JP2007149653A - 直接メタノール型燃料電池用電解質及び、それを使用した直接メタノール型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)で示される繰り返し構造単位を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
(式中、Xは、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−のいずれかを表し、Yは直接結合、2価若しくは3価の芳香族基を表し、R1、R2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、iは、0〜3の数を表し、kは1〜12の数を表し、lは、1又は2を表す。R3は、スルホン酸基、炭素数が1〜10であるアルキル基又は炭素数が6〜18である置換されていてもよいアリール基を表す。)
【選択図】なし
Description
年活発化してきている。なかでも耐熱性に優れフィルム強度の高い芳香族ポリエーテルに
スルホン酸基を導入した高分子、すなわち高分子主鎖に、酸素元素及び/ 又は硫黄元素と芳香環とを有し、イオン交換基が、主鎖を構成する芳香環の一部又は全部に直接結合している高分子電解質が知られており、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン(例えば、特許文献1参照)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(例えば、特許文献2参照)、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン(例えば、非特許文献1参照)、スルホン化ポリエーテルスルホン(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
また高分子主鎖に、酸素元素及び/又は硫黄元素と芳香環とを有し、主鎖を構成する芳香環の一部又は全部に、イオン交換基がアルキレン基を介して結合している高分子電解質(例えば、特許文献4参照)、主鎖を構成する芳香環が、単環性式芳香環と縮合多環式芳香環からなるスルホン化ポリエーテルエーテルスルホン系の芳香族系高分子電解質も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
本発明の目的は、液体燃料型燃料電池用、特に直接メタノール型燃料電池用に使用した場合、高いプロトン伝導度を保持しつつ、従来の高分子電解質膜よりも、メタノール遮断性に優れた特性を有する高分子電解質、及び当該高分子電解質を用いてなる高分子電解質膜を提供し、さらに当該高分子電解質膜を用いてなる直接メタノール型燃料電池を提供する。
(式中、Xは、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−のいずれかを表し、Yは直接結合、2価若しくは3価の芳香族基を表し、R1、R2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、iは、0〜3の数を表し、kは1〜12の数を表し、lは、Yが直接結合又は2価の芳香族基の場合は1、Yが3価の芳香族基の場合は2を表す。R3は、スルホン酸基、炭素数が1〜10であるアルキル基又は炭素数が6〜18である置換されていてもよいアリール基を表し、R3が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。)
(式中、Ar1、Ar2は互いに独立に芳香環を有する2価の基を表し、ここで該2価の基にある芳香環は炭素数が1〜10であるアルキル基又は炭素数が6〜18であるアリール基で置換されていてもよく、Zは、−O−、−SO2−、−CO−のいずれかを表し、Zが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。mは1以上の整数を、nは0以上の整数を表し、R4は、炭素数が1〜10であるアルキル基、炭素数が6〜18である置換されていても良いアリール基又は炭素数2〜20のアシル基を表し、R4が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。pは0〜4の数を表す。)
[5]Yが、直接結合であることを特徴とする上記[1]〜[4]の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質、
[6]iが0である[1]〜[5]のいずれか記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質、
[7]イオン交換容量が、0.5eq/g〜4meq/gであることを特徴とする上記[1]〜[6]の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質、
[8]一般式(1)で表される繰り返し構造単位からなるブロックと、一般式(2)で表される繰り返し構造単位及び一般式(3)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位からなるブロックとを有する、ブロック共重合体であることを特徴とする上記[1]〜[7]の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質、
[10]上記[9]の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質膜を使用した直接メタノール型燃料電池を提供するものである。
本発明のポリアリーレン系高分子は、遊離酸の形が、前記一般式(1)で示される繰り返し構造を有することを特徴とする。
ここで、式(1)におけるXは、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−のいずれかを表すが、中でも直接結合、−O−、−SO2−、−CO−が好ましい。
またYは、直接結合又は2価若しくは3価の芳香族基を表し、その総炭素数は、通常6〜18程度であり、置換基を有することもある芳香環から誘導される。かかる置換基を有することもある芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、これらの環にフッ素原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ビフェニリル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基が置換した芳香環等が挙げられ、これらの芳香環から水素原子を2個又は3個取り去って得られる基が挙げられる。スルホン酸基の数lが1の場合は2価の、lが2の場合は3価の芳香族基となることは言うまでもない。好ましい−Y−(SO3H)lの例としては、スルホン酸基を含めて表わすと以下の基が挙げられる。
(式中、lは前記と同義である。)
R1、R2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表わすが、R1、R2がともに水素原子である場合又はR1、R2がともにフッ素原子である場合が好ましい。
炭素数が1〜10程度であるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基等が挙げられ、炭素数が6〜18程度である置換されていても良いアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、さらに、これらのアリール基にフッ素原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ビフェニリル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、スルホン酸基等が置換したもの等が挙げられる。
また、一般式(1)で表される繰り返し構造単位において、主鎖を構成するフェニレン基の置換位は、o-、m-、p−、これら2種以上の混合物であっても良いが、繰り返し構造単位の90%以上がp−連結であることが好ましい。すなわち、高分子主鎖を構成するフェニレン基は、他の繰り返し単位とオルト位、メタ位、パラ位で結合し、全て同じ結合位置である必要はないが、繰返し構造単位の90%以上が両隣の繰り返し構造単位とパラ位で結合している、すなわち、一般式(1)で表される繰り返し構造の90%以上が、下記一般式(1A)で表される繰り返し構造単位であることが好ましい。
(式中、R1、R2、R3、X、Y、i、k、lは前記と同義である。)
例えば、さらに前記の一般式(2)で示される繰返し構造単位及び/又は一般式(3)で示される繰返し構造単位等を有することが好ましい。
ここで、一般式(2)におけるAr1、Ar2は互いに独立に芳香環を有する2価の基を表し、この2価の基としては、芳香環から誘導される2価の基、2個の芳香環が直接または連結基を介して連結された2価の基であることを意味する。
そのような2価の基としては、例えば以下のような基が例示される。
一般式(2)で表される繰り返し構造単位の代表例としては、例えば以下のものが挙げられる。
ここで、炭素数が1〜10であるアルキル基、炭素数が6〜18であるアリール基としては、例えば前記と同様のアルキル基、アリール基が挙げられる。また、炭素数2〜20であるアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、または、これらの基にフッ素原子、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ビフェニリル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、スルホン酸基などが置換したアシル基が挙げられる。
なかでもR4は、ベンゾイル、フェノキシベンゾイルであることが好ましい。pはフェニレン基に結合しているR4の数であり、0〜4の整数を表わし、pは0又は1であることが好ましい。
また、一般式(3)中の、主鎖を構成するフェニレン基は、オルト位、メタ位、パラ位で結合し、全て同じ結合位置である必要はないが、繰り返し構造単位の90%以上が両隣の繰り返し構造単位とパラ位で結合していることが好ましく、すなわち、一般式(3)で表される繰り返し構造の90%以上が、下記一般式(3A)で表される繰り返し構造単位であると好ましい。
(式中、R4、pは前記と同義である。)
また、イオン交換容量が4meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。イオン交換容量の上限としては3.8meq/g以下であることが好ましく、とりわけ、3.5meq/g以下であることが好ましい。
ここで、ブロック共重合体である場合、一般式(1)で表される繰り返し構造単位からなるブロックと、一般式(2)及び/又は一般式(3)で表される繰り返し構造単位からなるブロックを有するものであり、その重合度としては、一般式(1)で表される繰返し構造単位からなるブロックの場合には10〜100が好ましく、一般式(2)で表される繰り返し構造単位からなるブロックの場合は、10〜100が好ましい。また、一般式(3)で表される繰返し構造単位からなるブロックの場合には、該繰返し構造単位数が、10〜200が好ましい。また、一般式(1)で表される繰り返し構造単位からなるブロックと一般式(2)及び/又は一般式(3)等で表される繰返し構造単位からなるブロックを有する場合、ブロック同士が直接結合していてもよく、2価の基を連結基として介して結合している形態でもよい。
本発明のポリアリーレン系高分子は、例えば、下記一般式(4)で示されるモノマー、及び必要に応じて用いられる下記一般式(5)並びに一般式(6)で示されるモノマーを、縮合反応により重合することにより製造し得る。
(式中、Ar1、Ar2、R1〜R4、X、Y、i、k、m、l、pは前記と同義である。Qは、縮合反応時に脱離する基を表し、複数のQは異なる種類であってもよい。)
前記ゼロ価遷移金属錯体としては、例えばゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体等が挙げられる。なかでもゼロ価ニッケル錯体が好ましく使用される。
ゼロ価遷移金属錯体は、市販品や別途合成したものを重合反応系に供しても良いし、重合反応系中において、還元剤の作用で、遷移金属化合物から発生させても良い。後者の場合においては、例えば、遷移金属化合物に還元剤として亜鉛やマグネシウムなどを作用させる方法等が挙げられる。
いずれの場合でも、後述の配位子を添加することが、収率向上の観点から好ましい。
また、遷移金属化合物に還元剤を作用させ、ゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合において、使用される遷移金属化合物としては、通常、2価の遷移金属を有する化合物が用いられるが、ゼロ価のものも用いることもできる。なかでも2価ニッケルを有する化合物、2価パラジウムを有する化合物が好ましい。2価ニッケルを有する化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などが挙げられ、2価パラジウムを有する化合物としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム等が挙げられる。
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、還元剤を使用しない場合、一般式(4)で示されるモノマー、及び必要に応じて用いられる一般式(5)、一般式(6)で示されるモノマー(以下、反応モノマーと呼ぶ)の総量に対して、通常0.1〜5モル倍である。使用量が過少であると分子量が小さくなる傾向があるので、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、一層好ましくは2.1モル倍以上である。使用量の上限は、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが望ましい。
また、還元剤を使用する場合、遷移金属化合物の使用量は、反応モノマーの総量に対して、0.01〜1モル倍である。使用量が過少であると分子量が小さい傾向にあるので、好ましくは0.03モル倍以上である。使用量の上限は、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、1.0モル倍以下であることが望ましい。
また配位子を共存させる場合は、ゼロ価遷移金属錯体に対して、通常、金属原子基準で、0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度使用される。
生成するポリアリーレン系高分子の分子量をより高くするためには、当該ポリアリーレン系高分子が十分に溶解していることが望ましいので、良溶媒であるテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、DMSO、NMP、トルエン等が好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。なかでもDMF、DMAc、DMSO、NMP、及びこれら2種以上の混合物が好ましく用いられる。
また縮合温度は、通常0〜250℃の範囲であり、好ましくは、10〜100℃程度であり、縮合時間は、通常0.5〜24時間程度である。中でも、生成するポリアリーレン系高分子の分子量をより高くするためには、ゼロ価遷移金属錯体と反応モノマーとを45℃以上の温度で作用させることが好ましい。好ましい作用温度は通常45℃〜200℃であり、とりわけ好ましくは50℃〜100℃程度である。
またゼロ価遷移金属錯体と反応モノマーとを作用させる方法は、一方をもう一方に加える方法であっても、両者を反応容器に同時に加える方法であっても良い。加えるに当っては、一挙に加えても良いが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましい。
ゼロ価遷移金属錯体と、反応モノマーとを作用させた後、通常45℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜100℃程度で保温される。
また、その原料である一般式(4)で示されるモノマーは、公知の方法を用いて製造し得る。例えば、アルキル基を介してスルホン酸基を導入する方法には、特に制限はないが、具体的な方法として例えば、J.Amer.Chem.Soc.,76,5357〜5360(1954)に記載されているようなスルトンを用いて芳香族環にアルキル基を介したスルホン酸基を導入する方法がある。また、例えば、アルコキシ基を介してスルホン酸基を導入する方法には、特に制限はないが、具体的な方法として例えば、フェノール性水酸基を持つ化合物をアルカリ金属化合物及び/又は有機塩基化合物(例えば、アミン化合物)と反応させてアルカリ金属塩及び/又はアミン塩を生成した後、プロパンスルトンやブロモエタンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン化剤と反応することにより、効率的に製造することができる。
この場合は、本発明のポリアリーレン系高分子は、通常フィルムの形態で使用されるが、フィルムへ転化する方法に特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましく使用される。
具体的には、ポリアリーレン系高分子を適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。製膜に用いる溶媒は、本発明のポリアリーレン系高分子が溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、DMF、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMPがポリマーの溶解性が高く好ましい。
さらに、燃料電池用途では、水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加する事も知られており、これらの公知の方法を、本発明のポリアリーレン系高分子に適用することも可能である。
また、フィルムの機械的強度の向上などを目的として、電子線・放射線などを照射して架橋することもできる。さらには、多孔性のフィルムやシートに含浸複合化したり、ファイバーやパルプを混合してフィルムを補強する方法などが知られており、これらの公知の方法はいずれも適用できる。このようにして得られたフィルムは、燃料電池のプロトン伝導膜として好適に用いることができる。
本発明の燃料電池は、高分子電解質フィルムの両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、アノード側に燃料としての水素、またはメタノール、またはジメチルエーテルとの酸化反応を活性化でき、アノード側に、酸素との還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金または白金系合金の微粒子を用いることが好ましい。白金または白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いられ、好ましく用いられる。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、燃料を触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
また、本発明のポリアリーレン系高分子電解質は、固体高分子形燃料電池の触媒層を構成する触媒組成物の一成分であるプロトン伝導材料としても使用可能である。
このようにして製造された本発明の燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノール等を用いる各種の形式で使用可能であり、特にメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池に用いた場合、優れた性能を示す。
上記において、本発明の実施の形態について説明を行なったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
(1)分子量の測定
実施例中に記載した分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)である。
GPC測定装置 TOSOH社製 HLC−8220
カラム 実施例1−2:Shodex社製 KD−80M+KD−803を接続
実施例3:Shodex社製 AT−80Mを2本接続
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMAc(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
(2)イオン交換容量(IEC)の測定
ポリアリーレン系高分子を、ジメチルスルホキシドに溶解して高分子電解質溶液を調整した。これをガラス板上に塗り広げ、これを80℃で常圧乾燥することにより、高分子電解質膜を得た。この膜を、2Nの塩酸で2時間処理し、その後イオン交換水で洗浄することで、イオン交換基を遊離酸型(プロトン型)に変換した膜を得た。その後、ハロゲン水分率計で105℃でさらに乾燥させ、絶乾重量を求めた。この膜を、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この高分子電解質膜が浸漬された溶液に0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定し、中和点を求めた。絶乾重量と中和点に要する0.1mol/L塩酸の量から、イオン交換容量を求めた。
(3)プロトン伝導度の測定
まず、1cm2の開口部を有するシリコンゴム(厚さ200μm)の片面にカーボン電極を貼った測定用セルを2つ準備し、これらをカーボン電極同士が対向するように配置し、前記2つのセルに直接インピーダンス測定装置の端子を接続した。
次いで、この2つの測定用セルの間に、上記方法で得られたイオン交換基をプロトン型に変換した高分子電解質膜をセットして、測定温度23℃で、2つの測定用セル間の抵抗値を測定した。
その後、高分子電解質膜を除いて再度抵抗値を測定した。そして、高分子電解質膜を有する状態と有しない状態とで得られた2つの抵抗値の差に基づいて、高分子電解質膜の膜厚方向の膜抵抗を算出した。得られた膜抵抗の値と膜厚から、高分子電解質膜の膜厚方向のプロトン伝導度を算出した。なお、高分子電解質膜の両側に接触させる溶液としては、1mol/Lの希硫酸を用いた。
(4)メタノール透過係数の測定
上記IECの測定の方法と同様に、イオン交換基を遊離酸型(プロトン型)に変換した高分子電解質膜を、10wt%濃度のメタノール水溶液に2時間浸漬した後、セルAとセルBからなるH 字型隔膜セルの中央に、高分子電解質膜を挟持させ、セルA に10wt% 濃度のメタノール水溶液を、セルBに純水を入れ、23℃において、一定時間t(sec)後での、セルB中のメタノール濃度を分析し、メタノール透過係数D( cm2/sec)を下式により求めた。
D={(V×l)/(A×t)}×ln{(C1−Cm)/(C2−C n)}
ここで、
V :セルB 中の液の容量(cm3)、
l :高分子電解質膜の膜厚(cm)、
A :高分子電解質膜の断面積(cm2)、
t :時間(sec)
C 1 :時間t1におけるセルB中のメタノール濃度(mol/cm3)、
C 2 :時間t2におけるセルB中のメタノール濃度(mol/cm3)、
C m :時間t1におけるセルA中のメタノール濃度(mol/cm3)、
C n :時間t2におけるセルA中のメタノール濃度(mol/cm3)、
なお、メタノール透過量は十分に小さいので、V は初期の純水容量で一定値とし、また、Cm=Cnで初期濃度(10wt%)として求めた。
(モノマーA(3−(2,5−ジクロロフェノキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム)の合成)
アルゴン雰囲気下、フラスコにDMAc150ml、トルエン75ml、2,5−ジクロロフェノール24.15g(148.2mmol)、炭酸ナトリウム47.10g(444.4mmol)を入れ、加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。室温に放冷後、3−ブロモプロパンスルホン酸ナトリウム50.00g(222.2mmol)を加え、100℃に昇温し、同温度で10時間撹拌した。放冷後、吸引濾過により固体を除き、得られた濾液に大量のクロロホルムを加え、析出した白色固体を濾別した。さらに再結晶法により3−(2,5−ジクロロフェノキシ)プロパンスルホン酸ナトリウム35.2gを得た。
(モノマーB(3−(2,5−ジクロロフェノキシ)エタンスルホン酸ナトリウム)の合成)
アルゴン雰囲気下、フラスコにDMAc150ml、トルエン75ml、2,5−ジクロロフェノール11.84g(72.6mmol)、炭酸ナトリウム23.10g(217.9mmol)を入れ、加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。室温に放冷後、2−ブロモエタンスルホン酸ナトリウム23.00g(109.0mmol)を加え、100℃に昇温し、同温度で10時間撹拌した。放冷後、吸引濾過により固体を除き、得られた濾液に大量のクロロホルムを加え、析出した白色固体を濾別した。さらに再結晶法により3−(2,5−ジクロロフェノキシ)エタンスルホン酸ナトリウム14.3gを得た。
(モノマーC(3−(2,5−ジクロロフェノキシ)ブタンスルホン酸ナトリウム)の合成)
アルゴン雰囲気下、フラスコにDMAc150ml、トルエン75ml、2,5−ジクロロフェノール20.00g(122.7mmol)、炭酸ナトリウム39.01g(368.1mmol)を入れ、加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。室温に放冷後、ブタンスルトン25.06g(184.1mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で10時間撹拌した。放冷後、吸引濾過により固体を除き、得られた濾液に大量のクロロホルムを加え、析出した白色固体を濾別した。さらに再結晶法により3−(2,5−ジクロロフェノキシ)ブタンスルホン酸ナトリウム38.7gを得た。
アルゴン雰囲気下、フラスコに、DMSO195ml、合成例1で得られたモノマーA10.00g(32.56mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.44×104、Mw=1.23×105)5.92g、2,2’−ビピリジル19.70g(126.17mmol)を入れて攪拌し、60℃に昇温した。次いで、これにニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)31.55g(114.70mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で20時間攪拌した。放冷後、反応液を大量の4N塩酸に注ぐことによりポリマーを析出させ、濾別し、濾液が中性になるまで水洗を行なった後、減圧乾燥することにより、下記一般式(10)で示されるポリアリーレン系高分子9.50gを得た。IECは1.73meq/gであり、IECから求められた繰り返し構造単位の比率をa/(a+((n+1)×b)で表すと、0.37であった。また、上記の方法で求めたプロトン伝導度とメタノール透過係数を表−1に示す。また、上記の方法で求めたプロトン伝導度とメタノール透過係数を表−1に示す(なお、括弧内は測定条件下での高分子電解質膜の膜厚を示す)。
Mn=220000、Mw=396000
IEC=1.73 meq/g
アルゴン雰囲気下、フラスコに、DMSO86ml、合成例2で得られたモノマーB5.00g(17.06mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.44×104、Mw=1.23×105)2.27g、2,2’−ビピリジル10.31g(65.99mmol)を入れて攪拌し、60℃に昇温した。次いで、これにニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)16.50g(59.99mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で17時間攪拌した。放冷後、反応液を大量の4N塩酸に注ぐことによりポリマーを析出させ、濾別し、濾液が中性になるまで水洗を行なった後、減圧乾燥することにより、下記一般式(11)で示されるポリアリーレン系高分子4.73gを得た。IECは2.35meq/gであり、IECから求められた繰り返し構造単位の比率をa/(a+((n+1)×b)で表すと、0.47であった。また、上記の方法で求めたプロトン伝導度とメタノール透過係数を表−1に示す(なお、括弧内は測定条件下での高分子電解質膜の膜厚を示す)。
Mn=93000、Mw=186000
アルゴン雰囲気下、フラスコに、DMSO85ml、合成例3で得られたモノマーC5.00g(15.57mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=5.44×104、Mw=1.23×105)1.73g、2,2’−ビピリジル8.06g(51.62mmol)を入れて攪拌し、60℃に昇温した。次いで、これにニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)12.91g(46.92mmol)を加え、80℃に昇温し、同温度で4時間攪拌した。放冷後、反応液を大量の4N塩酸に注ぐことによりポリマーを析出させ、濾別し、濾液が中性になるまで水洗を行なった後、減圧乾燥することにより、下記一般式(12)で示されるポリアリーレン系高分子5.21gを得た。IECは2.67meq/gであり、IECから求められた繰り返し構造単位の比率をa/(a+((n+1)×b)で表すと、0.61であった。また、上記の方法で求めたプロトン伝導度とメタノール透過係数を表−1に示す(なお、括弧内は測定条件下での高分子電解質膜の膜厚を示す)。
Mn=130000、Mw=250000
上記IECの測定の方法と同様に、イオン交換基を遊離酸型(プロトン型)に変換した高分子電解質膜を用い、特開2004−319139号公報に記載の方法に準拠し膜−電極接合体を作成した。ただし電極インクとして、アノードにはカーボンに担持された白金ルテニウム触媒(N.E.CHEMCAT社製、Pt/Ru=60/40 g/g)とAldrich社製5重量%Nafion溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物)にエタノールを加えたインクを、カソードにはカーボンに担持された白金触媒(N.E.CHEMCAT社製)、とAldrich社製5重量%Nafion溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物)にエタノールを加えたインクを用いて、両極共に白金量が1.0g/cm2となるように膜にインクを直接塗布した。拡散層として、アノードにはカーボンペーパーを、カソードにはカーボンクロスを用いた。該接合体を40℃に保ち、アノードには10重量%メタノール水溶液を、カソードには無加湿の空気ガスを流し、その発電特性を測定することによって行なった。
実施例2で得られたポリアリーレン系高分子を用いて上記方法で膜−電極接合体を作成し、発電特性を測定した。結果を表−2に示す。
実施例3で得られたポリアリーレン系高分子を用いて上記方法で膜−電極接合体を作成し、発電特性を測定した。結果を表−2に示す。
Nafion115(Du Pont社製)を用いて、上記方法で膜−電極接合体を作成し、発電特性を測定した。結果を表−2に示す。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で示される繰り返し構造単位を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
(式中、Xは、直接結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−のいずれかを表し、Yは直接結合、2価若しくは3価の芳香族基を表し、R1、R2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、iは、0〜3の数を表し、kは1〜12の数を表し、lは、Yが直接結合又は2価の芳香族基の場合は1、Yが3価の芳香族基の場合は2を表す。R3は、スルホン酸基、炭素数が1〜10であるアルキル基又は炭素数が6〜18である置換されていてもよいアリール基を表し、R3が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。) - 一般式(1)で表される繰返し構造単位の90%以上がパラ位で結合し、主鎖を構成していることを特徴とする請求項1記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- さらに下記一般式(2)及び/又は(3)で示される繰り返し構造単位を有することを特徴とする請求項1又は2記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
(式中、Ar1、Ar2は互いに独立に芳香環を有する2価の基を表し、ここで該2価の基にある芳香環は炭素数が1〜10であるアルキル基又は炭素数が6〜18であるアリール基で置換されていてもよく、Zは、−O−、−SO2−、−CO−のいずれかを表し、Zが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。mは1以上の整数を、nは0以上の整数を表し、R4は、炭素数が1〜10であるアルキル基、炭素数が6〜18である置換されていても良いアリール基又は炭素数2〜20のアシル基を表し、R4が複数ある場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。pは0〜4の数を表す。) - 主鎖中に一般式(1)で示される繰り返し構造単位と、一般式(3)で示される繰り返し構造単位を有し、且つ一般式(3)で表される繰り返し構造単位の90%以上が、パラ位で結合していることを特徴とする請求項3記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- Yが、直接結合であることを特徴とする請求1〜4のいずれかに記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- iが0である請求項1〜5のいずれか記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- イオン交換容量が、0.5meq/g〜4meq/gであることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- 一般式(1)で表される繰り返し構造単位からなるブロックと、一般式(2)で表される繰り返し構造単位及び一般式(3)で表される繰り返し構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位からなるブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質。
- 請求項1〜8いずれかに記載の高分子電解質を用いてなることを特徴とする直接メタノール型燃料電池用高分子電解質膜。
- 請求項9記載の直接メタノール型燃料電池用高分子電解質膜を使用した直接メタノール型燃料電池。
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