JP2006300224A - 3ピース組合せオイルリング - Google Patents
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Abstract
【課題】サイドレール内周面と接触するスペーサエキスパンダ耳部の耐摩耗性が改善されるとともに、薄幅でよりオイルコントロール機能が高く、オイル燃焼残渣が固着しにくい低摩擦3ピース組合せオイルリングを提供する。
【解決手段】本発明の3ピース組合せオイルリングは、スペーサエキスパンダとスペーサエキスパンダに支持される一対のサイドレールからなる厚さh1が1〜3mmであり、スペーサエキスパンダは平板状金属によりピストン軸方向波形に形成されて周方向に延伸しており、内周部にはサイドレールを半径方向外側に押圧する押圧片を有し、前記押圧片の剪断面には窒化層が形成され、前記窒化された剪断面以外の面はNiめっき皮膜で覆われており、スペーサエキスパンダのサイドレールに対向する面の最表面とサイドレールのスペーサエキスパンダと対向する面にはフッ素系有機物のみからなる薄膜が形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の3ピース組合せオイルリングは、スペーサエキスパンダとスペーサエキスパンダに支持される一対のサイドレールからなる厚さh1が1〜3mmであり、スペーサエキスパンダは平板状金属によりピストン軸方向波形に形成されて周方向に延伸しており、内周部にはサイドレールを半径方向外側に押圧する押圧片を有し、前記押圧片の剪断面には窒化層が形成され、前記窒化された剪断面以外の面はNiめっき皮膜で覆われており、スペーサエキスパンダのサイドレールに対向する面の最表面とサイドレールのスペーサエキスパンダと対向する面にはフッ素系有機物のみからなる薄膜が形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関のピストンに装着され、オイルコントロールを行う3ピース組合せオイルリングに関する。
内燃機関における一般的なピストンリングの断面構成を図5に示す。ピストン10には、ピストンリングを装着するためのリング溝11,12,13が形成され、これらのリング溝内に、ガスシール作用を主目的とする2本の圧カリング21,22と、オイルコントロール及びオイルシール作用を主目的とする1組の組合せオイルリング23が装着される。ピストン6の往復動に伴い、これらリングの外周摺動面がシリンダ20の内壁20aと摺動される。図6に示す組合せオイルリングは、軸方向上下一対のサイドレール231と、その問に組み合わされ、サイドレール231の内周側から押圧し、サイドレール231に張力を発生させる軸方向波形のスペーサエキスパンダ232とからなる3ピース組合せオイルリングである。組合せオイルリングのピストン軸方向寸法h1をオイルリング幅という。スペーサエキスパンダには、上記図6に示す軸方向波形形状の他に図7に示す半径方向波形形状のものあるが、本願発明には含まれない。
図6に示す軸方向波形形状の3ピース組合せオイルリングは、サイドレール231がスペーサエキスパンダ232の耳部(押圧部)50の角度αにより、シリンダ壁面に向かう半径方向及びリング溝の上下面に向かう軸方向に分力をもって押圧される。よってサイドレール231はシリンダ壁面20a及びリング溝の上下面においてシール機能を発揮できる。このため3ピース型オイルリング23は、従来の2ピース型オイルリングよりオイルコントロール性能に優れている。特に薄幅化(h1寸法を小さく)した3ピース型組合せオイルリングは、シリンダ壁面20aに対する追従性が良く、前述のサイドシール機能もあることから、低張力にしてもオイル消費を増加させることなく摩擦損失を低減できるという利点を有している。シリンダ壁面20aと摺動するサイドレール外周面231a、並びに、相互に接触しあうサイドレール内周面231b及びスペーサエキスパンダの耳部50の何れか一つが摩耗すると、スペーサエキスパンダがサイドレールを押圧する力が減少するので、オイル掻き機能が低下する。多くの場合、耳部50の摩耗がサイドレールの内周面の摩耗より大きい。最近の低張力化の傾向にあっては、耳部の摩耗によるオイル掻き機能の低下がオイル消費の増大に繋がる。耳部の摩耗対策としては、一般に、スペーサエキスパンダ全体に軟窒化やガス窒化が行われてきた。特開昭56−66429号公報、特開昭56−66430号公報、特開昭57−206752号公報、特開昭58−5456号公報、特開昭58−163653号公報、特開昭60−110646号公報、特開昭60−116844号公報は、スペーサエキスパンダに軟窒化又はガス窒化が施される例を開示している。
一方、自動車エンジンにおいては、地球温暖化防止の観点からCO2↓排出の削減が求められており燃費の向上が図られている。そのため内燃機関各部の摩擦力低減は重要な課題となっており、これらの課題を解決するうえでピストンリングの果たす役割は大きい。ピストンリングの設計においては、摩擦力低減のためにはピストンリングの低張力化、特に、オイルリングの低張力化が有効である。従来のガソリンエンジン用3ピース組合せオイルリングの張力は30〜50N(ニュートン)であり、Topリングや2ndリングを含めた、ピストンリング全体の張力の1/2程度を占める。このピストンリング張力とピストンリングによる摩擦損失は比例関係にあり、ピストンリングの張力を約半分程度にするとピストンリング摩擦損失は40〜50%程度低減することが出来る。しかしながら、従来のオイルリング幅h1が3〜4mmである3ピース組合せオイルリングを単に低張力にすると、サイドレール外周面とシリンダ壁との隙間が従来以上に大きくなりやすく、エンジンオイルの消費を多くなる。従って、オイルリングの摩擦力低減のためには、オイルリングの低張力化のみならず、オイルリングの幅h1を薄くする必要があることが分かってきた。尚、オイルリングの薄幅化はピストンリングの断面係数を小さくなり、シリンダ壁への追従性が向上しオイル消費を改善すると考えられる。
そこで、本発明の目的は、サイドレール内周面と接触するスペーサエキスパンダ耳部の耐摩耗性が改善されるとともに、薄幅でよりオイルコントロール機能の高い低張力3ピース組合せオイルリングを提供することにある。
スペーサエキスパンダとスペーサエキスパンダに支持される一対のサイドレールからなる幅h1が1〜3mmである3ピース組合せオイルリングであって、前記スペーサエキスパンダは平板状金属によりピストン軸方向波形に形成されて周方向に延伸しており、内周部には母材の剪断によりピストン軸方向に突出して形成されサイドレールを半径方向外側に押圧する押圧片を有し、前記押圧片の剪断面には窒化層が形成され、前記窒化された剪断面以外の面はNiめっき皮膜で覆われており、少なくとも前記スペーサエキスパンダの前記サイドレールに対向する面の最表面及び/又は前記サイドレールの前記スペーサエキスパンダと対向する面にはフッ素系有機物のみからなる薄膜が形成されていることを特徴とする3ピース組合せオイルリングであり、組合せ張力が5〜15Nにあり、フッ素有機薄膜はCF3基及び/又はCF2基を含むことがより望ましい。
本願第一の発明である3ピース組合せオイルリングのスペーサエキスパンダを図1に示す。母材には一般的なオーステナイトステンレス鋼を使用する。耳部50の剪断面には窒化層50aが形成され、前記窒化された剪断面以外のスペーサエキスパンダの表面はNiめっき皮膜50bで覆われている。通常オーステナイトステンレス鋼を母材とした時は窒化層の表面硬さはHv1000〜1500とし、窒化深さは5〜30μm(Hv700以上)である。窒化層硬さが低いか深さが少ないと耳部の摩耗が多くなり充分な耐久性が得られない。窒化層厚さが30μm以上では窒化に長時間を要するので得策では無い。尚、表面には窒化物層が形成されていたほうが耐摩耗性は良好である。Cu−KαX線回折において2θ=40°及び2θ=46°にピークを持つ化合物相である(Fe,Cr,Ni,…)4N相が存在すれば尚一層耐久性が増す。
上下方向波形で剪断により耳部を形成するスペーサエキスパンダを窒化処理すると、耳部のサイドレール内周面と接触する剪断面は強い加工を受け加工変質層が出来ており、又、材質にオーステナイトステンレス鋼が使われていることから、通常の前処理では他の表面に比べ窒化されにくく窒化ムラが起こりやすい。窒化層が浅いと耐摩耗性が悪く耐久性が無い。又、厚い窒化層を得るために、窒化時間を長くすると、窒化されやすい上下面の窒化層深さが大きくなりすぎ、スペーサエキスパンダ本体の疲労限低下をおこし使用中に折損するという危険がある。
また、3ピース組合せオイルリングの低張力化のためには、スペーサエキスパンダの張力を低く設計することが必要であるが、製造工程で生じる張力バラツキ幅を従来以下にしなければ、場合によっては、オイルリングの張力がゼロとなるものも生じる可能性があり、オイル消費を増大しかねない。張力バラツキ幅が大きくなる原因は、オイルリングの張力がスペーサエキスパンダ周方向での縮径の程度により決められることから、スペーサエキスパンダの周方向の寸法バラツキや母材の弾性率のバラツキがオイルリング張力のバラツキを生む大きな原因となる。切断等の機械加工時の機械精度による寸法バラツキは小さく、窒化処理工程では窒素が拡散することで母材が延び又弾性率も上がることから、窒化処理工程での窒化深さのバラツキが窒化スペーサエキスパンダの周方向の長さバラツキや弾性率のバラツキを生じさせる。
そこで、本願スペーサエキスパンダの製造方法は実開平4−64658号(特許文献1)や特開2003−28299号(特許文献2)に記載された製造工程を取る。実開平4−64658号の発明は軸方向に連続した波形状を成し、内周側の上下に突出した複数個の離間した耳部を有するスペーサエキスパンダにおいて、前記波形状の成形前の帯状素材の全表面に窒化防止用表面処理層を有し、本体表面より剪断された前記耳部の面に窒化防止用処理層が無い母材表面を有するスペーサエキスパンダに関するもので本体全体に窒化が入るとスペーサエキスパンダの疲労強度が低下し、使用中に疲労破壊するという問題を解決するために、スペーサエキスパンダの成形加工前の帯状鋼材表面にSnめっき又はCuめっき等の窒化防止皮膜を施し、後続する成形加工過程でレール部分との接触部分のみ母材が露出するように耳部成形を行った後に窒化するものであり、剪断によって露出した母材部分のみ窒化層を形成し、その他表面は窒化防止層が形成されており、窒化層生成がなされないので疲労強度が高く且つレールリング内周面と接触する耳部のみが窒化された、耐摩耗性が優れるスペーサエキスパンダを開示する。しかし、窒化方法に関しての記載はない。
特開2003−28299号の発明は組合せオイルリングのスペーサエキスパンダであって本体内周部にピストン軸方向上下に突出した押圧片を有し、外押圧片の剪断により形成された面にのみ窒化層を有し、その他の表面がNiまたはCrあるいはCu皮膜を有することを特徴とするスペーサエキスパンダである。前記実案と同様に、本体全体に窒化層が形成されることが防止され、剪断によって形成されたスペーサエキスパンダの耳部のみが窒化されたスペーサエキスパンダであり、組合せオイルリングの張力バラツキを低減できることを開示するものである。本発明も前記発明同様窒化方法に関する記述はない。
上記これらの発明は、本願発明の一つの目的である、窒化層の深さバラツキによるスペーサエキスパンダの張力バラツキ低減には、スペーサエキスパンダ上下面には窒化層が形成されないので、有効な手段であるが、耳部のサイドレール内周面と接触する剪断面は強い加工を受け加工変質層が出来ており、又、材質にオーステナイトステンレス鋼が使われていることから、他の本体表面に比べ窒化されにくく、窒化ムラが生じやすいという問題の解決がなされていない。
そこで本願では、ガス窒化に先だって或いはガス窒化時にガス窒化炉中に塩化水素ガス又は塩化アンモニウム等のハロゲン元素を投入することによって金属表面を活性化した後ガス窒化を行う方法を採用する。この窒化法では塩素等ハロゲン元素の強い活性化力によって、オーステナイトステンレス鋼の加工変質層のある耳部の剪断面にも窒化層をムラ無く形成することが出来る。しかしながら、前記先行技術に開示されたSnやCuやCrの窒化防止用の金属めっき皮膜は、この塩素ガスによって腐食されるので使用することが出来ない。そのため本願発明では窒化防止めっき皮膜としてNiめっき皮膜のみが使用可能である。また、Niめっき皮膜の熱膨張率は母材オーステナイトステンレス鋼よりも大きい。従って、スペーサエキスパンダが昇温した時にはスペーサエキスパンダ表面には圧縮応力が存在することになるので疲労破壊にも強くなるメリットもある。本発明によるNiめっき皮膜は、厚さを1〜10μmとする。Niめっき皮膜の厚さが1μm未満の場合は窒化防止効果が充分でなく、特にスペーサエキスパンダ角部に窒化層が形成され、張力バラツキが大きくなる。Niめっき皮膜の厚さが10μmを越えるとNiめっき皮膜が摩耗した場合にリング溝とのクリアランスが大きくなるのでオイル消費が多くなり目的にそぐわない。尚、Niめっき皮膜は窒化処理によって硬度が低下することもあり摩耗しやすくなる。
一方、潤滑オイルが燃料とともに燃焼すると、カーボン系燃焼生成物が生成され、潤滑オイルに混ざってエンジンブロック内を循環する。3ピース組合せオイルリングは複雑な形状であるため、これらの燃焼生成物はオイルリングに付着しやすく、一旦付着した燃焼生成物はその部分のオイルの流れを阻害するためさらに堆積していくという悪循環が生じる。オイルリング付近は100〜150℃の温度環境でもあり、ひどい場合には、ピストンとの固着(スティック)が生じることになる。特に、燃費向上のためにオイルリングの組合せ張力を15N以下と低張力に設計した場合には固着が生じやすくなってくる。一旦、固着が生じると、オイルリングの外周面とシリンダ内周面との間に隙間が生じることになるから、オイル掻き機能の低下しエンジンオイル消費の増大に繋がると共に燃焼したオイルが再び付着すると云った悪循環となり、一層ひどい固着へと進展する。
オイルリングの幅h1を1〜2mmと薄幅化しているためスペーサエキスパンダとレールリング間52のオイル流路面積が狭くなっていることから、この固着現象が一層起きやすくなっている。この固着対策としては、ピストンのオイルリング溝の軸方向幅d1とオイルリング幅h1との差であるリング溝のクリアランスを大きくすることが有効であるが、クリアランスを大きくすることは、ピストンの上下動に伴いサイドレールがピストン溝の中で上下に振動する幅が大きくなることから、溝摩耗の発生やシール機能の低下、さらには振動音問題を引き起こす。よって、クリアランスの拡大は望ましくない。
3ピース型オイルリングへのオイルスラッジの付着又は固着を防止する手段として、フッ素系の樹脂皮膜又はフッ素系樹脂を含有する樹脂皮膜を塗布する方法が提案されている。例えば特開2002−310299号(特許文献3)には、サイドレールの少なくとも一側面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂被膜を形成した組合せオイルリング用サイドレールが開示されている。また特開2003−254155号(特許文献4)には、サイドレールがリング溝側面と接触する部分に、二硫化モリブデン、グラファイト及びPTFEの内の少なくとも一種を含むポリアミドイミド又はポリイミドからなる皮膜を形成した組合せオイルリングが開示されている。
特開2002−310299号には合成樹脂皮膜の厚さに関して1〜10μmが好ましい旨を記載している。また特開2003−254155号には実施例において10μmの厚さの樹脂皮膜を形成している。3ピース型オイルリングでは、組合せ呼び幅h1が少なくとも皮膜の厚さの2倍分増加するので、ピストン溝幅の軸方向幅d1を広げる必要がある。従って、樹脂皮膜の摩耗時にはサイドクリアランスが大きくなり、オイル消費が増加したり、溝摩耗が発生したりする。
特開2000−27955号(特許文献4)には、フルオロアルキル基置換アルコキシドを含む溶液を塗布し、焼成してなる薄膜を形成したオイルリングが開示されている。このオイルリングは、カーボン等のデポジットの剥離性に優れている。しかし成膜法が溶液を塗布する成膜法に限られるため、液溜まりにより、膜厚にバラツキが生じやすく、特に本願発明のスペーサエキスパンダのように上下方向波形の複雑な形状の基材表面全体に均一な薄膜を形成するのは困難である。また、膜厚さも厚くなるので、前記発明技術同様に、ピストン溝幅の軸方向幅を広げる必要があり、樹脂皮膜の摩耗時にはサイドクリアランスが大きくなり、オイル消費が増加したり、溝摩耗が発生したりする可能性が高い。
本願発明のスペーサエキスパンダの最表面には図示していないがフッ素系樹脂皮膜が被覆してある。
オイルスラッジは、特にスペーサエキスパンダの耳部と突起部間の平坦な凹部と、サイドレールとの間の空間52に付着/堆積し易い。そのため、少なくともスペーサエキスパンダの上下面に又はサイドレールのスペーサエキスパンダに対向する面にフッ素系有機薄膜をすれば、オイルスラッジの付着防止効果が得られる。フッ素系有機薄膜をサイドレールのスペーサエキスパンダに対向する面、及びスペーサエキスパンダの上下面の両方に設けるのが更に好ましい。フッ素系樹脂皮膜を形成させるフッ素系有機化合物としては、少なくとも一部がフッ素置換された炭化水素基を有する化合物で一定の蒸気圧を有するものであれば特に限定されない。フッ素系有機化合物がCF3基及び/又はCF2基を含有すると、高いオイルスラッジの付着/堆積防止機能或いは固着防止機能が得られ好ましい。
オイルスラッジは、特にスペーサエキスパンダの耳部と突起部間の平坦な凹部と、サイドレールとの間の空間52に付着/堆積し易い。そのため、少なくともスペーサエキスパンダの上下面に又はサイドレールのスペーサエキスパンダに対向する面にフッ素系有機薄膜をすれば、オイルスラッジの付着防止効果が得られる。フッ素系有機薄膜をサイドレールのスペーサエキスパンダに対向する面、及びスペーサエキスパンダの上下面の両方に設けるのが更に好ましい。フッ素系樹脂皮膜を形成させるフッ素系有機化合物としては、少なくとも一部がフッ素置換された炭化水素基を有する化合物で一定の蒸気圧を有するものであれば特に限定されない。フッ素系有機化合物がCF3基及び/又はCF2基を含有すると、高いオイルスラッジの付着/堆積防止機能或いは固着防止機能が得られ好ましい。
また、Niめっき皮膜や窒化層との密着性を考慮するとフッ化有機金属化合物等金属を含有した化合物が好ましい。これらの化合物は基材或いは基材上に形成された密着層の表面に存在する水酸基と脱水反応或いは脱塩酸反応し、シロキサン結合或いは金属−酸素結合を形成するため強固な密着が実現できる。
従って、フッ化有機金属化合物としては、例えばアルコキシ基の一部がフルオロアルキル基に置換されたフルオロアルキル基置換金属アルコキシド、フルオロアルキル基を有する金属ハロゲン化物等が挙げられる。コスト面や取り扱いの容易さからフッ化有機金属化合物としてはフッ化アルキルシランが好ましい。フッ化アルキルシランとしては、例えばCF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)7C2H4Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5C2H4SiCl3、CF3(CF2)7C2H4SiCl3、CF3CH2O(CH2)15SiCl3等が挙げられる。特に、CF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3及びCF3(CF2)7C2H4Si(OC2H5)3は、基材上の水酸基と反応してもHClを発生しないため、より好ましい。
フッ素系有機薄膜は、0.1μm以下の厚さとするのが好ましい。形成されたフッ素系有機化合物層からなる薄膜は、表面にフルオロアルキル基が規則的に配列した緻密な薄膜であり、オイルスラッジの付着防止機能又は固着防止機能が高く、長期間に亘り優れたオイルコントロール機能を維持できる。特に、フッ素系有機化合物薄膜が実質的にフッ素系有機化合物の単分子層からなる場合には、フルオロアルキル基が最表層に非常に緻密に存在するため、より優れた効果が得られる。
また、基材とフッ素系有機薄膜との間に密着層を設けてもよい。密着層としてはSiOx(X=1,2)層、又はその他の金属酸化物層が挙げられるが、基材との密着性に優れた材料が好ましい。これらの酸化物層には表面に水酸基が存在するため、後述するフッ素系有機薄膜を被覆する工程でフッ化アルキルシランやフッ素系有機金属化合物等を用いる場合、フッ素系有機薄膜がシロキサン結合或いは金属−酸素結合を介して強固に結合する。このため、長期間の使用においてもフッ素系有機薄膜が剥離することなく、優れた付着或いは固着防止効果を発揮する。
金属アルコキシドを用いた密着層では、表面に多くの水酸基が存在するため、特に優れた密着性が得られる。金属アルコキシドとしては、Si、Al、Ga、V、W、Taからなる群から選ばれた金属のアルコキシドを用いるのが好ましい。具体的には、Si(OC2H5)4、Al(OC2H5)3、Al(OC3H7)3、Al(OC4H9)3、Ga(OC2H5)3、VO(OC2H5)3、W(OC2H5)6、Ta(OC3H7)5等が挙げられる。
また金属アルコキシドを用いた密着層では、密着層中にアルキル基が残存し、靱性が付与されるため、応力の影響が緩和され、クラック発生や皮膜剥離の防止に有効である。この場合、後のフッ素系有機薄膜と密着層との結合反応を阻害しないようにアルキル基は短鎖のものとするのが好ましく、ジメチルジエトキシラン、メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン等が好ましい。特にジメチルジエトキシランは、連鎖反応により皮膜を形成し、皮膜厚さを制御でき、皮膜全体の強度を上げることができるので有効である。また、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、有機クロム系カップリング剤等を用いてもよい。密着層及びフッ素系有機薄膜の合計厚さは、1μm未満とするのが好ましく、0.5μm以下とするのがより好ましく、0.3μm以下とするのが特に好ましい。この厚さを1μm以上とすると、組合せ張力が増加する可能性があり、膜形成時間や材料コスト面からも好ましくない。
フッ素系有機薄膜の形成には気相法を用い、原料のフッ素系有機化合物を気化して基材に付着させる。気相法は、簡便で大量生産性に優れ、複雑な形状の基材でも密着性の高い緻密な皮膜を均一に形成することができる。気相反応は、通常、皮膜を被覆する部材及び原料となるフッ素系有機化合物を反応容器中に入れ、加熱してフッ素系有機化合物を蒸発することにより進行させる。大気圧下で皮膜を形成することもできるが、必要に応じて容器内を減圧してもよい。フッ素系有機薄膜の厚さは、処理時間、容器内温度、容器内圧力、容器内に入れるフッ素系有機化合物量等を適宜設定することにより、所望の値に調整することができる。
なお、フッ素系有機薄膜は、外周摺動面の仕上げ加工の直前に形成すればよい。薄膜の形成後に仕上げ加工を行わない場合でも本件のフッ素系有機薄膜は膜厚が極めて薄いので、運転の初期段階に外周摺動面の薄膜は除去される。
以下実施例に基づき説明する。
本発明の3ピース組合せオイルリングの効果を確認するため、次のような工程で作成し、エンジン実験により確認した。
1.線材へのNiめっき
幅2.5mm、厚さ0.3mmで端部R状のスペーサエキスパンダ用の圧延帯材(SUS304材)に線材めっき装置を用いて速度1m/分の速度で巻き取りながらNiめっきを行った。得られためっき厚さは約5μmであった。後工程にギア成形で波形形状にし、母材の剪断により耳部を形成する加工が入るので、めっき皮膜の剥離防止が懸念されることから、Ni−P等の合金めっきは望ましくなく、ワット浴を用いた。めっき条件は下記の通り。めっき終了後めっき膜厚さと硬度測定を行った。
その結果は下記の通りである。
Niめっき膜厚:4〜5μm
硬さ :Hv378
本発明の3ピース組合せオイルリングの効果を確認するため、次のような工程で作成し、エンジン実験により確認した。
1.線材へのNiめっき
幅2.5mm、厚さ0.3mmで端部R状のスペーサエキスパンダ用の圧延帯材(SUS304材)に線材めっき装置を用いて速度1m/分の速度で巻き取りながらNiめっきを行った。得られためっき厚さは約5μmであった。後工程にギア成形で波形形状にし、母材の剪断により耳部を形成する加工が入るので、めっき皮膜の剥離防止が懸念されることから、Ni−P等の合金めっきは望ましくなく、ワット浴を用いた。めっき条件は下記の通り。めっき終了後めっき膜厚さと硬度測定を行った。
その結果は下記の通りである。
Niめっき膜厚:4〜5μm
硬さ :Hv378
2.塑性加工
前記線材をギア成形で上下方向波形に成形 → 線材の一端部に上下方向の剪断で耳部を形成 → 耳部が内周側になるようにリング状に成形 → 窒化 →切断 なる工程で、スペーサエキスパンダを成形した。
作成したスペーサエキスパンダを用いた3ピース組合せオイルリングは
リング呼び径:75mm、組合せ呼び幅h1:2.5mm又は3.5mm
組合せ厚さ:2.5mmである。
前記線材をギア成形で上下方向波形に成形 → 線材の一端部に上下方向の剪断で耳部を形成 → 耳部が内周側になるようにリング状に成形 → 窒化 →切断 なる工程で、スペーサエキスパンダを成形した。
作成したスペーサエキスパンダを用いた3ピース組合せオイルリングは
リング呼び径:75mm、組合せ呼び幅h1:2.5mm又は3.5mm
組合せ厚さ:2.5mmである。
3.窒化処理
脱脂洗浄後、NH390%・N210%雰囲気の550℃で30分間ガス窒化を行った。なお、窒化処理はマッフル構造を持つ炉を使用し、一旦、炉内を真状態とした後に昇温した。窒化処理に先立ち、先ず不働態膜の還元のため塩化アンモニウム所定量を所定のタイミングで添加することを行った。窒化処理後、耳部の窒化層の深さ観察と硬度測定及びX線回折による窒化層を構成する相を同定する定性分析を行った。X線回折はCu−Kα線、管電圧40kV、管電流30mAで行った。
結果は次の通りである。
・窒化深さ:19μm(Hv700以上)
・窒化層の表面硬さ:Hv1220
・窒化物相:(Fe,Cr,Ni,…)4N相:45〜53%(Cu−KαX線回折において2θ=40°及び2θ=46°にピークを持つ化合物相)
脱脂洗浄後、NH390%・N210%雰囲気の550℃で30分間ガス窒化を行った。なお、窒化処理はマッフル構造を持つ炉を使用し、一旦、炉内を真状態とした後に昇温した。窒化処理に先立ち、先ず不働態膜の還元のため塩化アンモニウム所定量を所定のタイミングで添加することを行った。窒化処理後、耳部の窒化層の深さ観察と硬度測定及びX線回折による窒化層を構成する相を同定する定性分析を行った。X線回折はCu−Kα線、管電圧40kV、管電流30mAで行った。
結果は次の通りである。
・窒化深さ:19μm(Hv700以上)
・窒化層の表面硬さ:Hv1220
・窒化物相:(Fe,Cr,Ni,…)4N相:45〜53%(Cu−KαX線回折において2θ=40°及び2θ=46°にピークを持つ化合物相)
4.フッ素系有機薄膜の形成
(a) 前処理
フッ素系有機薄膜の密着性を向上させるために、予め前記スペーサエキスパンダを充分洗浄して表面の汚れを除去した。フッ素系有機化合物としてフッ化アルキルシランを用いた。基材と皮膜を化学結合させるため、基材表面に水酸基が存在するのが望ましので、基材表面の水酸基を増加させるために、予め基材表面をNaOH水溶液に浸漬した。
尚、前記スペーサエキスパンダ基材とフッ素系有機薄膜の密着性を上げるために、層間に密着層を設けてもよい。その場合、密着層としてはSiOx(X=1、2)層の様な金属酸化物層には表面に水酸基が存在するため、フッ素系有機薄膜を被覆する工程でフッ化アルキルシランやフッ素系有機金属化合物等を用いる場合、フッ素系有機薄膜がシロキサン結合或いは金属−酸素結合を介して強固に結合する。しかし、本願のスペーサエキスパンダでは、前記Niめっき皮膜表面には窒化処理によって薄い酸化物層が形成されとみられ密着性が強固であるという効果があった。
(a) 前処理
フッ素系有機薄膜の密着性を向上させるために、予め前記スペーサエキスパンダを充分洗浄して表面の汚れを除去した。フッ素系有機化合物としてフッ化アルキルシランを用いた。基材と皮膜を化学結合させるため、基材表面に水酸基が存在するのが望ましので、基材表面の水酸基を増加させるために、予め基材表面をNaOH水溶液に浸漬した。
尚、前記スペーサエキスパンダ基材とフッ素系有機薄膜の密着性を上げるために、層間に密着層を設けてもよい。その場合、密着層としてはSiOx(X=1、2)層の様な金属酸化物層には表面に水酸基が存在するため、フッ素系有機薄膜を被覆する工程でフッ化アルキルシランやフッ素系有機金属化合物等を用いる場合、フッ素系有機薄膜がシロキサン結合或いは金属−酸素結合を介して強固に結合する。しかし、本願のスペーサエキスパンダでは、前記Niめっき皮膜表面には窒化処理によって薄い酸化物層が形成されとみられ密着性が強固であるという効果があった。
(b) フッ素系有機薄膜形成
本発明の実施例の3ピース組合せオイルリングでは樹脂皮膜はスペーサエキスパンダの全表面或いはサイドレール全表面に被覆される。しかし、全表面に必要なわけではなく、少なくともエンジンオイルと接触するスペーサエキスパンダの凹部とサイドレールのスペーサエキスパンダと対向する表面には樹脂皮膜が必要である。
前記スペーサエキスパンダ及びサイドレールをアセトン中で洗浄した後、heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilaneの共存下、密閉容器内で容器内温度が190℃となるよう制御しながら、60分間加温して薄膜を形成した。尚、密閉容器内はガス置換することなく、空気雰囲気とし、加圧及び減圧操作は行わなかった。得られたサイドレールとスペーサエキスパンダを組み合わせて3ピース型オイルリングを作製した。
本発明の実施例の3ピース組合せオイルリングでは樹脂皮膜はスペーサエキスパンダの全表面或いはサイドレール全表面に被覆される。しかし、全表面に必要なわけではなく、少なくともエンジンオイルと接触するスペーサエキスパンダの凹部とサイドレールのスペーサエキスパンダと対向する表面には樹脂皮膜が必要である。
前記スペーサエキスパンダ及びサイドレールをアセトン中で洗浄した後、heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilaneの共存下、密閉容器内で容器内温度が190℃となるよう制御しながら、60分間加温して薄膜を形成した。尚、密閉容器内はガス置換することなく、空気雰囲気とし、加圧及び減圧操作は行わなかった。得られたサイドレールとスペーサエキスパンダを組み合わせて3ピース型オイルリングを作製した。
上記スペーサエキスパンダ及びサイドレールのそれぞれ一部分を切断し、各部品の表面をXPS分析した。XPS分析によりCF3基及びCF2基に起因するピークが確認できたこのことから、フルオロ基を含有する非常に薄い膜が形成されていることがわかった。
6.エンジンテスト
3ピース組合せオイルリングをエンジンによる実機テストを行った。テストに使用したエンジンは4気筒 排気量1.5Lのガソリンエンジンである。実施例1と比較例1〜3の各オイルリングをピストンに組み込む前に各オイルリングの重量を測定し、各気筒に共通仕様の圧力リングを組み込み、1〜4気筒にそれぞれ実施例1、比較例1,2,3のオイルリングを組み込んだ。
3ピース組合せオイルリングをエンジンによる実機テストを行った。テストに使用したエンジンは4気筒 排気量1.5Lのガソリンエンジンである。実施例1と比較例1〜3の各オイルリングをピストンに組み込む前に各オイルリングの重量を測定し、各気筒に共通仕様の圧力リングを組み込み、1〜4気筒にそれぞれ実施例1、比較例1,2,3のオイルリングを組み込んだ。
実施例1
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 12N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ12μm)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.07μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面−内周面窒化物層
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 12N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ12μm)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.07μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面−内周面窒化物層
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
比較例1
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.8mm、幅:3.5mm
・組合せ張力 13N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ10μm、ムラ有り)
その他の面−ガス窒化(窒化深さ12μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理:外周表面−ガス窒化拡散層
外表面 heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.07μm)
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.8mm、幅:3.5mm
・組合せ張力 13N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ10μm、ムラ有り)
その他の面−ガス窒化(窒化深さ12μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理:外周表面−ガス窒化拡散層
外表面 heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.07μm)
比較例2
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 12N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ12)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面・内周面−窒化物層
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約〇.08μm)
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 12N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ12)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約0.08μm)
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面・内周面−窒化物層
外表面−heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-trietoxysilane膜(厚さ約〇.08μm)
比較例3
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 27N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ10μm、ムラ有り)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−なし
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面・内周面−窒化物層
外周表面−なし
*尚、圧力リングは同じ仕様のものを使用した。
・3ピース組合せオイルリング
・呼び径:75mm、厚さ:2.5mm、幅:2.5mm
・組合せ張力 27N
スペーサエキスパンダ
母材:オーステナイトステンレス鋼(SUS304)
厚さ:0.3mm
表面処理 耳部剪断面−ガス窒化(窒化深さ10μm、ムラ有り)
その他の面−Niめっき(厚さ4.5μm)
外表面−なし
サイドレール
母材:17Crマルテンサイトステンレス鋼
表面処理 外周表面−ガス窒化拡散層
側面・内周面−窒化物層
外周表面−なし
*尚、圧力リングは同じ仕様のものを使用した。
スラッジ堆積量エンジンテスト
エンジンオイルには市場回収劣化オイルを用い、停止状態から最高出力回転数までの運転条件と、低温から高温までの油水温条件を連続的に繰り返すサイクリック運転を実施した。所定時間経過後ピストンを取り出し、各気筒に組み込まれていたオイルリングに極力小さい力を加え、ピストンからオイルリングを取り外した。その後さらにオイルリングをアセトンに浸し、一定時間超音波洗浄し堆積物が強固付着している分のみがオイルリングに残存している状態にした。その後、各オイルリングの重量を測定しテスト前の重量からの変化量を堆積物量としてみなし比較した。堆積物量を実施例1を基準100として表に示す。
表2:スラッジ堆積量エンジンテスト結果
エンジンオイルには市場回収劣化オイルを用い、停止状態から最高出力回転数までの運転条件と、低温から高温までの油水温条件を連続的に繰り返すサイクリック運転を実施した。所定時間経過後ピストンを取り出し、各気筒に組み込まれていたオイルリングに極力小さい力を加え、ピストンからオイルリングを取り外した。その後さらにオイルリングをアセトンに浸し、一定時間超音波洗浄し堆積物が強固付着している分のみがオイルリングに残存している状態にした。その後、各オイルリングの重量を測定しテスト前の重量からの変化量を堆積物量としてみなし比較した。堆積物量を実施例1を基準100として表に示す。
表2:スラッジ堆積量エンジンテスト結果
オイル消費量テスト
テストに使用したエンジンは4気筒 排気量2.0Lのガソリンエンジンである。はじめに実施例1のオイルリングとコンプレッションリングを1〜4の全気筒に組み込みテストを実施した。エンジンを運転する前に使用するオイルの量を測定しておき、運転条件6000rpm全負荷で所定時間エンジンを運転し、テスト前後のオイル消費量を測定した。その値を運転時間で割り単位時間当たりのオイル消費量を算出した。
その後、同エンジンで比較例1、2、3の順に同様にテストを実施した。
結果を図2に示す。
テストに使用したエンジンは4気筒 排気量2.0Lのガソリンエンジンである。はじめに実施例1のオイルリングとコンプレッションリングを1〜4の全気筒に組み込みテストを実施した。エンジンを運転する前に使用するオイルの量を測定しておき、運転条件6000rpm全負荷で所定時間エンジンを運転し、テスト前後のオイル消費量を測定した。その値を運転時間で割り単位時間当たりのオイル消費量を算出した。
その後、同エンジンで比較例1、2、3の順に同様にテストを実施した。
結果を図2に示す。
摩擦力測定テスト
オイルリングのみを組み込むこと を可能にしたピストンリングの摩擦力測定装置(図3)を用いて、シリンダ内でピストンを上下に往復させそのときの荷重センサ出力を測定した。
実施例1、比較例1、2、3の各オイルリングを順に組み込み、ピストン往復時の最大荷重を比較した。実施例の荷重出力を100として結果を図4に示す。
オイルリングのみを組み込むこと を可能にしたピストンリングの摩擦力測定装置(図3)を用いて、シリンダ内でピストンを上下に往復させそのときの荷重センサ出力を測定した。
実施例1、比較例1、2、3の各オイルリングを順に組み込み、ピストン往復時の最大荷重を比較した。実施例の荷重出力を100として結果を図4に示す。
結果
本願発明のスペーサエキスパンダを組み込んだ3ピース組合せオイルリングは、
1.オイルスラッジ堆積量に於いては、組合せ厚さが大きい(スペーサエキスパンダのオイル通過溝断面積が大きい)比較例2よりも若干大きいが、FASの効果により他の比較例に比べ少ない結果である。
2.エンジンオイル消費量は、張力の高い従来仕様である比較例23についで少なく良好である。
3.エンジン摩擦力に於いては従来仕様の張力の高い比較例2以外の他のものとほぼ同様である。
以上のように、本願発明のスペーサエキスパンダを使用した3ピース組合せオイルリングは、オイル消費やオイルスラッジ堆積量が少なく、且つ、摩擦力が少ないという優れた効果を有しており、今後、ガソリンエンジンの環境対策に貢献するものである。
本願発明のスペーサエキスパンダを組み込んだ3ピース組合せオイルリングは、
1.オイルスラッジ堆積量に於いては、組合せ厚さが大きい(スペーサエキスパンダのオイル通過溝断面積が大きい)比較例2よりも若干大きいが、FASの効果により他の比較例に比べ少ない結果である。
2.エンジンオイル消費量は、張力の高い従来仕様である比較例23についで少なく良好である。
3.エンジン摩擦力に於いては従来仕様の張力の高い比較例2以外の他のものとほぼ同様である。
以上のように、本願発明のスペーサエキスパンダを使用した3ピース組合せオイルリングは、オイル消費やオイルスラッジ堆積量が少なく、且つ、摩擦力が少ないという優れた効果を有しており、今後、ガソリンエンジンの環境対策に貢献するものである。
10 ピストン
231 サイドレール
232 スペーサエキスパンダ
50 耳部
50a 窒化層
50b ニッケルめっき層
231 サイドレール
232 スペーサエキスパンダ
50 耳部
50a 窒化層
50b ニッケルめっき層
Claims (3)
- スペーサエキスパンダとスペーサエキスパンダに支持される一対のサイドレールからなる幅h1が1〜3mmである3ピース組合せオイルリングであって、前記スペーサエキスパンダは平板状金属によりピストン軸方向波形に形成されて周方向に延伸しており、内周部には母材の剪断によりピストン軸方向に突出して形成されサイドレールを半径方向外側に押圧する押圧片を有し、前記押圧片の剪断面には窒化層が形成され、前記窒化された剪断面以外の面はNiめっき皮膜で覆われており、少なくとも前記スペーサエキスパンダの前記サイドレールに対向する面の最表面及び/又は前記サイドレールの前記スペーサエキスパンダと対向する面にはフッ素系有機物のみからなる薄膜が形成されていることを特徴とする3ピース組合せオイルリング。
- 組合せ張力が5〜15Nであることを特徴とする請求項1記載の3ピース組合せオイルリング。
- 請求項1記載の3ピース組合せオイルリングにおいて、前記フッ素系有機薄膜はCF3基及び/又はCF2基を含むことを特徴とする3ピース組合せオイルリング。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005123381A JP2006300224A (ja) | 2005-04-21 | 2005-04-21 | 3ピース組合せオイルリング |
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-
2005
- 2005-04-21 JP JP2005123381A patent/JP2006300224A/ja active Pending
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US10352446B2 (en) | 2015-01-09 | 2019-07-16 | Kabushiki Kaisha Riken | Combined oil control ring |
WO2016111162A1 (ja) * | 2015-01-09 | 2016-07-14 | 株式会社リケン | 組合せオイルコントロールリング |
JP2016128700A (ja) * | 2015-01-09 | 2016-07-14 | 株式会社リケン | 組合せオイルコントロールリング |
US10508738B2 (en) * | 2015-02-23 | 2019-12-17 | Kabushiki Kaisha Riken | Side rail |
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090521 |