JP2006283058A - 微細構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ビッカース硬度Hvが20以下であるアルミニウム板を陽極酸化して得られるマイクロポアが規則的に配列した微細構造体。
【選択図】なし
Description
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化アルミナ膜(陽極酸化皮膜)が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
例えば、非特許文献1には、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜が記載されている。また、非特許文献2には、陽極酸化皮膜には、酸化の進行に伴って、細孔が自然形成されることが記載されている。また、非特許文献3では、多孔質酸化皮膜をマスクとしてSi基板上にAuドットアレイを形成することも提案されている。
これらの実用化においては、規則化配列が維持された領域の大面積化が必要である。陽極酸化皮膜の規則性が維持できる周期が短いと微細構造体としての性能を発揮できないという問題がある。
本発明者は、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム構造体のドメインと呼ばれる規則性を有する一つの領域をできるだけ大きくして規則性のある大きなサイズのドメインを有する構造体を得るためには、アルミニウム板の硬度を制御すれば最終的に陽極酸化皮膜のドメインの拡大が可能であることを見出した。したがって、本発明は、大面積で低価格な、規則化部分の面積の大きな、規則的に配列した細孔を有する酸化皮膜付きアルミニウム板からなる微細構造体およびその製造方法を提供することを目的とする。
(1)ビッカース硬度Hvが20以下であるアルミニウム板を陽極酸化して得られるマイクロポアが規則的に配列した微細構造体。
(2)アルミニウム板を陽極酸化する前に、少なくとも一回以上、200℃以上で1時間以上保持する工程を行う上記(1)に記載の微細構造体。
(3)マイクロポアの規則性が、平均ドメインサイズ2μm以上である上記(1)または(2)に記載の微細構造体。
(4)アルミニウム板に、少なくとも一回以上、200℃以上で1時間以上保持する熱処理を行った後に、陽極酸化処理する微細構造体の製造方法。
<アルミニウム層>
本発明の構造体は、マイクロポアが存在する陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム層自体またはこの層を少なくとも一部に有する微細構造体である。
本発明に用いられる陽極酸化皮膜を表面に有するアルミニウム層は、アルミニウム表面を陽極酸化処理して得ることができる。
アルミニウム表面は、アルミニウム層を有する部材の表面であればいかなるものでもよく、例えば、低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板等のアルミニウム基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面にスパッタリング、蒸着、CVD、電着、化学めっき、電気めっき等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウム層を、金属や樹脂等の基板上に、接着層を介してラミネートした基板が挙げられる。全体がアルミニウム板であってもよい。
本発明の微細構造体は公知のアルミニウム材を用いてアルミニウム板とすることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
また、アルミニウム合金組成も強度に対する影響を有する。Zn、Mgを含有する7000系合金は炭素鋼に匹敵する強度を有するが、純度の高い1000系合金はその1/10程度の強度しか示さない。
本発明例においてはアルミニウム材は圧延材に限定されるものではない。溶融メッキ、蒸着などの方法で設けられたアルミニウム層に対しても適用可能である。焼きなまし処理は材料中の残留応力を開放するために硬度を低下させることが可能である。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板を陽極酸化する前に、200℃以上で1時間以上保持する熱処理工程を少なくとも一回行うと、アルミニウム層中に存在する粒界が減少し、結果としてドメインサイズの大きい陽極酸化皮膜を有する微細構造体を得ることができる。200℃で2、または3時間行うことも好ましく、250℃・1,2,3時間行うことも好ましく、300〜400℃で1,2,3時間行うことがさらに好ましい。250℃で各2時間2回行う、300℃で各2時間2回行ってもよい。熱処理により、ポア配列の規則性が高い領域が広くなると、センシング光が乱反射せずに検出器に到達するので、測定精度が高くなる。熱処理後のアルミニウム基板は、水等に直接投入する方法で冷却してもよいが、自然冷却するのが好ましい。
特に、熱処理条件を上記範囲で好適な状態で行うと、陽極酸化後の平均ドメインサイズを2μm以上とすることが容易となる。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
各種アルコール(例えば、メタノール)、各種ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム表面に接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)。
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基材の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。アルミニウム表面の凹凸をなくしてプレ陽極酸化処理時の均一性を向上させる目的で行う。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I、Alupol V、Alcoa R5、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
また、米国特許第2708655号明細書に記載されている方法が好適に挙げられる。
また、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法も好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
アルミニウム基材にマイクロポアを形成させる陽極酸化処理(以下「本陽極酸化処理」ともいう。)の前に、本陽極酸化処理のマイクロポアの生成の起点となる窪みを形成させておくのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させ、その後、脱膜処理を行う。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
0.3mol/L硫酸、10℃、25V、750分(非特許文献6)
0.3mol/Lシュウ酸、17℃、40V、600分;その後、ポアワイド処理(6重量%リン酸および1.8重量%クロム酸含有液、60℃、840分)(非特許文献7)
0.3mol/Lシュウ酸、17℃、40〜60V、36分;その後、ポアワイド処理(5重量%リン酸、30℃、70分)(非特許文献8)
0.04mol/Lシュウ酸、3℃、80V、膜厚3μm;その後、ポアワイド処理(5重量%リン酸、30℃、70分)(非特許文献8)
0.3mol/Lリン酸、0℃、195V、960分;その後、ポアワイド処理(10重量%リン酸、240分)(非特許文献1)
自己規則化陽極酸化皮膜は、アルミニウム部分に近くなるほど規則性が高くなってくるので、一度脱膜して、アルミニウム部分に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に出して、規則的な窪みを得る。したがって、脱膜処理においては、アルミニウムは溶解させず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
自己規則化陽極酸化皮膜の膜厚は、10〜50μmであるのが好ましい。
また、脱膜処理は、0.5〜10時間であるのが好ましく、2〜10時間であるのがより好ましく、4〜10時間であるのが更に好ましい。
物理的方法としては、例えば、プレスパターニングを用いる方法が挙げられる。具体的には、複数の突起を表面に有する基板をアルミニウム表面に押し付けて窪みを形成させる方法が挙げられる。例えば、特開平10−121292号公報に記載されている方法を用いることができる。
また、アルミニウム表面にポリスチレン球を稠密状態で配列させ、その上からSiO2を蒸着した後、ポリスチレン球を除去し、蒸着されたSiO2をマスクとして基板をエッチングして窪みを形成させる方法も挙げられる。
粒子線法は、アルミニウム表面に粒子線を照射して窪みを形成させる方法である。粒子線法は、窪みの位置を自由に制御することができるという利点を有する。
粒子線としては、例えば、荷電粒子ビーム、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)、電子ビームが挙げられる。
粒子線法としては、例えば、特開2001−105400号公報に記載されている方法を用いることもできる。
ブロックコポリマー法は、アルミニウム表面にブロックコポリマー層を形成させ、熱アニールによりブロックコポリマー層に海島構造を形成させた後、島部分を除去して窪みを形成させる方法である。
ブロックコポリマー法としては、例えば、特開2003−129288号公報に記載されている方法を用いることができる。
レジスト干渉露光法は、アルミニウム表面にレジストを設け、レジストに露光および現像を施して、レジストにアルミニウム表面まで貫通した窪みを形成させる方法である。
レジスト干渉露光法としては、例えば、特開2000−315785号公報に記載されている方法を用いることができる。
更には、製造コストを考慮すると、自己規則化法が最も好ましい。また、マイクロポアの配列を自由に制御することができる点では、FIB法も好ましい。
上述したように、好ましくはアルミニウム表面に窪みを形成させた後、本陽極酸化処理により、マイクロポアが存在する陽極酸化皮膜を形成させる。
本陽極酸化処理は、従来公知の条件を適用することが可能であるが、規則的配列を得るためには下記の条件であるのが好ましい。
電解液の濃度は、0.01〜1mol/Lであるのが好ましく、0.1〜0.5mol/Lであるのがより好ましい。電解液の温度は、0〜20℃であるのが好ましく、0〜18℃であるのがより好ましい。電解電圧は、所望のポア間隔やポア径に応じて適宜選択することができるが、下記式(1)または(2)により算出される電圧とするのが好ましい。
電圧[V]=(所望のポア径[nm]−12)/0.6[nm/V] (2)
更に、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成する。
上述した電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能となる。
陽極酸化皮膜の膜厚は、粒子形成処理のしやすさの点で、ポア径の0.5〜10倍であるのが好ましく、1〜8倍であるのがより好ましく、1〜5倍が更に好ましい。
したがって、例えば、前記陽極酸化皮膜の膜厚が0.1〜1μmであり、マイクロポアの平均ポア径が0.01〜0.5μmであるのは、好ましい態様の一つである。
陽極酸化皮膜を形成する酸化アルミニウムを溶出させることによってマイクロポアを拡大する処理をポアワイド処理という。本陽極酸化処理後、アルミニウム基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH2基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
本発明の構造体は、さらに封孔処理して、陽極酸化皮膜のマイクロポアが金属で封孔されていてもよい。
金属は、自由電子を有する金属結合からなる元素であり、特に限定されないが、プラズモン共鳴が確認されている金属であるのが好ましい。中でも、金、銀、銅、ニッケル、白金が、プラズモン共鳴が起こりやすいことが知られており(現代化学,2003年9月号,p.20〜27(非特許文献9))、好ましい。特に、電着やコロイド粒子の作製が容易である金、銀が好ましい。
例えば、電着法;金属コロイド粒子の分散液を、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム部材に塗布し乾燥させる方法が好適に挙げられる。金属は、単一粒子または凝集体であるのが好ましい。
電着法は、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、金電着法の場合、1g/LのHAuCl4と7g/LのH2SO4を含有する30℃の分散液に、アルミニウム部材を浸せきさせ、11Vの定電圧(スライダックで調整)で、5〜6分間電着処理する方法が挙げられる。
電着法としては、現代化学,1997年1月号,p.51−54(非特許文献10)に銅、スズおよびニッケルを用いた例が詳細に記載されており、この方法を用いることもできる。
金属コロイド粒子は、平均粒径が1〜200nmであるのが好ましく、1〜100nmであるのがより好ましく、2〜80nmであるのが更に好ましい。
分散液に用いられる分散媒としては、水が好適に用いられる。また、水と混合しうる溶剤、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールと、水との混合溶媒も用いることができる。
金コロイド粒子の分散液としては、例えば、特開平2001−89140号公報および特開平11−80647号公報に記載されているものを用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
銀コロイド粒子の分散液は、陽極酸化皮膜から溶出する酸によって影響を受けない点で、銀とパラジウムの合金の粒子を含有するのが好ましい。この場合、パラジウムの含有量は、5〜30質量%であるのが好ましい。
また、封孔処理後の表面空隙率は、20%以下であるのが好ましい。封孔処理後の表面空隙率は、アルミニウム表面の面積に対する封孔されていないマイクロポアの開口部の面積の合計の割合である。表面空隙率が上記範囲であると、より強い局在プラズモン共鳴が得られる。
上述したようにして得られる本発明の微細構造体は、陽極酸化皮膜の表面のドメインの平均サイズが大きく、規則化の程度が高い。本発明の微細構造体は、例えばバイオセンシングの分野で、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に金属を充填した構造体を用いて、ラマン分光分析用の試料台等に利用することができる。
特に、本発明の微細構造体を光透過性であることを利用する用途に用いる場合は、ポア配列の規則性が高い領域が広くなると、センシング光が乱反射せずに検出器に到達するので、測定精度が高い。また、本発明の微細構造体のマイクロポアが金で封孔されると、マイクロポアの内部に金が規則的に充填された構造体が得られるのでセンシングデバイスとして有用である。
1.構造体の作製
<アルミニウム板>
下記表1に示す組成で、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム材料を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、板幅1030mmにした後、表2に示す温度、処理時間、処理回数の熱処理を行い、その後、鏡面仕上げ処理、プレ陽極酸化処理(窪みの形成)、脱膜処理、本陽極酸化処理、を順次施して、各構造体を得た。なお、表中、「−」は該当する処理を施していないことを示す。なお、鏡面仕上げ処理等をする前のアルミニウム材料の熱処理前のビッカース硬度と、300℃、2時間熱処理後のビッカース硬度を測定して結果を表1に示す。
JISZ2251に従い、試験片(10mm四方の平板)を調製し、対面角136°のダイヤモンド四角錘の圧子を用い、200gfの試験荷重で上記記載のアルミニウム材料表面に圧痕(くぼみ)をつけ、そのくぼみの対角線サイズをSEM観察写真をもとに測定し、JISに規定された式にのっとってビッカース硬度を算出した。
研磨布を用いた研磨、バフ研磨および電解研磨をこの順に行うことにより、鏡面仕上げ処理を施した。バフ研磨後には水洗を行った。
研磨布を用いた研磨は、研磨盤(Struers Abramin、丸本工業社製)および耐水研磨布(市販品)を用い、耐水研磨布の番手を#200、#500、#800、、#1000および#1500の順に変更しつつ行った。
バフ研磨は、スラリー状研磨剤(FM No.3(平均粒径1μm)およびFM No.4(平均粒径0.3μm)、いずれもフジミインコーポレーテッド社製)を用いて行った。
電解研磨は、下記組成の電解液(温度70℃)を用いて、陽極を基板、陰極をカーボン電極とし、130mA/cm2の定電流で、2分間行った。電源としては、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
鏡面仕上げを施したアルミニウム板の表面に、下記の方法により、後述する陽極酸化処理においてマイクロポア形成の開始点となる窪みを形成させた。
0.5mol/Lシュウ酸水溶液中にアルミニウム板を16℃で浸せきさせ、電圧40V、電流密度1.4A/dm2で5時間、低電圧電解処理を施すことにより表面に自己規則化陽極酸化処理を行った。自己規則化陽極酸化処理においては、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。
ついで、陽極酸化皮膜を形成された基板を、85質量%リン酸水溶液(関東化学社製)118g、無水クロム酸(関東化学社製)30gおよび純水1500gからなる処理液(液温50℃)に12時間浸せきさせて、陽極酸化皮膜を溶解させる脱膜処理を行った。
なお、脱膜処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1μm以下であった。
窪みを形成させた基板に本陽極酸化処理を施した。本陽極酸化処理は、0.5mol/Lシュウ酸水溶液中に基板を16℃で浸せきさせ、電圧40V、電流密度1.4A/dm2で2分間、低電圧電解処理を施すことにより行った。
図2は、ドメインサイズの測定方法を示す模式図である。規則的に配列したマイクロポアを丸印<○>で示した。このマイクロポアの配列を直線で結ぶと図1,2で示すように配列のずれが生じる部分が生成する場合がある。このずれが生じた部分を境界とし、その境界で囲まれた領域をドメインとした。実際のドメインサイズとマイクロポアの大きさを考慮すると、各ドメインで測定する各方向(図中L1,L2,L3)に対して蓚酸による規則化陽極酸化により作成したマイクロポアは20〜30個配列していることになる。ドメインサイズを測定するには、メイン陽極酸化処理後のアルミニウム表面を、例えば、FE−SEM(Field Emission Type Scanning Electron Microscope、電界放射走査型電子顕微鏡)を用い、傾斜角0°、倍率2万倍でマイクロポアを撮影する。得られた像において、図2に示すような60°度ごとに交差したL1,L2,L3方向においてポアの配列を直線で結び、配列が乱れないで続く長さを各方向で測定し、その平均を一つのドメインのサイズとした。おおむね1×10−3mm2相当の視野について画像を撮影し、少なくとも10個以上のドメインについてサイズを測定し、そのドメインサイズを平均して平均ドメインサイズとした。その際図2に示すドメインサイズの測定の起点は、ドメインのほほ中心部の何個かのポアを選び、ドメインサイズが最大になる点を選択した。
結果を表2に示す。
また、同様のアルミ材1〜3を用い、表2に示す熱処理を同様に行って、ただし本陽極酸化処理を以下の本陽極酸化処理B(硫酸電解液)を用いた以外は同様に構造体を得た。得られた構造体は、本陽極酸化処理A(シュウ酸電解液)を行ったと同様に、2μm以上の平均ドメインサイズが確保できた。
(4)’本陽極酸化処理B
窪みを形成させた基板に、0.3mol/L硫酸水溶液中に基板を16℃で浸せきさせ、電圧40V、電流密度1.4A/dm2で2分間、低電圧電解処理を施すことにより行った。
上記表2の熱処理条件のうち150,250,350℃×2時間の3種類の微細構造体で、上記1と同様の処理と陽極酸化処理とを行い、親水化処理したものと、しないものとを製造し以下の評価を行った。
結果を表3に示す。
(5)親水化処理
1質量%ケイ酸ソーダ水溶液に、35℃で、10秒浸漬処理した。
スワゾール(石油系炭化水素混合物)を満たしたセル中に、微細構造体を浸せきさせ、スワゾール中で微細構造体の表面への水滴の接触角を測定した。測定は、協和界面科学社製のFace接触角計CA−Xを用いて行った。5回測定を行って、平均値を求めた。
結果を表3に示す。
(7)金充填性の評価
微細構造体に、以下の充填処理(金電着法)を行った。
充填処理(金電着法):1g/LのHAuCl4と7g/LのH2SO4とを含有する30℃の分散液に、構造体を浸せきさせ、11Vの定電圧(スライダックで調整)で、5〜6分間電着処理した。得られた金電着構造体の充填の均一性をドメインサイズの評価と同様にFE−SEMを用いて撮影した像を観察して目視評価した。ビッカース硬度が低くなると均一性が向上し、親水化処理により更に向上することがわかる。
優:充填した金(Au)のサイズ(FE−SEM写真で上方から見える形状)が揃っている。
良:少なくともドメイン内ではサイズが揃っている。
可:ドメイン内でもサイズが不揃いだが、充填できていない部分は無い。
不可:充填できていない部分がある。
10 セル
11 第一のドメイン
12 第二のドメイン
Claims (3)
- ビッカース硬度Hvが20以下であるアルミニウム板を陽極酸化して得られるマイクロポアが規則的に配列した微細構造体。
- 前記アルミニウム板を陽極酸化する前に、少なくとも一回以上、200℃以上で1時間以上保持する工程を行う請求項1に記載の微細構造体。
- 前記マイクロポアの規則性が、平均ドメインサイズ2μm以上である請求項1または2に記載の微細構造体。
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