を含有する樹脂被覆膜であり、これを反射面とすることによって反射性と放熱性、導電性を満足する材料を作製することができる。このような白色樹脂被膜を備えた樹脂被覆アルミニウム材は、光に対する面を白色樹脂被覆膜とすることで液晶反射板や各種照明用反射板用途に用いることが可能である。
白色樹脂被膜のベース樹脂としては、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂の中から選択される少なくとも一種の熱硬化性樹脂が用いられる。白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも一種からなる顔料が用いられる。
白色顔料は、ベース樹脂100重量部に対して70〜150重量部の割合で含有される。含有割合が70重量部未満では十分な反射効果が得られず、150重量部を超えると塗膜の割れや剥離が発生し易くなる。白色樹脂被覆膜の膜厚は、30〜150μmであるのが好ましい。20μm未満では十分な反射効果が得られず、150μmを超えても反射効果が飽和して不経済となる。
白色樹脂被膜は、化成処理被膜表面にその液状被膜塗料を塗装(塗布)し、これを焼付けることによって形成される。この塗膜塗料の溶媒、ならびに、塗布、焼付けの方法及び条件は、上述の熱硬化性樹脂被膜と同様に行なわれる。
A−5.潤滑性付与成分
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材の加工性を更に向上させる目的で、ベース樹脂である熱硬化性樹脂に潤滑性付与成分を添加してもよい。潤滑性付与成分としては、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系樹脂ワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス、ミツロウ、ラノリン等の動物ワックス、カルナバワックス等の植物ワックス、等の潤滑剤が用いられる。潤滑性付与成分の添加量としては、ベース樹脂である熱硬化性樹脂100重量部に対して30重量部以下であることが好ましい。潤滑性付与成分が30重量部を超えると、耐溶剤性の低下、ブロッキング、導電性低下、加工時における塗膜カスの発生等が起こり、電子機器や家電製品の筐体などの材料として好適ではない。
A−6.添加剤
熱硬化性樹脂被膜用の塗料には、塗装性及びプレコート材としての一般性能を確保するために通常の塗料に使用される、溶剤、レベリング剤、ワキ防止剤、つや消し剤等を適宜含有させてもよい。
なお、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材では、その両面に熱硬化性樹脂被膜が形成された形態でもよく、一方の面に熱硬化性樹脂被膜が形成され他方の面に白色樹脂被膜が形成された形態でもよく、一方の面に熱硬化性樹脂被膜が形成され他方の面に本発明で規定する以外の樹脂被膜が形成された形態でもよい。これらの形態は、樹脂被覆アルミニウム材の用途や要求特性により適宜選択される。
一方の化成処理皮膜上に塗布した熱硬化性樹脂被膜用塗料と、他方の化成処理皮膜上に塗布した白色樹脂被膜用塗料は、同時に焼付けしても別個に焼付けしてもよい。また、一方の化成処理皮膜上に塗布した本発明に用いる熱硬化性樹脂被膜用塗料と、他方の化成処理皮膜上に塗布した本発明で規定する以外の樹脂被膜用塗料も、同時に焼付けしても別個に焼付けしてもよい。
B.電子機器用又は家電製品用の筐体
上述のようにして作成される樹脂被覆アルミニウム材は、その表面に揮発性プレス油を塗布してからプレス加工等の成形加工を施すことによって、パーソナルコンピュータなどの電子機器用の筐体又は冷蔵庫などの家電製品用の筐体が作製される。成形加工時に用いられるプレス油は通常粘度が高いものが多く、加工後の洗浄が必要であり多量の洗浄剤(有機溶剤)を必要とする。しかし本発明の樹脂被覆アルミニウム材は表面の潤滑性に優れるため、粘度が小さいプレス油でも好適に使用することが可能であり、この場合加工後の洗浄を簡略化することも可能である。また使用するプレス油の量を減らすことも可能である。
C.電子機器又は家電製品
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム材を用いて作成された筐体は、更に細かな曲げ加工等が施され、また表面に塗装が施される場合もある。そして、その内部に様々な装置や部品が内蔵されて、所望の電子機器や家電製品に組み立てられる。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜18及び比較例1〜10
まず、熱硬化性樹脂被膜用の塗料を以下のようにして調製した。市販のポリエステル樹脂100重量部に、メチル化メラミン樹脂を表1に示す割合で添加した熱硬化性樹脂を作製した。次にこの(ポリエステル樹脂とメチル化メラミン樹脂を合わせた)熱硬化性樹脂(全部を基準に)100重量部に対し、グラファイト、カーボンブラック、ニッケル、カルシウムイオン交換型シリカ、分散剤のそれぞれを表1に示す重量部加え、これをシクロヘキサノン及び高沸点芳香族ナフサを主成分とする有機溶媒(いわゆる「シンナー」)中に分散して、熱硬化性樹脂被膜用の塗料を調製した。ここで、例えば実施例1は、有機溶媒約1kgに対して、ポリエステル樹脂は400g、メチル化メラミン樹脂は100g、グラファイトは100g、カーボンブラックは50g、ニッケルは240g、カルシウムイオン交換型シリカは40g、分散剤は15gを配合した。
Figure 2008155392
次いで、このようにして調製した塗料を用いて、以下のようにして樹脂被覆アルミニウ材を作成した。
アルミニウム板(JIS A5052、板厚0.5mm)をアルミニウム基材に用いた。この基材を、市販のアルミニウム用脱脂剤にて脱脂処理を行ない、水洗後に乾燥した。次いで、脱脂処理したアルミニウム基材を、市販のリン酸クロメート処理液を用いて、皮膜中のクロム量が30±5mg/mとなるように化成処理を行った。更に、化成処理したアルミニウム基材の両面に表1に示す塗料をロールコーターで塗装し、PMT(最高到達板温度)200℃〜250℃にて60秒間焼付けした。このようにして作製した樹脂被覆アルミニウム材4の模式的断面図を図1に示す。図中1は熱硬化性樹脂被膜、2は化成皮膜、3はアルミニウム基材である。
作製した樹脂被覆アルミニウム材の試料について下記の試験方法にて性能評価を行った。各試験方法の詳細を以下に示す。
(導電性試験)
試料の導電性は、四端子法により、銀製のプローブ(直径5mm、先端2.5R)を荷重100gで塗膜面に接触させたときの電気抵抗値を測定した。測定値は、◎:4Ω以下、○:4Ωを越え7Ω以下、△:7Ωを越え10Ω以下、×:10Ωを超える、の基準で評価した。電気抵抗値が10Ωを超える場合、電子機器部品に加工した際に所望の電気特性(アース性やシールド性)が得られないため×を不合格とし、それ以外を合格とした。
(放熱性試験)
放熱性試験は、下記のように筐体を作製して筐体表面温度を測定することによって行った。上述の樹脂被覆アルミニウム材により、底面が150mm×150mm、高さ100mmの筐体を作製した。作製した筐体を図2に示す。図中5は光源であり、その他は図1と同じである。なお、熱硬化性樹脂被膜1とアルミニウム基材3の間に設けた化成皮膜の表示を省略している。この筐体の内部に光源5として60Wの電球を設置して通電し、発光・発熱させ、筐体内部の温度が定常状態となった時点における筐体表面の温度を測定した。
測定値は、◎:28℃以下、○:28℃を超え30℃以下、○△:30℃を超え32℃以下、△:32℃を超え35℃以下、×:35℃を超える、の基準で評価した。筐体表面が35℃を超えると温度の低下が小さく、放熱性が不足するため筐体表面温度は35℃を超える×を不合格とし、それ以外を合格とした。
(加工性試験:潤滑性)
加工性のうち、潤滑性は神鋼造機社製附着滑り試験機(バウデン式)にて摩擦係数の測定を行ない、○:0.10未満、△:0.10以上0.15未満であるが使用可能、×:0.15以上で使用不可、の基準で評価した。○と△を合格とし、×を不合格とした。
(加工性試験:曲げ加工性)
加工性のうち、曲げ加工性は評価面を外側にして180°3T曲げを行ない、熱硬化性樹脂被膜の割れを目視で観察し、◎:塗膜の割れなし、○:非常に軽微な塗膜の割れがあるが良好、△:小さな塗膜の割れあるが使用可能、×:大きな塗膜割れあり使用不可、の基準で評価した。◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
(加工性試験:テープ試験)
曲げ加工性試験の観察終了後、曲げ部にセロハンテープを密着させ、テープを急激に剥離した際の塗膜の剥離具合を観察するテープ試験を行ない、塗膜の剥離性を評価した。評価は、○:剥離なし、△:軽微の剥離あるが使用可能、×:剥離ありの基準で評価した。◎及び△を合格とし、×を不合格とした。
(加工性試験:耐色落ち性)
熱硬化性樹脂被膜表面を、市販のワイパーで5回、手で擦り、ワイパーに付着した黒色を目視で観察し、塗膜の耐色落ち性を評価した。評価は、◎:黒色が全く付着しない、○:非常に軽微な付着で良好、○△:軽微な付着あり、△:付着するものの使用可能、×:激しい付着あり、の基準で評価した。◎、○、○△及び△を合格とし、×を不合格とした。
(耐溶剤性試験)
耐溶剤性の試験はワイパーに塩素系溶剤であるトリクレン溶液を染み込ませ、一定の荷重(1kg)をかけながら試料表面を30回ラビングし、試験後の表面状態を目視にて評価した。評価は○:塗膜の剥がれなく良好、○△:軽微な塗膜の剥がれがあるが良好、△:塗膜に剥がれが見られるものの使用可能、×:塗膜の剥がれが激しく使用不能、の基準で評価した。○、○△及び△を合格とし、×を不合格とした。
(耐食性試験)
耐食性はスガ試験機社製キャス試験機CASSER−12L−ISOを用い、塩水噴霧試験(塩水濃度:5%)により評価した。100時間噴霧後、ならびに、200時間噴霧後の樹脂被覆アルミニウム材表面の腐食をそれぞれ観察して評価した。評価は◎:腐食なし、○:非常に軽微な腐食があるが良好、○△:軽微な腐食あり、△:腐食が見られるものの使用可能、×:腐食が激しく使用不能、の基準で評価した。◎、○、○△及び△を合格とし、×を不合格とした。
導電性、加工性、耐溶剤性の各試験による評価結果を、表1に示す。表1に示される結果から明らかなように、実施例1〜18は、放熱性、導電性ともに良好であり、加工性、耐溶剤性及び耐食性についても良好であった。
一方、比較例1〜10は、放熱性、導電性、加工性、耐溶剤性及び耐食性のいずれかが不合格であり、電子機器用又は家電製品用の樹脂被覆アルミニウム材としては不適当であった。
具体的には、比較例1は、カルシウム交換型シリカの添加量が不十分であるため、耐食性(200時間噴霧)が劣っていた。
比較例2は、カルシウム交換型シリカの添加量が過剰であるため、耐食性は良好であるものの、曲げ加工を行なうとカルシウム交換型シリカが基点となって割れが生じ、曲げ加工性が劣っていた。また表面積に対してカルシウム交換型シリカの量が多過ぎるため、潤滑性、耐溶剤性が劣っていた。
比較例3は、ニッケル粉末の添加量が不十分であるため、導電性が劣っていた。
比較例4は、ニッケル粉末の添加量が過剰であるため、熱硬化性樹脂被膜の成膜が妨げられ、ニッケル粉末が樹脂層から脱落し曲げ加工性、耐溶剤性、耐食性(200時間噴霧)が劣っていた。
比較例5は、ニッケル粉末の最大長径の平均値が小さいため、導電性が劣っていた。
比較例6は、ニッケル粉末の最大長径の平均値が大きいため、曲げ加工を行うとニッケル粉末が基点となって割れが生じ、曲げ加工性が劣っていた。またニッケル粉末が脱落しやすくなるため耐溶剤性、耐食性(200時間噴霧)が劣っていた。
比較例7は、グラファイト粉末の添加量が不十分であるため、放熱性が劣っていた。
比較例8は、カーボンブラックの添加量が過剰であるため、塗装時に樹脂被膜が成膜しなかったことから評価に至らなかった。
比較例9は、グラファイト粉末の添加量が過剰であるため、グラファイト粉末が樹脂層から脱落し、曲げ加工性、耐溶剤性、耐食性(200時間)、耐色落ち性が劣っていた。
比較例10は、グラファイト粉末の平均粒径が大きいため、テープ試験を行なうとグラファイト粉末が基点となって割れが生じ剥離性が劣っていた。またグラファイト粉末が脱落し易くなるため耐溶剤性、耐食性(200時間噴霧試験)、耐色落ち性が劣っていた。
比較例11は、熱硬化性樹脂被膜の膜厚が厚いため、ニッケル粉末が電気絶縁性である樹脂に被覆され過ぎて導電性が劣っていた。
実施例26、27
実施例26では実施例1と同様の熱硬化性樹脂被膜用の塗料を、実施例27では実施例12と同様の熱硬化性樹脂被膜用の塗料をそれぞれ調製した。また、実施例1と同様にして、アルミニウム基材を脱脂処理、水洗、乾燥し、その後、脱脂処理したアルミニウム基材の両面に化成処理を施した。更に、化成処理したアルミニウム基材の一方の面に、実施例26では実施例1と同じ塗料を同様にして、実施例27では実施例12と同じ塗料を同様にしてロールコーターで塗装した。
次いで、化成処理したアルミニウム基材の他方の面に、白色樹脂被膜用塗料を実施例1と同様のロールコーターを用いて同様に塗装した。白色樹脂被膜用塗料は、アクリル系樹脂100重量部に対して酸化チタン120重量部を含有する塗料である。
このようにアルミニウム基材の一方面に熱硬化性樹脂被膜塗料を、他方面に白色樹脂被膜塗料を塗装したものを、実施例1と同様の条件で焼付けた。実施例26及び27ともに、焼付け後における熱硬化性樹脂被膜の厚さは1.0μm、白色樹脂被膜の厚さは110μmであった。
このようにして作製した試料について、導電性、放熱性、加工性、耐溶剤性、耐食性の各試験を実施例1と同様にして行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2008155392
更に、実施例26、27では、下記のようにして光反射性試験も行ない、光反射性も評価した。
(光反射性試験)
全反射率はスガ試験機社製多光源分光測色計MSC−IS−2DH(積分球使用、拡散光照明8°方向受光)を用い、波長550nmでの全反射率(正反射成分を含む)をBaSO製白板を標準板とした時の光反射性試験に対する百分率で表した。なお、液晶反射板として用いるためには、全反射率が90%以上であることが適しており、90%以上を使用可能レベルの合格(○)とした。光反射性試験の結果も表2に併せて示す。
表2に示される結果から明らかなように、実施例26、27では、放熱性、導電性ともに良好であり、加工性、耐溶剤性及び耐食性についても良好であった。また、実施例26、27では、光反射面の全反射率はいずれも95%と優れた光反射性を示した。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材は、良好な導電性、放熱性、加工性(潤滑性、曲げ加工性、剥離性)、耐溶剤性及び耐食性を有する。したがって、本発明の樹脂被覆アルミニウム材は、パーソナル・コンピュータ、エアコンの室外機や室内機のラジエター、冷蔵庫等の家電製品等、内部で熱を発生する電子部品、家電製品等の筐体や放熱板、反射板等の材料として好適である。また、白色樹脂被膜を更に設けた場合には反射性にも優れるので、アース性、シールド性、帯電防止性を必要とするCD−ROM等のドライブケース、パーソナル・コンピュータ関連機器や計測器等の電子機器部品材料用の筐体材料としても好適である。
本発明の樹脂被覆アルミニウム材を模式的に示す断面図である。 本発明の樹脂被覆アルミニウム材の放熱性を評価する装置を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1 熱硬化性樹脂被膜
2 化成皮膜
3 アルミニウム基材
4 熱硬化性樹脂被覆アルミニウム材
5 光源

Claims (5)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の両面に形成した化成皮膜と、当該化成皮膜の少なくとも一方の上に形成した熱硬化性樹脂被膜と、を備えた樹脂被覆アルミニウム材であって、
    前記熱硬化性樹脂被膜が、ポリエステル系樹脂成分100質量部に対してメラミン系樹脂成分10〜50質量部を配合した熱硬化性樹脂と、0.1〜30μmの平均粒径を有するグラファイト粉末と、カーボンブラックと、0.5〜100μmの最大長径平均値を有するニッケル粉末と、カルシウムイオン交換型シリカとを含み、グラファイト粉末が熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜50重量部含有され、カーボンブラックが熱硬化性樹脂100質量部に対して1〜10質量部含有され、ニッケル粉末が熱硬化性樹脂100重量部に対して10〜100重量部含有され、カルシウムイオン交換型シリカが熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜60重量部含有され、当該熱硬化性樹脂被膜の膜厚が5μm以下であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム材。
  2. 前記熱硬化性樹脂被膜が、分散剤としてアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物及び高分子型化合物から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム材。
  3. 一方の化成皮膜上に熱硬化性樹脂被膜が形成され、他方の化成皮膜上に白色顔料を含有する白色樹脂被膜が形成された、請求項1又は2のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム材。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム材を用いた電子機器用又は家電製品用の筐体。
  5. 請求項4に記載の筐体を用いた電子機器又は家電製品。
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