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JP4787372B1 - 樹脂被覆アルミニウム合金板 - Google Patents

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JP4787372B1 JP2010176351A JP2010176351A JP4787372B1 JP 4787372 B1 JP4787372 B1 JP 4787372B1 JP 2010176351 A JP2010176351 A JP 2010176351A JP 2010176351 A JP2010176351 A JP 2010176351A JP 4787372 B1 JP4787372 B1 JP 4787372B1
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Abstract

【課題】加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、及び潤滑性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金板を提供すること。
【解決手段】アルミニウム合金板よりなる基板10と、その両面又は片面に形成された合成樹脂塗膜11とよりなる樹脂被覆アルミニウム合金板1である。合成樹脂塗膜11は、ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂からなるベース樹脂100重量部に対して、ラノリン、カルナバ、ポリエチレン、及びマイクロクリスタリンから選ばれる1種あるいは2種のインナーワックスを0.05〜3重量部含有する機能性塗膜111を備える。機能性塗膜111は、伸び率が200〜300%、抗張力が300〜500kg/cm2、ヤング率が1000〜2500kg/cm2、及びガラス転移点が0〜40℃である。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子機器あるいは家電用筐体等に適用でき、プレス加工などにより複雑な形状に加工可能な樹脂被覆アルミニウム合金板に関する。
アルミニウム合金板の表面を合成樹脂塗料にてコーティングしてなるプレコートアルミニウム合金板は、加工後に塗装を施す必要がないという優れた特性を有しており、電子機器あるいは家電用筐体等に広く用いられる。プレコートアルミニウム合金板の塗膜には、加工性やブロッキング性の他、その用途に応じて、耐傷付き性、潤滑性、放熱性等が要求される。
従来、加工後のプレコートアルミに合金板における塗膜の密着性を向上させるために、酸化皮膜層を所定の厚みで形成する技術(特許文献1参照)や、ポリエチレンワックスとマイクロクリスタリンワックスを所定の比率で溶融混合してインナーワックスとして塗料に添加する技術(特許文献2参照)が開発されている。
また、筐体等の用途としては、放熱性向上が求められる。放熱性向上のために、赤外放射率50%以上の吸熱性樹脂皮膜を施す技術(特許文献3参照)、カーボンブラックを含有する層とパール顔料を含有する層との複数層構造とする技術(特許文献4参照)が開発されている。
特開2008−127625号公報 特開2006−273972号公報 特開2005−199429号公報 特開2008−119561号公報
しかしながら、工業製品としてプレコートアルミニウム合金板を製造するにあたっては、上述のごとく酸化皮膜層の厚さを制御することは困難が伴う。また、インナーワックスを予め溶融混合するには、コストや手間がかかり、実用的ではないという問題があった。また、顔料等を含む塗膜は、加工性が劣化するという問題があった。
そのため、加工性、ブロッキング性、耐傷付き性、及び潤滑性に優れた実用的なプレコートアルミニウム合金板の開発が求められている。
本発明はかかかる問題点に鑑みてなされたものであって、加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、及び潤滑性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
本発明は、アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の両面又は片面に形成された合成樹脂塗膜とよりなる樹脂被覆アルミニウム合金板であって、
上記合成樹脂塗膜は、ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂からなるベース樹脂100重量部に対して、ラノリン、カルナバ、ポリエチレン、及びマイクロクリスタリンから選ばれる1種あるいは2種のインナーワックスを0.05〜3重量部含有する機能性塗膜を備え、
該機能性塗膜は、伸び率が200〜300%、抗張力が300〜500kg/cm2、ヤング率が1000〜2500kg/cm2、及びガラス転移点が0〜40℃であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板にある(請求項1)。
上記樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記合成樹脂塗膜は、所定の配合割合で上記ベース樹脂と上記インナーワックスとを含有する共に、上記所定の特性を満足する機能性塗膜を備える。そのため、上記樹脂被覆アルミニウム合金板は、優れた加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、及び潤滑性を発揮することができる。
即ち、上記樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記機能性塗膜における上記所定のベース樹脂と上記インナーワックスとを上記特定の配合割合に制御することにより、加工性、潤滑性、及びブロッキング性を向上させることができる。
また、上記樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記機能性塗膜の伸び率、抗張力、及びヤング率を上記所定範囲に制御することにより、加工性及び耐疵付き性を向上させることができる。
さらに、上記機能性塗膜のガラス転移点を上記所定範囲に制御することにより、加工性及びブロッキング性を向上させることができる。
このように、上記樹脂被覆アルミニウム合金板は、優れた加工性を示し、絞り、しごき、曲げなどという厳しい加工にも耐え、上記合成樹脂塗膜の剥がれを防止することができる。また、耐疵付き性に優れるため、成形加工時又は成形加工後に疵がつきにくい。また、ブロッキング性に優れるため、例えば上記樹脂被覆アルミニウム合金板同士を重ねたり、コイルに巻き取った場合においても、ブロッキングが起こり難い。さらに、潤滑性に優れるため、成形加工時の塗膜表面の滑りが良くなる。
以上のように、本発明によれば、加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、及び潤滑性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金板を提供することができる。
実施例にかかる、機能性塗膜と下地塗膜とを備えた合成樹脂塗膜を有する樹脂被覆アルミニウム合金板の断面を示す説明図。 実施例にかかる、機能性塗膜からなる合成樹脂塗膜を有する樹脂被覆アルミニウム合金板の断面を示す説明図。 実施例にかかる、バウデン試験方法の概略を示す説明図。 引張試験における応力−ひずみ曲線の一例を示す説明図。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
上記樹脂被覆アルミニウム合金板は、アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の両面又は片面に形成された合成樹脂塗膜とよりなる。
上記アルミニウム合金板とは、純アルミニウム又はアルミニウム合金のいずれかよりなる板である。
上記基板としては、用途に応じて様々な組成のアルミニウム合金板を採用することができる。具体的には、1000系、3000系、5000系、6000系など、成形加工に好適な材質を用いることができる。例えば、1050、8021、3003、3004、3104、5052、5182、5N01などがある。
また、上記合成樹脂塗膜は、ベース樹脂とインナーワックスとを含有する機能性塗膜を備える。
該機能性塗膜は、ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂からなるベース樹脂を含有する。
上記特定の樹脂からなるベース樹脂を含有するため、上記機能性塗膜は、良好な加工性、ブロッキング性、耐疵付き性を発揮することができる。ベース樹脂の数平均分子量は10000〜40000であることが好ましい。
また、上記機能性塗膜は、上記ベース樹脂100重量部に対して、ラノリン、カルナバ、ポリエチレン、及びマイクロクリスタリンから選ばれる1種あるいは2種のインナーワックスを0.05〜3重量部含有する。
上記特定のインナーワックスを含有するため、上記機能性塗膜は、優れた加工性、潤滑性及び耐疵付き性を発揮することができる。
上記インナーワックスの含有量が0.05重量部未満の場合には、上記機能性塗膜表面に存在するインナーワックスが少なくなりすぎて、潤滑性が低下し、成形加工時における塗膜表面の滑りが悪くなり、塗膜が剥がれたり、破断したりするおそれがある。一方、3重量部を超える場合には、塗膜表面に存在するインナーワックスが多くなりすぎて、上記樹脂被覆アルミニウム合金板をコイルに巻き付けたり、重ねあわせたりしたときにブロッキング現象を起こし易くなるおそれがある。好ましくは、上記インナーワックスの含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して、0.1〜2.5重量部がよく、より好ましくは0.5〜2重量部がよい。
また、上記ベース樹脂は、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等に対応した硬化剤を含有することができる。該硬化剤としては、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミノ基を有するアミノ化合物とアルデヒドとの付加縮合反応によって得られるアミノ樹脂等を用いることができる。また、芳香族、脂肪族、又は脂環族のイソシアネート類による遊離もしくはブロックされたイソシアネート基を含む樹脂等を用いることもできる。
また、上記機能性塗膜は、伸び率が200〜300%、抗張力が300〜500kg/cm2、ヤング率が1000〜2500kg/cm2、及びガラス転移点が0〜40℃である。
上記機能性塗膜の伸び率が200%未満の場合には、加工性が悪くなり、成形加工時にアルミニウム合金板の加工に上記機能性塗膜が追随できず、剥がれてしまうおそれがある。一方、300%を超える場合には、上記機能性塗膜が柔らかくなりすぎて、耐疵付き性が悪くなり、成形加工時等に疵がつきやすくなる。
上記機能性塗膜の伸び率は、好ましくは250〜280%がよい。
上記機能性塗膜の伸び率は、例えばベース樹脂の分子量、硬化剤の種類及び添加量を調整することにより制御することができる。
また、上記機能性塗膜の抗張力が300kg/cm2未満の場合にも、加工性が悪くなり、成形加工時にアルミニウム合金板の加工に上記機能性塗膜が追随できず、剥がれてしまうおそれがある。一方、500kg/cm2を超える場合には、成形加工時に加えられる与えられる加工力では上記機能性塗膜が変形し難くなり、該機能性塗膜が剥がれ易くなるおそれがある。
上記機能性塗膜の抗張力は、好ましくは380〜420kg/cm2がよい。
上記機能性塗膜の抗張力は、例えば硬化剤の種類及び添加量を調整することにより制御することができる。
また、上記機能性塗膜のヤング率が1000kg/cm2未満の場合には、アルミニウム合金板の成形加工時に加えられる与えられる加工力で上記機能性塗膜が変形し易くなりすぎて、疵がつきやすくなるおそれがある。一方、2500kg/cm2を超える場合には、アルミニウム合金板の成形加工時に加えられる与えられる加工力では上記機能性塗膜が変形し難くなり、該機能性塗膜が剥がれ易くなるおそれがある。
上記機能性塗膜のヤング率は、好ましくは1500〜2300kg/cm2がよい。
上記機能性塗膜のヤング率は、例えばベース樹脂の末端基の構造、ベース樹脂の分子量を調整することにより制御することができる。
また、上記機能性塗膜のガラス転移点が0℃未満の場合には、上記アルミニウム合金板に塗装等により上記機能性塗膜を形成した後、例えばコイルに巻き取った際にブロッキングが起こりやすくなるおそれがある。一方、50℃を超える場合には、上記機能性塗膜の伸びが低下し、成形加工時にアルミニウム合金板の加工に上記機能性塗膜が追随できず、剥がれてしまうおそれがある。
上記機能性塗膜のガラス転移点は、好ましくは5〜40℃がよい。
上記機能性塗膜のガラス転移点は、例えばベース樹脂の架橋度及び分子量を調整することにより制御することができる。
上記機能性塗膜は、例えば上記アルミニウム合金板に、塗料を塗布し乾燥し焼き付けることにより形成することができる。上記伸び率、抗張力、ヤング率、及びガラス転移点は、乾燥し、焼き付けた後の上記機能性塗膜の物性である。これらの物性の測定方法は、後述の実施例において示す。
次に、上記機能性塗膜は、上記ベース樹脂100重量部に対して、50〜200重量部の平均粒径0.1〜100μmの酸化チタン、1〜25重量部の微粉末のカーボン、50〜200重量部のシリカ、50〜200重量部のアルミナ、及び50〜200重量部の酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記機能性塗膜の熱放射性を向上させることができる。そのため、上記樹脂被覆アルミニウム合金板は優れた熱放射性が要求される用途に好適になる。具体的には、例えば、パソコン本体、CD−ROM、DVD、PDA等の電子機器の筐体、テレビ等の電気機器の筐体、FDD、MD、MO等の記憶媒体ケースのシャッター部分、その他様々なものがある。また、上記機能性塗膜をプレス成形することによって略円錐形に成形することにより、LED電球等の放熱部材にも好適に用いることができる。
酸化チタン、カーボン、シリカ、アルミナ、及び酸化ジルコニウムの含有量が上述の下限を下回る場合には、熱放射性の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。一方、上述の上限を超える場合には、加工性が低下してしまうおそれがある。
より好ましくは、上記ベース樹脂100重量部に対して酸化チタンの含有量は80〜150重量部がよく、カーボンの含有量は1.0〜20重量部がよく、シリカの含有量は50〜100重量部がよく、アルミナの含有量は50〜100重量部がよく、酸化ジルコニウムの含有量は50〜180重量部がよい。
また、酸化チタンとしては、上述のごとく平均粒径0.1〜100μmのものを用いることが好ましい。
酸化チタンの平均粒径が0.1μm未満の場合には、放熱性を充分に向上させることが困難になるおそれがある。一方、100μmを超える場合には、酸化チタンが上記機能性塗膜から脱落し易くなるおそれがある。
酸化チタンの平均粒径は、一次粒子径の平均値であり、動的光散乱法により測定することができる。具体的には、日機装株式会社製の「ナノトラックUPA」により測定することができる。
また、微粉末のカーボンとしては、平均粒径1〜500nm程度の微粉末を用いることができる。また、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウムとしては、平均粒径1〜50μm、より好ましくは2〜10μm程度の粒子を用いることができる。これらの平均粒径は、酸化チタンと同様にして測定することができる。
また、上記機能性塗膜は、平均粒径0.3〜100μmのNi球状フィラー、あるいは0.2〜5μmの厚さで2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラーの少なくとも一方を含有しており、これら両者の合計含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して1〜1000重量部であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記機能性塗膜に、導電性を付与することができる。そのため、上記樹脂被覆アルミニウム合金板は、導電性が要求される用途に好適になる。具体的には、例えば上述のごとく電子機器の筐体、電気機器の筐体、上記憶媒体ケースのシャッター部分、LED電球用放熱部材等に好適に用いることができる。これにより、回路から発生する電磁波を遮断する効果を高めることができる。
上記Ni球状フィラーの平均粒径が0.3μm未満では導電性向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、100μmを超える場合には、Ni球状フィラーが上記機能性塗膜から脱落し易くなるおそれがある。上記Ni球状フィラーの平均粒径は、上述の酸化チタンと同様に一次粒子径の平均であり、酸化チタンの平均粒径と同様にして測定することができる。
また、上記燐片状Niフィラーの厚みが0.2μm未満の場合には導電性向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、5μmを超える場合にはコストが増大するという問題がある。また、燐片状Niフィラーの長径が2μm未満の場合には導電性向上効果が十分に得られなくなるおそれがある。一方、50μmを超える場合には鱗片状Niフィラーが機能性塗膜から脱落し易くなるおそれがある。
そして、これら両者のNiフィラー(Ni球状フィラーと鱗片状Niフィラー)の合計含有量(一方のみの含有の場合も含む)は、上記ベース樹脂100重量部に対して1〜1000重量部であることが好ましい。この含有量が1重量部未満の場合には導電性向上効果が十分に得られなくなるおそれがある、一方、1000重量部を超える場合にはNiフィラーが機能性塗膜から脱落し易くなるおそれがある。
上記機能性塗膜の膜厚は5〜50μmであることが好ましい。膜厚が5μm未満の場合には、加工時に塗膜の伸びが不均一になり、塗膜が破損するおそれがある。一方、50μmを超える場合には、加工時に塗膜摩耗粉が発生し易くなり、塗膜に疵が入りやすくなるおそれがある。
次に、上記機能性塗膜を備えた上記合成樹脂塗膜は、上記機能性塗膜の下層に下地塗膜を有する複数積層構造を有しており、上記下地塗膜は、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる1種あるいは2種以上からなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、合成樹脂塗膜とアルミニウム合金板との密着性を向上させ、加工性をより向上させることができる。
上記下地塗膜は、数平均分子量10000〜40000のポリエステル樹脂からなる単層体又は該単層体が複数積層された多層体からなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、合成樹脂塗膜とアルミニウム合金板との密着性をより一層向上させ、加工性をさらに一層向上させることができる。
即ち、数平均分子量が10000以上のポリエステル樹脂を選択することにより、上記樹脂被覆アルミニウム合金板を、凹凸部等を有する複雑な形状に加工する場合においても、加工性良く加工を行うことが可能となる。また、下地塗膜を構成するポリエステル樹脂の数平均分子量の上限値は、下地塗膜の伸びが機能性塗膜の伸びと大きく異なると加工時の塗膜割れが起きるおそれがあるという理由により上述のごとく40000とすることが好ましい。
また、上記下地塗膜の膜厚は、50μmを超えるとアルミニウム合金板と機能性塗膜との密着性が低下するので、50μm以下とすることが好ましく、また、膜厚が薄すぎても密着性が低下するため、1μm上とすることが好ましい。さらに好ましい範囲は5μm以上20μm以下である。
また、上記合成樹脂塗膜は、顔料を含有することができる。この場合には、顔料の種類を選択することにより、上記樹脂被覆アルミニウム合金板に意匠性を付与することができる。したがって、上記樹脂被覆アルミニウム合金板を成形してなる製品の多様性を高めることができる。
顔料としては、例えば、フェロシアン化第二鉄、塩基性硫酸アルミニウム、シリカ、アルミナ、雲母、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、複合酸化物系顔料、有機顔料等がある。
また、上記樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記合成樹脂塗膜は、上記基板の表面に形成された塗布型あるいは反応型のクロメート層またはノンクロメート層からなる化成皮膜の上層に形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、アルミニウム合金板と上記合成樹脂塗膜との密着性を効果的に向上させることができる。また、上記樹脂被覆アルミニウム合金板の耐食性が向上し、水、塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム合金板に浸透した際に惹起される塗膜下腐食が抑制され、塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
上記化成皮膜は、アルミニウム合金板の表面の化成処理により形成することができる。
具体的には、例えばリン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理、クロム化合物以外のリン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等によるノンクロメート処理などにより形成することができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例にかかる樹脂被覆アルミニウム合金板について説明する。本例においては、後述の表1〜表5に示す複数種類の樹脂被覆アルミニウム合金板(試料1〜試料38)を作製し、その特性を評価する。
図1及び図2に示すごとく、本例の樹脂被覆アルミニウム合金板1、2は、アルミニウム合金板よりなる基板10、20と、その片面に形成された合成樹脂塗膜11、21とよりなる。基板2の表面には化成皮膜101、201が形成されており、合成樹脂塗膜11、21は化成皮膜101、201上に形成されている。合成樹脂塗膜11、21は、機能性塗膜111、211を備える。
本例においては、図2に示すごとく、機能性塗膜211だけからなる合成樹脂塗膜21を備えた樹脂被覆アルミニウム合金板2、及び、図1に示すごとく、機能性塗膜111と、その下層、即ち基板10側に形成された下地塗膜112とを有する合成樹脂塗膜11を備えた樹脂被覆アルミニウム合金板1を作製する。
以下、本例の樹脂被覆アルミニウム合金板(試料1〜38)の作製方法について説明する。
まず、基板10,20として、JISA1050−O材、板厚0.5mmのアルミニウム合金板を準備した。
次に、基板10、20に脱脂処理を施した後、後述の表1〜5に示すように、下記の化成処理a〜dを行った。
化成処理aは、リン酸クロメート処理によって、クロム付着量が20mg/m2となるように反応型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には、化成処理液に脱脂後の基板を浸漬することにより化成処理を行い、水洗後、約100℃の雰囲気で乾燥させた。
化成処理bは、反応型ジルコニウム処理によって、ジルコニウム付着量が10mg/m2となるように反応型ノンクロメート皮膜を形成するものである。具体的には、化成処理液に脱脂後の基板を浸漬することにより化成処理を行い、水洗後、約100℃の雰囲気で乾燥させた。
化成処理cは、塗布型クロメート処理によって、クロム付着量が20mg/m2となるように塗布型クロメート皮膜を形成するものである。具体的には、バーコート法により処理剤を塗布した後、約100℃の雰囲気にて乾燥させた。
化成処理dは、塗布型ジルコニウム処理によって、ジルコニウム付着量が10mg/m2となるように塗布型ノンクロメート皮膜を形成するものである。具体的には、バーコート法により処理剤を塗布した後、約100℃の雰囲気にて乾燥させた。
次に、図1及び図2に示すごとく、基板10,20の片側面に、表1〜表5に示す様々な構成の合成樹脂塗膜11、21を形成し、38種類の樹脂被覆アルミニウム合金板1、2(試料1〜38)を作製した。表1〜表5に示すごとく、試料3〜6、試料8〜29においては、下地塗膜112として、数平均分子量16000のポリエステル樹脂からなる塗膜を形成し、その上層として機能性塗膜111を形成した(図1参照)。その他の試料(試料1、試料2、試料7、試料30〜38)においては、下地塗膜を形成することなく、機能性塗膜211だけからなる合成樹脂塗膜21を形成した(図2参照)。いずれの塗装もバーコーターを用いて行い、下地塗膜112の膜厚は10μm、機能性塗膜111、211の膜厚は25μmとした。
下地塗膜112及び機能性塗膜111、211は、それぞれ、塗料を塗布し、乾燥後焼き付けることにより形成した。
また、機能性塗膜用の塗料は、表1〜5に示すように、硬化剤を含有するポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂をベース樹脂とし、さらにインナーワックス、酸化チタン等を含有するものを用いた(表1〜5参照)。
下地塗膜112の焼き付け条件は、表面温度が230℃になるようにオーブン中に60秒保持する条件とし、機能性塗膜111、211の焼き付け硬化条件は、表面温度が200℃になるように温度240℃のオーブン中に60秒保持する条件とした。
また、機能性塗膜形成用の塗料には、表1〜5に示すごとく、ベース樹脂に対してインナーワックスを含有させた。インナーワックスの含有量及び種類は、表1〜5に示す通りであり、表中「PE」はポリエチレンを示し、「MC」はマイクロクリスタリンを示し、「CA」はカルナバを示し、「LL」はラノリンを示す。また、一部の試料においては、ポリエチレン(PE)とマイクロクリスタリン(MC)を併用してあるが、その場合両者を等量(重量)ずつ用い、その合計量を表1〜5に示す。
また、本例においては、機能性塗膜形成用の塗料には、放熱性を高めるために、表1〜5に示すごとく、酸化チタン及びシリカを含有させた。さらに、微粉末のカーボン、アルミナ、又は酸化ジルコニウムを含有させた。
使用した酸化チタンの平均粒径及び含有量、また、シリカ、カーボン、アルミナ、及び酸化ジルコニウムの含有量を表1〜5に示す。シリカ、カーボン、アルミナ、酸化ジルコニウムとしては、いずれも平均粒径4μmの粒子を用いた。
また、機能性塗膜形成用の塗料の一部には、導電性を高めるために、球状又は鱗片状のニッケルフィラーを含有させた。球状のニッケルフィラーとしては、平均粒径5μmのものを採用し、鱗片状のニッケルフィラーとしては、厚み1μm、長径10μmのものを採用した。
なお、表4に示すように、試料28においては、球状のニッケルフィラーと鱗片状のニッケルフィラーとを併用しているが、このときの配合割合は重量比で1:1とした。
また、本例においては、表1〜5に示す伸び率、抗張力、ヤング率、及びガラス転移点を有する機能性塗膜を形成した。各物性の測定方法は次の通りである。
「伸び率・ヤング率・抗張力」
塗膜を10mm×50mmに切断し、引張試験機((株)オリエンテック製のテンシロン万能試験機RTM−100)にて温度23℃、引張速度50mm/minで塗膜が破断するまで引張試験を行った。伸び率Aは、破断時の引張方向の長さをB、引張試験前の塗膜の引張方向の長さ(塗膜の元の長さ)をCとすると、A(%)=(B−C)×100/Cという式から算出できる。
また、引張試験において応力−ひずみ曲線を作成し、初期の直線部分の傾きからヤング率を求め、また、最大応力値から抗張力を求めた。
具体的な応力−ひずみ曲線の一例を図4に示す。
図4に示すごとく、応力−ひずみ曲線において引張試験開始初期の直線部分の傾きがヤング率(kg/cm2)である。また、抗張力(kg/cm2)は、応力が最大となる最大応力値σuである。
「ガラス転移点」
合成樹脂塗膜を形成した樹脂被覆アルミニウム合金板の各試料を液体窒素により冷却し、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製のTMA−100)を用いて、その触針子(先端直径φ2mm)を塗膜上にセットし、試料の温度(−30〜150℃)を上げていくことにより、塗膜を軟化させ、触針子が塗膜中に沈み込んだときの温度を測定し、これをガラス転移点(℃)とした。
Figure 0004787372
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次に、表1〜5に示す各試料の樹脂被覆アルミニウム合金板について各種評価試験を行った。評価結果は後述の表6及び7に示す。
<加工性>
加工性の評価は、絞りしごき加工試験によって行った。具体的には、上記のようにして得られた樹脂被覆アルミニウム合金板を直径140mmの円形にカットし、次いで、該樹脂被覆アルミニウム合金板の両面に、プレス油G−6284M(日本工作油社製)を塗布し、合成樹脂塗膜の形成面が外面になるようにして、絞り及びしごき成形機を使用して絞り及びしごき加工を実施し、直径65mm、高さ135mmの有底円筒形に成形した。しごき率は50%とした。成形用に塗布したプレス油は、トリクレン蒸気中に10分間暴露することにより脱脂した。
絞り及びしごき加工後の樹脂被覆アルミニウム合金板における合成樹脂塗膜を倍率100倍の顕微鏡で観察し、端部から5mm以内の合成樹脂塗膜に割れ及び剥離のいずれも観察されなかった場合を「○」とし、合成樹脂塗膜に割れが観察された場合を「×(割れ)」とし、合成樹脂塗膜に剥離が観察された場合を「×(剥離)」として評価した。また、加工時に樹脂被覆アルミニウム合金板が破断した場合を評価「×(破断)」とした。評価が○の場合を合格、評価が×の場合を不合格とする。
<放熱性>
放熱性は、熱放射率を測定することにより行った。測定する熱放射率は、2.5〜25μmの波長領域において表面の分光反射率から下記(1)式により算出される放射率αであり、プランクの熱放射スペクトル分布において293Kとした場合の相対値を考慮した放射率である。なお、この熱放射率を求めるための分光反射率は、分光光度計を用いて測定した。また、熱放射率は、合成樹脂塗膜の表面から測定した。
α=(1−∫G(λ)・R(λ)d(λ)×100 ・・・・・(1)
ただし、G(λ)は、プランクの熱放射スペクトル分布において293Kとした場合の相対値であり、R(λ)は、分光反射率である。
評価は3段階とし、熱放射率90%以上の場合を3点とし、熱放射率80%以上90%未満の場合を2点とし、熱放射率80%未満の場合を1点として評価した。この場合には、2点以上を合格とした。
<耐疵付き性>
耐疵付き性は、バウデン試験にて行った。即ち、図3に示すごとく、荷重1000gで直径0.25インチの鋼球51を、試料台59上に載置した各試料の樹脂被覆アルミニウム合金板1の合成樹脂塗膜3の表面において摺動させ、塗膜破れが発生した際の摺動回数にて評価した。
評価は3段階とし、摺動回数100回以上の場合を3点、摺動回数50回以上100回未満の場合を2点、摺動回数50回未満の場合を1点とした。この場合、2点以上を合格とした。
<潤滑性>
潤滑性も、上記耐疵付き性と同様にバウデン試験により実施した。具体的には、図3に示すごとく、荷重1000gで直径0.25インチの鋼球51を、試料台59上に載置した各試料の樹脂被覆アルミニウム合金板1の合成樹脂塗膜3の表面において100回摺動させた時の摩擦係数を測定した。
評価は3段階とし、摩擦係数が0.05以上0.1未満の場合を3点、摩擦係数が0.1以上0.3未満の場合を2点、摩擦係数0.3以上の場合を1点とした。この場合、2点以上を合格とした。
<ブロッキング性>
ブロッキング試験は、各試料の樹脂被覆アルミニウム合金板5枚を、50mm×50mmに切断し、合成樹脂塗膜の形成面とベア面が重なるように、重ね合わせ、その上から、1kgの荷重をのせた状態で、50℃、90%RHの環境に3日間保管した後、板同士の貼り付きを観察した。荷重を除いた時、5枚全ての板において貼り付きがない場合を「○」として評価し、1枚でも貼り付いていた場合を「×」として評価した。評価が○の場合を合格、評価が×の場合を不合格とする。
Figure 0004787372
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ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂からなるベース樹脂100重量部に対して、ラノリン、カルナバ、ポリエチレン、及びマイクロクリスタリンから選ばれる1種あるいは2種のインナーワックスを0.05〜3重量部含有し、伸び率が200〜300%、抗張力が300〜500kg/cm2、ヤング率が1000〜2500kg/cm2、及びガラス転移点が0〜40℃の範囲内にある機能性塗膜を備える試料1〜28の樹脂被覆アルミニウム合金板(表1〜表4参照)は、加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、及び潤滑性に優れていた(表6及び表7参照)。また、本例においては、酸化チタンを含有する機能性塗膜を形成したが、試料1〜28においては、上述の優れた特性を維持しつつ優れた放熱性を示した。
これに対し、試料29〜38においては、加工性、ブロッキング性、耐疵付き性、又は潤滑性のいずれかの特性が不十分であった。
1 樹脂被覆アルミニウム合金板
10 基板
11 合成樹脂塗膜
111 機能性塗膜

Claims (6)

  1. アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の両面又は片面に形成された合成樹脂塗膜とよりなる樹脂被覆アルミニウム合金板であって、
    上記合成樹脂塗膜は、ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂からなるベース樹脂100重量部に対して、ラノリン、カルナバ、ポリエチレン、及びマイクロクリスタリンから選ばれる1種あるいは2種のインナーワックスを0.05〜3重量部含有する機能性塗膜を備え、
    該機能性塗膜は、伸び率が200〜300%、抗張力が300〜500kg/cm2、ヤング率が1000〜2500kg/cm2、及びガラス転移点が0〜40℃であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
  2. 請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記機能性塗膜は、上記ベース樹脂100重量部に対して、50〜200重量部の平均粒径0.1〜100μmの酸化チタン、1〜25重量部の微粉末のカーボン、50〜200重量部のシリカ、50〜200重量部のアルミナ、及び50〜200重量部の酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記機能性塗膜は、平均粒径0.3〜100μmのNi球状フィラー、あるいは0.2〜5μmの厚さで2〜50μmの長径を有する鱗片状のNiフィラーの少なくとも一方を含有しており、これら両者の合計含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して1〜1000重量部であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記合成樹脂塗膜は、上記基板の表面に形成された塗布型あるいは反応型のクロメート層またはノンクロメート層からなる化成皮膜の上層に形成されていることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記機能性塗膜を備えた上記合成樹脂塗膜は、上記機能性塗膜の下層に下地塗膜を有する複数積層構造を有しており、上記下地塗膜は、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる1種あるいは2種以上からなることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
  6. 請求項5に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板において、上記下地塗膜は、数平均分子量10000〜40000のポリエステル樹脂からなる単層体又は該単層体が複数積層された多層体からなることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
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