JP2006232921A

JP2006232921A - グリース組成物および軸受

Info

Publication number: JP2006232921A
Application number: JP2005047335A
Authority: JP
Inventors: Yuji Onuki; 裕次大貫; Toshiaki Endo; 敏明遠藤
Original assignee: Kyodo Yushi Co Ltd
Current assignee: Kyodo Yushi Co Ltd
Priority date: 2005-02-23
Filing date: 2005-02-23
Publication date: 2006-09-07
Anticipated expiration: 2025-02-23
Also published as: EP1878785B1; WO2006090779A1; JP4883920B2; EP1878785A1; EP1878785A4

Abstract

【課題】転がり軸受に封入した場合に、高温下においても、充分満足出来る長寿命を得ることが出来るグリース組成物；およびこれを封入した軸受を提供すること。
【解決手段】
基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも１０質量％のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物；およびこれを封入した軸受。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物に関し、さらに詳細には、転がり軸受用として好適なグリース組成物およびこれを封入した軸受に関する。

高温で使用される軸受としては、例えば、自動車産業では特に潤滑箇所が発熱体であるエンジンに直結あるいは近傍に位置している電装品等の転がり軸受、電機産業ではクリーナモータなど高速・高温回転で使用される家庭電化製品等の転がり軸受、製鉄産業では連続鋳造設備等の高温で潤滑される転がり軸受、製紙産業では、コルゲータマシン等の転がり軸受、事務機器ではコピーマシンのヒートローラ用転がり軸受等がある。
これらの軸受に封入、使用されるグリース組成物としては、種々の高温用転がり軸受用グリースが使用されている。例えば、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、アイドラプーリ、中間プーリ、電動ファンモータ、流体継手、水ポンプ、ディストリビュータ、スタータワンウエイクラッチなどの自動車電装品に使用される高温用転がり軸受用グリースとしては、耐熱性に優れたジウレア化合物を増ちょう剤とし、合成潤滑油を基油としたグリースが使用されてきた（例えば、特許文献１）。しかし、最近では特に使用温度が高くなる傾向にあり、軸受温度が２００℃前後で使用される場合がある。このような場合、ジウレア化合物を増ちょう剤とし、合成潤滑油を基油とした従来のグリースでは、早期に軸受の焼付きを起こし、満足する性能が得られない。
また、他の高温用転がり軸受用グリースとしては、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレンを使用し、基油にパーフルオロポリエーテル油を使用したいわゆるフッ素グリースが使用されてきた（例えば、特許文献２）。しかしながら、このフッ素グリースも高温下においては、充分満足出来る寿命を得ることは困難である。

また、上記自動車電装品は、エンジンルームの下部に取り付けられることが多いことから、走行中、雨水などがかかりやすく、これらの部品に使用される転がり軸受に封入されるグリースには、優れた錆止め性能が要求される。グリースに錆止め性能を付与するには、錆止め剤を添加することが一般的である。高温用転がり軸受用フッ素グリースの錆止め剤の成分としては無機不働態化剤が使用されることが多く、とりわけ亜硝酸ナトリウムが最も効果的な錆止め剤として使用されている。しかしながら、亜硝酸ナトリウムは第二級アミンと酸性条件下で反応してＮ−ニトロソアミンを生成することが知られている。ニトロソアミンは環境負荷物質であることから亜硝酸ナトリウムに代わりうる錆止め剤が求められている。

特許第２７６４７２４号特許第３５７２９８７号

本発明の目的は、新規なグリース組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、転がり軸受に封入した場合に、高温下においても、充分満足出来る寿命を得ることが出来るグリース組成物を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、上記グリース組成物を封入した軸受、特に、転がり軸受を提供することである。

本発明は以下のグリース組成物を提供するものである。
１．基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも１０質量％のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物。
２．増ちょう剤として、さらにポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラック、およびアエロジルからなる群から選ばれる少なくとも１種を含有する上記１記載のグリース組成物。
３．メラミンシアヌレートの含有量が、グリース組成物の全質量に対して１０〜３０重量％である上記１または２記載のグリース組成物。
４．さらに錆止め剤を含有する上記１〜３のいずれか１項記載のグリース組成物。
５．錆止め剤がセバシン酸ナトリウムである上記４記載のグリース組成物。
６．転がり軸受用である上記１〜５のいずれか１項記載のグリース組成物。
７．上記１〜６のいずれか１項記載のグリース組成物を封入した転がり軸受。

本発明のグリース組成物は、基油にパーフルオロポリエーテル油を用いたいわゆるフッ素グリースにおいて、増ちょう剤としてメラミンシアヌレートを使用しているため、高温下での苛酷な潤滑条件下で使用される軸受に封入して使用した場合、軸受寿命を顕著に延長することが可能である。また、錆止め剤を含有する場合には、自動車電装品用軸受等に封入された場合にも軸受寿命を顕著に延長することが可能であり、特に、錆止め剤としてセバシン酸ナトリウムを使用すると人体や環境に悪影響を及ぼすことがなく、長寿命かつ優れた防錆性を発揮する。

本発明に使用される基油は、パーフルオロポリエーテル油を必須成分として含有する。本発明に使用されるパーフルオロポリエーテル油の具体例としては、下記の式で表されるものが挙げられる。
（ＣＦ₂ＣＦ₂ＣＦ₂Ｏ）ｎ（１）
平均分子量：１９００〜８４００
（ＣＦ₂ＣＦ₂Ｏ）ｍ（ＣＦ₂Ｏ）ｎ（２）
平均分子量：４０００〜１３０００
（ＣＦ（ＣＦ₃）ＣＦ₂Ｏ）ｍ（ＣＦ₂Ｏ）ｎ（３）
平均分子量：１５００〜７２５０
（ＣＦ（ＣＦ₃）ＣＦ₂Ｏ）ｎ（４）
平均分子量：１８５０〜８２５０
基油中のパーフルオロポリエーテル油の含有量は、好ましくは８０質量％以上、さらに好ましくは９０質量％以上、最も好ましくは１００質量％である。基油中のパーフルオロポリエーテル油の含有量が８０質量％未満では、基油の耐熱性が劣り、早期に軸受の焼付きを起こし、満足する性能が得られない傾向がある。
本発明に使用される基油は、パーフルオロポリエーテル油以外の基油を含むことができる。併用可能な基油としては、鉱油、ジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリ−α−オレフィン、ポリブテンに代表される合成炭化水素油、アルキルジフェニルエーテル、ポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油など各種合成油が挙げられる。

本発明に使用されるメラミンシアヌレートは、メラミンとイソシアヌル酸のほぼ１：１の有機付加体で、外観は白色の粉末であり、通常は１次粒子径０．５〜５μｍの結晶性の高い物質として市販されている。メラミンシアヌレートは、耐熱性が高く、３００℃でも長期間安定である。メラミンシアヌレートは、金属材料の滑り部において、耐荷重性が優れ、摩耗防止効果があり、また、同様に樹脂などの軟らかい材料に対しても摩擦や摩耗を促進することなく、優れた潤滑効果を示す。
従来、鉄鋼、造船、セメント等の重厚長大産業において使用される潤滑剤において、高温、低速、高荷重という要求を満たすために、二硫化モリブデンやグラファイトが主として使用されていた。しかし、作業環境汚染や製品汚染を防止するという観点から、白色製品の要求が強くなり、メラミンシアヌレートは、二硫化モリブデンやグラファイトに代替し得る固体潤滑剤として広く使用されている。メラミンシアヌレートの固体潤滑剤としての使用形態としては、グリース、ペースト、ドライフィルム等が多い。
このように、メラミンシアヌレートは、グリースにおいて、金属材料等の滑り部の耐荷重性向上を目的に、添加剤として使用されてきたため、そのグリース中の含有量は通常１〜３質量％程度であり、多くとも５質量％以下であった。
また、これまでに、メラミンシアヌレートをグリースの増ちょう剤として用いることについては全く知られておらず、従って、メラミンシアヌレートを増ちょう剤として用いたグリースが、高温で使用される転がり軸受の寿命を大幅に延長するということを示唆する報告や開示は皆無である。

本発明はメラミンシアヌレートを増ちょう剤として使用することを特徴とするものであり、本発明のグリース組成物中のメラミンシアヌレートの含有量は、少なくとも１０質量％であり、好ましくは１０〜３０質量％、さらに好ましくは１５〜３０質量％、最も好ましくは、１５〜２５質量％である。
１０質量％未満では、増ちょう能力が無く、グリースが軸受から漏洩し、軸受が短寿命となり、また３０質量％を超えると、グリースによる攪拌抵抗が大となり、発熱により寿命低下を自ら導いてしまう傾向がある。

本発明のグリース組成物の増ちょう剤は、メラミンシアヌレートを必須成分とするが、他の増ちょう剤を混合使用しても良い。このような他の増ちょう剤としては、例えば、Ｎａ、Ｃａ、Ｌｉ、Ａｌ、Ｂａなどの金属石けん系増ちょう剤、カーボンブラック、アエロジル、ベントン、テレフタラメート、ウレア、フタロシアニン、ポリテトラフルオロエチレンなどの非石けん系増ちょう剤などが挙げられる。本発明のグリース組成物に含まれる増ちょう剤の全質量に対するメラミンシアヌレートの割合は、好ましくは５０質量％以上、さらに好ましくは６０質量％以上、最も好ましくは７０〜１００質量％である。

本発明のグリース組成物は、錆止め剤を含有することが好ましい。好ましい錆止め剤としては、例えば、既知のカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン、エステル等が挙げられ、さらに好ましくは、脂肪酸、二塩基酸、ナフテン酸、ラノリン脂肪酸、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸誘導体等のカルボン酸またはカルボン酸塩が挙げられる。最も好ましくは、セバシン酸ナトリウム等の二塩基酸のカルボン酸塩である。本発明のグリース組成物中の錆止め剤の含有量は、好ましくは１質量％以上、より好ましくは２〜１０質量％、さらに好ましくは３〜１０質量％、最も好ましくは４〜１０質量％である。１質量％未満では錆止め効果が充分でなく、１０質量％を超えると、グリースによる攪拌抵抗が大となり、発熱による寿命低下を自ら導いてしまう傾向がある。
本発明のグリース組成物には、グリース組成物に通常使用される他の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属腐食防止剤、油性剤耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤などを必要に応じて添加してもよい。
本発明のグリース組成物は、種々の用途に使用できるが、特に高温に暴露される被潤滑箇所の潤滑に好適に使用される。最も好適な使用形態は、軸受であり、特に高温用転がり軸受である。
このような軸受が使用される部品の例として、例えば、自動車電装品が挙げられ、その代表例としては、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、アイドラプーリ、中間プーリ、電動ファンモータ、流体継手、水ポンプ、ディストリビュータ、スタータワンウエイクラッチなどが挙げられる。

実施例及び比較例
以下の表１及び２に示す増ちょう剤、基油、添加剤を、表１及び２に示す割合（質量部）でよく混ぜ、３本ロールミルで混練し、グリース組成物を調製した。得られたグリース組成物を以下の試験方法により評価した。結果を表１及び２に示す。
軸受潤滑寿命試験（ASTM D 3336mod.)
軸受６２０４に試験グリースを３．６ｇ充填して、両側に鋼板のシールド板をかしめ、その軸受の外輪温度を２００℃に保ち、荷重Ｆａ＝Ｆｒ＝６７Ｎの条件下、１００００ｒｐｍで内輪を連続運転させる。軸受の回転トルクが過大になり、過電流（４アンペア超）を生じるまで、または軸受温度が１５℃以上上昇するまでの時間のいずれか短い方を軸受潤滑寿命時間（単位：時間）とした。
混和ちょう度：ＪＩＳＫ２２２０７．
錆止め性：Ｅｍｃｏｒ防錆試験（ＩＰ２２０）

(*1):式（３）で表される平均分子量４１００のもの
(*2):式（２）で表される平均分子量８０００のもの
(*3):三菱化学株式会社製ＭＣＡ
(*4):ダイキン工業株式会社製ルブロンＬ−５Ｆ
(*5):豊国製油株式会社製
(*6):三菱化学株式会社製

メラミンシアヌレートを増ちょう剤とし、基油にパーフルオロポリエーテル油を用いた実施例１および２のグリース組成物は、ポリテトラフルオロエチレンを増ちょう剤とし、メラミンシアヌレートを含まない比較例１のグリース組成物と比べ高温下の軸受潤滑寿命が、はるかに長いことがわかる。また、メラミンシアヌレートの含有量が５質量％の比較例２の組成物は混和ちょう度が高くグリースとして使用できなかった。

Claims

基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも１０質量％のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物。
増ちょう剤として、さらにポリテトラフルオロエチレン、カーボンブラック、およびアエロジルからなる群から選ばれる少なくとも１種を含有する請求項１記載のグリース組成物。
メラミンシアヌレートの含有量が、グリース組成物の全質量に対して１０〜３０重量％である請求項１または２記載のグリース組成物。
さらに錆止め剤を含有する請求項１〜３のいずれか１項記載のグリース組成物。
錆止め剤がセバシン酸ナトリウムである請求項４記載のグリース組成物。
転がり軸受用である請求項１〜５のいずれか１項記載のグリース組成物。
請求項１〜６のいずれか１項記載のグリース組成物を封入した転がり軸受。