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JP2007260541A - プレコート金属板及びその製造方法 - Google Patents

プレコート金属板及びその製造方法 Download PDF

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JP2007260541A JP2006087944A JP2006087944A JP2007260541A JP 2007260541 A JP2007260541 A JP 2007260541A JP 2006087944 A JP2006087944 A JP 2006087944A JP 2006087944 A JP2006087944 A JP 2006087944A JP 2007260541 A JP2007260541 A JP 2007260541A
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Abstract

【課題】本発明は,多層のプレコートをしても,容易かつ安価に製造可能な鮮映性の高いプレコート金属板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有するプレコート金属板において,最表層の塗膜層に透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜と該該クリヤー塗膜の下に着色された塗膜層であり,且つ,透明なクリヤー塗膜層を被覆していない着色塗膜層の色と着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態での色との色差がハンター色測計の色差ΔEで1.5以下であることを特徴とした鮮映性に優れるプレコート金属板及びその製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は,鮮映性に優れたプレコート金属板に関するものであり,特に,家電用,建材用,土木用,機械用,自動車用,家具用,容器用等において,優れた鮮映性を有するプレコート金属板に関する。
家電分野,建材分野,自動車分野等の外板に,従来の金属板を加工した後に塗装されていたポスト塗装製品に代わって,予め着色した塗膜を被覆したプレコート金属板が使用されるようになってきている。一方,これら用途において,塗装には,デザイン,意匠性の観点から,鮮映性に優れた塗装外観の要望が高まってきている。
塗膜の鮮映性を高める技術としては,例えば,特許文献1に記載されているように母材である金属板の表面粗さを小さくする技術,特許文献2に記載されているように分子量の低い樹脂を用いた塗膜を塗装する技術,特許文献3に記載されているように着色塗膜層の上にクリヤー塗膜を被覆する技術などが公開されている。
一方,プレコート金属板は,塗装した後に切断,加工を行うため,切断端面では金属部分が露出する。プレコート金属板は,金属の露出した切断端面部から腐食し易く,この腐食を抑制するために,金属板上に化成処理としてクロメート処理と呼ばれる6価クロム系の処理を施し,更に,下塗り塗層としてクロム系の防錆顔料を含むプライマー塗料を塗装することが一般的である。更に,近年では,6価クロムが環境負荷物質であることから,クロム系以外の化成処理の技術,クロム系以外の防錆顔料を含むプライマーを用いたクロメートフリープレコート金属板が開発されている(例えば,非特許文献1を参照)。Crを含まないプレコート金属板のプライマーに含まれる防錆顔料としては,Si系の防錆顔料,リン酸系の防錆顔料が知られている(例えば,特許文献4〜6を参照)。
特開平7−150326号公報 特開平1−304934号公報 特開平10−66931号公報 特開平9−12931号公報 特開2001−212506号公報 特開平11−222575号公報 植田ら;「耐食性に優れるクロメートフリープレコート鋼板」,新日鉄技報, 377, P25 (2002年)
しかし,特許文献1に記載されたようにプレコート金属板の母材の表面粗さを低く制御することで鮮映性を得る方法は,どの様な塗膜を用いても母材である金属板の表面粗さを制御できれば比較的高鮮映性を得ることができる反面,表面粗さを調整した圧延ロール等によって金属を圧延したり,研磨機等で研磨したりすることで,母材である金属板の表面粗さ制御しなければならない。そのため,この方法で鮮映性に優れたプレコート金属板を作製するには,労力とコストが多くかかる欠点がある。一方,特許文献2に記載されたように分子量の低い樹脂を用いた塗料を塗装することで鮮映性に優れたプレコート金属板を得る方法は,母材である金属板の表面粗さを制御して得る方法に比べると比較的簡単に製造することが可能であるが,特定の樹脂を塗料に用いなければならないため,他の塗膜性能,例えば,加工性等を付与することが困難である。
これらの方法に対して,比較的容易に鮮映性に優れたプレコート金属板を得る方法としては,特許文献3に記載されたように着色塗膜層の上に透明なクリヤー塗膜を塗装する方法が好適である。しかしながら,プレコート金属板は,一般的にコイルコーティングラインやシートコーティングラインと呼ばれる連続塗装設備において塗装されるため,金属板上に塗装された塗膜は20〜180秒程度の短時間で乾燥・焼付硬化される。この様に短時間で塗膜を硬化させた場合,塗膜は硬化収縮し,乾燥焼付け後には塗膜に多数のしわが入り,鮮映性を低下させ易い。特に,着色顔料を含まない透明なクリヤー塗料は,着色顔料を含む塗料よりもこの硬化収縮が発生し易く,プレコート金属板製造ラインで,鮮映性の優れたクリヤー塗装を施したプレコート金属板を得ることは困難であるという問題があった。
また,近年の環境問題より,プレコート金属板において,6価Crを含まないプレコート金属板の需要が急速に高まっているが,Cr系防錆顔料の代替顔料であるSi系防錆顔料やP系防錆顔料を含む塗膜は,これら防錆顔料の特性上,高鮮映性を得ることが困難であった。Si系,P系等の非クロム系防錆顔料は,顔料表面が多孔質であるものが多いため,これを添加した塗膜は表面に微細な凹凸が形成されて鮮映性が低下すると考えられている。
そこで,本発明は,上記の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり,プレコート金属板の連続塗装設備を用いて,容易かつ安価に製造可能な鮮映性に優れたプレコート金属板,更には鮮映性に優れた非クロム系プレコート金属板およびこれらの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは,上記課題を解決するために,プレコート金属板の塗膜の鮮映性,特に,Crを含まないプレコート金属板の鮮映性を比較的容易に向上させる技術について鋭意検討した。その結果,塗膜の硬化時に発生する塗膜の硬化収縮は,塗膜中の樹脂分比率に関係があり,塗膜中の樹脂分比率が少なくなると塗膜の硬化収縮が抑制されることを見出した。そこで,着色塗膜を施した塗膜の上に透明なクリヤー塗膜を被覆し,且つ,透明なクリヤー塗膜中に透明な微粒子を添加することで,クリヤー塗膜中の樹脂分比率が少なくなり,焼付け硬化時にクリヤー塗膜硬化収縮が抑制され,鮮映性に優れたプレコート金属板を得られることを知見した。これは,塗膜の硬化収縮は,樹脂が架橋反応する際に縮合反応することに起因するため,無機系微粒子や硬化時の縮合反応を起こさない別の系の樹脂微粒子を添加することで,塗膜中の硬化反応に起因する樹脂分比率を低減させて,塗膜全体の硬化時の収縮率を抑制させる技術である。また,透明なクリヤー塗膜中に含まれる微粒子は,微粒子の屈折率とクリヤー塗膜の主樹脂の屈折率との差がより小さいものとすることで,透明なクリヤー塗膜中で微粒子もより透明となり,プレコート金属板の鮮映性もより高くなることを見出した。
更には,プレコート金属板の透明なクリヤー塗膜と該クリヤー塗膜と金属板との間の1層以上の塗膜層とを,多層同時塗布もしくはウェットオンウェット方式によって塗布することで,容易に着色塗膜の上にクリヤー塗膜を塗装することができ,従来の各層毎に塗装と焼付けを繰り返す方法より,簡単にクリヤー塗膜を塗布した着色プレコート金属板を得ることができることを見出した。このような多層同時塗布もしくはウェットオンウェット方式の塗装方法では,塗装塗膜のウェット膜厚(乾燥前の膜厚)が厚くなるため,特に塗膜の硬化収縮が顕著に発生するため,微粒子を添加した透明なクリヤー塗膜を用いて塗装すると,硬化収縮が大きく抑制され,鮮映性の高いプレコート金属板が得られることを知見した。
本発明は,かかる知見を基に完成されたものであって,本発明がその要旨とするところは,以下の通りである。
(1) 金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有するプレコート金属板において,最表層の塗膜層としての透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜層と,該クリヤー塗膜層と前記金属板との間に配された少なくとも1層の着色塗膜層と,を有し,前記クリヤー塗膜層を被覆していない状態の前記着色塗膜層の色と,前記着色塗膜層の表面に前記クリヤー塗膜層を被覆した状態での前記着色塗膜層の色との色差が,ハンター色測計の色差ΔEで1.5以下であることを特徴とする,プレコート金属板。
(2) 前記プレコート金属板の最下層の塗膜中にCrを含まず,且つ,Si,Pのいずれか一方もしくは両方を含むことを特徴とする,(1)記載のプレコート金属板。
(3) 前記クリヤー塗膜中に含まれる前記微粒子の屈折率εが,前記クリヤー塗膜の主樹脂の屈折率εに対して|ε−ε|≦0.15であることを特徴とする,(1)記載のプレコート金属板。
(4) 前記クリヤー塗膜中に含まれる前記微粒子の添加量が,前記クリヤー塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して20〜150質量部であることを特徴とする,(1)又は(3)に記載のプレコート金属板。
(5) 前記クリヤー塗膜層と該クリヤー塗膜層に直接接している前記着色塗膜層との間の界面のRa(算術平均粗さ)が,0.3〜0.8μmであることを特徴とする,(1)記載のプレコート金属板。
(6) 金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有するプレコート金属板の製造方法であって,前記プレコート金属板の最表層としての透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜層と,該クリヤー塗膜層と前記金属板との間に配された1層以上の着色塗膜層とを,多層同時塗布もしくはウェットオンウェット方式によって塗布することを特徴とする,プレコート金属板の製造方法。
本発明によれば,鮮映性に優れるプレコート金属板を容易な製造方法で提供することが可能となる。そのため,これまでポストコートでしか対応ができなかった意匠性の必要な部位にも,プレコート金属板を適用することが容易となった。プレコート金属板を使用することで,ポストコート塗装で課題となっていた揮発性有機溶剤(VOC)の問題を解決することができるだけではなく,ユーザーでの塗装設備撤廃によるコストダウン,工場小スペース化等も達成される。したがって,本発明は産業上の極めて価値の高い発明であると言える。
以下に,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明のプレコート金属板は,金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有し,具体的には,最表層の塗膜層としての透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜と,該クリヤー塗膜と金属板との間に配された少なくとも1層の着色された塗膜層(着色塗膜層)とを有するもので,着色塗膜層の上にクリヤー塗膜層を被覆することで,より塗膜表面の鮮映性が向上する。しかし,クリヤー塗膜単独では,プレコート金属板の製造設備で短時間の間に焼付硬化させると,硬化収縮による微細なしわが表面に発生し,塗膜表面の鮮映性が低下する。そのため,この微細なしわの発生を抑制するためには,クリヤー塗膜中に透明な微粒子を添加する必要がある。
本発明で用いる透明微粒子としては,無機系微粒子や硬化時の縮合反応を起こさない別の系の樹脂の微粒子を使用することができる。このような微粒子としては,アルミナ微粒子,硫酸バリウム微粒子,炭酸カルシウム微粒子,ガラス系微粒子等の無機系透明微粒子や,アクリル樹脂系微粒子,ポリスチレン樹脂系微粒子,エポキシ樹脂系微粒子,ポリエステル樹脂系微粒子等の有機系透明微粒子などを用いることができる。これらの微粒子は,市販の微粒子を用いても良いし,試薬を用いても良い。また,固体物を粉砕して用いても良い。透明微粒子の添加量は,特に規定するものではなく,必要に応じて適宜選定できるが,塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して20〜150質量部であると,より好適である。20質量部未満では塗膜中の樹脂分比率が高いため,塗膜の硬化収縮抑制の効果が発揮されない恐れが有り,150質量部超では樹脂分比率が低すぎるため,塗膜表面が粗くなり,塗膜密着性が低下する恐れがある。また,粒径についても特に規定するものではなく,必要に応じて適宜選定できるが,発明者らの知見によると,クリヤー塗膜の膜厚をt(μm)とすると,平均粒径で0.1μm〜t(μm)が好適である。微粒子の平均粒径が0.1μm未満では,クリヤー塗料中に添加すると著しく塗料が増粘して,塗装が困難となる恐れが有り,また,クリヤー塗膜の膜厚より大きい粒径のものを添加すると,クリヤー塗膜の表面に凹凸が形成されるため,鮮映性が低下する恐れがある。
本発明のプレコート金属板は,透明なクリヤー塗膜層を被覆していない状態の着色塗膜層の色と,着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態で着色塗膜層の色との色差が,ハンター色測計の色差ΔEで1.5以下であることを特徴とする。透明なクリヤー塗膜層を被覆していない着色塗膜層の色と着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態での色との色差がハンター色測計の色差ΔEで1.5超であると,クリヤー塗膜の透明度が低下するため鮮映性が低下する。ΔEは1.0以下がより好適である。色差ΔEを1.5以下にするためには,クリヤー塗膜中の主樹脂とクリヤー塗膜中に含む微粒子との屈折率差をより小さくすると,より好適である。クリヤー塗膜中に含まれる微粒子の屈折率εがクリヤー塗膜の主樹脂の屈折率εに対して|ε−ε|≦0.15であるとより好適である。|ε−ε|>0.15では,クリヤー塗膜の透明度が低下し,鮮映性が低下する恐れある。樹脂や微粒子の屈折率は,市販の屈折率測定器にて測定しても良いし,文献に記載されている各物質の屈折率を用いても良い。|ε−ε|≦0.10であると,透明なクリヤー塗膜層を被覆していない着色塗膜層の色と着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態での色との色差がハンター色測計の色差ΔEで1.0以下となり易く,より好適である。
本発明のクリヤー塗膜に用いる樹脂は,一般に公知の塗料用樹脂,例えば,ポリエステル樹脂系,エポキシ樹脂系,ウレタン樹脂系,アクリル樹脂系,メラミン樹脂系,フッ素系の塗膜を用いることができる。市販のクリヤー塗料を用いても良い。これら樹脂のガラス転移温度(Tg)は,10〜100℃のものであると,より好適である。Tgが10℃未満のものは,塗膜の表面硬度が低下する恐れが有り,100℃超のものは加工性が劣る恐れがある。
また,必要に応じて,一般に公知の硬化剤,例えば,メラミン樹脂,イソシアネート等を添加しても良い。また,ワックス,消泡剤,レベリング剤等,一般に公知の添加剤を添加しても良い。
本発明の透明なクリヤー塗膜層と金属板との間の着色塗膜は,一般に公知の着色塗膜を用いることができる。着色塗膜を形成するための塗料としては,市販の塗料を用いることができる。プレコート用塗料として市販されているものを用いると,なお良い。また,樹脂と顔料とをブレンドして着色塗料を製造する場合は,一般に公知の塗料用樹脂,例えば,ポリエステル樹脂系,エポキシ樹脂系,ウレタン樹脂系,アクリル樹脂系,メラミン樹脂系,フッ素系の塗膜を用いたものが使用できる。着色顔料も一般に公知の着色顔料,例えば,カーボンブラック,酸化チタン,亜鉛華等の無機顔料や各種色の有機系顔料,アルミ,ニッケル等のメタリック顔料,パール系顔料等を使用することができる。これら顔料は市販のものを用いても良いし,試薬を用いても良い。固形物を粉砕したものを用いても良い。また,塗料の硬化剤も一般に公知の硬化剤,例えば,メラミン樹脂,イソシアネート等を添加しても良い。
上記プレコート金属板の最下層塗膜中にCrを含まず,且つ,Si,Pのいずれか一方もしくは両方を含むと,環境負荷物質を含まずに耐食性が向上するためより好適である。Pは,リン酸亜鉛やリン酸アルミニウム等に含まれ,Siはシリカ等に含まれる元素であり,これらはいずれも耐食性を高める機能を有している。P,Siを含む化合物としては,一般に公知の化合物,例えば,シリカやCaイオン交換シリカ,リン酸亜鉛,トリポリリン酸アルミニウム等のSiもしくはPを含有する化合物を使用することができる。これらの化合物は,試薬として市販されているものや顔料等の工業製品として市販されているものを使用しても良い。これらの化合物は複数種併用して添加しても良い。特にCaイオン交換シリカもしくはトリポリリン酸二水素アルミニウムが耐食性に優れるためより好適である。Caイオン交換シリカはGRACE社製の”SHIELDEX(登録商標)”を,トリポリリン酸二水素アルミニウムはテイカ社製の”K−WHITE”等を使用することができる。Si化合物やP化合物の添加量は必要に応じて変更することができるが,Si化合物もしくはP化合物の添加量,これらを併用もしくは複数種用いた場合は,その合計添加量が樹脂固形分100質量部に対して10〜120質量部であるとより好適である。10質量部未満では耐食性に劣り,120質量部超では塗膜が脆くなり加工性が劣る恐れがある。最下層塗膜中には,必要に応じて他の顔料や化合物を添加しても良い。これらP系,Si系の防錆顔料を添加した塗膜は一般には鮮映性が低下し易いが,本発明のプレコート金属では鮮映性が低下せずに,高鮮映性,高耐食性を付与できるため,より好適である。このように,本発明によれば,環境負荷物質である6価Crを含まないプレコート金属板で,これまで鮮映性が出難い点で課題となっていた鮮映性を向上させることが可能となった。
本発明のプレコート金属板の透明なクリヤー塗膜層と該クリヤー塗膜層と金属板との間の着色塗膜層との間の界面のRa(算術平均粗さ)が0.3〜0.8μmであると,塗膜密着性が高まるため,より好適である。両塗膜の界面のRaが0.3μm未満であると,当該塗膜界面の密着性が低下する恐れがある。一般に,塗膜を積層した場合,塗膜の密着性は塗膜間の化学結合や水素結合,ファンデルワールス力等の物理結合によって保たれているが,塗膜層間のRaを0.3以上にすることで,これらの密着力に加えて,アンカー効果による密着力が付与される。ただし,両塗膜の界面のRaが0.8μm超では,トップ塗料まで塗装したときの外観に影響して,光沢が低下する恐れがある。塗膜層間の界面にRaを付与するためには,多層同時塗布もしくはウェットオンウェット塗装を行うことで達することができる。多層同時塗布とは,スロットダイコーターもしくはスライドホッパー式のカーテンコーター等,複数層の塗液を同時に積層した状態で基材に塗布し,その後に多層同時に乾燥焼付けさせる方法である。また,ウェットオンウェット塗装とは,一度基材上に塗液を塗装した後に,この塗液が乾燥する前のウェット状態の内にその上に他の塗液を更に塗布し,この積層された多層塗液を同時に乾燥焼付けする方法である。この様に,未乾燥状態の塗液を積層して同時塗布することにより,積層塗膜の界面付近で各層の塗液が極僅かに混じり合うことで,界面に凹凸(即ちRa)を発生させることができる。一般には,前述のウェットオンウェット,もしくは,多層同時塗布によって2層以上の塗膜を塗装すると,これら塗膜界面のRaは0.3〜0.8μmとなる。
なお,本発明において,この界面のRaは,次の方法(即ち,基本的にJIS.B.0601.4.2:2001に沿った方法)により測定することができる。
即ち,表面粗さRaを測定すべき界面の垂直断面を顕微鏡写真にて撮影後,界面の凹凸(粗さ曲線)をトレースし,JIS.B.0601.4.2:2001所定の式に従って,この界面の算術平均粗さRaを求めることができる。
ウェットオンウェット塗装の方法としては,ロールコーター,ディップ,カーテンフローコーター,ローラーカーテンコーター等の一般に公知の塗装方法で,塗膜層を1層塗装した後に,この塗膜層を乾燥焼付けする前に,更にその上に,カーテンフロー塗装,ローラーカーテン塗装,スライドホッパー式カーテンコーター,スロットダイコーター等の一般に公知の基材と非接触で塗装できる方法にて塗装を施し,この積層したウェット塗膜を同時に乾燥焼付けする方法で塗装することができる。また,多層同時塗布方法としては,スライドホッパー式カーテンコーターに代表されるような,平行した2個以上のスリット等から異なる塗料を積層するように塗出させることで塗布する方法を用いることができる。
本発明のプレコート金属板は,ロールコーター塗装,浸漬塗装,カーテンフローコーター,ローラーカーテンコーター,スライドホッパー式カーテンフローコーター等の一般に公知の塗装方法で,且つ,各層を一層毎に塗装して焼き付ける方法を2回以上繰り返すことで塗装しても良いが,ウェットオンウェットや多層同時塗布方法で2層以上の層を一度に塗装して焼き付ける方法を用いた方が,現行の2コート2ベーク塗装ラインにて多層塗装が可能な上,塗膜界面でのRaが0.3〜0.8μmとなり,密着性が向上するため,より好適である。
また,塗装における乾燥焼付方法は,熱風オーブン,直火型オーブン,遠赤外線オーブン,誘導加熱型オーブン等の一般に公知の乾燥焼付方法を用いることができる。
本発明に使用する金属板は,一般に公知の金属材料を用いることができる。金属材料が合金材料であってもよい。例えば,鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板,アルミニウム合金板,チタン板,銅板等が挙げられる。これらの材料の表面にはめっきが施されていてもよい。めっきの種類としては,亜鉛めっき,アルミニウムめっき,銅めっき,ニッケルめっき等が挙げられる。これらの合金めっきであってもよい。鋼板の場合は,溶融亜鉛めっき鋼板,電気亜鉛めっき鋼板,亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板,溶融合金化亜鉛めっき鋼板,アルミニウムめっき鋼板,アルミニウム−亜鉛合金化めっき鋼板等,一般に公知の鋼板及びめっき鋼板を適用できる。
本発明に用いる金属板の表面には,一般に公知の化成処理を施すと金属板と塗膜層との密着性が向上するため,より好適である。化成処理は,リン酸亜鉛系化成処理等を使用することができる。ノンクロメート系化成処理としては,シランカップリング剤,ジルコニウム化合物,チタニウム化合物,タンニン又はタンニン酸,樹脂,シリカ等を含む水溶液で処理したもの等が知られており,特開昭53−9238号公報(チオ尿素とタンニン酸を含む水溶液を化成処理とした技術),特開平9−241576号公報(特定樹脂とシランカップリング剤を配合した化成処理に関する技術),特開2001−89868号公報(タンニンまたはタンニン酸,シランカップリング剤,微粒子シリカを含むプレコート金属用化成処理剤に関する技術),特開2001−316845号公報(シランカップリング剤,水分散性シリカ,ジルコニウム化合物またはチタニウム化合物,水溶性アクリル樹脂を含む表面処理剤に関する技術),特開2002−60959号公報(4価チタン化合物,リン酸塩,タンニンまたはタンニン酸からなる化成処理に関する技術),特開2002−38280号公報(チタン化合物及びフッ化物を含む無機有機複合皮膜を下地処理に用いた非クロム系塗装鋼板に関する技術),特開2002−266081号公報(チタンフッ化水素酸,ジルコニウムフッ化水素酸,シリカ,タンニン酸,水分散性有機樹脂を含む化成処理に関する技術),特開2003−253464号公報(特定の水溶性樹脂,チタン化合物及びジルコニウム化合物,シランカップリング剤を含む化成処理鋼板に関する技術)等に記載されている公知の技術を使用しても良い。これらの化成処理は,市販のものを使用することもできる。
(実施例1)
以下,実施例1の実験について詳細を説明する。
まず,実施例1の実験に用いた上塗り塗料について詳細を説明する。
東洋紡績社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)GK140」(Tg:20℃,数平均分子量:13000,以降ポリエステルと称す),及び,旭硝子社製のフッ素系樹脂である「LUMIFLON(登録商標)LF552」(Tg:20℃,数平均分子量12000,以降フッ素と称す),大日本インキ化学工業社製のエポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)7050」(以降エポキシと称す) ,日本触媒社製のアクリル樹脂「アロセット(登録商標)5535」(以降アクリルと称す)をバインダー樹脂として用いた。「バイロン(登録商標)GK140」及び「EPICLON(登録商標)7050」「アロセット(登録商標)5535」はペレットもしくはフレーク状であるため,これらを有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に溶解して使用した。また,「LUMIFLON(登録商標)LF552」は,樹脂を既に有機溶剤に溶解してあるタイプのものであるため,これをそのまま使用した。
次に,架橋剤として,三井サイテック社製の完全アルキル型メチル化メラミン樹脂(以降,メラミン樹脂と称す)である「サイメル(登録商標)303」を用い,これらメラミン樹脂と前述のポリエステル樹脂とを混合した。混合量は,それぞれの樹脂固形分の質量比で,[ポリエステル:メラミン=70:30]となるように混合した。更に,反応触媒として三井サイテック社製のアミンブロックタイプの酸性触媒「キャタリスト602」を全樹脂固形分に対して1.0質量%添加した。以上の手順にて実験に用いるクリヤー塗料を作製した。
次に,作製したクリヤー塗料に,アルミナ微粒子として信越石英社製の「AO−502」(平均粒径0.7μm),硫酸バリウム微粒子(試薬を乳鉢で粉砕した後にふるいにて平均粒径を5μmとしたもの),アクリル微粒子として積水化成品工業社製の架橋ポリメタクリルサンメチル系樹脂微粒子「MBX−5」(平均粒径5μm,以降アクリルと称する)を全樹脂固形分100質量部に対して50質量部添加することで,上塗り塗料を作製した。
なお,本実験で用いた塗料用樹脂については,予めアッベ屈折計「NAR−1T」を用いて樹脂の屈折率を測定した。また,本実験に用いた微粒子については,日本顔料技術協会編集「顔料便覧」(誠文堂新光社,昭和34年6月1日発行)の「第10節 屈折率」に記載の測定方法に準じて,一般に屈折率の分かっている液体の中に微粒子を浸して,光学顕微鏡で観察するLarsenの油浸法を用いて,屈折率を測定した。そして,各塗料の樹脂の屈折率とこれに添加した微粒子の屈折率との差を求めた。
次に,実験に用いた中塗り塗料及び下塗り塗料について詳細を説明する。
中塗り塗料には,東洋紡績社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)63CS」(Tg:7℃,数平均分子量:20000)に,架橋剤として,三井サイテック社製の完全アルキル型メチル化メラミン樹脂(以降,メラミン樹脂と称す)である「サイメル(登録商標) 303」を,樹脂固形分の質量比で[ポリエステル:メラミン=70:30]となるように混合して,これに樹脂固形分に対して1.0質量%の酸性触媒(三井サイテック社製「キャタリスト602」)を添加して,クリヤー塗料を作製した。さらに,作製した前記クリヤー塗料中に,石原産業社製の酸化チタン「タイペークCR−95」を全樹脂固形分100質量部に対して100質量部添加し,白色の中塗り塗料を作製した。
更に,下塗り塗料については,市販の下塗り塗料である日本ファインコーティングス社製のFL641EUプライマーの顔料を含まないクリヤー塗料を準備し,このクリヤー塗料には防錆顔料を添加することで,下塗り塗料を作製した。本実験で用いた防錆顔料は,テイカ社製のトリポリリン酸2水素アルミニウムである「K−WHITE #105」(以降,P系防錆顔料と称す),GRACE社製のカルシウムイオン交換シリカである「SHIELDEX(登録商標)C303」(以降,Si系防錆顔料と称す)を用いた。サンプルは,P系防錆顔料のみを塗料樹脂固形分100質量部に対して50質量部添加したもの,Si系防錆顔料のみを塗料樹脂固形分100質量部に対して50質量部添加したもの,塗料樹脂固形分100質量部に対してSi系防錆顔料を30質量部,P系防錆顔料を20質量部添加したものを,それぞれ作製した。また,防錆顔料を一切含まないものも準備した。
作製した上塗り塗料を表1に,中塗り塗料及び下塗り塗料の詳細を表2に記載する。
Figure 2007260541
Figure 2007260541
以下,実施例1の実験に用いたプレコート金属板について詳細を説明する。
新日本製鐵株式会社製の溶融亜鉛メッキ鋼板「シルバージンク」(以降,GIと称す),新日本製鐵株式会社製の亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板「ジンクライト」(以降,ZLと称す)と新日本製鐵株式会社製の電気亜鉛めっき鋼板「ジンコート」(以降,EGと称す)を原板として準備した。板厚は0.6mmのものを使用した。本実験で用いたZLのめっき付着量は片面20g/m,めっき層中のニッケル量は12%であった。また,GIのめっき付着量は片面60mg/mのもの,EGのめっき付着量は片面20g/mのものを用いた。
次に,準備した原板を日本パーカライジング社製のアルカリ脱脂液「FC−4336」の2質量%濃度,50℃水溶液にてスプレー脱脂し,水洗後,乾燥した後に,日本パーカライジング社製のクロメートフリー化成処理液である「CT−E300N」をロールコーターにて塗布し,熱風オーブンにて乾燥させた。熱風オーブンでの乾燥条件は,鋼板の到達板温で60℃とした。クロメートフリー処理の付着量は,全固形分で200g/m付着するように塗装した。
次に,化成処理を施した金属板の片方の面に,作製した下塗り塗料を,他方の面に日本ファインコーティングス社製の裏面塗料である「FL100HQ」のグレー色をロールコーターにてそれぞれ塗装し,熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が210℃となる条件で乾燥硬化した。そして,乾燥焼付後に,塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけ,水冷した。次に,下塗り塗膜の上に,中塗り塗料と上塗り塗料をスライドホッパー式のカーテンコーターにて同時に2層積層塗装し,熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が230℃となる条件で,積層した塗膜を同時に乾燥硬化した。そして,乾燥焼付後に,塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけて水冷することで,3層のプレコート金属板を作製した(以降,本塗装方法を「3C2B」塗装と称す)。なお,必要に応じて,同様の方法で中塗り塗料のみを塗装し(上塗り塗料は塗装しない),乾燥硬化させた2層のプレコート金属板も作製した(以降,本塗装方法を「2C2B」と称す)。
また,必要に応じて,下塗り塗膜上にロールコーターにて中塗り塗料を1層のみ塗装し,前述の要領で焼き付けた後に,中塗り塗膜上に再度ロールコーターにて上塗り塗料を1層塗装し焼き付けた,3層のプレコート金属板も作製した(本手順での塗装方法を「3C3B塗装」と称す)。
作製したプレコート鋼板の各塗膜厚については,表面の下塗り塗膜は乾燥膜厚で5μm,中塗り塗膜は15μm,上塗り塗膜は10μmとした。裏面塗料の膜厚は,乾燥膜厚で5μmとした。これら膜厚は,ロールコーターの場合にはロールの回転周速やロール間の押付け圧,塗料粘度を,スライドホッパー式のカーテンコーターの場合は塗料の塗出圧力や塗料粘度を調整することで,コントロールした。なお,各膜厚はKET社製の電磁膜厚計「LE−200J」にて測定した。
また,各プレコート金属板作製の際には,上塗り塗膜を塗装せずに,下塗り塗膜と中塗り塗膜のみのサンプルも作製し,上塗りを塗装していない状態の色調と上塗りを塗装した状態での色調をハンター色測計でそれぞれ測定し,これら色のハンター色測計の色差ΔEを求めた。そして,ΔEが1.0以下の場合は○,ΔEが1.0超1.5以下の場合は△,ΔEが1.5超の場合は×とした。
以下,作製したプレコート金属板の評価方法の詳細を記載する。
1. プレコート金属板の鮮映性測定
作製したプレコート金属板の表面の塗膜の鮮映性を,携帯用鮮明度光沢度計「PGD」(東京光電社製)にてGd値を測定した。
2. 耐食性試験
作製したプレコート金属板のトップ塗膜を施した面にカット傷を入れて,JIS K 5400.9.1記載の方法で塩水噴霧試験を実施した。塩水は,試験片のクロスカットを入れた面に噴霧した。試験時間は,めっき付着量の高いGIを原板に用いたサンプルについては240時間,めっき付着量の低いEG及びZLを原板に用いたサンプルについては120時間とした。そして,表面側のカット部からの塗膜最大膨れ幅を測定し,カット部膨れ幅が片側3mm以下の場合を○,カット部膨れ幅が片側3mm超5mm以下の場合を△,カット部膨れ幅が片側5mm超の場合を×と評価した。
3. 塗膜界面のRa測定
塗膜断面が観察できるように,プレコート金属板を垂直に切断し,切断したプレコート金属板を樹脂に埋め込んだ後に,断面部を研磨して,3500倍の走査型電子顕微鏡による塗膜の断面写真を撮影した。次に,透明の樹脂シート(市販のOHPシートを使用)を写真上にかぶせて,塗膜界面の凹凸を精巧にトレースした。そして,図2に示すように,縦線の部分の面積を画像処理装置で測定して,その平均値として,以下の数式からRaを算出した。
Figure 2007260541

5. 塗膜密着性評価
180°の密着曲げ加工(一般に0T折り曲げと称する)したプレコート金属板の加工部の塗膜表面をテープにて粘着テープを貼り付け,これを勢い良く剥離したときの塗膜の残存状態を目視にて観察した。塗膜剥離の評価は,塗膜剥離の全くない時を○,塗膜に僅かな剥離が認められる時を△,塗膜に明確な大きな剥離がある時を×として評価した。
Figure 2007260541
以下,評価結果について詳細を記載する。
表3に作製したプレコート金属板の評価結果を示す。本発明の実施例のプレコート金属板は,最表層の塗膜層(上塗り塗膜層)に透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜と該クリヤー塗膜の下に着色された塗膜層(中塗り塗膜層)を有し,且つ,透明なクリヤー塗膜層を被覆していない着色塗膜層の色と着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態での色との色差がハンター色測計の色差ΔEで1.5以下とすることで,鮮映性に優れるプレコート金属板を得ることができた(実施例PCM−2,3,6,7,10,11,13〜15,17〜19,21〜23)。これらは,Crを含まないため,環境面でもより好適である。また,これらサンプルの内,最下層塗膜中に,Si,Pのいずれも含まないものは耐食性が劣るため,これらの何れか一方,もしくは,両方を含む方がより好適である。なお,比較例PCM−24と比較例PCM−25とを比較すると,下塗り塗膜にP系防錆顔料やSi系防錆顔料を含むもの(比較例PCM−24)は,これを含まないもの(比較例PCM−25)と比べると鮮映性が劣るため,これらを含むPCMの鮮映性を向上させるためには,本発明は効果的であることが分かる。
更に,本発明の実施例の透明なクリヤー塗膜中に含まれる微粒子の屈折率εがクリヤー塗膜の主樹脂の屈折率εに対して|ε−ε|≦0.15であると(実施例PCM−2,3,6,7,10,11,13〜15,17〜19,21〜23),透明なクリヤー塗膜層を被覆していない着色塗膜層の色と着色塗膜層上に透明なクリヤー塗膜を被覆した状態での色との色差がハンター色測計の色差ΔEで1.5以下となり易く,より好適である。
また,本発明の実施例のプレコート金属板の透明なクリヤー塗膜層と該クリヤー塗膜層の下層側の着色塗膜層との間の界面のRa(算術平均粗さ)が0.3〜0.8μmであるもの(実施例PCM−3)は,Raがこの範囲外のもの(実施例PCM−19)より塗膜密着性に優れるため,より好適である。また,比較例PCM−4と比較例PCM−20とを比べると,3C3B塗装より3C2B塗装は鮮映性が劣る傾向であるため,本発明のプレコート金属板は,3C2B塗装等の多層同時塗布やウェットオンウェット塗装で製造することが,より効果的であることが分かる。
(実施例2)
以下,実施例2の実験の詳細について説明する。
まず,実施例2の実験に用いた塗料について詳細を説明する。
東洋紡績社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)GK140」(ポリエステル)を有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に溶解して,これに,架橋剤として,三井サイテック社製の完全アルキル型メチル化メラミン樹脂(以降,メラミン樹脂と称す)である「サイメル(登録商標)303」を前述のポリエステル樹脂に混合した。混合量は,それぞれの樹脂固形分の質量比で,[ポリエステル:メラミン=70:30]となるように混合した。更に,反応触媒として,三井サイテック社製のアミンブロックタイプの酸性触媒「キャタリスト602」を全樹脂固形分に対して1.0質量%添加することで,実験に用いるクリヤー塗料を作製した。
次に,作製したクリヤー塗料に,硫酸バリウム微粒子(試薬を乳鉢で粉砕した後に,篩にて平均粒径を5μmとしたもの)を必要量添加することで,上塗り塗料を作製した。
なお,本実験で作製した上塗り塗膜の樹脂(ポリエステル)及び微粒子(硫酸バリウム)の屈折率は,実施例1の実験で測定しており,ポリエステルが屈折率1.55,硫酸バリウムが屈折率1.64,両者の屈折率差が0.09であることが分かっている。
また,本実験において,中塗り塗料は実施例1の表2に記載の「白色中塗り」を,下塗り塗膜は実施例1の表2に記載の「P,Si系下塗り」を用いた。
表4に,実施例2の実験で作製した上塗り塗料の詳細を示す。
Figure 2007260541
以下,実施例2の実験に用いたプレコート金属板について詳細を説明する。
本実験では,実施例1の実験と同じ要領でプレコート金属板を作製した。各塗膜の膜厚も実施例1と同じとした。なお,実施例2の実験の評価方法は,実施例1に記載と同じ評価を行った。
実施例2の評価結果を表5に示す。
Figure 2007260541
本発明の実施例のプレコート金属板の透明なクリヤー塗膜(上塗り塗膜)中に含まれる微粒子の添加量が塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して20〜150質量部であるもの(実施例PCM−27〜29)は,鮮映性にも優れ,且つ,塗膜密着性にも優れるため,より好適である。透明なクリヤー塗膜(上塗り塗膜)中に含まれる微粒子の添加量が塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して20未満のもの(実施例PCM−26)は,樹脂固形分に対する微粒子添加量が少ないため,塗膜を乾燥硬化したときに塗膜が硬化収縮し易く,鮮映性が低い傾向であった。ただし,クリヤー塗膜中に微粒子を全く含まない(比較例PCM−25)よりは,僅かでも微粒子が含まれると,乾燥硬化時に塗膜が硬化収縮し難く,鮮映性は高い。一方,透明なクリヤー塗膜(上塗り塗膜)中に含まれる微粒子の添加量が塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して150質量部超のもの(実施例PCM−30)は,塗膜密着性が低くなる傾向であった。これは,クリヤー塗膜中の微粒子添加量が多過ぎるため,塗膜が脆くなったためと考える。したがって,透明なクリヤー塗膜(上塗り塗膜)中に含まれる微粒子の添加量が,塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して150質量部以下が好ましい。
以上,本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (6)

  1. 金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有するプレコート金属板において,
    最表層の塗膜層としての透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜層と,該クリヤー塗膜層と前記金属板との間に配された少なくとも1層の着色塗膜層と,を有し,
    前記クリヤー塗膜層を被覆していない状態の前記着色塗膜層の色と,前記着色塗膜層の表面に前記クリヤー塗膜層を被覆した状態での前記着色塗膜層の色との色差が,ハンター色測計の色差ΔEで1.5以下であることを特徴とする,プレコート金属板。
  2. 前記プレコート金属板の最下層の塗膜中にCrを含まず,且つ,Si,Pのいずれか一方もしくは両方を含むことを特徴とする,請求項1記載のプレコート金属板。
  3. 前記クリヤー塗膜中に含まれる前記微粒子の屈折率εが,前記クリヤー塗膜の主樹脂の屈折率εに対して|ε−ε|≦0.15であることを特徴とする,請求項1記載のプレコート金属板。
  4. 前記クリヤー塗膜中に含まれる前記微粒子の添加量が,前記クリヤー塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対して20〜150質量部であることを特徴とする,請求項1又は3に記載のプレコート金属板。
  5. 前記クリヤー塗膜層と該クリヤー塗膜層に直接接している前記着色塗膜層との間の界面のRa(算術平均粗さ)が,0.3〜0.8μmであることを特徴とする,請求項1記載のプレコート金属板。
  6. 金属板の片面もしくは両面に,少なくとも2層以上の塗膜層を有するプレコート金属板の製造方法であって,
    前記プレコート金属板の最表層としての透明な微粒子を含む透明なクリヤー塗膜層と,該クリヤー塗膜層と前記金属板との間に配された1層以上の着色塗膜層とを,多層同時塗布もしくはウェットオンウェット方式によって塗布することを特徴とする,プレコート金属板の製造方法。

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