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JP2004125165A - 燃料電池システム用転がり軸受及び燃料電池システム - Google Patents

燃料電池システム用転がり軸受及び燃料電池システム Download PDF

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JP2004125165A
JP2004125165A JP2003165345A JP2003165345A JP2004125165A JP 2004125165 A JP2004125165 A JP 2004125165A JP 2003165345 A JP2003165345 A JP 2003165345A JP 2003165345 A JP2003165345 A JP 2003165345A JP 2004125165 A JP2004125165 A JP 2004125165A
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grease
grease composition
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JP2003165345A
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Inventor
Kenichi Iso
磯 賢一
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】燃料電池システムにおいて、機器間に各種流体を圧送するための圧送機に組み込まれる転がり軸受の水素を起因とした白色組織変化を伴う内部起点剥離を抑え、耐久性を向上させた燃料電池システム用転がり軸受、並びに長期にわたり安定した発電を行い得る燃料電池システムを提供する。
【解決手段】少なくとも、燃料電池スタック及び各種流体を輸送するための圧送機を具備する燃料電池システムの前記圧送機に組み込まれる転がり軸受であって、導電性物質を0.1〜10質量%の割合で含有するグリース組成物、もしくはスルフォン酸塩を実質的に含有しないグリース組成物が封入されている燃料電池システム用転がり軸受、並びに前記燃料電池システム用転がり軸受を有する圧送機を具備する燃料電池システム。
【選択図】   図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料供給源として、水素タンク、水素貯蔵合金等の水素保存手段から燃料としての水素を燃料電池スタックに供給し、発電する燃料電池システム、あるいは、メタノール水のような水素含有化合物から改質器で水素を取り出し、CO除去装置等の不純物除去装置で不純物を除去し、燃料電池スタックに水素を供給し、発電する燃料電池システムに関するものである。また、本発明は、これら燃料電池システムにおいて、各機器間に各種流体を圧送するための圧送機に使用される燃料電池システム用転がり軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、船舶、宇宙船等の動力源として燃料電池を用いることの検討が進められているが、メタノールを原料とする固体高分子電解質型燃料電池は、比較的低温(100℃以下)で発電が行われ、出力密度が高く、低温で作動し、電池構成材料の劣化が少なく、起動が容易である等の長所があることから、特に、自動車等の輸送体の動力源として有効とされている。
【0003】
固体高分子電解質型燃料電池の基本的構成は、固体高分子電解質膜の両面を、白金等の貴金属を触媒とする多孔質のカソード(酸素極)とアノード(燃料極)の両ガス拡散電極で挟んで重ね合わせてなるセルを、セパレータを介して積層して燃料電池スタックとし、各セパレータの表裏両面にガス通路を形成し、カソード側のガス通路には酸化剤ガスを給排させ、アノード側のガス通路には燃料ガスを給排させるようにし、更に、燃料電池の反応が発熱反応であることから、数セルに1つずつの冷却部が設けられた構成が一般的である。
【0004】
このような構成の固体高分子電解質型燃料電池を用いた発電装置として、例えば、図1に示す如きシステム構成のものが知られている。即ち、固体高分子電解質膜1の両面をカソード2とアノード3の両ガス拡散電極で狭持してなるセルをセパレータを介して積層して燃料電池スタックとし、更に数セルに1つずつの冷却部4を備える固体高分子電解質型燃料電池Iのアノード3入口側に、上流側より順に改質器5、熱交換器6、シフトコンバータ7、CO除去器8をそれぞれ設置し、燃料タンク9から供給されるメタノールを、メタノール蒸発器10を経て改質器5に導入させるようにメタノール供給ライン11を設け、一方、水タンク12からの水の一部を蒸気発生器13で水蒸気にして送る水蒸気ライン14をメタノール供給ライン11に接続してメタノールと水蒸気とを改質器5に導入して水蒸気改質を行わせるようにすると共に、水の他の一部を、冷却用として熱交換器6とCO除去器8を通過させるようにし、改質器5で改質された燃料ガスFGを、熱交換器6で水タンク12からの冷却水により冷却した後、200℃で運転されるシフトコンバータ7でシフト反応を行って、固体高分子電解質型燃料電池Iの触媒毒となる一酸化炭素(CO)の濃度をCO除去器8が処理可能な濃度(1%以下)に低減するようにする。また、100〜150℃程度で運転されるCO除去器8でCO除去処理された燃料ガスFGが加湿器15を経て固体高分子電解質型燃料電池Iのアノード3へ供給するようにしてある。
【0005】
一方、固体高分子電解質型燃料電池Iのカソード2の入口側には、酸化剤ガスとして空気Aをターボチャージャ16のコンプレッサ17で圧縮して加湿器15を経て供給するようにすると共に、一部を分岐してCO除去器8に入れてCOの燃焼に用いるようにしてあり、また、カソード2から排出されたカソード排ガスCGの全量と、アノード3から排出されたアノード排ガスAGの一部とを燃焼器19で燃焼させた後、改質器5の燃焼室に導入し、改質器5の改質室内のメタノールを改質触媒の存在下で250℃になるように熱を吸熱して反応させて燃料ガスFGに改質するようにしてある。
【0006】
また、改質器5の燃焼室より排出された排ガスは、アノード3から排出されたアノード排ガスAGの一部とともに燃焼器20で燃焼させられた後にタービン18に導いてコンプレッサ17を駆動させるようにし、タービン18から排出された排気ガスは蒸気発生器13、メタノール蒸発器10を通して排気ガスとして排出させるようにしてある。更に、水タンク12からの冷却水の一部は、加湿器15を経て固体高分子電解質型燃料電池Iの冷却部4を通過させられるようにしてあり、冷却部4を通過させられた冷却水は、冷却器21で冷却されて水タンク12へ入れられるようにしてあり、また、カソード排ガスライン22中の気水分離器23及びアノード排ガスライン24中の気水分離器25で各々分離された水は、熱交換器6及びCO除去器8を通過した水とともに水タンク12へ戻されるようにしてある。
【0007】
また、燃料電池として水素タンク方式も知られており、例えば図2に示すようなシステム構成のものが知られている。図中、符号51は、固体高分子電解質膜を間に挟んで燃料極53と酸化剤極55とを相互に対向配置し、更にセパレータで挟持して複数積層して構成される燃料電池スタックである。また、符号57は加湿器であり、燃料ガスおよび酸化剤ガスが、それぞれ半透膜を介して純水と隣接し、水分子が半透膜を通過することにより燃料ガスおよび酸化剤ガスに対して加湿を行うものである。
【0008】
水素タンク59には水素が貯えられており、この水素は燃料調圧弁61により調圧された後、エゼクタ圧送機63、供給側水分離器65及び加湿器57を通り、燃料電池スタック51に対し燃料極53の燃料入口53aから供給される。燃料極53の燃料出口53bから排出される水素と水蒸気との混合ガスは、排出側水分離器67、流路遮断弁69を通り、エゼクタ圧送機63で原燃料ガスと混合され、この混合ガスが供給側水分離器65及び加湿器57を経て燃料電池スタック51の燃料極53に循環される。
【0009】
また、排出側水分離器67と流路遮断弁69との間の配管71には、パージ分岐部73にて、水素をパージさせるパージ配管75が分岐接続され、パージ配管75にはパージガス遮断弁77及びパージガス触媒79がそれぞれ設けられている。
【0010】
酸化剤としての空気は、圧送機81によって加湿器57を経て燃料電池スタック1の酸化剤極55に、酸化剤入口55aから供給される。酸化剤極55の酸化剤出口55bから排出される排気は、水蒸気と液水を含み、水分離器83によって液水分が分離される。水分離器83には、水素パージ時の空気供給用の空気パージ配管85及びパージガス遮断弁87が設けてあり、水素パージ時にはパージガス触媒79に空気が供給されて外部に排出される。また、空気パージ配管85には、空気排出管89が分岐接続され、空気排出管89には空気調圧弁91が設けられている。
【0011】
更に、燃料電池スタック51の発電状態はセンサ(図示せず)で検知され、検知信号を受けて発電状態に応じて、水素圧力及び空気圧力を燃料調圧弁51及び空気調圧弁91で調整するようフィードバック制御するとともに、空気流量をコンプレッサ81の回転数により調整するようフィードバック制御する構成となっている。
【0012】
また、上記したような燃料電池システムでは、蒸気となった燃料、燃料ガス、高温の燃料あるいは圧縮空気を各機器間に送り込む必要があり、圧送ポンプやターボチャージャなど各種の圧送機が使用され、その圧送機には多くの場合軸受が組み込まれている。
【0013】
例えば、図3はこのような圧送機の一例(インペラ式圧送機)を示す断面図であるが、図示されるように、回転軸31にインペラ32が取り付けられており、この回転軸31が転がり軸受33a、33bで支持されている。そして、回転軸31の高速回転に伴ってインペラ32が高速回転すると、水蒸気吸込み口34から吸込まれた水蒸気がインペラ32の遠心力で加圧され、ハウジング35とバックプレート36とで形成された加圧ボリュート37を通って水蒸気吐出口38から圧送される。また、この圧送機では、シーリング部材39のシール性が低下してくると、水蒸気がインペラ32の背面の背面空間40から回転軸31とシーリング部材39との間隙41を通って転がり軸受33a、33bに達するため、これを防ぐためのバッフル42とブッシュ43とが回転軸31に付設されている。
【0014】
転がり軸受33a、33bとして、例えば図4に示すような玉軸受が使用されている。図示される玉軸受は、内輪250と外輪251との間に保持器252を介して複数の転動体である玉253を略等間隔で回転自在に保持してなり、更に内輪250、外輪251及び玉253で形成される空所Sに潤滑のためのグリース(図示せず)を所定量充填し、シール254で封止して構成されている。また、グリースとして、従来ではリチウム石鹸−鉱油系グリースが一般的に使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】
特公平3−26717号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特に改質器5で改質された燃料ガスを燃料電池スタックに圧送する圧送機や、蒸気発生器13から改質器5に蒸気を圧送する圧送機では、高温水蒸気下で使用されることから、ポンプに組み込まれている転がり軸受33a,33bに水蒸気が侵入するおそれがある。そして、水や水蒸気が転がり軸受33a,33bの内部に侵入すると、自動車電機部品でしばしば見られる水素を起因とした白色組織剥離が軸受構成部材に発生し、ポンプ寿命やひいてはシステム全体の寿命を短くしてしまうことが考えられる。
【0016】
また、水や水蒸気による錆の発生を抑えるために、グリース組成物には防錆剤が添加されることが多い。しかし、防錆性能に優れることから多用されているスルフォン酸塩は、特許公報第287849号にも記載されているように、上記の内部起点剥離に類似した水素を起因とした白色組織剥離を起こし易い。
【0017】
水素タンク方式燃料電池システムにおいても、エゼクタ圧送機63が同様の問題を抱えている。
【0018】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムにおいて、機器間に各種流体を圧送するための圧送機に組み込まれる転がり軸受の水素を起因とした白色組織変化を伴う内部起点剥離を抑え、耐久性を向上させた燃料電池システム用転がり軸受、並びに長期にわたり安定した発電を行い得る燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、導電性物質を含有するグリース組成物、もしくはスルフォン酸塩を実質的に含有しないグリース組成物を封入することにより、水素を起因とした白色組織剥離を効果的に抑制できることを知見した。
【0020】
即ち、上記の目的を達成するために本発明は、少なくとも、燃料電池スタック及び各種流体を輸送するための圧送機を具備する燃料電池システムの前記圧送機に組み込まれる転がり軸受であって、導電性物質を0.1〜10質量%の割合で含有するグリース組成物、もしくはスルフォン酸塩を実質的に含有しないグリース組成物が封入されていることを特徴とする燃料電池システム用転がり軸受、並びに前記燃料電池システム用転がり軸受を有する圧送機を具備することを特徴とする燃料電池システムを提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明において燃料電池システム自体の構成は制限されるものではなく、図1に示したような固体高分子電解質型燃料電池システム並びに図2に示したような水素タンク方式燃料電池システムを例示することができる。
【0023】
また、圧送機についても制限はなく、図3に示したようなインペラ式圧送機の他にも、例えば以下に示すスクロール式、斜板式、スクリュー式等の圧送機を使用できる。
【0024】
図5はスクロール式圧送機の一例を示す側面断面図である。図示されるスクロール式圧送機100は、固定スクロール111と旋回スクロール112とからなる圧縮機構部110と、モータ主軸122に対して偏心して設けられたクランクピン122aにより旋回スクロール112を旋回させるクランク機構部130と、モータ主軸122を回転させる駆動モータ部120とからなる。
【0025】
クランク機構部130は、旋回スクロール112の自転を防止する自転防止機構132が配設されている。自転防止機構132には、図5に示すボールカップリング134の他にもオルダムカップリングやピン&リングカップリング等がある。また、自転防止機構132としては、特開2002−70762号公報に開示されているような転がり軸受を用いたクランク機構が知られているが、上記何れの自転防止機構を採用しても構わない。
【0026】
固定スクロール111は、円盤状に形成された固定基盤111aと、この固定基盤111aから立設した渦巻状の旋回渦巻部111cと、この旋回渦巻部111cを覆う外周壁111bとからなる。旋回スクロール112は、円盤状の旋回基盤112bと、この旋回基盤112bから立設した渦巻状の旋回渦巻部112aとからなる。旋回基盤112bのリア側中央には有底円筒状の凹状部112cが設けられている。固定基盤111aにおける図5中上下方向略中央には、固定スクロール111及び旋回スクロール112間で圧縮された空気等の吐出口114が設けられている。
【0027】
凹状部112cをハウジングとして針状ころ軸受133が凹状部112cの内周側に挿入されている。この針状ころ軸受133は、モータ主軸122のクランクピン122aを回転軸として、旋回スクロール112を回転自在に支えている。
【0028】
駆動モータ部120において、駆動モータ121は、モータ主軸122に嵌め合わされたロータ123と、ロータ123の外周側に設けられてコイル124を巻回されたステータ125とを、モータハウジング101内に備える。
【0029】
モータ主軸122は、モータハウジング101に転がり軸受102を介して回転自在に支持されるとともに、リア側(図5中右側)の端部を転がり軸受103を介してリアハウジング104に回転自在に支持されている。また、モータ主軸122は、転がり軸受102よりクランクピン122a側において、モータハウジング101との間にシール106が介在されるとともに、リア側(図5中右端部側)において、リアハウジング104との間にシール107が介在されている。更に、モータ主軸122には、バランスウェイト122bが設けられており、バランスウェイト122bによって、旋回スクロール112の旋回時に生じる慣性モーメントを打ち消され、振動低減が図られている。
【0030】
上記の如く概略構成されるスクロール式圧送機100では、駆動モータ121に電力が供給されると、モータ主軸122が回転し、その回転が駆動クランク機構130を介して旋回スクロール112に伝達される。旋回スクロール112は、モータ主軸122の回転に伴って、固定スクロール111と噛み合いつつ旋回し、図示しない吸入口から固定スクロール111との間に空気等を吸入するとともに、固定スクロール111との間で圧縮させる。その後、圧縮された空気等を吐出口114から燃料電池の電極側に吐出させる。
【0031】
また、スクロール式圧送機として図6に示す構成のものも知られている。図示されるスクロール式圧送機140において、クランク機構部150は、旋回スクロール112に旋回運動を行わせる駆動クランク機構151、及び旋回スクロール112の自転を防止する従動クランク機構152で構成されている。
【0032】
従動クランク機構152は、旋回スクロール112に設けられた凹状保持部112cと、従動クランク軸153のクランクピン153a及びクランクピン153aを旋回スクロール112に対して回転自在とする転がり軸受154とからなる。従動クランク軸153は、クランクピン153aとは反対側を転がり軸受155を介してモータハウジング101に回転自在に支持されている。
【0033】
また、従動クランク軸153には、モータ主軸122と同様にバランスウェイト153bが設けられており、バランスウェイト153bによって、旋回スクロール112の旋回時に生じる慣性モーメントを打ち消され、振動の低減が図られている。その他の構成及び作用については、図5に示したスクロール式圧送機100と同様であり、同一の部位には同一の符号を付してある。
【0034】
図7は斜板式圧送機の一例を示す側面断面図である。図示される斜板式圧送機160は、燃料電池の電極に送る空気等の流体を、斜板171の回転に伴う両頭ピストン172の往復動で圧縮する圧縮機構部170と、駆動モータ181のモータ主軸182の回転により圧縮機構部170を駆動する駆動モータ部180とを備える。
【0035】
圧縮機構部170において、両頭ピストン172は、シリンダブロック161のクランク室163内にモータ主軸182の軸方向に沿って往復動可能に設けられており、斜板171にシュー173を介して連結されている。また斜板171は、モータ主軸182の外周面に、モータ主軸182と一体回転可能に挿着されており、シリンダブロック161内に設けられた支持部材162に、スラスト軸受174を介して回転自在に支持されている。
【0036】
駆動モータ部180において、駆動モータ181は、モータ主軸182に嵌入されたロータ183と、ロータ183の外周側に設けられ、コイル184を巻回されたステータ185とを、モータハウジング186内に備えてなる。
【0037】
モータ主軸182は、軸方向略中央より図7中左側を、図7中左右一対の転がり軸受187を介してモータハウジング186に回転自在に支持されるとともに、軸方向略中央より図7中右側を、図7中左右一対の転がり軸受175を介して支持部材162に回転自在に支持されている。
【0038】
上記の如く構成される斜板式圧送機160では、駆動モータ181に電力が供給されると、モータ主軸182が回転し、その回転が斜板171及びシュー173を介して両頭ピストン172に伝達される。両頭ピストン172は、モータ主軸182の回転に伴ってクランク室163内で軸方向に沿って往復動することにより、空気等を吸入・圧縮させ、燃料電池の電極側に吐出させる。
【0039】
図8はスクリュー式圧送機の一例を示す側面断面図である。図示されるスクリュー式圧送機190は、燃料電池の電極に送る空気等の流体を、主ロータ201と副ロータ202とを噛み合わせて回転させることで圧縮する圧縮機構部200と、駆動モータ181のモータ主軸182の回転により圧縮機構部200を駆動する駆動モータ部180とを備える。なお、駆動モータ部180については、図6に示した斜板式圧送機160と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
圧縮機構部200において、主ロータ201及び副ロータ202はそれぞれ、対応する螺旋状に形成されて互いに噛み合わせることで協働して回転可能な構成である。主ロータ201は、図8中左側の回転軸201aを図8中左右一対の転がり軸受203を介してハウジング207に回転自在に支持されるとともに、図7中右側の回転軸201aを転がり軸受204を介してハウジングに回転自在に支持されている。また、副ロータ202は、図8中左側の回転軸202aを図8中左右一対の転がり軸受205を介してハウジング207に回転自在に支持されるとともに、図8中右側の回転軸202aを転がり軸受206を介してハウジング207に回転自在に支持されている。
【0041】
また、主ロータ201の図8中左右両側の回転軸201aにおいて、転がり軸受203,204に対して軸方向内側には、ハウジング207との間にシール208が介在されている。副ロータ202の図7中左右両側の回転軸202aにおいて、転がり軸受205,206より軸方向内側には、ハウジング207との間にシール209が介在されている。
【0042】
主ロータ201及び副ロータ202は、図8中左側の回転軸201a,202aにそれぞれ設けられた連結ギア210を介して連動される。主ロータ201の図7中左側の回転軸201aの左端部には、被駆動ギア211が設けられており、被駆動ギア211は、駆動モータ181のモータ主軸182に嵌合された駆動軸188の駆動ギア189に噛合されている。従って、主ロータ201は、モータ主軸182の回転を、駆動軸188、駆動ギア189及び被駆動ギア211を介して伝達される。主ロータ201の回転は、連結ギア210を介して副ロータ202に伝達される。
【0043】
また、駆動軸188は、図8中左右一対の転がり軸受212を介してハウジング213に回転自在に支持されている。駆動軸188とハウジング213との間には、シール214が介在されている。
【0044】
上記の如く構成されるスクリュー式圧送機190では、駆動モータ181に電力が供給されると、モータ主軸182が回転し、その回転が駆動軸188、駆動ギア189、被駆動ギア211を介して主ロータ201の回転軸201aに伝達される。同時に、主ロータ201の回転軸201aから連結ギア210を介して副ロータ202の回転軸202aに伝達される。主ロータ201及び副ロータ202は、噛み合い回転することにより、空気等を吸入・圧縮させ、燃料電池の電極側に吐出させる。
【0045】
本発明では、上記した各圧送機の転がり軸受に、後述される第1のグリース組成物または第2のグリース組成物が封入される。尚、グリース組成物の封入量は、従来と同様に軸受空間容積の5〜50容積%の範囲で使用条件に応じて選定する。
【0046】
(1)第1のグリース組成物
第1のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、導電性物質とを含有することを特徴とする。以下に、それぞれについて詳述する。
【0047】
〔基油〕
基油は特に限定されず、通常潤滑油の基油として使用されている油は全て使用することができる。好ましくは、低温流動性不足による低温起動時の異音発生や、高温で油膜が形成され難いために起こる焼付きを避けるために、40℃における動粘度が、好ましくは30〜600mm/sec、より好ましくは50〜500mm/sec、更に好ましくは70〜250mm/secである基油が望ましい。
【0048】
具体例としては、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑油等が挙げられる。前記鉱油系潤滑油としては、鉱油を減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。前記合成油系潤滑基油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油等が挙げられる。前記炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ−α−オレフィンまたはこれらの水素化物等が挙げられる。前記芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン等が挙げられる。前記エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチル・アセチルシノレート等のジエステル油、あるいはトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル油、さらにはトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル油、さらにはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油等が挙げられる。前記エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル油等が挙げられる。その他の合成潤滑基油としてはトリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロポリエーテル(PFPE)等が挙げられる。前記天然油系潤滑基油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂系油またはこれらの水素化物が挙げられる。これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した好ましい動粘度に調整される。
【0049】
〔増ちょう剤〕
ゲル構造を形成し、基油をゲル構造中に保持する能力があれば、特に制約はない。例えば、Li、Na等からなる金属石けん、Li、Na、Ba、Ca等から選択される複合金属石けん等の金属石けん類、ベントン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等の非石けん類を適宜選択して使用できるが、グリース組成物の耐熱性を考慮するとウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物または、これらの混合物が好ましい。このウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物としては、具体的にはジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物が挙げられ、これらの中でもジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物がより好ましい。耐熱性、音響性を考慮すると、さらに好ましくは、ジウレア化合物を配合することが望ましい。更に高温安定性を良好にするには、下記一般式(1)〜(3)で表させるジウレア化合物とする。
【0050】
【化1】
Figure 2004125165
【0051】
式中、Rは炭素数7〜12の芳香族環含有炭化水素基を示し、Rは炭素数6〜15の2価の芳香族環含有炭化水素基を示し、Rはシクロヘキシル基または炭素数7〜12のアルキルシクロヘキシル基を示す。特に、一般式(1)〜(3)で表されるジウレア化合物中の[Rのモル数/(Rのモル数+Rのモル数)]値が0〜0.55であるジウレア化合物が好ましい。
【0052】
尚、基油としてパーフルオロポリエーテル(PFPE)等のフッ素油を用いる場合は、増ちょう剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を配合することが望ましい。
【0053】
(含有量)
増ちょう剤のグリース組成物における含有量は、上記の基油とともにゲル構造を維持できる量であれば、特に制限されるものではない。但し、後述する導電性物質として好適なカーボンブラックはそれ自身増ちょう剤として機能するため、導電性物質としてカーボンブラックを選択した場合は、このカーボンブラックと増ちょう剤との合計量でグリース組成物全量に対して5〜40質量%、好ましくは8〜30質量%の範囲とする。尚、この場合も、カーボンブラックの添加量は、後述される導電性物質としての好適な範囲とする。
【0054】
[導電性物質]
導電性物質は、導電性が良好な物質であれば特に制限されるものではなく、また液体であっても固体であっても良い。中でも、取り扱いや入手のし易さ、潤滑性を低下させない等の理由からカーボンブラックを用いることが好ましい。また、このカーボンブラックは、グリース組成物中での分散性や音響特性等を考慮すると、平均粒径で10〜300nm程度のものを選択することが好ましい。
【0055】
また、導電性物質として、カーボンナノチューブも好適に使用することができる。このカーボンナノチューブは、図9に模式的に示されるように、主に炭素六員環の網目状構造が丸まって、両末端が閉口したチューブ状を呈する炭素多面体である。尚、異径のチューブ接合部や末端の閉口部においては、炭素5員環や炭素7員環となっている場合もある。また、カーボンナノチューブ類として球状構造を採るものがあり、例えばC60、C70はフラーレンとして知られているが、本発明においてはこのフラーレンも使用できる。これらカーボンナノチューブは、直径が0.5〜15nmで、長さ0.5〜50μmのものが特に好ましい。
【0056】
(濃度)
導電性物質の添加量の好ましい添加量は、グリース組成物全量に対して0.1〜10質量%である。添加量が0.1質量%より少ないと、十分な導電性が付与されずに白色組織変化に伴う内部起点剥離が起こりやすくなり、10質量%より多く含有するとグリースが硬化し、焼付き寿命が低下するおそれがあるため好ましくない。導電性を確かにして前記剥離を起こさず、焼付き寿命も向上させるには、導電性物質をグリース組成物全量に対して0.5〜5質量%添加することが望ましい。また、導電性物質添加後のグリースちょう度が、NLGI No.1〜3であることが、より望ましい。
【0057】
[その他の添加剤]
潤滑性能をより一層高めるために、必要に応じて酸化防止剤、極圧剤、油性剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等種々の添加剤を単独で、もしくは適宜組み合わせてグリース組成物に添加することができる。これらは何れも公知のもので構わず、また添加量も特に制限されるものではないが、通常は合計でグリース組成物全量の20質量%以下となるように添加される。
【0058】
[製法]
上記グリース組成物を調製する方法には特に制約はない。しかし、一般的には基油中で増ちょう剤を反応させて得られる。導電性物質は、得られたグリース組成物に所定量を配合することが好ましい。但し、ニーダやロールミル等で導電性物質を添加した後に十分攪拌し、均一分散させる必要がある。この処理を行うときは、加熱するものも有効である。尚、上記製法において、酸化防止剤、防錆剤等のその他の添加剤は、導電性物質と同時に添加することが工程上好ましい。
【0059】
(2)第2のグリース組成物
第2のグリース組成物は、水素脆性剥離の発生源となるスルフォン酸塩を実質的に含有しないことを特徴とする。尚、スルフォン酸塩はエプトン法で検出できることが知られており、本発明においてもこのエプトン法によりスルフォン酸塩の有無を確認する。
【0060】
[基油及び増ちょう剤]
基油及び増ちょう剤として、第1のグリース組成物に使用される基油及び増ちょう剤を使用できる。但し、基油の40℃における動粘度は、好ましくは50〜600mm/sec、より好ましくは70〜500mm/sec、更に好ましくは100〜450mm/secである。また、増ちょう剤の含有量は、グリース全量中10〜35質量%とすることが好ましい。
【0061】
[添加剤]
添加剤として、下記に示すナフテン酸塩やコハク酸誘導体を添加することが好ましい。
(ナフテン酸塩)
ナフテン核を有する飽和カルボン酸塩であればよく、特に制約はない。主に、飽和単環カルボン酸塩C2n−1COOM、飽和複環カルボン酸塩C2n−3COOM、脂肪族カルボン酸塩C2n+1COOM、及びこれらの誘導体が挙げられる。例えば、単環のカルボン酸塩では、以下を挙げることができる。
【0062】
【化2】
Figure 2004125165
【0063】
上式中、Rは炭化水素基を示しており、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、Mは金属元素を示しており、Co,Mn,Zn,Al,Ca,Ba,Li,Mg,Cu等である。これらのナフテン酸塩は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0064】
(コハク酸誘導体)
コハク酸誘導体としては、具体的にそれぞれ以下の化合物を挙げることができる。例えば、コハク酸、アルキルコハク酸、アルキルコハク酸ハーフエステル、アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、コハク酸イミド等を挙げることができる。これらのコハク酸誘導体は、単独でも適宜組み合わせて使用してもよい。
【0065】
上記のナフテン酸塩及びコハク酸誘導体は、それぞれ単独でもよいし、併用してもよい。単独使用及び併用の場合とも、その好ましい添加量は、グリース組成物全量に対して0.1〜10質量%である。添加量がこれより少ないと、十分な防錆性を有することができず、これより多く含有するとグリースが軟化し、グリース漏れを発生させる恐れがあるため好ましくない。防錆性を確かにし、グリース漏れによる焼付き寿命を考慮するなら、グリース組成物全量に対して0.25〜5質量%とすることが望ましい。
【0066】
更に耐剥離性能を向上させるために、下記に示す有機金属塩を添加することがより望ましい。
【0067】
(有機金属塩)
有機金属塩として、下記一般式(4)で示されるジアルキルジチオカルバミン酸(DTC)系化合物や、下記一般式(5)で示されるジアルキルジチオリン酸(DTP)系化合物を好適に使用することができる。
【0068】
【化3】
Figure 2004125165
【0069】
式中、Mは金属種を示し、具体的には、Sb,Bi,Sn,Ni,Te,Se,Fe,Cu,Mo,Znが使用される。R、Rは、同一基であっても、異なる基であってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、または、アリールアルキル基を示す。特に好ましい基としては、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、1,1,3,3−テトラメチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルウンデカン基、1−メチルヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−ヘプチル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−ブチル基、イソブチル基、イソプロピル基、イソヘプチル基,イソペンチル基、ウンデシル基、エイコシル基、エチル基、オクタデシル基、オクチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロペンチル基、ジメチルシクロヘキシル基、デシル基、テトラデシル基、ドコシル基、ドデシル基、トリデシル基、トリメチルシクロヘキシル基、ノニル基、プロピル基、ヘキサデシル基、ヘキシル基、ヘニコシル基、ヘプタデシル基、ヘプチル基、ペンタデシル基、ペンチル基、メチル基、第三ブチルシクロヘキシル基、第三ブチル基、2−ヘキセニル基、2−メタリル基、アリル基、ウンデセニル基、オレイル基、デセニル基、ビニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプタデセニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、第三ブチルフェニル基、第二ペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、第三オクチルフェニル基、イソノニルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、フェニル基、ベンジル基、1−フェニルメチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、1,1−ジメチルベンジル基、2−フェニルイソプロピル基、3−フェニルヘキシル基、ベンズヒドリル基、ビフェニル基等があり、またこれらの基はエーテル結合を有しても良い。
【0070】
また、その他の有機金属塩として、下記一般式(6)〜(8)で示される有機亜鉛化合物も使用することができる。
【0071】
【化4】
Figure 2004125165
【0072】
式中、R、Rは、炭素数Cがn=1〜18の炭化水素基または水素原子を示し、R、Rは同一の基であっても異なる基であってもよい。特に、R、Rが共に水素原子であるメチルカプトベンゾチアゾール亜鉛(一般式(6))、ベンゾアミドチオフェノール亜鉛(一般式(7))、及びメルカプトペンゾイミダゾール亜鉛(一般式(8))を好適に使用することができる。
【0073】
更に、その他の有機金属塩として、下記一般式(9)で示されるアルキルキサントゲン酸亜鉛も使用することができる。
【0074】
【化5】
Figure 2004125165
【0075】
式中、Rは、炭素数Cがn=1〜18の炭化水素基を示す。
【0076】
尚、上記の一般式(4)〜(9)で表される有機金属塩は、各々単独で、または2種以上混合して使用することができるが、組合せについては特に限定されるものではない。また、有機金属塩は微小隙間に反応膜を形成して白色組織変化剥離を抑制する作用効果を有するが、添加量0.1質量%未満では十分な効果を発揮することができない。一方、添加量の上限は特に限定する必要は無いとも考えられるが、上述した有機金属塩は比較的高価であり、また過剰な添加は軸受材料との反応を異常に促進して、逆に焼付き性能を阻害するため、添加量を0.1〜10質量%にすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜10質量%である。
【0077】
また、上記したナフテン酸塩、コハク酸塩または有機金属塩は、第1のグリース組成物においてその他の添加剤として例示された添加剤と適宜併用することもできる。
【0078】
[製法]
グリース組成物の調製方法は、第1のグリース組成物の調製方法に準ずることができ、基油中で増ちょう剤を反応させ、得られたグリース組成物に上記した添加剤を所定量配合し、必要に応じて加熱しながら、ニーダやロールミル等で十分攪拌して均一に分散させる。
【0079】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0080】
(実施例1)
ジイソシアネートを混合した基油(エーテル油;40℃における動粘度100mm/sec)に、アミンを混合した同一種の基油を反応させ、攪拌加熱して得られた半固体状物に、予め同一種の基油に溶解したアミン系酸化防止剤を加えて十分攪拌した。徐冷後、前記の半固形状物に、カーボンブラック(平均粒径30nm)を、グリース全量に対して0.1〜10質量%となるように添加量を変えて加え、ロールミルを通してカーボンブラックの添加量が異なる各種試験グリースを得た。
【0081】
尚、上記において、カーボンブラックの添加量に応じて、増ちょう剤であるウレア化合物とカーボンブラックとの合計量がグリース全量に対して20質量%で一定となるように調整した。また、試験グリースのちょう度をNLGI No.1〜3に調整した。
【0082】
(比較例1、比較例2)
また、比較のために、何れもグリース全量に対して、ウレア化合物が19.95質量%で、カーボンブラックが0.05質量%(比較例1)、ウレア化合物が8質量%で、カーボンブラックが12質量%となるように、実施例1と同様の操作により試験グリースを調製した。
【0083】
上記の各試験グリースを用い、以下の試験を行った。
(急加減速試験)
内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受(図4参照)に、各試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製し、図10に示す試験装置を用いて剥離寿命を評価した。図示される試験装置において、一対の支持用軸受371,371で支持されたシャフト370の端部に試験軸受375の内輪を嵌合させ、更に外輪をホルダー372に固定し、プーリー373を介してエンジン(図示せず)からの回転を試験軸受375に伝達する。尚、符号374は外輪温度を測定するための温度計であり、符号376は外輪を加熱するためのヒータである。そして、軸受回転速度2400〜13300min−1の繰り返し、室温雰囲気下、プーリー荷重1560Nの条件で軸受を連続回転させ、500時間を目標に試験を行った。そして、試験軸受375の外輪転走面に剥離が生じて振動が発生したとき、あるいは剥離が発生しない場合には500時間経過した時点で試験を終了した。試験は各10回行い、下記式により剥離発生確率を算出した。
剥離発生確率=(剥離発生回数/試験回数)×100
【0084】
(含水焼付き試験)
内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受に試験グリースを1.0g封入して試験軸受を作製し、図11に示す試験装置を用いて焼付き寿命を評価した。図示される試験装置は、回転用シャフト360を一対の支持用軸受362,362で支持し、その中間部に試験軸受361を装着し、更に全体を所定温度に維持できるように恒温容器(図示せず)に収容する構成となっている。試験に際し、シャフト360を回転させて試験軸受361を内輪回転速度2000min−1、軸受温度120℃、ラジアル荷重98N、アキシアル荷重98Nの条件で連続回転させた。また、24時間毎に回転を止めて、注射器で0.3mlの水を軸受内部に注入した。そして、焼付きが生じて軸受外輪温度が130℃以上に上昇したとき、試験を終了した。試験は各4回行い、その平均値を焼付き寿命時間とし、軸受外輪温度が130℃まで上昇するのに要した平均時間が200時間以上を合格とした。
【0085】
図12に、上記の急加減速試験及び含水焼付き試験の結果をグラフにして示す。尚、白抜きの○及び△は、比較例1または比較例2の試験グリースによる結果を示している。図示されるように、本発明に従い導電性物質であるカーボンブラックを0.1〜10質量%の範囲で添加した試験グリースを封入することにより、剥離発生確率が低く、かつ焼付き寿命にも優れる転がり軸受が得られることがわかる。これに対してカーボンブラックの添加量が0.1質量%未満では、剥離を起こしやすくなる。また、カーボンブラックの添加量が10質量%を超える場合は、剥離が起こり難くなるもの、焼付き寿命に劣るようになる。
【0086】
(実施例2)
カーボンブラックに代えてカーボンナノチューブ(直径0.7〜2nm、全長10〜30μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ添加量が0.1〜10質量%の範囲で異なる試験グリースを調製した。尚、ウレア化合物の配合量は、何れの添加量においてもウレア化合物とカーボンナノチューブとの合計量がグリース全量に対して20質量%とした。
【0087】
そして、上記と同様の急加減速試験及び含水焼付き試験を行ったところ、カーボンブラックの場合と同様に、カーボンナノチューブを0.1〜10質量%の範囲で添加した試験グリースを封入することにより、カーボンブラックを用いた比較例1及び比較例2と比較して、剥離発生確率が低く、かつ焼付き寿命にも優れる転がり軸受が得られた。
【0088】
(実施例3〜5、比較例3〜4)
表1に示す如く、ジイソシアネートを混合した基油(エーテル油;40℃における動粘度200mm/sec、またはポリα−オレフィン油(PAO):40℃における動粘度100mm/sec)に、アミンを混合した同一種の基油を反応させ、攪拌加熱して得られた半固体状物に、予め同一種の基油に溶解したアミン系酸化防止剤を加えて十分攪拌した。徐冷後、前記の半固形状物に、スルフォン酸バリウム、ナフテン酸亜鉛、コハク酸ハーフエステルまたはジチオカルバミン酸亜鉛を、グリース全量に対して表記される割合となるように添加量を変えて加え、ロールミルを通して各種試験グリースを得た。
【0089】
【表1】
Figure 2004125165
【0090】
そして、内径φ17mm、外径φ47mm、幅14mmの接触ゴムシール付き単列深溝玉軸受に各試験グリースを2.3g封入して試験軸受を作製し、図10に示す試験装置を用いて上記と同様の急減速試験を行い、剥離寿命を評価した。尚、試験条件は軸受回転速度2400〜13300min−1の繰り返し、室温雰囲気下、プーリー荷重1560Nとし、試験軸受75の外輪転走面に剥離が生じて振動が発生するまでの時間(剥離寿命)を計測した。
【0091】
図13に、比較例3の試験軸受の寿命に対する相対値として実施例3及び実施例4の試験軸受のはくり寿命をグラフにして示すが、ナフテン酸亜鉛またはコハク酸ハーフエステルをグリース全量に対して0.1〜10質量%含有するグリース組成物を封入することにより、転がり軸受の耐剥離性が向上して長寿命になることがわかる。また、図14に、比較例3の試験軸受の寿命に対する相対値として実施例5及び比較例4の試験軸受の剥離寿命をグラフにして示すが、ジチオカルバミン酸亜鉛をグリース全量に対して0.1〜10質量%含有するグリース組成物を封入することにより、転がり軸受の耐剥離性が向上して長寿命になることがわかる。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、導電性物質を含有するグリース組成物またはスルフォン酸塩を実質的に含有しないグリース組成物を封入することにより、剥離が発生し難く、耐久性に優れた燃料電池システム用転がり軸受が得られ、更には長寿命の燃料電池システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池システムの一例(固体高分子電解質型燃料電池)の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の燃料電池システムの他の例(水素タンク方式燃料電池)の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の燃料電池システムに使用される圧送機の一例(インペラ式圧送機)を示す断面図である。
【図4】本発明の燃料電池システム用転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の燃料電池システムに使用される圧送機の他の例(スクロール式圧送機)を示す断面図である。
【図6】スクロール式圧送機の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明の燃料電池システムに使用される圧送機の他の例(斜板式圧送機)を示す断面図である。
【図8】本発明の燃料電池システムに使用される圧送機の他の例(スクリュー式圧送機)を示す断面図である。
【図9】カーボンナノチューブを示す模式図である。
【図10】急加減速試験に用いた試験装置を示す概略構成図である。
【図11】含水焼付き試験に用いた試験装置を示す概略構成図である。
【図12】実施例で得られた、カーボンブラックの添加量と焼付き寿命及び剥離発生確率との関係を示すグラフである。
【図13】実施例で得られた、ナフテン酸亜鉛またはコハク酸ハーフエステルの添加量と剥離寿命比との関係を示すグラフである。
【図14】実施例で得られた、ジチオカルバミン酸亜鉛の添加量と剥離寿命比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 固体高分子電解質膜
2 カソード
3 アノード
4 冷却部
5 改質器
6 熱交換器
7 シフトコンバータ
8 CO除去器
9 燃料タンク
10 メタノール蒸発器
11 メタノール供給ライン
12 水タンク
13 蒸気発生器
14 水蒸気ライン
15 加湿器
16 ターボチャージャ
17 コンプレッサ
18 タービン
19 燃焼器
20 燃焼器
21 冷却器
22 カソード排ガスライン
23 気水分離器
24 アノード排ガスライン
25 気水分離器
31 回転軸
32 インペラ
33a,33b 転がり軸受
34 水蒸気吸込み口
35 ハウジング
36 バックプレート
37 加圧ボリュート
38 水蒸気吐出口
39 シーリング部材
40 背面空間
41 間隙
42 バッフル
43 ブッシュ
250 内輪
251 外輪
252 保持器
253 玉
254 シール

Claims (7)

  1. 少なくとも、燃料電池スタック及び各種流体を輸送するための圧送機を具備する燃料電池システムの前記圧送機に組み込まれる転がり軸受であって、
    導電性物質を0.1〜10質量%の割合で含有するグリース組成物、もしくはスルフォン酸塩を実質的に含有しないグリース組成物が封入されていることを特徴とする燃料電池システム用転がり軸受。
  2. 前記導電性物質がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム用転がり軸受。
  3. 前記導電性物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム用転がり軸受。
  4. 前記グリース組成物全量に対する増ちょう剤量が、前記カーボンブラックを含めた合計量で5〜40質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の燃料電池システム用転がり軸受。
  5. 前記グリース組成物が、増ちょう剤をウレア化合物とし、かつナフテン酸塩及びコハク酸塩から選ばれる防錆剤の少なくとも1種をグリース全量に対して0.1〜10質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の燃料電池システム用転がり軸受。
  6. 前記グリース組成物が、増ちょう剤をウレア化合物とし、かつ有機金属塩をグリース全量に対して0.1〜10質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の燃料電池システム用転がり軸受。
  7. 少なくとも、燃料電池スタック、請求項1〜6の何れか1項に記載の燃料電池システム用転がり軸受を備える圧送機を具備することを特徴とする燃料電池システム。
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