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JP2006160999A - 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、ラミネート金属板、および金属容器 - Google Patents

金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、ラミネート金属板、および金属容器 Download PDF

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JP2006160999A
JP2006160999A JP2004358339A JP2004358339A JP2006160999A JP 2006160999 A JP2006160999 A JP 2006160999A JP 2004358339 A JP2004358339 A JP 2004358339A JP 2004358339 A JP2004358339 A JP 2004358339A JP 2006160999 A JP2006160999 A JP 2006160999A
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Yukiko Inui
由起子 乾
Kazunari Nanjo
一成 南條
Kenji Shibuya
健二 澁谷
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Abstract

【課題】 金属板との熱ラミネート性、フィルムを熱処理した後でもフィルム表面の滑り性が良好で、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、また成形の高速化に対応でき、さらに内容物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属缶に好適な金属ラミネート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル(I)からなるフィルムであって、246〜252℃に融点を有し、極限粘度が0.70〜0.85であり、200℃における熱収縮率が20〜35%であることを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は金属板ラミネート用ポリエステルフィルムに関し、特にフィルムを金属板にラミネートして得られるフィルムラミネート金属板を絞り成形やしごき成形等に使用することができる、金属板ラミネート用ポリエステルフィルムに関するものである。
従来より、金属缶の内外面に腐食防止の目的で、熱硬化性樹脂を主成分とする溶剤型の塗料が塗布されていた。しかし、溶剤型塗料は塗膜を形成するために高温での加熱が必要であり、その時に多量の溶剤が発生するため、作業の安全性および環境の面からも問題があった。そのため、最近は溶剤を用いない腐食防止法として、熱可塑性樹脂による金属板の被覆が提案され、熱可塑性樹脂の中でも特にポリエステルは加工性、耐熱性等に優れることから、ポリエステルをベースとした金属板ラミネート用フィルムの開発が進められている。
フィルムを金属板に被覆する方法としては、熱可塑性樹脂を溶融させて直接金属上に押出す方法や、熱可塑性樹脂フィルムを直接、または接着剤を介して熱圧着する方法がある。中でも、熱可塑性樹脂フィルムを用いる方法は、樹脂の取扱いが容易で作業性に優れ、かつ、樹脂膜厚の均一性にも優れるために有効な手法とされている。また、接着剤を介した方法では環境面やコストの問題があるために、フィルムを直接熱圧着する方法が有利であり注目されている。
熱可塑性樹脂フィルムを被覆した金属缶は、鋼板、アルミ板等の金属板(メッキ等の表面処理を施したものを含む)に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした、ラミネート金属板を成形加工して製造される。
このような用途に用いられる熱可塑性樹脂フィルムには、(1)金属板との熱ラミネート性がよいこと、(2)缶の成形性に優れていること、つまり、缶の成形時にフィルムの剥離、亀裂、ピンホール等の発生がないこと、(3)缶成形後の印刷、加熱殺菌処理および長期の保存の際に脆化しないこと、(4)内容物の保味保香性に優れること等の数々の特性が同時に要求される。
このような金属板ラミネート用ポリエステルフィルムとしては、熱ラミネート性を付与し、缶の成形性を向上させる目的で、他の成分を混合したり、共重合する等、いくつかの方法が提案されている。
例えば、(イ)ポリエチレンテレフタレート(PET)に他の成分を共重合したものが特許文献1〜3等に、また、(ロ)融点が210〜245℃のエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする共重合ポリエステル99〜60重量%とPBTもしくはその共重合体1〜40重量%を配合したものが、特許文献4〜6にそれぞれ開示されている。
しかしながら、(イ)ではPETを共重合化し、低融点化、低結晶化することにより熱ラミネート性と成形性は改良されるものの、缶成形後の熱処理および加熱殺菌処理時に脆化し、耐衝撃性が低下するという問題があった。
また、(ロ)ではPBT系の樹脂を配合することにより、熱ラミネート性と上記の缶の脆化や耐衝撃性は向上するが、金属との熱ラミネート性や接着性が十分ではなく、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工成形性が十分ではなかった。
これに対して、缶の成形性や味特性を重視したポリエチレンテレフタレート主体のフィルムが、例えば(ハ)特許文献7、8に記載されている。
しかしながら、(ハ)ではフィルムの結晶性を制御することにより加工性を付与しようとするものであるが、絞り成形やしごき成形等の高次加工成形性が十分ではなく、特に熱ラミネート性についてはフィルムの融点以上の温度が必要であったり、接着剤を塗布する必要があった。
さらに最近では、製罐速度の増大、缶サイズの大容量化、缶の薄肉化の要求が進みつつあり、絞り加工やしごき成形時の金属の変形加工比がさらに増大しつつあること、また加工治具との摩擦が更に大きくなることから、特に厳しい変形を伴う缶の胴部において上記フィルムを使用しても、ラミネート金属板の製造条件、最終缶の成形加工条件の微妙な揺らぎによってはフィルムが白化したりミクロクラックが発生したりする問題が新たに生じた。
また、加工比の増大のために、フィルムを融点以上の温度で熱処理し、アモルファスの状態にした後に加工に供する場合があるが、この場合、フィルムの変形追随性は高くなるものの、フィルム表面の平滑化に伴って治具との滑り性が低下してフィルムに傷が入ったり、さらには破断する場合があった。また、良好に加工されたとしても、治具離れが悪く、操業トラブルの原因となる場合があり、改良が要求されていた。
また、しごき成形が打ち抜き型の場合には、成形上部の切断面でフィルムの伸びが生じ、それが著しい場合にはヘア状にちぎれたフィルム屑(以下ヘアと呼ぶ)が飛散し、ヘアの混入による操業トラブルが発生する場合があった。
このようなフィルムの滑り性を改良する方法としては、フィルム表面を荒らして摩擦抵抗を下げる方法が一般的に行われており、金属ラミネート用ポリエステルフィルムとしても、(ニ)無機粒子添加量を増加したフィルムが特許文献9に、非相溶性樹脂を添加したものが特許文献10に、架橋高分子粒子を添加したものが特許文献11に提案されている。
しかし、(ニ)に示したいずれの手法を用いても、延伸フィルムの滑り性は向上できるものの、熱処理によるフィルム表面の平滑化は防げず、従って、アモルファスの状態での滑り性を向上することは出来ていなかった。
特公平8−19245号公報 特公平8−19246号公報 特許第2528204号公報 特許第2851468号公報 特開平5−186612号公報 特開平5−186613号公報 特開平10−128935号公報 特開2000−186161号公報 特開平7−62116号公報 特開平7−109363号公報 特開平7−118411号公報
本発明の目的は、金属板との熱ラミネート性、フィルムを熱処理した後でもフィルム表面の滑り性が良好で、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、また成形の高速化に対応でき、さらに内容物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属缶に好適な金属ラミネート用ポリエステルフィルム、ラミネート金属板およびそれを用いた金属缶を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の範囲の融点と極限粘度を有するポリエステルフィルムを、熱ラミネート温度での熱収縮率を特定の範囲に制御することにより、金属との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等に優れ、さらに耐食性と保味保香性に優れた金属缶を製造し提供できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
ポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル(I)からなるフィルムであって、246〜252℃に融点を有し、極限粘度が0.70〜0.85であり、200℃における熱収縮率が20〜35%であることを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。
本発明によれば、金属板との熱ラミネート性、フィルムを熱処理した後でもフィルム表面の滑り性が良好で、缶の成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、また成形の高速化に対応できる金属缶の被覆に好適な金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における、ポリエチレンテレフタレート(PET)主体のポリエステル(I)としてはPETに他の成分を共重合したものを挙げることができるが、そのフィルムの融点は246〜252℃の範囲であることが必要であり、246〜250℃の範囲であることがより好ましい。
融点が246℃未満であると、結晶性が低下し、絞りしごき加工時に治具との滑り性の低下によるフィルム傷や破断等のトラブルが生じ易く、また、成形加工後の加熱処理により白化や白斑が発生したり、耐衝撃性が低下したりする。一方、融点が252℃を超えると、熱ラミネート性が低下し、十分な密着性を持たせるためには融点近傍もしくは融点以上の温度に上げてフィルム表面の結晶を融解させる必要があり、生産性に劣る。
また、フィルムのガラス転移温度は60〜85℃が好ましく、特に70〜80℃が好ましい。ガラス転移温度が60℃未満であると絞りしごき加工時にフィルムに傷が入り易く、また、缶に内容物を充填して保存した場合に、耐食性やフレーバー性が低下する。さらに、しごき成形が打ち抜き型の場合には、成形上部の切断面でフィルムの伸びが生じ、ヘアが発生し易くなる。一方、85℃を超えると加工追随性に劣る場合がある。
ポリエステル(I)においてPETに共重合することができる成分としては特に限定されず、酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンや乳酸などが挙げられる。
また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分は2種以上併用してもよい。
本発明のフィルムの極限粘度は0.70〜0.85であることが必要であり、特に0.70〜0.80が好ましい。極限粘度が上記範囲未満では缶の高次加工時に破断し、生産性を極端に悪化させる。特に缶の容量が大きくなり、そのためにラミネート金属板から缶に絞りしごき加工してゆく過程でフィルムの変形加工度が大きくなるため、それに追随できず、フィルム層にボイドが発生したりクラックが発生したりして、外部からのわずかな衝撃によってすらフィルム層の剥離やクラックの成長が助長され、缶の内面に用いられた場合には、内容物と缶の金属とが直接接触する結果、保味保香性が低下したり、フレーバー性に問題が生じたりする。また缶の外面においては、ボイドによりフィルムが白化した部分では、印刷外観が悪くなる。また、ボイドやクラックによって、長期保存時に缶が腐食してくる問題を生じる恐れがでる。
一方、極限粘度が上記範囲を超える場合にはフィルムの生産工程において樹脂の溶融押出し機にかかる負荷が大きくなり、生産速度を犠牲にせざるを得なかったり、フィルムの厚み制御も難しくなる等、フィルムの生産性が低下する。また、あまりに極限粘度の高いものは、重合時間や重合プロセスが長く、コストを押し上げる要因ともなる。
原料のポリエステルの重合方法は特に限定されず、例えば、エステル交換法、直接重合法等で重合することができる。エステル交換触媒としては、Mg、Mn、Zn、Ca、Li、Tiの酸化物、酢酸塩等が挙げられる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、Ge酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。
重合後のポリエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセトアルデヒドやテトラヒドロフラン等を含有しているため、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温度で固相重合することが好ましい。
ポリエステルの重合においては必要に応じ添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加することができる。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等を、熱安定剤としては、例えばリン系化合物等を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系の化合物等を挙げることができる。
本発明のフィルムは200℃における熱収縮率が20〜35%である必要がある。200℃における熱収縮率が20%未満の場合は、熱ラミネート時の密着力が低く、融点近傍かそれ以上の高いラミネート温度が必要となる。一方、35%を超えると熱ラミネート時のフィルムの軟化やシワ等の操業トラブルが発生し易く、また延伸フィルムの保存安定性にも劣る。熱収縮率は、フィルム製造時の延伸倍率や熱処理温度により調整することができ、例えば、延伸倍率を低くしたり、熱処理温度を高くすることにより、熱収縮率は抑えられる。フィルムの厚み制御や生産性を考慮すると、熱収縮率を調整する方法としては、熱処理温度を最適化し、面倍率で10倍以上に延伸することが好ましく、さらに、フィルム幅を連続的に縮める処理(リラックス処理という)と熱処理とを併用して調整する方法が特に好ましい。
本発明では200℃における熱収縮率を特定範囲に制御することにより、246℃以上の融点を有する結晶性のポリエステルフィルムを、200〜230℃という比較的低温で熱ラミネートを可能にしたものである。従来から、結晶性の高いフィルムを熱ラミネートする際には、融点以上の温度でフィルムの結晶を融解させることにより、金属と接触、密着させていた。しかし、本発明では、結晶化を抑えたフィルムを、融点以下の温度での熱収縮による変形を利用して、結晶の融解を抑えた状態で金属と接触、密着させている。
本発明のフィルムは、上記ポリエステル(I)に非相溶である低分子量ポリマー(II)を、特定量含有することが好ましい。低分子ポリマー(II)がポリエステルに相溶する場合には、フィルム表面を荒らす効果が小さく、滑り性に寄与しない。ポリマーの種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド等を挙げることができるが、ポリエステル(I)と混合する場合の安定性、および相溶性のバランスの面から、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
本発明において低分子量ポリマー(II)は、数平均分子量が1000〜8000であることが好ましく、特に2000〜6000であることが好ましい。上記分子量範囲の低分子量ポリマー(II)を非相溶のポリマー中に含有させることにより、延伸フィルムの表面を荒らして滑り性を向上させることができるばかりか、フィルムの融点以上の温度で熱処理して結晶を融解させるといった、アモルファス化処理を行った後にでも、特定の荒れたフィルム表面を保持することができる。数平均分子量が1000未満であると、分子量が低すぎてフィルム加工時またはフィルムをアモルファスにする際にフィルムの表面に析出してしまい、缶の加工工程で治具を汚してしまったり、逆にフィルム自身に傷をつけたりする場合がある。一方、分子量が8000を超える場合には、フィルムをアモルファスにした後のフィルム表面を荒らす効果が十分ではなく、缶加工時の滑り性が劣る。
本発明において低分子量ポリマー(II)は、軟化点が95℃以上であることが好ましく、特に100〜200℃の範囲が好ましい。軟化点が95℃未満の場合には、通常の缶成形温度である60〜90℃において、フィルムが軟化し、缶成形時の滑り性が劣る場合がある。
本発明のフィルムは、上記低分子量ポリマー(II)を0.01〜1.0質量%含有することが好ましい。含有量が0.01質量%未満では、滑り性改良の効果が認められない。また、含有量が1.0質量%を超える場合には、フィルム表面の滑り性については過剰品質となるばかりでなく、非相溶の樹脂が多くなるにつれてフィルムが脆くなったり、完成した缶が衝撃性に劣り、さらにフレーバー性が低下する場合がある。
本発明のフィルムの製造方法としては、ポリエステル(I)を押出し機内270〜300℃の温度で3〜15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出す。このシートを室温以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて冷却し、得られた未延伸フィルムをその後同時二軸延伸機に導き、50〜150℃の温度でMDおよびTDに夫々2〜4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸し、さらにTDの弛緩率を数%として、140〜190℃で数秒間熱処理を施すことによって製造することが出来る。また、同時延伸機に導く前に、1〜1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
低分子量ポリマー(II)の添加の方法は、特に限定されないが、ポリエステル(I)中に0.5〜5質量%程度含有するマスターチップを事前に作成して、マスターチップで添加する方法が好ましい。
またこのフィルムは逐次延伸法によっても製造することが出来る。その方法を概説すると、上記同時二軸法において記述したのと同様の未延伸フィルムをロール加熱、赤外線等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロール周速差を利用し、ポリエステルのガラス転移点(Tg)〜Tgより40℃高い温度の範囲で2.5倍以上、3.6倍以下とするのが好ましい。縦延伸フィルムは続いて連続的に、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとする。横延伸はポリエステルのTg〜Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度はポリエステルの融点(Tm)より(100〜40)℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、2.7倍以上、さらには3.0倍以上とするのが好ましく、3.6倍以上とするのがより好ましい。延伸に続く熱固定処理時にフィルム幅方向に2〜20%の伸張を加えてもよいが、この伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれることが好ましい。熱固定処理後、フィルムの熱収縮特性を調整するためリラックス処理を行い、その後フィルムのTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性を付与するために必要な工程であるが、その方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法を用いることができる。このうち、均一に精度良く加熱できることから熱風を吹き付ける方法が最適である。
フィルム製造時や製缶時の工程通過性をよくするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤を少量添加して製膜してフィルム表面にスリップ性を付与することが望ましい。さらに、フィルム外観や印刷性を向上させるため、たとえば、フィルムにシリコーン化合物等を含有させることもできる。
フィルムへのかかる無機滑剤の含有量は0.001〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%である。また、滑剤の機能と併用して、隠蔽性の目的から二酸化チタンを20質量%程度まで添加することも出来る。特に同時二軸延伸においては40質量%を超える二酸化チタンを添加しても延伸フィルムを得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、鋼板、アルミ等の金属板に熱ラミネートされるが、ラミネートする金属板は、クロム酸処理、リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理等の化成処理や、ニッケル、スズ、亜鉛、アルミ、砲金、真鍮、その他の各種メッキ処理などを施した金属板を用いることができる。
本発明のフィルムには、金属板との熱圧着性及びその後の密着性を更に向上させる目的で、共押出法やラミネート加工、あるいはコーティング加工により接着層を設けることができる。接着層は乾燥膜厚で1μm以下が好ましい。接着層は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やこれらの各種変性樹脂からなる熱硬化性樹脂層であることが好ましい。
また、金属板と熱圧着するフィルムの反対側には、金属缶体の外観や印刷性を向上させたり、フィルムの耐熱性や耐レトルト性等を向上させるために1種もしくは2種以上の樹脂層を設けることができる。これらの層は、共押出法やラミネートあるいはコーティング加工により設けることができる。
本発明のフィルムと金属板をラミネートする方法としては、金属板を予め200〜250℃まで予熱しておき、これとフィルムとを、金属板より30℃、更には50℃以上低く温度制御されたロールによって圧接して熱圧着させた後、室温まで冷却することにより連続的に製造される。
金属板の加熱方法としては、ヒーターロール伝熱方式、誘導加熱方式、抵抗加熱方式、熱風伝達方式等があげられ、特に、設備費及び設備の簡素化を考慮した場合、ヒーターロール伝熱方式が好ましい。
また、ラミネート後の冷却方法については、水等の冷媒中に浸漬する方法や冷却ロールと接触させる方法を用いることができる。
以上のようにして得られた金属板は、そのまま加工処理を施してもよいが、ポリエステルの融点より10〜30℃高い温度で熱処理後急冷して、本フィルムをアモルファスの状態にすることにより、さらに高い加工性を付与することができる。特に、本発明のフィルムは、アモルファス状態にした際に大きな効果を発揮する。
金属容器としては、飲食料を充填して使用に供することができ得る形態にまで加工処理が施された金属容器及びその一部分、例えば巻き締め加工が可能な形状に成形された缶蓋も含まれる。
特に、厳しいネックイン加工が施される3ピース缶(3P缶)の缶胴部材や、絞りしごき加工によって製造される2ピース缶(2P缶)の缶胴部材として用いる場合に、本発明のフィルムの優れた加工性が発揮される。
本発明のフィルムを用いた金属容器は、その優れた耐レトルト性、フレーバー性、耐食性から、コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶、特に腐食性の高い酸性飲料(果汁飲料)や乳性飲料といった各種加工食品等の内容物を充填する場合に適している。
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
実施例及び比較例におけるフィルムの原料、および、特性値の測定法は、次の通りである。
ポリエステル(I)
A−1:イソフタル酸1.5mol%共重合PET、Ge触媒40ppm含有、IV0.75dl/g、Tm250℃。
A−2:イソフタル酸3mol%共重合PET、Ge触媒40ppm含有、IV0.82dl/g、Tm247℃。
A−3:イソフタル酸3mol%共重合PET、Ge触媒40ppm含有、IV0.64dl/g、Tm247℃。
A−4:イソフタル酸3mol%共重合PET、Ge触媒60ppm含有、IV0.90dl/g、Tm247℃。
A−5:イソフタル酸5mol%共重合PET、Ge触媒60ppm含有、IV0.75dl/g、Tm238℃。
A−6:シクロヘキサンジメタノール2mol%共重合PET、Ge40ppm含有、IV0.74dl/g、Tm246℃。
A−7:PET、Ge触媒40ppm含有、IV0.75dl/g、Tm256℃。
低分子量ポリマー(II)
C−1:ポリエチレン 数平均分子量 Mn1500 (三洋化成社製サンワックス 131−P)
C−2:ポリエチレン 数平均分子量 Mn5500 (クラリアント社製リコワックス PE190)
測定法
A.極限粘度(IV)
フェノール/四塩化エタンの等質量混合溶媒を用いて、温度20℃、濃度0.5g/dlで測定した溶液粘度から求めた。
B.融点(Tm)とガラス転移温度(Tg)
Perkin Elmer社製DSCを用い、20℃/minで昇温時の融点とガラス転移温度を測定した。測定サンプルはフィルムを溶融後、100℃/min以上の速度で急冷して非晶状態としたものを用いた。
C.熱収縮率
フィルムの長手方向と幅方向にサンプルを切り出し、200℃で15分加熱時の収縮率を測定した。
D.熱ラミネート性
230℃に加熱した金属ロールと、シリコンゴムロールとの間に、試料フィルムと厚みが0.3mmのアルミ板とを重ね合わせて供給し、速度20m/min、線圧4.9×104N/mで加熱接着し、2sec後に氷水中に浸漬し、冷却してラミネート金属板を得た。
得られた積層体から、幅18mmの短冊状の試験片(端部はラミネートせず、ラミネートされた部分がMDに8cm以上確保されるようにする)をTDに11枚切り出した。
次に、この試験片のフィルム面に、JIS Z−1522に規定された粘着テープを貼り付け、島津製作所社製オートグラフで、10mm/minの速度で180度剥離試験を行い、その剥離強力を測定することにより、次の基準にしたがって接着性を評価した。
◎:10枚以上の試験片の剥離強力が2.9N以上であるか、又は2.9N以上でフィルムが破断。
○:5〜9枚の試験片の剥離強力が2.9N以上であるか、又は2.9N以上でフィルムが破断。
×:7枚以上の試験片の剥離強度が2.9N未満。
E.フィルムの表面状態
上記Dで得られたラミネート金属板の、(イ)フィルム表面、および、(ロ)熱風乾燥機中280℃で1min熱処理後、2sec以内に30℃以下の水浴中で急冷したラミネート金属板のフィルム表面の3次元表面粗さを測定し、次の基準にしたがってフィルムの表面状態を評価した。なお、3次元表面粗さ(SRa)は、小坂研究所社製、SURFCORDER ET−30K 触針式表面粗さ計を用い、触針先端半径2μm、加重20mg、カットオフ0.25mm、送りピッチ20μm、測定速度100μm/sec、測定面積0.1mm2の条件により、10箇所測定してその平均値を求めた。
△:SRaが10nm未満。
○:SRaが10nm以上、30nm未満。
◎:SRaが30nm以上。
F.滑り性
上記(ロ)で得られたラミネート金属板を、23℃雰囲気中にて重量500gのクロム鋼球3点荷重式滑走子を速度133mm/minで滑らせた際の動摩擦係数(μ)を測定し、次の基準に従って滑り性を評価した。
×:μが0.30を超える。
○:μが0.20を超え、0.30以下。
◎:μが0.10以上、0.20以下。
△:μが0.10未満。
G.成形性
上記(ロ)で得られたラミネート金属板のフィルム側を缶胴外面として、200缶/分の速度で絞りしごき成形を行い、500ml相当の2ピース缶を各100缶成形した。缶の外面を目視で観察し、次の基準に従って成形性を評価した。
(ハ)フィルム傷
×:フィルム表面に傷が認められる缶が10缶以上。
△:フィルム表面に傷が認められる缶が5缶以上10缶未満。
○:フィルム表面に傷が認められる缶が5缶未満。
(ニ)ヘア
×:成形缶上部の切断面での幅3mm以上のフィルム伸びが認められる缶が10缶以上。
△:成形缶上部の切断面での幅3mm以上のフィルム伸びが認められる缶が1缶以上10缶未満。
○:成形缶上部の切断面での幅3mm以上のフィルム伸びが認められない。
実施例1〜6、比較例1〜6
表1に示す組成のポリエステル(I)に平均粒径2.5μmの凝集シリカを0.08質量%添加し、また、必要に応じて低分子量ポリマー(II)を表1に示す割合で配合し、各々275〜285℃の範囲で溶融し、Tダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを、70℃の予熱ロール、90℃の延伸ロールにより、MD方向に3.3倍延伸し、次いでテンター内のクリップに把持し、85℃の予熱ゾーンを走行させた後、90℃でTD方向に3.8倍延伸した。その後TDの弛緩率を5%として、温度130〜190℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して巻き取り、厚さ16μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムをDに記述した方法でラミネート金属板を得、同時に評価した。
更に、上記Dで得られたラミネート金属板のフィルムの表面状態をE、滑り性をFに記載した方法で、成形性をGに記載した方法で評価した。上記試験で得られたフィルムの諸物性と各評価結果を表1に示す。
実施例1〜6で得られたフィルムは、熱ラミネート性や成形性に優れていたが、比較例1〜5で得られたフィルムは上記のすべての性能を満足するものは得られなかった。また、比較例6については、熱ラミネート時のフィルムにシワが入り易くて操業性に劣り、また、融点以上の温度で処理後の動摩擦係数が小さすぎて、ロールで巻き取った際に巻きズレ等も見られた。

Claims (4)

  1. ポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル(I)からなるフィルムであって、246〜252℃に融点を有し、極限粘度が0.70〜0.85であり、200℃における熱収縮率が20〜35%であることを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。
  2. ポリエステル(I)と実質的に非相溶であり、数平均分子量が1000〜8000の低分子量ポリマー(II)を0.01〜1.0質量%含有することを特徴とする請求項1記載の金属板ラミネート用フィルム。
  3. 金属板に直接又は接着剤を介して積層されてなる請求項1または2記載の金属板。
  4. 請求項3記載のフィルムラミネート金属板を用いて成形された金属容器。
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